型をこよなく重んじるも、嵌ることをめっぽう嫌がる作曲家の日記

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2022.07.14
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テーマ: 芸術(12)
カテゴリ: 作曲家
ジョリヴェは1974年12月19日に突然の心臓発作によって69歳で逝去、
1934年の弦楽四重奏曲が出発点となり90曲以上を残しました。
遅咲きであったことは否めませんが、画家で劇場関係者であった父や、
ピアニストであった母の影響で、12歳で音楽、絵画、演劇を学びました。

16歳で和声学を、22歳で対位法とフーガを学び始め、やはり早くはありません。
音楽院には行かず1928年23歳で作曲をエドガー・ヴァレーズに師事。
ジョリヴェがヴァレーズからもっとも影響を受けたと考えられる作品は、
インテグラル(積分)とイオニザシオン(電離)と言うことになります。

ジャン・ハモンの言葉によれば、ジョリヴェが影響を受けた事柄は、
「まだ使用されないか、少ししか使われていない素材で創造する欲望、
もう一つは機械化された今日の文明社会の騒音の異常発育への興味」
1930年、最初の作品「3つの時」を聴いたメシアンから手紙を受け取ります。

3歳年下のメシアンとの親交はもっとも興味深い点でもあります。
素材としたものの対象、旋法の操作において極めて類似しているからです。
材料が変わることによって作品の印象はこれほど異なります。
しかし、お互いがかなり意識していたのではないかと想像しています。

ジョリヴェの呪術性については残された言葉による部分も大きいようです。
”音楽は呪術的に精神的病を治すことができる”
”太古において人は呪術を行うことにより、
人間を滅亡に導く原因となるものをはねのけ、より高いものへの夢を持たせた”

しかし、伝統的な構成力による楽曲も同時に作曲していました。
ジョリヴェの音楽が体系化されづらいのは多様な要素が共存しているからです。
分析はできてもなぜその手法を取ったか解明しづらいこともあります。
比してメシアンは後に自らの語法をすべて理論的に説明したことが異なります。

ジョリヴェの作品は多岐に渡ってさまざまな曲が演奏されていますが、
代表作は1951年に作曲者の指揮で初演されたピアノ協奏曲だと感じます。
打楽器群の乱舞とピアニズムが今までの協奏曲の概念とあまりにもかけ離れ、
アフリカ、ポリネシア、極東などのテイストが色濃く斬新さが輝いています。

それでいて構築性や緻密な構造は第1楽章から気が抜けない緊張をもたらしています。
初演時、この個性の強い音楽に聴衆は口笛を吹き鳴らし演奏の中断を迫りました。
ジョリヴェ夫人は隣の席で口笛を吹いている男性の頬を引っ叩き警察沙汰になるなど、
「春の祭典」以来の物議を醸した後にパリ市民音楽大賞を受賞した問題作です。
※ここまでの参考文献・宍戸睦郎:回想…アンドレ・ジョリべよピアノ協奏曲
 「あんさんぶる」1993年9月号より

70年経った今、どんな新曲であろうと日本ではブーイングはありません。
ブーイングをしなくなったのではなくずっとできないでいるのです。
心の中では何と思っていようとあたかも知っていたかのように皆が拍手をします。
「そんなものだ」という知的好奇心だけが満たされ音楽が残りません。

新曲が初演される際はいつブーイングされるかわからない、
「こんなの音楽じゃない」といつ言われるか終わるまでハラハラドキドキ、
後で真相がわかる、そんなコンサートだったらしょっちゅう聴きに行きたいです。
西欧で実績のある作曲家の素晴らしい曲だと同調圧力を感じる必要はありません。

賛否が誰にでもわかるかたちではっきりすればもう一度聴いてみたくなります。
初演時は大ブーイングであっても、情報を整理してもう一度聴いてみるなど、
皆で作曲家の考えや音楽の魅力について検証してみる過程が楽しいのです。
そんなことを考えるまでもなく受け身で自己処理をする演奏会はつまらないです。

それでも若い頃は今よりは楽しかったのです。演奏にもこのことは当て嵌ります。
音楽のことを識れば識るほどもっと上や先が見たいと思うようになりましたが、
演奏会全体がルーティーンに陥り、率直、真摯で革新的な表現が減ったと感じられます。
素晴らしい作曲家・演奏家はたくさんいる筈、そんな人たちが萎えないで欲しいです。





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最終更新日  2022.07.14 14:50:37
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