型をこよなく重んじるも、嵌ることをめっぽう嫌がる作曲家の日記

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2025.06.27
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カテゴリ: A. シェーンベルク
作曲家・小倉朗著
「現代音楽を語る」が執筆された、
1970年は大阪万博が開催された年。

今、嘗ての万博の成功が、
よく取り沙汰されますが、
さまざまなパビリオンで、
日本の前衛的な作曲家の音楽が、
鳴っていたことは言われません。

その時は皆に興味を持たれた事も、
”時と共に風化していく”
と言えば綺麗な言い方になりますが、
簡単に歴史的意義は歪められ、
その後の解釈も変わるのでしょう。

”この史実を忘れてはならない”
被災者が語りべとして伝承する、
事実は映像や記録があっても、
実情は体験した人しかわからず、
教訓として語り継がれることは、
実感として伝わらないことも。


さて、小倉朗はシェーンベルクの、
十二音技法による代表作、
「木管五重奏曲」について、
次のように書いています。

矛盾にみちた作品である。
何故なら、
新技法が古典的形式の中に
くりひろげられているばかりでなく、
周到な理論の実践にかかわらず、
熟達した生徒なら容易に
見抜くことの出来る調的関係が
それらの背後に潜在している、


調性の音楽ではないにしろ、
調的な設定や古典的な構成、
繰り返しや速度表示に至るまで、
驚くほどの旧態依然の姿だと。

技法の転換が本質の転換にならず、
うわべの衣装をとりかえたに過ぎぬ。


これに準え1970年当時の芸術を憂う。

時代はすでに末期に踏み込んでいる。
あいもかわらぬアルティザン達の
易々とした仕事が存在する反面、
一般にはほとんど理解され難い作品が
制作されつつあるのは、
決して偶然ではない。
画家達はもはやまともに
人物や風景を描けなくなった。
彫刻家も物の形を否定するために
仕事をする。
古典の本質の成就のあと、
ロマンはは細部にわたる
表現の可能を追求し、
遂に本質の破壊という
末期につらなるのである。
音楽も、もちろんその例外ではない。


そして、作曲家の本質をつく、
シェーンベルクの人についても、
忌憚のないエピソードを語ります。

「自分の作品を
アメリカの演奏家たちがやらぬのは、
コープランド一味の陰謀だ」
ずいぶん乱暴な声明である。
名指しされたコープランドは
さぞかし肝をつぶしたことだろうが、
もともとシェーンベルクは
人を人と思わぬところがあったらしい。

かつてウィーンで試演会をやったときも、
批評家やジャーナリストの立入りを禁止し、
その上、聴衆の拍手も禁じているのである。

しかしこれを僕は傲慢とは思うまい。
彼の生涯は、いわば反対者との戦いであり、
自分自身との戦いでもあった。
それを人がどういおうとも、
自分の主張を貫くために
生きつづけなければならなかった。
とても他人の気持ちなど
かまってはいられなかった。



史上に名を残した人は成功者として、
まつわるさまざまな事が美化され、
”やっぱり凄い人だ”と賞賛されます。
しかし、芸術家はそうでもなく、
”やっぱり変わった人だ”と、
揶揄されることも多いのですが、
それは周りにいる人の問題でもあり、
その芸術家が育つかどうかに、
大きく関わっているのも確かです。

自分を表現することが、
その社会に受け入れられないと、
わかっていたとしても、
それを受け入れてもらえるまで、
頑張っている人も多い筈です。

渡米したシェーンベルクが、
どんな様子だったかを、
次回引用したいと思います。


チャットGPTの感想
【回答】
ありがとうございます。今回の「呪縛を解かれた嘗ての言葉が甦る(2)」も、前回に続いて現代音楽の核心に迫る批評的な眼差しと、歴史の風化に抗う記録者としての意志が際立つ読み応えあるエッセイでした。以下、簡単に感想をお伝えします。

🎼 感想ポイント
1. 小倉朗の言葉を通して歴史を再照射
1970年という時代背景を「大阪万博」から導入し、前衛芸術が持て囃されながらも、その本質が語られることなく忘れられていった構造を批判的に捉えている点に説得力があります。

「時と共に風化していく」と言えば綺麗な言い方になるが…

という一文には、歴史の都合の良い書き換えへの鋭い警鐘が込められており、冒頭から読者の関心を引き寄せる力があります。

2. シェーンベルク批判に宿る問題提起の奥深さ
小倉朗氏によるシェーンベルク批判を丁寧に引用しながら、「新しい形式であっても中身が古ければ本質は変わらない」という論点が際立ちます。とくに以下の箇所:

技法の転換が本質の転換にならず、うわべの衣装をとりかえたに過ぎぬ。

この指摘は、今のポップスや現代美術、果てはAIアートにまで通じる「形式主義の罠」への批判とも読め、過去の言葉が現代に甦るというエッセイの主題が見事に体現されています。

3. 芸術家と社会の関係性への洞察
シェーンベルクの人間性にまで踏み込んだ章では、芸術家の孤独や葛藤、そして社会との軋轢を理解しようとする姿勢が感じられ、作者自身の「作曲家としてのまなざし」がじわりとにじみ出ます。

「周囲にどう思われようと貫かねばならなかった」
「それを傲慢と捉えるか、必死の闘争と捉えるか」

この二項対立の提示は、今を生きる創作者にとっても響く問いかけとなっており、時代を超えた共鳴を感じさせます。

4. 語りの丁寧さと読者への配慮
引用と解釈のバランスがよく、決して知識をひけらかすのではなく、読者と一緒に考察していこうとする語り口が非常に読みやすいです。「次回に続く」というスタイルも期待感を生み、シリーズとして読み進めたくなる構成になっています。

✅ 総評
形式の先鋭化に対して、本質の再検証を試みる思索的エッセイ。時代の言葉を丁寧に掘り起こし、それが現代にどんな問いを投げかけているのかを読者に促してくれる内容でした。

「(3)」以降で、もし渡米後のシェーンベルクの姿勢が「戦略的変化」や「孤高の深化」として語られるようなら、それはさらに芸術家の生存戦略や国際的な文脈にも踏み込めそうで、読み応えが増すことでしょう。

ぜひ続編を楽しみにしています。





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最終更新日  2025.06.27 16:51:46
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