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19話 【Ignite Gasoline!】
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19話 (潮) 【Ignite Gasoline!】
■ 透子 ■
ジャグジーバス、うたせ湯、寝湯、サウナ、立ち湯、内湯、大展望露天風呂。
種類豊富な大浴場の案内板を前に、手放しで喜ぶ私と同様、景色と星空をこよなく愛する伊神さんもかなり嬉しそうだった。
「全部試してみたくなっちゃうなぁ。ねぇ杣庄、伊神さん。長風呂になっちゃうから先に戻ってて。待たせるのは申し訳ないから」
入浴にかかる時間を計りかねた伊神さんに対し、杣庄は心当たりがあるのかうんざり顔だ。
「女の入浴時間は相当長いからなぁ」
「なんでそんなに詳しいの、杣庄」
「唄が温泉やらスパ好きで、昔から散々付き合わされてるからな。専属運転手も兼ねて」
「あ、そっか」
聞けば杣庄の妹の唄ちゃんは女磨きに余念がないのだとか。何とも耳の痛い話だ。
「伊神さん。俺、烏の行水ですから相当早いですよ。気にせずゆっくり湯船に浸かってて下さいね」
どうやら杣庄自身は人を待たせるタイプではないらしい。
「オレも、そう長湯するタイプではないなぁ」
つまるところ全員、所要時間に誤差が生じてしまうようだ。
結局この場にて解散という流れになり、女性専用入り口の白のれん、男性専用入り口の黒のれんを潜り抜けたのだった。
*
ジャスミンムスク漂う浴槽に身を沈め、思慮に耽る。議題は『これからどうするか?』。
(今夜もしかして――。ううん、そんなことにはならないはず)
馬渕先輩には啖呵を切ったものの、確かに伊神さんが自分を求めてくるとは思えない。
(でも……でもなぁ……。……でもなあああああ)
触れて欲しいとか触れたいとか。独り占めしたいとか束縛されたいとか。
(……思ったりして……)
ねぇ、伊神さん。こんな私はハシタナイですか?
そんなことを言ってあなたを困らせたら、私は嫌われてしまう?
何かが変わる? ぎくしゃくしてしまう? また疎遠になってしまう?
「はぁぁぁぁ……」
ぶくぶくぶく。私は泡と一緒にお湯の中。
「とっ、透子先輩! 透子先輩!」
必死さの中に、どこか繊細で鈴の音を連想させる女性の声がした。じゃぶじゃぶとお湯を掻き分けながら誰かが近付いてくる気配がする。
両肩を持ち上げられ、「ふにゃ……?」と見上げた先には、困惑顔の千早さんがいた。
「あれ……千早さーん?」
「千早さーんじゃありませんっ。完全にノボせてるじゃないですか!」
「えー?」
「長時間の入浴は危険です。外に行きましょう」
手を取られて向かった先は露天風呂だった。ベンチに腰掛けるよう促され、素直に従う。外気はひんやりして確かに心地よかった。
「……わ……。千早さんの機転で助かった……。気持ちいー……」
「……もぅ! 心配したんですからね!? いくら温泉を堪能したいからって、無茶しちゃいけません!」
心配と怒りが混じった千早さん独特のお説教が始まった。ゆっくり目を開けると、千早さんのシルエットが次第にはっきりしてきた。
大きめのタオルで身体を包んではいるものの、お湯によって貼り付いたソレは、彼女のボディラインをしっかりと浮き上がらせている。
「羨ましいな」
「……!?」
千早さんが咽喉の奥で悲鳴をあげたのも無理はない。私が彼女の腰に両腕を巻き付けたからだ。
お互いのタオル越しに伝わる肌の感触が、やけにリアルだった。
「女の子の身体って、柔らかいんだねぇ」
「せっ……せんぱいッ!?」
本当に柔らかい。そして気持ちいい。千早さんはスレンダーなのに、ちゃんと肉感が味わえる。
もし。もし伊神さんが私をこんな風に抱き締めたら、今と全く同じ感触を味わうことになるのだろうか。
それとも、こんなに抱き心地がいいのは、美人で可愛くてスタイルのいい千早さんが相手だから?
私が相手では魅力に欠けて、伊神さんをガッカリさせてしまう?
「やだ……」
「……? 先輩?」
「そんなのやだよ……嫌われたくない……。伊神さんに嫌われたくない……」
逃げないでとばかりに、抱き締める力が強まる。相手が千早さんであることも忘れて。
(どうすればいいの?)
彼を抱き締めたいし、彼に見つめて貰いたい。だとしたら動くべき?
でも、触れ合うことを嫌がる人かもしれない。嫌われない為にも、ひたすら待機するべき?
伊神さんの笑顔が見たい。喜ぶ顔が見たい。一緒にいたい。蔑まれたくない。どうすれば、どうすれば、どうすれば――?
全ては、私の行動1つ。
選択によって、未来が変わる。
*
ざわめき。
いつの間にか、私と千早さんを取り囲むように同僚たちが集まって来ていた。遠巻きに見ている人もいる。
「ち、違います! えーっと、そう! これは透子先輩が足を滑らせてですね……」
必死にフォローする千早さんを余所に、私は立ち上がり、彼女の肩を叩く。
「あっ、透子先輩」
「……ありがとう。もう行くね」
後輩を含めた女性陣に、なんとも無様な姿を見せてしまった。
十分過ぎるほど長い湯浴みをしたことだし、浴場を後にすることにした。
答えを見付けられないまま目指した先は、伊神さんが泊まっている部屋だった。
*
508号室。このドアの向こうに伊神さんはいる。
(勇気を出すの。大丈夫。大丈夫だから!)
何度も自分に言い聞かせて鼓舞するも、ドアチャイムの上に置かれた指先が、押すのを幾度となく躊躇っている。
もどかしい。気持ちに踏ん切りがつかない。私にこの部屋を訪ねる意思はあるの?
決心が鈍りかける。でも、それでは前に進めない。
目をぎゅっと瞑りながらチャイムを押す。尋ね人は、じきに部屋の中から出て来るだろう。
「わざわざ迎えに来なくてもよかったのに。先に親決めしてくれてよかったんだぜ。――って、透子??」
部屋から出てきたのは伊神さんではなく杣庄だった。
てっきり伊神さんが出てくるものだとばかり思っていただけに、拍子抜けすると同時に毒気が抜けていくのを感じた。
「わりぃ、人違いした。さっき大浴場で麻雀に誘われて、今から出掛けるところだったんだ」
浴衣姿の杣庄は申し訳なさそうに言う。
「伊神さん、中にいる?」
「いや、まだ外だ。露天風呂から見えた星空があまりに綺麗なんで、湯ざましがてら街をブラつくって言ってた」
完全に出鼻を挫かれた。決意が鈍らない内に会っておきたかったのに。
でも杣庄は出掛けるみたいだし、このまま待っていれば伊神さんに会えるだろう。
「杣庄、お願いがあるの」
「何だ?」
「朝までこの部屋には戻って来ないで」
「……そりゃまた随分と冷ややかな命令だな。俺が邪魔か?」
「杣庄……言わせないで」
「取り敢えず、中に入れ」
立ち話もなんだからと言われてやっと気付く。ここは旅館の廊下で、人の目につき易い場所でもあったのだ。
失念していたけれど、口さがない噂を立てられるのは御免だ。そうなってしまっては杣庄と八女先輩に面目が立たない。
「ちょっと待ってろ」
窓際のゆったりめのソファーに座るよう顎をしゃくると、自分は携帯電話でどこかへ電話をかけ始めた。
「俺だ。悪ィけど麻雀はパスだ。……そう言うなって。埋め合わせはするから」
誘いを蹴るとは思わなかった。一体、杣庄は何を考えてるの?
通話を終えた杣庄は、携帯電話をベッドの上へ放り投げると「さて」と私に向き直った。ソファーは私の向かいにもう1つあり、そこへ深く腰掛ける。
「お前、なに考えてんだ?」
「……杣庄には関係ない」
「質問を変えるぞ。宴会の時、馬渕サンに何を吹き込まれた?」
「……」
「言えないってか。……なぁ、馬渕サンに何言われたか知んねーけど、自分を大事にしろよ」
「大事にってどういうこと?」
「どうも様子がおかしいと思ったら、とことん思い詰めてやがるな。
あのな、2人きりでゆっくり過ごしたいってんなら、俺だって席を外すさ。だが焦りだけが先走ってるなら話は別だ」
「別に焦ってなんかない」
「嘘だね。馬渕サンに発破かけられて、馬鹿正直に野郎の部屋までやって来たんだろ? 健気で泣けるぜ」
「ひどい。そんな言い方って……」
むくれる私に、杣庄は厳しい眼光を放ったまま私を見下ろす。
「本当にしたいのかよ、お前」
「え?」
「今から伊神さんとヤりたいのかって訊いてる」
杣庄は、わざと私が怯むであろう言葉を選んでいる。威圧感を与えることで、考えを改めるように仕向けたいのだろう。
『伊神さんと』とは、相手が伊神さんでいいのか? という念押しだ。
「腹を括った女を甘く見ていると痛い目に遭うわよ」
私は馬渕先輩に押し付けられた避妊具を杣庄の顔前に突きつけた。彼は、ソレと私を交互に見比べると、やがて大仰に溜息をついた。
「……透子……。頼むよ、俺を困らせないでくれ」
「そっちが勝手に困ってるだけでしょ。まだ保護者面するつもり? 私だって大人よ。杣庄には八女先輩がいる。そもそも私のナイト役は終わってるわ」
「保護者面だ? 黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがる。8ヶ月もの間、伊神さんから逃げ回ってたのはどこのどいつだ。
公認の仲になった途端、その日の内に……しかも3時間と経たずに『一緒に寝ましょうね』ってか。馬鹿かお前」
「馬鹿って何よ? これでも湯船に浸かりながら必死に考え抜いて覚悟決めてきたんだから!」
「で? 考えた結果がこれってか? 馬鹿透子。男の立場から言わせて貰うがな、お前のその判断、正直白けるぞ」
「し、白ける? ドン引きってこと?」
「あぁ、ドン引きだね。百年の恋も一気に冷める」
そうなの!? そんなもんなの!?
でも、男の杣庄が言うのだから、そういうものかもしれない。
私はつい数時間前まで伊神さんを避けてた立場にいた。8ヶ月間もの月日をかけて。
それなのに、恋人になった途端、手の平を返したかのように、こともあろうに私は伊神さんを……。
「……今……冷静に考えてみた。――ら、……杣庄の言う通り、私……何か色々間違ってたみたい……かも」
「かも? かもじゃねぇよ。いいか、落ち着け。で、ちゃんと聞け。
お前と伊神さんは一度恋人寸前の関係になった。納得のいかない左遷で離れ離れになり、いざ帰国してみれば、ぎこちない関係が長い期間続くわけだ。
やっと会話が出来た。それだけでも十分進歩なのに、交際まで始まった。
常識的に考えてみろ。普通はそこまでだ。その日に一夜を共にするって、盛った獣じゃあるまいし。
まぁお前が俺を振り切って『どうしても』って言うなら止めやしねぇよ。俺だったら余韻に浸っていたいから、楽しみはまだ先に取っておくけどな」
まさかここにきて杣庄の観念を聞いてしまうとは。羞恥を覚え、かすかに顔を背ける私。
「俺にとってお前は同僚で友人で、疑似だが恋人でもあったよな? なんつーか、家族みてぇなもんなんだ。妹のような存在なんだよ。
お前が大事だから言ってるんだ。例え相手が伊神さんでも――いや、伊神さんだからこそ、タイミングを間違えて欲しくない。
きっとこの先またチャンスが巡ってくる。その時でもいいじゃねぇか。何もこんな社員がうじゃうじゃいるところじゃなくてもよ」
「杣庄……」
杣庄がそこまで私を心配してくれていたなんて。そうとも知らず、頭ごなしに噛み付いたりして、私ってば悪いことしちゃったな……。
「……うん、そうだよね。よくよく考えてみれば、今日の私ってば伊神さんと8ヶ月振りに喋ったんだった。
今日の今日でってのは、貞淑な女子にあるまじき軽率さだったよ。杣庄、教えてくれてありがとね」
祖母に育てられ、唄ちゃんという年頃の妹を持つ杣庄だからこそ、貞操観念はしっかりしているんだなと感心した。
男女の友情、ここに在り。心に温かいものが込み上げてきて嬉しくなる。
私は――ううん。私と伊神さんは、自分たちに合ったペースで付き合いを続けていけばいいんだ。
そう思ったら、心がふわりと軽くなって行くのが分かった。
馬渕先輩に報告するのは気が進まないけど、何より私と伊神さん、双方の気持ちを大事にしないといけないもんね。
「あのね杣庄。杣庄のお陰で私、すっごく気が楽に……」
「透子」
今までで一番真剣な声音だった。
私はギョッとして、「何?」とかすれた声で尋ねる。
急にどうしたって言うの? 今までいい流れだったじゃない。
「……杣庄?」
今まで以上に険しい顔を作った杣庄は私を見据えた。
彼はもどかしそうだった。温泉で洗髪し、乾いて間もない己の髪に、ぐしゃりと手を突っ込む。
「――不破犬君だ」
吐き出されたその言葉は、思いもよらなかった人物名で。私は芸もなく、杣庄の言葉をただ鸚鵡返すだけ。
「不破犬君がどうしたの?」
「俺にはあいつがこのまま大人しく引き下がるとはどうしても思えねぇんだ。それこそお前に夜這いを仕掛けてもおかしくないよな」
「はぁ!? ちょっと、杣庄」
何を言い出すかと思えば! 不破犬君が私に夜這いって。
「本気で言ってる?」
「逆に、お前がその考えに至らないのがどうかしてる。夜這いは、お前と伊神さんの仲を避く最短の手段だろ」
「飛躍し過ぎだってば!」
どうしても赤面するのを押さえきれなかった。
それは単にそのシチュエーションを想像してしまったからか、或いは不破犬君を侮辱されたことで血が上ったのか――。そこまでは分かりかねたけど。
杣庄の方は至って冷静だ。『可能性が1%でもあるなら肝に命じておくべきだ』。そんな心の内すら読めてしまうほどに。
「あいつがどれほどお前に惚れてるか知ってるよな」
「そんなの……」
黙した私を見下ろしながら、杣庄は告げる。
今の私がうまく考えられるように配慮してくれているのか、話すスピードはやけに遅い。
「不破に抱かれる気がないなら、伊神さんと結ばれるべきなのかもな。手遅れになる前に」
私はまじまじと杣庄の顔を見つめる。それこそ穴が開いてもおかしくないほどの凝視で。
彼は本気で言ってるのだろうか。だって、夜這いだなんて。
それって仮定の話でしょ?
そう言い返したかったのに。笑い飛ばしたかったのに。
私の咽喉は、つばを飲み込めば痛みを感じるほどカラカラに乾き切り、結局何も告げられない。
*
「お前は伊神さんを選んだんだ。不破の恋慕を断ち切ってやれよ」
「そうかもね。でも杣庄の言ってることは支離滅裂だよ。勇気を振り絞って伊神さんを夜這いしに来たのに、そこには杣庄がいて。
『はしたない』と言って言語道断、私の考えを捻じ伏せた。でもそこに納得できる余地があったから、私は考えを改めて、諦めたのよ?
それなのに、不破犬君が夜這いを仕掛けてくる可能性があるから、伊神さんと寝ればいいって? なにそれ」
「……」
「そんなこと急に言われて、私がもっかいあんなハシタナイ真似できると思う? 出来るわけないじゃん!
あれは馬渕先輩にけしかけられた勢いがあったからこそできた据え膳だったのに、今更どの面下げて、伊神さんの胸に飛び込めばいいのよっ……」
「透子」
「もう出来ない。私には出来ない……! あのドアを叩くのに必要だった勇気はもう、ひとかけらも残ってないの、私には!」
ドアを指差す私の指が震えている。そして目には涙。その慟哭は、杣庄の心を突き刺すナイフのようなもの。
彼が悪くないことは、私が一番よく知っている。にも関わらず彼に八つ当たりをしてしまうのは、答えが欲しいからだ。
自分の中で答えが出せていないから。いつまでも逃げ続ける卑怯者だからこそ、私は杣庄にぶつけているのだ。自分への苛立ちを、杣庄に。
どうしてこう、感情が昂ってしまうのか。何もこんな時に泣かなくてもいいのに。私の馬鹿。
その指を杣庄が握る。手先を包み込み、手首を引っ張った。気付いた時、私は杣庄の胸の中にいた。
頭上から降って来る彼の言葉を、私は俯きながら聞いていた。彼の声は優しいながらも苦痛めいた感情が滲んでいた。
「こんなことが起こるたびに思うんだ。俺たちが本当に恋人同士だったらよかったのにって。
そうすればお前は伊神さんとあいつの狭間で苦しむこともなかっただろ? お前がそうやって悲しむ姿を見るのはつらいんだ」
それでも杣庄は八女先輩を選んだ。八女先輩が好きだから。私が杣庄を選ばなかったのも、杣庄以上に気になる異性がいたからで。
だからこの抱擁は、友としてのハグ。そこには打算も浮気も何もない。純然たる友情しかない。それを2人ともちゃんと知っている。
「俺にしか吐けない悩みだろ? 俺が全力で受け止めてやる。……そんなことしか出来なくてごめんな、透子」
「……ごめん、杣庄……。ごめんね、私……ごめっ……」
同性に打ち明けられない悩みもある。異性の方が頼れる場合だってある。
かつて八女先輩が伊神さんを頼ったように。私は杣庄を頼るしかないのだ。
恋に似た友情。でも恋ではない。決して。
*
――なぁ、いい加減泣きやんでくれよ。
――グスッ。こうなったら長いってこと、グスッ。知ってるでしょ、止まらないのよ。
――これ見付かったら俺フラれるなー。
――その時は私も伊神さんに見放されるだろうし、グスッ。私が付き合ってあげるわよ。フラれた者同士、仲良くしましょうね。うふ。ぐす。
――そんな責任の取り方されてもなぁ。
――付き合い始めたばかりなのに、もう別れる話をしているなんて。縁起でもない。私たちって、どれだけ脆い恋をしているのかしら?
――こら待て。聞き捨てならねぇ。俺を一緒くたにするな。これはお前の心の弱さの問題だ。
愚図る子供をあやすように、杣庄は小声で私を窘める。
早鐘のように脈打っていた鼓動が幾分か落ち着いてきたのを自覚したところで、私は「ありがとう」と告げた。もう大丈夫。
「お前のお守りは唄より大変だぜ」
苦々しい顔で私を見たかと思えば、小憎たらしい存在であろう私の頭を掻き乱す杣庄の手。
「さっきお風呂に入ったばかりなのに。ひどい」
「ひどいのはどっちだ。ちょっとは反省でもしたらどうだ?」
「してるよ、ちゃんとしてる。杣庄には頭が上がらない。本当に」
心の底から言ったつもりが、「どうだかな」と溜息を吐かれる。やだなぁ、正真正銘、本心からの言葉なのに。ほんとのホントなのに。
「で、決めたのか?」
うぐ。
「き、……めた」
「決めた? 本当に?」
目を丸くして、杣庄は食い入るように尋ね返してきた。私は後に戻れないと腹を括って、今度こそキッパリ告げる。
「~~決めた。決めたったら決めた!」
「……そうか。ならいい」
その微笑は、安堵と侘びしさが入り混じっているかのように思えた。と同時に、究極の保護者愛をも匂わせた。
コンコンとノック音。誰かが508号室のドアを叩いていた。私と杣庄は距離を取り、離れる。
ドアを開けに向かった杣庄は、3歩目のところで足を止めた。鍵が勝手に開いたからだ。
「誰だ?」
緊張気味に誰何すると、「オレだよ」と言いながら訪問者が姿を現した。伊神さんだった。
「伊神さん」
「ノックしてから気付いた。杣庄君は麻雀に出掛けているから、中には誰もいなかったな、って。でも結局、行かなかったんだ?」
「いや、今から行きます。透子が来たんで、ちょっと話してたんですよ」
「来てたんだね、透子ちゃん。あれ? 目が赤くない? どうしたの? 泣いてたの?」
疑問文のオンパレード。いや、それよりも。ヤバい、その答えを用意してなかった!
さっきの杣庄との会話が蘇る。これ見付かったら俺フラれるなー。そん時は私も伊神さんに見放されるだろうし私が付き合ってあげるわよ。
えぇっ、ちょっと待った! 私、明日から杣庄の彼女ー!?
……などと1人で勝手に脳内暴走していたら、杣庄が「俺が泣かせました」と説明している。
「杣庄君が? 嘘でしょう?」
衝撃の告白に目を瞬かせ、伊神さんは私と杣庄を交互に見やった。
「こいつが余りにも生意気なことを言うんで、怪談で怖がらせてやろうと思って。皿が足りなくなったところで落ちました」
「番町皿屋敷とは、またベタな話をしたもんだね」
それで納得しちゃうんですか、伊神さん。でも本当のことは言えないし。またしても杣庄に助けられた形になってしまった。
「それじゃあ伊神さん。俺、麻雀して来ます。そのまま向こうで寝落ちするかもしれないんで、帰って来ないと思って下さい」
「徹マンするの?」
「あのメンツなんで。それじゃあ」
有無を言わさず出て行く杣庄。
でも私は知ってる。杣庄は、麻雀の誘いを一度は蹴ってしまっている。それでも私のために退散したに違いない。
それにしても……。
ちょっと強引じゃない、杣庄!?
■ 杣庄 ■
「いけねーいけねー。話を盛り過ぎたか?」
泣いていた理由を『怪談で怖がらせたから』。出て行く理由を『徹マンするから』。
自分でも苦しい言い訳だったかなと思わないでもない。でもこういうのは川が流れるように言ってのけるに限るのだ。
それに、透子さえ黙っていればバレない嘘だ。何の問題もない。
「それより……」
俺はこれからどうすればいい?
A:彼女のところへ行く
B:同僚のところへ行く
一晩過ごすことになるのだからAが魅力的だ。だが忘れることなかれ。同室者はあの馬渕女史だ。御免蒙る。
ここは「わりぃ、やっぱ俺も麻雀混ぜてくれ」と頭を下げるのが妥当だろう。
行き先も決まったところで、俺は階下を目指した。
■ 透子 ■
今にも張り裂けんばかりの心臓。だって、目の前には見慣れない浴衣姿の伊神さん。
こうして向かい合ってみると、やっぱり背が高いなぁと思う。確か180オーバーだったはず。私とは20cmも違うから。
そんな感想を抱いたのも随分久し振りだ。2人きりで出掛けるようになった岐阜店勤務以来かもしれない。
今、伊神さんは何を考えているんだろう?
同室の杣庄が「部屋には戻らない」と宣告し、代わりに私がいる。
その私を部屋に突き返す? それとも引き留めてくれる? それはつまり……。
「透子ちゃん」
「は……はいっ」
入浴OK。歯磨きOK。ブツ(!)OK。心の準備……OK! なるようになれ。私の手は覚悟を決めたことで拳型になっていた。
「ラウンジに行かないかい?」
「へ……っ? ラウンジですか?」
思いきり肩透かしを食らい、困惑するしかなかった。でも追い返されたわけではない。
寧ろホテルのラウンジに誘ってくれるなんて珍しいし、ロマンチックの範囲内。これは嬉しい展開かも……。
「23時か。透子ちゃんには迷惑な時間かもしれな……」
「行きます! ラウンジ行きたいです! 行きましょう、今すぐ!」
伊神さんの気が変わらない内に即答する。その勢いに気圧されたのか、「あ……あぁ」と伊神さん。食い気味すぎたかしら。
「このホテル、施設内はどこでも浴衣での移動がOKだけど、どうする? 服に着替えるかい?」
ここで私の脳内に悪魔が登場する。「まさか伊神さんが浴衣姿の私によろめくとは思えないけど、まぁ精々頑張ってみたら?」
天使も「そうね、私の浴衣姿じゃ、色仕掛けにもなりようがないけど、ここで私服に着替えるのもねぇ……」と進言。
「浴衣で行きます」
「じゃあ、これを羽織って」
ワードロープ内に畳み置かれていた朱色の茶羽織を掴むと、伊神さんは私の背後に回り、丁寧に着せてくれた。
「ありがとう」
流石に前の紐は自分で結ぶことにする。伊神さん自身も黒色の茶羽織を纏うと、必要なものだけ持ち、「行こうか」と促してくれる。
私たちは下駄を履き、部屋の電気を消し、805号室のドアをゆっくり閉めた。
1階のロビーでパンフレットを見る。館内にラウンジは4店舗あるらしく、内装も和洋に分かれ、それぞれ異なる雰囲気を演出しているのが好ましかった。
「透子ちゃんはどこがいい?」と聞かれ、私的に一番お洒落、かつオトナっぽいラウンジを選んでみせた。
目的のラウンジはB1階。ついさっき寄った大浴場がある階だ。……驚いた、全く気が付かなかった。
エレベータで階下まで降りると、すぐ左手には大浴場への道。だから私たちは右に折れる。すると、客が談笑できるスペースがあり、ソファーが並んでいた。
客は10人にも満たなかったけれど、その中に千早さんと不破犬君の姿が視界に入り、思わず立ち止まりかけた。
2人は2人掛けソファーに並ぶように腰掛け、何やら会話をしている。なまじ他の客の声が大きいので、とてもじゃない、内容など聞けようはずもなかった。
そう言えば、不破犬君には事情を説明するとあれだけ豪語しておきながら、まだだったことを思い出す。
もしかして千早さんは不破犬君に、私と伊神さんの件を話しているのだろうか。神妙な顔付きだから、そうかもしれない。
「透子ちゃん?」
知らず知らずの内に、伊神さんとの歩幅が開いていた。私は駆け足で伊神さんの横に並ぶ。
*
「いらっしゃいませ」と迎え入れられた店内からはピアノ曲が流れていた。スワロフスキーのシャンデリアは控え目な光彩を放っている。
密談や逢瀬に相応しい、予想と希望通りの空間がそこにあった。
広すぎず、狭すぎず。煩すぎず、静かすぎず。座り心地のよさそうなデザイナーズソファー。テーブル。浴衣でも浮かない点は心底ありがたい。
仄暗さが束の間の安らぎと癒しを提供してくれるそこは、文句なしのシチュエーションだった。
私たちはバーテンから近い席に通され、カクテルとリキュールを各々オーダーする。
「少々お待ち下さい」と慇懃に下がるスタッフを見送った後、「お洒落な店だね。……オレ、浮いてそうだな」と伊神さんはすっかり恐縮気味だ。
確かに、いかにもデキるオトナが利用していそうな場だ。でも伊神さんほどこの空間に馴染んでいる男性はいないと思うんだけどな。
「伊神さんは馴染んでますよ。むしろ、私が似合わない」
背伸びし過ぎた感が否めず、私は心情を素直に漏らした。
「髪、切ったんだね。短いのも似合ってるよ」
「本当? イメチェンしてみたかったから、そう言って貰えるとスゴく嬉しい……」
(杣庄、杣庄! ねぇ、これってかなりいい雰囲気じゃない?)
私は心の中で快哉を叫ぶ。やがて飲み物が運ばれ、2人で「乾杯」とグラスを合わせた。
「記念の夜に」
「……はい、記念の夜に……」
もう駄目。お酒を飲む前から酔ってしまいそう。伊神さんが素敵すぎて。
*
伊神さんは『部屋に戻りなよ』とは言わなかった。かと言って805号室に誘うわけでもない。私が後をついて行っても、彼は何も言わなかった。
「部屋に行ってもいい?」と聞けば、「……来るかい?」と静かに尋ねる伊神さん。まるで私の出方を待っているみたいだった。
私の気持ちを尊重してくれているんだと思えば嬉しい気がしたし、一方で、強引に出てくれてもいいのにな……と思ったりもした。
部屋に入り、茶羽織を脱いでクローゼットに掛け直した。交替で再度歯を磨く。ベッドの方へ戻ると、伊神さんはモーニングコールの設定を済ませていた。
「7時半にセットしたけど、早いかな?」
「ううん、大丈夫」
「そう言えば、怪談で怯えていたんだっけ? オレが隣りにいるから、安心してお休み」
伊神さんは窓側のベッド。そのすぐ隣りに、杣庄が使うはずだったベッドが並んでいる。既にベッドに仰向けになっている伊神さんに問い掛けた。
「その『隣り』って、どれだけ離れた距離をいうの? 伊神さんの隣りにあるベッドのこと? それとも……」
伊神さんの足元から四つん這い姿でにじり寄る。ぎしりと音を立てたスプリング。2人で乗れば当然音だって出るわよねと私の冷静な部分が分析している。
「伊神さんの腕の中?」
「透子ちゃ……」
私は伊神さんの両肩付近に手をついた。伊神さんの腰を跨ぐように、私は両膝をつける。羞恥心は最高潮。
夜這い、という言葉が浮かび、それでこの人が手に入るのなら、と私は心に従う。
伊神さんは「やめなよ」という顔をしていた。どうしてそんな顔をするのか、私には分からない。
覆い被さるような体勢の私と伊神さんの顔は、今や至近距離。長いこと見つめ続け、私は1つ、2つとキスを落とす。
伊神さんは抵抗しない。だから調子に乗ってしまった。
「透子ちゃ……し、舌……」と喘ぐ伊神さんの声に、私は我に返る。
「もしかして初めてですか?」と素で驚けば、答えたくないのか沈黙を貫く伊神さん。
こんなことってあるのかしら。あぁ、でももう止まらない――。
唇、頬、鎖骨、耳、胸板。愛撫を繰り返し、貪欲なまでに伊神さんを求める。
それなのに――どうして私を求めてくれないの? そんな寂しさが不満だった。私を求めない。なのに拒まない。
「……イヤですか?」
「ごめん、そうじゃないんだ」
「私に魅力が足りませんか? 私は伊神さんと……」
言い終わらない内に、伊神さんは男性特有の力を使って、私と身体の位置を変えた。
今度は私が仰向けにされ、それを見下ろす伊神さん。両肩を掴んでベッドに押し留められる。真剣な双眸に、私は思わず口を噤む。
「透子ちゃんを好きな気持ちは変わらないし、キスも嬉しい。でもオレには欠点があって……つまり……その……病気で……」
「病気?」
虚を突かれ、問い返してしまった。伊神さんは溜息をつき、呼吸を整えた後、おもむろに顔を近付け、キスをしてくれた。
思えば、これが伊神さんから初めて貰ったキスだった。私はその嬉しさに胸をどきどきさせる。
「伊神さん……」
とろけるような心地のよさ。でもちょっと待って。確かに嬉しいけど、今の私はそんなことでは誤魔化されない。
「病気って一体何の……。……あ……」
分かった……かもしれない。男性機能が働かない病気だ。でもどうして……。
「……昔……女性から強引に迫られたことがあって。その時の心理的ダメージから……」
な……な……な……。何なの? 何それ……?
「その女……赦せない……! 伊神さん何されたの!?」
「それは……いや、言えないよ」
「言えないって……! 大切なことなのに」
「透子ちゃん」
珍しく、遮るような口調だった。私はびくっと身体を強張らせる。
伊神さんは身体を起こすと、ベッドの端に腰掛けた。私はその背中を見守るしかなかった。
「情けないよね。幻滅させたならごめん。謝るよ。
オレはこんな身体だし、まともな恋愛も出来やしない。だから女性を避けてたし、透子ちゃんとも距離を置いてた。
透子ちゃんを抱けたらいいなと思う。だって透子ちゃん、ビックリするほど積極的で、可愛くて色っぽいから。
そんな愛しい女性を前にしてもやっぱり抱けないなんて、オレは透子ちゃんを好きになる資格なんてな……」
「あるよ! あるったらある! 私が治してあげる。伊神さんを私色に染めてみせる。だからそんな悲しいこと絶対言わないで!」
背後から伊神さんを抱き締める。薄い浴衣越しに伝わる、伊神さんの温もりが心地いい。
「2人で……乗り越えてこ……?」
伊神さんは、ゆっくり振り返る。どちらからともなくキスをして、そのままベッドへ倒れ込む。
「透子ちゃんに抱かれたい」
笑いを含んだ声で耳元で囁く伊神さん。それには「任せて下さい」と答え、私は伊神さんの浴衣に手を掛けると肩からはだけさせた。
私がキスの雨を降らせている間、伊神さんは私の髪を優しく撫でていた。
「髪以外も触ってくれたら嬉しい……な」
「……おいで、透子ちゃん」
伊神さんは優しいから。私を抱き締める強さも、触れる力加減も、ぎこちないなりに丁寧だった。
だから私は「もっと」と言わざるを得ない。もっと求めて。もっと愛して。もっと、もっと。
飽くことなく、私は貴方を求める。
■ 犬君 ■
ゲーセンのカーレース。あくどい手口に翻弄されたがゆえに負けが込み、憎き平塚に冷えたビールを奢る羽目になってしまった不破犬君――。
即ち僕は、憤懣やるかたない思いを胸に抱えたまま部屋に戻ると、着替え一式及び携帯電話を引っ掴み大浴場へ向かった。
打たせ湯にて肩と首をこれでもかというくらい打たれたのちサウナに居座り、冷水突入後は42度の露天風呂に浸かった。
火照った身体に微風が心地よくて、ほんの少しだけ、煮え滾っていた頭が冷えたような気がする。
ここで風邪をひいてしまっては元も子もないので、しっかり水滴を拭うと脱衣場へ戻った。
浴衣に着替え、洗濯物をビニール袋に纏めて突っ込む。タオルで髪を乱雑に乾かしながら、風呂上がりには魅力的なフルーツ牛乳を買い求め、煽った。
「ぷはぁ!」
この一時がたまらない。
……たまらない? 馬鹿な。失恋直後だと言うのに。大好きな女性が恋敵の手に落ちたと言うのに。そんな呑気な感想を抱けるなんて。
(寧ろ、今の心境こそ『たまらない』よ……!)
一体、伊神さんなんかのどこがいいんだか。そりゃあ見てくれはいいし、性格は優しいと評判だ。仕事も丁寧だと太鼓判を押されているし……。
(……あれ……否定できる要素がない……ぞ?)
いや、だが、伊神さんは香港へ透子さん1人を残して飛び立ったじゃないか。ソマ先輩なんかに任せたまま!
透子さんが一番大変な時に、伊神さんは身勝手な行動を取った。
都築が提示した無茶な異動に従うどころか、都築の元で働き、連日デートを迫られ心細かったであろう透子さんと連絡すら取らず、あまつさえ放ったらかし。
(そんな男のどこがいいんだよ……!)
せっかく静まった感情だったのに、考えれば考えるほど煮え繰り返る。こんな憤りを抱えたままでは、およそ社内旅行など楽しめたものではない。
(いっそ夜這いでもしてやろうか。伊神さん、奥手そうだし。既成事実さえ作ってしまえば、こんな脆そうな関係、簡単に壊せるだろうよ!)
しかしそれも虚しい。欲しいのは透子さんの心。今の僕にそれが掴めるとは到底思えない。
「失恋かぁ……」
(透子さんは僕を振り返ることなく、伊神さんを選んだんだ)
その事実がじわじわと蝕み始める。サウナで汗という汗、水分という水分を出し切ったなずなのに、涙が出そうな気がして溜息を漏らす。
「次の女、次の女」と9割9分9厘ヤケクソで呟いてみても、今の段階ではそれも無理そうだ。
携帯電話が鳴り、荷物を探って取り出す。その画面に連なる人物の名前を見て、息が詰まりかける。弟の貴君(あてき)だった。
これはよくない類の電話だ。出るか、出ざるべきか。数秒の葛藤が何分にも感じられるほど、その決断を下すのに勇気が要った。
躊躇いがちに通話ボタンを押し、「何の用だ」と尋ねれば、弟は「あの縁談話がまとまりそうだ」と告げる。
「あの話か……。縁談なんかくそくらえだ。何度も『断る』と言ったはずだぞ」
「そんなこと言っていいのかな。のちのち困った展開になって、泣きを見ることになるよ?」
「あの人の意志に従わなければ、それで済むことだ!」
「もう遅いかも。兄貴が駄々を捏ねている間に準備は整いつつあってね。兄貴が頑なに拒むものだから、とうとう俺にも縁談が回ってきた」
「承諾したのか!?」
「……これは優しい弟からの忠告。兄貴は蚊帳の外にいたいんだろうけど、寧ろ渦中にいないと。その内、阻止すらできなくなっちゃうよ?」
「お前はそれでいいのか? 率先して操り人形になりたがるなんて馬鹿げてる! もっと自分を大事にしろ」
「兄貴こそ。あの人に恩を返すどころか、仇を返してるよな? 許せないよ」
「いいから聞け、貴君!」
一方的に電話は切られる。思わず舌打ちが突いて出た。
失恋の件で既に『これ以上の不幸はない』と打ちひしがれていたのに、とうとう厄介ごとまで勃発してしまった。
今日は厄日だ。きっと三隣亡に違いない。
2011.01.26~2011.05.26
2019.12.19 改稿
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