-唯一無二-

-唯一無二-

いつか死んだら。



いつか死んだら。



もし俺が、前触れも無く二度と動かない肉塊になったら。

俺の体は小さいから棺は軽くて小さいだろう。
棺に共に入れられるものは真っ白な菊の花と一輪の赤い薔薇が良い。
あと、スケッチブックと俺は筆圧が無いから2Bから濃い順に鉛筆と消しゴム。
それから大事にしてた誕生日や土産に貰ったもんとか。
それから忘れないで。
俺の顔がどんなに醜くても隠さず、皆に見てもらって。
最後だからきっと笑ってみせるから。

俺の体は小さいから焼却も楽だろう。
きっと一時間くらいで終わるんじゃないかな。
その間、一時間の間中なんて贅沢言わないから。
煙になった俺と空を見上げてて。
その日は晴れてたら良いな。

俺の体は小さいから骨壷に殆ど入るだろう。
入りきらなかったのはお願いです。
海に帰してやって下さい。
それから・・・もし良かったらあなたの傍に置いて下さい。
気味が悪いなら別に無理は言わないから。
死んでもやっぱ君が心配です。
だから、お守り代りに傍に居て下さい。
気が向いたら。

そして『お葬式』には誰が来るだろう。
俺の存在はどれくらい大きかっただろう。
泣く人は居るかな。
笑う人は居るかな。
ただ、俺が言った言葉、優しいものだけで良いから忘れないで下さい。
そして『思い出』にしてしまって下さい。

俺は君の中で、隣で、後ろで前で。
生きていて、生きていくから。

俺という思い出は何色なんだろう。

せめてそれが優しさだったら良いな。
美しくはないだろう。
醜くも無いかもしれない。
薄れゆくだろう。
ただ、優しさが残れば良いな。

淡い色になっていつか透明になっても。
優しささえ君に残ったら良い。
俺は、満足だ。




なんて、君に言ったら怒るかな?
泣くかな?

だけど俺は祈ってんだ。
ずっと。


俺が居なくても笑ってる君を。
俺が居なくても行き易い世界を。

俺を忘れないでなんて言わないから。


どうか君、幸せに。

いつか死んでもずっと、祈ってるから。


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