読書の部屋からこんにちは!

読書の部屋からこんにちは!

2013.01.31
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カテゴリ: 今月読んだ本
ある日本語学校で、留学生に文学の読解を教えている私。
先日、教材に辻仁成の「代筆屋」がありました。
手紙を書くのを苦手とする人たちのために、作家の卵である筆者が手紙の代筆をして、依頼人の心を伝える手伝いをするといった内容の小説です。
実際に読み始める前に、知識の活性化という名目で、学生たちの手紙に関する体験や知識などを話させる段階を踏むのですが、そこで、世代のズレというか断絶というかを、笑っちゃうほど感じたのでした。


手紙をもらってうれしかった私自身の記憶といえば、外国暮らしの頃、日本の家族や友達からもらうエアメールのうれしかったこと。繰り返し繰り返し、大切に読んだものでした。
私が今日本語を教える相手は、まさに異国に暮らす外人たち。彼らにとっての手紙ってどんなもの?
ところが、彼らの口からは手紙のての字も出ず(ま、手紙を書く子はいないだろうとは、ある程度は予想していたけど)出るであろうと思っていたメールだの電話だのということばすら出ず、私の知らないことばの通信手段ばかりが出てきたのでした。ここに書きたいけど、なにしろ知識がないので聞いたそばから忘れてしまって書けません。


パソコンを使えば顔を見ながら通話することもできるし、高い電話代を気にしながらタイムラグのある受話器にしがみつくこともない。いつだってお母さんや友達と長話できるんなら、全然さみしくないねと言ったら、「なんで寂しいのかわからない」というポカンとした顔をされてしまいました。
それで、私は質問を変えて、「手紙を書いたことがあるの?もらったことは?」と聞いたら、それは経験があるとのこと。そして、「もし大怪我をして入院、ベッドから起きられないとき、何が欲しい?」と聞いたら、やっぱり手紙がいちばんうれしいそうです。


しかし、外国暮らししながらそんなに気軽にちゃっちゃと自国と連絡がとれるなんて、まったく時代も変わったもんだなあ。しみじみ異国情緒や孤独を感じ、自国の今に思いをはせる、そんな感覚はもうないのかなあと、思わず教室の学生たちの顔を見渡しました。
おばちゃん先生のそんな感慨に気づきもしないで、若い彼らは「先生は次に何を言うのかな」って授業に臨む前向きな、いい表情をしていました。


それでは今月読んだ本です。


1.「舟を編む」 美浦しをん  ★★★★★

2.「七夜物語」上下 川上弘美  ★★★★☆

3.「アフターダーク」 村上春樹  ★★★★★

4.「年下の男の子」 五十嵐貴久  ★★★★☆

5.「ウェディングベル」 五十嵐貴久  ★★★☆☆

6.「代筆屋」 辻仁成  ★★★☆☆

7.「邪魔」上下 奥田英朗  ★★★★★

8.「サヨナライツカ」 辻仁成  ★★☆☆☆

9.「ナミヤ雑貨店の奇蹟」 東野圭吾  ★★★★★


それぞれの感想は、 こちらをどうぞ。






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Last updated  2013.01.31 23:25:14
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