架空世界の放浪者ランドの「冒険日記」

「反撃のぷう」 ぷう著




「ぐっ!、くぅ!」、油断していた。
「欲望の塔」の第七ステージが終わり、ふっと一息ついたところを強襲されたのだ。
後方より、いきなり二撃だ。

魔法師の防御は薄い。
持ちこたえられたのはクリティカルを免れたのと、反射的なHPポーション使用のおかげだ。

どちらかというと孤独を好み、これまでずっとソロでやってきた。
一人で自らを鍛えてきたが、「これでいいのだろうか」と不安になることもあった。
しかし、どうやら研鑚は無駄ではなかった。

振り返る。光輝に包まれるそのシルエットは・・・聖騎士!!
驚いた。普段は優しく、頼もしい騎士様、守護の呪文だって何度も頂いたことがある。
だが、そのエフェクトの輝きが今は脅威だ。

身を翻し、激しく叩きつけられる剣戟をかいくぐる。距離をとって体制を立て直す。
たたらを踏んだ聖騎士は、こちらに向き直る。

「なんとか反撃を!」

気を込める。
ピキンッ!パキッ!ビキキキキッ!!
魔法師の気力の集中は、周囲に引き裂かれる様な異音を伴う。それに引き続き、周囲全ての物音が消えうせる。
ピーンと張り詰め、緊張に満ちた静寂の中、ただ呪文の詠唱のみが響く。

「天と地と炎の聖霊よ、火神デネルの名において命ず。天空と大地の怒り、爆炎と化してここにあれ。」

呪文の照準を定める。相手に重なって、ルーン文字が見える。
唱えるべき呪文名がルビーの輝きを放ちつつ浮かび上がってくるのだ。
「メ・テ・オ」 と。

「古の契約により、今、その義務をはたせ。我、祖の光背に浴し、汝の名を呼ばん・・・・」

膨大な自然界エネルギーが凝集され、一点に集中する。それを魔力で押さえ込む。
あとは、それを解き放つのみ。

キュバッ!!!猛烈な爆裂による炎が目前を紅蓮に染める。ビシャアッ!衝撃波がそれに続く。
天と地の相克により灼熱と化した岩塊が召喚され、頭上から猛スピードで相手を直撃するのだ。

「メテオ」は、火炎属性系の遠距離魔法では上から2位に位置する。
最上級ではないが、このレベル帯で、これ以上の攻撃力を持つものはない。
Lv3まで鍛え昂めた呪文に、さらに7次武器イレムスタッフによる増幅が加わるのだ。
それをゼロ距離射撃で放つ。

聖騎士の防御エフェクトがゆがむ、ミキミキと軋む。

二発、三発、しかし聖騎士は倒れない。
防御しているとはいえ、灼熱地獄と直撃衝突の衝撃は相当なダメージのはずだ。
だがさすがに護りの戦士、距離を詰め、攻撃し続けてくる。

私のレベルでは、相手から身をかわしつつの攻撃は出来ない。どうしても足を止める事になる。
相手が魔物であれば、のそのそと近づくため攻撃の間が取れる。
しかし走り寄る相手にはその時間がない。
つまりは体力勝負となる。魔法師にはきつい戦いだ。

がぶ飲み状態のHPポーションは、見る見る減ってゆく。
10000・・9000・・ あっという間に6000近くまで落ちる。

反撃は本当に効いているのか、このまま続けるのか・・・
ジリっと焦りが高まる。

さらに、この状況に便乗者が現れた。
また聖騎士?いや戦士か!

戦士の攻撃は聖騎士を上回る威力を持つはずだ。
さすがにたまらず、攻撃が2重となる前に逃げを打つ。

「追ってくるか?」

しばらく走る。幸い、相手は追撃をあきらめたようだ。何とか振り切った。ラッキーだった。
こちらの反撃は、それなりに相応のダメージがあったのだろうか。

今回初めて対人戦闘を経験した。キビしい。
でもエルタキン、ネトランの騎士団はこれを戦い抜き、勝利を手にしているのだ。

いつか、いつか、私もきっと。


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