奇妙な惑星   ~Peculiar Planet~

奇妙な惑星 ~Peculiar Planet~

June 24, 2011
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カテゴリ: 楽しき日々(mumbling)





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えーっと、なんだったっけ。

思いつくのは、この言葉だけだった。

えーっと、なんだったっけ。

えーっと、なんだったっけ。



とりあえず、エンジンをかけなおしてみるけれど

うんともすんとも言わない。



えーっと、なんだったっけ。



そうだ、ハザードランプ(非常点滅灯)だ。

ハザードスイッチを入れてみるけれど

車の中は、しんと静まり返ったままだった。



ハザードスイッチが入らないってどういうこと?



周りはまだ渋滞で完全にストップしたままで

誰も、私の車のエンジンが止まっていることに

気づいていないようだった。



ハザードスイッチが入らない時は

ボンネットを開ける?

そういえば、発炎筒なんてのも教習所で習ったな。

でも、大渋滞の中でのろしをあげているところを想像すると

どうも、違うような気がする。



えーっと、なんだったっけ。



電話だ。

電話をするのは保険会社?

それとも車メーカーのロードサイドサービス?

財布を出して、電話番号の書かれたカードを取り出してみるけれど

断片的な思考が頭の中で空回りして

何から始めればよいのかわからない。



とりあえず、オットに電話をしてみた。



両側の車線の車が、ゆっくり動き始める。

後ろの車が、狂ったようにクラクションを鳴らし続けるので

まわれ、まわれと、手で合図をしてみるけれど

ハザードランプがついていないので、相手には通じていないようだ。



手短に事情を話して、オットにばかな質問をしてみる。



「こういう時にはどこに電話するんだったっけ?」



「普通は、911(日本でいうと110番のこと)じゃない?」



オットに言われて初めて

ああ、そういえば警察というものがあったな。と思い出す。



オットは、真ん中車線にいるのなら

決して外に出てはいけない。と言った。

ボンネットは開けられない。



電話を切って深呼吸をする。

ナビは使えなくなっているので

iPadを取り出し、地図を開く。



それからゆっくり、911を押してみた。

「911. What is your emergency?

 (こちら911です。緊急事態は何ですか?)」



おおー、テレビで言ってる通りの文句だー! と感動。



私は、車のエンジンが止まったことを伝えて

地図を見ながら、オペレーターに場所を説明する。



「ベルトパークウェイの東方面で

 コニーアイランド行きの地下鉄の線路の数メートル手前です。

 前方50メートルに高速の入り口が見えます。

 番号はわからないけれど、

 さっき、7番の出口をすぎたからたぶん8番。

 最寄りの通りは、東14丁目。」



私ってば、あんがい冷静じゃない。なんて思ったりする。



後ろからは、クラクションの大合唱で

オペレーターの声がよく聞きとれないので

もう片方の耳をふさぐ。



「すぐに、誰かが行くから、そこで待っているのよ。」



911オペーレーターとの電話を切ると

携帯の画面が、緊急モードになっていた。



ほうほう。これが携帯の緊急モードというものか

車で誘拐された時なんかは

これで、私の位置が追跡できたりするんだろうか?

なんてことを考えたりする。



やがて両側の車線の車の速度がだんだん早くなり

私の車が動かないことに気づかない車が

後ろから追突してくるんじゃないかと

ただただ、ヒヤヒヤする。



と、その時、

かっちっかっちっ… という音が聞こえて来た。

ハザードランプがついたのだった。



Hちゃんに電話をすると

「あ、もうついた~?」

と、聞きなれたかわいい声が聞こえて

少しだけ、涙がでそうになった。



事情を話しながら

そういえば、警察が来たら運転免許証って言われるかな?

と、思ってバッグに手を突っ込むと財布がない。



平気なフリをしている声がうわずってくるのがわかる。



バッグの中をかき回す。

財布は見つからない。



ああ、どうしよう。

どうすればいいんだっけ

と、思いつつ

ふと、自分の膝に目をやると

財布がのっかっているのが見える。

そういえば、さっき出したんだっけ。



Hちゃんとの電話を切ったけれど

パトカーが来る様子がないので

オットにもう一度電話をして

初めて911に電話しちゃったよー、なんて言ってみたり

携帯で、目の前の光景の写真を撮ってみたりしてみる。



IMAG0367
2011 Tabitha All rights reserved.



ハザードランプがついているとはいえ、

やっぱり後ろが心配で心配で

何度も振り向いたり、時計を見たりする。



もう30分くらいたったような気がするけれど

5、6分しかたっていない。



ただただそわそわと、

あちらを見たり、こちらを見たり、

まとまらない頭で、色々考えようとしたり

そのうち、もう喉が渇いて、

待ちきれなくなったころに



きらきらと警光灯をつけたレッカー車が

すぐ目の前の高速の入り口から

ゆっくりと入ってくるのが見えた。




つづく






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Last updated  July 10, 2011 07:34:48 PM
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