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何事もなく家に着きました。玄関を開けると台所から「おかえり」と母の声が聞こえました。その後私は山登りして汗や土で汚れたTシャツを脱ぎ捨てパジャマに着替えました。そして台所に行き冷蔵庫から冷えたポカリを丸々一本飲み干しました。「今日どこへ行ってたの?」と母が私に心配していた様子で尋ねました。私は「冒険してた」と軽くあしらいました。母は不思議そうな顔をしましたが納得したようでした。そのまま自分の部屋に帰ろうとしたら「裏山には行ってないわよね?あそこに行くと怖い人に連れ去られてしまうから」と母が言いました。そんな子供騙しが大学生に通じるかよ、と思いましたが母は至って真剣な顔でそれを話すのです。真剣というよりも何というか生気がないというか死んだ魚の目をしていました。私は実の母を不気味に感じてしまい結局今日のことは話せず仕舞いに終わってしまいました。その日の深夜1時ごろ電気を消して目を瞑り眠りにつこうとしていました。身体は疲れているはずなのに日中に起きたことと母のあの時の顔が忘れられず全然眠れませんでした。部屋には時計の秒針の音だけが鳴っています。「眠れないからなんかするか」と思い私は電気をつけました。時計はもう2時をまわっていました。起きたはいいもののなにをしようかと思い少し考え昼に山や川へ行っても何も昔の事を思い出せなかったため子供の頃の写真を見て何か思い出してみようと思い押し入れを開けてしばらく探していると奥の方から茶色っぽい家族アルバムのようなものを見つけました。中を開くとそこには他愛のないような写真ばかりありました。面白い写真無いかなーとペラペラめくっていくと私がけん玉をしている写真がありました。けん玉を持っていい笑顔でカメラに向かってピースしています。ふとその背景を見ると既視感のある小さな男の子が見切れています。けん玉の持ち手の部分が見えるのでけん玉をしているようで薄汚れた長袖を着ていました。あ、あの子だ。イマジナリーフレンドの特徴と合致しました。でも何で今の自分に見えているのだろうと不思議に思いました。普通イマジナリーフレンドというものは成長していくに連れて見えなくなっているものなのです。しかもけん玉も持っているし、何だかよく分かりませんでした。そのけん玉を見て昼間小屋で見たけん玉を思い出しました。持ち手しか見えていませんがまんまこの写真のけん玉です。その瞬間私は今までのことが全部繋がりました。そもそもイマジナリーフレンドなんてのは存在しなかったのです。母さんを含む周りの大人は彼が村八分のため見えていたのにも関わらずその子をいないものとして扱っていたのだと思います。彼は記憶の限りけん玉を大切にしていました。そんな宝物を置いて彼はどこへ行ってしまったのでしょう。
2023.05.28
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これは私が体験した話です。今となっては上京して都会の方の大学に通っていますが私の実家は「ド」がつくほどの大田舎で、私はそんな場所育ちました。そんな大田舎では同年代の子供が居ませんでした。ところでイマジナリーフレンドという言葉を知っていますか?イマジナリーフレンドとは子供の時だけ見える空想上のお友達のことです。友達がいなかった少年時代の頃の私はこのイマジナリーフレンドを創造していたそうです。他人事のような口調ですが記憶が曖昧でというかそもそも物心がつく前でほとんど覚えていません。でもかすかに記憶の中にいるのです。と言ってもその記憶は断片的でいつもけん玉をしていたこと、彼は夏冬関係なく同じ服でずっと薄汚れた長袖でそれが印象的だったこと、それぐらいのことしか覚えていません。母も見えない何かと私がけん玉をしていたことを見かけていたそうです。そんななか小・中・高校生となりどんどん歳を重ねていきその子自体も自然消滅していきました。高校生の頃には寮生活で部活も忙しく正月以外実家へ帰ることができませんでしたが、大学生になると余裕が生まれて久しぶりに夏に帰省しました。大学一年の夏、何もすることがなく部屋でだらだら過ごしているとふとイマジナリーフレンドのことを思い出しました。ほとんど彼のことを忘れていたので彼のことをで思い出せることがないかと思い小学生以来のウキウキな気持ちで玄関を開けました。玄関を開けると夏のもわぁとした生暖かいような空気が身を包みました。ニーニーゼミの鳴き声が聞こえて都会で暮らしていた私にとっては新鮮なものでした。その日は久しぶりの景色を堪能しました。あの子と遊んだであろう裏山に行ってみたり川の中を覗いてみたりしてみました。思い出すことはできなませんでしたが何年も自然に触れていなかったためいい気分転換になりました。裏山の麓の少し開けた場所で休憩をしていて家から持ってきた生ぬるくなったポカリスエットを飲みながらふと山に登ってみようかなと思いつきました。我ながらナイスアイディアだと思いそのままの格好で山登りを始めました。山登りと言っても標高200mぐらいのなだらかな山で元運動部の私にはお茶の子さいさいでした。多分山の中腹あたりだと思います。手入れされていない木々が生い茂っている中、小さな小屋?のようなものを見つけました。その瞬間私は村八分にされた人の家だと勘付きました。子供の頃からこの近くには両親から差別されている人がいるということを聞かされていだからです。でもその家は音沙汰がなくその小屋は木製で遠くから見てもわかるような大きな蜘蛛の巣が張っていました。私はその時ご機嫌だったためその小屋に近づいていきました。中からは生活音などは聞こえずに誰もいないようでした。2割の恐怖と8割の好奇心で小屋に入ってみようと思いました。立派な不法侵入です。でもそんなこと頭に無かった私はドアに手をかけました。「おじゃまします」とか細い声でドアを開けました。何年も前から使われていないようなドアからはキィーと音が鳴りました。ドアからひょこっと顔を出すとやはり人はいませんでした。その代わりにテーブルの上にはホコリを相当被っている何かを見つけました。そのシルエットでだいたい予想はついていました。ホコリを払ってみると予想通りけん玉でした。何でこんなところにけん玉が?と私は思いました。途端にキィ〜キィ〜と床が軋む音が聞こえます。その音で私は我に帰りました。その瞬間好奇心が恐怖へと変わりました。急いでその小屋を出ました。もうすっかり夕方になっていてヒグラシが鳴いています。「早く帰らないと」そう思い半袖には少し寒いぐらいの夕暮れ時の山道を下っていきました。
2023.05.28
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