忘れられないお客さん・4


もちろん、楽しいお客さんばかりではなかった。
一度だけ、私も客に泣かされたことがある。
相手は中学生。
彼女ははじめ、金髪でやってきた。
とうぜん、普通の中学校じゃ認められない髪の毛である。
で、「 茶色に染めて 」と言ったわけだ。彼女は。
そこで、私は希望の色を聞いて、その通りに染めてあげた。
そしたら。
彼女が帰って1時間後。
彼女の母親から電話が来た。
「中学生の娘を茶髪にするなんてどういう神経してるんですか!?あんなアタマじゃ、この子、学校に行けません!」
ってあんた、アンタの娘は初め、金髪で来たし、その茶色もアンタの娘の希望色だよ、ということを丁寧に申し上げた。
しかし、おばさんは「いいえ!娘はおたくに勝手に染められたって言ってます!」オイオイ。そりゃないだろ。このガキ!嘘は泥棒の始まりだぞ!である。
しかし、おばさんは自分の娘を露ほども疑っていない様子。
めーーーーっちゃむかついたけれど、「じゃぁ、お手数ですけど、もう一度お越しいただけますか?希望通り 真っ黒 に染め直させていただきます」と言った。
しかし、ババァ、調子に乗って「責任者を出せ!」とか始まったので、いい加減切れた私、「私が担当者です、 私が責任者 なんです!」と怒鳴った。
30分後、その子はお姉さんに連れられてやってきた。
自分が嘘をついているのを彼女はわかっているので、一人では来づらかったのだろう。まぁ、それをとやかく言うほど私も子供ではない。
「お母さんの言うとおりに染めちゃっていいのね」とだけ言って、普段だったら3年に1本も使わないようなすっごい黒の薬で染めてあげました。
一応、トラブルなので、先生の報告したんだけど、悔しく悔しく、このときばかりは私、裏でオイオイと泣きました。
まぁ、先生には「オマエのせいじゃないんだからオマエが泣くこともないだろ。」とは言われましたが・・・。悔しかったんだよ~。ただただ・・・。


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