練習会・1


 美容院では必ず、練習会というものがある。
NYの店なんかはもう、全員技術者なのでそんなものはなかったけれど、日本の頃は必ずあった。

2件目の店の練習会は一番ハードであった。
でも、だからこそ、私は美容師になれたんだとも思う。
私に教えてくれていたのはたいてい、先生とTさんであった。
しかし、どうも飲み込みが悪い。
私は後輩2人と共に習うのだが、そろいも揃って覚えが悪い。
先生などは途中でさじを投げるほどだった。
「もういい!理屈は考えるな!こうなるからこう!これでいいんだ!」
言葉の暴力も今考えるとすごかった。
「やめちまえ~!」
しかし私は言い返す「やめませんっ!!」
「オマエなんかに払う給料はねぇ!オマエこそ授業料払え!」(しかしこれは実はすっごく最もな意見なのである。何もできない、掃除と洗濯しかできないやつにはそれなりの給料しかやれない。)
「才能ないんだよ!オマエら~!!」
「美容師になるなんて無理だ!辞めろ辞めろ~!!」
へっぴり腰でカットする私達のお尻にTさんの蹴りが入る。(ほんとに)
すかさず私達は訴える。「先生!セクハラです!」(もちろんTさんの目の前で)
まぁ、仲が良いからできたことなんだけど、仲はよくても練習会の時はみんな本当に真剣だった。
週に2日。
営業が終わってから、有線を切ってシー--ンとした店内で怒号が響くのである。
その緊迫した雰囲気に耐えられず、泣き出す子も多かった。

ブローの練習の時である。
何回やってもうまくできない。
先生は怒った。
「来週合格しなかったら何かペナルティだ!オマエどうする!PEENIE!?」
私「坊主になりますっ!!」間髪いれずに答える私。
実は卑怯ながらも、私は内心「私はきっと坊主にしても似合うに違いない」という計算があった。
しかし、一緒に怒られていた後輩達は泣き出した。
よっぽど坊主がいやだったんだろう・・・・。
それでも怒られている中では一番上の私が「坊主になる」とまで言っているのに、彼女たちがそれよりも軽い刑で済まされるわけがない。
かわいそうに・・・。
まぁ、次の週にはみんな無事に合格して坊主は免れたのだけど・・・。坊主もいっぺんしてみたかったのに・・・と思うこすずるい私なのであった。


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