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Ryu-chan6708

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2007.10.16
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カテゴリ: 歴史

職場砂漠

1990 年頃だと思うが、俺は アメリカの産業教育大会 の視察団に参加して、アメリカに行ったことがある。
  当時は、ご承知のように、日本の製造業はアメリカを制覇していたね。
  視察団が参加した大会では、アメリカ企業のいろいろな成功例を分科会で発表していた。
  俺はその中で特に気になっていた カリフォルニアのフリモント工場の生産性向上の発表していた分科会 で話を聞く機会を得た。

A氏 フリモント工場 というのは、 GMとトヨタの合弁の乗用車工場 だったね。
 たしか、車はGMで売るが、 工場経営など製造上の管理はトヨタ生産方式で行うという工場 だったね。
豊田達郎 氏が社長になる。
 GMとしては、当時、有名になりつつあった トヨタ生産方式のノウハウ を知りたいところだったんだろうね。

:そうだね。
 GMの工場としてはあまり生産性がよくなく、フリモント工場を閉鎖していた。
 合弁会社で再開されたとき、当然、レイオフされていた前の労働者が優先的に採用された。
 したがって、他のホンダ、ニッサンと違い、有名な 米国自動車労組の労働者 が中心となった。 
 この工場は 画期的な生産性向上を果たす ことになったね。
1986 年頃には、GM時代と車種が違うのだが、 ほとんど同じ設備と労働者で、5割近い生産性向上を達成した としてしたということで有名になるね。

A氏 :君がアメリカで聞いたというのは、その成功発表分科会かね。

:そうだね。
 成功したことは、すでに日本でも有名になっていたので、俺は アメリカ人の生の声 を聞きたかったのでその分科会を選んだね。
 同時通訳はつかなかったが、すでに内容的には知っているし、説明に使うプロジェクターなどで活字で分かるので、英語は大体は分かった。
 発表は白人のインテリが中心に行うから、英語もオーソドックスだしね。
 ところが、通訳なしで問題が起きた。

A氏 :なんだい?

:現場の職長が一人、発表したんだが、 この英語がまったく分からない。
  色は真っ黒だから、 黒人訛りの英語 なのだろうね。
  ところが、その英語の中で、はっきり意味の分かった英語があった。
 それは

I was a number in GM. Now I am an employe e

  という言葉だね。
  訳すと、「 俺はGM時代は『数』だった。今は俺は従業員(人間)だ
ということかね。

A氏 :GM時代は「 職場砂漠 」だったんだね。

:この「 職場砂漠 」の本に、ある派遣社員の例として、職場に行くと他の正社員の机には 個人の名前を書いた名札が机にある が、 派遣社員の机には、派遣を意味する「H」という名札だ というのがある。
 派遣職員はその職場では「 生身の個人 」ではないんだね。
 「 」なんだね。
 だから、 砂漠化 する。

A氏 :ところで、分科会の英語の方はどうなったの?

:幸い、カセットテープに録音していたので、ホテルに帰って同時通訳の人に聞いてもらい英文にしてもらうように依頼した。
 ところが、 この同時通訳の人は、黒人訛りに悩まされ、3回もテープを聞き返した という。
 そしてようやく英文にしてくれたよ。

A氏 :この工場の職場はどのように変わったのかね。

:これはもう有名な話だね。
 今まで専門の技術スタッフが決めた作業方法を守るだけだった現場に自主的な「 カイゼン 」が始まる。
  要するに、職場に働く人の 頭と手足が一体 になる。
 食堂は、 幹部職員と一般従業員の区別が廃止 され、大きな丸いテーブルで社長も一般従業員と同じテーブルで食べる。
GM時代に出勤率が75%台だったというのが、95%台になる

A氏 :「 職場砂漠 」でなくなったというわけだね。
 今朝の新聞でも、営業員の パワーハラスメントによる自殺がはじめて労災認定 になったことを報じているね。

:今、日本の職場はアメリカ型になっているね。
 フリモント工場は逆だったのにね。





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Last updated  2007.10.16 10:21:52
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