グ氏と料理バサミ君!



頑張り屋さんのグ氏のよき相棒は料理バサミ君です。

グ氏がお嫁に来るとき親友がお祝いにくれたものです。

それから長い間いっしょにがんばってきました。

魚や肉の固い骨も料理バサミ君がバリバリ。

昆布や野菜も切れます。

グ氏が仕事を始めてからも短時間で美味しい料理を作るのを助けてくれています。

アル朝グ氏が味噌汁のおだしに使う昆布を切ろうとして料理はさみ君を探しました。

あれ。おかしい。どこにもない。台所の引き出しを全部開けてみましたがありません。

グ氏はその朝はやでの仕事だったので気にはなったけど帰ってから探そうと出かけることにしました。

グ氏が起きる2時間前料理バサミ君は家を出て行ったのです。

グ氏とけんかをしたわけではありません。

前々から料理バサミ君は外の世界が見たかったのです。

いくら台所でグ氏と楽しく暮らしていてももう家の中は飽き飽きしていました。

明るい光の差す窓の外がどうなっているのか気になって気になって仕方がなかったのです。

ついにその気持ちが抑えられなくて家出を決行しました。

家出と言っても何日も出かけることはグ氏が困るので料理バサミ君は夜には帰ってくるつもりでした。

台所の窓を苦労して開けて前々から用意していたロープを窓からたらします。

ロープを伝って庭に下ります。

庭にはグ氏が手入れしている花々がきれいに咲き乱れています。

うわあ、何てきれいなんだ。料理バサミ君は目をつぶって花のにおいをかいで見ました。

いい匂い。蜂やチョウチョも飛んでいます。

チョウチョが飛んできて不思議そうに見ています。

あなたはだあれ?

チョウチョが聞いてきました。

僕は料理バサミだよ。

固いものもどんどん切れるよ。

チョウチョが言いました。

じゃあそこの石を切れる?

切れるさあ。料理バサミ君はそばにあった石を切ろうとしました。

でも切れません。

帰ってアゴが痛くなりました。

僕にも切れないものがあったんだ。料理バサミ君は思いました。

庭をどんどん歩いていきました。

前に大きな家がありました。

大きな家と言っても小さい料理バサミ君から見たらそう見えただけで本当はそんなに大きくはありません。

そこから犬が顔を出しています。

グ氏の愛犬です。柴犬のコロです。

不思議そうにこっちを見ています。

はさみをカチカチ鳴らして「こんにちわ」と挨拶したらビックリして飛びのきました。

料理バサミ君はコロと握手したかったのですがコロは自分の小屋に入ってしまって出て来そうもありません。

遠くからこっちを見ています。

仕方ないので手を振ってそのまま歩きました。

グ氏家の門が見えてきました。

この外がどうなっているのか想像も付きません。

門から出て行こうとしてものすごい勢いで走ってきたものがありました。

怖くて思わず目をつぶりました。

頭の上が暗くなって何かが通り過ぎました。

通り過ぎていったのは車でした。

ほっとするのもつかの間叉次、叉次と次々にやってきます。

やっと車が途切れて料理バサミ君は早足で道路をわたりました。

振り返ると後ろにグ氏の家が見えます。

グ氏の家ってこんな感じだったんだ。

ずっと台所にしかいなかったので家を見たのは初めてでした。

渡ったところは公園でした。

まだ朝が早いので子供はいません。

犬を連れたお年寄りがベンチで休憩していました。

お年よりは居眠りをしているようで目をつぶっています。

犬も眠そうにして座っていましたが料理バサミを見るといきなりほえました。

「わん。わん」その大きな声にビックリした料理バサミ君は思わず小走りに犬の前を通り過ぎました。

「あ~怖かった」

料理バサミ君は木陰で一休み。

木には小鳥たちが沢山いて空気もきれいで美味しい。

爽やかな森の朝です。

森の中を元気よく歩く料理バサミ君に小鳥たちが近づいてきました。

「あなたはだあれ?」

「僕は料理バサミだよ」

はさみの先をちょきちょきしてご挨拶。

「どこから来たの?」

別の小鳥が聞きました。

料理バサミ君は来たほうを指差して「僕グ氏の家にいたんだ。ほら、あそこだよ」

叉別の小鳥が言いました。

「ああ、あそこのきれいなお姉さんが時々えさをくれるの。優しい人だね」

料理バサミ君は言いました。

「そうだよ、優しくて料理が上手でとても素敵な人だよ」

話しているうちにいつの間にかお日様が頭のてっぺんに来ていました。

暖かくてとてもいい日です。

小鳥が森の木のみを分けてくれました。

「ありがとう」。

おなかがすいてきたので料理バサミ君は自分のはさみで小さく切ってお昼ごはんにしました

おなかが一杯になった料理バサミ君はなんだか眠たくなりました。

朝から沢山歩いていて疲れていました。

木の根っこの穴にもぐってしばらく休むことにしました。

何時間寝たでしょう?

料理バサミ君が目覚めるとお日様はすっかり西に傾いていてもうすぐ日が暮れそうです。

「大変、もうグ氏が帰ってくる。帰らなくちゃ」

料理バサミ君は一生懸命走りました。

汗をかきながら一生懸命に走りました。

公園の前に出てくるとグ氏がちょうど仕事から車に乗って帰ってきたところでした。

猛スピードで突っ込んでくる車をよけながらようやく道路を渡りました。

門の前で力尽きて倒れてしまいました。

そこに足音がしました。

グ氏が郵便受けを見に来たのでしょう。

料理バサミ君を見つけて「あらどうしてこんなところにいるの?」

グ氏は不思議そうに料理バサミ君を取り上げました。

暖かいグ氏の手に包まれて料理バサミ君は元気になって目を覚ましました。

「あ、グ氏、お帰りなさい。早く晩御飯をしようよ」

「はい、はい」

グ氏は夕刊と料理バサミ君を持って台所に急ぎました。

今日の夕飯はどんなおかずでしょう?










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