私のお気に入り!昇る朝日、光る川面、泳ぐ鳥     

私のお気に入り!昇る朝日、光る川面、泳ぐ鳥     

持っているもののおごり



耳が不自由で手話だけの受講者の方もいらっしゃって
あちこちで手話が花盛りです。

講義のあと、体験で
目隠しと耳栓ヘッドホンで、盲ろう者の体験をします。

通訳介護者と買い物にいったり、
食事をしたりする場面設定です。

二人一組で、私が先に盲ろう者役です。

何も聞こえないし、見えません。
介護者には、指示書が渡されます。
それを盲ろう者・私・に伝えて、
私が何か行動を起こすという
手順です。

お互いに、
コミュニケーション手段の取り決めを事前にします。
私は、手の平に「ひらがな」で書いて伝えてもらうことに。

はじまり。
介護者にトントンとされて、手を取られて
なにやら、手に書かれます。

なんのことやら、さっぱりわかりません。
手の中で、もじょもじょ指が走ります。
わからない。
なんだ!このごにょごにょは、
日本語でしょ。ひらがなでしょ。

わからない。
何度も何度も頭をふり、
手のひらに集中します。
あっ、わかった「お」だ。
つぎは、「に」
つぎは、「ぎ」

これでだいたい「おにぎり」
ということがわかった。

コンビニでおにぎりを買うのかな?
と想像力が働きました。

次が、また、わからない。
なんども、なんども、頭をふります。
いやになります。
介護者に申し訳ない気持ちになります。
そして、コミュニケーションなど
もうどうでもよくなります。
心を閉じたくなります。

でも、終わりません。続きます。
そしてやっと「な」
次のごにょごにょは 「ん」だ。
次は 「こ」「う」
「う」「め」
ああ、うめのおにぎりのことか。と
その次はもうなんだか、
わからないことがずーと続きました。

その後、
「こ」「ん」「ぶ」

その後が、どうも値段であることに
気がつきました。
その後もかなりてこずりました
「からしめんたいこ」
それから「しーちきんまよねーず」
値段。

やっと 終了。

次は、見えない聞こえないまま
紙に今、教えてもらってことを
書きだす作業 。

わたしは、最初の梅はすっかり
ぬけおち、めんたいこと
こんぶ しーちきんだけ書いて、
値段は、わからずじまい。

あれだけ長い時間格闘したのに、
食べたいおにぎりが買えない。

つらい結果となりました。

次は私が介護者で、盲ろう者に伝える番。
紙には、ケーキの種類が4種と、値段が書いてありました。

そうか、ケーキとその値段で、盲ろう者に
好きな買い物をしてもらうんだ。

いちごしょーとけーき 480えん
ちょこれーとけーき  420えん
もんぶらん      390えん
ふるーつたると    530えん

今度は値段を 数字で書いたので
相手もスムーズに理解できたようで
全問正解となりました。

でも、介護者役も相手に何度も何度も
相手に頭をふられ、困惑する姿を見ていると
もう投げ出したくなってしまいます。

お互い、どちらも大変な忍耐が要求されます。

見えて聞こえる状態に戻った時に、
なんて私は、傲慢なんだろうと気がつきました。

目を開ければ一瞬にして、すべて状況が把握できて
自分で好きなように判断して、選択できる。

後ろからの声も、たくさんの音や声も
選択して、自分の必要な情報を聞きわける。

他のグループは、お店で飲み物を選択するものや、
自動販売機で、お茶を選択するものもありました。

私の設定。「コンビニでおにぎりの種類と値段を
理解して、好きなものを買う」。

こんな普通の当たり前のことに、困惑する。
見えていたら、たくさんの中から、選択することができる。
聞こえていたら、介助者に聞いて、選べる。

手に書いてもらう時、「ひらがなで」とお願いしたけれど、
カタカナや、数字が入った方が理解しやすい。

でも、見えるという経験のない人にとって、
文字をイメージすることは難しいそうです。

もっと困難の中で、日々の暮らしを重ねている人が
たくさんいる。

あぁ、日々の私はなんて恵まれているのだろう。
たくさんの当たり前を
当たり前に もっと! もっと! と思っている。

くだらないことに、不機嫌になったりする。

自分のおごりにご対面です。




© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: