★人生はホラー映画★ただいま労災で休職中★投稿すると抹殺人生★人生は運が全て★

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2013.05.15
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 先日、ある有料サイトに登録してみました。電子書籍として売るところです。
 ま、いいとこ社食代くらいにかならないでしょうけど。(一食200円です)
 とにかく、参加することに意義があるのよね。とクーベルタン男爵が言った。
 長編はあっちにして、楽天ブログは短編専用にしようっと。
 スマホで小説アプリができるのを見つけたのですが、スマホがない(笑)
 ミステリーと軽いSFファンタジー、どっちがいいでしょうね。

 どうしたら、ブログのアクセス数が増やせるかしらん。
 一章づつアップするのがいいでしょうか。アメーバブログだと
 文字数制限がゆるいのか、短編が一コマに入るのですけど。ここは不可デス。

 おやきがマイブームですが、関西だと大阪の阪急にしか売っていないのよね。
 手作り、かなりきつい。餅もち感は蒸すことで出るらしい。めんどくさい(笑)
 冷凍を通販で買ってもいいけど、送料を入れるとそれなりのお値段に。
 朝食にいいんですけど。もうすぐなくなります。グスン。

「パピヨンパピヨン」3

  (二)
「今日はまっすぐお帰りになりますか?」
 熊川は営業所の前の、駐車場まで成田杏子を案内して質問した。今日はとにかく車のない彼女を社有車で送ることにした。
 社有車を使うことも別料金だが、企業からはとるが個人にはサービスだ。田村との話し合いで本格的なストーカー対策は明日からということになった。
 熊川はストーカーを牽制するために、制服のまま出てきた。気合いは十分だ。当の杏子はシワのよったバッグを抱き締めて、空を見上げていた。くるくると一回転している。「ごめんなさい。ちょっと落ち着かなかっただけ。家に帰る前にちょとだけ寄りたいところがあるんだけど、いいですか?」
「いいですよ、契約は今日からということになっていますが、お客さまの望むとおりにしますよ」
 彼は彫刻のような顔をほころばせた。田村に依頼者の機嫌を損ねないようにと、出掛ける前に散々クギを刺された。
 そして会社の信用のためにたとえ盾になってでも、守りぬけと言われた。労災はちゃんとかけてあるからなと、いい加減なことを言った。
 いくら仕事でも死ぬのはまだ早い。本当にストーカーが刃物を振り回して襲いかかってきたら、まず依頼者を連れて逃げ一一〇番に報せるつもりだ。頑張りすぎると早死にする。警察手帳と手錠と拳銃のない仕事は恐いものなのだ。
「じゃあ、まず美容室に行ってください」
 熊川の初の身辺警護の依頼人、成田杏子は理解できない。   

 杏子が美容院に入っている間、熊川は車のなかから、美容室や外を観察していた。さすがに美容院にずかずかと分け入って、血走った目つきで嗅ぎ回ることはできない。
 外にはストーカーらしい男などいなかった。五年間務めた警視庁をやめて、警備保障会社に入社して二年になる。
 しかし警護課ではなく専門外だったので、入社後警視庁で警護一筋だった保安部長に、あらゆる警護の術をたたき込まれた。
 そして個人の身辺警護は初めてだった。つまり実践経験がないということになる。
「あの女、なんの心境の変化なんだ。何ヵ月も美容院なんかいってないくせに」
 バカらしくなってきたが、仕事は仕事だ。
 ストーカーを突き止めたら、彼女は多額の費用を払う。もちろん保証金はキャッシュで三十万円も預かっている。今日はまだ一日目だ。
 それから二時間半後、美容室で今流行の髪型にし、髪を流行色に染めた杏子が出てきた。
 熊川は目を見張った。髪が茶髪になっていたことではない。ファンデーションを塗りあのばさばさの眉を整え、マスカラで睫毛を見事にあげた杏子に仰天したのだ。アイラインもきれいにひかれている。
 プロのメイクアップアーティストが選んだのであろうルージュもテレビで宣伝していた流行色だ。
 そういえば外の料金表にはカット、ブローなどの定番に加えてメイク、着付けもあった。もちろん顔と髪以外は何も変わらず、首の下には着古したトレーナーがある。
 熊川は後部座席のドアを開けた。

「次はコトブキデパートに行ってちょうだい」
 杏子はきつねにつままれたような顔をしている熊川など目に入らぬように、平然と車に乗り込んだ。くたびれたジーパンと変身した頭部を何度も見比べた。
「デパートですか? そんな人込みの中にでるんですか? ストーカーが恐くないですか?」
「だから身辺警護にあなたを雇ったんでしょ。あなたがいればどこに行っても大丈夫よね」
「は、はぁ」
 人込みの中での警護は選挙のときに経験があった。落選しそうな先生が演説をしている間、暴徒がでてきて危害を加えないように警護するのである。
 駅前の改札口前で、出勤中のサラリーマンに迷惑がられながら、握手をしてゆくときも不審者が近づかないように目を光らせていた。 しかしデパートというのはボディガードが歩くと、客の気分をそこなう恐れがあった。できればおとなしく自宅にいてくれればいいのにと思った。
 そうすればすぐ外で張りついているだけで警護がしやすい。思ったよりも今回はやりにくい仕事になりそうだ。
 首から下はさえないままなのに、まるでプリティウーマンにでもなったように颯爽としている。
 これではボディガードではなくただの運転手ではないかと、熊川は腹をたてていた。それでも彼女は我感ぜずと、助手席にすまして座わる。
 その瞬間にファンデーションの芳香が鼻孔に飛び込んできた。くすぐったい。熊川は鼻をこすった。
 杏子は長くない足を軽く組んだ。
「シートベルトをして下さい」
 動揺を隠すように、外に視線を固定させたまま言った。ちらっと見ると依頼人はベルトをしたあと、口をへの字に結んでいる。妙な女だ。


 コトブキデパートの駐車場に止め、二人は店内に入っていった。今度はついて行くしかあるまい。
 監視カメラがあるわけでないし、ボディガードが彼の仕事なのだから。ケビン・コスナーのようにかっこよくとはいかないが、彼はSPのように彼女の真横についた。
 本当は前を歩きたいところだが、警察官のような制服で、百貨店内をのしのしと歩くわけにはいかない。それに彼女は、デパートの警備員にたのむほどのVIPでもない。
 引き受けたのはうちだ。最初から最後まで任務は果たす。この律儀さは警察で身についたのだろうか。
 身辺警護の鉄則は半径四メートル以内に犯人をいれないことだ。侵入された時点でボディガードの敗北となる。その前に不審者をとらえ防衛するのだ。これが保安部長直伝のボディガード術と危機管理のノウハウだった。つまり犯罪を未然に防ぐ危機管理が身辺警護ということになる。
 熊川は制服のままでやってきたことを悔やんでいた。目立ちすぎだ。このほうがストーカーへの威圧になると思ったが、少なくとも気まぐれな成田杏子の警護には不向きだった。 しかし、彼女の運転手ぐらいならこのほうがいいと判断したが、完全に判断ミスだった。先の仕事では普段着だった。総会屋に狙われているという常務の護衛時はスーツであった。
 彼女が美容室へ行くことも仰天したが、まさかトレーナー姿のさえない女が、デパートに行くと言い出すとは思わなかったのだ。
 しかもストーカーを恐れ、大金をだしてボディガードを依頼してきたほどだ。大勢の人間のいるところを恐れていると思い込んでいた。
 熊川が思っていたほど、杏子は弱い人間ではなかった。 彼女は熊川が推理するよりも豪気で目立ちたがりやだったのだ。
「これと、これ、試着したいの。あ、熊川さんはそこにいてね」
 杏子はくたびれたトレーナー姿だということを無自覚なのか、すました顔でブティックに入りこみ次々と服を取り出す。店員が応対する間など与えず、さっさと気に入ったものを持って試着室に飛び込んだ。
 そして一着身に着けるたびに、外に出て鏡に姿を映した。女の買物は恐ろしい勢いで行なわれた。 
 さっそうと試着室から出てきた彼女は、カットしたばかりの髪とプロの手になるメイクの出来がいいのか、まるでモデルのように輝いていた。
 あまり高くない身長にさえないプロポーションは相変わらずだが、あのトレーナー姿をずっと見てきたあとでは、まるで魔法にかかったように見違えて見えた。
「どう、熊川さん?」
「は、はあ、わたしはこういったことは苦手ですから」
 そういって視線を移し、周囲を警戒しているというふうを装った。その仕事ゆえに誉めることもけなすこともできない。
 依頼人に不快感を与えてはいけない。田村にたたかれた肩が、重圧を感じた。下手に誉めても、とってつけたように聞こえてはいけないのだ。女を誉めるという単純な行為が、熊川には東京大学に現役で合格するのと同じくらい難しく思えた。
「つまんない人ね」
 杏子は変身した鏡の中の自分の姿を、足の先からスライドさせるように、眺め回している。そして満足してはまた試着し、恍惚の目でもって観察したあと、また試着室に戻った。
 それを五回繰り返して、二着買ったあとまた次のブティックに入った。最初の店で買った陳列してあったハイヒールの靴をはいている。まだトレーナー姿なので、少し違和感があった。
 そこでやることはまた試着である。熊川はストーカー男の監視をしながら、ときどき変身した杏子を眺めた。
 次々と服を交え、自らの着せ替えを楽しんでいる。まるで初めてデパートにやってきた子供だ。





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最終更新日  2013.05.15 21:25:38
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