ひたすら本を読む少年の小説コミュニティ

2005.06.11
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単純に言えば、それは、そこに物(もしくは何か)が在る、ということだ。

「それ」が生まれる前には「それ」は無いし、「それ」が死ぬ(もしくは消える)と、「それ」は無くなる。

生と死の間には過程が在り、生と死の前後に存在は無い。

確かに、物質としては存在するだろう。

だが、そこから生み出される思考や、想像は無から生み出される有だ。

その法則は宇宙に存在するが、法則を組み立てる思考は物質には出来ない。

それが、物質と生物の差だ。

学校の授業で習うだろうが、物質の最小は原子ではない。

呼称で呼ぶのなら原子であるが、それより先はまだ無限に在る。

そしてこの宇宙は膨張宇宙。

無限に広がり続けるが、限度と言う境界線も確かに持つ。

例えるなら、ゴム風船だ。

パラレルワールドに存在するもう一人の自分。

現実に存在するのだ。

この宇宙のビックバンと同じ時間のビックバンの宇宙が存在すれば、在り得ることだ。

そうすると「存在」というものがあやふやになってくる。

この時間より先に位置するパラレルワールドが存在するのならば、我々の行動はもう決まっていることになってしまう。

それは運命と呼べるのかもしれない。

決まっている時間なのだ。

もし、10分先のパラレルワールドがあるのならば、我々は10分先のパラレルワールドと同じ行動を10分後にする。

自分は「ひとつ」だけだと思っていることが、3次元世界に「時間」が存在することによって、無限の自分が存在してしまう。

四次元とは、それがすべて含まれた世界。

無数に無限が広がる。

無数と言ったら数えられてしまうから、無限が無限に同時に存在すること。

そう。

そこを理解できたら、この世界で僕らが存在する意味を考える事自体が、意味の無いことだと分かる。

ただ、僕は今「例外」を見ている。

極めて稀な「例外」だ。


「君は普通の人間じゃない。」

ジョンレノンは口を開く。

「君ほど存在を理解しているものはいないのに、それはとても悲しいことじゃないか。」

彼は話し続ける。

「存在理由が無くなった。
どういう意味か分かるかい。」

僕は溜息を思い切り吐いた。

僕は口を開かない。

彼も口を開かない。

沈黙がこの部屋を支配する。

僕の機関としての穴から入り込み、体全体をなめ尽くすかのように支配する。

一体どれだけの時間が経ったか分からない。

もしかしたら、光のごとく一瞬のことだったのかもしれない。

もしかしたら、宇宙が始まってから現在までの長さだったのかもしれない。

しかし、ここには時間が無い。

彼の額の時計が止まってから僕はひとつだけなんだ。

そして、僕は口を開いた。

「今の僕だけが「存在」なのか。」

僕がそう言うと、ジョンレノンはピクリと何かを感じた。

「その通り。
君は今「ひとつ」だ。
パラレルワールドにも、時間の中にも存在しない。
完璧な「存在」
いままで誰もなしえなかった存在なんだよ。」

彼は口を耳元まで押し上げ、笑った。

「例えば。」

また、あの長い腕が出てきた。

マジシャンのように、パチン、と指を鳴らす。

彼の隣に若い女性が、とても綺麗で雪のように白くて華奢で気立てが良くて黒く長い髪はすべてを飲み込むほどに美しくきらめいている。

そんな現実にはありえそうにも無い女性が居た。

表情は無い。

「時間というのはこういうことだ。」

彼の腕は風を切る音を残し、彼女の胸元にえぐり込まれた。

恐ろしい量の血が噴き出す。

口からは、血と混じりあった液体が溢れでる。

叫び声もあげず、彼女は静かに倒れた。

その倒れ方でさえも、息を呑むほどに美しかった。

両腕は、脈を打つように痙攣している。

「これが死だ。」

彼女の胸にえぐり込まれたジョンレノンの腕はそのまま脳までドリルのように進み、脳に達した。

「死んだ。
彼女は何処にでも居るような女じゃない。
この世では絶世の美女と謳われるほどに素晴らしい女だった。
後にも先にも彼女のような女は生まれない。
そんな女だ。」

悲しむように自分の手を眺めている。

その手には彼女の脳髄がこびりついていた。

そしてこちらを向くと、また耳元まで口を押し上げ笑った。

「悲しいか。
そんなことは無いのに。
彼女が死ぬ必要なんて何処にも無かった。
だが、彼女は死んだ。
必要という意味など無い。
私が殺したいから殺したのだ。」

パチン、とまた彼は指を鳴らした。

また同じ現象が起きた。

彼の側らに、先程美しく死んでいった女が居た。

表情は無い。

「さっきの女の1分前の女だ。」

いつの間にか彼の額の時計は一分戻っていた。

「まぁ、一分待とう。」

またあの光景見せられるのだ。

我慢できない。

僕の頭は狂いそうになる。

「もう、分かった。
というより分かってる。」

僕は彼に言った。

「その女はメタファーだろう。
君が何を言おうとしているかは僕には分かる。
そろそろ説明してくれないか。
僕はこれからどうすればいいんだ。」

彼は静かに僕を見下ろしながら答える。

「一・分・待・て」

果てしない一分が経過した。

その間に僕は滝のように汗をかき、着ていた服はびしょ濡れになった。

彼の時計は一メモリ進み、彼の長い腕は彼女の胸にえぐり込んだ。

そして、一分前と同じ事が再現された。

全く同じに。

やはり倒れ方も美しかった。

そして儚く死んでいった。

「一分の世界はどうだった。
長かっただろう。
君には今まで時間というものは無かった。
一分の間にも秒単位で数えれば60人のこの女が存在し、さらにそれを・・・。」

「もう分かった。
次この女について話したら僕は君を殺す。」

彼の言葉をさえぎるように僕は言った。

彼は話すのをやめた。

そして、口を開いた。

「では、いよいよだ。
説明しよう。
君の存在意義について。
そして、今後君が取る行動について。」


彼の手には、まだ、女の脳髄がついていた。





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Last updated  2005.06.12 00:43:29
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