梅雨らしい空模様の今日この頃
ちょっとした晴れ間を見ては洗濯をしたり掃除をしたり。
日常の雑事に追われていると自分を揺るがすような経験をしたことも
雲の向こうに閉ざされているようです。
思い出の中に葬られた感覚はふとした時に波のように帰って来ます。
今日はちょっと焦げたにおいがした時に押し寄せてきました。
あのパシュパティナート寺院にある火葬場の臭いです。
パシュパティナート寺院と火葬場
ネパール最大のヒンズー教寺院であり4大シヴァ寺院の一つパシュパティナートは
ムルガスタリ(鹿のすみか)と言う森に囲まれガンジス川の支流
聖なるバグマティ川の川岸にあります。
パシュパティとは「獣の王」と言う意味でシヴァの化身の一つ。
シヴァは金の角を持った鹿、パシュパティとなってこの森ムルガスタリに遊び
こよなく愛したといいます。
国道から入った参道の左右には礼拝用品やティカ、花などを売る露店が並んでいました。
中にはあちこちの寺院で見かける「両替屋」もあり、
実際にはあまり使われない2パイサや5パイサ硬貨などにくずしてくれます。
参拝者は物乞いや修行者にその両替した小銭を与えていきます。
その小銭はまた周囲の店で高額紙幣に変えられ両替屋に戻るという仕組みのようでした。
露天の並ぶ所から足場の悪い狭い道を行くと右側にチケット売り場がありました。
外国人はここでその日のうちは出入り自由の入場券を1000ルピーで買い求めます。
寺院にはヒンズー教徒しか入れません。
チケット売り場先の川に架かった橋の手前、左側にその入口があります。
この入口の反対、川の下流側が庶民の火葬場、アルエガートとなっています。
川岸にガートという火葬台がありその上にまきを重ね遺体を乗せて火を付けるのです。
遺体は白い布で巻かれ、一握りのコメ粒と硬貨が胸に置かれ、
伝統的には長男が最初の火を付けるのがきまり。
昨年の大地震の時は備えられているガートだけではとても足りず、
次々と運び込まれる遺体は川岸や対岸でも荼毘に付されたそうです。
死者を焼く煙は聖なるバグマティ川を被いつくし
布で巻かれた遺体を乗せたまきに次々と点けられる火は絶えることがなく、
周囲はさながら蒸し風呂のような熱気と死臭に閉じ込められているようだったと。
幼い遺体も多く、ふるえる手でまきに火をつけかね、
泣き崩れる親たちの姿。
まだ布にも包まれずに置かれた遺体に取りすがって泣き叫ぶ人々。
身元の分からない遺体も多く、集団で荼毘に付され
思いもかけぬ災害に会い、天寿を全うできずに逝った人々の無念の思いと
家族を失い、愛する人を亡くした残された人々の悲しみは
幾重にもパシュパティナートを覆い重く垂れこめていたと友は話しました。
焼かれた遺灰はバクマティ川に流されガンジスへと下っていきます。
訪問した時には地震の後の様子を思い描くこともできませんでしたが、
どれほどの悲しみがこの川辺を被いつくしていたか思うと心が張り裂けそうでした。
川の下流のほかに上流にもかつては王族のため物のであった火葬台がありました。
火葬台の下では子どもたちが何かを探していました。
聞くと遺体と一緒に焼かれた硬貨や副葬品に含まれる貴金属を探しているのだそうです。
平時は死さえ日常のこととして受け入れられ
人々は命日にこの川辺に来て故人を偲び、法要を営んでいます。
寺院の反対側にはエッカイダス・ルドラという白い塔が11基並んでいます。
ここにはシヴァリンガが祀られ大昔から人々の死を見届けてきたのでしょう。
寺院からはマントラと鐘の音が流れ、
火葬台からは煙とこの世を離れる匂いが立ち上ってきました。
周囲には修行者サドゥーの姿も見られました。
レンズを向けると「マネー」と言って手を差し出すサドゥーも。
お金を要求するなんてホーリーではない、と案内してくれた友人が言っていました。
多くのサドゥーは観光客相手の商売でやっているのかもしれません。
心つぶれる思いで川べりを離れ石段を上りヴィシュルワープ寺院、
さらに森の先マナカマナ寺院の方向へと向かいました。

物乞いもよく目にしました。
手や足の指を失った人が数多くみられ心痛みます。
この奥にはビシュルワープ寺院、ゴルカナート寺院、グヘシュワリ寺院、
紀元前3世紀ころの最古のシヴァリンガが祀られているキラテシュワー寺院があります。
どの寺院もヒンズー教徒以外は入れません。

寺院の建物の周りにはたくさんの石の祠があり、
シヴァリンガがおさめられています。
祠に施された彫刻は素晴らしく所々に置かれているナンディ(シヴァの乗り物の牡牛)
ガルーダ、ピナカ(シヴァの剣)などにも目を奪われました。
猿も多く見られ食べ物を持っていると襲ってくると言われましたが
その様子も見られずゆったりと過ごしている姿に心なごみました。
クヘシュワリ寺院の辺りまで行くと崩れているものも多く
参道に多数見られたシヴァリンガの台座も割れているものもありました。
赤レンガで作られたという寺院の装飾は繊細で、しばし時を忘れるほどです。

古代ギリシャの神殿にもありそうなエンタシス様式のような円柱も見られました。
奥まった所にも住居でしょうか、人の生活が見られました。

寺院の点在するシヴァの愛したムルガスタリの森は静謐で
ときおりスズメに似た鳴き声をする鳥がさえずっているばかりでした。
善悪の区別なく破壊を尽くすこともあると言うシヴァ神。
そのシヴァ神の遊ぶ森に囲まれた寺院で焼かれ煙となりガンジスに流れていく人。
なんとも言えない思いに満たされながら時間の許す限り散策しました。
まだまだ載せたい写真もあります。
この続編「パシュパティナートと火葬場2」ではもう少しご紹介したいと思います。
ここまでお付き合いくださってありがとうございました。
次のブログでは画像と音楽でパシュパシナートを綴ってみました。
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