MATRIX7

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2010.07.06
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カテゴリ: 現代社会
 オバマ大統領の最大の課題は、いつどのようにしてアフガニスタンから撤退するかに尽きる。このまま戦いを続けることは、次回の大統領選挙の敗北を意味する。4年の任期の前にアフガニスタンから撤退を始めないとならない。ベトナム戦争との違いは、交渉相手が政府ではなく、反政府ゲリラという厄介な存在にある。アフガニスタンで、反政府ゲリラを掃討することほど難しいものはない。南部の部族は、現在のカルザイ政権に批判的であり、政権の奪取を狙っている。
 徹底抗戦を叫ぶタリバン勢力も南部に存在して、NATO軍にゲリラ戦を続けている。反政府勢力の中では、すでにタリバンは少数派になっていると思われるが、実態は不明になっている。タリバンの支配している地域でも、タリバンを信頼している村人は少数派であり、武器で村人を支配しているのが実態だろう。カブールの中央政府があまりに堕落しているので、南部の人々はカルザイ政権に反感を抱いている。民主制度が機能していない現状では、不満のはけ口はテロに向かってしまう。
 アメリカ軍が撤退するとタリバンが復活するというのは、正確な情報でない。武器を保有している勢力がタリバンであり、普通の村人は自動小銃や弾薬を手に入れることが難しい。それゆえに、タリバンの強権政治に屈している村も多い。本音でタリバンの政治を支持している人々は少ないというのが現実になる。カルザイ政権を支持するNATO軍とまともに戦えるのは、タリバンしかいないので目立つだけになる。
 アフガニスタンを支配しているもう一つの勢力が麻薬マフィアになる。世界最大のケシ栽培地域であるアフガニスタンの麻薬を手に入れるために、世界中からマフィアと運び屋が集まって勢力を形成している。彼らが欲しいのは麻薬とドルであり、政治的な思惑はない。金さえ儲けられれば、政府首脳やタリバンとさえも結び付く。戦争には大金がかかるから、軍閥やゲリラ兵士もヘロインの交易に携わる。わずか数百円のヘロインが、国境を超えると数百倍の価値を持つようになるから、運び屋は危険を冒して密輸が続ける。
 アフガニスタンの貧しさによる生産コストの低さから、世界中のケシ栽培地域を廃れさせ、アフガニスタンだけが急成長を続けている。農民にとって、数少ない商品作物であり、ケシ栽培なしに生活することは不可能になっている。NATO軍とタリバンの戦闘の裏では、激烈な麻薬ルートを巡る戦いが続いている。このままアメリカ軍が撤退すると、アフガニスタンは麻薬取引を独占する国家になってしまう。アメリカ軍が撤退した後にアフガニスタンを支配するのはタリバンではなく、麻薬マフィアというのが真相に近いだろう。





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Last updated  2010.07.07 18:18:35
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