株式で損したことは忘れましょう

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松五郎1936

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tina☆ @ こんにちは! 松五郎さまこんにちは! 読み応えのある…
tina☆ @ 感動です~ ワタシももっと強くならなくちゃですよ。 …
tina☆ @ 内容濃くて面白くて いや~松五郎様 ぐいぐい引き込まれちゃ…

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May 21, 2010
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 奈良盆地の真ん中あたりから京都市北部の大学まで毎日通うのはたいへんだった。近鉄橿原線で西大寺駅まで20分ほど、西大寺駅から奈良電鉄(現在は近鉄になっている)で京都駅まで約50分、京都駅から市電か市バスで30分、と徒歩や乗り継ぎの時間も合わせると合計2時間はかかった。現在でも所用時間はそんなに変わっていない。ただ奈良電鉄は経営不振で、近鉄に買収されるまでは、車内における夏の冷房はもちろんのこと冬の暖房さえなく、1月や2月に一限の講義や試験のある早朝の通学は地獄だった。

 下宿したこともあるが、当時は京都市内も奈良の田舎とおなじくらい買い物に不便であり、夏むし暑く、冬は極端に寒かった。奈良は底冷えで有名だが、京都は比叡下ろしという風で寒かった。それで私は早々に京都から退散した。

 当時は映画作りの全盛期で、アルバイトと云えば映画のエキストラと思い浮かぶほど募集が次々あったが、私は講義を真面目に受けて書き留めたノートを前期と後期の試験前にプリント屋に売るアルバイトは楽だし儲けも大きかったので、主としてそれをやった。娯楽と言えば一に映画、次にパチンコと麻雀ときまっていたものである。遊郭も昭和33年3月末に売春禁止法が発効するまで祇園乙部の他にも数カ所あって、小遣いを工面して通っている学生もいた。

 私が大学に入学する前年まで、京都でも学生運動がなかなか盛んだったらしいが、入学してからは何も起こらなくて面白くなく、あるマルクス系の有名教授は、「おまえらノンポリを教えていてもくそ面白くもない。せめてメーデーなどのデモには大学を休んででも参加しろ」と怒っていた。大学生活4年間なんてあっという間に過ぎた。

 経済学は確かに純粋な学問としては面白かったが、実際に世の中に出たらどのような効果を発揮するのかまったく見当がつかない学問だったことは在学中から分かっていた。あまりにも現実離れした理論と歴史の学問だったからである。就職すればまた一から出直しであることは覚悟していた。

 当時は神武景気前でまだ就職難だったが、また母がコネを探してきた。遠縁に近鉄の局長がいて、母は日参して頼み込み、私もその人にひきあわされた。彼は京大工学部を出たエリートで大金持ちの家付き娘に婿入りした男だった。私はその人の紹介で近鉄の役員に会った時、その役員は入社試験の問題を一つ教えてくれた。母はこれだけでは不安と思ったのか、県会議員にも重ねて頼んでおいたらしかった。しかし結果は不合格だった。筆記試験の成績が悪かったうえに、県会議員が近鉄の社長に頼むのを忘れていたということだった。遠縁の局長も私のことをすっかり忘れていたようだったので、母がそのことをなじったらしい。本社の入社試験が終わっても、いっぱいある子会社の試験は始まったばかりなので、本社全額出資の旅行代理店の試験には即座に合格した。

 私の配属された営業所はなんと大阪証券取引所から百メートルと離れていない貸しビルにあったが、証券取引所のクラシックな建物を毎日目にしていても私は株式に何の興味もなかった。毎晩残業に追われ、やっと仕事から解放された夜の8時や9時頃、証券取引所の前にあるT字路のど真ん中に立って、堺筋本町から向かってくる市電のライトを浴びながら線路上に小便をひっかけるのが新入社員のせめてもの腹いせになっていた。今思うに、当時はそんな馬鹿な遊びをしておられるくらい通過する自動車の数も少なかったのだった。たった五十年前だが、それでも古き良き時代だった。

 私は株の話をするはずなのに、なぜ自分の恥ずかしい人生をさらけ出しているのか忸怩たる思いをしながらも書き続けているのは、いろんな失敗のうちでも株の失敗は特に大きな失敗の一つであり、しかも晩年になってからの失敗だったから、それまで私自身どのように育ちどのような経験をしてきたかを辿りながら自己検証していることをご理解いただきたい。

 私は未だに会社員を尊敬している。会社員とはもちろん民間会社で働く人たちのことである。国家・地方公務員、公私を問わず学校教員、特に大学教員、医師や弁護士や税理士、会計士など、どんなに有名な人で嫌いである。彼らはそれぞれそれなりに苦労してそれらの職業に就くようになったのだろうが、それ相応に十分報いられていると私は思っている。一般の会社員は仕事がきついわりには報いられることが最も少ないのだ。

 政治家は別だ。衆参両院議員はもちろん、地方議会の議員でも私は尊敬する。あれほど清水の舞台から飛び降りる決心と覚悟の要る仕事で、誰とでも話をせねばならず、何事にも耐えねばならない職業はないからだ。

 とにかく私はその後、つらい会社の仕事に見切りを付けた。そして幸運にもコネで私立中学・高校の英語教員に転職した。教員の仕事が会社の仕事に比べてあんなにも楽なものだとは予想していたかったのだ。教員たちには面白い人間はいなかったが一般的に性格は温厚で私が一番柄が悪かったぐらいだし、生徒の中に扱いにくい奴らがいてもまだ子供で、会社の時の取引相手に比べるとかわいいものだった。そのうえ夏休み、冬休み、春休みがあったし、ごくつまらぬことで延々と続く職員会議を除くと、極楽に来た気持がした。

 私はそのうち人生に多くを望まぬようになり、人並みに見合いをして結婚した。健康な妻は男性並みに仕事をしていたのだが、結婚したらじき妊娠して数日病院に入った。

 「小人閑居して不善をなす」

 私は高校の時から漢文を読むのが大好きで未だについつい出てしまう。それにしても人生の節目節目に適切な人生訓が漢文にちりばめられているのは不思議なくらいだ。

 今もあるのかどうか知らないが、大阪屋証券という証券会社に大学のゼミの同級生M君がいた。久しぶりに会って喫茶店で話していると証券会社に勤めていて、ちょうど今「山陽特殊鋼」という会社の業績が急速に悪化しているから、「 空売り 」をしたら儲かると株取引を勧めた。私は昔母が「カラはこわいでぇ」と言ってたことを思い出して、私は金がないし、信用での売り買いは皆目わからないし、母がこわいと言ってたと断ろうとすると、彼は証券マンの自分が日がな一日値動きを監視しているのだから絶対大丈夫、10万円ぐらいはあるだろうからそれで十分だ、その10倍でも20倍でも取引できると真剣に説明したが、分かったようで分かっていなかった。

 私は彼に押し切られるように貯金を下ろし、大阪屋証券に10万円を入れた。M君がすべて手続きをしてくれて、約100万円で山陽特殊鋼の株を信用売りした。

 私は毎朝、日経新聞の株式欄を見るようになり、三日にあげず証券会社のM君に電話した。毎日2万、3万と儲けが増えているらしかったが、「信用売り」というシステムがはっきり分かっていない自分には実感が伴わなかった。

 株式というものは、下がり続けている株でも数日上がり続ける日もある。私は短波放送を受信できるラジオを買って、授業を終えて職員室の椅子に座る度にイアホンで株価をチェックするようになった。周囲の教員がどう思っているかもほとんど気にならなかったぐらい集中していた。

 そのうち妻が退院して子供を保育園に預けて働く準備をし始めた。私には株価が気になってそれどころでなかった。

 証券会社で株取引を開始して一ヶ月目には確か20万円ぐらい利益が出ていたと思う。ところがその頃から夜寝付けなくなった。不眠である。確かに株式市場が開いている週日の時間だけは株価が気になっているのは自覚できるが、市場が閉じた後や土日には、持ち株が儲かっているのだから気に懸けることはめったになかったはずである。それなのに眠れなくなったのである。

 妻が母に電話して私の不眠を打ち明けたのだった。母はすぐ飛んできた。母も支店は違っていても同じ大阪屋証券で取引をしていたらしい。私から取引店の電話番号を聞き出してM君を呼び出し、即刻信用売りの買い戻しを命じた。私が電話を代わった。

 「もうちょっと辛抱したら、かならずもっともっと儲かるて」、とM君は残念そうに言った。母は私の受話器を引ったくって、「この子にはぜったいカラ売りはさせんといとくなはれや」と言い、その支店との取引も止めさせると宣言した。母は念には念を入れるため、その後私の手を引っ張ってM君の支店に乗り込み、所長に面会して私の株取引停止を認めさせた。私はいい年をして母に子供扱いされ、恥ずかしくてそれ以後M君と会うことはなかった。

信用取引完全ガイド





























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Last updated  November 19, 2010 11:08:10 AM
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