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とうとう日本全土に緊急事態宣言が出されましたね。 それだけ新型コロナウイルスの感染拡大が加速していることを意味していますし、数多くの芸能人や著名人の感染が相次いでいることにより、誰しも気づかぬうちに感染している可能性があるため、いよいよ予断を許さぬステージへと移行しました。 前置きはこれくらいにして、前回に引き続き『復活の日』プレミアム BOX に付属の特典冊子『分析採録 復活の日クロニクル』、および『復活の日 特典ディスク』の情報をもとにいろいろ語ってみたいと思います。フェニックス作戦:世界を誰の手に? 初期段階での判断の誤りと、政府による重要情報の隠蔽により、ウイルス対策に大幅な遅れを取ってしまったため、世界は人類滅亡の恐怖と絶望の淵に沈んでいきます。" [引用はじめ] 精神病院からマイヤー博士が救出され、<フェニックス作戦>と名付けられた細菌兵器に関する軍の機密、MM-88の真実が知らされるが、すでに遅すぎた。トップシークレットの公表も世界の大国の誇りにかけて、出来るものではなかった。マイヤーからMM-88の特徴を聞き出した大統領は、南極のパーマー基地のコンウェイ提督を呼び出し、南極にいるすべての人に、人類生存へのメッセージを送る――「南極にいるすべての人々よ、その聖域を離れてはいけない。そして外部から近づく者を受け入れてはいけない、またどんな事情があろうと、この汚れた世界に帰ってきてはいけない。諸君は人類最後の希望だ。可能性だ……神が……諸君を守るよう……」 [引用おわり] "(『分析採録 復活の日クロニクル』P.23) MM-88 を不活性化させるには常時氷点下の環境が必要で、その最後の望みとして未来を託されたのが南極大陸の基地に派遣されていたごく僅かな人数の人々。 米ソ冷戦状態の中、軍事的および政治的なイニシアチブを獲得しようと躍起になっていた米国が殺人ウイルスの管理に失敗し、ウイルスを拡散させてしまったことを隠蔽したという流れになっています。 現在世界を大混乱に巻き込んでいる新型コロナウイルスと照らし合わせてみると、陰謀説が現実味を帯びてくるので不思議です。 新型コロナウイルスの発生源としてたびたび話題にのぼる武漢市には、武漢ウイルス研究所がありますが、ウイルスの取り扱いについては2017年頃から問題視されていました。このこともあり、情報の不透明性を解消するための一環として、2020年4月16日、米国で新型コロナウイルスの中国由来かどうかを検証する動きが始まりました。 参考リンク: 武漢ウイルス研究所 (wikipedia) 新型ウイルス、武漢の研究所から流出したものか調査中=トランプ氏 (ロイター) また、こちらが実際に米国のトランプ大統領が新型コロナウイルスの調査について記者会見に応じたときのビデオクリップとなりますが、現時点では日本のどのメディアも彼の言葉を正確に伝える記事を発表していないため、こちらにシェアさせていただきます。参考:Coronavirus outbreak: China "must have the most" COVID-19 deaths, Trump says (英語)コロナウイルス発生:トランプ曰く COVID-19 による死者数の”最多”は中国に違いない 要約すると、以下のようになります。 あくまでもトランプ大統領の発言になりますので、鵜呑みにしないようにお願いします。2015年(オバマ政権)に、米国が中国の武漢ウイルス研究所に対し 370万ドルにもおよぶ資金を拠出したことをトランプ大統領が確認。もし現在もなお拠出が続いていたら速やかに資金提供を中止する予定だったが、拠出は過去のものだった中国が武漢の死者数を50%上乗せして訂正。約4000人と報告があったが、世界の死者数の最多は米国ではなく、中国であることは間違いない中国は巨大国家にもかかわらず、報告された数字は武漢のみのもので、それ以外の地域の数には触れられていない武漢研究所からウイルスが漏洩した可能性については、目下調査中ある種のコウモリが由来であると中国は断定しているが、そのコウモリ自体が武漢には生息しておらず、その問題の地域では流通もしていなかった184か国がこのウイルスで苦しんでいる以上、どんな形にせよウイルスが中国から発生したものであることを突き止めていく2020冬季オリンピック開催を予定している中国の開催権を剥奪する動きについては、中国が米国から2500億ドル分の物品を購入することについて交渉と議論を続けているが、状況はあまり芳しくない(注:質問内容と回答がかみ合っていない印象)(武漢のウイルス研究所)はかなり前に閉鎖されており、公正機関やWHOも立ち入ることができなかったため、他の手段を取らなければならなかったが、いずれも散々な結果に終わったようやく立ち入りを認められたときになって、中国が報告してきた内容が透明性に欠けていたため、実際に中国で何が起こっていたのかは依然として不明のまま人為的に開発されたウイルスである可能性については、コウモリ経由で変異したウイルスの場合、人間に感染するまでに大きな隔たりがあるはずなので、その辺も含めて権威のある生物学者を集めて調査中。いずれは情報を公開していく予定残された者たちの使命 全世界の人類が死滅し、南極大陸に残された863人が生き残ったことを知り、基地の人々は騒然となります。人類の存続のため、手あたり次第に手段を講じる必要がありますが、それではまず子作りに励もうということになります。" [引用はじめ] パーマー基地にとりあえず各国の代表が集まってきて南極会議が開かれた。11か国、863人(うち女性8名)の生存が確認され、絶望の中に人類としての生命の模索が始められた。(中略)南極会議の結果、新しい政府として<南極連邦会議>が生まれる。ともかく各国隊員は協力して生存のために努力を続けることになったのだ。女性隊員を核とする種の保存策が最初の決定事項となった。 [引用おわり] "(『分析採録 復活の日クロニクル』P.23) オブラートに包みまくった表現でまとめられていますが、過去記事でも書かせていただいたとおり、要は生存した8人の女性を残り855人 の男たちが取っ替え引っ替えするというコールガール制度を政治的合意のもと実践していくわけでございます。 今よりも人工授精が身近でもなかった時代ですし、南極にそんな装置すらなかったであろうと考えると、当然ながら残った人間でせっせと鼠算式に子孫を増やしていくしか他に方法はありません。 しかし、作中では女性の役割がこれほどにも重要で、かつ精神的にも肉体的にも負担が大きいにもかかわらず、女性の立場や権利、自由といった人間としての尊厳にかかわることがあまりにも軽んじられているところに違和感が残ります。 人類滅亡の危機という壮大なテーマ性がある割には、男性視点のみのストーリー展開に終始するところは時代を感じさせますが、現代社会でも男女の権利の不均衡は依然として残っていますね。二度目の世界の死か? 子作り計画が順調に進む中、南極基地に向けられている核ミサイルが作動状態になっているという情報、そして近々大地震が北米を襲うという予測まで飛び出します。 南極までミサイルが撃ち込まれたらそれこそ人類の一巻の終わりです。 残された人類を守るため、ウイルスまみれの土地に向かい、何としても核ミサイルの発射を止めなくてはなりません。" [引用はじめ] 元アメリカ国防情報部参謀だったカーター少佐とマクラウド艦長の調査によって、アメリカの核報復システム・ARSが作動状態になっていることが分かり、さらに吉住によって、ここ近々に北米大陸をマグニチュード8以上の大地震が襲うことが予測されたのだ。地震の影響で、アメリカのミサイルはソビエトを遅い、またソビエトの全報復ミサイルが反撃するのは明らかだった。そのひとつは南極のパーマー基地にむかうというのだ。決死隊をワシントンに送りこんでARSの作動を止める以外に方法はない。しかしまだ南極以外の土地はMM-88に汚染されていた。南極のウイルス・ワクチンの専門家・ラトウール博士の研究も進められ、強い放射能によって生まれた抗体が発見されてワクチン製造への足がかりは出来ていたが、本当に人体に効くかどうかは不明だった。(中略)ARSの在りかを知っているカーター、そして吉住が志願する。「そのヒョロヒョロとした体じゃ、足手まといになる」とカーターは一蹴するが、吉住の決意は固かった。ふたりはラトウール博士の実験ワクチンを抱えて、人類の生を守るための死への旅立ちを準備する。 [引用おわり] "(『分析採録 復活の日クロニクル』P.23) 細菌兵器、核兵器、壊滅的な大地震と踏んだり蹴ったりの展開となってきました。これで大噴火と大洪水がプラスされたらパニック映画のフルセット完成です。 核ミサイル自動報復システム・ARSの作動ボタンは、我が身は死しても米国の勝利を勝ち取りたかったガーランド参謀本部長の置き土産となってしまいました。 新型コロナウイルス関連では、世界中でワクチン開発が急速に進められていることが話題となっていますが、そのほかにも北朝鮮が飛翔体を飛ばしたり、核実験施設の稼働が続いていることや、中国での小規模核実験実施もこの時期に相次いでニュースとなりました。 参考記事: 北朝鮮がまた飛翔体、コロナ拡大の中で「非常に不適切」と韓国軍 (ロイター) 米国務省が小規模核実験の可能性指摘、中国は否定 (ロイター) 核保有国同士の牽制合戦は戦後から現代に至るまで続いていますが、外交と経済のバランスが大幅に崩れると戦争に発展する恐れがあるため、その前振りとして軍事力強化、威嚇行為に走るのはあり得る展開だと思います。 疫病流行、経済悪化、外交決裂、戦争勃発、プラス予測不可能な天災の発生は、一見独立した事象のようにみえ、実は一直線上にあったりするのかもしれません。 次回も引き続き、『分析採録 復活の日クロニクル』について語っていきます。 過去記事: 分析採録:復活の日クロニクル【第一回】 復活の日 ― 海外でも伝説として語られるバブリーな和製パニック映画復活の日【Blu-ray】 [ 草刈正雄 ]価格:2114円(税込、送料無料) (2020/4/19時点)楽天で購入
2020.04.19
6年前に投稿した『復活の日』テキトーな映画レビューが日の目を見る日がこんなにも早く到来するとは想像もしておりませんでした。 過去記事:復活の日 ― 海外でも伝説として語られるバブリーな和製パニック映画 幸い、まだ日本では感染者の爆発的な増加には至っていない状況ですが、今日現在、全世界でもすでに100万人が感染しているとのニュースを読み、改めて映画『復活の日』のレビュー続編を投稿することにいたしました。 新型コロナウイルスの感染拡大に思うこと 2019年末に発生した新型コロナウイルス COVID-19 により、私たちの生活が一変してしまいました。 しかし、多くの人は以前からこう感じていたと思います。「いつか、特効薬のない強力な伝染病が発生するかもしれない。発生したら本当に人類滅亡の危機が訪れるかもしれない」 私の場合、そう感じさせてくれた映画がこの『復活の日』でした。 映画の展開自体はありえない部分も多いのですが、人類が太刀打ちできないウイルスというテーマとしては、当時でも私たちに警鐘を鳴らすに十分な作品であったことは間違いありません。 あれから 40年。コロナウイルス発生によって明らかになったことは、昭和、平成、令和と時代は移り変わりましたが、私たち一人ひとりの危機意識までは変えることができなかったということです。 「他人が感染しても自分は大丈夫」とか、「満員電車でもマスクしていれば感染しない」とかいった、根拠ゼロの自信が今回の悲劇に繋がっています。 たとえば私は花粉症持ちなのですが、いくらマスク、サングラス、帽子、マフラーで完全防備していても、花粉症を防げたことは一度もありません。 毎年鼻水ズルズル、くしゃみ連発が止まらない状態となります。 しかし、花粉の粒子(90μm)はインフルエンザの粒子(0.1μm)の900倍のサイズであり、大気中を漂う物質の中でもかなり大きいのです。 コロナウイルスとインフルエンザウイルスはよく似た形状をしていますし、サイズもほぼ同じことから、使い捨てマスクでも花粉すら防げないというのに、ウイルスを防げるわけがないことは容易に想像できるでしょう。 粒子のサイズ比較はこちらのビデオをご参照ください。ウイルスの小ささに驚くはずです。 注釈:pollen = 花粉 素人がいくら防衛しても何の効果もありません。重度の花粉症持ちがこれほど花粉症を防げてないのですから、自信を持って言えます。 とにかく感染源に近づかないことです。 ニューヨーク在住の日本人が、新型コロナウイルスの感染スピードの恐ろしさについて語っている動画を見つけました。期間限定でこちらにシェアさせていただきます。 フレンドリーな口調でとてもわかりやすく、かつ強力なメッセージが込められています。 動画の中で語られているとおり、あっという間に1万、2万と感染者が爆発的に増加する感染力の強さです。 手遅れにならないうちに、外出を控え、医療崩壊を防ぎましょう。 今の状況であなたが感染したころには、治療を受けるためのベッドはもう残っていません。 公共施設に立ち入らない、電車・バスに乗らない(とはいっても通勤者は無理なので乗るなら窓を半分以上開ける)、咳をしている人がいたら離れる、自己隔離する、うがい、手洗いをしつこいほどやる、スキンシップを避ける、衣服を毎日取り換えてこまめに洗濯する、など対策はいろいろありますが、とにかく人との物理的な距離を置くしかありません(それがたとえ家族であっても)。 前置きが長くなりましたが、ここから本題に入ります。 いつもはおふざけムード丸出しでレビューを書いておりますが、今回は全世界で深刻な状況が続いておりますので、コロナウイルスの広がり具合と比較していただけるような内容にまとめていきたいと思います。 なお、記事作成にあたっては、以前の記事でチラっと触れた当方所有の『復活の日』プレミアム BOX に付属の特典冊子『分析採録 復活の日クロニクル』、および『復活の日 特典ディスク』を参考にしております。 当方所有のボックスセット。画像は過去記事の使いまわしです。 引用部分にはそのページを記載しております。プロローグ:ウイルス MM-88 によって死滅した大都市 まずは、ウイルス MM-88 の説明をご覧ください。"[引用はじめ]1982年2月 東ドイツ・ライプチヒ厳冬の東ドイツにある陸軍細菌研究所からひとりの科学者によって新種のウイルスが盗み出されていた。ウイルスの名前はMM-88。摂氏マイナス10度で自己増殖をはじめ、零度を超えると猛烈な毒性を発揮し、そのときの増率はマイナス10度のときの20億倍になるという、恐るべき殺人兵器だった。人間はもちろん、家畜・家禽・犬猫を死滅させる力を持つ狂人の武器である。1980年以来、遺伝子工学的操作による新種ウイルス創造の実験研究は、すべて世界的に禁止されていたにもかかわらず、米ソの核軍縮後の新兵器としてアメリカで開発され、それがいつの間にか東側にわたり、再び西側が奪還しようとしていたのである。(中略)この MM-88 に対する抑止ワクチンはまだ開発されていなかった。西側のウイルス感染に関する権威・マイヤー博士は、ワクチン開発を急ぎつつ、この恐るべき怪物の真実を公表し、全世界の科学者の力によって人類絶滅への対抗手段を考えるべきだとの判断を固めつつあったが、極秘作戦が露見するのを恐れた軍の手によって、彼は精神病院に送り込まれてしまう。 [引用おわり] " (『分析採録 復活の日クロニクル』P.22) これがオープニングとなります。 まとめると以下のようになります。米ソ核軍縮後の新兵器として、アメリカが殺人ウイルス MM-88 を開発MM-88 は摂氏零度を上回ると地球上のあらゆる生物を死に至らしめる猛烈な毒性を発揮なぜか MM-88 が東ドイツの陸軍細菌研究所に渡り、研究開発続行中西ドイツ側が MM-88 奪還に乗り出すが事故で失敗。MM-88 が大気中に拡散MM-88 に対する抑止ワクチンは未開発脅威に気づいた博士がウイルス開発と情報公開に乗り出すが、極秘作戦がバレるのを危惧した軍が博士を精神病院送りに コロナウイルスを中国がばら撒いたとか、アメリカがばら撒いたとか、激しい舌戦が繰り広げられていますが、もし生物兵器陰謀論がクロに近ければ、上記のシナリオ設定との共通項の多さに驚かされます。 中国では新型コロナウイルスのニュースが出回った頃に細菌研究所が破壊されたり、ウイルスに関する論文を執筆した中国人研究者が謎の失踪を遂げたり、ウイルスの脅威について警鐘を鳴らした医師たちが次々と亡くなったり、失踪したりしています。 参考動画:新型コロナ SNSで警告した医師が感染死 公安当局が「デマ」と処分 参考リンク:失踪した中国人研究者の「消されたコロナ論文」衝撃の全訳を公開する https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71310 実際、中国でバタバタと人が倒れる様子や、病院が患者であふれかえる様子を連日ニュースで垣間見ることができましたので、確かに中国国民たちもウイルスの被害者ではあるのですが、それが中国国内で自然発生したものなのか、研究所から漏洩したものなのか、それとも米国が中国でばら撒いたのか、真相は明らかになってはいません。 参考動画: 人がバタバタと倒れています!(1)武漢の病院|新型肺炎|新型コロナウイルス|中国NOW 武漢新型肺炎 突然意識がなくなり バタンと倒れる人が急増(2)|新型肺炎|新型コロナウイルス|中国NOW 最初の世界の死 ウイルス MM-88 は大気中を駆け巡り、春の訪れとともに恐るべきスピードで全世界に拡散していきます。"[引用はじめ]1982年4月 カザフ共和国&江蘇省災厄は確実にやってきた。ソ連のカザフ共和国、中国の農村で、家畜がバタバタと死んでいったのが皮切りだ。イタリアでは赤ん坊が次々と意識不明のまま病院にかつぎこまれていった。半狂乱になって病院に群がる母親たち。赤ん坊の鼻や口に酸素吸入の管が次々と突っ込まれてゆくが、それは空しい戦いであった。やがて日本でも病院という病院はすべて患者に埋め尽くされていった。異様に高い死亡率のイタリア風邪といわれたが、大学病院医師・土屋や看護婦の則子らはただのインフルエンザと違うことを直感的に悟っていた。全土に厳戒令が敷かれ、左右両派の激突、宗教団体の祈祷等々あったが、それもむなしく人々は次々に死んでいく。 [引用おわり] " (『分析採録 復活の日クロニクル』P.22) 内容をまとめてみましょう。4月に入り異変が起き始める。まずは家畜の死、次第に人間にも影響が出始めるイタリアでは呼吸困難患者が続出し、瞬く間に病院はパニックに感染爆発がイタリアであったことから、致死率の高いイタリア風邪と呼ばれるようになるついに日本にもウイルスが到達。インフルエンザとは明らかに症状が違う全土に戒厳令が敷かれるが、なすすべもなく、人々は次々に死んだ 4月に入り、日本でも本格的な警戒態勢に入りつつあるところが、偶然にも現実と一致してきていると言えそうですが、それを差し置いても、イタリアでの感染爆発、医療崩壊、都市閉鎖の流れもまったく同様だったりします。 今回も中国に引き続きイタリアで感染爆発が起こりましたが、欧州で中国との一帯一路構想に組み込まれたイタリアに大量の中国人が押しよせ、彼らの活発な移動があったためと考えると不自然なことではありません。 しかしながら、40年前のこの作品でイタリアで感染爆発が起こっているという下りが、ただならぬ薄気味悪さを漂わせています。所感:『復活の日』は予言映画なのか 本記事で挙げてきた殺人ウイルス MM-88 の蔓延によるパニック状態と新型コロナウイルス COVID-19 の蔓延による現実のパニック状態があまりにも一致しているため、これは予言だったのではないか、という声も聞かれ始めています。 人間はとんでもない災難や不幸、幸運など、日常生活からかけ離れた事象に出くわすと、何かにこじつけたい衝動に駆られる生き物なのかもしれません。 しかし、ウイルスによる大量死はこれまでの人類の歴史から何度となく繰り返され、そのたびに世界はパニックに陥ってきたのです。それが現実というものです。 詳しくは以下の参考リンクをご覧いただければと思いますが、感染症が大流行した年には世界中で数百万人単位で人が命を落としています。 参考リンク: 感染症の歴史 [WikiPedia] 人類を脅かす感染症のパンデミック(世界的大流行) [大幸薬品] 『復活の日』に再び注目が集まることは自然の流れだとは思いますが、作品としては、あくまでも人類のパンデミックの歴史を準えつつ、生物兵器と核戦争というアレンジを加えたにすぎません。 感染症にしても、生きている以上は何らかしらの感染症に晒されますから、感染したときの恐ろしさは私たちでも容易に想像できるはずです。 生物兵器についても私たちはその存在に薄々気付いているのは事実であり、核戦争に関しても米国とイランの核開発をめぐる国際的な緊張感の高まりや、北朝鮮の挑発行為などから脅威を身近に感じることができますので、これらをひっくるめても、ストーリーとしては何も真新しいものはないと結論づけることができます。 長くなってきましたので、いったんここで切り、別記事で続行したいと思います。 分析採録:復活の日クロニクル【第二回】 復活の日 ― 海外でも伝説として語られるバブリーな和製パニック映画[送料無料] 復活の日 DTSプレミアムBOX [DVD]楽天で購入
2020.04.03
謎ときをしようと思って何度も挫折したあなたに贈る『ロスト・ハイウェイ』シリーズ第四回は登場人物検証編です。 シーンを注意深く見ていくと明確になってくる登場人物の隠れた特徴のご紹介と、謎解きを行います。 作品をすでにご覧になった方で、しかもこまごまとしたポイントを詳しく理解したい方を対象としていますので、いきなりこちらのページにお越しいただいた方は、第一回からご覧いただくとよいかもしれません。 謎ときをしようと思って何度も挫折したあなたに贈る『ロスト・ハイウェイ』 【第一回】 リンクをクリックすると、記事の各セクションに移動します。【第一回】『ロスト・ハイウェイ』作品紹介とわかりやすいあらすじ【第二回】ストーリー解説【第三回】制作側のネタばらし謎ときをしようと思って何度も挫折したあなたに贈る『ロスト・ハイウェイ』 【第四回】はじめに『ロストハイウェイ』の楽しみ方登場人物について 1.フレッド・マディソン 2.ディック・ロラント 3.レネエ・マディソン 4.アンディ 5.ミステリーマン 6.ピート 7.シーラ 8.ミスター・エディ 9.アリスはじめに 『ロストハイウェイ』を楽しむうえで押さえておきたいポイントと、見落としがちなポイントを、当方所有の DVD/ブルーレイメディアのタイムスタンプを付記しながらまとめます。 タイムスタンプは製品パッケージによって異なりますので、あなたがお持ちのメディアとはタイムスタンプにズレが生じている可能性があります。 あくまでも参考値としてご覧いただければ幸いです。 当方所有の DVD およびブルーレイディスクは次のとおりとなります。■ DVD リージョン:2発売元:パイオニアLDC株式会社・松竹富士株式会社販売元:パイオニアLDC株式会社発売日:1998/06/25時間:135 分型番:PIBF-1023ASIN:B00005FXGREAN:4988102437817 ■ ブルーレイ リストア版リージョン:1発売元:株式会社コムストック・グループ販売元:パラマウント ジャパン株式会社発売日: 2012/04/27時間:135 分型番:PPWB300124ASIN:B0076DL1KCEAN:4988113745147 こちらのディスクは、枚数限定で発売された二枚組のブルーレイディスクですのが、今は入手困難になってきています。 本編のディスクに加え、リンチ監督のオリジナルモノクロアニメーション DumbLand (ダムランド)が収録されたディスクが付属しています。 本編ディスクのみでもまったく問題はありませんが、このセットをどうしてもゲットしたい方は、B0076DL1KC、4988113745147 あたりで検索してみてください。付属ディスク『DumbLand(ダムランド)』のご紹介 【収録時間:34分】 デヴィッド・リンチ監督によるオリジナルアニメーションディスク。 DavidLynch.com 用に製作された作品で、八話分が収録されています。 フェルトペンで描いたような粗削りな画風で、リンチ流ブラックユーモアがパラパラ漫画風に展開していきます。 第一話: Neighbor (隣人)―― 義手の隣人は小屋で飼っているアヒルと…… 第二話: The Treadmill (ランニングマシーン)―― 痩せないなら運動するな 第三話: The Doctor (医者)―― 割れたランプに指入れちゃだめ 第四話:A Friend Visits (友人の訪問)―― 友人はこれから釣りに行くそうで 第五話:Get the Stick(棒を取れ)―― 口のなかに棒が挟まった人がいるから取って! 第六話:My teeth are Bleeding (歯から血が出た) ―― プロレス見てたら歯から血が出てきたよ 第七話:Uncle Bob (ボブおじさん)―― ボブおじさんの様子が変だよ 第八話:Ants (アリ)―― 家の中にアリの行列が!殺虫剤で退治してやる 個人的には第八話:Ants の『クソ野郎』ソングのアリによるタップダンスがおすすめです。 内容はとってもとっても教育上よくないですが、ノリはかなり Beavis & Butthead に近いです。 気持ち悪い呼吸のしかたもそっくりですが、内容的には『ダムランド』の方がトラウマになってしまうかもしれません。▲目次へ『ロストハイウェイ』の楽しみ方 『ロスト・ハイウェイ』は数回鑑賞しただけでは、そのおもしろさは四割程度といったところでしょう。 どの映画でも共通にいえるのですが、何回も観ることによって新しい発見がふえていくものです。 ここでは、謎解きをご自身でトライしてみたい方向けに、準備作業をご紹介します。リストア版の入手 『ロスト・ハイウェイ』のディスクは三回購入しています。 一度目は米国盤 DVD、二度目は日本盤 DVD、三度目は日本盤ブルーレイです。 DVD の画質は荒く、トーンも全体的に暗いままなので、細部を確認するのには不向きだと思います。 リストア版のブルーレイは画質が各段にクリアになっており、トーンも明るめですので、DVD では見えなかったところも確認しやすくなっています。 『ロスト・ハイウェイ』もう一度ご覧になってみたい方や、ディスクの購入を検討されている方は、ブルーレイのリストア版をおすすめします。ロスト・ハイウェイ デイヴィッド・リンチ リストア版【Blu-ray】 [ ビル・プルマン ]価格:1500円(税込、送料無料)とことん部屋を暗くする 室内の光を反射するものがディスプレイに映ってしまうと、こまごまとした部分の確認が難しくなります。 部屋の照明を消して、カーテンは閉めておきましょう。ディスプレイと、プレイヤーの明るさ(輝度)を最大にする 『ロスト・ハイウェイ』は暗めのトーンで展開されるシーンが多めになっていますが、室内の照明が暗すぎて何がどうなったのかさっぱりわからなくなることがあります。 これはリンチ監督の意図ということもあって仕方のない部分ですが、それでもプレイヤーとディプレイの明るさを MAX にすることで、映像が全体的に明るくなり、いままで見えなかったものがはっきり見えるようになります。ヘッドフォンを使う 『ロスト・ハイウェイ』は映像のみならず、音も重要な要素になります。 ちょっとした音を聴きもらさないようにするためにも、高音質なヘッドフォンの着用をおすすめします。 あとは、リモコン操作に慣れておくことですね。一時停止、コマ送り、再生速度変更はどうしても必要になりますから。▲目次へ登場人物について ここからは、『ロスト・ハイウェイ』の謎を解くために外せないポイントをまとめていきます。1.フレッド・マディソン●病的な虚言癖、ウソつき 世の中には、まるで息をするようにウソをつく人がいますね。 フレッドがまさにそういった人間で、ウソをつくことに対する罪悪感がありません。 次の二つのシーンで、それが明確に示されています。二人の刑事がきたとき ストーカー被害を疑ったフレッドたちは刑事を呼びますが、ベッドルームを見てもらったときに、刑事からこのように尋ねられます。刑事:「ほかに寝室は?」フレッド:「ありません」【DVD:00:26:13~00:26:18】【Blu-ray:00:24:01~00:24:05】 フレッド邸に寝室は二つあります。もう一つのベッドルームは楽器の練習用として防音になっていることをそのまま言えばいいものを、フレッドは一瞬ためらってから、わざわざ「ありません」と答えています。 ここで、それを聞いた瞬間のレネエの表情に注目してみましょう。 「え?いまアンタ何て言った?」と鬼のような視線をフレッドに投げかけます。【DVD: 00:26:19~00:26:22】【Blu-ray:00:24:06~00:24:08】 視線だけで二度問いつめられ、観念したように事実を語るフレッドの様子を確認できます。 不安でいっぱいのレネエをいたわる素振りをいっさい見せないフレッド、レネエの腕組み、二人の立ち位置から結婚生活が順調ではないのが伝わってきますし、レネエがこまごまとしたウソをつくフレッドに懐疑的な視線を送るのがクセになっているのも何となく読み取れます。 同シーンで、フレッドはビデオカメラを持たない理由を二つ挙げています。【DVD:27:07~27:25】【Blu-ray:00:24:44~00:24:56】 「記憶は常に自分なりに」 「起こったとおり記憶したくないんです」 この発言によって、フレッドは身の回りで起こっていることが白日のもとにさらされることを極端に恐れている人間であることが読み取れます。アンディ邸でのパーティ 白塗り男ミステリーマンがディック・ロラントの友達だとアンディから告げられるシーンですが、この瞬間から、フレッドの不安な心理状態を象徴するような怪しい効果音が聞こえ始めます。【DVD:00:34:53~00:35:47】【Blu-ray:00:32:20~00:24:56】 「ロラントは死んだろ?」とアンディに尋ねたのは、冒頭で「ディック・ロラントは死んだ」という謎の言葉を聞いている【DVD:00:04:37~04:40】【Blu-ray:00:04:11~04:15】ために、そのおぼろげな記憶を反芻しただけのように見えます。 しかし、フレッドの様子が明らかにおかしくなるのはこの後です。 アンディ:「どうして彼が死んだと思うんだ」 フレッド:「分からない 面識もないし」【DVD:0035:14~00:35:47】【Blu-ray:00:32:46~00:32:53】 多くの場合、人が心当たりのないことを思い出そうとする場合は、目を閉じたり、どこか一点を見つめたりして必死になるものですが、フレッドの場合は、何か思い出してはならないものを忘れようとするかのように視線を斜め下に泳がせています。 フレッドにはウソをついているという自覚はありません。自分を偽ることがうまくなりすぎて、ウソをついていることすら認識できない状態であることも読み取れます。 また、アンディは、フレッドがディック・ロラントという名前がフレッドの口をついて出たことに心底驚いています。 ここから、アンディは過去にディック・ロラントをフレッドに紹介したことはないことも明らかになります。●幻覚、幻聴 フレッドには幻覚や幻聴が起こっているのですが、彼自身がそれを認めたがりません。 ミステリーマンの登場により、不可解で不気味な存在が目の前に姿を現したことにフレッドは恐れおののきますが、それ以前にも何度もミステリーマンは彼の前に姿を現しています(詳細は別項にまとめます)。●偏執的な妄想癖 レネエの不貞行為に対し、ありとあらゆる妄想を展開しているために、実際に起こってないことまであたかも起こったかのように決めつけるクセがあります(詳細は別項にまとめます)。▲目次へ2.ディック・ロラント レネエがディック・ロラント(=ミスター・エディ)の愛人であったことは映像で示されていますが、ディック・ロラントの人物像についてはほとんど映像化されていません。 ピートの人生にかかわってくるミスター・エディは、愛人アリス(=現実世界ではレネエ)に対し異様な執着心を燃やす男として表現されていますが、これはあくまでもフレッドというフィルタ越しに見たエディ像にすぎません。 フレッドが知っているのは、レネエがディック・ロラントのポルノ映画に出演していたこと、ディックロラントと愛人関係にあり、その関係が今も続いていたこと、そして、スナッフ・フィルムの製作経験から、自分の利益のためなら人殺しも厭わないタイプの人間だということです。▲目次へ3.レネエ・マディソン レネエが出演したポルノ映画のシーンの映像は鮮明で大写しになっています。【DVD:01:39:00~01:39:26、01:41:49~01:42:01、02:05:18~02:06:03】【Blu-ray:01:42:36~01:43:04、01:45:45~01:46:03、02:04:43~02:05:31】 スクリーンの中の彼女は、この仕事を楽しんでいるかのようにとても生き生きとしていますね。 しかし、これらもフレッドというフィルタ越しに見た映像です。 レネエがポルノ映画に出演していたという証拠が彼の記憶にとても強烈に刻まれたために、それがフルスクリーンで強調されてはいますが、レネエが実際にどのような気持ちでこの仕事にたずさわっていたのかは明らかになっていません。 しかし、「とにかくアンディはいい人よ」とレネエ本人が言うくらいですし【DVD: 00:36:17】【Blu-ray: 00:33:52】、パーティにも喜んで出かけるところから、レネエとアンディの関係は良好だったことがわかります。 また、アンディと楽しそうに過ごしているレネエのリラックスした笑顔【DVD:00:31:00~00:31:19】【Blu-ray:00:27:55~00:28:17】は、フレッドの前で見せる緊張感をともなった笑顔【DVD:00:07:33~00:07:49】【Blu-ray:00:06:27~00:06:36】とはあきらかに違います。 フレッドがレネエの浮気現場を押さえてロスト・ハイウェイ・ホテルに乗り込んでいったときも、ディック・ロラントがレネエを呼ぶ声はとても甘い響きになっています【DVD:02:02:00】【Blu-ray:02:02:09】。 また、パーティでフレッドがディック・ロラントの死を口走ったときにも、レネエの顔にはっきりと動揺の色が浮かびます。【DVD: 00:35:05、00:35:29~00:35:35】【Blu-ray: 00:32:30、00:32:59~00:33:05】 このようなことから、レネエがディック・ロラントに可愛がられていたことは想像に難くありません。 しかも、アンディは自宅の目立つところにレネエとディック・ロラントとで写った写真を大切に飾っていますので【DVD:01:42:05~01:42:30、02:07:21~02:07:35】【Blu-ray:01:46:05~01:46:32、02:06:59~02:07:16】、三人はポルノ業界を通じて親交を深めていった仲間であることが導き出されます。 いずれにせよ、夫がいる身でありながらレネエが不貞を働いていたことはまちがいないでしょう。 おまけ情報としては、レネエがめったに本を読まないタイプであることもわかりますね。 読書をしたいからライブハウスに行かないと言う彼女にフレッドがビックリしているくらいですから【DVD:00:07:09~00:07:43】【Blu-ray:00:06:15~00:06:34】。▲目次へ4.アンディ アンディは口数こそ少ないですが、『ロスト・ハイウェイ』の中で唯一ヒューマンスキルの高い人物として描かれています。 パーティのシーンでは気のいいオッサンぶりを発揮し、招待客の間を行ったりきたりしながらリップサービスをかまします。【DVD:00:30:48~00:30:55】【Blu-ray:00:27:44~00:27:51】 招待客の女:「アンディ―いいパーティね」 アンディ:「ステキだよ」 アンディ主催のパーティでこれだけの人を集められるのですから、彼はそれなりに知名度の高い人物であることが推測できます。 招待された女はアンディの名前を口にしますが、アンディは女の名前を口にしません。 彼はこの女の名前を知らないからです。 社交の場では、名前を知っていれば親しみを込めて名前で呼ぶのがマナーですから。 それでもニコニコしながら手の甲にキスしたりしてご機嫌を取ることを忘れません。 はた目からはアンディは陽気でいい奴に映るのです。 アンディはレネエにぴったりと寄り添うようにしてデレデレしています。【DVD:00:31:00~00:31:20】【Blu-ray:00:27:55~00:28:17】 その人なつこさにレネエも完全にリラックスしていることが見てとれます。 フレッドとの距離感や緊張感とはかなり対照的ですね。 アンディはこの大豪邸の持ち主ときていますから、招待客の多くはアンディに気に入られようとしています。 それは、彼がたくさんの仕事の口を抱えていて【DVD:00:36:08】【Blu-ray:00:33:41】、豪邸が建つほど成功しているからです。 そして、彼に気に入られるということは、何らかしらの形でポルノ業界や裏世界にかかわることを意味します。 そのやり方のいくつかは、パーティ会場の招待客を通じた仕事のあっせん、外部でのスカウトなどです。 レネエはモークスというバーでアンディから声をかけられています【DVD:00:36:01~00:36:02、01:28:48】【Blu-ray:00:33:34~00:33:36、01:31:08】。 言葉たくみにベッドに連れ込むのはお手のもので、レネエが言うような「友達になった」のは、セックス フレンドであったことは想像に難くありません。 ある程度自分になつかせて警戒心を取りのぞいてから、ポルノに出演させるというコースでしょうね。 アンディは、金のためなら平気で女を売りさばくタイプの人間ですが、業界のドル箱にのし上がったレネエに対しては面倒見と金払いがいいのも頷けます。彼にとっては重要な金づるですから。 だから、レネエにとってアンディは「いい人」にはちがいなのです。 また、個人的にとても気になったのは、アンディの目ですね。 彼の瞳孔はヤク中のように開きっぱなしなのです。 そういう役柄のために瞳孔を大きくしたコンタクトレンズを使用しているのか、もともと瞳孔が大きいタイプなのかはわかりませんが、フレッドの目と比べても不自然です。 こういったことから、アンディが薬物の売買にも手を染めている可能性もありそうなのですが、明示的に語られているわけではないので、この部分は想像の域を出ません。▲目次へ5.ミステリーマン 白塗り男、ミステリーマンは一体どういう存在なのか。 その答えは明確には示されていませんので、鑑賞者が想像するしかありません。 ただ、ミステリーマン自身とアンディの発言から想像することはできますので、本編から書き出してみます。ミステリーマンの発言 ◇アンディのパーティにて 「前に会いましたね」【DVD:00:32:20】【Blu-ray:00:29:26~00:29:27】 「お宅で ご記憶は?」【DVD:00:32:32~00:32:34】【Blu-ray:00:29:40~00:29:42】 「実際に 私は今も あなたのお宅にいますよ」【DVD:00:32:45~00:32:49】【Blu-ray:00:29:53~00:29:58】 「招待されて 招かれざる客にはなりたくない」【DVD:00:33:57~00:34:01】【Blu-ray:00:31:15~00:31:19】 ◇ピートとの電話にて 「前に会いましたね」【DVD:01:36:18~01:36:19】【Blu-ray:01:39:33~01:39:35】 「お宅で ご記憶は?」【DVD:01:36:27~01:36:30】【Blu-ray:01:39:43~01:39:46】 「極東では死刑宣告を― 下された場合― 特別な刑務所に送られる そしてある日 銃殺隊がいきなり― 後頭部に銃弾を撃ち込むんだ 【DVD:01:36:38~01:36:53】【Blu-ray:01:39:56~01:40:13】 ◇砂漠の小屋にて 「来いよ」(車内から小屋の前に瞬間移動)【DVD:01:56:17】【Blu-ray:01:57:35】 「アリスだと?あの女の名前はレネエだ」【DVD:01:57:27~1:57:32】【Blu-ray:01:58:30~1:58:34】 「名前を偽ったに違いない」【DVD:01:57:33~1:57:37】【Blu-ray:01:58:35~1:58:37】 「お前の名前は?お前の名は一体 何だ」【DVD:01:57:42~1:57:48】【Blu-ray:01:58:42~1:58:46】アンディの発言「ディックロラントの友達さ」【DVD:00:34:50~00:34:53】【Blu-ray:00:32:15~00:32:17】 彼らの発言をもとに、ミステリーマンの存在についてさらにまとめてみましょう。ディック・ロラントの友達らしいこと招かれざる客にはなりたくないので、招待されたときにだけやってくること以前にも家で会っていること同じタイミングで瞬間移動したり、複数の場所に存在できることフレッド/ピートもミステリーマンに以前会った記憶がないこと死刑宣告の話をつかって脅してきたり、アリスは偽名で本名はレネエだと言っていること アンディのセリフ「ディックロラントの友達さ」で、あたかもアンディが断言しているような印象を与えますが、原文は "I don't know his name. He's a friend of Dick Laurant's, I think." ですから、忠実に訳すなら「名前はわからないな。ディック・ロラントの友達じゃないかなあ」というような、あいまいな受け答えなのです。 ここで、このシーンをより細かく見ていきます。 ミステリーマンの立ち位置としては、アンディにはほぼ背を向けてしまっている状態です。【DVD:00:34:48~00:34:49】【Blu-ray:00:32:12~00:32:13】 つまり、アンディには斜め位置からの男の後姿しか見えていません。 フレッドとミステリーマンとの不思議なやり取りの直後ですから、もちろん私たちにもそれがミステリーマンにしか見えないわけですが、アンディの目には単なる黒服の小柄なオッサンの後姿しか見えていないのです。 さらに補足すると、ミステリーマンはフレッドと別れると、いったん人混みの中に姿を消します。【DVD:00:34:28~DVD:00:34:35】【Blu-ray:00:31:48~DVD:00:31:59】 フレッドは階段の踊り場に立っている黒服の男をミステリーマンと決めつけて話をすすめますし、私たちにも確かにミステリーマンが見えますが、これは単なる映像マジックであり、よく似た他人の後姿と解釈することができます(だからアンディを含め、このパーティ会場のすべての人にこの招待客が見える)。 したがって、アンディは自分が知らない招待客はディック・ロラントの招待客か友人だろうと単純に考えたことが導き出されます。 しかも、アンディが「ディック・ロラントの友達じゃないかな」といい加減なことを口走るので、鑑賞者はあたかもアンディにもミステリーマンが見え、またミステリーマンがディック・ロラントの友達であることを知っていると錯覚してしまうのです。 さてこのミステリーマンですが、人間だったら瞬間移動できませんし、同じタイミングで複数の場所に存在するという芸当などできるわけがありません。 よってミステリーマンは人間ではない何か、ということは最低限わかります。 幽霊(レネエまたはディック・ロラントの亡霊)や、悪魔や、死神などといった解釈もできるでしょう。 アンディ邸でのパーティではまだレネエが生きていたことを考えると、そこにレネエ自身の亡霊がミステリーマンとして出現することは考えにくいような気もします(パーティ自体がフレッドの妄想であるならそれも可能ではありますが)。 また、超常現象説に走ると、この手の映画作品はすべてそれで片づけられてしまいますので、ここではあえて超常現象という解釈は避けたいと思います。 招待されたときだけ姿を現す、勝手に「家」にあがり込んでくる、フレッドの記憶にないことを知っている存在、そして見るにもおぞましいその姿。 人間が持つ醜い姿、醜態とは何でしょうか? 怒りを露わにしたとき。 激しい憎悪と嫉妬に狂うとき。 殺意をおぼえたとき。 人間の醜い感情は、誰もが他人に見せまい、知られまいとしますが、悲しいことに他のどの感情よりも素直で、そして饒舌に真実を語るものです。 人は本当の感情にウソをつくことなどできないのです。 普段は自分の意識の奥深くに押しやっているこの醜い感情も、ふと何かのきっかけで、突如としてその姿を現すことがあります。 フレッドの身はパーティ会場にありながら、「頭」ではレネエの不貞について怒りの感情をくすぶらせていたので、ミステリーマンはその怒りの感情に招かれて姿を現したのです。 また、意識はどこにでも飛ばすことができますね。たとえばパーティ会場で楽しく過ごしながらも、家の戸締りやガス栓のことを心配したりすることなどは、誰もが普通にやっていることです。 ピートの人生でも、ミスター・エディ(=ディック・ロラント)が、愛人アリス(=レネエ)をピート(=フレッド)に取られたことに対する嫉妬心と、彼女を独占できない激しい怒りに加え、フレッドが実際に犯した殺人の罪の重さをミステリーマンに代弁させたりしています。【DVD:01:36:38~01:36:53】【Blu-ray:01:39:56~01:40:13】 他人にはとても見せられないような醜い感情を持つことは誰にでもありますが、フレッドとディック・ロラントがともに抱える心の闇、醜悪な部分は病的なほど深刻であり、彼らはこの闇の感情の部分で不本意にも共鳴しあっていたのです。 そして、その感情に先に気づいていたのがディック・ロラントでした。 ロスト・ハイウェイ・ホテルでフレッドに襲われた時点で、ディック・ロラントはフレッドがレネエの件で復讐にやってきたことを理解します。 首を掻き切られ、瀕死の状態になりながらも、自分の欲望を満たすためなら殺人にも手を染める自分の人間性をフレッドに重ねます。 「お前と俺なら―もっとすごいポルノを撮れたな」【DVD:02:06:24~~02:06:33】【Blu-ray:02:05:55~~02:06:04】 これは本編の意訳なので、この部分をバリー・ギフォードの小説『ナイト・ピープル』の一節に置きかえると、よりしっくりくると思います(【第二回】参照)。 「お前と俺は、よお、ほんとうにろくでもねえ野郎だな、そうだろ?」 一人の女をめぐって二人は同時に破滅コースに乗り上げてしまいましたので、同じ穴のムジナ状態に失笑せざるを得なかったのかもしれません。▲目次へ6.ピート ピートはフレッドの化身として独房の中で魔法のような登場を果たしますが、奇跡や魔法が起こるか、全身整形でもしないかぎり、まったく別の見てくれの他人になってしまうことはありえません。 フレッドからピートへの変身後は、ピートという赤の他人の人生劇場が展開されると思いきや、その中身はやはりフレッド自身であったというオチが終盤に示されます。【DVD:01:55:34~01:56:00】【Blu-ray:01:57:09~01:57:30】 また、フレッドに戻ってしまった後も、フレッド自身がそれに気づいていないのです。 当たり前のようにピートの服に着替え、すっかりピート気取りで小屋に消えたはずのアリスを探し回ります。【DVD:01:56:33~1:57:26】【Blu-ray:01:58:19~1:58:29】 ピートという架空の人物を演じているうちに、それが自分そのものなってしまっていたために、フレッドは化けの皮がはがれても、まだ自分がピートだと信じきっているのです。 今やミステリーマンと対峙しているのは、まぎれもなくフレッドという連続殺人犯なのですが、フレッド自身、自分が本当は誰なのかいまだにわかっていません。 だから序盤では余裕しゃくしゃくの薄笑いを浮かべていたミステリーマンも、とうとうしびれを切らして怒鳴り散らすことになります。 「お前の名前は?お前の名は一体 何だ」【DVD:01:57:42~01:57:48】【Blu-ray:01:58:42~1:58:46】 それでは、フレッドはどのようにして本当の自分を隠そうとしたのでしょうか。 これは、フレッドとピートの特徴と性格を比べてみるとわかりやすくなります。◇フレッド 年齢:32 婚歴:既婚 体形:ちょっとだけ腹出てる 職業:音楽家(テナー・サックス) 友人:ほとんどなし 性格:閉鎖的 性欲:淡泊 好みの女:レネエ 音楽の好み:うるさいジャズ 逮捕歴:殺人◇ピート 年齢:24 婚歴:未婚(恋人あり) 体形:筋肉質 職業:自動車整備工 友人:たくさん 性格:社交的 性欲:旺盛 好みの女:アリス(=レネエ) 音楽の好み:静かな音楽 逮捕歴:車の窃盗 腕利きの自動車修理工になりきり、激しいサックスの音色に強い拒否反応を示す徹底ぶりで【DVD:01:11:48~01:12:25】【DVD:01:12:04~01:12:48】、フレッドという存在を自分の中から排除したピート。 気のおけない仲間も可愛い恋人もいて、出所後から張り込みをつづける刑事に「あの野郎はお盛んな男だ」と皮肉を言われるほどの色男ぶりも発揮しますが、アリスの出現によって人生の歯車が狂いはじめます。 地元の連中に囲まれながら無難な人生を送るはずが、次第にアリスなしではいられなくなってしまいます。 それどころか、アリスにそそのかされて殺人まで犯してしまいます。 ピートが一人の女に入れ込んだせいで人生が完全に制御を失い、最終的に殺人に手を染めてしまうという流れは、まさにフレッドの人生そのものです。 ミスター・エディがご褒美によこしてきたポルノの VHS テープをピートがやんわりと断った【DVD:01:07:34~01:07:44】【Blu-ray:01:07:20~01:07:31】のは、レネエがポルノ業界に関わっていたことへの強い嫌悪感のあらわれであり、またレネエ殺しを暴いたのが VHS ビデオテープであった【DVD:00:42:39~00:43:43】ことから、フレッドが意識的にビデオテープを忌避しているからです。 フレッドの精神状態がサイコジェニック・フーガ(Psychogenic Fugue)で表現されることは【第一回】および【第三回】ですでにご紹介しておりますので疾患に関する考察はここでは省略しますが、フーガが遁走曲という音楽用語である点についても、リンチ監督および脚本家バリー・ギフォードが言及しています。 フレッドの人生を遁走曲風にあてはめていくと、ハイウェイを疾走してきた男が「ディック・ロラントは死んだ」というメッセージを残すというイントロに続いて、結婚生活に悩んでいるうちに精神に異常をきたした男が妻に対する嫉妬で怒り狂い、第一級殺人犯として死刑判決を受けるというメインテーマに流れつき、その後に続いてピートの人生が始まるものの、結局は同じように女が原因で殺人を犯す流れで収束し、愛する女も消えたあとで(レネエは死亡、アリスは消滅)、再び「ディック・ロラントは死んだ」というメッセージを残し、ハイウェイをひた走るエンディングに向かっていくという構成になります。 はじめと終わりが同じ構成でつなぎ合わされているので、無限ループ、メビウスの輪、ネバーエンディングストーリーとも表現できますね。 ▲目次へ7.シーラ ピートの恋人として登場するシーラですが、彼女もフレッドの妄想世界の住人です。 黒髪のショートヘア、黒い(暗色)マニキュアが特徴の彼女は、犬のような従順さでいつも愛情に飢えていますので、ピートにとってはとても都合のいい女なのです。 ピートの両親との関係は良好ですが、ピートにはいいように利用されてばかりなので、見ていてとても哀れです。 しかし、最後にはピートの浮気を知り、火がついたように怒り狂います。【DVD:01:33:58~01:34:19】【Blu-ray:01:36:54~01:37:19】 黒髪、黒いマニキュアはレネエの特徴にも一致します。 レネエをシーラに重ねると、レネエにもシーラのように自分を求めてきてほしかったというフレッドの期待が透けてみえてきます。 また、浮気をしたピートに対するシーラの激しい怒りは、ほんとうは正面から堂々とレネエの浮気行為を追及するべきだったという、フレッドの後悔も感じられます。 ざっとまとめるとこのような感じになりますが、そのほかにも、シーラは「あの夜」ピートに何が起こったかを知る数少ない人物の一人でもあります。【DVD:00:00:50:56~00:51:08、01:24:52~01:25:02】【Blu-ray:00:50:11~00:50:23、01:26:44~01:26:52】 「あの夜」の詳細については別項にまとめます。 シーラは「あの夜」のことがあってから別人みたいになってしまったとピートを責めます。【DVD:01:34:25~01:34:31】【Blu-ray:01:37:26~01:37:33】 ここで、二回目に登場する「あの夜」のシーンにもどってみましょう。【DVD:01:24:52~01:25:02】【Blu-ray:01:26:44~01:26:52】 シーン最後に惨殺されたレネエの死体がチラっと映りますね。 「あの夜」、ピート(=フレッド)が別人のようになり、恐ろしいことが起きた(シーンの最後にレネエの惨殺死体が映る)ことから、「あの夜」は、正気を失って別人のようになってしまったフレッドがレネエを殺してバラバラにした夜であったことが導かれます。 さらに、「あの夜」のことを言ってしまいたいシーラは、フレッドの心の中に潜むかすかな良心のあらわれであるのに対し、ピートの両親があえてピートにそれを教えないようにしたり、警察には言わないようにしようとするのは、フレッド自身が「あの夜」のことを封印しようとする強い意志のあらわれであり、彼の頭のなかでは常にこの二つの意識がせめぎあっているのです。▲目次へ8.ミスター・エディ ミスター・エディはフレッドが知るディック・ロラントと同一人物ですが、先述の考察のように、実際はディック・ロラントがどんな人物だったのかということは明確になっていません。 しかし、フレッドの妄想世界に登場するエディの人物像はかなりはっきりしたものになっています。ポルノ映画会社の社長であるマフィア一味のボスである(エディ自身、ボディガード、アンディの羽振りのよさからみて、裏社会とつながっているのは明らか)ポルノ映画の監督、製作、スカウト、営業活動をアンディに任せているスカウトしてきた女を強引な方法でポルノ映画に出演させる現役女優のアリスを愛人にしているマニア向けのポルノ作品を製作しているカッとなると人が変わったようになる嫉妬深い保身や欲望のためなら非道きわまりないことも平気でやってのける病的ともいえるほど執拗にアリスを束縛したがっているミステリーマンと親交がある これらもすべてフレッドの妄想がつくりあげたエディの特徴ですが、フレッドがレネエ出演のポルノ映画をチェックしたり、アンディのパーティに参加していくうちに、レネエ、ディック・ロラント、アンディの関連性を勝手に想像した結果でしょう。 上記のうち、赤字で示した部分はすべてフレッドの性質に一致します。 しかも、これらの極端に醜い感情によって、ミステリーマンが呼び出されてくるとことまで一致しています。【DVD:01:36:14~01:37:00】【Blu-ray:01:39:29~01:40:19】 フレッドはレネエが出演したポルノ映画に対し強い不快感を示していますが(だからパターンを変えて何度も登場する)、実はフレッド自身がそれ以前からわりとこの趣向の作品を好んで鑑賞していた可能性も否めません。 ポルノ映画大好きだが、自分の女が出演するのは絶対に許せないというのは、男にはよくありがちな理屈だからです。 赤と黒という、あまり人が好んで使わないような配色で統一されたフレッド邸の内装、正気の一線を超えてしまったようなジャスサックス演奏、セックスの日が決まっているなど(フレッド側が性欲をコントロールしているのか、倦怠期を乗り越えるための工夫なのか)、異様な緊張感と義務感に満ちた夫婦生活がこの二人から伝わってくることも原因しているのかもしれません。【補足】 フレッドのセックスの日が決まっているであろう理由については、レネエの寝姿と、フレッドの出現場所がヒントになります。レネエがフレッドのライブハウスに行かなかった日の夜は、レネエは黒いノースリーブのナイトガウン姿で寝息を立てています。【DVD:00:10:48~00:10:56】【Blu-ray:00:09:38~00:09:48】セックスの夜は、フレッドは全裸でスタンバっています。【DVD:00:15:02~00:15:26】【Blu-ray:00:12:49~00:13:17】 そしてレネエが黒いガウン姿で登場しますが、その下は全裸です。レネエはバスルームで「準備」を済ませ、裸のままベッドに入ります。【DVD:00:15:26~00:15:56】【Blu-ray:00:13:18~00:13:47】 レネエの動きをマップ上で示すと、このようになります。二本目のビデオテープが届けられた朝、二人とも犬の鳴き声がうるさくて目を覚ましてしまいますが、「早起きだな」と言いながらパジャマ姿のフレッドが姿を見せる方向は、楽器の練習に使っている方の寝室になります。【DVD:00:21:56~00:22:25】【Blu-ray:00:19:50~00:20:21】 フレッドの動きをマップ上で示すと、このようになります。 これらの情報から、普段は二人とも全裸で眠っているわけではないことは明らかですし、生活のリズムの違いや、夜通し行われるフレッドのライブ活動や楽曲制作などに配慮して、フレッドは楽器の練習につかっている寝室で一人で寝ていることなどが導かれます。 現実では忌まわしい存在のはずのディック・ロラントが、虚構の世界でエディとして出現する理由には、次のように推測できます。ディック・ロラントにレネエを取られたので、女を取られたくやしさがどんな気分かをエディに思い知らせてやろうとした。ディック・ロラントを殺害したという罪の意識がエディとして現れた。レネエは喜んでポルノ業界に足を踏み入れたわけではなく、アンディにだまされたり、エディに強要されたりしたからだと思いたがった。▲目次へ9.アリス アリスはピートの人生を破滅させる存在ですが、なぜフレッドはわざわざ妄想世界にまでアリスをレネエの化身として登場させたのでしょうか。 最愛の妻を殺してしまった強い悔恨の念がそうさせたことがまず考えられますが、彼にとって女はレネエただ一人なので、どんな女を想像したとしても、最終的には理想の女はレネエの容姿に行きついてしまうといったところでしょう。 天才的な詐欺師や想像力豊かな小説家でもなければ、ベースモデルもなしに人物像をこと細やかに想像することはまず無理でしょうから。 それでも、アリスがプラチナブロンドの巻き毛だったり、いつも下着同然の衣装だったりするところには、フレッドの妄想力の痕跡が見られます。 フレッドはピートとしてアリスと燃えるような理想の恋に落ちますが、いかんせん容姿がレネエですから、アリスと過ごす時間が増えればイヤでもレネエ的な要素が混入しきてしまいます。 なかでも決定的なのは、「あの夜」のシーン【DVD:01:24:52~01:25:02】【Blu-ray:01:26:44~01:26:52】の最後に惨殺されたレネエの死体がチラっと映るところです。 フレッドのレネエ殺しをフラッシュバックしたことをきっかけに、ピートの行動は一気に人道を外れていきます。 すっかり記憶から切り離したはずのアンディ殺害を妄想世界でもう一度やらされるハメになります。【DVD:01:39:40~01:41:16】【Blu-ray:01:43:21~01:44:50】 そしてその手助けをするのがアリスです。 彼女が天使のような性格だったとしたら、フレッドはどうでもいい存在のアンディを殺した事実をすっかり記憶から消し去ってしまうでしょう。 しかし、アリスは私利私欲のために男を渡り歩くずるがしこい女ですから、ピートにアンディを殺すように働きかけ、そのグロテスクな光景を目の前で見せることによって、その罪の重さをわからせようとします。 アリスはフレッドにとって現実には手に入れられなかった最高の恋愛対象であると同時に、これまでの殺人に対する懺悔の対象なのです。 ところが、いくら最高の女であっても、ピートが強く求めたとしても、アリス(=レネエ)は決してピート(=フレッド)のものにならないことが、砂漠のシーンで示されます。【DVD:01:53:41~01:55:03】【Blu-ray:01:55:41~01:56:39】「あんたには あげないわ」【DVD:01:54:48~54:53】【Blu-ray:01:56:26~01:56:30】 この一連の流れは、フレッドがレネエを殺してしまったので、彼女はもうこの世には存在しない(人殺しをした事実は変わらない)ということと、人の心はどんな手段を使っても束縛できない(独占できない)という二つの意味が込められています。▲目次へ
2016.05.03
謎ときをしようと思って何度も挫折したあなたに贈る『ロスト・ハイウェイ』シリーズですが、第二回をご覧になって、かなりテキトーな解釈しちゃってんよこの人と思った方もいらっしゃるかもしれません。 そこで、第三回は製作側のネタばらし+αでお送りします。 作品をすでにご覧になった方を対象としていますので、いきなりこちらのページにお越しいただいた方は、第一回をご覧いただくとよいかもしれません。 謎ときをしようと思って何度も挫折したあなたに贈る『ロスト・ハイウェイ』 【第一回】"[引用はじめ]必要だったのは、しかるべき状態であって、混乱させることではない。謎を感じるということさ。こんなことを言った人がいる。『謎はよしとする。混乱はだめだ。この二つには大きな違いがある』[引用おわり]"『ロスト・ハイウェイ』 リンクをクリックすると、記事の各セクションに移動します。【第一回】『ロスト・ハイウェイ』作品紹介とわかりやすいあらすじ【第二回】ストーリー解説はじめにリンチ監督&バリーのネタばらし 1.『ロスト・ハイウェイ』について 2.「ディック・ロラントは死んだ」というセリフ 3.サイコジェニック・フーガ 4.フレッドについて 5.レネエとアリス 6.ディック・ロラント とミスター・エディ 7.アンディ邸のパーティ 8.白塗りの男(ミステリーマン) 9.「お前と俺ならもっとすごいポルノを撮れたな」のセリフについて 10.「あの夜」のこと 11.フレッドの処刑【第四回】登場人物分析はじめに 映画『ロスト・ハイウェイ』の脚本は、デヴィッド・リンチ監督(以下リンチ監督)と、小説家バリー・ギフォード(以降バリー)の共同執筆であることはご存じの方もいらっしゃると思います。 互いにバラバラの構想を持ち寄り、意味について詳細を詰めないまま脚本を書き上げて映画を完成させたというのもおもしろく、またキャストたちもそれぞれ異なる解釈をしたりしています。 鑑賞者にも同じことがいえます。 ある人はリンチ監督に近い解釈をするでしょうし、またある人はバリーの解釈に近いストーリーを組み立てるでしょう。また、ある人は誰も思いつかないような解釈をするかもしれません。 いずれにせよ、結局のところ全容は明かされていないため、模範解答がないのが正解といえるでしょう。 リンチ監督は、『ロスト・ハイウェイ』の全容を明かせない理由について、つぎのように語っています。"[引用はじめ]Film is so many things, and you work for two years or more to get it to feel absolutely correct, it's correct that you can make it. And then, to translate two hours of an orchestrated thing into some words, especially when you don't have a gift for words, you always fail. So I can't tell you.[引用おわり](訳)フィルムはいろいろな事物の組み合わせだ。完全にこれだという境地に達するまで二年以上もの年月をかけてようやく完成にたどりつく。だから、天才的な言語能力の持ち主でもなければ、この二時間にもおよぶシーンの集大成を語ろうとしたところで、ことごとく失敗するだろう。だからそれはできない。"(チャーリー・ローズとのインタビューより) 一見つかみどころのない作品ですが、実はほんの些細なところにも緻密な計算が施されています。説明するよりも見せることに徹していることがわかります。 バラバラに見えるシーンは、鑑賞回数を重ねるたびに、あなたの頭のなかに強烈な印象として刻まれていきます。時間がたつにつれて霧が晴れていく感覚に近いかもしれません。 逆に、鑑賞すればするほど謎が深まってしまったという方もいらっしゃると思います。 しかし、それでも何がどうなったのかという明確な流れは存在しており、解釈のヒントとしてリンチ監督とバリーが明示的に示している情報もあることはあります。 リンチ監督が情報を小出しにする一方で、バリーは視聴者に向けてより具体性のある解釈へのアプローチを試みているところにも、両者の性格の違いが色濃く表れています。注意:以降は情報の正確性を示すために多数の引用を含みます。 特筆しないかぎりは、引用部分は当方所有の扶桑社ミステリー『ロスト・ハイウェイ』からの引用となります。 これにより、今までの不明点が解消する可能性は高くなるかもしれません。しかし同時に、制作側の情報提供によって、自由に想像する楽しみを奪われたような気になる方もいらっしゃるかもしれません。 それをご了承のうえ、ご覧いただければと存じます。▲目次へリンチ監督&バリーのネタばらし1.『ロスト・ハイウェイ』について 映画『ロスト・ハイウェイ』は、バリーの小説『ナイト・ピープル』から着想を得ています。"[引用はじめ] まず、バリー・ギフォードが『ナイト・ピープル(Night People)』という本を書いていて、そこに“ロスト・ハイウェイ”というフレーズがあったんだ。いつだったか定かでないけど、バリーにこう言ったよ。この『ロスト・ハイウェイ』というタイトルにすごく愛着を持っているから、一緒に脚本でも書かないかって。[引用おわり]"(8ページ) また、同氏の小説『ナイト・ピープル』の冒頭のアパッチ(ならず者)の章で、元囚人のレズカップルが車で繰り出すシーンの会話にハンク・ウィリアムスの『ロスト・ハイウェイ』の曲のイメージがそっくりそのまま使われています。 『ロスト・ハイウェイ』の歌詞は、人生の道を踏み外した罪だらけの男がツケを払わされるという内容で、一度道を踏み外したらあとは転がりつづけるだけという、現実の厳しさを物語っています。 主人公フレッドの破滅の人生にぴったり重なりますね。 リンチ監督は『ロスト・ハイウェイ』の着想を得たときの様子について、インタビューのなかでもくわしく答えています。"[引用はじめ]Well actually, part of it was two words "Lost Highway," which Barry Gifford had written in his book "Night People."For some reason those words made me dream.It wasn't any story, it wasn't any... it was a possibility, a dreamlike possibility.And then, the last night of shooting of "Fire Walk with Me", I had a thing roll through my head, which was an idea but sequences of ideas.And not controlling at one bit, unfolded, and I held that until Barry and I got together and I told him that, and he happened to like that.And the title and that idea was the starting point.And then, you go from there....But a starting point focuses you in one area, and when you get focused, it became like a magnet and you can together pull things out of, like a doorway, and they come out and show themselves.[引用おわり](訳)実をいうと、構想の一部は『ロスト・ハイウェイ』という二つの単語は、バリー・ギフォードの本『ナイト・ピープル』に書かれていたものなんだ。どういうわけか、この二つの単語のとりこになってしまった。ストーリーとしてまとまっているわけでもなかった。まったくね……一つの可能性、夢のような可能性だったんだ。そしたら、映画『ファイアー・ウォーク・ウイズ・ミー』撮影最終日の夜に、頭の中にパッとアイデアがひらめいたんだよ。一連のアイデアがね。それで、バリーに会うまでそのアイデアを手つかずのまま温めておいた。そして彼に伝えたところ、たまたまそのアイデアを気に入ってくれてね。このタイトル、そしてそれがスタート地点になったんだ。そしてそれから物事が動きだしたよ……。スタート地点はある一点に焦点が合わさったものだから、そこに集中することで、それが磁石のはたらきをするようになる。そして、扉の入り口でやるみたいに、その向こうにあるものを一緒に引きずりだしてきて、その出てきたものがようやく姿をあらわすという流れだ。"(チャーリー・ローズとのインタビューより)▲目次へ2.「ディック・ロラントは死んだ」というセリフ これは、リンチ監督自身の体験をそっくりそのまま冒頭のシーンとして映像化したものです。"[引用はじめ]ある朝、僕が目を覚ますと、インターホンが鳴った。男が『デイヴか!』って言うから、『そうだ』と答えた。そしたら、その男が『ディック・ロラントは死んだ』というんだ。そこで僕が『何だって?』と聞き返すと、そう、何の返事もない。そこから玄関は見えなかったから、わざわざ反対面まで行って、大きなガラス窓から外をのぞいてみた。やっぱりそこには誰もいない。僕はディック・ロラントが何者なのか知らない。僕が知っているのは、彼が死んだってことだけなのさ![引用おわり]"(8ページ) 『ディック・ロラントは死んだ』シーンが、リンチ監督が体験したとおりの家の間取りで展開されているところがおもしろいですね。 実は、このリンチ監督の不思議な体験には続きがあります。"[引用はじめ]Now, my next door neighbour, his name was David also. 'Cause I did not know any Dick Laurent, and I don't know what that meant, but that happened.[引用おわり](訳)で、すぐ隣の家の住人もデヴィッドなんだ。僕はディック・ロラントのことは知らないし、それが何を意味するかもわからない。だけど本当にそんなことがあったんだ。"(インタビューより)▲目次へ3.サイコジェニック・フーガ リンチ監督はフレッドの精神状態をサイコジェニック・フーガと表現しています(【第一回】参照)。 映画の宣伝担当が見つけてきた言葉だと語ったうえで、この精神疾患に『ロスト・ハイウェイ』のイメージを重ねています。"[引用はじめ]ひとつのことから始まり、すぐさまそれとは別のものに移行し、次いで、それがまたもとに戻る。そしてそれが“ロスト・ハイウェイ”であるというわけだ。この病を抱えている人たちが病を再発してしまうのかしないのか、あるいはいつまで遁走が続くのかは、僕にはわからない。でも、二つのテーマが撹乱し、別々の方向性を見い出し、その後、またひとつになるなんて、そうとういかしてるよ。[引用おわり]"(P.32) これに対してバリーは、出発点となった小説『ナイト・ピープル』の構成と、『ロスト・ハイウェイ』の構成の違いをより具体的に語っています。"[引用はじめ]出発点となった『ナイト・ピープル』の構成は、シュニッツラーの『輪舞』に基づいているが、『ロスト・ハイウェイ』はそれとは違うものにしたい。そこで、あたらめて考え出したのがフーガ(遁走曲)である。音楽用語に即していえば、ある場所を起点に始まり、二つに分かれ、また最初に戻ってくる物語になっている。フレッド・マディソンの場合は、“心因性” 遁走の形をとって、心理的な恐怖をともなった変容を経験することになる。彼は現実から空想に出発する。だが、そこでも、いわゆる“現実”世界で味わった以上に、自分の心を奪った女性をコントロールできなくなってしまう。[引用おわり]"(P.43) バリーは脚本の第一稿を書き上げてからしばらくして、新作小説のプロモーションのためにスペインに飛びました。 そこで隣に乗り合わせた女性が偶然にもスタンフォード大学の教授兼精神科医だったため、ロスト・ハイウェイの構想とフレッドの心理状態について語ったところ、それはサイコジェニック・フーガだと即答したために、より確信をもって第二稿に臨んだというエピソードもあります。▲目次へ4.フレッドについて フレッドの人物像については、リンチ監督、バリー、フレッドを演じたビル・プルマンがそれぞれの解釈を展開しています。 リンチ監督による解説では、フレッドは一見どこにでもいるような男で頭も切れるが、同時に深刻な問題を抱えている人間だと表現しています。 バリーによるフレッドの人物像はより具体的です。"[引用はじめ]フレッド・マディソンは、妻レネエを疑惑の目で見ている。浮気をしているのではないか。あるいは自分と知り合う前からのつきあいのある胡散臭い連中といまだに関わっているのではないか、気を揉んでいる。[引用おわり]"(41ページ) ビル・プルマンによる解釈では、サックス奏者、セックス男、セックスの神というイメージをふくらませながら、主人公フレッドの演奏風景について言及し、楽器に口を付けて観客の女たちをたぶらかす姿は、まるで浮気行為そのものだと表現しています。 ちなみにあのライブハウスのソロ演奏シーンでは、実際にビル・プルマンがサックスを演奏しています。▲目次へ5.レネエとアリス レネエとアリスが同一人物である点については、リンチ監督もバリーも一致しています。"[引用はじめ]もちろん、レネエとアリスは同一人物である。彼を夢中にさせた女性であり、彼を地獄の先まで引っ張っていく女性なのだ。[引用おわり]"(43ページ) レネエ/アリスを演じたパトリシア・アークエット自身も一人で二役または別人格を演じるつもりで臨んでいましたが、リンチ監督から同一人物としてふるまうように演技指導を受けています。"[引用はじめ]My first concept was there were two different people, so I was thinking to look at them from an acting point of view that I was gonna make them very different; vocal pattern, the way they move, their laughs, and all this ... so it was sort of exciting. And then David said that "No, no, no, they are the same person! " So then, you have to cross over the reality border because it can't really be the same person and one of them die?"[引用おわり](訳)最初は二人の別人を想定していたために、演技上、声の調子、動き、笑い方など、そういったことを使いわけるつもりでいて、それはそれでおもしろそうだった。そうしたら、デヴィッドから「いやいや、別人じゃなくて、同一人物なんだよ!」って言われたの。 ということは、二人のうち一方が死ぬなら同一人物はあり得ないから、現実路線は通用しないってことなのよね?"(インタビューより)▲目次へ6.ディック・ロラント とミスター・エディ 映画の終盤で、フレッドがディック・ロラントをマグナム銃で殴るシーンの撮影の際、リンチ自身がスタッフを交えながら「(ディック・ロラントではなく)エディを殴る」と表現しているため、彼はエディであることが導き出されます。 『ディック』という愛称が男性器を指す俗語であることをご存じの方も多いと思います。 ポルノ業界ではディック・ロラントという俗名が同業者たちに使われていて、それを刑事たちも使っていると解釈すると、わりとしっくりくるのかもしれません。 リンチ監督はミスター・エディ/ディック・ロラント役にロバート・ロッジアを起用した理由についてを、インタビューの中で語っています。"[引用はじめ]Robert Loggia wanted to play Dennis Hopper's part in "Blue Velvet", and came on the day we were casting an actress. And there were two people, a young guy to test for Kyle's part and Robert Loggia to test with this actress for Dennis Hopper's part, Frank Booth.I didn't get to Robert and when I went out to tell him, you know, we had a shutdown, he became very upset. And I never forgot how upset he got.So it was sort of perfect I saw an anger that he was sitting on and it just made him perfect to play Mr. Eddie/Dick Laurent.[引用おわり](訳)ロバート・ロッジアは映画『ブルー・ベルベット』で、デニス・ホッパーが演じた役をほしがっていて、女優の配役を決める日にやってきた。二人の役者が来ていた。一人はカイルが演じた役のテストのために来ていた若者と、それから、この女優とロバート・ロッジアをフランク・ブース役としてテストするためにね。役はデニス・ホッパーのものになったが。ロバートは選ばなかった。で、配役からもれてしまったことを本人に伝えにいったんだが、そのときのロバートの取り乱しようといったらなかった。今でも彼のあの怒りは忘れられないよ。だからある意味、あの彼の全身から発せられる強い怒りを見たこともあって、ミスター・エディ/ディック・ロラントなら、まさに彼が適役だったってわけだ。"(チャーリー・ローズとのインタビューより) 後続の車からあおられてブチ切れたエディが、運転手を車から引きずり出して交通ルールの大切さを怒鳴りながら説教するシーンは、皆さんの脳裡にも強烈に焼きついていると思いますが、これはリンチ監督がローレル・キャニオンの山道で後続の車からネチネチと煽られたという実体験がもとになっています。 そのとき、たまたまリンチ監督の車に同乗していたマイケル・J・アンダーソンのインタビューを引用します。"[引用はじめ]It was the time when I was riding in the car with him and Mary, and we were going down the Laurel Canyon, you know the winding thing.And then some guy came up behind us and he was honking. Uh, you know, it was a road and everything. And then he pulled over, and let this guy drive passes and then he continued down the road. And then I said to him, "Well David, you are a nicer guy than I am." And then, he turned to me and he got, "No, I'm not! " He got, "I really want to destroy that fellow up there, but I just don't have time."[引用おわり](訳)デヴィッドとメアリーと三人でローレル・キャニオンを下っていたときのことだった。ご存じのとおりあの曲がりくねった道でね。そのうち、後ろの奴がぴったりくっついてきてクラクションを鳴らしたんだよ。こんな道しかないところなのにだよ。彼が路肩に寄ってそいつに道を譲ってやったら、そいつはさっさと道を下っていったよ。だから言ってやった。「デヴィッドは俺よりお人好しだなあ」ってさ。すると彼はこちらに向き直って言ったんだ。「とんでもない!本当はあいつをぶちのめしたくてたまらないんだが、あいにく時間がないんでね」"(Twin Peaks -- The Man from Another Place インタビューより)※メアリーはリンチ監督の同僚兼パートナー。三人目の妻となったが現在は離婚している。 というわけで、このシーンはリンチ監督の実体験にもとづくお説教コーナーになっていると同時に、当時はその男をぶちのめす時間がなかったリンチ監督が、『ロスト・ハイウェイ』の映像のなかでそれを実現したという形になっています。 以下、トークショー番組出演時にリンチ監督が語った交通ルールの大切さを引用します。"[引用はじめ]It just strikes me that we could talk about what's happening in Los Angeles, maybe many places in the world. People are going through red lights. It's a big problem. And I understand the frustration of the light, you know, turning yellow .... the cars in the front are going ahead, but it's extremely important to stop for the red lights.[引用おわり](訳)ロサンゼルスや世界中のいろんな所で起こっている問題についてひらめいたんだ。赤信号を無視する人たちがいる。これは大問題だ。信号が黄色に変わるときのフラストレーションは理解できる……前の車はどんどん先に行ってしまうからね。だが、赤信号で停車することはきわめて重要なことなんだ。"(ジェイ・レノのトークショーより) リンチ監督は、他の作品の中でも交通ルールのお説教を映像化しています。 たとえば、『ワイルド・アット・ハート』[1990年](こちらも原作はバリーの小説)では、交通事故で致命的なケガを頭に負った少女が、頭から出てきた脳みそをいじりながら死んでいく様子が表現されています。『ロスト・ハイウェイ』の後継版的な位置づけの映画として知られる『マルホランド・ドライブ』[2001年]では、夜のマルホランド・ドライブで危険なカーチェイスを楽しむ若者の車が主人公の車に衝突するシーンが描かれています。 ちなみに、『ロスト・ハイウェイ』でエディが交通ルールの説教を垂れている場所も、マルホランド・ドライブです。ロサンゼルス北部に位置するマルホランド・ドライブは急勾配のうねりくねった山道が特徴で、毎年多数の犠牲者を出している交通事故の名所なのです。▲目次へ7.アンディ邸のパーティ アンディのプールつきの豪邸で開かれるパーティの招待客の女性の中には、本物のストリッパーたちも投入されています。このシーンの最初の方に映るプールサイドやプールの中に全裸の人たちが紛れていますので、気になる方はもういちど確認してみましょう。 つまり、そういう業界の人たちが集まっているパーティであることが明らかになっています。▲目次へ8.白塗りの男(ミステリーマン) ミステリーマンの解釈もリンチ監督とバリーとではそれぞれ異なっており、リンチ監督は彼のことを邪悪な存在という抽象表現にとどめている一方で、バリーによる描写はより具体的なものになっています。"[引用はじめ]だが、彼の姿はフレッドにしか見えない。ミステリー・マンは、フレッドのアルター・エゴ(分身)ではない、アルター・イド(不安や苦痛、不快や恥など、自分にとって不都合な感情や欲求のなりかわり)なのだ。[引用おわり]"(41ページ)▲目次へ9.「お前と俺ならもっとすごいポルノを撮れたな」のセリフについて エディが頭を撃ち抜かれる直前の名ゼリフですね。作品の中では絶妙なハマり具合になっていますが、原文は ”You and me, mister... we can really out-ugly the sum'bitches, can't we?” ですから、「お前と俺は本当に最低のクズ野郎だ」がもっと近くなると思います。 リンチ監督とバリーは小説『ナイト・ピープル』からこのセリフを『ロスト・ハイウェイ』に採用することを決めていて、バリーによる解釈では主人公の体験としてカフカの『変身』を挙げています。"[引用はじめ]彼はあるストーリーを考えていて、それを私に話してくれた。ある日、とある人物が目覚めると別人になっていた、というのはどうかな?という。前の日までとは“まったくの別人”になる。わかった、わたしは言った。カフカの『変身』だろ。でも、ゴキブリに変身させるわけにはいかない。そんなわけで、出発点を設定した。タイトルは『ロスト・ハイウェイ』にする。『ナイト・ピープル』の終わり近くに出てくる一文(『お前と俺は、よお、ほんとうにろくでもねえ野郎だな、そうだろ?』)を使う、変身という考え方については変えない。[引用おわり]"(40ページ) 実はこのセリフは、バリーの小説『ナイト・ピープル』の序盤で、前科持ちのレズカップルのドライブ中にも登場します。"[引用はじめ]Money makes 'em meaner'n shit, don't we already know. Money's the greatest excuse in the world for doin' dirt. But you and me can out-ugly the sumbitches, I reckon.(訳)金は人を狂わせるからね。どんな汚いことだって世の中やっぱり金がモノを言う。でも私らはその中でもどうしようもない部類だと思うわ。[引用おわり]"(『Night People』 5ページ)▲目次へ10.「あの夜」のこと ピートがどうにかなった「あの夜」にはいったい何があったのか。 それは結局作品の中には出てきません。そして、それは制作側も説明がつかなかったために、撮影後に意図的に削除したとリンチ監督は語っています。"[引用はじめ]刑務所長室に、ピートの両親がやって来て、刑務所長、スモーディン医師、ルノウ主任の全員と話すシーンもあった――五ページにわたって。それを結局三、四カットにまで削り、誰も一言もしゃべらなくなっている。(中略)あのシーンのやりとりでは、説明できないことを説明しようとしていた。だから答えよりも疑問ばかり出てきてしまったんだ。それで、あそこではいらなくなった。実際、あそこにあったら邪魔だったさ。バリーと脚本を書いたときにはそれがわからなかっただけだ。[引用おわり]"(30~31ページ) 結局、「あの夜」になにが起こったのかは、鑑賞者が想像するしかありませんが、リンチ監督がこのように説明してくれたおかげで、より明確になったことがあります。 それは、ピート・デイトンという人間自身は存在するということです。 想像世界に生きる抽象的なものでもなく、幽霊でもないことは明確に示されていることになります。▲目次へ11.フレッドの処刑 電気椅子のシーンは撮影されましたが、製作過程で削除されました。 処刑されたのは死刑囚サミーでしたが、フレッドはもちろん彼の処刑をみることはできないにもかかわらず、そこにいるような錯覚を起こし、いずれ回ってくる自分の順番に脅え、絶望的になります。 処刑シーンのカットがところどころ作品の中に挿入されていますので、気になる方は注意深く見なおしてみましょう。"[引用はじめ]刑の執行中に、彼が刑の様子を想像し、反応を示すショットもある。こういったシーンを撮ったために、たとえ死刑のシーンは削ってしまっても、フレッドが反応を示すショットが、ピート・デイトンに変容するシーンにぴったり合ったんだ。[引用おわり]"(30ページ)
2016.04.10
前回は、デヴィッド・リンチ監督映画『ロスト・ハイウェイ』[1997年]のあらすじとみどころをご紹介しましたが、今回はストーリー解説編です。 解説とはいっても、監督自身がストーリー全体の模範解答を提示していないため、あくまでも個人的な解釈となります。 すでに作品をご覧になった方を対象としておりますので、ここでは登場人物の名前をそのまま用います。 『ロスト・ハイウェイ』は、ストーリの大部分が主人公フレッド・マディソン(以下フレッド)の歪んだ記憶と妄想で構成されています。 精神を病んだ男の脳内世界ですから、支離滅裂な映像の寄せ集めになっています。 したがって、すべてのシーンにムリやり意味を持たせてつなげようとすると、ストーリーそのものが破綻してしまいます。 まずは、フレッドの記憶と虚構世界のストーリ解説、その後に数少ない現実部分を使ってストーリー解説をご紹介します。 どちらも、できるだけ時系列を正しい順に並べなおしてありますので、初見ではストーリーが理解できなかった方も、ある程度納得していただける構成になっているのではないかと思います。 ここに示すストーリ解説は独自に行った 2 パターンのプロット分析のうちの 1 つになります。 長文のためここでは 1 パターンのみご紹介しますが、残りのパターンはまた機会をみてご紹介できればと思っております。注意: 完全なネタばれ記事ですので、楽しみが半減すると困るという方は、この先をご覧にならないことをおすすめします。 また、ストーリーの構成上、ギャップが発生している部分は自分の知識や想像で補う必要がある作品でもあります。 次回でできるだけ根拠を示す予定ですが、多様な解釈の可能性が残されていることはあらかじめご了承ください。 リンクをクリックすると、記事の各セクションに移動します。【第一回】『ロスト・ハイウェイ』作品紹介とわかりやすいあらすじ『ロスト・ハイウエイ』ストーリー解説 妻の過去を知ってしまった男 ビデオテープ 白塗りの男 最後のビデオテープ 独房にて ピート アリス アリスの過去 恐怖の電話 逃避行 砂漠の小屋 追及 現実フレッドのウソを取り払うとストーリーはもっとわかりやすくなる ディック・ロラントは死んだ アンディも死んだ そしてレネエも死んだ フレッド逮捕 フレッドの最期:処刑は二度失敗した【第三回】制作側のネタばらし【第四回】登場人物分析『ロスト・ハイウエイ』ストーリー解説 インターフォンが鳴った。 「ディック・ロラントは死んだ」というメッセージを残して。妻の過去を知ってしまった男 フレッドはテナーサックス奏者として成功を収め、高級住宅街で悠々自適な生活を送っている。 彼にはセクシーで美しい妻、レネエがいる。 だが、交際期間が短かったせいか、フレッドはレネエの過去をあまり知らない。 結婚生活は穏やかなものだった。 レネエはいつもおとなしくて控えめで、夫に対してあからさまな不満を口にしない。 美人だが普段は何を考えているかわからないところがあり、フレッドは以前からレネエに対して漠然とした不信感を抱いていた。 その不信感をさらに募らせる要因となったのが、アンディという低俗な男の存在だった。 レネエはフレッドの前では口角をつり上げる程度の笑みしか見せない。それなのにアンディの前では楽しそうに声を立てて笑う。 顔をのぞき込めば気まずそうに視線を逸らすくせに、アンディとならじっと見つめ返すほどの積極性があった。 まるで別人のようだ。 「友人」の二文字ではとても片づけられないような親密な空気がこの二人の間には漂っていた。 アンディとは仕事関係で知り合った仲だとレネエは言うが、アンディの交友関係は健全なものとは思えない。 フレッドは、アンディに群がるハエ同然の連中が気に入らなかった。 挑発的な格好で身体をくねらせながら、色じかけで近寄ってくる厚化粧の女たち。 そしてそんな安っぽい女たちを相手にしているのが、高級スーツに身を包んだ中年男性たち。 どう見ても不自然な取り合わせだ。 それもそのはずだ。 アンディはポルノ関係のプロダクションに所属する男優兼スカウトマンであり、夜な夜な自宅で豪勢なパーティや怪しげな映画の上映会を開いては、スポンサーたちに「女優」の卵を斡旋していたのだ。 フレッドは、レネエがアンディと交友関係を続けることに強い嫌悪感を抱いていた。 レネエもこのような形で「発掘」されて、ポルノ業界に手を染めたのだろうと邪推したからだ。 フレッドはこっそりとレネエの過去を探った。 悪い予感は的中した。 彼女が出演した大量のポルノテープ。 中には、過激なプレイ中に殺人行為におよぶという、スナッフものまでもが含まれていた。 マニア向けポルノ・プロダクションというのは建前で、その実態は金のためなら犯罪まがいの行為に手を出すことも厭わないような連中だった。 その連中と一緒になってポルノ女優として活動していたレネエ。 オーナーのディック・ロラントに見初められ、かつては愛人として優遇されていただけでなく、フレッドとの結婚後も愛人関係が続いていたことを知る。 ポルノ出演という動かぬ証拠をつかんだ以上は、貞淑な妻のイメージはもうない。 猫をかぶったアバズレと結婚させられただけでなく、フレッドへの裏切りも目下継続中だ。 彼女が相手をしてきた男たちと自分が比較されることも屈辱だった。 夫婦の営みではレネエが完全にマグロ状態。 レネエにとってフレッドとのセックスは単なる義務行為でしかなく、フレッドは早漏ときている。 妻を満足させるだけの能力がないと認定されたも同然だった。 妻の不貞行為もさることながら、男としてのプライドをズタズタに引き裂かれ、レネエにも取り巻きの男たちにも殺意をおぼえるフレッド。 しかし、彼の嫉妬と殺意の念はポーカーフェイスの下に隠されていた。▲目次へビデオテープ 不思議なことが身の回りに起こり始めた。 ラベルのないビデオテープが自宅の玄関先に届くようになったのだ。 ビデオはモノクロで、自宅の外観を遠巻きに撮影したものだったが、ビデオが届けられるたびにカメラは室内の様子を映し出すようになっていた。 ビデオに二人の寝室が映っているのを見たとき、二人はいよいよ身の危険を感じて警察を呼んだ。 しかしながら、それ以上の事件性は認められず、結局気休めにしかならなかった。▲目次へ白塗りの男 アンディ主催の夜のパーティに夫婦そろって招待された。 レネエはアンディにぴったりと身体を密着させ、水を得た魚のようパーティを楽しんでいる。 パーティの雰囲気になじめない自分にいら立ちを覚えながら、とりあえず酔ってその場をしのごうと強い酒を立て続けにあおるフレッド。 ふと、招待客の男と目が合う。 全身黒ずくめで、白塗りの顔に真っ赤な紅を引いた初老の男で、人混みの中でひときわ目立っていた。 「前に会いましたね」と男は話しかけてきたが、まるでおぼえがない。 これほど薄気味悪い風貌なら、一度見たら忘れるはずがない。 おまけに、今あなたの自宅にいると、わけのわからないことまで口走っている。 ウソだと思うなら自宅に電話してみろと携帯電話を手渡され、半信半疑で自宅にかけてみると、目の前の男と同一人物の声がが受話器の向こうから聞こえてきたのだ。 招待されたから来たと男は言うが、正体を問いつめても不気味に笑うだけだった。 狂人かもしれない。 近くにいたアンディに白塗り男のことを尋ねると、ディック・ロラントの友達だという。 その名には聞き覚えがあった。あのインターフォン越しのメッセージだ。 『ディック・ロラントは死んだ』 メッセージを復唱してみると、アンディは感情的になって否定し、レネエはあからさまに動揺した。 パーティの帰り道、アンディに紹介されたという昔の仕事の内容を問いただすと、レネエは「覚えてない」とはぐらかした。 自分のやった仕事を忘れる人間などいるわけがない。 フレッドが仮定してきたことのすべては、このとき確信に変わった。▲目次へ最後のビデオテープ ふたたび、ビデオテープが届けられた。 カメラは今回も堂々と寝室に入り込んでいた。 だがそこに映っていたのは、バラバラに切り刻まれたレネエの遺体と、血まみれで半狂乱になっている自分自身の姿だった。 レネエに強い殺意をおぼえたのは確かだが、それは頭の中でだけだ。 だからこうやって映像を見ても、まったく身におぼえがないし、何の実感もわかない。 金と欲望のためなら何でもやりかねない連中とは違って、自分は善良で正しく生きてきた人間なのだから。最愛の妻を殺すなんてありえない。 しかし、胸騒ぎがした。 あわててレネエを探しまわると、そのまさかが現実のものとなっていた。 妻のバラバラの惨殺死体が寝室に転がっていたのだ。 ほどなくしてフレッドは逮捕された。 そして、妻を殺したという記憶をいっさい持たないまま、第一級殺人犯として電気イスによる死刑宣告を受けた。▲目次へ独房にて 身の潔白を証明できぬまま独房に押し込められ、死刑執行までのカウントダウンの恐怖におびえながら気力と体力を削る日々。 重度の不眠症と激しい頭痛がフレッドを襲う。 医者から睡眠薬を処方されたがまるで効果がない。 頭痛はいよいよピークに達した。 そのとき、不思議なことが起きた。 ありえない光景が眼前に広がったのだ。 黄色い炎を立ち上らせて燃える小屋。 その炎は逆再生の映像のように消えていき、そして燃える前の状態に戻った。 完全に元どおりになると、小屋のドアからあの白塗りの男がひょっこりと顔をのぞかせた。 脳天を貫くような痛みがフレッドを襲う。 床の上をのたうちまわっていると独房の壁にまばゆい光の穴が開き、フレッドはそこに飲み込まれていった。▲目次へピート 朝がきた。 巡回のためにフレッドの独房をのぞいた看守は、思わず目を疑った。 そこには赤の他人が膝を抱えて座っていたのだ。 妻殺しの死刑囚が独房から忽然と姿を消し、若い男と入れ替わっていたという魔術ショーのようなイベントに刑務所は騒然となった。 男の身元を調べてみると、数年前に車の窃盗で逮捕歴があるピート・デイトン(以下ピート)という若者だった。 身元が判明した以上、これ以上収監しておくわけにもいかず、ピートは釈放された。 ピート自身も、なぜ自分が独房で発見されたのかさっぱりわからなかった。 同居の両親はあわれむような表情を見せるばかりだったが、行方がわからなくなっていた息子が無事に戻ってきたことに安堵した。▲目次へアリス これまでの生活を取り戻したピート。 自動車修理工として職場に戻ると、さっそく上客が車を持ち込んできた。 エンジン音に雑音が混じっているようなので、同乗して不具合をみてほしいという。 制限速度で車を走らせているだけで、エンジンの不調に気づくピート。 エディと名乗るこの初老の男は、ピートの修理工としての見事な手腕に絶対的な信頼を寄せていた。 すっかり気を良くしたエディは、褒美としてラベルのないポルノテープをよこしてきたが、ピートはやんわりとそれを断った。 ちょっとした外出にも用心棒を従えるほどの人物なのだから、相当の大金持ちなのだろうということは想像がつく。 持ち物や言動などを見ても、エディが堅気の人間でないことは知れた。 しかも、一度キレると何をしだすかわからない凶暴な一面まで持ち合わせている。 怒らせでもしたら厄介なことになりそうなので、どんなに慕ってくれるお得意様であっても、できるだけ距離をおきたい相手だった。 しかし、エディはふたたびピートの職場に現れた。 今度はとびきりのプラチナブロンド美女を助手席に乗せて。 彼女の登場にピートは心を奪われた。 一目ぼれだった。 アリス・ウエイクフィールドという名のこのブロンド美女(以下アリス)もピートを気に入ったらしく、自分から声をかけてきた。 彼女がエディの愛人ということは承知していたし、ガールフレンドのシーラがいる手前、彼女の誘いを断ろうと努力はした。 しかし、アリスの強烈な性的魅力には抗えなかった。 事実、シーラを抱いても、性欲処理のためにどうでもいい赤の他人を相手にしているような感覚だった。 シーラとは独房で発見される前から付き合っていたはずなのに、過去のことはどうしても思い出せないのだ。 今でもその「赤の他人」という違和感はぬぐい切れていなかった。 だが、アリスは違った。 強烈な美しさはもちろんのこと、抱いた瞬間にこの女だと思った。 アリスもピートにただならぬ運命を感じているようだった。 そして、二人は磁石が引き合うように密会を重ねるようになった。▲目次へアリスの過去 よいことは長くは続かない。 後ろめたいことならなおさらだ。 二人の逢瀬はすぐにエディの知るところとなった。 エディが自慢のマグナム銃をちらつかせながらピートの職場にやってきた。 平静をよそおってはいたものの、これまで時間をかけて築き上げてきた信頼は跡形もなかった。 アリスも死の恐怖におびえていた。 殺されるくらいなら、金を調達して二人でどこか遠くへ逃げようと提案するアリス。 格好のカモがいるという。 アンディという男で、股さえ開けば喜んで金を払う低俗な人間だが、金はたんまりと持っているという。 アリスが堅気の女ではないことは百も承知だったが、ここまでだったとは。 ショックを隠しきれないまま、アンディとも寝たのかと尋ねると、エディーが製作するポルノ映画の契約上仕方ががなかったと白状した。 アリスがポルノ業界にかかわったいきさつを追及すると、アンディとは『モークス』というバーで知り合い、彼のコネで仕事を紹介されたという。 それがまさかポルノの仕事だったとは聞かされていなかった。 エディという男に会えば仕事をくれるという話だったが、実際に行ってみると何人もいかつい用心棒がついているような場所で、一度足を踏み入れたら逃げられないようになっていた。アリスはだまされたのだ。 このまま頭を撃ち抜かれて死ぬか、エディの命令でポルノ映画に出演するかの二択をせまられ、アリスは覚悟を決めて後者を選択したのだ。 アリスはポルノ女優として業界にのし上がった。 それどころか、女優業と愛人生活がまんざらでもなかったことを知り、愕然とするピート。 誰とでもホイホイ寝るような人間は、ピートが忌み嫌うタイプの人間だ。 そのような耐性はない。 アリスがやってきたことはピートの軽蔑の対象なのだ。 アリスはすがるような目でピートを見つめ、声を震わせた。「私が気に食わないなら 目の前から消えるわ」 しかし、どんな強烈な過去を抱えていたとしても、ピートはもうアリスなしではいられない。 あとはもう彼女のなすがままだった。 当然、ピートは逃避行のシナリオをまくしたてる女のしたたかさには気づいていない。▲目次へ恐怖の電話 自宅に戻るとシーラが待ちかまえていた。 家の前でピートの浮気を追及されて大喧嘩。 「あの夜」のことがあってから、別人のようになってしまったと泣き叫ぶシーラ。 ピートが突然消えた日のことを意味しているのだろうが、ピートにはまったくその記憶がない。 シーラはひとしきり泣いた後、ピートに一方的に別れを告げて走り去っていった。 ピートあての電話があった。 留守中に数回かかってきたという。 エディからだった。 警告を受けていたにもかかわらず、アリスと過ごしてきた矢先のことだった。 あのキレやすい男のことだ。もう次はない。 女を寝取られた腹いせに、いつ乗り込んできてもおかしくない状況だった。 おそるおそる受話器に耳を当てると、エディの声は気味の悪いほど落ちついていた。 怒りをすっかり通り越して、やることを心に決めた男の声だった。 友人が隣にいるので話してみろと言う。 「前に会いましたね」 どこかで聞いたようなセリフだが、ピートにはサッパリおぼえがない。 電話の主は白塗りの男だった。 どこで会ったのかと尋ねると、お宅だと言う。 白塗り男はピートの鈍くささに少々イラついていた。 そして、死刑囚の後頭部に銃弾を撃ち込むという、極東の処刑方法に触れた。 エディは切れると恐ろしい人間に豹変するが、たったいま話した人間はそれ以上にとんでもなく厄介な存在だということに今ごろ気づくがもう遅い。 引き返せないところまで来てしまったことに半べそをかくピート。 このままでは確実に殺される。▲目次へ逃避行 アンディの家はプール付きの大豪邸だった。 あらかじめ指定された場所に移動すると、ポルノ映画がプロジェクターで巨大スクリーンに投影されていた。 闇ルートで流通するブルーフィルムのようだ。 そこにはアリスが筋肉隆々の男と真っ最中の様子が映し出されていた。 それを大画面で見させられて大ショックを受けるピート。 シナリオどおり、アリスとコトを済ませて降りてきたアンディと鉢合わせたので、手ごろな鈍器で頭を殴って失神させる。 その様子を見にアリスが降りてきた。 アリス主演のハードコアポルノ映画を強制的に見させられ、そのアリスにそそのかされてアンディを半殺しにしたことで、ピートは悔恨の念に苛まれた。 そのとき、想定外のことが起きた。 二人の逃亡計画のダシに使われたアンディが目を覚まし、逆上して襲いかかってきたのだ。 しかし、勢い余ってガラステーブルに頭から突っ込んでしまい、その角が額に深く突き刺さって即死。 一瞬の事故だった。 アンディを殴って気絶させ、いただけるものはすべて頂戴して二人でトンズラする流れだったはずだ。 ところがアンディはガラステーブルに頭から突っ込み、勝手に死んだ。 それなのにアリスは「あんたがやったのよ」と念を押した。 アンディが死んでしまった以上、一刻も早くここを立ち去らなければならない。 動揺を隠しきれないピートとは対照的に、黙々と金目のものを回収するアリス。 たった今絶命したアンディが身につけていたアクセサリーにまで手をつけるアリスのがめつさに、新たなショックを受けるピート。 ふと、額縁の写真に目が行った。 エディ、アンディと並んでアリス、それからアリスと全く同じ顔立ちの黒髪の女性(レネエ、だがピートにとっては他人)を写したものだ。 どちらもアリスなのかと尋ねてみると、彼女が指さしたのはブロンド美人の方だった。 その瞬間、激しい頭痛と大量の鼻血がピートを襲う。 脂汗をかきながらトイレに向かうが、個人宅にしてはトイレまでの道のりが異様に長い。 しかも廊下の部屋のドアにはホテルのような部屋番号が振られている。 赤い光が漏れている 26 号室のドアを開けると、その部屋の中は鮮血のように真っ赤だった。 そして、その奥でアリスにもレネエにも見える女が妖しげに体を揺らしながら、こちらに向かって叫んでいた。 「私と話したかった?」 「なぜだと聞きたかったの?」 反射的にピートはドアを閉じた。 ようやく落ち着いたところで階下に戻ると、アリスは金品の回収を終えたところだった。 これらの盗品を故買屋で換金すればどこにでも行けると語るアリスには、うしろめたさが微塵にも感じられない。 むしろ新しい門出を前に、期待に胸を膨らませているように見えた。 アンディの赤いスポーツカーに乗り込み、逃避行にくりだす二人。 ハンドルを握りながらオロオロするばかりのピートを横目に、砂漠に向かうよう促すアリス。 砂漠に故買屋があるという。 夜のハイウェイに乗り上げ、全速力で車を走らせるピート。 ようやく砂漠に到着すると、そこにはアリスが言ったとおりの小屋がぽつんと建っていた。▲目次へ砂漠の小屋 故買屋の主人は不在だった。 小屋の中は、年季の入った汚れた家具が数点置かれているだけだった。 主人が戻るまでの間、ピートは自分を選んだ理由をアリスに尋ねた。 「前にも増して私が欲しくなったでしょう」 そして彼女がいつものように誘ってきた。 砂漠の上で裸で抱き合いながら、お前が欲しいと口走ると、アリスが耳元で囁く。 「あんたには あげないわ」 アリスはピートを置き去りにすると、小屋の中に入っていった。 彼女の後を追うために起き上がると、ピートだったはずの自分はいつの間にかフレッドの姿に入れ替わっていた。追及 裸一貫のまま呆然と砂漠に立ちつくすフレッド。 乗りつけてきた車をもう一度よく見てみると、それはアンディの車ではなく、フレッドが普段乗っている車だった。 車の後部席にはあの白塗りの男が座っていて、こちらを凝視している。 こっちだと促されて目を向けると、白塗りの男は小屋の入り口に瞬間移動していた。 不思議な現象に驚きながらも小屋にたどり着くと、白塗りの男が微笑みながら待っていた。 さっきアリスはこの小屋に入っていったはずだ。 しかし、小屋を見渡しても彼女の姿はどこにもない。 白塗りの男が彼女をどうにかしてしまったにちがいない。 アリスの居場所を尋ねると、白塗りの男は怒りに声を荒げた。「アリスだと?あの女の名前はレネエだ。名前を偽ったにちがいない」 そして、男はビデオカメラを構えると、怒鳴り散らしながらフレッドを追い回し始めた。「お前の名前は?お前の名は一体 何だ」▲目次へ現実 フレッドは現実に引き戻された。 これまでのピートの人生は、フレッド自身が勝手に頭の中で作り上げた虚構にすぎなかったのだ。 虚構が崩壊した瞬間、ピートは忽然と消え、理想のブロンド美女アリスも消滅した。 ディック・ロラントと最愛の妻レネエを殺したという現実がフレッドにのしかかってきた。 それでも、彼はまだその現実を認めたがらなかった。 フレッドは、白塗りの男のビデオカメラから逃れるように車に乗り込むと、あわててハイウェイを引き返した。▲目次へフレッドのウソを取り払うとストーリーはもっとわかりやすくなる ここでは、フレッドによる記憶の改ざんを排除してストーリーをまとめてみます。 イベントの発生順さえ把握できれば、『ロスト・ハイウェイ』は比較的シンプルなストーリー構成になっていることがご理解いただけることでしょう。ディック・ロラントは死んだ フレッドは妻レネエが話したがらない過去を探っていくうちに、彼女がかつてポルノ業界に関わっていたことを知る。 交友関係からアンディをたどり、大量のポルノビデオを入手。 その中に、レネエ出演の作品もごっそり含まれていたというわけだ。 しかも、そのポルノ・プロダクションの社長であるディック・ロラントとの愛人関係が今も続いているという情報も得た。 ワケありの女かもしれないフレッドの疑惑は、思いもよらぬ形で的中することになる。 フレッドは嫉妬と殺意に燃え、まずはレネエとディック・ロラントの逢瀬の現場を押さえることにした。 レネエを尾行し、ロスト・ハイウェイ・ホテルの 26号室を突き止めると、その向かいの 25号室に部屋を取って忍び込んだ。 彼らの行為が始まると、そっと部屋をそっと抜け出し、26号室のドアにピッタリと張りついて、その一部始終に耳をそば立てたのだった。 いつもマグロ状態はずのレネエが、壁の向こうではまるで別人のように嬌声を上げている。 富、人望、精力。 フレッドの男としての劣等感も尋常ではなかった。 俺が知らないと思ってやりたい放題やりやがって。 先にレネエがホテルから出たのをカーテン越しに確認すると、フレッドは 26号室に突入した。 持っていた銀色のマグナム銃でディック・ロラントの頭部をめった打ちにする。 抵抗力を失わせてからホテルから引きずり出し、ディック・ロラントの車のトランクに押し込んだ。 そしてそのまま車を砂漠へと走らせたのだった。 砂漠に到着してから車のトランクを開けると、体力を回復させたディック・ロラントが飛び出してきた。 砂の上でもみ合いになりながら、手にしたナイフでディック・ロラントの喉笛を掻き切ったところで勝負はついた。 フレッドはレネエのことを思い出していた。 レネエの過去の仕事、結婚前から今まで続いていた愛人関係。 アンディ邸で開かれたポルノ映画上映会の記録ビデオ。 ビデオには、上映作品を鑑賞中にディック・ロラントが、たまらず愛人レネエの身体をまさぐりはじめる様子が収録されていた。 アングラ系のポルノ映画を製作して、それを同じ趣味の仲間たちと共有することによって、出演者自身もそれを楽しむ世界。 過激になるにしたがって上映会は盛り上がりを見せ、ついにはプレイ中に出血をともなったり、殺人に及んだりする内容の作品まで上映された。 プレイ中の殺人も彼らにとっては快楽の材料となり、ディック・ロラントもレネエもそこに強く欲情したのだった。 レネエをこんなアバズレに仕立て上げたのはお前だ。 息も絶え絶えにディック・ロラントは下衆ばった笑みを浮かべた。 ディック・ロラントもフレッドの凶暴性を動物的な勘で見抜いていたのだった。「お前と俺ならもっとすごいポルノを撮れたな」 フレッドは彼の頭に銃口を向けると、怒りに任せて引き金を引いた。 ディック・ロラントは死んだ。 フレッドの手によって。▲目次へアンディも死んだ アンディ主催のパーティ。 プールつきの大豪邸で、パーティを開催できるように立派なバーカウンターが設置されており、大勢で映画を鑑賞するための巨大スクリーンや、招待客がいつでも宿泊できるようにいくつも部屋が設けられていた。 フレッドはそこにレネエの写真をみつけていた。 アンディ、ディックロラントとの三人で撮影されたものだ。 撮影時期はわからないが、目立つところに大切に飾っておくほど、アンディにとってはレネエもディック・ロラントも大切な仲間だったのだ。 フレッドは、レネエがディック・ロラントのみならず、アンディとも肉体関係を持っていたことも確信していた。レネエはアンディの紹介でディック・ロラントの看板ポルノ女優になったのだから。 彼らのことを考えるたびに、フレッドは激しい嫉妬と殺意をおぼえた。 ディック・ロラントの死体は遠い砂漠に放置してきてある。 だが、無意識にディック・ロラントが死んだと口をすべらせてしまった。 アンディを刺激してしまった以上、砂漠の死体の身元が判明するのは時間の問題だ。 今ごろはディック・ロラントの手下も関係者をしらみつぶしに当たっているにちがいなかった。 愛人レネエに会いに行くと言った後に消息を絶ったことから、彼らは真っ先にフレッド邸にやってくるはずだ。 だからフレッドはディック・ロラントの手下と鉢合わせしないように、レネエとともにアンディ主催のパーティに出かけたのである。 もともと気乗りのしないパーティに一人置き去りにされ、薄気味悪い白塗りの男に「今あなたの家にいる」と言われてしまっては、気が気でなかった。 パーティから戻ると、フレッドはレネエを外に残したまま、自宅で変わったところはないかを執拗なまでに調べまわった。 留守中に侵入者があったかどうかを確かめるためだ。 あの薄気味悪い白塗りの男が本当にいるかもしれない。 急に鳴り出した自宅電話に驚くフレッド。 そして、明らかにすでに誰かが侵入した形跡があったことに気づいたのである。 とにかく、アンディが口を開けば、もう終わりだ。 手遅れにならないうちに、アンディを始末しなければならなかった。 フレッドは深夜まで待った。 アンディ邸に向かい裏口から侵入すると、二階から降りてきたアンディに襲いかかり、ガラステーブルの角に投げつけて殺害したのだった。▲目次へそしてレネエも死んだ レネエはフレッドが自分の過去を嗅ぎまわっていたことに気づいていた。 ボロを出さなぬように努めて従順な妻を演じていたが、それがかえって不自然で、フレッドは以前に増して疑い深くなり、いちいち彼女の行動を把握したがった。 互いに牽制しあうことで二人の仲は冷めていき、レネエの存在は遠くなっていった。 しかし、今や彼女の心はもう手の届かないところまで離れてしまっていたのだ。 そして、フレッドはレネエとディック・ロラントとの密会現場を押さえ、ディック・ロラントを殺害し、アンディの口封じにも何とか成功した。 だがしかし、ディック・ロラントとアンディの死体が立て続けに発見されたとしたら、レネエは真っ先にフレッドを疑うだろう。 夫を逆上させる動機はレネエ自身がよく知っているからだ。 レネエを誰にも取られたくない。 だがお前一人のために俺の人生はメチャメチャだ。 すべての原因はお前だ。 お前なんかなかったことにしてやる。 フレッドはベッドで寝息を立てるレネエに襲いかかかって殺害すると、興奮冷めやらぬままその死体を切り刻んだ。▲目次へフレッド逮捕 妻殺害の模様が録画されたビデオテープが証拠となり、フレッドに逮捕状が出た。 刑事が自宅にやってきたので、フレッドはあわてて車に乗り込み逃走。パトカーも出動してカーチェイスが繰り広げられた。 逃走中、道端にいた青年を轢いてしまったが、そのままフレッドは青年を引きずった。 その大きな音を聞きつけて家から人が出てきた。 「ピート!」と叫ぶ女の金切り声がフレッドの頭の中に響いた。 この事故によって長時間におよぶカーチェイスは幕を閉じ、フレッドは御用となった。 余罪の追及がなされた。 交通事故に巻き込まれた不幸な青年は、ピート・デイトンという名であることが判明した。 砂漠で発見された死体の身元はディック・ロラントであることが割り出され、アンディの死体は自宅のガラステーブルに頭を突っ込んだ状態で発見された。▲目次へフレッドの最期:処刑は二度失敗した 電気椅子に座らされ、死刑執行直前の極限状態の中にあったフレッド。 一回目の電流スイッチが入れられ、皮膚の火傷と破裂が見られたが、フレッドの息はまだあったのだ。 この極限の苦しみの中でさえ、フレッドはピートという赤の他人になりすまし、別の人生を送るという現実逃避を試みるのだった。 二回目の電流が投入されたのは、妄想の中でアンディがガラステーブルの角で事故死した後に、アンディ、ディック・ロラント(妄想の中ではエディ)、アリス、レネエの四人で写っている写真を発見した直後である。 虚構の存在である金髪美女アリスが、写真の中の自分を指し示した瞬間だった。 耐えがたい頭痛と、大量の鼻血、全身から噴き出る脂汗。 青白く瞬く電流の光に翻弄されながら、フレッドはピートとして妄想世界をさまよっていた。 そして、いよいよフレッドの妄想が現実によって破綻し、すべての虚構が消えた。 それでもまだフレッドは諦めなかった。 ウソでも強く念じれば、つらい現実から逃避できることはこれまで何度も経験してきたからだ。 ディック・ロラントはどっかの誰かが勝手に殺したのだ。 俺ががやったんじゃない。 どっかの誰かなら、フレッドのアリバイを証明できる。 妄想の中でどっかの誰かにすっかりなりすましたフレッドは、自宅のインターフォンのブザーを押した。「ディック・ロラントは死んだ」 俺ががやったんじゃない。 誰かがディック・ロラントの死んだと言った。 それを俺は聞いただけだ。 妄想の中でさえも警察の追っ手は近づいてきていた。 フレッドの妄想が作り上げた殺人犯は車に乗り込むと、警察から逃れるためにハイウェイに引き返した。 三回目の電流が投入された。 妄想の中でカーチェイスを繰り広げているはずの自分の姿は一瞬にしてかき消された。 致死量の電流によって頭は大きく膨れ上がり、フレッドはその苦痛に形相を醜く歪ませながら断末魔の叫び声をあげた。 次回はストーリの根拠を示すシーンやヒントをご紹介する予定です。 【第三回】制作側のネタばらし▲目次へ
2016.04.03
デヴィッド・リンチ映画好きなら外せない作品の一つが『ロスト・ハイウェイ』[1997年]、その後継版的なポジションにあるのが『マルホランド・ドライブ』[2001年]になるでしょう。 どちらも一見脈絡のないシーンをつなぎあわせたような作品になっていますが、話の流れをぶった切ることによって、鑑賞者の目をストーリーから映像全体に向けさせることにも成功しています。 何が何だかさっぱりわからなかったけど、音楽が耳に残ったとか、いくつかの色が目に焼きついたとか、変な人が出てきたとか、カメラワークが斬新だったとか、ただただ怖かったとかいうように、話の流れを体系づけて理解するよりも、まずは感覚で楽しめるでしょう。 『ロスト・ハイウェイは』公開から 20 年が経過していますので、ストーリーの考察もいろいろなところで行われていますが、正解は鑑賞者の数だけ存在するのもこの映画の楽しさでもあるといえます。 私も数えきれないほどこの作品を DVD で観たおして、公開直後より好き勝手に考察を続けていたら年月ばかりが無駄に経過してしまったクチですが、リンチ監督自身が謎ときのキーワードとして「サイコジェニック・フーガ」、「O・J・シンプソン事件」(後述)くらいしか明きらかにしていないため、結局何がどうなったのかは鑑賞者に託されることになります。 今回は『ロスト・ハイウェイ』のわかりやすいあらすじとみどころ、そしてリンチ監督ネタをご紹介し、次回はネタバレあらすじ解説と考察をしてみたいと思います。 リンクをクリックすると、記事の各セクションに移動します。わかりやすいあらすじみどころ 1. 謎のビデオが届く家 2. 青色と衣装 3. 裸体表現 4. 白塗りのおっさん 5. バラバラ死体 6. 独房 7. 色のコントラスト 8. 豪華なミュージシャンてんこ盛りデヴィッド・リンチ監督がくれたヒント 1. O・J・シンプソン事件 2. サイコジェニック・フーガ(Psychogenic Fugue)どうしてもストーリーを理解したいあなたのために【第二回】ストーリー解説【第三回】制作側のネタばらし【第四回】登場人物分析わかりやすいあらすじ 「ディック・ロラントは死んだ」と唐突に玄関口で告げられるとともに、届けられた一本のビデオテープ。そこに映っていたのはモノクロ撮影の自宅の玄関先。 それ以来しつこく届けられるビデオテープ。 映っているのはやはり自宅の玄関先。 ところが、ビデオカメラは次第に玄関先から内部へ、そしてついには夫婦の寝室の様子まで映し出すまでに。 誰かに見られている!とおびえる妻。 探偵を呼んで監視カメラを取り付けるも時すでに遅し。 次に届けられたビデオに映っていたのは殺されてバラバラに刻まれた妻の裸体。 おまけに、妻の死体を前に血まみれの狂乱状態で映像に映っていたのがまさかの自分。 殺人映像という動かぬ証拠を警察に突きつけられ、第一級殺人犯として死刑宣告を受けるも、自分にはまるでその記憶がない。 そのまま独房で執行日を待つハメに。 不安で眠れない日々と重度の頭痛が最高潮に達したとき、アンビリーバボーな現象が。 妻殺しの犯人がいたはずの独房なのに、犯人はどこにも見つからず、代わりにそこにうずくまっていたのはまったくの別人。 妻殺しの犯人が独房から忽然と消えてしまった以上、おとがめなしで釈放される若者。 もとの自動車修理工の仕事にもどったものの、若者の心はここにあらずの状態。 昔の仲間もなんとなく遠い他人のような気がしてならないし、ガールフレンドといちゃついても消えることのない違和感。 そんな日々を送るなか、車をガレージに預けにきた初老の男の隣に座っていた女に目が釘づけ。 しかも、どういうわけか例の殺された妻と顔も身体つきもうりふたつの金髪美女。 当然、若者にとってはこれが初対面。 どうせ無理めの女だと思っていたが、先にモーションをかけてきたのが金髪女。 ガールフレンドがいる身でありながら、心も身体もすでにオッケー状態。 一癖も二癖もありそうな金髪美女の魅力にズブズブとはまっていく若者。 相当ヤバそうな女のとりこになった若者はこれからどうなるのか? 独房の人物入れ替わり事件の真相は? 若者の正体は? 妻殺しの犯人はどこに消えたのか? 本当に妻を殺したのか? いや、そもそも「ディック・ロラントは死んだ」ってなんなのさ? というような数々の謎を散らかし放題にしたまま、勝手にエンディングテーマが流れて鑑賞者を放置して終わっちゃう映画。▲目次へみどころ1. 謎のビデオが届く家 主人公の住む家は外装はシンプルながら、内装は色とデザインの統一性を重視しています。 内側から外をのぞく細長い窓、壁に掛けられた絵、壁の色、壁際のサイドテーブル、テレビ台など、個人の持ち物にしてはやたらとスタイリッシュな取り合わせになっています。 それもそのはずで、その家はデヴィッド・リンチ監督の自宅だからです。 なるほど!と思った方は、作品の冒頭にたくさん登場するリンチ邸の内装を堪能してみましょう。▲目次へ2. 青色と衣装 『ロスト・ハイウェイ』製作時は、衣装にはできるだけ青色を使わない方針だったために、青色の衣装をつける登場人物はほとんどいません(ジーンズは例外的に使用されていますが)。 これは、8ミリ世代ならご存じのブルー・フィルム(後述のポルノフィルム)の青色を外すわけにいはいかなかったことと、狂気を感じさせるシーンや、超常現象が起こるシーンに青色を採用したために、衣装によってその効果が阻害されてしまうのを避けたのではないかと推測されます。 重要なシーンで青い照明をガンガン焚いているのに、キャストが青い衣装をまとっていたら、衣装の色が照明と同化して白色にしかみえなくなってしまいますから。 その代わり、主人公夫婦は黒、灰色、深紅、ダークブラウンなどの暗めの色を好んで着ています。 妻役を演じたパトリシア・アークウェットのイメージがセクシー美女のため、身体のラインを強調するような下着に近い衣装、そして小柄な彼女を少しでも長身に見せるためにワンピースタイプの衣装を着けたり、全編を通じてハイヒール姿で登場したりしています。▲目次へ3. 裸体表現 殺される美人妻役、そして若者を犯罪の道にいざなうファム・ファタルとして金髪美女の二役をこなしたパトリシア・アークエットですが、この作品でヌード撮影恐怖症を克服したそうです。 その割にはバンバン脱いじゃってます。激しく男と絡んじゃってます。 胸を出すなら乳首を見せろという殿方の要求にバッチリ応えていますし、ハリウッド女優のシリコン乳がいただけないという方なら、ゆっさゆっさ揺れる垂れパイに相当なリアリティを感じることでしょう。 また、エロ目的の映画でもないのに下の毛が見えると気分が萎える人のためにも、そういうものは見せない配慮がなされています。 要は、ストーリーの進行上、性的な描写は避けて通れないが、ハリウッド映画ではお決まりの着たままセックスという小細工に走らず、男女が裸で愛しあう様子をできるだけ芸術的に撮ろうとしたらこうなったという感じですね。 強面の男たちに囲まれるなか、頭に銃口を突きつけられて怯えながら脱ぎだすシーンなんかを見ると、女優魂を持つということは相当の覚悟が必要なのだと考えさせられます。 彼女が主演の映画ではホラー映画『エルム街の悪夢 3 惨劇の館』[1987年] が初見だったので、てっきりキワモノでも何でもござれ系の女優と思いきや、『ロスト・ハイウェイ』撮影でのリンチ監督の指示が過激すぎて撮影の合間に泣いていたという、普通の女性っぽさも持ちあわせているようです。▲目次へ4. 白塗りのおっさん 妻のために夫婦で参加したパーティで出会った白塗りの不気味なおっさん。 この作品を難解なものにしている登場人物の一人が、この洋風スケキヨもどきのミステリーマンです。 パーティ会場で目の前に立っているにもかかわらず、いまお前の家にいると言い放つミステリーマン。 半信半疑で自宅に電話をかけてみると、自宅電話からまさにそのミステリーマンの声が。 悪魔のような笑みを浮かべるミステリーマン。 得体の知れない存在に背筋が寒くなるシーンですね。 このミステリーマンですが、映画の前半では余裕こいて笑っていますが、後半では笑いは消えていきます。 この変化の意味がわかれば、謎は解けていくと思います。▲目次へ5. バラバラ死体 言葉での表現は過激ですが、映像ではそれほどでもありません(……と思う)。 フィルム・ノワールを意識した題材と映像ということもあって、鑑賞者への細やかな配慮が見られ、走査線のびっしり入ったモノクロ映像で死体をぼやかして見せておきながら、コンマ秒のごくわずかな一瞬の間にカラーの死体映像を見せて恐怖感と凄惨さをあおることに成功しています。 このコンマ秒のシーンをしつこく巻き戻して死体のできばえをチェックする意地の悪い人は私の他にもたくさんいらっしゃるとは思いますが、なんともプラスチッキーな材質にがっかりさせられることでしょう。 死体シーンにリアリティを持たせるために、リンチ監督は美術スタッフとともにマネキン工房巡りをしたそうですが、どこからどうみても白いマネキンに血のりを塗ったものでございます。 あまりにリアルなものを作ってしまうと、本物のスナッフ・フィルムではないのかとかいう抗議が出てきたり、倫理上の問題から上映禁止令が出たり、お蔵入りコースに陥ったりする可能性もあるため、そこに配慮してわざとチープな作りで妥協したとも考えられます。 映像としては一瞬ですし、所詮はマネキンクオリティですので、ご安心ください。▲目次へ6. 独房 死刑囚が収容される独房に使われた建物は廃墟となった消防署。 この消防署の壁を塗り替えて大道具と機材を持ち込み、独房が並ぶ撮影用セットが作りあげられたわけですが、劇中では違和感がまったくないですね。 しかも、せっかく作ったセットの雰囲気と奥行きを味わってもらうために、なるべく接写撮影を避けて、内装全体が入るように撮影されています。▲目次へ7. 色のコントラスト リンチ監督は芸術畑出身ということもあり、作品の多くに色への強いこだわりが感じられます。 『ロスト・ハイウェイ』では、ストーリーの前半と後半で色の扱い方が異なっていることにお気づきになった方も多いかもしれません。 まず、前半の悲劇の夫婦のシーンでは、全体的に暗めの色が多用されています。室内照明も薄暗くまとめられています。 何かよからぬことが起こりそうな空気が常にスクリーン全体に漂っています。 後半の若者の生活ぶりは、原色を多用した鮮やかで明るいシーンが多く、特にまぶしい太陽の光を浴びながら庭先のチューブベッドに寝そべる若者の赤いTシャツと、その対象色である芝生の鮮やかな緑色とのコントラストの美しさとスロージャズとの調和は、鑑賞後にも強烈な印象として記憶に残るでしょう。 若者の純粋さを象徴するような鮮やかな色に囲まれたシーンも、金髪美女に毒されていくうちにだんだんとその鮮やかな色味を失っていくところも大きな見どころになると思います。▲目次へ8. 豪華なミュージシャンてんこ盛り 『ロスト・ハイウェイ』を鑑賞して、全体を通じて曲が印象的だったという方も多いのではないでしょうか。 サウンドトラックのプロデュースを手がけたのが、かの有名なオルタナティブ・ロックグループ、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーですから、ミステリー映画にマッチした一貫性のある仕上がりになっています(個人的には彼らの楽曲は私の耳には軽いんですけどね)。 もちろん彼らの楽曲『ザ・パーフェクト・ドラッグ』も収録されています。 アーティストも彼らのテイストに適合するような名前が並びます。 まず、冒頭の夜のハイウエイの映像だけが延々と続きますが、ここで流れてくるのが最近お亡くなりになったデヴィッド・ボウイの『アイム・ディレンジュド(I'm Deranged)』(俺はイカれた)ですから、しょっぱなからネタばらしであることがわかります。 金髪美女に若者が一目ぼれしてしまうシーンでは、ルー・リード親父の『ディス・マジック・モメント』(この魔法の瞬間)がドーンと登場します。 金髪美女の毒牙にかかった若者が自室で彼女への思いをめぐらせ、彼女に会えない腹いせにガールフレンドを抱くシーンでは、マリリン・マンソンの『アップル・オブ・ソドム』(ソドムのリンゴ)、そしてマフィアの一味に囲まれて金髪美女が服を脱ぐシーンでは『アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー』(呪ってやる)が流れます。 そしてマリリン・マンソン自身も終盤のポルノ映画にキワモノ男優として登場しています。 一回見たら忘れない顔なのでわかりやすいですね。 ちなみに、ベースのトゥイーギ・ラミレズも男優役で出ています^^。 ポルノ映画上映シーンで採用されているのがラムシュタインの『ヘイレイト・ミッシュ』(結婚してくれ)の出だし部分ですが、個人的に好きなグループだっただけにこのような使われ方でちょっと残念でした。 妻亡き後も深まる愛を誓い、そして死者に求婚するという、ネクロフィリア的な偏執性を表現した曲でもあり、妻を殺した夫の今の心境にシンクロしていますから、歌詞としては聞き逃せないところでもあります。 ドイツ語のせいもあって、空耳で爆笑されたりもしていますけどね。 若者が金髪美女の正体に困惑して、心をおちつかせるためにトイレを探すシーンでは同グループの『ラムシュタイン』が採用されています。 その他にも、若者がガールフレンドとクラブで踊るシーンで、スマパンことスマッシング・パンプキンズの『アイ』が流れておおお~と思わず声をあげてしまった方や、独房の看守役にロリンズ・バンドのヘンリー・ロリンズが出演しているのを見逃さずに何度も巻き戻してご覧になった方も、相当のロック好きであると推測します。 このように、ファンならまず聴き逃さない歌声がさらっと流れちゃったりしますから、何度もシーンを巻き戻して再生したり、サントラの曲目リストを確認したりする様子が目に浮かびます。 このように、趣向はかなり偏ってはいるものの、ロック好きを相当意識した楽曲編成になっているため、映画は観なかったがサントラだけは持っているという方もいらっしゃるかもしれません。▲目次へデヴィッド・リンチ監督がくれたヒント 1. O・J・シンプソン事件 O・J・シンプソンの妻殺し事件は記憶に新しい方も多いと思います。 今もなお数多くの疑惑と憶測が飛び交っていますが、逮捕時のカーチェイスがリアルタイムでテレビ放送されたり、刑事裁判で終身刑を言い渡されるも、「俺はやってない」の一点張りで数多くの弁護士を雇い、逆転無罪を勝ち取ったりしたのは有名な話です。 参考情報:O・J・シンプソン事件 [WikiPedia] リンチ監督自身、当時の O・J・シンプソン事件の裁判劇に執念を燃やし、彼なりにシンプソンをクロと推定したうえで、殺人に手を染めておきながら良心の呵責がない人物というところから作品づくりの着想を得ています。 また、警察に追われて全速力で車を飛ばすシーンもこの事件が元ネタになっています。 ところで、O・J・シンプソンというと、私は自動的にレスリー・ニールセン主演映画『裸の銃を持つ男』[1988年]を思い浮かべるのですが、みなさんはいかがでしょうか?▲目次へ2. サイコジェニック・フーガ(Psychogenic Fugue) 自分の中にひそむ別の人格が他者を殺害し、その暴走した人格が保身のために元の人格から体験記憶を奪い去り、そこにまったく別の疑似記憶を埋め込むことによって、あたかも何事もなかったかのように暮らしていけたりするのが人の心の不思議でもあります。 独房に閉じ込められたフレッドがどうしてピートになり代わることができたのか。 『ロスト・ハイウェイ』をデヴィッド・リンチ監督が「心因性記憶喪失(解離性障害)、サイコジェニック・フーガ」という精神疾患を用い、その好例として O・J・シンプソン事件に言及したのも、この映画を理解するうえで最も重要で、しかもとてもわかりやすいキーワードであったことがご理解いただけるでしょう。 参考情報:解離性障害 [WikiPedia]どうしてもストーリーを理解したいあなたのために リンチ監督の映画作品は何がなんだかわからないものが多いですが、映画『ブルーベルベット』、大ヒットテレビドラマ『ツインピークス』以降に排出された作品には共通のパターンがあります。ざっと並べると次のようになります。日常風景の異常性を利用した伏線唐突に意味不明なことを口走る不気味な登場人物時系列の配置換え本来あるべきシナリオブロックの撤去本来あってはならないシナリオブロックの追加ところどころに挟まれるグロテスクな描写 シナリオブロックが撤去されてしまうと、多くの場合ストーリーは破綻します。 『ロスト・ハイウェイ』では、上記に示したものがすべて盛り込まれているため、ストーリーとしては破綻していると考えるのが実は正解でしょう。 主要なピースが抜け落ちたパズルは完成することはないのですから。 本作品の公開直後に多くの映画評論家が辛辣にこき下ろしたのもうなずけます。 しかし、この破綻したストーリーをあえて楽しんでもらうことをリンチ監督は dream (夢を見させる)という表現でまとめていることから、あちこちがわからない状態そのものがこの作品の存在意義であるともいえます。" [引用はじめ] All films are about a portion of (the) human condition and that's what's important is to anchor a story in something real but leave room to dream.Cinema takes many elements together and each on their own is valid but through working on a film you can become in love with many of the avenues and from time to time go off on those and lose yourself in photography or lose yourself in painting. [引用おわり](訳)映像作品はみな人間の状態を断片的に表現したものだが、重要なことはストーリーに何らかの現実味を持たせつつ、夢を見させる余地を残すことなんだ。映画は数多くの要素の集大成であり、その一つ一つが作品に生かされているが、製作の過程で脇道に逸れまくってしまったり、ときには何の脈略もなく写真や絵画にどっぷり浸かってしまうこともあるんだ。 " (『ロスト・ハイウェイ』公開後のインタビューより) そのわからない状態を自分なりにあれこれ考えていき、実はこうだったのではないか、という答えにたどり着いたが確実な根拠はない、そんなアプローチを試みながら何度も楽しめるのがこの作品のおもしろさだと思います。 もともとストーリー自身が破綻しているのですから、何をどう解釈しても自由なのです。 アタリ、ハズレのない次元での話にならざるを得ない以上は、もっともらしいプロットを導き出したとしても、リンチ監督からは正解をもらえません。 しかしながら、リンチ監督も共同脚本執筆者のバリー・ギフォードもともに、主人公フレッドの危ない精神状態に焦点をあてて作品紹介を行っていますので、フレッドが見ているもの、感じているものを素直に解釈するとフレッドの都合のよいストーリーにまんまとハマってしまうことになります。 ですから、フレッドの目にはこう見えていたのだろうが、現実には違う風景が広がっていたに違いない、と見ていくと自分なりにストーリーをまとめやすくなっていくのではないかと思います。▲目次へ【作品情報】原題:Lost Highway 製作:1997年邦題:ロスト・ハイウェイ上映時間:134分ジャンル:サスペンス/ミステリー監督:デヴィッド・リンチ 脚本:デヴィッド・リンチ、バリー・ギフォード 音楽:アンジェロ・バダラメンティ 出演: ビル・プルマン --- フレッド・マディソン役パトリシア・アークエット --- レネエ・マディソン/アリス・ウエイクフィールド役バルサザール・ゲティ --- ピート・デイトン役ロバート・ブレイク --- ミステリーマン役▲目次へ 【第二回】ストーリー解説へ
2016.02.27
昨日のことなんですが、仕事中に突然トゥーシャイ♪シャーイ♪が止まらなくなりましてね。 そのまま暗い作業場で電気もつけずに歌っていましたよ。 80年代に打ち上げ花火のごとく登場し、瞬く間に名を聞かなくなった幻の英国ポップス・グループ、カジャグーグーでございます。奇跡の二発屋歌手リマール 何だかふざけた感じのグループ名ですが、当時を知る人の間では外せない名曲が『君は TOO SHY』ですね。 向かって一番右端のヴォーカル担当リマールが甲高い声でクネクネ踊りを披露しながらトゥー・シャイ♪を連発しまくりますが、一回聴くとハマってしまうリスクの高い曲でもあります。 君はTOO SHY/カジャグーグー【後払いOK】【1000円以上送料無料】価格:1,543円(税込、送料込) ハッシュ、ハッシュ(シーッ)といいながら、口元に人差し指を立て、アイ・トゥー・アイ(目くばせ)で流し目をするリマールにどっぷりハマった女子も相当数いたのではないかと思います(口元はすんごい青ぞりだけど)。 そんなアイドル的存在のリマールでしたが、彼を世界的歌手にのし上げた名曲がみなさんご存知の『ネバーエンディング・ストーリーのテーマ』ですね。 前述のトゥー・シャイ♪で爆発的ヒットを飛ばしたにもかかわらず、ギャラでモメたというゲッスい理由で一番人気のリマールがカジャグーグーを追い出されるというトンデモ展開に。 グループをクビになったおかげでソロとして身軽になり、第13回東京音楽祭[1984年]で歌ったことで運命の切符を手にします(緊張のせいか声が震えてて、普段の伸び伸びした感じが出てなかったんですけどな……でも銀賞)。 たまたまそこに居合わせた審査員から『ネバーエンディング・ストーリーのテーマ』のオファーをもらい、世界中の人が彼の歌声を聴くことになったわけですから、人生って本当にわからないものですね。 もしあのとき、彼が日本の音楽祭に呼ばれていなかったら、ここまで成功することはなかったかもしれないのですから。 同曲はリマール一人ではなく、サビには米国女優ベス・アンダーソンの声もしっかり入った(実は別録りで後で合成)デュエット曲になっているのですが、初期活動時、そして英国盤プレス時にはあった彼女の名前が米国、ドイツ進出時にはクレジットから消えてしまっています。 プロモーションビデオもベス・アンダーソンバージョンと、黒人女性マンディ・ニュートンバージョンがあるのですが、後者はリップシンキングになっているため元歌がベス・アンダーソンのままという複雑な作りになっています。 ちなみに、今はなき伝説の歌番組『夜のヒットスタジオ』出演時には、フロントにリマール、バックシンガーとしてマンディ・ニュートンがステージに立ちました。 映画を観に行ったあとに隣人がサウンドトラックを購入したので、再生しながら一緒に歌ったハナタレの頃を思い出しましたよ。終わらない『ネバーエンディング・ストーリーのテーマ』 個人的にはねちっこいトゥー・シャイ♪が好みですが、『ネバーエンディング・ストーリーのテーマ』なら知っているという方の方が圧倒的に多いですね。 とても覚えやすいメロディーと美しい歌声に魅了され、この曲が流れてくると歌詞は知らずとも何となく一緒にハミングしてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。 映画をご覧になった方なら、このメロディに乗せて白いファルコンが空を飛ぶ映像が脳内再生されることでしょう。 この曲はボンヤリと始まってボンヤリと終わりますが、リピート再生すると延々と同じ旋律がループするというしかけになっています。 実際、リマール自身は五十路をすぎた今もなお自分の持ち歌として歌い続けています。 これぞまさに一曲だけで続くよどこまでものネバーエンディングストーリーです。 それにしても彼は歳を取らないですね。 当時の少年のような面影に渋さがプラスされて、一瞬英国人俳優のアラン・カミングかと思ってしまいましたよ。【メール便送料無料】アラン・カミングAlan Cumming / Head That Wears A Crown: Speeches For ...価格:2,290円(税込、送料別) いい俳優です(リマールどこ行った)。 考えてみたらどちらもネエさん……。おまけ: カジャグーグーのその後もついでに調べてみたところ、2003年からリマールを呼び戻して再結成し現在に至りますね。 リマールは二足のわらじでネバーエンディングストーリー継続中のようでございます。 次回は映画と原作についてテキトーに語る予定です。【送料無料選択可!】ザ・ヒッツ [2CD/輸入盤][CD] / カジャグーグー&リマール価格:1,296円(税込、送料別)
2015.04.16
スタジオジブリ8年の歳月と50億円をかけた超大作として公開前から話題になっていた『かぐや姫の物語』。 第87回アカデミー賞受賞を狙う勢いでしたが、ディズニー作品の『ベイマックス』に惜しくも破れてしまいましたね。 去る 3月13日にテレビで初放送されましたが、皆さんはご覧になったでしょうか。 かく言う私は仕事で帰れなくなり、テレビ放送はバッチリ見逃しましたよ。 でも、話題性のために一度は観ておこうということで先日借りました。 しかもついでにこんなドラマのボックスセットまで買ってしまい、なんかよけい忙しくなった感じでございます。 ちなみに、こちらの韓国ドラマは近年まれに見るタイプのよくできた作品です。 全編を通じて中だるみやドロドロしたところがない大爆笑もののコメディドラマになっていますので、興味がおありの方はダマされたと思ってレンタルしてみてもよいかもしれません^^。 話を『かぐや姫の物語』に戻しましょう。 こちらはプロモーション活動が大々的だったことも記憶に新しい方も多いかもしれません。 2013年の9月頃だったと記憶していますが、『許されざる者』を映画館に観に行ったときにこちらのディスクセットが無料配布されていました。 中は見開きになっていて、主題歌を担当した二階堂和美の新アルバム『ジブリと私とかぐや姫』の宣伝文句が並んでいます。 そしてこちらが中身のディスク。 左が DVD、右がブルーレイディスクという太っ腹プレスに加え、ジャケットに採用されているシーンのイラストがそれぞれ違っているのも粋な計らいですね。 プロローグ動画は、二階堂和美が歌う『いのちの記憶』に乗せて、竹取りの翁がかぐや姫を発見するところから美しい娘に成長するまでを 6 分間のダイジェストで送る形になっています。 これだけで全体の作風がつかめてしまいますが、このディスクをもらった人は観に行くかどうか相当迷ったのではないでしょうか。わかりやすいあらすじ 竹取りジイさんが竹やぶで光り輝く女の子発見。 この世のものとは思えない愛らしさに、ジイさんとっととお持ち帰り。 家につくと、お子ちゃまがみるみる赤ん坊がえりして、そこから人生スタート。 少女のおどろくべき成長の速さと、物事の飲みこみの早さからして、老夫婦もこの子がフツーの人間ではないことは知りつつも、娘の幸せを望む保護者として嫁に出すことに。 結婚話をもちかけられてもどうにもしっくりこないし、婿候補はみんなキモくて見栄っ張りでウソつき。 なにこの人たち。 と違和感を爆発させたところで月からのお迎えの御一行様登場。 少女は地球の人間を放ってとっとと月に帰ったという、お馴染みのかぐや姫のおはなし(竹取物語)。 どこがイマイチなのか 映画系情報サイトや海外のアニメ映画好きの間でも『かぐや姫の物語』に好意的な意見が多いいっぽうで、この映画の良さが理解できない奴は無知だみたいな意見も散見されたりして、正直戸惑いを感じています。 以下、私がイマイチだと感じた点を挙げてみます。1.かぐや姫の人物像がもともと苦手 これは個人的な感想なのでどうしようもないですね。 年老いた夫婦にさんざん面倒を見させておいて、縁談にありえない条件をつきつけて片っ端から断わり、とっとと月に帰ってしまうわがまま女ですから。2.大衆向けのアニメ作品なら、まず子供が楽しめるつくりであることが重要 大衆向けのアニメ作品は、頭をからっぽにした状態で楽しめることが大前提になるのではないかと私は思います。 物心ついた子供なら話が理解できることが重要で、子供が楽しめて話題になることから人気に火がつくと、以前当ブログでもご紹介した『アナと雪の女王』のような一大ブームが起こりやすくなります。 それこそ、アニメ作品本編のみならず、主題歌CD、キャラクターなりきり衣装や、バッグ、文房具品、食器などの日用品なども飛ぶように売れるようになります。 ジブリ作品では、『となりのトトロ』、『風の谷のナウシカ』、『魔女の宅急便』などのグッズがいまも順調に売れ行きを伸ばしているのが、アニメのイメージを子供立ちの頭に強烈に植えつけた結果、その子供たちが成人してもずっと好きでいられる結果にもつながります。 アニメ作品のマーケティングを行ううえで子供の存在は絶大です。 子供を囲い込めば、親も参加せざるを得なくなりますから。 そういう意味では、『かぐや姫の物語』はターゲット層がどうも曖昧ですね。 もちろん、古文の授業で『竹取物語』を習ったり、もともと『竹取物語』のファンにはたまらない世界観の再現になったりするのでしょうが、それ以外の視聴者に対しては、消化不良な後味が残ることになります。 キャッチコピー「姫が犯した罪と罰」が本編で具体的に語られないところは、背景情報の理解力を視聴者に求める形になっているため、小さな子供向けでないことは明らかです。3.長すぎる ほのぼのとした農村の様子、花嫁修業にあけくれる日々、花婿候補に追われてさあ大変、月からのお迎えを前に葛藤するかぐや姫。 どれも作品には重要だと思いますが、それぞれのシーンが長すぎるので、疲れているときに観賞すると眠くなります。 もっとテンポよくダイナミックな作りにしたら、一時間そこそこでまとまりそうですね。 137分は長すぎるのが正直な感想です。4.全世界公開に立ちはだかる数々のハードル かつて、まんが日本昔ばなしという子供向け長寿番組がありましたね。 そのなかで、数々の日本の昔のしきたりや考え方を違和感なく見てきているわけですが、海外の場合は文化や宗教上の違いから受け入れられない部分も出てきます。 以下、『かぐや姫の物語』が海外で規制対象になりそうな部分をいくつか挙げます。 1) 老婆の乳房露出 乳飲み子を腕に抱いた瞬間、老婆の乳が出るようになり、その場でボロンと乳房を露出し、デカい乳首を赤ん坊に吸わせるシーンがあります。 これを見て、微笑ましいシーンだと素直に感じ取れるのは、日本昔ばなしを普通に見てきた世代のひとたちや、道端で堂々と授乳することが許される社会くらいのものでしょう。 当然、胸元の露出が禁じられている国での上映は規制対象となりますし、子供向けのアニメ映画として上映を考えている国なら、このシーンは規制対象となる可能性が高くなります。 2) 下着を着用しない子供たち 幼少期のかぐや姫は下半身丸出しで動き回っています。 それだけでなく、近所の子供たちもみな下半身はすっぽんぽんです。 確かに昔は下着を着用する習慣がなかったと歴史的な情報を与えるシーンではありますが、幼児性愛者の犯罪に対してナーバスになっている国々では眉をひそめることになるシーンです。 おてんばなかぐや姫が全裸になって川に飛び込むシーンもありますが、同様の理由で規制対象になりますね。 3) 初恋の相手の不貞 婿選びに疲れきったかぐや姫が屋敷を逃げ出し、村で初恋の相手を見つけ、ちょっとした逃避行を楽しみます。 この二人、それはそれで楽しそうなんですが、相手の男性は何と妻子持ちです。 それ以上何があったわけでもないですが、こういった誤解を招く行動を宗教上厳しく律している国々では規制の対象になりますね。 全世界公開にむけて、こういった問題のあるシーンの数々を黒く塗りつぶしたり、カットしまくったりすると、作者の意図した世界観が伝わりにくくなってしまうことは必至です。 このような要素がアカデミー賞受賞の足を引っ張ることになった印象は否めないのです。 どこがすごいのか すでに文字数制限に達してしまったので、以降は端折ります。 この作品のすごさは、何といっても絵だと思います。 個人的に画風は好みではないのですが、以下をご覧いただければ、そのすごさを理解していただけるでしょう。 青いマルで囲った部分ですが、線が途切れていますね。 このように、線を途切れさせてしまうと、ワンタッチの色塗りができなくなります。 つまり、画の作業工程はこのようになっていると容易に想像できるわけです。 下絵描き → 輪郭描き → 色塗り → 輪郭非表示(or撤去)→ 別の線で途切れた輪郭を描き足し → 描き込み また、矢印で示したところが、わざと塗り残してあります。 この途切れた輪郭と、塗り残しによって、絵全体が不安定になってしまうため、いくらチームワークであっても、線の動きが不自然になってしまったり、塗り残しの動きがおかしかったりすると、生きているような動きにはならなくなります。 監督が気に入らなければやり直しになりますから、このような画を一枚一枚アニメーターが仕上げるのは気の遠くなるような作業を要することになります。 また、背景画でも山や田畑のような静止しているものと、風や桜の花びらなどの動きのある背景も同様に不安定な着色になっていますので、スタッフは相当泣かされたことでしょう。 日本画の特徴である、前景には濃い色を採用し、後方に行くにしたがって同じトーンの色を淡くして塗っているのもよくわかりますね。 また、音声を録音してから後で作画しているのも、従来のアニメーションづくりとは逆の発想になっているのも特徴ですね。 音声が先にあることで、アニメーションの方で動きを調整しているのも、この作品のすごさともいえるでしょう。 竹取じいさん役の地井武男の最後の作品となったことでも有名ですが、もしこれがアテレコだったとしたら地井武男の竹取じいさんの声を聞くことはありえなかったでしょう。 丸尾末広の作画で、音楽がJ・A・シーザーの竹取物語だったら劇場に何度も足を運び、DVD が出たら即買いするんですけどね……。 というテキトーなレビューでございました。 もう文字が入らないので拍手は省略させていただきます。
2015.03.23
今年は映画レビューもがんばることにしたのですが、あまりにも観すぎて存在すら忘れていた映画がありました。 みなさんおなじみ『バック・トゥ・ザ・フューチャー』[1985年]でございます。 私が高校生の頃にこの作品がビデオ化されまして、一時は友人宅に入り浸って毎日観賞していました。 今思い返してみると、毎日観るだけのヒマな時間っつーやつが進学をひかえた高校生にあったのが驚きなのですが。 毎日観ていると、当然のごとくセリフを耳コピできるようになり、博士とマーティ(主人公)のやりとりをマネしたり、ママ役のリー・トンプソンって見れば見るほど計算高くてヤダよな~(そういう役なんだが)などと盛り上がったりしたものでした。 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は普通に観賞しても十分面白いですが、細かく観ればさらに楽しいという、一粒で何度でも美味しい作品になっています。 子供から大人までこれだけ愛される映画もめずらしいですね。 あまりに有名な作品ということもあって、いろいろな人がレビューや解説を行っていますから、今回はトリビア的な要素多めでお送りします^^。わかりやすいあらすじ ロックミュージシャンを夢見る男子高校生。 だが、自分の家族は全員ダサくてサエない。 夜中に鳴る一本の電話。 電話の主は超変人オタク博士。 呼び出された場所にはスポーツカーを改造したタイムマシンが。 試運転の模様を録画中に事件に巻き込まれ、高校生は逃げるように車の中へ。 一心不乱でアクセルを踏み込んでいくうちに、30 年前にタイムスリップ。 高校生は無事に現代に戻ってこれるのか?みどころ1. ジゴってなんだよ 作品中、ジゴワット連発。 脚本家が giga を gigo とタイプミスしたのが原因ですが、それでも電気、IT業界の人間が観ると今でも笑っちゃいますね。 ハードディスクが大容量化している昨今、キロ、メガ、ギガ、テラは今では皆さんもかなり耳慣れていることでしょう。2. こんな親イヤだと思ってもやっぱり親子 双眼鏡で女の生着替えを覗き見する父親(当時 17歳)。 イイ女を見かけると、思わず二度見する主人公(17歳)。 ムッツリスケベとオープンスケベの差はあるにせよ、根っからの女好きはバッチリ遺伝しております。3. ヒューイ・ルイスとピンヘッド 80年代の音楽好きなら、ヒューイ・ルイスがオーディションの審査員役として登場していることに一瞬で気づきますね。 主人公が所属するバンドの名前がピンヘッズ(The Pinheads)。 皮肉にもヒューイ・ルイス・アンド・ザ・ニュースの『パワー・オブ・ラブ』のカバー演奏をするわけですが、その際にエディ・ヴァン・ヘーレン(後述)のギタープレイのモノマネをやり、うるせーの一言でオーディション落ちします。 これが自身の音楽のうるささと、ヘヴィー・メタルの音楽性のうるささを二重に批判している面白いシーンになっています。 ピンヘッドはクギや押しピンの頭の部分を指し、ヒューイ・ルイス自身が作品でクレジットされていないにもかかわらず、一瞬のシーンで観客を釘づけにしたというネタになっています。 また、ピンヘッドにはアホ、ボケという意味もありますが、不良には Butthead (ケツ頭 = アホ、ボケ)と罵られるところがヘッドつながりで面白いですね。どうでもいいトリビア1. エリック・ストルツ 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』といえばマイケル・J・フォックスですが、当初はエリック・ストルツが主役にキャスティングされていたことは有名な話です。 エリック・ストルツ演じる主人公マーティの貴重映像も25周年記念ボックスに収められています。[クーポン利用で10000円以上(税別)のご購入時に送料無料!!]バック・トゥ・ザ・フューチャー 25thアニバーサリー Blu-ray BOX [Blu-ray]価格:7,430円(税込、送料別) 撮影は5週間(実際は6~7週間)すすめられましたが、エリック・ストルツ自身が映画の雰囲気にどうも馴染まないこと、ギャグのセンスがイマイチなこと、異様なほど役にのめり込むタイプで他の共演者たちとの折り合いが悪化したことなどを理由に降板させられ、当時シットコム『ファミリー・タイズ』で大成功を収めていたマイケル・J・フォックスが起用されたという経緯があります。 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が伝説の映画シリーズとなった今、エリック・ストルツはさぞ悔しがっていることでしょう。 マイケル・J・フォックス自身がアイスホッケー選手を目指していたこともあって運動神経抜群で、作品の中で華麗なスケートボードテクニックを披露したり(一部スタント使用)、もともとギター好きもあってギターをあたりまえのように演奏できたり、そしてシットコム仕込みのジョークの間の取り方が絶妙ときたりしていますから、まさに彼が適任だったわけですね。 マイケル・J・フォックスの顔立ちは、当時日本ではアイドル性のある顔と言われていましたが、北米では線が細くて、どこか表情が皮肉めいていて、男にしては声が甲高く、イヤミで信用ならないヤツというイメージだったりします。 かの故淀川長治センセーも同じようなことをおっしゃっていましたね。 皮肉にも、同じような顔つきのエリック・ストルツもそういうイメージに当てはまってしまうわけですが。 また背の低さは俳優としての存在感に影響するため、主役クラスの俳優としては大成しにくいという問題もあります。 それらのネガティブなイメージを払拭したのが、彼自身の演技力とジョークのセンスでしょう。 ここでエリック・ストルツの名誉のために申し上げておきますが、彼も俳優として一流であることには間違いありません。 『マスク』[1984年]では顔の肥大化が止まらない病気の青年を演じきっていましたし、『恋しくて』[1987年]ではフツーの爽やか青年、『パルプ・フィクション』[1994年]ではラリッてるヤクの売人を脇役として好演していることも記憶に新しい方も多いことでしょう。2. ヴァン・ヘイレン 高校生の憧れのギタリストはエディ・ヴァン・ヘイレン。 オーディションのギターリフ、ジョニー・B・グッドで暴走ギタープレイをかますのもエディの影響。 そして、1955年の父親の寝室に忍び込み、スター・ウォーズのダース・ベーダーになりすまして爆音で聴かせたギターソロもエディ・ヴァン・ヘイレン。 このときに使われた携帯カセットプレイヤーが SONY のウォークマンではなく、アイワなのも、観る人をニヤリとさせますね^^。 カセットテープのラベルをよく見ると、VAN HALEN の上に小ぃーさく EDWARD と書かれているのが確認できます。 曲名は Out The Window で、映画『The Wild Life』[1984年]の挿入曲にもなっています。 しかも『The Wild Life』に前述のエリック・ストルツが出演していますので、結局『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と決別できなかったという皮肉な展開でございます。3. チャック・ベリー チャック・ベリーは 1950年代の伝説的な黒人ロックミュージシャンとして世界的に有名で、演奏中にギターを抱えたまま腰を落として歩くダック・ウォークがトレードマークになっています。 作品の中でも、ジョニー・B・グッドを演奏中にマイケル・J・フォックスがダックウォークを披露していますし、彼が演奏したこの曲が当時としては斬新だったために、バンドマンが電話を通して聞かせた相手がチャック・ベリーだったというオチになっています。 マイケル・J・フォックスがステージで曲を披露してから 3 年後の 1958年にジョニー・B・グッドが発表されるやいなや空前の大ヒット……になるわけですが、この展開は傍から見れば他人からパクッた曲がヒットしたということにもなるんですけどね。 1989年にチャック・ベリーが来日したときのことは、かなり強く記憶しています。 チャック・ベリーのほか、ジェフ・ベック、スティーヴ・ルカサー、そしてそしてバッド・イングリッシュの、今考えると超バブリーですんごい組み合わせのライブだったんですよ。、ご高齢にもかかわらず、ステージを端から端まであのダック・ウォークで歩きまわり、ステージの端でゼエゼエしているのを見たときはもうヤバいんじゃないかと思いましたが、88歳になった今も健在で、現役ギタリストとして活躍中ということですので、嬉しいかぎりですね^^。 不良役が実は陽気なコメディアンという内容も盛り込みたかったのですが、一万字に達してしまったのでこれで終わります。 ←こちらからこっそりコメントでけます
2015.01.17
前回お送りした『サタデー・ナイト・フィーバー』[1977年]が思いのほか反響がありましたので、調子こいて続編レビューといきましょう。いまさら観る気力がないあなたに贈る『サタデー・ナイト・フィーバー』 『サタデー・ナイト・フィーバー』はダンス狂の旅立ちというところで終わりますが、彼のその後を追ったのが『ステイン・アライヴ』[1984年]になります。 私的にはツッコみどころ 80%、ストーリー性 20% という配分のとてもオイシイ作品だと思いますが、内容重視の方には時間のムダになる可能性がありますので要注意ですね。 前作と違い、下品な描写が一切ない点だけは好感がもてます。 ジャケット写真もなかなか悪くないと思いますよ。 鍛えぬいた肉体、小麦色に焼いた肌。 しかしこの立ち姿ですと、少なくとも私の場合は上半身より先に股間に目が行きますね。 ただ、80年代は猫も杓子ものダンスブームが到来したこともあり、『フラッシュ・ダンス』[1983年]や『コーラス・ライン』[1985年]などの、プロのステージダンサーを目指してオーディションに励むプロセスを見守るタイプの本格指向な映画の方が人々の記憶に強く刻まれる結果となりました。 体育の授業で創作ダンスをやらされた方も相当いらっしゃると思います。とにかくブームでしたから。 今は授業でヒップホップをやらされるらしいですが。わかりやすいあらすじ ブルックリンからマンハッタンに移り住んだダンス狂。 ブロードウェイ目指してオーディションというオーディションに出まくるも惨敗。 友達以上恋人未満スレスレの関係が続いている女(前作とは別人)と半同棲しながら、すんごい汚い下宿先でオーディション結果待ちをする毎日。 半同棲女はダンサーとしての実力もそこそこで、ダンス狂より一歩先を行く感じ。 ステージメンバーに抜擢されたり、歌の才能があったりと、夢を着実に叶えている姿を横目に悶々とするダンス狂。 そんな中、半同棲女のステージで見かけた花形ダンサー女の踊りに目が釘づけ。 もともとダンスには異様な執着を見せるダンス狂。高嶺の花と知りつつもナンパ攻撃開始。 花形ダンサー女とダンス狂はこれからどうなるのか? 半同棲女の立場は? そんなことよりも、ダンス狂はステージダンサーとして成功するのか?みどころ1. 変わらぬ女たらし いい女がいたらとりあえず声をかけておく。 超いい女がいたら付きまとって落とす。 肉食イタリア系男子を絵に描いたようなダンス狂の女たらしは本作でも健在です。 優雅な身のこなしのイケメン男ときたら、女が放っておくわけがありません。 どこに行っても超モテモテでございます。 しかし、彼はもともとフツーの女なんて目もくれません。 彼にとって女は標的であり、落とすものだからです。 前作では地元に男友達も結構いましたが、本作では男友達が一人も出てきませんから、女たらし度はさらにパワーアップしているといえるでしょう。 基本的にハードルは高ければ高いほど燃えます。 ただ、トゲだらけのバラの花より、道端のタンポポにも目をくれる余裕ができたダンス狂。 ブロードウェイの花形ダンサー女の華やかさの裏に、使えるものは何でも利用するがめつさを見てしまい、やっぱりそういうのはオレの性には合わないと冷めていくところは、性根が腐りきってなくてよかったと思えるところですが、ダンス狂を見守りながら支えてきた女は振り回されっぱなしですよ。 いつまでも高嶺の花に向かってフラフラしてては、どんなに忍耐強い女でもキレるのは当たり前ですね。2. プロの世界の厳しさ 地元ではデスコの帝王として名をはせたダンス狂でしたが、さすがプロを目指すアマチュアダンサーの集まりの中では彼もただの人です。 がんばって大海まで泳いできたが、海は想像以上に広かった!とくじけそうになる毎日。 ここには、昔のような和気あいあいとダンスを楽しむ雰囲気はみじんもありません。 他人を蹴落としてでも自分のポジションを築かなければ、芽は出ないまま終わります。 才能さえあれば、いつかは誰かが発掘してくれるだろうというのは勝手な思いあがりにすぎず、積極的にアピールしていかなければならないのも実力の世界なのです。3. ステージに出てしまえばこっちのモン。だって元デスコの帝王だもん。 人生初の大舞台。 花形ダンサー女とほぼ互角のダンスの才能を認められたダンス狂。 舞台は真剣勝負。 超満員の客席を前に失敗は許されないため、自分のためにではなく客のために踊れと舞台監督からぶっとい釘をさされるわけですが、もともとがデスコの帝王ですから。 ノリノリになると周りが見えなくなるじゃないですか。 あまりにノリすぎて、花形ダンサー女を力いっぱいハジき飛ばすという暴挙に出たあげく、勝手にマイ振付けでブイブイ踊りだし、ステージの流れを自分好みに変えちゃいます。 あっけにとられているステージダンサーのみならず、普通の人なら思うでしょう。「オメーだけのステージじゃねえんだぞ」 しかしこの感極まったダンスが感動を呼び起こし、観客は総立ちで大喝采。 結果オーライ、これが映画の王道的流れですね。 現実でも結果がすべてといえばそうとも言えるのですが、調和を乱しまくるやり方はプロの世界ではありえないでしょう。 リハーサルを何度も重ね、失敗や事故がないように細心の注意をはらいながら本番に臨むのがプロの仕事ですから。どうでもいいトリビア1. 脚本・監督がシルヴェスター・スタローン 前作『サタデー・ナイト・フィーバー』はジョン・バダム監督によるものでしたが、実家のダンス狂の部屋にはアル・パチーノ、ブルース・リー、そして『ロッキー』[1977年]のポスターが貼られています。 『ロッキー』主演・脚本を務めた成功者シルヴェスター・スタローンなら、続編を彼に任せてもハズれはしないだろうとタカをくくったのでしょうが、結果的には前作のゆるい感じが人の心に響いた結果となりました。2. カメオ出演 シルヴェスター・スタローン自身が通行人としてチラっと出ています。 おもしろどころでは、『ダーティ・ダンシング』[1987年]や『ゴースト/ニューヨークの幻』[1999年]で主役を務めた故パトリック・スウェイジがケバいステージメーク姿で登場(セリフなし)で登場しています。 また、半同棲女の歌のステージのバックバンドのギター役をボン・ジョヴィのギター担当リッチー・サンボラが演じています。 ジョン・トラボルタのオーラがぱったりと消えてしまったのもこの作品が発表されてからといわれますが、その後名俳優として返り咲くことになりましたから、人生ってわからないものですね。 ← こちらからこっそりコメントでけます
2015.01.07
いやー先日ヘビ男・トカゲ男の話をしたからではないんですが、昼間に頭の中でジョン・トラボルタが『ステイン・アライヴ』を踊り出てしまいましたので、今回は『サタデー・ナイト・フィーバー』[1977年]をレビューすることにします。 あまりにも有名な作品ですから、タイトルはほとんどの方がご存知ではないでしょうか。 とはいえ、本編は観たことがないという方も意外と多いかもしれません。 もしくは、テレビやビデオで観たが、下品な描写にどうもついていけず、途中で視聴を断念された方もいらっしゃるかもしれません。 今回はそんな方でも観た気になっていただけるように、この映画の楽しさを語ってみたいと思います。わかりやすいあらすじ 土曜の夜にディスコで身体を動かすのが楽しみのダンス狂の男。 フロアみんなの視線を浴びちゃって、もうオレってサイコー状態。 これぞ、『サタデー・ナイト・フィーバー』。 いっぽう、腐れ縁の仲間たちは踊りなど眼中になく、手頃な女を引っ掛けてシケこみたい万年発情期。 そんな中、ダンスがメチャメチャ上手い女がフロアを独占。 もちろん、ダンス狂の目は彼女の踊りに釘づけ。 一緒に踊ってみたい! そのきっかけづくりはナンパから、と声をかけるも、思いっきり無視されて大ショックをうけるダンス狂。 デスコの帝王のこのオレ様を虫けら扱いするとは! それでもめげないダンス狂。賞金のかかったダンス大会をダシにダンサー女を誘うことに成功。 大人で、教養があり、夢をかなえるために努力を惜しまないダンサー女。 いっぽう、未成年で薄っぺらな知識しかなく、地元のペンキ屋でダラダラバイトしながら、ディスコで注目を浴びてチンケな満足感に酔いしれていたダンス狂。「あんた、そんな調子で人生終わっちゃうわけ?」 ダンサー女の言葉によって、ようやくエンジンがかかり始めるダンス狂の人生。 この二人はダンス大会で優勝できるのか? そしてこの二人の関係はどうなっていくのか?みどころ1. ビージーズを聴きながらジョン・トラボルタの動きを観賞するための映画 この作品は音楽はビージーズ、俳優はジョン・トラボルタのためにあるといっても過言ではないでしょう。 オープニング曲の『ステイン・アライヴ』に合わせ、ジョン・トラボルタがピッタリとした黒いスラックス姿でペンキ缶を持ちながら街を闊歩する姿に見とれた人も多かったことでしょう。 190cm 近くも身長がありますから、抜群の存在感ですね。 日本人にはちょっとくどいマスクの持ち主ですが、人間離れした脚の長さと、キレのあるカリスマ的なダンスの動きは必見です。 ちなみに、私は中学生の頃にビージーズの『ステイン・アライヴ(Stayin' Alive)』のプロモーション・ビデオを音楽番組で観て、しばらく大爆笑が止まらなかったことがあります。 個性あふれるカメラワーク(カメラマンはどいつだ)で構成されるこちらのビデオも必見ですが、こちらは動画サイトで確認できると思いますので、興味のある方は検索してみてください。 また、夜のディスコに繰り出すまえに黒パン一丁で鏡に映った自分の姿をうっとり眺めたり、ヘアスタイルをバリバリにキメたりしているシーンはファンサービスなのか、単にナルシストなのか微妙なところです。 ちなみにこのシーンは、以前半分だけご紹介した『ロクスベリー・ナイト・フィーバー』[1998年]でもパロディシーンとして採用されています。ロクスベリー・ナイト・フィーバー ― [パッケージ観賞編] ただ、ひたすらにバカを連鎖させたクラブ系映画 先日のばなびーさんのウィル・フェレルつながりで『ステイン・アライブ』がグルングルン頭の中を回っていたのだと、書いていて今頃気づきました @.@。 2. ただの女じゃない ダンスパートナーとして本物を見つけたダンス狂。 初めてダンス合わせをするシーンでかかる曲が『More Than a Woman』タヴァレスバージョン。 彼女こそ、ダンス狂の踊りをさらに磨きあげ、人生を変えるきっかけを与えてくれた存在。 また、ダンス大会に使われた曲も『More Than a Woman』ビージーズバージョン。 彼にとってはそんじょそこらの女じゃないんです。3. どの世界にも上には上がいる ダンス大会はさすがに実力派揃い。 後に踊ったラテンダンスのペアが、どうもダンス狂たちより実力が上だと一瞬で見抜きます。 土曜日の夜にフロアを総なめにしていたつもりのダンス狂が、井の中の蛙だったことに気づかされる瞬間ですね。 何事にも真摯に取り組まなければ、良いものは生み出せないということを知るよいきっかけとなったことでしょう。 もうすでに字数制限になってしまいましたのでトリビアは省略します。 とても 1万字では語れない作品ですので、その他のネタについてはまた気が向いたときにでも記事にしたいと思います^^。続編映画:もっと観る気力がないあなたに贈る『ステイン・アライヴ』 ←こちらからこっそりコメントでけます
2015.01.05
明日から仕事始めのみなさま、いかがお過ごしでしょうか? 私は元日から作業してましたのでエンジンはほど良くかかっていますが、朝の電車はどうもイヤですね。 年末年始はバタバタしておりましたが、映画も観に行けました。 「地球は青かった」でおなじみのガガーリン宇宙飛行士生誕 80周年記念映画『ガガーリン 世界を変えた108分』[2014年]ですが、現在東京では新宿のシネマカリテでしか上映してないので、興味のある方はお急ぎください(今月中旬まで)。 『ガガーリン 世界を変えた108分』 [公式サイト] さて、今回ご紹介するのは SF でもアクションでもなく、家庭的ブラックユーモア映画『ウェルカム・ドールハウス』[1995年]です。 普通に多くの人が経験する兄弟格差をテーマにした作品ですが、兄弟バトル真っ最中の人には結構グサリとくる内容かもしれません。【中古】【DVD】ウェルカム・ドールハウス (洋画)価格:4860円(税込、送料別) (2016/10/26時点) 十数年前にこの作品をレンタルして、一週間滞納したことがあるのですが、その恨み節的なレビューとしてテキトーにご覧いただければ幸いです(返却日を一週間間違えて覚えてた自分が悪いんですけどね)。わかりやすいあらすじ 成績そこそこ優秀の兄(残念顔)、存在そのものが愛くるしい妹(超可愛い)にはさまれた卑屈な長女(とっても残念顔)。 三兄弟の真ん中は上からも下からも比較の対象となる運命。 勉強と楽器ができる兄、バレエができて大人に取り入るのが異様に上手な妹に比べ、長女(真ん中)は取り柄なし。 取り柄のない真ん中をサポートする気ゼロのクソ親。 そのくせ、妹に対する異常な溺愛ぶり。 こんな環境で妹を好きになれと言われてもそりゃあムリ。 学校でもやたらと絡んでくるイジメ男。 唯一の心の安らぎは、兄のバンドのイケメンヴォーカルを見つめながら妄想をふくらませること。 そんな中、妹が行方不明に。 オロオロするばかりの両親、全く関心を示さないクソ兄、そしてこの状況に戸惑う真ん中。 ついに真ん中は妹探しの旅に。 はたして妹は見つかるのか? ちょっとくらいは真ん中としての手柄を立てられるのか?みどころ1. 人間顔じゃないと言いつつ、みんな美形好き。これ現実アルヨ。 「いっぺん自分の顔を鏡で見てみろ」と人から言われたら傷つきますね。 顔の造形が残念だという自覚はそれなりにあっても、もしかしたら人が言うほどブスじゃないと信じたい自分。 イケメンヴォーカルに一目ぼれしてしまってからは、彼を振り向かせたくてたまらない。 彼もテキトーに話を合わせるタイプなので、心のこもってない受け答えなんかしちゃって悪いヤツですね。 社交辞令を真に受けて一喜一憂する真ん中が見ていて痛々しいです。 この真ん中は今は大女優のヘザー・マタラッツォが演じています。2. 三人そろって性格ブス 兄は自分の得にならないことは絶対にやりたがらないタイプ、卑屈な真ん中は裏では殺意丸出しでブチ切れまくり、妹は妹で自分が可愛いとわかってるから、真ん中をダシに何をしても許されると思っています。 もうどうしようもないですね。この三人。 この中で一人くらいは性格のイイ奴がいてもよかろうと思ってしまいがちですが、よくよく考えてみれば、他人を思いやる余裕なんてないのがフツーの子供の特徴なんですけどね。3. Welcome to The Dollhouse 兄が所属するバンドの代表曲『Welcome to The Dollhouse』。 この作品のタイトルでもあります。 サイケロック調で意外とノリの良い曲なのですが、ヴォーカルがヘッタクソです。 サントラ欲しいなあと一瞬思ったものですが、このヴォーカルはちょっと勘弁ですね。 ちなみにこのイケメンヴォーカルは前歯を治す前のエリック・メビウスが演じています^^。 イケメン・ヴォーカルに合わせてハミングする真ん中の歌声の美しさにビックリ。 これはこれですごい取り柄だと思うのですが、役柄的に取り柄なしという設定なので、ちょっと違和感が漂いましたね。 わざと音痴にハモった方がしっくりきたかもしれません。4. イジメっ子 学校では弱者にグループでちょっかいを出しまくり、真ん中には「犯すぞ」と近づくイジメっ子。 ところが二人きりになると純情でロマンチックな一面も見せたりするギャップの激しさ。 このイジメっ子が作品の中で一番まともなヤツに見えてきます。 表では強がっていても、裏では普通に彼女をつくって恋愛をしたいお年頃。 高嶺の花には手は届かなくても、手っ取り早く残念顔の真ん中なら脅して手ごめにできると目をつけたのがミエミエなのですが、かまっているうちに真ん中を本気で好きになってしまうところなんて、傍から応援したくなりますね。 いや、本当は美人好きだが、性癖的にはブス専という方向性が意外と当たっている可能性もあります。どうでもいいトリビア1. 夜明け 主人公(真ん中)の名前はドーン。英語で書くと Dawn で、夜明けを意味します。 この名前から発せられているメッセージは、未だ明けない夜をさまよっている彼女の姿でしょう。 成長過程において、自分に何ができるかわからない状態にイライラし、それでも色々なことをあきらめるには早すぎる年齢。 変わるチャンスはいくらでもあるのに、このイヤな環境も住み心地がよくなると離れられなくなり、結局変われない。 こういった思いは誰しも抱えているものなのかもしれません。 どうせ頑張っても何も変わらないと思うのは、ただの思いこみという可能性もあります。 年明けは自分を変える絶好のチャンスです^^。 ちなみに真ん中のフルネームは Dawn Wiener なのですが、wiener って皆さんご存知のウインナーソーセージのことでございます。2. 時代背景は 80年代後半~90年代初頭 イジメっ子と真ん中がのんびりとした時間を過ごすシーンで、カセットテープから流れて来る曲が『Lost in Your Eyes』。 16才でデビュー曲『Only in My Dreams』を発表し、天才シンガーソングライターとして名をはせたデビー・ギブソンの1989年の伝説のヒット曲ということから時期がわかります^^。【メール便送料無料】デビー・ギブソンDebbie Gibson / Lost In Your Eyes (輸入盤CD)(デビー・ギブソン)価格:1,990円(税込、送料別)3. 突然現れる食べ物 兄を家で待つことにしたイケメンヴォーカル。 突然の来訪にウキウキしながら、彼女なりに最上級のもてなしをしようとするシーン。 イケメンヴォーカルに話しかけながら木のお盆を取り出すカットから、次のカットに移った一瞬で、お盆の上に食べ物が盛られています。 ←こちらからこっそりコメントでけます
2015.01.04
リュック・ベッソン監督作品といえば、私はカーチェイスをすぐに想像するのですが、みなさんはいかがでしょうか?それとも『レオン』[1994年]でしょうか^^? 今回は 2014年公開映画『LUCY』のレビューになります。【楽天ブックスならいつでも送料無料】LUCY/ルーシー【Blu-ray】 [ スカーレット・ヨハンソン ]価格:3,283円(税込、送料込) 個人の所感として、基本コンセプトが『パウダー』[1995年]とほぼ同じな(類似のセリフも散見される)ので、まだ『LUCY』をご覧になってない方は、こちらの『パウダー』をご覧になってから『LUCY』をご覧になったほうが楽しさが倍増するのではないかと思います。【税込み】【3500円以上で送料無料】【レンタル落ち中古DVD】パウダー /ショーン・パトリック...価格:430円(税込、送料別)わかりやすいあらすじ 台北でチャラついた生活を送るルーシー。 外国人仲間から怪しいアタッシュケースを手渡されたのが運の尽き。 私は何も知らないのよ!と泣き叫んでも、そうは問屋が卸さないのが韓国マフィア。 アタッシュケースの中身の運び屋をやらされるハメに。 運び先で腹を蹴られるというアクシデントにみまわれ、ルーシーの腹に仕込まれていた薬物が全身に流出。 人間の脳の働き(脳力)を飛躍的に向上させる力があるというこの薬物。 フツーの人間が極限まで脳力を開花させたとき、その先には何が待ちうけているのか?みどころ1. 既視感漂いまくりのシーンの数々 あれ、このシーンってあの映画でも見たよね、この映画でも見たよね、というようなデジャブ感がハンパありません。 その代表的なものをいくつか挙げるとすれば、先述の『パウダー』を筆頭に、『リミットレス』[2011年]、『フェノミナン 』[1996年]、『マトリックス』[1999年]、『2001年宇宙の旅』[1968年]、『E.T』[1982年]などがパッと思い浮かぶでしょう。2.おしゃべりルーシー 最初から口数が多いルーシー。 覚醒してから、いろいろなことが理解できるようになったと語りはするのですが、具体性はあまり感じられないため、科学者も呆気に取られるばかりです。 もともとがフツーの人だったので、身に起こり始めていることを事細やかに形容するのは不得手なのかもしれません。 いや、人智レベルを超えてしまった今、フツー以下の理解力しか持ち得ない科学者に何を語っても無駄ということで、あのような描写になっているとムリヤリ解釈することもできます。3. カーチェイス リュック・ベッソン監督というと、私は『TAXi』[1998年]のカーチェイスシーンが思い浮かぶのですが、みなさんはいかがでしょうか?。 『LUCY』でも、暴走、接触、激突、逆走などのテクニックを、白昼のパリ市内で堂々披露しています。4. チェ・ミンシク この映画を語るうえで、チェ・ミンシクは絶対に外せないですね。 韓国では知る人ぞ知る演技派俳優で、情けないお父さんから、極悪非道人にいたるまで幅広い役をこなし、他の役者を霞ませてしまうことでも有名です。 『LUCY』でも彼が出演するシーンは彼がほぼ主役みたいになってしまっていますね。 その他アジア系俳優の演技がどうにもお粗末なので余計際立っているというのもありますが。 ちなみに、チェ・ミンシクは少女時代が大好きなお茶目なオジサンとしても知られています^^。どうでもいいトリビア1. 言語 中国人は中国語、韓国人は韓国語、米国人は英語、を貫きとおしているところは良かったのですが、米国人の視聴者を意識しすぎてフランス人が英語を話しまくっているのには違和感を覚えます。 脳力がパワーアップしたルーシーは中国語をものの数分でマスターできるようになったと自称しますが、中国語で会話するシーンはありませんし、パリに渡ってもフランス語を話さないのもとても不自然なのです。 たとえば、映画『リミットレス』[2011年]では、薬で能力を100%にした主人公のフランス語が流暢になるというシーンがあります。 主演のブラッドリー・クーパー自身がフランス留学経験があるため、こういったシーンも容易に表現できましたが、ルーシー役のスカーレット・ヨハンソンンの場合はそうもいかなかったというのが視聴者に伝わってしまうのです。 覚醒が進めば、テレパシー的なもので意志疎通ができるようになるでしょうから、それなら演出的に、吹き替えでもスカーレット・ヨハンソンに似た声優を使ってフランス語を付けた方が良かったのではないかとも思えてしまいます。 これに対し、チェ・ミンシクの徹底した韓国語遣いには、海外進出を母国語で達成させるという、プロ根性が感じられます。 母国語つながりでは『ブラック・レイン』[1989年]でも故松田優作の日本語が光ってましたが、日本語のセリフにもかかわらず、圧倒的な存在感を放っていたため、映画公開後にハリウッドから出演オファーが殺到したというのは有名な話です(残念ながらその頃はすでに故人となっていましたが)。2.アインシュタインが語ったというエネルギーの話 以降は、『LUCY』のエンディングがよく飲みこめなかった方向けのネタばれとなりますのでご注意ください。 固体も液体も気体も、分子レベルまで細分化していくと、エネルギーの結びつきによって成り立っていることはご存知の方も多いと思いますが、人の思考やちょっとしたインスピレーションも脳細胞が発する微弱な電気エネルギーによって成り立っています。 先述の映画『パウダー』にこんなセリフがあります。"[引用はじめ]Only because energy can never cease to exist.That it relays, it transforms, but it doesn't stop ever.And he said that if we ever got to the point where we could use all our brain, that we'd be pure energy, and that we wouldn't even need bodies.(和訳)エネルギーは絶対に消えてなくなりはしない。エネルギーは受け継がれ、形を変えることはあっても、エネルギー自体が止まることはない。(アインシュタイン)いわく、我々が脳の力をフルに発揮できるレベルまで到達すれば、我々は純粋なエネルギーとなり、肉体すら不要となるだろう。[引用終わり]"引用元:映画『パウダー』[1995年] ←こちらからこっそりコメントでけます
2015.01.03
今年はできるかぎり映画レビューを増やしていきますが、日本公開されなかったものや、 DVD やブルーレイでも入手困難・不可能なものもフツーに混ぜていく予定です。 昨年は El Pico という、ドラッグの危険性を題材にしたスペインの迷作映画をご紹介しましたが、今年の第一弾はコロンビア映画となります。参考記事:El Pico ― 一見教育にはすごく悪そうだが、心を鬼にして青少年に見せたい映画 ご紹介する映画『Buscando a Miguel(ミゲルを探して)』[2007年]ですが、極端な展開続きながら泣けます。 これも国内では流通していないようでとても残念な良作ですが、あらすじだけでもご覧いただけたら幸いです。 Buscando a Miguel [IMDb] Buscand a Miguel [PROIMAGENES COLOMBIA] (スペイン語)わかりやすいあらすじ 超金持ちの家系に生まれ育ったエリート政治家ミゲル。 その中身は女たらし、名声と損得しか頭にないイヤーーーーな性格。 あまりのクソっぷりにすっかり愛想をつかした妻は、浮気相手とともに殺害のチャンスをうかがう始末。 ある日、夜のバーにくりだしたミゲルはすぐにヤラせてくれそうな女を発見。 しかも女の方からモーションをかけてきたので、ミゲルの鼻の下はもう伸びっぱなし。 最初からうさんくさいこの女、ミゲルの酒に睡眠薬を混ぜてまんまと金を奪うことに成功。 前後不覚のまま夜道をさまよっていると、今度はヤンキーに絡まれ、身ぐるみ引っ剥がされて全裸の一文無しに。 そして、お次は死体を病院に売りさばくグループに絡まれ、ボコボコに殴られて仮死状態コース。 身体を生きたまま切り刻まれる前に運よく病院で覚醒したのは、ある意味強運の持ち主。 命からがら病院を抜け出すも、頭を強打されたことで自分が誰だかわからない。 裸同然でさまようミゲルを救ってくれたのが厚化粧のニューハーフ。 ミゲルがイケメンだったので、下心込みで自分のところに招き入れて同居生活がスタート。 「あなたの名前はラウルよ」なあんてニューハーフは言うが、何度聞いても耳になじまないこの名前。 肝心なことはまったく思い出せないのに、断片的によみがえる大昔の彼女らしい女とのエロい思い出の数々。 ミゲルは自分の名前を思い出せるのか? このニューハーフとの生活の先には何があるのか?みどころ1. クソ政治家が人間らしさをとりもどすまでの長い道のり 金持ちは貧乏人の気持ちがわからない、わかろうとしないという社会風刺を、ミゲルの悲惨な体験を通じて伝えようとしている試みはなかなか面白いですね。 なんたって、文字どおり裸一貫となり、貧乏人のウロウロしている地域をさまよい、ホームレス生活までこなしますから。 もし、ミゲルが記憶を失っていなかったとしたら、たとえマネでもここまではできなかったでしょう。 廃品回収のノウハウを学び、炊き出しの列にきちんと並び、物々交換すべてが人々の信頼によって成り立っていることをホームレスのコミュニティで学ぶわけですが、そこにはかつてのイヤーなミゲルの姿はありません。 清貧まっしぐらの生活を送るミゲルを連れ戻しにきた母親に、「僕の家はここだよ」と笑いながら答える姿は涙なしには見られません。2. 父親との確執 ミゲルが人間として最低な男に成り下がってしまったのは、まぎれもなく父の影響です。 格差を強調し、政治一家の跡継ぎとしてふさわしい人間に仕立てるために、その邪魔になるものを徹底的に排除しようとします。 そんな中、ミゲルは近所に住むインド系の少女と深い恋に落ち、真剣に彼女のことを考え始めるわけですが、その恋中も父親によってムリやり引き裂かれ、イロイロ甘酸っぱい初恋はあっけなく終わります。 それから本格的な政治家コースを歩み始め、イヤーーな人間が出来上がってしまったわけですね。 しかし、記憶喪失になってもクソ人間になる前の記憶が断片的によみがえってくるわけでですから、過去の父親のひどい仕打ちが強いすり込みになっていたという、皮肉な展開となっています。3. 愛のある生活を夢見るニューハーフ 昔の男、ラウルとの思い出が忘れられないニューハーフ。 おかまショーの舞台に立ちながらも、荒んだ生活に疲れ切っていたころに、突然記憶を失ったイケメンが裸で現れるのですから、これこそ夢小説の世界でしょう。 記憶を失っている今、私色に染めて、忘れられないようにしてやりたい。 なあんてゲスいことを考えてしまうのも無理はないでしょう。 もし、途中で記憶が戻ってきたら、そのときは笑って手放せばいいのだから。 と頭では分かっていても、しばらく寝食をともにすればそうもいかなくなってしまうものでしょう。 話が進むにつれ、健気で一途なニューハーフを応援したくなって来るので不思議ですね。どうでもいいトリビアニューハーフ役は実は女性 ニューハーフ役を演じたラウラ・ガルシアは作品の中ではニューハーフにしか見えないのですが、ボゴタ出身の美人女優です。 ラウラ・ガルシアプロフィール [PROIMAGENES COLOMBIA](スペイン語) 女優のほか、脚本、演出なども手がけ、またハスキーボイスを活かしてカントリー歌手としても活動しています。 『Querido Mr. Vain』というアルバムも出していますが、残念ながら楽天では取り扱いがないですね。 ←こちらからこっそりコメントでけます
2015.01.02
みなさま、楽しいクリスマスをお過ごしでしょうか? 私のなかでクリスマス定番ソングというと、オズモンド・ブラザーズ(またはザ・オズモンズ)のウインター・ワンダーランドです。 ハナタレの頃に親が買ってくれたクリスマスアルバムの収録曲ですが、毎年そればっかり聴いてました。 楽天での取扱いはないようなので、とっくに廃盤になったかもしれないですね。 そして、クリスマスにはケーキがつきもの。 いちごショートケーキが苦手という件は当ブログでもチラっとお話ししたことがありますが、昨晩はショートケーキの押し付け合いでケンカになりかけましたね。 後々考えたらおバカな話ですが、甘いものを口にすると気持ち悪くなってくるので、見てお腹一杯になればそれで満足でございます。 前置きはこれくらいにして、今回は今の時期にちょうどぴったりの日本映画をご紹介します。 前回は心がほんわかあたたまる映画でしたが、こちらの『横道世之介』[2013年]は鑑賞中ずっとニヤニヤしてしまう映画になります。【楽天ブックスならいつでも送料無料】横道世之介 [ 高良健吾 ]価格:3,693円(税込、送料込)わかりやすいあらすじ 駅のホームに転落した酔っ払いを助けようとした韓国人留学生と日本人カメラマン。 残念ながら三人とも列車にはねられ死亡。 このカメラマンの生前にフォーカスを当て、彼のミョーに笑える青春時代の足あとを回想形式でご紹介。 とても 160分では見足りない横道世之介エピソードの数々。みどころ1. 空気読めないモップ頭の田舎者 大学進学のために、長崎の港町から上京してきたモップ頭の青年。 新宿駅前の広場でもらった試供品のガムを噛みながら、ウキウキ鼻歌歌っちゃう素朴さで、出会った人たちの心にズカズカと入り込んでいきます。 距離感はまるでゼロ。 一回話したらもう友達みたいな感覚でいるので、最初はみんなドン引きですが、あまり悩まずに行動するモップ頭に乗せられて、彼にすっかり心を許すようになっていきます。 誰しも人に言えない悩みを抱えていたりするものですが、モップ頭の距離感のなさが功を奏し、クヨクヨ悩む方がアホらしく思えてくるほどです。 「金を貸してくれないか」と頼まれたら、「うん、いいよ」と即答。 ゲイだと打ち明けられても、全然気にしないから、そっちはそっちで好きにやりなよという感じ。 裏表のない人間関係はそう簡単に築けるものではありませんから、あれから時を経ても皆の心の宝物になっています。2. 輪をかけて空気読めないお嬢様 定番のごあいさつが「ごきげんよう」のお嬢様。 お抱え運転手つきで、家にはトラの剥製があったり、女中がいたりするベタな設定。 世間知らずながら、モップ頭の裏表のなさを一瞬で見抜き、所得格差おかまいなしにモーレツなアプローチを展開。 最初はタジタジだったモップ頭も、彼女の気取らないところ、一途さ、人間としての温かさ、意外と高いヒューマンスキルに惹かれるようになっていきます。 まさに日本の男性が思い描くような、理想的な女性像ともいえましょう。3. サンバサークル 大学のサンバサークルの強烈な勧誘に乗せられて、合宿やパレードにも参加。 練習風景でとてもサンバとは思えない動きを見せながら友達とくだらない話をしたり、パレードでは日射病で倒れ、その情けない姿を撮られたビデオを何度も友達に見せてウザがられるところは爆笑ものです。どうでもいいトリビア1. 実はちょっとした問題作 2001年に発生した新大久保駅人身事故は、記憶に新しい方も多いと思います。 ストーリーで語られる状況から判断して、この事故がモチーフになっていることは間違いありません。 酔っ払いを助けようとして命を落とした韓国人留学生イ・スヒョン(李秀賢)さんのニュースは、韓国でも大々的に報じられました。 泣きながらインタビューに答えていたご両親の姿がとても痛ましかった記憶があります。 参考:李秀賢さん追悼サイト [韓国語] 冷静に考えると、当事者は誰一人助かっていないのですから、人身事故のひとつとして片づけられて終わる話でしたが、この韓国人留学生がやたらとメディアに取り上げられたことに違和感をおぼえた方も多いことでしょう。 当時語りになりますが、2002年のFIFAワールドカップで日本と韓国がモメていた時期に重なります。 当初、日本では『日韓ワールドカップ』という表現をしていましたが、韓国内では、共同開催なのになぜ日本が先にくるんだと文句を言っていましたね。 「韓日」にするか、それが無理なら「韓日・日韓」にしろという要求まで出てくる始末で……。 国際的なイベントで日本が絡む場合、日本人なら「日本」を先に付けたがるのは当たり前の感覚だと思っていたので、これはちょっとしたカルチャーショックでした。 そんな中、このような痛ましい事故が起こり、ホームに転落した日本人を助けるために自己犠牲をはらった韓国人をメディアが美談として語ることで、ワールドカップを前に険悪なムードに陥っていた日韓関係の改善をはかろうとしたとも取れるわけです。 いっぽう、同じく事故に巻き込まれたカメラマンの関根史郎さんは、イ・スヒョンさんのニュースの影にひっそりと隠れ、次第に人々の記憶から忘れ去られていきました。 このシチュエーションとして関根さんがモデルになっています。 『横道世之介』として彼の人間性をそのまま再現したとは思えないのですが、小説執筆・映画製作にあたり、遺族に対する配慮がどれだけ払われたのかは気になるところです。 親心として、他人のために死んだ息子を周りが褒めたたえようが、哀悼の意を伝えようが、虚しいばかりでしょう。 親より先に死んだ我が子は戻ってきませんし、彼の勇気ある行動も、結局人助けにはならなかったのですから。2. バブリーな 80年代後半 この映画で何といっても驚くのが 80年代後半の東京の街中の再現性の高さです。 出だしの新宿駅入口のたたずまいを見た瞬間、懐かしさがこみ上げます。 たとえば、当時私も足しげく通っていた「カメラのさくらや」が当時の姿で映っているだけでなく(今はヨドバシカメラ)、可愛いと大人気だった斉藤由貴の巨大ポスター看板。 しかも、当時彼女が CM イメージガールをしていた富士フイルムカセットテープ AXIA の宣伝でございますよ。 「キスミント」というガムも発売されたばかりで、私も試供品をもらいました(歳がバレるな……)^^。 また、AXIA は彼女の 1985年のアルバム名としてご存じの方も多いでしょう。 【中古】ミュージックテープ 斉藤由貴 / AXIA【10P13Dec14】【画】価格:730円(税込、送料別) 私は全くファンではありませんでしたが、ラジオ CM でも大々的に宣伝していましたのでなんか忘れないですね。 それから電車のシルバーシート。オープニング間もないシーンですが、イヤでも目に入ってきます。 当時はシルバーシートが導入されたばかりで、青いステッカーが窓に貼られてあるだけという、微妙なアピール具合でしたが、それも忠実に再現されています。 また、今では秋葉系と言われる、チェックシャツをズボンにインするファッションが普通に受け入れられていたり、前髪を上に向かってカールさせる髪型とか、ワンピース+ストッキング+ショートソックスの組み合わせなども、当時流行りのファッションをみごとに再現しています。 沖田修一監督が 1977年生まれということで、映画の時代設定の頃はまだ小学生だったことを考えてみても、相当なリサーチを重ねたことは想像に難くありません。
2014.12.25
タイトルでネタばれしていますが、今回は囲碁をテーマにした日中合作映画をご紹介します。 まずはジャケット観賞から。 ジャン・チンミン監督『東京に来たばかり』[2013年]。【楽天ブックスならいつでも送料無料】東京に来たばかり [ 倍賞千恵子 ]価格:3,693円(税込、送料込) 公式サイトはこちら:東京に来たばかり(トレイラーを観賞できます) 中国人監督が撮る日本人の姿は、私たちが想像するような日本人像とはかけはなれていることがあります。 日中戦争、太平洋戦争、第二次世界大戦のイメージによるものが大きいため、日本人が悪く描かれがちなのはやむを得ない部分でもあります。 たとえばチャン・イーモウ監督『紅いコーリャン』[1987年]では、日帝軍が捕らえた中国の村人を杭にくくりつけ、生皮を剥ぐという残酷な描写をしていますが、これは中国史上に残る極めて残虐な凌遅刑をイメージさせます。 参考:凌遅刑 [WikiPedia] また、ムウ・トンフェイ監督『黒い太陽 恐怖の細菌部隊731』[1995年]では、日中戦争、太平洋戦争時の日本軍731部隊による中国人への人体実験の模様を、これでもかと言わんばかりの残虐性をもって描写しています。 どういうわけか食事中に観賞しちゃったんですが、胸クソ悪くなりましたね(あたりめー)。 この映画は、一部のホラー・グロ映画好きの間では有名な作品だと思っているのですが、日本のメディアで目立った取り上げ方をされた記憶はありませんね。 観賞者の間で史実との矛盾点の指摘や批判、当事者・関係者からのクレームを避けるものではないかと邪推しています。 最近の映画『イップ・マン』シリーズでも、同じように日本人の印象はよくありません。 日本人は狡猾で悪者、ひるがえって中国人は清く正しい、これで中国人も気分スッキリの展開になっております。【楽天ブックスならいつでも送料無料】イップ・マン 葉問 [ ドニー・イェン ]価格:3,507円(税込、送料込) 唯一、中村獅童演じる空手家は潔く闘おうじゃないの!という気概を見せてくれましたが、主人公イップ・マンは試合前に別の日本人に毒を盛られちゃってますから。ほんと、しょーもない。 シリーズ全体を通じて豪華キャスト、カンフー映画好きにはたまらない映画ですが、日本人が悪いことをしてると、本当は善良な人の方が多いのに、とツッコミを入れたくなりますね。 そういったイヤーな日本人像を見させられているだけに、『東京に来たばかり』という陳腐なタイトルのこの映画のギャップがすごいんです。 イイ日本人、イイ中国人がバランス良く登場するので、安心して観賞できます。 若い方から、子育てを終えられたシニアな方までジーンと心があたたまりますよ。わかりやすいあらすじ 囲碁を勉強するために、はるばる中国からやってきた内気な青年。 内気すぎてなかなか仕事にありつけず、悩んでいたところに出会った野菜売りのおばあさん。 そして、このおばあさんの紹介でカプセルホテルの清掃アルバイトをゲット。 おばあさんの家にお礼に行くと、いかにもヤンキー上がりの青年が家をブラブラ。 この優しそうなおばあさんに、このヤンキー孫ってどういう組み合わせかい!と中国人シャイボーイもビックリ。 実はこのシャイボーイ、天才的なアマチュア囲碁打ちで、中国本土から取材がくるほど(なんか呉清源っぽい気もするが……)。 そのまま乗せられてアマチュア囲碁トーナメントに出場することに。 ヤンキー孫とおばあさんの確執は? シャイボーイはトーナメントで優勝できるのか? やたらと人脈がありそうなこのおばあさんはいったい何者?みどころ1. おばあさんが主人公 中国人青年が東京にやってくるという設定ですので、この中国人が主人公かと思ってしまいがちですが、実はおばあさん役の倍賞千恵子が事実上の主人公といえるでしょう。 寅さんシリーズのさくら役のイメージが色濃いせいもあって、ごくフツーのおばあさん姿の倍賞千恵子には度肝を抜かれましたが、どこにでもいそうな人を当たり前のように演じられるのは名女優のなせるワザでしょう。 青年が道路にぶちまけた碁石をおばあさんと拾いあうところから、バラバラにに見える人々の思いや、家族の思いがつながりはじめます。 おばあさんに助けられ、支えられ、そして日本人の中で鍛えられていく中国人シャイボーイの姿は見ていてほのぼのしますし、周りの日本人たちや中国人たちもとても協力的なのもいいですね。2. 頑固すぎる孫 孫はチャラチャラした感じで、台湾女にうつつを抜かしています。 しかし、女を守るために命を危険にさらし、女に迷惑をかけたくない一心で、強引に女との別れを選ぶという、頑固バカハードボイルドな一面も垣間見せるニクいヤツです。 しかも、早く日本になじめるようにシャイボーイに日本語を教えたり、囲碁大会の不正疑惑を晴らすために協会に電話を入れてくれちゃったりするアツい男です。 ここまでいろいろ気にかけてくれたら、男女問わずこのヤンキー孫に惚れてしまいますね。 ヤンキー孫役を演じているのは中泉英雄ですが、中国映画話題作・問題作にも出演していますね。『南京!南京!』[2009年]とか特に……。 日本人としてこういう映画を観賞するのは辛いですが、日本人で中国語がある程度できるとこういった出演オファーが来るのはしかたがないことなのかもしれません。 味のある演技をする俳優(顔もイイ)なので、これからもっと注目されそうです。3. 日本語ヘタッピイの中国人 全編を通じて、シャイボーイ役を演じるチン・ハオの日本語が全然上達しないところに好感が持てます。 ヘタッピイなりに人助けしたり、日本社会に溶け込もうという姿勢はすばらしいですね。 コミュニケーションは、言葉を巧みにあやつることより、人そのものがすべてです。 外国暮らしでなかなか土地になじめない方でも、彼の姿に心打たれるものがあると思います。 文字数制限のため、トリビアコーナーは省略します。 ほのぼのムードで進行しながらも、アクションあり、どんでん返しありなので、全体的によくまとまっていると思います。 ただ、一本の映画にこれだけ盛り込むなら、もう少し各シーンのテンポが速ければ、間のび感が薄らいだかもしれませんね。
2014.12.23
北朝鮮の金正恩第1書記暗殺を題材にしたコメディー映画『ザ・インタビュー』[2014年]。 ハッカー軍団からソニー・ピクチャーズに警告文が送られてきて大騒ぎとなり、12月25日の公開予定は見送りとなりました。 参考記事:ソニー・ピクチャーズ、映画公開見送り テロ予告受け [日経新聞] セス・ローゲン主演・監督ということで興味はありましたが、まさかの展開で驚きでしたね。 ↑ オバマ大統領の強気のプッシュにより、映画館限定で公開が決定したようです(2014/12/24 追記)。未見だけどわかりやすいあらすじ米国のとある人気テレビ番組。実はなんと、北の将軍さまもこの番組が大好き。これはチャンスとばかりに、同番組スタッフが将軍さま独占インタビューに乗りこみをかけることに。すると CIA も便乗してきて、この二人に暗殺を依頼。まさかのヤバいミッションを任され、二人の運命やいかに?ブラックユーモアも度がすぎると笑えなくなる 番組プロデューサー役のセス・ローゲンは、『グリーン・ホーネット』[2011年]や『40歳の童貞男』[2005年]などでの華々しいキャリアを持つ俳優ですね。【楽天ブックスならいつでも送料無料】【BD2枚3000円2倍】グリーン・ホーネット【Blu-ray】価格:1,500円(税込、送料込) また、インタビュアー役のジェームズ・フランコも、『オズ はじまりの戦い』[2013年]や『ミルク』[2008年]で難しい役どころをみごとにこなした実力派俳優です。 この映画の製作・出演を決めた時点で、彼らの北朝鮮に対する姿勢も見えてしまったというものです。 セス・ローゲンは個人的に好きな俳優だっただけに、とても残念に思います。 キツいジョークは、受け入れる側が面白いと思わなければ、嫌味にも脅威にもなります。 英国や米国のコメディ映画では、政治家をおちょくったり、国王や女王がドタバタ劇をやらかす場面も含まれることがありますが、それは同じ国内の人間が、国家や政治に抱いている批判的な意識を面白くデフォルメしたものだと誰もが解釈できるからこそ受け入れられるわけです。 ですから、他国の人間が見ればそこまでやるかい!と思うこともしばしばです。 たとえば、その代表作としてまず思いつくのがチャーリー・チャップリン主演『独裁者』[1940年]。 ヒトラーをモチーフにしているのは一目瞭然ですが、第二次世界大戦まっただなかでの公開でしたので、下手すれば命を狙われる危険性もあったわけです。 ちなみに、日本公開は 1960年でした。 公開が遅れた理由は、日本がかつてナチス・ドイツと友好関係にあったためです。 故レスリー・ニールセン主演のコメディ映画『裸の銃を持つ男』[1988年]では、エリザベス女王、アラファト、アミン、ホメイニ、ゴルバチョフのそっくりさんが出てきて、ハチャメチャ劇を繰り広げています。裸の銃を持つ男 【Blu-ray】価格:2,057円(税込、送料別) また、チャーリー・シーン主演映画『ホットショット2』[1993年]では、シルベスタ・スタローン主演映画『ランボー』シリーズをベースにしたパロディでありながら、サダム・フセイン邸に侵入して仲間を救出する展開となっています。 湾岸戦争終結からそれほど経っていなかった時期でしたし、事実上の勝者としての米国側の人間なら楽しく観賞できたでしょう。 しかし、甚大な被害を受け続け、大変な思いをしながら日々の生活を送っていた立場の人たちからは、決して笑いを引き出すことはできないのです。ホット・ショット2 【DVD】価格:1,029円(税込、送料別) こういったブラックユーモアを理解できないなんて、心が狭いと考えてしまうのは、敗者・弱者の立場に置かれたことのない者の無理解からくるものなのかもしれません。 北朝鮮は、国内の情報統制が厳しいことで知られていますが、だからといって世界の情勢に疎いはずはなく、またいくらネット環境が先進国に比べると不備が多いとしても、決して人として劣っているわけではないのです。 しかも、滞在(あるいは潜伏)先の国が、情報を自由に得られる環境であるならば、先進国と同等の技術力を習得していてもおかしくはないと思ったほうがよいでしょう。 警告文の英語の間違いを揶揄するニュースもありましたが、英語の間違いと、コトの重大さのどちらを問題として取り上げるべきでしょうか。 ソニー・ピクチャーズへのサイバー攻撃も、彼らのクラッキング能力を世界に知らしめるための牽制手段の一つになったわけですから。 今回の件で、身に危険が及ぶ出演者や関係者も出てくるかもしれません。 見せしめのために誰かが攻撃を受ける、なんてことにならなければよいのですが。 この一件で米国政府にもかなりの緊張が走っていることでしょう。 いくらセキュリティを強化しても、破られてしまえば情報取り放題なのです。 日本もいつまでも傍観者ではいられない問題だと私は思いましたね。 参考記事:ソニーへのサイバー攻撃「北の犯行」と断定 米大統領、報復表明 [Yahoo] ←こちらからこっそりコメントでけます
2014.12.20
視覚があるかぎり、人間は美しい物につい見とれてしまいますね。 対象が人であれば、若くて綺麗でピチピチしている方に目が行ってしまうのが本能というものでしょう。 たとえばアイドル。 最近では中年に差しかかったアイドルやグループも現役で活躍するようになってきてはいますが、一昔前なら多くの人にとっては三十路を過ぎたアイドルは用済み同然でした。 毎年数えきれぬほどの新人アイドルがデビューして、芸能界の椅子取りゲームをくり広げているわけですから、目新しさ、カリスマ、才能、これらが持続しないアイドルは淘汰されていく運命ともいえます。 今回は大衆が求める美を追求した結果、破滅の道が待っていたという映画『ヘルタースケルター』[2012年] をご紹介します。【楽天ブックスならいつでも送料無料】ヘルタースケルター スペシャル・エディション<2枚組>...価格:4,969円(税込、送料込) 映画『クローズド・ノート』[2007年] 舞台挨拶の「別に……」発言でお馴染みの沢尻エリカの女優復帰作というだけでなく、裸体表現あり、濡れ場ありということで公開前から話題となっていましたね。わかりやすいあらすじ 女子がなりたい顔ナンバーワンに輝いたトップアイドル、りりこ。 書店にはりりこの写真がズラリと並び、完璧な美貌と抜群のスタイルで芸能界でもひっぱりだこ。 しかし、りりこには秘密があった。 皆が憧れる彼女の美貌はすべてが作り物だったということを。 萎れた花は枯れて消えるだけ。 そんな中、新人モデルが同じ事務所に。 生まれ持った美貌とカリスマをあわせ持つ最強の新人を前に、隠しきれなくなってきた手術の後遺症と、かすみ始めた自分の存在におびえるりりこ。 りりこはどうなってしまうのか?みどころ1. ぬるいエロ 沢尻エリカは透き通るような肌と長い脚の持ち主で、日本人離れした顔の小ささとリカちゃん人形のような顔の造りですので、この作品の被写体としては見事なハマり役だと思いました。 芸術作品として観賞するだけでも一見の価値はあるかもしれません。 ただ、裸体表現を使った映画プロモーションは杉本彩主演映画『花と蛇』[2004年] でやりきった感があるので、あまりそれを話題にしても客層はそれほど食い付かないのではないかと個人的には思いました。 エロさの基準には個人差があるので何とも言えませんが、一般的には胸、尻がある程度張っていて肉感的であること、ちょっとしたしぐさが卑猥であることなどが挙げられますから、これらの条件が備っている女優なら、映画という表現目的であれば着衣のままでも十分に演出できたのではないかと思います。 エロという意味では『ヘルタースケルター』も『花と蛇』と同様、モデルが綺麗すぎるという点が災いして、脱いでもマネキン人形を見ているようでエロ効果は薄いですから、沢尻エリカの裸体が拝めると鼻の下を長くして観賞しても肩透かしを食らうことになります。 それに対し、ドンくさいマネージャー役の寺島しのぶがイイ味を出しています。 りりこ様一筋なところ、日本人的なのぺっとした体形、少女のような恥じらいを見せるところや、りりこ様とヒモ男に献身的に尽くすところなどは、このままズルズルと流されて何でもやり兼ねない危険さをはらんでおり、だんだんと見てはいけないものを見ているような気にさせられます。2. 若さという武器はタイムリミットつき これは二十歳を過ぎた人なら誰もが通る道ですね。 女性なら結婚の二文字が目の前をチラつきはじめ、若さだけで勝負できるのは今のうちだと思う人も多いことでしょう。 近年は晩婚化がすすみ、再婚も当たり前のようになってきてはいますが、パートナーを選ぶにあたって、まずは若い方に目が行ってしまうのが種の保存プログラムに組み込まれた遺伝子の意志ともいえます。3. 替えはいくらでもいる 人間はより優れたものを求めたがります。 より若く、より美しく、より賢く、よりたくましく。 しかし、そのいずれも、生きているかぎり競争の場に並べられる傾向にあります。 よりよいモノを持っている人材とはいつでも交代させられる可能性があるのは、日常生活でも普通に起こっていますね。 そのうち最も賞味期限が短いのが、見てくれの美というものなのかもしれません。4. 寒い表現がどうにも止まらない男 ちょっと前のフランス映画やドイツ映画などで、キャストが唐突に詩的表現を口走ったりすることがありましたが、それをこちらでは詩的ポジションとはかけ離れた検事がやってくれちゃっています。 のっけから薄ら寒いんですこれが。 「いいね、朝のコーヒーは。カップの中に漆黒の笑みが溶け込んでいるようだ。」 ちょっと小洒落た物書きが綴ってしまいそうな表現ですが、ひとたび口に出すと周りはリアクションに困るだけです。 アシスタントもツッコんでよいものか苦笑い。しかしこれは序の口で、話が進むにつれどんどんエスカレートしていきます。 この調子で無表情のまま最後までクサいセリフを吐きまくった大森南朋ですが、撮影の際にセリフを口にしながら笑ってしまったのではないかと要らぬ邪推をしてしまいます。5. 人生はやり直せる トップスターになる夢をかなえたりりこ。 りりこはトップスターの地位から転落することを常に恐れていますが、新人モデルの芸能界入りの動機はスカウトされたから何となくといういい加減さ。 モデル業もどうせ長くは続けられないとわかっているから、いずれはやめるつもりで今を楽しんでいる感じ。 必死さのかけらもないにもかかわらず、りりこの仕事をどんどん奪っていきます。 しかし、たとえ第一線で活躍できなくなっても、才能があれば活路はどこかに見つかるものです。 それを切り開くかどうかは自分次第。 これは若いというだけで慢心せず、できるうちに自分の内面を磨いておけという、若い世代のひとたちに向けられたメッセージのようにも取れます。 どうでもいいトリビア1. ニナ・ハーゲン パンクロッカー、ニナ・ハーゲンのオペラがかった Naturträne をバックにいろとりどりの雑誌の表紙、女子高生たちのきらびやかなネイルアートが万華鏡のようで、すべてがコロコロと移ろいゆく様子が見事に表現されていますね。 ちなみにニナ・ハーゲンのファッションもきゃりー・ぱみゅぱみゅ顔負け(あちらの方が元祖)ですが、元専属デザイナーはジャン=ポール・ゴルチエだったりします。2.映像美と音楽の意図的な不調和 個人的には蜷川実花監督の映像の色づかいが好みですが、全編を通じて原色、七色、あちこちと落ち着きのないカメラワークに映像酔いする方もいらっしゃるかもしれません。 デヴィッド・リンチ監督、ティム・バートン監督、ターセム・シン監督あたりの世界観を好きな人なら映像だけで十分楽しめるでしょう。 前述のニナ・ハーゲンの狂人的な歌声そのもののような映画で、たまに音響ミスなのではないかと思えるほど音楽が大きくてキャストの声を殺している部分もあります。 本来ならクローズアップしながら情景説明をするべきところを意図的にズームアウトしていたり、俯瞰ショットの多用で全体的に落ち着きのない印象ですが、この映像はりりこが精神の安定をドラッグに求め始めたころから説明がつきやすくなっています。 全身整形でまやかしの美を手に入れた瞬間から、バッドトリップ街道をトップスピードで突っ走ってきたりりこの生きざまには安定の道などないのです。 ただ、りりこ、マネージャー、ヒモ男、検事など、ストーリーの重要なカギを握るキャストの心理描写がもっと細かく撮られていたら、より感情移入しやすくなったのではないかと思います。 ←こちらからこっそりコメントでけます
2014.11.17
タイトルですぐに作品名が思い浮かぶ方は相当な映画好きですね。 この映画が公開されたときは、24億円超えという製作費のバカ高さ(もちろん日本映画史上最高額)が話題になりましたので、記憶している方も多いかもしれません。 最近、草刈正雄の目撃情報で盛り上がったのを思い出し、今回はその勢いで『復活の日』(1980年)をテキトーにご紹介します。 ハナタレの頃(確か 1981年)にテレビで二夜連続で観賞したのが最初です。 人を死に至らしめるウィルスという、子供にも十分な恐怖感を与える題材、そして猛威をふるう殺人ウイルスの中に見た希望の光といった組み合わせになっておりますので、長編映画にもかかわらず最後まで楽しめると思います。 原作は小松左京ですが、同氏原作のパニック映画『日本沈没』(1973年)で日本列島を海に沈めるショー(しかもリメイクされてまた沈められ……)を観ていた方は、『復活の日』の方によりリアリティを感じることでしょう。 ただ、それだけ『日本沈没』は『復活の日』に比べると安心して観賞できるということにもなりますが。 『復活の日』は日米合作で、日本版、米国版と、二つのバージョンがあります。 ストーリーは同じでも、視点は二つに描かれているためそれぞれに異なるシーンが挿入されているのも面白いところですね。 『復活の日』ファンの方は、両方のバージョンをご覧になるとさらに楽しめるでしょう。 当方はボックスセットを所有していますが、本編、制作スタッフのインタビュー映像、米国バージョンの豪華三本立てと、特別ブックレット付きで、このセットで『復活の日』の世界観にどっぷり浸かれるようになっています。 最近では、日本国内では蚊によるウイルス媒介でデング熱感染者が続出し、先進国ではエボラウィルス感染者が死亡したというニュースが流れておりますので、人命を脅かすウイルスの恐怖は実は、ごく身近なところに潜んでいると思ったほうが良いのでしょう。 エボラ出血熱ウイルスを題材にした映画では『アウトブレイク』(1995年)、細菌学者が持ち出した殺人ウイルスが原因で、人類滅亡寸前になってしまった未来から過去を取り戻す『12 モンキーズ』(同じく1995年)も話題になりましたが、当時は対岸の火程度の恐怖感を持ちながら鑑賞している人も多かったかもしれません。 これらもいずれご紹介したいと思います。わかりやすいあらすじ 東ドイツの陸軍細菌研究所(時代を感じるな……)。 科学者のうっかりミスで、とんでもない怪物ウイルス(MM-88)ができてしまった。 こんなのに感染したら、人類はひとたまりもない。 手に負えなくなったウイルスの標本を有能な科学者に送ってワクチンの共同開発を目指そうとするも、何と搬送スタッフとしてやってきたのが西側のスパイ。 これでもう世界はオレ達のものさ、とスパイたちはウホウホ状態だったが、搬送中にヘリがアルプスの山岳地帯で墜落。 大気にさらされたウイルスは、ビックリ仰天のスピードで増殖。 ウイルスは見えない力で着実に生態系をむしばんでいく。 羊が大量死しはじめた頃には時すでに遅し。 続いて人類もこの強力なウイルスに次々に命を奪われ……。 作品名は『復活の日』だが、特効薬も撲滅する手段もない状態。 こんな調子で人類は本当に復活できるのか?みどころ1. 映画『キャノンボール』並みに豪華すぎるキャスト いつもは出演者情報を削ってしまうことが多いのですが、今回は書かずにいられません。 『仁義なき闘い』で大成功をおさめていた深作欣二監督がメガホンを取り、草刈正雄、ソニー千葉、緒形拳、渡瀬恒彦、夏八木勲、多岐川由美、森田健作、丘みつ子と、みなさんきっとご存知の有名俳優がドーンと登場です。 米国俳優では、『大空港』でおなじみのジョージ・ケネディ、テレビシリーズ『特攻野郎 Aチーム』のロバート・ヴォーン、小五郎2005さん命名あきらぁー(布施明)の元妻もとい『ロミオとジュリエット』の主演女優オリヴィア・ハッセー、『ギルダ』のグレン・フォード、『帰って来たガンマン』のヘンリー・シルヴァ 、『華麗なるヒコーキ野郎』のボー・スヴェンソン、『大いなる西部』のチャック・コナーズ、の超超豪華な面々が並ぶわけですよ。 変わりどころでは、80年代~90年代によくコメディ映画に出ていたエドワード・ジェームス・オルモスも出演しています。 キャストのギャラだけで目玉が飛び出るような数字が並んでいたことは間違いないですね。2. 草刈正雄 彼はこの作品では主人公という位置づけですから、日本版では安定した存在感がありますね。 ファンの方なら彼が出るたびに動きを目で追っていたのではないでしょうか。 モデル出身、日本人と米国人のハーフということもあり、彼が登場するたびに、ファッション雑誌の切り抜きをシーンにはめ込んだような違和感があります。 外国人の俳優にまぎれても、最も顔の造形が整っているのは誰の目にも明らかですが、米国版は、序盤はほとんどセリフがなく、中盤以降から英語の長セリフを披露することで、草刈正雄という日本の俳優の存在感を徐々に大きくしていくアプローチを取り、最後はこの役は彼なしにはありえないのだという圧倒的な存在感で締めくくることに成功していてます。 しかし、劇中の彼は英語を話してはいるものの、セリフを言っているというちょっとした上すべり感はどうしてもあります(むしろ夏八木勲の英語での演技が自然すぎて怖い)。 この点については彼自身も相当な葛藤を抱えていたようで、ハリウッド俳優と日本俳優の演技の違いに愕然したと後に語っています。 草刈正雄 ハリウッド俳優と日本人の芝居の違いに落ち込んだ [Excite ニュース 2013年11月7日]3. スケールのでかさ 今は宇宙だろうが、仮想空間だろうがブルースクリーンと CG との合成でかなり現実味のある映像つくりだすことが可能ですが、80年代初頭では、作品の命にかかわる見え透いたエフェクトを一切排除したホンモノ指向となっています(銃声除く……あれはないな)。 ロケ地は日本、米国、ドイツ、イタリア、ソビエト連邦、さらには南極・北極まで広範に及んでおり、すべて実地というのですから驚きですね。 潜水艦も本物を使い、ヘリの墜落シーンにも大量の火薬を使っていますから、本物の炎がたちのぼる様子を確認できます。 とはいえ、私が知っているかぎりでは製作費がマンモス級に肥大化した映画は、エリザベス・テーラー主演映画『クレオパトラ』(1963年)ですね……。 現在の日本円にして300億円相当で、かの20世紀フォックスが経営危機にさらされたぐらいですから。 その話をすると『復活の日』がちょっとだけ霞んでしまいますが、どちらも映画製作はギャンブルの世界だと言わしめる額であることには間違いないですね。 『クレオパトラ』に関しては、気合いの入った映像美だけでも金を払って観賞できるレベルですから、もしテレビ放送やレンタルで御覧になる機会があったら、画面のすみずみまでチェックしてみてください^^。4. 南極ハーレム 生存者は南極大陸に駐在していた 863人(うち 8 人が女性)。 つまり、8 人の女を 855人 の男でシェアしなければ人類はいつ滅びるかわからない状態。 そして女たちはコールガールのように予約制で呼び出され、夜な夜な(いや昼もかも)男の相手をさせられるというトンデモ展開に。 表向きは種の保存のために避けられない手段であっても、違和感丸出しですね。 この子作り計画を「真剣に」話しあっている男たちの目線がどうしても「どれにしようかなあ」と泳いでいるように見える不思議。あれも演技なのか? 子だくさんのクリスマスを迎えた南極パーティでは、毎晩のように女を取っかえ引ひっかえしている男たちの顔は色ツヤ良く、シャンパン片手に余裕の笑顔なんか見せちゃってます。 その反面、乳飲み子を抱えた女性たちは全員笑顔の「え」の字もございません。 まさに子供を産む機械(それにしてもひどい表現だ)と化した女性たちのなれの果てですね。 女性が希少種としてアマゾネス化し(南極だけど)、種を残すに相応しい相手を選ぶ権利を持つ展開の方が、今見たらもっと斬新だったかもしれません。 全然文字数足りないぜよ……。 というわけで、ボックスセットの特典に関する話題や、トリビア、ツッコミどころなどはまたいつか改めて書きたいと思います。 続編記事(新型コロナウイルスとの比較情報): 分析採録:復活の日クロニクル分析 【第一回】 分析採録:復活の日クロニクル分析 【第二回】 ←こちらからこっそりコメントでけます
2014.10.13
前回はフィリピンで歌っていた男が米国の大御所バンドのヴォーカルに抜擢されるという、夢のようなドキュメンタリー映画をご紹介しましたが、今回はまた趣向の異なる音楽ドキュメンタリー映画になります。 ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン ― 気合いを入れてマネしまくったら本物になった映画 創作系の仕事をしていますと、現実問題として自分の作品(商品)がどれだけ売れるかが死活問題になりますね。 趣味の創作活動なら自己満足で一向にかまわないのですが、それで食べて行こうと思ったら売れるものを作っていかなければなりません。 渾身の作品ができあがっても、売れなければ生活できませんので、とっとと軌道修正する方が得策ということもあります。 今回は、音楽活動に見切りをつけた男が、知らぬ間に伝説になっていたという映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』[2012 年]をご紹介します。【10%OFF】新品未開封【DVD】シュガーマン 奇跡に愛された男ロドリゲス [DABA-4481]価格:4,568円(税込、送料込) その小説のような運命のいたずらは、テレビ番組で特集され、劇場でも大ヒットを飛ばした映画ですので、ストーリー自体はご存知の方も多いかもしれません。 レンタルもかなり長い間貸し出し中が続いていましたね^_^;わかりやすいあらすじ 70年代初頭。 一枚の輸入盤ロックアルバムが大ヒット。 アパルトヘイトで揺れていた南アフリカ。 束縛に満ちた社会を皮肉った歌詞は、政府の言論弾圧の網目をかいくぐり、その憂いを秘めたメロディーとともに国民たちの心を揺さぶった。 次第に国民の関心は、この歌い手に。 あまりにも情報がなさすぎて、ステージで自分の頭を撃ち抜き、壮絶な死を遂げたという噂まで流れる始末。 時は流れ、90年代に。 ネット検索でようやく見つかったのが、なんと無名同然の米人歌手。 南アフリカでは、今でもビートルズやローリング・ストーンズと名を連ねるほど有名なミュージシャンなのに、まさか本国で無名なハズはない! 音楽マニアたちがさらに彼について調べてみたら、音楽性を遥かに上回る人間性にみなビックリ。みどころ1. 今や二度の伝説となったミュージシャン、シクスト・ロドリゲス 高い音楽センスと独特の風貌を買われ、1970年にデビューを果たすも、アルバムは鳴かず飛ばず。 2 枚のアルバムを発表したが、1974年に音楽業界から足を洗い、そのあとは消息不明に。 デビューアルバム「COLD FACT」が海を渡り、南アフリカで大ヒットを飛ばすことに。 ロドリゲスはこの事実をまったく知らないまま。 今や工事現場で汗水たらして働くロドリゲス。 ミュージシャンを全く感じさせないその生活ぶりだったが、その人生観がまさにロック。 本当はもっと書きたいところですが、仙人のような彼の人間性は映画を観てからのお楽しみということにしておきましょう。(おまけ) この作品がアカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞したにもかかわらず、ロドリゲスは授賞式を欠席。 その理由というのが、「(解体工の)仕事があるから」。2. 映像効果 普通、ドキュメンタリー映画はあまり映像効果を狙わず、インタビューと当時の映像を貼り合わせたタイプのものが多いのですが、こちらはケープ・タウンの海岸線をバックにロドリゲスの曲「シュガーマン」が流れる演出からして名作映画の雰囲気が漂っています。 この他にも、当時のデトロイトの街の写真を分断し、立体映像のように見せる演出から、現代の雨のデトロイトに稲妻が注ぎ、そしてそのままその街が鉛筆画に変化するところで回顧シーンに移行していく流れも、強いストーリー性を感じさせます。 また、その逆に、鉛筆画からモノクロ画、フルカラーアニメーションの順にシフトしていくシーンも視聴者を飽きさせません。 しかし、この芸術的な演出もストーリーが進行するにつれてかなり抑えられ、ロドリゲスという謎に満ちた人物像から、彼を身近に知る者たちの実際の語りのシーンをたくさん盛り込むことによって、ドキュメンタリーとしてより現実味のある仕上がりとなっています。3. 人びとの歓喜に満ちた顔 音楽界からは引退していたロドリゲスだったが、南アフリカからの熱烈なラブコールによって実現した、一回きり(当時)の南アフリカ凱旋ツアー。 お世辞にも鮮明とはいえない当時の映像ながら、ロドリゲスが南アフリカのステージに立ってくれさえすれば、それでみな感謝感激だったという様子が映像全体から伝わってきます。 苦しいポスト・アパルトヘイト時代を生き抜き、ロドリゲスの伝説の音盤で心を一つにしていた国民たちが、今度は生身のロドリゲスと一緒に心を通わせることができるのですから、彼らにとってはまさに奇跡的な体験だったことでしょう。 ロドリゲスに注がれる観衆の視線には、まるで神々しいものを眺めるような、それでいて懐かしいものを見るような感極まった表情がよく現れています。 しかも、ロドリゲス自身も全く気取ったところを見せず、バーの片隅にいるような流しのギタリストのノリで演奏する姿は、プロ根性なのか、若いうちに人生を達観した末にそうなったのか、とてもブランクが長かったとは思えない落ちつきぶりです。どうでもいいトリビア1. 南アフリカ以外の国でもそこそこ売れていたロドリゲス ロドリゲスのアルバムがヒットした国は、南アフリカ以外では、ボツワナ、ジンバブエ、ニュージーランド、オーストラリア。 二度のオーストラリアツアーも行っており、1977 年にはオーストラリアで「At His Best」というコンピレーションアルバム、1979年のオーストラリライブの収録アルバムとして「Rodriguez Alive」も 1981年に発表されていますので、完全に無名とは言い切れない部分もあります。 参考:Rodriguez Alive [Rodriguez 公式サイトより] 「無名」というキーワードを演出部分ととらえ、その分は差し引いて観賞するのも一つの楽しみかたになるでしょう。2. フィルム 撮影の途中で 8mm フィルムを切らしてしまったが、予算の関係で残りは iPhone アプリ「8ミリカメラで」続行。 参考:8ミリカメラ [外部リンク] 3. 海賊盤の矛盾 ロドリゲスのデビューアルバム「COLD FACT」の正規盤が南アフリカで50万枚売れたという解説がありますが、この解説どおりに解釈すると、1970年頃の人口(21,402,470人)、そして大ざっぱに見て黒人:白人 = 8:2 の人口比から計算して、白人が 400万人、つまり10人に1人強以上の白人が正規盤を所有していたという計算になります。 参考:南アフリカの人口分布(WikiPedia) [外部リンク、ソースは英語] よって、南アフリカが海賊盤の温床になりやすいというよりは、むしろ積極的に正規盤を求める傾向が高かったことがうかがえると思います。 また、輸入盤か、国内盤かにこだわる傾向についても、ライナーノーツや特典に依存するものが多く、現代でも本当にファンなら値段よりむしろ詳しい情報を得られる特典付きの商品の方を求める傾向は健在といってもよいでしょう。4. マリク・ベンジェルール監督 映画の撮影と美術(挿し絵・アニメーション)の両方を担当。 2014年5月13日自殺。 鬱を患っていたといわれている。 ←こちらからこっそりコメントでけます
2014.08.10
ここ最近は映画情報が続いておりますが、ブログ整理の関係上、こりずに今回もまた映画情報の記事になります。 音楽活動を始めるにあたって、手本となるプレイヤーを模倣することで腕を磨きながらプロを目指す人は多いですね。 たいていの場合、続けているうちにバンド内で方向性の違いが出てきたり、コピーばかりしていても本物(プロ)を超えられないと悟る時期がきたりして、活動を止めてしまうことになります。 夢見るのは簡単でも、成功までの道のりはとても険しいものです。 今回は、アマチュアバンドで歌い続けた男に起こった奇跡のドキュメンタリー映画『ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン』[2012 年]をご紹介します。【楽天ブックスならいつでも送料無料】ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン【Blu-ray】 ...価格:4,075円(税込、送料込) この作品は普通のレンタルショップにも置いてあるはずですから、ファンなら一度は観てみたい気分になるかもしれませんね。わかりやすいあらすじ 2007年、フィリピンで極貧生活を送りながら、敬愛する伝説のロックバンドのひとつ、『ジャーニー』の歌を歌いながら地元のロックファンの耳を楽しませている中年男。 時を同じくして、ヴォーカリストの欠員が原因で、活動休止を余儀なくされていた『ジャーニー』。 メンバーたちも年を重ね、活動再開は絶望的と思われていた矢先に巡り合った一本の YouTube 動画。 そこには、かつての『ジャーニー』の名物ヴォーカリスト、スティーヴ・ペリー顔負けの歌声で絶唱しまくるフィリピン中年男の姿があった。みどころ1. ジャーニー 1973 年にサンフランシスコで結成されてから、幾度となくメンバーの交代を繰り返してきた商業ロックバンドとして世界的に有名。 スティーヴ・ペリーをヴォーカルに迎えてから、その力強い歌唱力と表現力によって、彼なしでは『ジャーニー』はありえないほどに成長。 しかし、スティーヴ・ペリーの長期活動休止と、他メンバー達との折り合いが悪くなったことにより、ステイーヴ・ペリーが脱退。それと同時にバンドも活動休止に。 その後、スティーヴ・ペリーのハスキー声を彷彿させるスティーヴ・オウジェリーをヴォーカルに迎え、バンドの復活にファンの期待も高まったが、肝心のヴォーカルが喉をやられてしまい、再び『ジャーニー』は活動休止状態に。 メンバー達がこれほどまでにスティーヴ・ペリーの亡霊を追うのは、バンドを愛するファンのため。 そしてやっと、念願のスティーヴ・ペリーの歌声を手に入れた『ジャーニー』。2. 奇跡のヴォーカリスト、アーネル・ピネダ もともと貧乏な暮らしぶりだったが、13歳の頃、母親が心臓疾患で死亡してから生活はさらに困難な状態に。 家賃を長期滞納してアパートを追い出され、実質上家族はバラバラに。 ゴミ拾いや歌でなけなしの日銭を稼ぎ、夜は公園で寝泊まりするというホームレス生活。 フィリピンの貧民街から奇跡的に米国のスターダムに躍り出たアーネル・ピネダですが、『ジャーニー』のヴォーカリストという肩書きを与えられたことにより、成功の喜びと同時にスティーヴ・ペリーの後釜を努めなければならないという責任感、そして自分らしさをどこかに出していきたいという葛藤も生まれてしまうことになりました。 苦労人として育ったせいもあって、インタビューでも謙虚な姿勢を忘れない彼ですが、40過ぎとは思えない若々しさが感じられますね。 フィリピン人が『ジャーニー』のボーカルになったことで、『ジャーニー』のイメージが崩れたと思ってらっしゃる方は、一度この映画をご覧になれば、彼の優しそうな人柄によって、スティーヴ・ペリー時代とは違った意味でファンになれるかもしれません。3. ファンの評価 スティーヴ・ペリーの歌声が『ジャーニー』に戻ってきたと、多くのファンがアーネル・ピネダの加入を好意的にとらえている一方で、アメリカンバンドでなくなってしまった『ジャーニー』に不満の声を漏らすファンがいることも事実です。 このような不満を持つファンに対し、メンバーたちは、『ジャーニー』はアメリカンバンドの枠を超え、世界的バンドになったのだと説明しています。 同時に、少数派ではありますが、ヴォーカルがスティーヴ・ペリーの歌声を真似る必要はあるのか?という疑問の声も聞かれます。 スティーヴ・ペリーの印象が強烈に残ってしまった『ジャーニー』ですから、実力はあっても毛並みが異なるヴォーカルを採用すれば、スティーヴ・ペリーを求めるファンへの背信行為となり、興行収入がガタ落ちになることは目に見えています。『ジャーニー』は、学生時代の仲良し組が始めるようなバンドとは異なり、品質の高い楽曲を提供するためにプロのミュージシャンによって結成された商業バンドですから、ファンが求める方向から逸脱するような冒険を選択することはまずないでしょう。 伝説のバンドと言われるだけあって、普段何気なく口ずさんでしまいそうな楽曲もたくさん輩出していますが、ファンの年齢層によって流行する音楽のスタイルが異なる傾向は避けて通れません。『ジャーニー』の全盛期を一緒に駆け抜けたファンは、今は50代以上の人たちが多いですから、この世代の人たちに向けて従来のスタイルの楽曲を提供する方向性を貫けば、既存のファンはこれからも『ジャーニー』とともに生きていくでしょう。 しかし、今後もっと若い世代の人たちが聴いたときに、80年代に流行った曲のイメージでしかないのか、それとも名曲は世代が変わっても色褪せない曲のイメージになっているのかどうかで、『ジャーニー』の評価も変わっていくでしょう。 その辺はこれからも『ジャーニー』が伝統だけを重んじるか、それとも楽曲に新しい要素を取り入れていくかのどちらかに掛かっているといえるのではないでしょうか。どうでもいいトリビア1. グリーとジャーニー プロのステージパフォーマーを目指す若者たちの合唱クラブを題材にした米国人気ドラマ『グリー』では、夢に向かって進む若者の姿は『ジャーニー』の楽曲と重なる部分も多い。 シーズン 1 の最終回では、キャストたちが『ジャーニー』の代表曲、「フェイスフリー」、「お気に召すまま」、「ラヴィン・タッチン・スクイージン」、「ドント・ストップ・ビリーヴィン」を熱唱。 ちなみに、当初グリーのプロデューサーは、最終回には『コールドプレイ』の「Viva La Vida(美しき生命)」を採用する予定だったが、『コールドプレイ』側からの使用許可が下りなかったため、『ジャーニー』の楽曲を採用。 結果、プロデューサーの思惑以上に強烈な印象を視聴者に植えつけることに成功。2. ドント・ストップ・ビリーヴィン 20世紀にリリースされた曲で最多のダウンロード数を誇るといわれる『ジャーニー』の名曲「Don't Stop Believin'(信じるのをやめるな)」。 キーボード奏者のジョナサン・ケインが、『ジャーニー』を結成して間もない頃、成功の兆しが全く見えない状態で、機材を売っても生活費が足りず困っているときに、金を貸してくれた父親の言葉がこちら。「いずれきっと良い事が起こる。だから信じるのをあきらめるな。」 その言葉に導かれるように、ギタリストのニール・ショーンと、ヴォーカリストのスティーヴ・ペリーと三人でものの半日で作り上げてしまったのが「ドント・ストップ・ビリーヴィン」。2. Eclipse 2011年に発表されたアルバム『エクリプス(Eclipse)』の収録楽曲「City of Hope」は、フィリピンの恵まれない子供たちを支援するために、アーネル・ピネダ自身が設立した財団の慈善活動からヒントを得て書かれた。参考:Arnel Pineda Foundation, Inc. (APFI) [外部リンク] ←こちらからこっそりコメントでけます
2014.08.09
前回ご紹介した濃いキャラ俳優の恋愛映画『コリーナ、コリーナ』がわりと好評だったので、今回はだいだい同時期に公開されたコメディ映画『ストレート・トーク』/こちらハートのラジオ局[1992年]をご紹介します。コリーナ、コリーナ ― 濃いキャラ同士のフツーによい恋愛映画 日本国内では劇場公開されず、レンタルと販売のみでした。 楽天でも取り扱いがなかったため、詳細は IMDb でご覧ください。 Straight Talk [IMDb] こちらがおしゃべり女役の、テネシー州出身の歌姫ドリー・パートン。 日本では馴染みのない方も多いかもしれませんが、彼女の持ち歌のひとつ『ジョリーン』は、数多くのアーティストにカバーされるほどの人気曲ですので、きっとどこかで耳にしたことがあると思います。 彼女は歌もすごいですが、小柄ながらスーパー巨乳の持ち主としても有名です。Dolly Parton ドリーパートン / Best Of 【CD】価格:1,750円(税込、送料別) そしてそのお相手が天才的なキャラクター俳優ジェームズ・ウッズ。 彼も映画好きなら知らない人はいないほど有名ですが、悪役顔のせいかあまり主役を張らないわりには、大物俳優を食ってしまうほどの演技力で定評があります。 彼の代表作といえば、禁酒法時代のマフィアの抗争を描いた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』[1984年]ですね。 主役のロバート・デ・ニーロも確かに存在感はありますが、ラストシーンまでジェームズ・ウッズが入り込んでいるため、逆に彼の印象が強烈に脳裡に焼き付いている人も多いことでしょう。【楽天ブックスならいつでも送料無料】【輸入盤】Once Upon A Time In America -soundtrack [ ...価格:2,473円(税込、送料込) このおしゃべり女と強面俳優の組み合わせでコメディを作ったらどうなるんだ、という試みだったのかもしれませんが、楽しくてロマンチックな恋愛映画に仕上がったのは驚きですね。 殿方なら、しばらく彼女の胸部に釘付けになることは間違いなしですが、巨乳だからといってエロい描写はありません。わかりやすいあらすじ アーカンソーのさびれた田舎町で社交ダンスのインストラクターをしている女。 客ウケは悪くなかったが、無類のおしゃべり好きが災いしてダンスホールをあっさりクビに。 同棲中の男からも愛想を尽かされ、おしゃべり女は一大決心して憧れのシカゴへ。 到着して早々、強面の新聞記者に自殺願望ありと勘違いされ、おせっかいな人助けで金まで落とすという、最悪の出会い。 職を探すも、キャリアも学歴もないおしゃべり女。 もちろん、ことごとく撃沈。 そんな中、やっとみつけたラジオ局の受付仕事。 休憩でコーヒーを飲みにぶらりと入った部屋で声を掛けられ、あれよあれよという間にマイクを持たされるハメに。 何とそこは給湯室ではなく、人生相談番組のスタジオでオンエアの真っ最中。 意味もわからず赤の他人の電話相談にテキトーに答えてみたら、それがバカウケ。 あっという間に彼女は時の人に。 ラジオ局もおしゃべり女を名物カウンセラーに仕立てあげようと大乗り気。 だが、彼女が一つだけ、どうしても受け入れられないことがあった。 それは「博士」というウソの肩書き。 全米が彼女に注目する中、テレビでおしゃべり女を見かけてビックリする強面男。 第一印象から胡散臭さプンプンの彼女のしっぽを掴み、大スクープ記事を書いてやると上司に直談判。 その後はおしゃべり女を追ううちに、彼女の素直な人柄にだんだん惹かれて行くという、ラブコメディ映画の王道的な展開。みどころ1. 南部なまり カントリー歌手というだけあって、南部なまりが彼女の持ち味になっています。 どぎついテネシー訛りに少々とまどう方もいらっしゃることでしょう。 しかし、しばらく聞いているうちに、歌を聞かされているような不思議な魅力をもつ声でもあります。2. 裏表のない天然キャラ もともと素直でウソをつけない性格のおしゃべり女。 シカゴでみんなが優しくしてくれるのは、彼女が有名人だからなのにもかかわらず、シカゴの人達がフレンドリーだからだと本気で思っています。 高級レストラン来店記念のシャンパンのサービスでは、自分だけにシャンパンがふるまわれて、他の客にないのは不公平だと言いだします。 彼女にとって肩書きや知名度などではどうでもよく、無知なところをそのままさらしつつも、自分は自分らしくありたいという彼女の姿勢は、見習うところが多いですね。 3. 懐疑的な人々 彗星のごとく現れた名物カウンセラーのおしゃべり女の素性を知ろうとする人たち。 強面男はもちろんのこと、テレビ番組の司会者までもが、意地悪な質問や誘導尋問を投げかけながら彼女の化けの皮をはがそうとします。 学歴詐称ほど暴きやすいものはないという事実はさておき、心理学の知識ゼロの彼女のことですから、観ている方がヒヤヒヤする場面も多いのですが、彼女がそれらをどうやって乗りきるのかは観てのお楽しみということにしておきましょう。どうでもいいトリビア1. 配役 おしゃべり女役として、先にジュリア・ロバーツが候補に上がっていたが、彼女自身がオファーを辞退。2. サウンドトラック 歌詞付きの楽曲のすべてをおしゃべり女、もとい、ドリー・パートン自身が担当。 まるでバーブラ・ストライサンドのノリですね。3. 強面新聞記者と因縁の出逢いを果たす橋 落とした金を拾おうとおしゃべり女が悪戦苦闘している最中に、強面男に強引に助けられた場所は、北ワバッシュアベニュー橋(North Wabash Avenue Bridge, 通称 Irv Kupcinet Bridge)。 公式サイト:N. Wabash Avenue Irv Kupcinet Bridge4. ラジオ局 劇中のラジオ放送局は WNDY 1190AM Chicago という名称だが、WNDY という放送局は実在しない。 シカゴでのこの周波数では、KQQZ 1190 が該当。 KQQZ 1190AM 公式サイト [外部リンク] おしゃべり女が見ていた新聞の求人欄のラジオ局の住所は「13315 N. Lincoln Avenue」という表記だが、実際の所在地は「3301 N. Lincoln Avenue」。 ← こちらからこっそりコメントでけます
2014.08.06
暑さで脳みそが溶けそうになる今日この頃、みなさんいかがお過ごしでしょうか? 夏はホラーで盛り上がりたいところを完全無視して、今回はベタな恋愛映画をご紹介します。 はい、それではまずジャケットをご覧ください。【楽天ブックスならいつでも送料無料】コリーナ、コリーナ価格:4,568円(税込、送料込) 『コリーナ、コリーナ』[1994年]は、コメディ映画でご存じのウーピー・ゴールドバーグと、キワモノ俳優として有名なレイ・リオッタの恋愛ものということで、きっとすごいことになると思いきや、ほのぼのとした映画にまとまっているところに意外性があります。わかりやすいあらすじ 1959年、アメリカ合衆国。 妻の突然の死によって、茫然自失状態の父と娘。 その耐えがたいショックに、娘は口がきけなくなってしまう。 父は仕事に行かなければならないので、ベビーシッターを雇うことに。 洗練された白人女性のベビーシッターを候補にしていたが、どれも結局ダメ。 そのうちやってきた黒人女性は、あきらかにベビーシッター向きではない。 ガサツな性格で完全アウトだったが、どういうわけか娘が興味を示す。 おためしで彼女を雇ってみたところ、娘が心を開くようになり、なんと話せるようにまで回復。 この流れで父親もこの女性の人柄に次第に惹かれていくという、よくありがちな展開。 とテキトーなことを書いてしまいましたが、全体的に癒されるポイントがたくさん散らばっている作品ですから、ストレスを抱えているときや、心が荒んでいるときなどに観賞すると、適度に心が温まるでしょう。 みどころ1. レイ・リオッタの普通さ メラニー・グリフィス主演『サムシング・ワイルド』[1988年]にストーカー旦那役でデビュー出演したときから悪役がハマりすぎていたこともあり、レイ・リオッタ = 曲者俳優というイメージが定着していましたね。 彼がキワモノ俳優としてピークを迎えたのが、レクター博士でおなじみのサイコスリラー映画『ハンニバル』[2001年]ではないでしょうか。 レクター博士に薬漬けにされたあげく、自分の脳みそを調理されるシーンは、生理的に受け付けないという方も多かったことでしょう。 韓国ではこのシーンが規制対象になってしまい、劇場のスクリーンで頭部が真っ黒に塗りつぶされていたのを、たった今思い出しました。 そんな彼ですが、『コリーナ・コリーナ』では、CM ソングを作る会社に勤める陽気なパパを素敵に怪演してくれています。2. ウーピー・ゴールドバーグの普通さ 映画好きなら彼女のことを知らない人はまずいないといわれるくらい有名な女優兼コメディアンですね。 映画ではシリアスからコメディまで幅広くこなす彼女ですが、テレビ番組に彼女が出演すると、豪快で底抜けの明るさで雰囲気をガラリと変えてしまうほどの影響力を持っていますから、元々楽しい人であることがうかがえますね。 マイノリティであることから、白人の前では決して強気に出ることのない、謙虚な優しい女性(いわゆるフツーに良い女性)という人物を演じながらも、タイトルにあるように『コリーナ、コリーナ』と連呼されるにふさわしい、魅力的な女性に仕上がっています。3. 子役の演技の上手さ 娘役のティナ・マジョリーノは、母を失ったショックで閉鎖的になってしまう難しい役どころでしたが、目の動きや微妙な表情の変化で心境を表現したり、最後には父親をコリーナと結びつけたくてたまらない世話焼き婆さんのような一面も垣間見せたりするという、チビッ子ながら名役者ぶりを発揮しています。 個人的お気に入り映画のひとつ、『ナポレオン・ダイナマイト』[2004年]にも出演していますが、ダッさい田舎娘をフツーに演じているところが素晴らしいですね。4. 人種差別 このほのぼのとした映画の中で、黒人差別的な言葉がチラホラ聞かれます。 特に、nigger(黒んぼ)、colored(有色)は現代の欧米諸国では公共の場で口にしてはなりませんね。 当時の時代的背景を表現するために外せないセリフですが、差別的な扱いを受ける黒人たちの悲しそうな表情は、心に訴えるものがあります。 多くの白人たちは黒人を信用していませんし、逆に黒人たちの多くも白人を信用していません。 そういう状況で、白人の父親と、黒人のベビーシッターが恋に落ちると、家庭ではまず大問題になります。 いっぽう、ジェシー・ネルソン監督が描いたこの差別表現が、1959年の設定にしては時代錯誤的であり、それがリアリティを著しく欠いているいるとの指摘もみられます。 しかしながら、過去にはシドニー・ポアチエ主演作品『招かれざる客』[1967年] での、白人の娘が黒人の婚約者を家につれてくるという設定が、たとえ優秀でも黒人であるというだけで白人家庭にはなじまないという白人至上主義が根強い(しかも表面的には人種差別を禁止している)社会を揶揄した作品として話題になりましたし、事実、今日でも人種差別が完全になくなったわけではありませんので、問題意識を持ちつつ視聴することは大切だと思います。5. 宗教観のすり合わせの難しさ 無神論者の父親が娘を宗教的な価値観に晒さないで育てようとする一方で、キリスト教徒であるベビーシッターは、娘の母親は天使が天国につれていったと教えてしまいます。 娘にとっては、それが最もしっくりくる説明だったのかもしれませんが、無神論者からしてみればとんでもない宗教的価値観の刷り込みになります。 途中、ベビーシッターは娘を教会のゴスペル聖歌隊に混ぜて歌わせたりしますが、観ていてハラハラする場面でもあります。 日本では、口では無神論者とは言いつつも、年始は神社、結婚は教会、盆暮れには墓参、出産すればお宮参り、死ねば坊さんを呼ぶ、のようなパターンが意外と一般的ですから、無神論者とはほど遠い価値観が根づいているといえるでしょう。 もし、厳格な無神論者(または宗教的価値観が大きく異なる者)の家庭でこの映画のようなことが起これば、良くて解雇、こじらせれば訴訟問題、最悪の場合は殺人事件にまで発展しかねないので要注意です。どうでもいいトリビア1. 子供向け番組 娘が観ている子供向け番組は『シャーリー・ルイス・ショー』。 この番組の放送時期は 1960年~1963年なので、時代設定の 1959年とは微妙に矛盾。 参考リンク:The Shari Lewis Show [IMDb]2. やっちゃったマイク 母親の死後、娘が初めて声を発するときに、集音用のマイクが一瞬画面に映り込む。3. 手袋のゆくえ ベビーシッターが、玄関先で父親と話しながら一度は手袋を手から外すが、次のカットで、父親にスーツのジャケットを着させているときには手袋をしたままになっている。4. 亡霊のように突然現れるドリンク瓶 ドライブスルーで言葉を発しない娘のメニュー選びで苦戦。 イライライ気味のウエイトレスを後部座席に座らせてリラックスさせるシーン。 メニューしか持っていなかったウエイトレスが、なぜか後部座席ではドリンクの瓶を持っている。 ← こちらからこっそりコメントでけます
2014.08.04
長回しの映像を延々と見させられるタル・ベーラ監督映画『ニーチェの馬』[2012年] のレビュー後編です。 後編は思想的なテキトー語りを盛り込んでいきますので、本編のあらすじをご覧になってない方は、前編の方を先にご覧になった方が退屈しないかもしれません。ニーチェの馬 ― 修行か駄作か名作か、見方によって評価がきっちり分かれる映画 (1) どうでもいいトリビア1. トリノの馬事件と邦題の矛盾 冒頭で語られるトリノの馬事件に登場する御者の名が曖昧(ジュゼッペかカルロか……と全く異なる名前を挙げている)であることから、事件の目撃内容の曖昧性が高いことが読み取れます。 実際、この事件について目撃者の証言を裏付ける証拠資料は発見されていないようです。 また、実際に作品をご覧になると、冒頭の事件語りで登場する御者の名前と、主人公の老人の名前(オールスドルフ)が一致してないことに気付いた方もいらっしゃるでしょう。 よって、本編に登場する馬は、ニーチェが実際にかばった馬ではないのです。 これが邦題が『ニーチェの馬』になっているとマズい一番の理由です。 馬主ならだれでも馬にムチを振り下ろしているわけです。 自由を奪われた状態で毎日主人のために働かされ、言うことをきかなければムチ打たれる。 そしていつかは老いて働けなくなる。それが延々と世界のいたるところで繰り返されています。 それを、ある老馬の最期をニーチェの逸話と重ね合わせることによって、あたかも視聴者が今そこで事件を目撃したかのような錯覚を起こします。2. 馬の名前 撮影に使われた馬は Ricsi という名前の雌馬。 冒頭のキャスト紹介で堂々とその名前が流れます。3. 作品の構成テイク数がたったの 30。プチねたバレ 以降は、作品をご覧になっていない方には面白味が半減してしまうネタバレとなっていますのでご注意ください。 当方独自の解釈ですが、この他にも観た人の数だけの解釈が存在することは予めお断りしておきます。1. ニーチェが乗り移った男 作品の中盤、焼酎を分けてほしいとやってくる小太りの男。 彼が口走るセリフだけでも、ワンテイクで4分という長さになっています。 これが作品の鍵を握るシーンともいえます。 彼は大空、自然界、静寂、すべてが我々から奪われたと言いますが、それらは神の天地創造の七日間につくられたものと重ね合わせることができます。「優秀で気高い人間は理解せざるを得なかった この世に神も神々もいないと―」 この言葉は、ニーチェが狂人としての片鱗を見せはじめていた作品『ツァラトゥストラはかく語りき』の有名な言葉「神は死んだ」と、彼が定義した「超人」を彷彿とさせます。 また、彼はこのようにも言います。「この世は決して変わらない これまでも これからも」 永劫回帰(後述)を思わせますね。 しかし、みなさんご存じのニーチェ自身の肖像は髭面ですが、この訪問者は頭も顔もツルツルなのです。 したがって、発狂直前のニーチェの生霊が乗り移ったハゲ男と考えるのが妥当かもしれません。 また、このハゲ男がニーチェ自身とは異なる理由として、ニーチェはアルコールを口にしないようにしていたこと、そしてニーチェの永劫回帰をセリフの最後で否定することが挙げられます。「すでに変化は起きていた」 そして、このハゲ男がすべてを語り終わったとき、父親がバッサリと言い捨てます。「くだらん」 父親の言葉は、神の存在を否定するニーチェ思想に対する強い嫌悪感と、ビックリ自己愛本『この人を見よ』で、一神教には存在し得ない永劫回帰を唱えつつ、「なぜ私はかくも賢明なのか」、「なぜ私は一個の運命であるのか」、「なぜ私はかくも賢明なのか」と言い切ってしまったニーチェ自身に対する侮蔑にも取れます。2. 訪問者=キリスト教的宗教観の否定 この親子はこのまま時間が経てばどうなるか、実はすでに分かっています。 父親は仕事のためにしょっちゅう町に出向いていたのですから、強まるばかりの砂嵐や、町中で何かとんでもないことが起こりつつあることを知っていたはずです。 しかし、それを娘に伝えようとしません。 娘は始終家の中ですから、町中のことは知るよしもないのです。 その中で、救済のために訪れたとみられる人物が二回登場します。 一回目が前述のハゲ男。 ハゲ男はニーチェの永劫回帰を思わせる言葉を残します。 二回目が井戸水を飲みに来た通りすがりの馬車の人たち。 彼らは、一緒にアメリカに行こうと娘を誘います。 そして井戸水のお礼に娘が受け取った本のタイトルが「反聖書」。 この部分は、ニーチェ自身が敬虔なキリスト教徒として教育を受けておきながら、最終的には自らの作品『アンチクリスト』でキリスト教の一神教至上主義を批判したことを連想させます。 彼らの発言に信じてその地を去れば、その先には救済の道があるのかもしれない。 その逆で、彼らについて行ったら、今より悲惨なことが起こるかもしれない。 どちらの選択が正しいのかは示されていませんが、少なくとも親子は残る(今までの宗教観に従って生きる)選択をしたようです。3. 分岐エンディング この作品をもっと面白く鑑賞するポイントとして、永劫回帰があります。 永劫回帰 [WikiPedia] 永劫回帰はニーチェが唱えた思想で、きわめて強引ですが一言でまとめると「すべてのイベントは永遠に繰り返される」になります。 朝起きて、仕事に行き、帰って、食べて寝る。 この繰り返しは我々が日々こなしている日課ですが、こんな毎日に辟易しながらも延々と同じ行為を繰り返しています。 それは、多少やり方が異なっても毎日同じように繰り返されています。 馬が主人の言う事を聞かなくなるのも、ムチ打たれることも同様です。 私たちが過去の人たちを知らなくても同じことをやってきただろうと容易に想像がつきますね。 そして未来の人たちも同じことを延々と続けていくであろうと。 親子が本当にどうしようもないほど淡々と同じ動作を繰り返しているのが、この作品のポイントになります。 そして、最後に何かとてつもなく絶望的な終わり方を予感させつつ勝手に終わってしまうところで、あなたに究極の選択を突きつけます。 永劫回帰を支持する(YES / NO)? YES と答えたなら、この 6日間が終わり、7日目にはまるでゲームのように最初の状態にリセットされるでしょう(プログラミング風に言えば、無限ループ内の一行目のステートメントに戻るのと同じ)。 NO と答えたなら、冒頭から漂いまくっているヨハネの黙示録的な描写のように、七日目に二人は死んで、一旦この世界が終わってしまうの「かも」しれません。 しかし、DVD を毎回スタートから再生する行為を考えれば、最初から答えは確定しているんですけどね^_^;。 解釈の多様性という意味では個人的に好きな映画になりますが、人によっては迷作として片づけられるでしょう。 他人がどう評価したかよりも、あなた自身が感じたことが、あなたにとって正しい解釈だと思います。
2014.07.28
先日、デンマークに移民したスウェーデン人親子の極貧生活のゆくえを描いた映画『ペレ』[1987年]をご紹介したしましたが、今回はそれと類似の感覚に浸れる映画として、『ニーチェの馬』[2012年]を二回に分けてご紹介します。ペレ ― 父親がどうしようもないと子供の自立がはやくなるという映画『ニーチェの馬(原題:A torinói ló/英語:The Turin Horse)』は、直訳すると『トリノの馬』になります。 タル・ベーラ監督自身が、ドイツ人哲学者ニーチェ発狂の引き金となったトリノの馬事件をモチーフにしていると語っているため、邦題に『ニーチェの馬』が採用されています。 こちらが当方所有 DVD のジャケット。 中身はこんな感じ。 日本語版は中身がちょっとだけ凝っていますね。 たいていは黒いケースにディスク一枚で終わりですが、こちらは透明ケースですので、内表紙としてチャプターリストが確認できるようになっています。 しかし、これで 5,040円(税込)は少々お高めですね。 特典映像は予告編のみですので、もしこれからゲットしたい方は輸入版の方がよいかもしれません(リージョンコードに注意)。 個人的にはタイトルを忠実に『トリノの馬』にしておいて、解説・ネタばれとして徹底的にニーチェのエピソードとの関連性を楽しむ余地を残した方が良かったのではないかと思います。わかりやすいあらすじ 1889年1月3日。 トリノで馬にムチを振り下ろしていた御者。 それを半狂乱になって泣きながら止めに入ったニーチェ。(とはいっても、映像なし。) 老人は馬とともに岐路に着く。 砂ぼこり舞う荒野にぽつんと建つ一軒家。 彼はそこで娘と二人暮らし。彼女も若いとはいえない。 父親は朝起きて馬を連れ、仕事のために町へ遠出。 娘はその間水くみをしたり、料理をしたり、洗濯をしたりして過ごす毎日。 ただ、ただ単調な生活サイクルの繰り返し。 その繰り返しの中で、イヤでも受け入れなければならないことがある。 この当たり前の光景でさえ、まちがいなく終焉に向かっているのだと。みどころ1. 全編モノクロ 作品のレトロ感を出すために、作品の一部をモノクロやセピア色に置きかえる手法がありますが、モノクロシーンを挿入することで、他シーンとの差別化を図ることもあります。 たとえば、1987年フランス・西ドイツ合作映画『ベルリン・天使の詩』では、不老不死の天使には人間たちの心の声が勝手に聞こえてくるが、喜怒哀楽も色彩感覚も持たないという特徴をモノクロフィルムで表現しています。 これによって、カラー映像とモノクロ映像がコロコロ切り替わっても、人間の目線と天使の目線を映像として楽しめるカラクリになっているわけです。『ニーチェの馬』は、全編モノクロですが、今あるものが失われて行く様子や、序盤の砂ぼこりの量が終盤ではケタ違いに多くなっている点などから考慮しても、モノクロだからこそ表現可能な絶望感がそのまま画面全体に漂っているといえます。 レトロ感よりは、状況判断の材料として不可欠となる色の情報を撤去してしまうことによって、無彩色で繰り広げられる光景を凝視しながら、次に待ちうける状況を想像させる試みに近いのではないかと思います。2. 10分観て無理だと思った人には、残りの140分は苦痛でしかない タル・ベーラ監督自身が長回し(カメラを一点に固定させて、俳優の演技を淡々と撮影する方法)好きということもあって、ほぼ全編が長回しであるといっても過言ではありません。 最初の 10 分間で馬が砂嵐吹き荒れる中進んでいく様子が流れますが、映像を早送りして中盤、終盤に入ってもまた同じような描写が延々と続いているのです。 またか、と思わせるのが監督の狙いでもあるわけですが、モノクロ、走る馬、狭い家の中で貧しい暮らしを送る親子の繰り返しが我慢ならない方は、最後まで視聴する気力が持たない可能性があります。3. 一曲のみのサウンドトラック 長回しのシーンの所々に音楽が流れますが、全編を通じて採用されているのはこの一曲のみです。 チェロ、ヴァイオリン、オルガンというシンプルな構成で、ひたすら同じメロディの繰り返し。 唯一工夫が見られる点は音量です。4. 不安を象徴するアイテム1) 砂嵐 一歩家を出れば、あたり一面の砂嵐。果てしなく続く平原。 老人が馬で移動しようにも、はっきり見えるのは必死に足を動かす馬の背中だけ。2) 芋 茹でたジャガイモ。これが唯一の食事。 娘が「食事よ」なんて言いながら父親を呼ぶんですが、観ている方としては「ただのイモじゃん」としか思えないわけです。 序盤から物が不足している状態ですので、現代生活では当たり前の贅沢な食卓(ほとんどの場合、必要以上の栄養素を摂っている状態)から、この質素な食卓を見ることによって、今日の命をつなぐために養分を摂ることが食事なのだということを再認識させられます。 しかし、このジャガイモも、四日目に井戸が枯渇して茹でるための水を得られなくなり、生の芋をかじるハメになってしまいます。 日々の食事の光景は、当たり前のようでいて、実はいつどうなるかわからない状態のなかで続いているのです。3) 走査線 テレビやビデオ映像では画面に横方向に縞模様が映っているのが見えることがありますね。 これは走査線と呼ばれるもので、ディスプレイ画面で画像を表現するときに、上から順に画素に光(色)を乗せることで全体の映像を表現しているのですが、映像にムラが生じていたりすると、走査線が波打って見えることがあります。 参考:走査線 [外部リンク]『ニーチェの馬』が始まって1分で気付くと思いますが、画面に不規則に走査線が走るのが確認できます。 そしてよく良く見ると、動く物限定でこの走査線が見えるようになっているのです。 つまり、馬、馬車、人間ですね。 これに対し、背景や家屋の様子などは、はめ込み写真のように鮮やかに表現されています。 近い将来、馬と人間は死に、馬車は壊れて消えることが確定していても、この荒野と石の家はそこに存在し続けるのでしょう。4) 衰え 馬はもともと老いていて、働く気力も体力もありません。 二日目に動けなくなり、町に出られなくなってしまいます。 老人は右半身が麻痺しています。 過去に落馬か、くも膜下出血か何かで倒れて今の状態になっていることが容易に想像できます。 今は娘の力を借りて何とか生活できていますが、近い将来身体に不自由が出てくるでしょう。 人間は元気なうちは何でもできるという自信と希望に満ちあふれていますが、いろいろな状況が重なって自由が奪われていくと、行動範囲も限られ、できることも少なくなっていくことがわかりますね。5) 闇 五日目になると、貴重な火種までも消えてしまい、とうとう家の中は真っ暗闇に。 暗闇の中、生のじゃがいもを見詰める二人。 まるで、訪問者の言葉を反芻するかのように。「すべてが永遠に奪われた」 字数制限に達しましたので、次回に続きます。
2014.07.27
子は親の背中を見て育ちます。 そして親をヒーローに見たてます。 自分が知る大人が親だけなら、子供の期待は膨らむばかりです。 「父さん、カッコイイ!」 そう子供に言われると、父親は子供の前ではカッコよくありたいと思うわけですが、残念ながら大人の世界には力関係という面倒くさいものが存在します。 権力に屈する父を目のあたりにしているうちに、父の完璧なイメージが音を立てて崩れていくわけですね。 みなさんにも似たような経験はありませんか? 絶対的な信頼を傾けていた両親を、物心ついたときから小バカにするようになったり。 成長するにつれて体格が逆転して、小さくなった両親が無力に思えてきたり。 人間は精神的に成熟すると、誰しも老いて限界が見えてくることは理解できるようになるんですけどね。 今回は、まさにそんな親子のなれの果てがうまく表現されている映画、『ペレ』[1987年]をご紹介します。★ペレ★廃盤!!【中古】新品未開封・激レア・DVD!!ビレ・アウグスト★カンヌ国際映画祭パル...価格:3,600円(税込、送料込)わかりやすいあらすじ ときは 19 世紀。 職を求め、デンマークに移民してきたスウェーデン人親子。 親子とはいっても、父親は高齢、子は小学生くらいの組み合わせ。 デンマークでは物価が激安で、ちょいと仕事すりゃ家なんぞすぐ建つさ、と夢語りを始める父親。 ところがどっこい、デンマークに着くやいなや親子は奴隷のように品定めされ、農夫として働くことに。 そこからド貧乏生活のスタート。 絶対に超えられない貧富格差の壁。 それでもいつかはこの貧乏生活から抜け出してみせると息まく父親。 ある嵐の日、息子を家にかくまってくれた中年女性。 夫は海に出たきり、長いこと戻ってきてないという。 未亡人も同然よ、みたいなことを口走るものだから、息子はそれを真に受けて父親に報告。 千載一遇のチャンス到来! 夫の長期不在の寂しさから、夫人は心も身体もスキだらけ。 欲求不満の夫人を仕留められれば、俺たちはきっと幸せになれる。 さて父親はこのチャンスを活かしきれるのか? そしてこの親子は貧乏暮らしから抜け出せるのか?みどころ1. なんだかプーンと臭ってきそうな映像 親子は牛舎に寝泊まりしているため、映像の中でもハエが元気に飛びまわっています。 父親は牛舎でウ〇コして、その手で握手しちゃいます(もちろん、そういう生活ぶりを表現するための意図的な演出ですが)。 登場人物のほとんどが顔も服も汚れていますので、服の汚れぐあいで生活レベルがわかるようになっています。 観ているだけで鼻の奥にツンとした臭気が漂ってきそうな映像満載ですね。 全体的な作風として、ロバート・デニーロとジェラール・ドパルデューのダブルキャストで話題となった五時間長編映画『1900年』[1976]に登場する農村地帯の描写に共通点が多いですね(てんこ盛りの牛フンの中に素足を突っ込むところなんか特に)。【送料無料】 1900年 【DVD】価格:5,638円(税込、送料込)2. 父ちゃんのうそつき! 息子は働くには若すぎて、農場をプラプラ。 それが調教師の目に留まり、チ○コ丸出し状態にされてムチで追いかけまわされます。 息子のあられもない姿を見かけて、一瞬は助けようという素振りを見せる父親。 しかし、クビが怖くて結局何もしません。できません。 息子と二人きりになると、父親はイジめた奴を殺してやると口走ります。 憎きアイツを殺してくれると聞いて息子は大喜び。 ところが調教師の前ではペコペコするばかりの父親。 父ちゃん、カッコ悪すぎです。3. 格差愛 農場の女と村の名士の息子。 厳格な父親に辟易しながらも、息子は農場女と逢瀬を重ね、ついに女が妊娠。 これが親にバレたら大ごとだと、こっそり産んだ赤子を川に沈めて殺害。4. 村女は見た!ロリコン領主 大都会コペンハーゲンからやってきた領夫人の姪。 領主に父性と憧れを感じていた姪だが、彼はそれを誘惑と勘違い。 長年冷めきった夫婦生活で飢えた身体を持て余していた領主のことなので、予想どおりの展開に。 ところが、くたびれた村女がその現場を目撃。 何と彼女も過去に同じ被害に。 衝撃の事実を知り、怒り狂う領夫人。 彼女がどうしたかは、観てからのお楽しみということにしましょう^^。 どうでもいいトリビアとプチネタばれ1. 息子ペレ 主人公ペレを演じたのはペレ・ヴェネゴー。 彼の名は、映画の原作小説『勝利者(征服者)ペレ(Pelle Erobreren)』から名付けられたという、まさかの狙い撃ち。 現在は良い年こいたヲッサンですが、テレビドラマで結構濃厚なゲイカップルを演じているのを見てビビりました。 ちなみに、ドラマではフィットネスクラブのオーナー役(最初は異性愛者だった)を演じており、そこの会員になったゲイの医者の男と恋に落ちて結婚まで行きます。 子供の頃は金髪だったのですが、現在は黒髪ですね。2. 懺悔とペレ 農場女が産んだ赤子を殺したのは俺だと自白した名士の息子。 それを咎めたのがなんとペレ。「それでも父さんは僕を殺さなかった」 高齢の父親、生前から病弱だった母親の間に生まれたペレ。 彼の言葉がすべてを物語っていますね。 金がたんまりあっても命の価値など考えてもみなかった男が、まさか十歳そこそこの子供に説教されることになるとは。 命の償いを覚悟した男の散りざまは必見です。 2 時間 40 分という長編大作、淡々としたストーリ展開でありながら、人間の心に渦巻く闇と絶望感のみごとな描写。 1988 年カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞、ゴールデングローブ賞では外国語映画賞受賞、アカデミー賞では最優秀外国語映画賞を受賞したのも納得の、叙景的な世界観、どう見ても演技には見えない演技力のすばらしさです。 もうここまでくると映画としての娯楽性というよりは、ひと昔前の田舎のドキュメンタリー映像を観させられているような気になってきますね。 このように、淡々と映像を見せながら視聴者に何かを感じ取ってもらう試みは、タル・ベーラ監督『ニーチェの馬』[2012] に通じるところがあります。【楽天ブックスならいつでも送料無料】ニーチェの馬 [ ボーク・エリカ ]価格:4,666円(税込、送料込) この作品も個人的にハマったので、気が向いたときにレビューする予定です。 ←こちらからこっそりコメントでけます
2014.07.24
先日『アナと雪の女王』の DVD・ブルーレイが発売されましたね。 私はこの作品を映画館まで観に行きまして、上映時間の三分の二を寝て過ごしたという不届き者でございます。 まさかこの映画が話題作になるとはつゆ知らず、後でなぜ日本であれほどの大ヒットを飛ばしたのか、しばらく本気で理解に苦しみました。 『アナと雪の女王』を観に行ったというつぶやき [別タブで開きます] ですから今回の記事は、ファンのみなさまの盛り上がった気分に水を差す可能性があることをあらかじめお詫び申し上げます。 膨大な映画レビューをされているばなびー様が、詳しいあらすじ入りで『アナと雪の女王』を紹介してらっしゃいますので、ストーリーやみどころが気になる方は、ご覧になってみてください。「アナと雪の女王」をみて [別タブで開きます]ばなびーさんのブログ Naughty Tots より さて、『アナと雪の女王』ですが、ディズニー映画好きなら問答無用で楽しめる CG アニメーション映画であることは間違いないでしょう。 いかにもディズニー映画らしく、歌あり、ロマンスあり、冒険ありだからです。 映画がヒットした理由に、異例のダブルヒロインだから、という触れ込みもありましたが、個人的にはちょっと違うなと思いました。 今回の『アナと雪の女王』の成功は、女もたくましく生きていかなければならなくなった世相が作品にマッチしたのと、ディズニー独自のマーケティングが大きなウエイトを占めていると思います。異様なまでに気合いの入ったサウンドトラックプロモーションとメディアを巧みに使った PR 活動 まずは、多言語バージョンによるサウンドトラック製作。 もともと子供向けのビデオ作品を各国で販売する際には、現地の歌手を起用してサウンドトラックを製作するものですが、ディズニーが今回ほどサウンドトラックを大々的にプロモーションしたことは記憶にありません。【楽天ブックスならいつでも送料無料】アナと雪の女王 オリジナル・サウンドトラックーデラック...価格:3,780円(税込、送料込) その他にも次のようなポイントが挙げられます。 ― 子供でもついていけるようなゆっくりとした曲調でありながら、かなり難易度の高い楽曲。← ここでのど自慢好きの人たちに火がつく ― 日本国内にいたっては、松たか子と May J. を起用したことにより、日本人の子供でもなじみやすい歌声の提供。 ― YouTube を使ったカラオケビデオクリップの無料配信。← ここでノーテレビライフ組の人たちの間でも話題になる ― テレビ、ラジオ、雑誌を通じた楽曲の大々的な PR 活動 ← ここでお茶の間や子供たちに一気に火がつく その他、本編に採用されている声優がミュージカル経験者を利用したことも、ミュージカルアニメーション映画として本物志向がうかがえますね。 昨今のアニメーション映画作品は、テレビ俳優やタレントが声優を務めたことで話題性はありましたが、映像のイメージと声が合っていなかったり、正式にボイス・トレーニングを積んだ声優とは異なる発声方法が災いして聞き取りにくいという声も挙がっていましたので、この違いは大きいと思います。 こういったことが相乗効果を生み出し、定番のキャラクターグッズ販売、有料ビデオ配信、DVD・ブルーレイ販売などでも売上は順調に伸び続けているようです。 基本的なターゲットが若年層ということもあって、幼稚園や学校で誰が『アナと雪の女王』のグッズやビデオを所有しているかどうかという話題はすぐに広まり、親へのおねだり攻撃が始まるのも容易に想像できますね。 このままクリスマス商戦まで突っ走っていくと思われます。今までのディズニーからは考えられない動き あとひとつ、絶対に外せないポイントがあります。 それは、ディズニーの著作権保護に対する姿勢が今回にかぎっては大きく異なっていることです。 ディズニーの代表作品といえばミッキー・マウスですね。 今までディスニーはミッキー・マウスをはじめとするキャラクターの著作権を守るためにそれはそれは厳しい措置を取ってきたことで有名でした。 ディズニーキャラクターの似顔絵を Web サイトに掲載して、ディズニーから警告がきたという話はちらほら聞いておりました。 また、学校のプールの底にミッキーの絵を描いたら、ディズニーから消すように言われたという話も有名ですね(ソースはネットに転がっていますので、気になる方は調べてみてください)。 その他には、ディズニー系の娯楽施設で撮影した写真を Web ページから削除するように同社から言われたというような話も聞きます。 厳しいとは言っても個人利用なのか団体利用なのか、または利用のされかたによって扱いは異なるものでしょう。個人で連絡が来たという方は、第三者の通報によって同社が動いたという感じなのでしょう。 もう何年も前の話ですが、Web ホスティングサービスのサーバ管理者をしていたときに、ユーザから同じことを聞かれてディズニーに質問を投げたことがあります。 そして、案の定ダメ(下記注参照)という旨の回答をいただきました。それくらい厳しかったのです。 注:回答は2005年当時のもの。ちなみに、著作権に対する詳細については明確な回答を避けている感じ。この件について興味のある方への回答となりますが、当方でお答えできるのはここまでとなります。 現在は、思い出の写真や動画をそのままネットにアップして共有できるサービスが増えてきている関係上、規制を緩めざるを得ない状況になっているという見方が正しいかもしれません。 経験上、どの企業に似たような質問をしても、どうぞ、どうぞと快い返事が得られることはほとんどないですね……。 著作権に対する考え方は、他者による著作物の侵害を、著作者がどこまで許容するかにかかっています。 ですから、著作者が商品イメージの低下や、世界観の崩壊に繋がる行為を一切許容したくなければ、無断使用は絶対ダメという方針を打ち立てても何ら問題はありません(もちろん、著作権が効力を発揮する期間内でという条件つきになりますが)。 他の企業では、著作物を勝手にアップロードされたり、改変されたりしても、個人でかつ軽度であればあまりうるさいことを言わないケースが多いため、著作権違反に対して毅然とした態度を取るディズニーが逆に目立つことになってしまうんですけどね。 それほど著作権保護について厳しい姿勢を貫いてきたディズニーですが、今回の『アナと雪の女王』にいたっては、ほぼ野放し状態となっているのです。 YouTube ではカラオケ大会が披露されたり、替え歌が公開されたり、似顔絵が掲載されたりと、今までのディズニーからは想像もつかないユルさなのです。 これはある意味、彼らの新たな挑戦と見ましたね。 著作権のハードルを下げることで、一般の認知度を高め、作品を誰の手にも届く存在にすることによってグッズ販売とビデオ販売につなげていく。 人は良いものであれば所有したいという欲求が芽生えますから、このご時世で売れなくなったと言われている DVD やブルーレイの売れ行きが好調なのも納得です。 今後、企業的にイメージ低下につながるような著作権違反に対しては何らかの措置が取られる可能性も出てきますが、現状は何でもありの状態が逆に怖いくらいです。 私の場合、上映中爆睡をかましてしまいましたから、内容に関する個人的な感想は、フツーに良い CG アニメーション映画だった、とだけ申しておきましょう。 これじゃ雑すぎるな……。 というわけで、『アナと雪の女王』熱が過ぎ去ったころにでも改めて観なおしてみる予定です^^。2014/07/27 追記: ばなびー様のブログ記事へのリンクを追加。 リンク許可をくださったばなびー様には、この場をお借りしてお礼申し上げます。2014/07/23 追記: 一部不明瞭で誤解を招きやすいと思われる部分を修正。
2014.07.22
動物は生きていくために養分が必要です。 そしてその養分を外から取り入れています。 人間は植物や動物の命を犠牲にして生きています。 日常では、献立を考えてスーパーで食材を調達し、調理をして食事をするというパターン、あるいは外食で済ませるパターンが一般的ですが、それらのパターンの中で「殺生」の二文字が明示的に語られることはほとんどありません。 それよりも、漠然とこの事実を知りながらも、あえて深く考えないようにしているのかもしれません。 そんな、目を背けたくなる現実を否応なしに見せつけてくるドキュメンタリー映画、それが今回ご紹介する『アースリングズ』(Earthlings, 2005年)です。 Earthlings [外部リンク] 公式サイトはこちら(英語)※公式サイトでは全編を無料でご覧になれます。 当時私は海外在住中でしたが、何かのイベント会場でこの映画を観ることになりました。 ヴィーガン(厳格なベジタリアン)の友人も絶賛していたこともあり、いずれは日本でも公開されるものと思っておりましたが、結局公開には至らなかったことに意図的なものを感じます。 その理由のひとつとしては、日本のイルカ漁の血なまぐさい映像(恐らく無断撮影によるもの)が収録されていたからなのではないかと個人的には思っています。 後にスウェーデンの友人が日本に遊びに来たときに言っていましたが、彼はレストランで同作品を鑑賞したそうです。 食事しながら『アースリングズ』鑑賞とは、一気に食欲が失せてしまいそうな演出ですね。わかりやすい解説 本作品はドキュメンタリー映像にナレーションを乗せた形になっているだけで、ストーリー的なものはありません。 以下の五部構成になっており、人間の手にかかった動物たちが命を落とす映像が延々と続きます。Pets ― 愛玩動物 可愛いからという理由で飼い始めた愛玩動物が、家庭の事情や気まぐれなどで飼えなくなり、捨ててしまう人が後を絶ちません。 捨てられても、運よく心優しい人に拾ってもらえれば、新しい飼い主のもとで幸せに暮らしていけるかもしれませんが、保健所行きになればほぼ間違いなく殺処分が待っているのです。Food ― 食物 大量の食用肉を生産するために、数多くの家畜が劣悪な環境で飼育され、そして無残な殺され方をしています。 人間は胃袋に入る以上の量の肉を求め、そして飲食店では売れ残りの肉をゴミとして捨てています。Clothes ― 衣料品 皮革製品、毛皮製品などがどういう経路をたどって私たちの手元に届いているかを教えてくれます。Entertainment ― 娯楽 ロディオ、釣り、ドッグレース、競馬、闘牛など、人間にとっては日常的な娯楽の裏で、無数の動物たちが人間の私利私欲のために働かされています。Scientific Research ― 科学研究 新薬開発、科学研究のために、年間100億匹あまりもの動物の命が犠牲になっています。映画のメッセージ性について 上記の解説をご覧になっただけで、複雑な気持ちでいっぱいになってしまった方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、こういった残忍な行為は、わたしたち(とても曖昧な表現ですが)のほとんど目に触れないようなところでごく当たり前のように行われています。 この映画が菜食主義者や動物愛護団体によって制作されたことはまちがいないのですが、私はこの映画を殺生を否定するための材料にしてはならないと思っています。 菜食主義者の方のサイトや啓蒙ページをを拝見していて思うことですが、動物を殺すことが誤りであることを理由に菜食主義を勧めるスタンスには違和感を覚えます。 ヒトはもともと狩猟・採集生活から農耕生活にシフトしていった雑食組ですから、肉食と菜食の両方に適した肉体構造になっている以上、肉食はダメだと単純に言い切るわけにはいきません。 また、たとえ菜食至上主義であったとしても、対象が植物になっただけで、命あるものを殺して養分をとっていることには違いないのです。 もし、殺生という概念から完全に解き放たれたいのであれば、空気と水だけで生きるブリザリアンか、ジャイナ教徒にでもなって、飲食を絶って解脱を目指す(平たく言えば餓死)くらいしか道はなくなってしまうでしょう。 生命を繋いでいくうえで、どうしても殺生は避けられないが、その現実に向き合ったうえでありがたく命を頂戴し、人間のエゴによる動物たちの悲しい死を減らしていくことをメッセージとして伝えた方が良いように思います。 そしてこの映画は、人類が生態ピラミッドの頂点に君臨しているという、知的動物であるがゆえの驕りから引き起こされる生態系破壊、環境破壊問題にまで警鐘を鳴らしています。 人類も地球に間借りさせてもらっている存在だということを絶対に忘れてはいけませんね。 そのために、わたしたちが今日からでも実践できることはたくさんあります。 食べ物を粗末にしない。必要以上に食べない。買わない。ペットは死ぬまで責任をもって飼う。人間になつかなかったとしても、生命体としての意思を持っていることを認識して大切に育てる。病気の治療に使われる薬は、動物たちの犠牲の上につくられたものだと認識し、不健康な生活を改善して、できるだけ薬の世話にならないように心がける。どうでもいいトリビア ナレーターはホアキン・フェニックス ナレーションは、映画『グラディエーター』で皇太子コモドゥス役を演じたホアキン・フェニックスが手掛けています。 ホアキン・フェニックスは『スタンド・バイ・ミー』で子役ブレイクを果たした故リバー・フェニックス(以下ジャケット画像左から二番目)の弟であることをご存じの方も多いと思いますが、兄弟そろってヴィーガンとしても知られています。 両親が南米在住中にヴィーガンになったことから、リバーは 7歳のとき、そしてホアキンは3歳のときからヴィーガン生活を始めたとされています。 リバー・フェニックスが映画のプロモーションのために来日した際に、日本食体験という名目でうどんを出されたのですが、彼がベジタリアンということに配慮した具材を使用したにもかかわらず、うどんつゆにかつお節が使われていたことで、そのうどんには一切手を付けなかったというエピソードも残っているほどの徹底ぶりでした。 ←こちらからこっそりコメントでけます
2014.03.14
どんな分野であれ、学問を究めるには並々ならぬ努力と粘り強さが必要ですね。 後世に残すための研究といえば聞こえはよいですが、意外と動機は「チヤホヤされたい(スゲーと言われたい)」とか、「モテモテになりたい」とか、「リッチになりたい」など、かなり自己中心的で不純だったりするのかもしれません。 今回は、学問は結局女を落とすための道具だったということがよくわかる SF映画『スターゲイト』(1994年)をご紹介します。【送料無料】【DVD3枚3000円5倍】スターゲイト [ カート・ラッセル ]価格:1,000円(税5%込、送料込)わかりやすいあらすじ 古代エジプト象形文字ヒエログリフに魅せられた考古学者。 ずば抜けた才能を持ちながら、プレゼンスキルの乏しさと持論の暴走によって、研究発表会でも総スカンを食らう始末。 この失敗で研究費も打ち切られ、大学を締め出されるほどのトホホっぷり。 そんなとき、不思議な老婆から仕事をやらないかと持ちかけられる。 この怪しさ丸出しの老婆が手にしていたのは、1920年代に撮影されたエジプト遺跡の写真と、ヒエログリフの写し、そして旅程だった。 三度のメシよりヒエログリフなこの男、半信半疑ながらも好奇心を止められない。 約束の場所にドーンとそびえ立っていたのは 太古のものと思われる金属製の大きな環。 そこに刻まれたヒエログリフは「スターゲイト」を意味していた。 この環をくぐるとその先には何が待ちかまえているのか?みどころ1. イロモノなのに没個性 主演はジェームス・スペイダーですのでご存知の方も多いと思いますが、顔の造りは整っているものの、80年代は嫌味でダサキャラ、90年代は二枚目目指すも見事に失敗、2000年代に突入するとキレキャラで加齢とともに脂肪も増え、過去の端正な顔立ちから程遠くなりつつあります。【2002年作品:セクレタリー】 特殊な性癖を持つサイコがかった上司を熱演。 1989年には『セックスと嘘とビデオテープ』で全裸になってプライベートビデオ観賞する青年、1996年には『クラッシュ』で交通事故に欲情するマニアたちの倒錯した世界にハマっていく若者を好演していますので、変なのは今に始まったことではありません。【お買い上げ3000円以上で送料無料!!】【中古】秘書 セクレタリー(DVD)<マギー・ギレンホー...価格:1,980円(税5%込、送料別) そんな愛すべきジェームス・スペイダーのショウビズ露出は減りつつありますが、まだまだ、そしてもっとスクリーンで活躍してもらいたいと思っています。『スターゲイト』では典型的なイメージの学者になり切ってしまったあまり、こんな役なら別にジェームス・スペイダーじゃなくてもよかろうという話になるわけですが、この作品が B級SF映画と言われる理由の一つは、彼の個性が死んでいるところにあると言っても過言ではないかもしれません。2. 地球人と異星人のチープすぎる交流 スターゲイトの先は見渡すかぎり砂漠(実際にロケ地はエジプト砂漠)。 異星という設定にもかかわらず普通に呼吸できる環境も整っています。 ですから、スターゲイトの環をくぐった米軍のご一行様も、何だエジプトじゃんという感じで最初から緊張感は皆無でございます。 このようなユルい感じで探索を続けていると、何とそこで人間らしき群衆を発見。 頭からつま先までどう見ても人間なので、拍子抜けしながら現地人と挨拶を交わそうとすると、彼らはそろって頭を地面にこすりつけながら、地球人ご一行様を神のように崇めだします。 老婆から譲り受けた謎の金色のペンダントに刻まれていた太陽神「ラー」の目のシンボルが、彼らが畏怖して崇拝する神の印だったというオチですが、このペンダント無くしては、ひょっとすると出会いがしらに殺されていた可能性もありますので、しょっぱなから神待遇とは、まさに娯楽映画にピッタリの超ラッキーな地球人たちといえましょう。 しかも、好意的に迎えられたことにすっかり気を良くした考古学者は、現地の女性と恋に落ちてしまったりしますので、明らかに大学生デビューにも失敗している彼にしてみれば、遅咲きながらも華々しいデビューを異星で飾ったことによって、ヒエログリフなんてもうどうでもいいやという感じになっていきます。 地球人がこんなことで貴重な人材を失うことになろうとは、まさかの視聴者も予想だにしていなかったことでしょう。どうでもいいトリビアパクリかオマージュか 1994 年の作品なので、 CG 技術は時代を感じさせるものになっています。 CG の多用は映像の安っぽさを増長させてしまうという視聴者の指摘に備えたのか、可能なかぎり実写になっているところにには好感が持てます。 しかしながら、全体の世界観としてインディアナ・ジョーンズに酷似しているという印象を持った方も多いことと思います。 主人公が考古学者ということと、エジプト文明を扱っていることで作風が似かよってしまう点は避けて通れないのですが、4作目の『クリスタル・スカルの王国』で地球外生命体も登場していますので、『スターゲイト』のプロットとしてはとりたてて目新しいことはないのが残念なところでもあります。 また、スターゲイトが開く瞬間は水の波紋が CG になっていますが、これは海底探索をテーマにした 1989年作品『アビス』の自在に変形する海水に通じるところがあります。 さらに、スターゲイトをくぐる際の光の表現は、地球外生命体の導きによる人類の進化を描いた 1668 年作品『2001年宇宙の旅』で、ボーマン船長が次の次元の生命体に昇華するシーンを彷彿させます。 実際、『2001年宇宙の旅』でもこのシーンは「スターゲイト」と呼ばれ、おびただしい量の光を連続的に浴び続けることになります。 このように見ていくと、制作側も本作品のタイトル『スターゲイト』と『2001年宇宙の旅』の「スターゲイト」の呼称を偶然の一致と片づけるわけにもいかず、同じく光のシャワーを採用したのではないかと見ることもできます。 そして、ジョディ・フォスター主演『コンタクト』(1997年)では、謎の地球外生命体(推定ベガ星人)に接近するシーンで、光のチューブの中を突き進む様子に『スターゲート』のこのシーンがほぼそっくりそのままパクられていたりします。 ←こちらかこっそりコメントでけます
2014.03.08
インターネットが一般家庭に普及し、ほとんどの人が何らかの形でインターネットを利用するような時代になりました。 最初の就職先では、UNIX という OS を使ってネットワーク系のプログラマをしていましたが、当時は高価な専用線や ISDN 回線が幅を利かせていたために、一般家庭で常時接続が可能になるのはまだまだ先のことだろうと思い込んでいました。 それから現在のようなネット時代に突入するまで 5 年もかからなかったわけですから、技術の進歩には目をみはるものがありますね。 情報検索のみならず、サイトやブログで情報を発信したり、ショッピング、証券取引などなど、インターネットの用途はこれからも広がりを見せていくことでしょう。 今回は、インターネットが諸刃の剣であることがほどよい具合に表現されている映画『ザ・インターネット』を、かなりひねくれた目線でご紹介します。【送料無料】【DVD3枚3000円5倍】ザ・インターネット [ サンドラ・ブロック ]価格:1,000円(税込、送料込)わかりやすいあらすじ 天才的なハッキング能力を持ちながら社会に適合できないために、パソコンが唯一の心のよりどころになっている寂しい独身女。 認知症が進行した母親までが我が娘の名前を忘れる始末で、ハッカー女はますます孤独感をつのらせるばかり。 そんな彼女が三年ぶりの一人旅の準備をしている矢先、一枚のフロッピーディスクが自宅に送られてくる。 一見何の変哲もない商用 Web ページだったが、ある操作をするとセキュリティが厳重なはずの組織のシステムにこっそり入り込めるしくみになっていた。 この秘密を発見した同僚は、ハッカー女に直接会ってこのプログラムについて話したいと言ったが、約束の時間を前に事故で命を落としてしまう。 突然の死の知らせに愕然とするも、予定どおり旅に出るハッカー女。 しかし、彼女のコンピュータ操作は裏側で筒抜けになっており、彼女の手に渡ったプログラムを抹消するために別の組織が動き出していた。 さて彼女はこれからどうなってしまうのか?みどころ1. 長いこと引きこもっていると、極度の理想主義に走っていく ネットで注文したピザをほおばりながら、オンラインチャットを楽しむハッカー女。 チャットルームの仲間は一度も会ったことのない相手ばかりだが、恐らく彼らも彼女と同じような重度の引きこもり組。 チャットルームで理想の男性像をつらつらと挙げるハッカー女。 夢を見ているんだよとたしなめる彼らもまた、理想主義に毒されたネット住人。 今やネットでピザを注文したり、航空券を買ったり、ネットショッピングしたりするのは当たり前ですね。 米国では電話回線は同市内なら通話料金は一律ということもあり、一日中電話回線を使ってネットを楽しむことは当時でも十分可能でしたので、その点では日本の従量制の通話料金がネット利用の足かせとなってました。2. 社会的なつながりがないと、いざというときに誰も頼れない 会社の人間関係はおろか、近所づき合いさえも怠ってきたハッカー女。 彼女の個人情報が赤の他人の情報で書き換えられてしまっても、彼女の身分を証明できる人は昔の恋人だけ。 その彼も殺されてしまい、とうとう彼女は一人ぽっちに。 ネットが社会に浸透していくにつれ、生身の人間関係が希薄になってきていることが問題視されていますが、まさにこれを予見したような悪夢が映像化されていますね。 現在は個人情報も電子化されていますので、第三者によってその情報が改竄されるというトラブルがあちこちで発生しています。 商用のサイトなら乗っ取りがあったとしても、専門業者や警察によって改竄情報の復旧は可能かもしれませんが、国が保管している個人情報が改竄されてしまったら、あなたの存在を証明する術はあなたを良く知る生身の人間しかないのかもしれません。3. 初対面で他人の所有物をチラ見してくる人間にはロクな奴がいない ハッカー女が炎天下の浜辺にノートパソコンを置きっぱなしにしてダメにしていたり、そんな高価な物を置いてとても泳ぎにいける雰囲気ではないという話はさておき、一応バスタオルでカバーしているにも拘わらず、目ざとく見つける英国男。 浜辺に似たようなノートパソコンを置いたりして、俺も仲間だと猛アピール。 この時点で怪しさ一杯ですね。 一人旅でスキだらけというのはわかりますが、人嫌いなら個人的なことをいろいろ嗅ぎまわってきた時点でこいつの怪しさには気付かなければならないでしょう。 顔と英国訛りに騙されて身体まで許してしまうあたりは、引きこもりハッカー女としては失格ですね。4. 偽ハッカー女のまぬけっぷり 英国男とグルになり、ハッカー女になりすました偽ハッカー女。 ボヤ騒ぎによって、偽ハッカー女はビルの外に避難させられるハメに。 避難警告が解除され、他のスタッフたちとノロノロ歩いて自席に戻る彼女。 このボヤ騒ぎが、ビルに潜入した本物のハッカー女の仕業だとわかっているのなら、鬼の形相で走って自席に戻るのが普通でしょう。 ハッカー女の逆襲によって、組織の計画がめちゃくちゃにされた後も、ヘタに動いたことによって自分で悲劇を招いてしまうという、始終まったく役に立っていない女を好演しています。 役柄とはいっても、ここまでまぬけっぷりが酷いと、あまりにもリアリティがなさすぎて、観賞の途中から苦笑いが止まらない状態となります。どうでもいいトリビア このセクションは、読者を選んでしまう可能性がありますが、わかる人にはクスリとくる内容になっていると思います。1. マック大放出 この作品全体を通じて登場するパソコンは Apple の Macintosh シリーズコンピュータです。 ハッカー女は自宅では PowerMac 8500、旅行先では PowerBook Duo を携帯しています。 また、ハッカー女の逆襲劇が Macintosh 見本市で展開されることから考えても、Windows は完全に蚊帳の外になっているため、今になってこの作品を鑑賞するとかなりの違和感があります。 ここで、当時の映画をチェックすると、ハイテクというと Macintosh か UNIX かというイメージが定着していたようです。 1996年作『インディペンデンス・デイ』では宇宙人相手に Macintosh を駆使してイロイロやっていますし、1993年『ジュラシック・パーク』に登場する監視システムには UNIX が採用されています。 Windows PC が一般家庭でも本格的に普及し始めたのは恐らく Windows 95 以降でしょうから、作品のリリース時期を考えると Macintosh ばかりが登場しても、当時としては不自然ではなかったといえます。2. ハッカー女の ToDo リスト 旅行の計画を立てている彼女は ToDo リストをせっせとこしらえています。 以下が彼女のリストの内容になります。済 新聞購読の停止済 郵便物の配達停止済 航空会社のコンファメーション済 コスメルの緊急時の電話番号 Powerbook バッテリの充電 サーモスタットの電源を切る 2600 マガジン携帯 トラベラーチェック 日焼けローション買う!!ショッピングリスト: 日焼けローション 上述の 2600 マガジンは、実在のハッカー向け IT 雑誌で、The Hacker Quaterly という季刊誌として現在も刊行されています。 参考:2600 (英語) [外部リンク]3. モーツァルト・ゴースト ハッカー女のところに送られてきたいわくつきのフロッピーディスクが、モーツァルト・ゴーストという架空バンドの公式サイトのソースファイルとなっています。 また、ボーカリスト Dane Midnight のプロフィールをシーンの中でチラッと確認することができます。 Originally born in Salzburg, Dane now plays guitar and harpischord, in addition to lead vocals for Mozart's Ghost. He's known for his screaming vocal and a thrash metal...(訳) ザルツブルグに生まれ、現在はモーツァルト・ゴーストのリードボーカルのほか、ギターとチェンバロを担当。 絶叫系ボーカルとスラッシュメタル(パフォーマー)として知られる。 Dane Midnight も架空の人物ですが、Midnight というと、80年代後半~90年代中盤まで活躍していたクリムゾン・グローリーという仮面様式美メタルグループのボーカリスト、故Midnight が鋼の声の持ち主だったため、彼の名を拝借したのではないかと邪推しています。 参考:クリムゾン・グローリー公式サイト(英語) [外部リンク] ちなみに、モーツァルト・ゴーストのテーマソングにはモーツァルト作曲 『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』のメタルアレンジが採用されています。4. メチャメチャな IP アドレス大放出 IPv4 形式の IP アドレスは 8 ビット×4セットで表記しますが、8 ビットの最大値(10進数で 255)を超えた数値を振ったありえないアドレスが堂々と登場します。 中盤でハッカー女が極悪組織の IP アドレスを突き止めたときは、75.748.86.91 が表示され、その次のシーンでは一瞬にして 23.75.345.200 に変わっていたりするというイリュージョンまでも起こります。 その他にも、チャットルームメンバーの WHOIS 検索結果の IP アドレスも同様にめちゃくちゃで、しかもご丁寧に年齢まで出てきていたりします。 実際はドメイン登録者の氏名、住所、電話番号、メールアドレスまでは WHOIS 検索できますが、年齢は出ません。 当初はネットワークのことをあまり知らないスタッフが制作したので、このような作りになっているのではないかと思っていました。 しかし、電話番号と同様に、実在する IP アドレスは、どこかに晒されればほぼ間違いなく検索される運命にあります。 ハリウッド映画の電話シーンでは、いたずら防止に専用市内局番の 555 を使うようになっていますが、これに相当するものが確立されていなかったため、ありえない IP アドレスで対策を施したという見方の方が妥当性があるといえるのかもしれません。
2014.02.16
少し前に、美少年アイドルが出血大サービスでいろいろやってくれている性春映画をご紹介しましたが、今回はその第二弾となります。恋は緑の風の中 ― 色々な意味でキョーレツだったがもう一度観たい性春映画 誤解なきようにお断りしておきますが、当方はこのジャンルの映画ばかり観ているわけではありません。 ジャンルにとらわれず、コメディからシリアス、そしてときどきグロいのまで幅広~く鑑賞し、個人的にみどころ感があると思った作品をテキトーにご紹介しております。 今回ご紹介させていただく映画は、1995年作品『渚のシンドバッド』になります。渚のシンドバッド 【DVD】価格:4,132円(税込、送料別) 『渚のシンドバッド』といったらピンクレディーでしょう、という方は恐らく私と同年代、またはそれ以上の方か、半田健人バリの昭和歌謡曲大好き人間かもしれませんね。 今は亡き祖母が、彼女らがテレビで踊る姿に目を細めながら「ミニスカートは10代までだよ」と強い口調で言ったことが強烈な刷り込みとなり、二十歳を過ぎてミニスカートを穿いているお姉ちゃんたちは変な人たちだと思い続けていました。 そんなわけで、五十路を過ぎた今もなおミニスカート姿で大股開きで踊ってくれるピンクレディーは、私のなかでは変な人たちなんですけどね。 とは言いつつも、ハナタレの頃にちゃっかりベスト盤を買ってもらっていたりするわけでございます。わかりやすいあらすじ 性の目覚めとともに、目の前に立ちはだかるゲイという壁の厚さに愕然とする主人公。 当然、好きな相手はまともに取り合ってくれない。 悶々とした気分のやり場に困っているうちに、自分よりももっと変な女に付きまとわれるようになり……。 そんな高校生たちの妙に甘酸っぱく、そして無意味で宙ぶらりんな経験の数々。みどころ1. 長回しの多用 カメラを固定させたまま、延々と風景映像が続くところや、登場人物に好き勝手やらせているところを、第三者の視点でのぞき見するのがこの映画の楽しみ方のひとつになります。 学生時代によくありがちだった、無駄な時間だけが勝手に過ぎていく、そんなやり切れなさがよく表現されていますね。 ストーリー進行も淡々としているので、眠くなってくる人、この調子に乗せられて最後まで観てしまう人と好みは分かれるところです。 同じように長回しを多用している作品としては、ドイツ映画『ベルリン天使の詩』がすぐに思い浮かびます。 芸術色のつよい素晴らしい作品なのですが、友人はこの長回しに耐えられず、上映時間の半分は寝てました。 そんな映画です。【送料無料】ベルリン・天使の詩 【デジタルニューマスター版】 [ ブルーノ・ガンツ ]価格:3,990円(税込、送料込) 邦画では、『人のセックスを笑うな』あたりが同様に長回しを楽しめると思います。【送料無料】スマイルBEST::人のセックスを笑うな [ 永作博美 ]価格:2,181円(税込、送料込)2. 浜崎あゆみのすごさ 浜崎あゆみはアイドル歌手として有名ですが、もし歌手の道を選ばなかったとしても、十分やっていけるほどの素晴らしい自然な演技力を発揮しています。 美容整形で顔が変わる前の彼女を拝める珍しい作品でもありますが、ポップアイドル歌手としてデビューしたときの可愛くて清楚なイメージとは裏腹に、こちらでは大人のグッズまで持ち出して登場する大胆さでございます。 愛想笑いゼロ、男に絶対媚びない可愛くない女の典型例かもしれません。 そこがやってくれるな!という感じですね。 当時の姿を惜しみつつも、彼女が女優業に戻ってくる日を心待ちにしている人も意外と多いのではないでしょうか。3. 優柔不断なヤツは嫌われる この作品に登場する人物はみな、日本人らしい淡々としたところがあるのが特徴になっていますが、それでも一人ひとりをよく見ると、それぞれに感情をむき出しにしています。 主人公もヘタレなりに「好き」と言葉にできる強さを持っていますし、風変りな女は最初から言いたいことを言っています。 唯一言えてないのが主人公が好きになった相手ですが、彼は流されまくっています。 その場を何とかやり過ごそうという態度が裏目に出て、最後はイタ~イ目に遭ってますね。どうでもいいトリビア・監督がゲイをカミングアウトしている 橋口亮輔監督ということで、同監督の過去作品もチェックしてみたんですが、意外と観てましたね。 『二十歳の微熱』、『ハッシュ!』もドゲイの世界ですが、今思い起こしてみれば、作風がどこか似通っていたりします。 ゲイが撮るゲイの日常もテーマとしては悪くないですし、認知度を広めていくためには必要なことだと思いますが、ゲイをまったく匂わせない映画も観たいですね。 『渚のシンドバッド』は主人公がゲイですが、思春期にありがちな友情や恋愛のもつれや、感情のぶつかり合いがみどころですので、そういう意味では、ゲイ映画と片づけるにはもったいない気がします。 同監督の最新作は、全身タイツマニアのディープな世界を描いた『ゼンタイ』になります。 タイトルからして名作の予感がするので、いつかレビューしたいと思います。 ゼンタイ 公式サイト [外部リンク] ←こちらからこっそりコメントでけます
2014.01.31
サタデー・ナイト・ライブ(Saturday Night Live, 以下 SNL)と聞くと、ピンとくる方は多いかもしれません。 米国テレビ NBC で土曜の深夜に時間枠を取って長年放送されているコメディ番組で、基本スタイルとしてスタンドアップコメディのほか、本格的なセットを用いたコント、歌や演奏などで構成されています。SNL 出身のハリウッド映画俳優は多い SNL という番組自体はご覧になったことがない方でも、この番組から数多くのコメディアンたちがハリウッド映画への進出を果たしていますので、ある意味、大衆向けコメディ映画への登竜門的な番組となっていることはご理解いただけることでしょう。 個人的な趣味で申しわけないですが、超・超有名どころを何人か並べてみることにしましょう。 (今回はさわり程度のご紹介となりますが、ご希望があれば、彼らの作品についてもいつか語ってみたいと思います。)、こちらは、ダン・エイクロイド(左)&故ジョン・ベルーシ(右)のコンビでお送りするブルース・ブラザーズです。 そして、こちらが笑顔らしい笑顔を見せない個性派チェビー・チェイスですね。彼のシニカルな笑いの取り方にとても癖があるため、あまり日本人受けはしないかもしれません。 思い出語りになりますが、遠い過去に仕事の打ち合わせのため米国の取引先に行った際、偶然にもオフィスが Chevy Chase 銀行の近くに位置していました。 打ち合わせの担当者に、この銀行名とコメディアンの関連性についてニヤニヤしながら尋ねたところ、シラネーと即答されましたね。 そしてお次が、映画『ゴースト・バスターズ』で大ブレイクしたビル・マーレイです。 ダン・エイクロイドと仲良く共演でございます。 そして、こちらが映画『ビバリーヒルズ・コップ』でお馴染みのエディ・マーフィ。 このあたりになると、日本でもかなりの知名度ですので、もう説明は不要ですね。 エディ・マーフィは SNL に出演していた頃の方が、ハリウッド映画進出後よりもはるかに面白かったです。 これだけでも SNL という番組がハリウッド映画界にかなりの影響を及ぼしているいることがおわかりいただけますね。 この番組がひっくり返るほど笑えるのか、という話になると、日本人的な感覚で言えばビミョーなラインをギリギリ行ったり来たりしている感じでもあります。 ときに人種差別的な発言があったり、深夜という時間帯もあってか、結構きわどい下ネタをかませてあったり、時の人の背景知識がなければ全然楽しめないものもあります。 また、笑いの取り方も日本とはかなり異なっていますので、乗れなければ全然乗れないという悲劇が待っていることも事実です。 そういう意味では、この独特の世界観にハマる人は病的にハマる番組と言えるのかもしれません。SNL のコントから生まれた映画『ロクスベリー・ナイト・フィーバー』(1998年) ある日、SNL に映画『マスク』でお馴染みのジム・キャリーが出ていました。 しかも、当時 SNL レギュラーだったウィル・フェレルとクリス・カッタンの夢のコラボでした。 ジム・キャリーの独特の動きが完全にその場を食っていた印象もありましたが、SNL のスキットにしては珍しく(?)笑いが止まらなかったのを覚えています。 (興味のある方は YouTube で What is Love Jim Carrey と検索してみてください。) そして、やはりその面白さは本物だったようで、後に『ロクスベリー・ナイト・フィーバー』(原題:A Night at The Roxbury)というタイトルで映画化されました。 左がクリス・カッタン、右がウィル・フェレルです。 ギャラか事務所的な問題があったのか、残念ながら映画版の方にはジム・キャリーは出演していません。【送料無料】ロクスベリー・ナイト・フィーバー [ ウィル・フェレル ]価格:1,350円(税込、送料込) この映画は頭を空っぽにして楽しむ映画の代表格といっても良いですね。 見終わったときに、得られるものは何もないと断言できるのですが、個人的にとても好きなおバカ映画ですね。 レンタルだけでは飽き足らず、DVD を購入し、一時は毎日観賞していたというハマりっぷりでございました。 当方所有の DVD をご覧ください。 SCORE! とは英語のスラングで、ゴールに点が入る様子から転じて、やったね!という使い方をすることがありますが、むしろほとんどの場合は誰かとヤるという、とても下品な意味合いで冗談めかして使われるスラングですので、使用時には注意が必要です。 しかも、Special Collector's Edition という割には、中身は DVD 一枚という寒々としたパッケージとなっております。 輸入盤にはこういった中身勝負的なところもあったりしますが、ひょっとして日本盤なら紙切れ一枚くらいは入っているのではないでしょうか? コレクターズ・エディションに含まれているものは、次のものですが、本編以外はこの DVD 制作にかける情熱はほとんど感じられません。 映画本編 Score! Reliving A Night At The roxbury (出演者インタビュー) Roxbury Rags (衣装・ファッションガイド) Do That Dance! (ダンスステップ) Making The List! (ロクスベリーのリストづくり) 予告編 普通、コレクターズというくらいなら、削除シーンや NG シーンのクリップ集くらいは入れるよなあ、というツッコミでパッケージ観賞を終え、次回はあらすじとみどころをご紹介したいと思います。 ←こちらからもこっそりコメントでけます。
2013.12.07
映画の話をするときに、キム・ギドク監督作品を持ち出すと、「ああ、そっち系か」と思う方も多いのではないでしょうか。 それほど視聴者の好みがはっきり分かれる監督ともいえるでしょう。 彼の撮る映画は、叙景的で淡々としたコマ回しの中に、突如としてとんでもない暴力表現があったり、話を広げまくったところで勝手に終わってしまったりすることもあるため、エンターテイメント性に過剰な期待を込めて鑑賞すると肩透かしを食うかもしれません。 そういう意味では、キム・ギドク監督は韓国のデヴィッド・リンチ的なポジションに近いのではないかと思っています。 さて、前置きはこのくらいにして、今回は主人公が一言も口を利かない 2004 年映画『うつせみ(空き家)』(原題:빈집 ビンジップ)をご紹介します。 韓国語がわからない方でも内容をほとんど理解できるくらい、全体的にセリフが少ないのが特徴です。 ちなみに、この映画は韓国の映画館で鑑賞しました。★【送料無料】 DVD/洋画/うつせみ/BIBF-6624価格:3,483円(税込、送料込) 左に写っている男(ジェヒ)が主人公なのですが、寿司職人見習いみたいな髪型ですね。 獄中で頭を丸めるのでこのようになっていますが、序盤~中盤までは普通に髪の毛がありますので、ファンの方はご安心ください。 彼はこの作品では鍛えまくった肉体を披露していますが、元々は細身な方なのかもしれません。 何かの間違いで↓こちらの作品を観てしまった時に、あまりのスリムな体型に本人とはしばらく気づきませんでした。4%OFF!!カラー・オブ・ウーマン 上巻(5巻組) 2013/7/5価格:15,750円(税込、送料別) 一番左端がジェヒです。 とても細いですね。 ドラマの中ではさらに細く見えます。 韓国では、細身の芸能人よりモムチャンと呼ばれる筋肉隆々で長身の芸能人に人気が集まる傾向があります。 ジェヒ自身、主人公であるにもかかわらず、準主人公と並ぶと印象がかすんでしまうことがあります。 このため、韓国芸能人は、印象を良くするために身体を鍛えまくっていることが多いのです。 身体の線が細いというのは、ヤサ男というマイナスイメージが伴うことを踏まえながら韓流作品を鑑賞すると、面白さがアップするのではないかと思います。 ちなみに、『カラー・オブ・ウーマン』は、女子向けラブコメディドラマなので、当方としては苦手なジャンルだったため、第二話で断念してしまいました。 それはあくまでも当方の話ですので、お洒落なラブコメディがお好きな方にはきっと楽しめるドラマなのではないかと思います(全然フォローになってないか……)。わかりやすいあらすじ バイクにまたがり、民家にチラシを配って回る青年。 ついでに郵便受けのチラシをチェック。 チラシがたまっている家は、留守宅のサイン。 彼はそういった留守宅に忍び込んでは一人の時間を満喫するという、いわゆる空き巣狙い。 ある日、留守宅の豪邸に忍び込んだ彼は、美しい女性のセクシーな写真を発見。 そりゃあもうこれをオカズにしない手はないでしょうとばかりに、裸になってベッドに潜り込んだところで、写真モデルの張本人に目撃されて大あわて。 気まずい雰囲気のなか退散するも、顔にあざをこしらえている彼女のことが気にかかり、引き返してみるチラシ男。 豪邸を覗いてみると、彼女が夫からひどい暴行を受けている真っ最中。 さて、彼はこれからどうするのか? みどころ1. 犯罪行為を正当化する試み チラシ男は空き巣に入ると、そこで風呂に入り、飲み食いし、睡眠を取ったりと、やりたい放題です。 ここまでなら、なんて酷い奴だ!と空き巣に入られた経験のある方は拳を振り上げたい衝動に駆られるかもしれません。 しかし、彼のやりたい放題は基本的にそこまでです。 時計の狂いを直したり、壊れたおもちゃを修理したりと、ほんの少しだけ良い面も見せたりします。 しかも、金銭的なものには一切手をつけません。 ですから、たいていの場合は、家の主は帰宅すると、長い間壊れていたものが直っていたり、植木が元気になっていたりするという不思議な経験をするものの、彼に空き巣に入られたことを知らずに終わってしまいます。 空き巣に入ることは犯罪行為であるにもかかわらず、ひょっとしてそれもありなんじゃないかという錯覚を起こさせるテクニックですね。2. 抜け殻女とチラシ男 金にモノを言わせ、無理やり結婚させられたのが見え見えの女。 当然、夫との関係は冷め切っています。 夫は、彼女の気持ちを自分に向けさせようとあの手この手を尽くすものの、一向になびく様子のない彼女に手を挙げては、無理やり自分のものにする始末。 長きにわたる虐待の末、うつろな目をした彼女は何の目的もなく毎日を送っているわけですが、そんな魂の抜け殻のような彼女の心の隙に入り込んできたのが例のチラシ男。 彼の方が若くて顔の造形も整っており、体格も良かったという理由で彼女がそそられたと解釈するのが一般的なスジですが、そういう下衆な想像はここまでにしておきましょう。3. 静かなる主人公たち チラシを配りながら、堂々と空き巣狙いを繰り返す主人公ですが、彼は普段からあまり人目に付かないように用心しています。 しかも、彼は一切口を利きません。 不幸妻も抜け殻同然ですから、口を利かないまま淡々とストーリーが進行します。 それでも二人はとても幸せそうに見えるので不思議です。 ちなみに、彼女は既婚者なので、韓国で不倫をすると、姦通罪が適用されることがあります。 まあ、好きになったら理屈など吹き飛んでしまうのが愛というやつなのかもしれません。 彼女の場合は、たった一言だけ口を利くシーンがありますが、何と言ったのかは観てのお楽しみということにいたしましょう。どうでもいいトリビア1. 何度も流れるアラビア音楽 作品の中では、ベルギー出身歌手ナターシャ・アトラスによる Gafsa という曲が何度となく繰り返されるのですが、「私にとってこの世には何の宿命もない あなたは私の愛する人だが、私とは釣り合わない」と歌っているあたりなど、まさに不幸妻の地獄の日々をそのまま表現したような曲ですね。 しかし、一度聴くと何度でも繰り返し聴きたくなる不思議な魅力を持っています。2. 実はうっかり一度だけ喋りそうになっていたチラシ男 留守宅に老人の死体を発見したチラシは、こりゃまずいものを見たという顔をするのですが、その部屋を確認しようとする彼女を引きとめようとして、一瞬何かを言いかけます。 注意深く見ないと気付かずに終わってしまうシーンになりますが、気になる方はチェックしてみてください。 これは演技上のものなのか、ついポロッと口走りそうになったのかは謎です。 結末はある意味ハッピーエンドなので、悲しい映画が苦手な方でも楽しめると思います。 この結末についても触れようかと思ったのですが、結末の解釈は人によって異なりますので、今回のご紹介では控えておくことにします。 もし、この作品をご覧になった方で、エンディングネタバレについていろいろ語ってみたい方がいらっしゃれば、別途隠し記事か何かを用意するかもしれません。 ←こちらからもこっそりコメントでけます。
2013.11.06
夜、眠りに落ちていく瞬間や、めまいや貧血などで意識が遠のいていく瞬間に、このまま二度と起きられないかもしれないと思ったことはありませんか? 後頭部を強打した人や、全身麻酔で手術を受けた患者の人格が変わってしまったという事例もあると聞きますから、何かのきっかけで別の人格が現れてくるのは何ら不思議なことではないのかもしれません。 今回は、他人の頭の中(意識)に入るという願望を成就した男の悲劇を面白く、そしてシュールに描いた映画『マルコヴィッチの穴』(1999年)をご紹介します。【10%OFF】新品未開封【DVD】マルコヴィッチの穴ジョン・キューザック [ACBF-90022]価格:1,701円(税込、送料別) 個性派俳優として知られるジョン・マルコヴィッチ本人がほぼ実名で登場していることで有名ですので、ご存知の方も多いと思います。 私はこの映画を劇場で鑑賞した後に DVD を購入し、毎回のようにニヤニヤしながら楽しんでおりましたが、リージョンコードの関係で引越しの際に手放してしまいました。わかりやすいあらすじ 昼は街頭にて自作の操り人形でエロい寸劇を披露して通行人に殴られ、夜は自室にこもって人形をチマチマ製作したり、一人公演を行ったりするのが日課という、キモヲタ系の人形師。 そろそろ定職に就いてくれと嫁に言われ、ようやく就職した会社がどう考えても普通ではない。 ある日、ひょんなことから事務所の一角に隠し扉を発見。 その扉は、何とジョン・マルコヴィッチの意識に繋がっていた。 マルコヴィッチ体験ができると知った男は、この秘密の扉をどう使うのか?みどころ1. 主演夫婦の薄汚さ 主演はジョン・キューザックですが、メタボな感じで、髪もボーボーに伸び放題、無精髭という姿で登場しています。 妻役はキャメロン・ディアスですが、彼女に至ってもチリチリパーマでノーメイク、そして始終ダサい格好をしていますので、普段のゴージャスな印象とのギャップにショックを受ける方も多いかもしれません。 妻がペットショップで働いていることもあり、ペットショップの動物を自宅で放し飼いにしているというのも、不潔感が漂いまくっています。2. 世間的に言うとズレまくっている事務連絡員(秘書)と社長 聞き間違いの多い人は現実でも良く見かけますが、重要なことは聞き間違えて欲しくないですね。 この事務連絡員に至っては、ただの一度も主人公の名前を正確に言えないどころか、勝手に聞き間違えて憤慨するという、相手にすると仕事にならないので厄介なタイプです。 これに対し社長は普通に話の通じる長寿の紳士(?)ですが、彼は自分の言語障害を常に気にしています。 ただ一点だけ、会話の端々にエロい小ネタをぶち込む悪い癖があります(本人は無意識にやっている)。3. 7 1/2 主人公の就職先の事務所は雑居ビルの 7 1/2 階(中八階?)に位置しています。 エレベーターには 7 1/2 階のボタンはありませんので、アナログ的な方法で止めるしかありません。 しかも、普通の人なら腰を曲げて歩かなければならないほど、天井が低い造りとなっています。 この 7 1/2 階は由緒ある階となっており、オリエンテーションビデオでその歴史を知ることができるのですが、どうでも良い内容だったりします。4. 人間の意識は怖ろしい呪いだ ジョン・マルコヴィッチは、自分の意識を赤の他人に次々に乗っ取られるというポータルとして存在しています。 しかし、彼も生身の人間ですから、いずれは老いて死を迎えることになります。 そのポータルから生まれた子供がエミリーであり、彼女もポータルとして人生を送るようになるというカラクリとなっています。 乗っ取りの黒幕が誰なのかは、映画を見てからのお楽しみということにしておきましょう。どうでもいいトリビア1. エセ日本人サラリーマン 既婚者の身でありながら、職場で知り合った美しい女性に一目惚れしてしまう主人公。 初デートで待ち合わせたバー『The Stuck Pig』で、隣席に日本人のご一行様が座ってビールをラッパ飲みしています。 よく耳を澄ますと、日本語での相槌がときどき聞こえてくるのですが、ハリウッド映画ではお約束のなんちゃって日本人らしく、ちょっと変な発音になっています。2. ジョン・マルコヴィッチ 冒頭で、ジョン・マルコヴィッチはほぼ実名と申しましたが、実はミドルネームが異なっています。 作品の中では Horatio (ホレイショ)をミドルネームに使っていますが、本名のミドルネームは Gavin (ギャヴィン)です。 ファンでない方には本当にどうでも良い情報ですね。3. 名前当てゲーム 一目惚れした相手の女性の名前を勘で当ててみせると意気込む主人公。 気持ちの悪いねっとりとした声を出しながら、彼女の名「マキシーン」をみごとに言い当ててしまいますが、その直前に「エミリー」と言っています(よく注意して聞く必要あり)。 このエミリーこそ、マルコヴィッチになった主人公とマキシーンとの間に生まれた女児の名前であり、彼らの出会いからすでに未来が繋がっているというヒントになっています。4. ジョン・マルコヴィッチの朗読 マキシーンがジョン・マルコヴィッチの自宅に突撃電話を掛けたとき、彼がソファでくつろぎながら朗読していたのはチェーホフ作『桜の園』の一節。【英語】"...what I have been through ! I am hungry as the winter ; I am sick, anxious, poor as a beggar. Fate has tossed me hither and thither ; I have been everywhere, everywhere. But wherever I have been, every minute, day and night, my soul has been full of mysterious anticipations. I feel the approach of happiness, Anya ; I see it coming. . . . "引用元:TWO PLAYS BY TCHEKHOF [Internet Archive]THE CHERRY ORCHARD ACT II 124ページ目【日本語】"(略)これでずいぶん苦労はして来ましたよ! 冬になると、たちまち僕は口が乾ひあがって、病みついて、いらいらして、乞食こじきも同然の境涯に落ちこんで、――運命の追うがままに、所きらわずほっつき歩いたもんです! それでもやっぱり僕の心は、夜も昼もたえず、いついかなる瞬間にも、一種なんとも言えぬ予感に満たされていました。僕は幸福を予感します、アーニャ、僕にはもうそれが見える……"引用元:桜の園 アントン・チェーホフ [青空文庫]第二幕終盤のトロフィーモフのセリフ。 ←こちらからもこっそりコメントでけます。
2013.09.25
帰りの電車に揺られていたら、唐突にたまごめんの「私つくる人、僕食べる人」でお馴染みだった佐藤佑介が頭に浮かんできたので、今回は彼の俳優デビュー映画『恋は緑の風の中』(1974年)についてレビューしてみることにします。参考:ハウス食品(WikiPedia より) [外部リンク](「私作る人、僕食べる人」が婦人団体からバッシングを受けて CM 放送中止に。シャンメンシリーズとして掲載) この映画も劇場公開された当時は話題作だったのかもしれませんが、その後ビデオ化されたという話は聞きませんし、DVD フォーマットでも出回っていないため、今となってはマイナー映画という位置づけになるのかもしれません。 (2019/03/07 更新)いよいよ DVD フォーマットでの取り扱いが始まりましたね! 個人的には隠れた名作だと思いますのでとてもうれしく思います。^^。恋は緑の風の中 [ 佐藤佑介 ]価格:3078円(税込、送料無料) (2019/3/7時点)楽天で購入 ちなみに、私はハナタレの頃にこの映画を深夜放送で観ました。 まだテレビ東京が東京12チャンネルだった頃の話です。(すんごいテキトーなイメージ画) 現在では入手不可能ということもあり、先日の El Pico のレビュー同様、テキトー度が異様にアップしているレビューとなりますが、あらかじめご了承ください。El Pico ― 一見教育にはすごく悪そうだが、心を鬼にして青少年に見せたい映画わかりやすいあらすじ 精神的にまだまだお子ちゃまの主人公が、中学校の性教育の授業をきっかけに大人の階段を上り始める。 まさに H2O のヒット曲『思い出がいっぱい』を少年バージョンで映像化したような、こっ恥ずかしさと甘酸っぱさの入り混じった映画。みどころ1. 主人公の大根っぷり 他のキャストが自然な演技を見せる中、彼だけは棒読みというか、演技のために演技しているのが見え見えなため、アイドルという名にふさわしく、一人で浮きまくりでございます。 新御三家(郷ひろみ、西城秀樹、野口五郎)とはちょっと離れたところで美少年アイドル人気を振りまいていましたので、佐藤佑介と聞くと、当時ファンだったという方も意外と多いのではないでしょうか。2. バミューダ 主人公(佐藤佑介)が母親に新しいバミューダをねだるシーンは、当時の自分でもダサいと思ってしまいました。 もちろん本編でもダサいバミューダを着用して登場していたりします。 ご存知ない方のために、バミューダはこんな半ズボンです。 おお、最近のはとってもおしゃれですね。★楽天ランキング4位獲得!【60%OFF】特別SALE+レビュー書いて送料無料●【レ】9カラー 5分丈...価格:2,625円(税込、送料込) 70年代に流行ったスタイルは、素材はこのような感じでも太腿がピチピチしているタイプのものですので、想像してみてください。 3. オヤジギャグ大連発 劇中で、下らないこまごまとしたギャグがいろいろ出てきます。 好きな女子(原田美枝子)の前でうっかりオナラをしてしまい、自動車プップーと寒いギャグをかますシーンには、この場をどうにかしてほしいと本気で思いました。 もう一つ覚えているギャグは下ネタです。 主人公が仲間と一緒に秘密基地の周りを歩きながら、童謡『メリーさんの羊』に合わせて「スーパーマンの子供は~♪スーパーマン子供!」と延々と繰り返すので、今でもたまに思い出して頭の中をグルグルすることがあります。 とても人前では歌えませんが。4. 下ネタ大爆発 エロハナタレがパワーアップし始める中学生が主人公ですので、まあ、身体にもイロイロと変化が現れもすれば、異性に興味を持ち始めたりもする年頃ですね。 佐藤佑介が風呂上がりにスッポンポンのまま、台所で戦闘ヒーローの真似をしながら足を上げたり、回ったりしている姿は衝撃的でした。 それどころか、自分の股間をイジりながら、白いカスどんどん出てくるとまでほざきます。 (すみません。努力はしてみたのですが、どうしても上品な表現になりませんでした。) 大人気アイドルにここまでやらせてしまう監督もすごいですね。 しかし、そこがまた結構なリアリティを感じさせます。 今となってはいろいろうるさくて、アイドルにこんなことはさせられないでしょう。 当時ファンだった女子たちは、このシーンを見た瞬間、目をギラギラさせながら黄色い声で叫んだであろうことは、想像に難くありません。 この他、自分の母親を押し倒してキスしたり、原田美枝子の裸を想像したり(ここは結構綺麗)、タイプでない小太りの女子から上半身裸で迫られたりしています。 原田美枝子はまだ十代でしたが、青年から襲われるシーンでポロリは衝撃的でしたね。 良い子は森の中を薄着でフラフラ歩いてはいけません。 恋、緑、風、といった爽やかキーワードが盛り込まれているにも関わらず、作品の方は妙にヲヤジっぽいエロさが漂っていることがご理解いただけることでしょう。どうでもいいトリビア1. 原田美枝子の顔の大きさ 序盤→中盤→終盤に向けて、原田美枝子の顔がふっくらと変化しています。 十代は体重が変化しやすい年頃ですし、彼女が単にむくみやすい体質だったのかもしれません。 本当にどうでもいい話ですね。2. 男女の精神年齢の差 とても良い雰囲気になってきたところで、「私、田舎に引っ越すの」と告げられて、絶望のどん底に突き落とされる主人公。 携帯電話も、メールも、インターネットも無かった時代ですから、友達や想い人が遠くへ引っ越すということは、多くの場合、別れを意味します。 まあ、ほとんどの初恋は成就しないという典型例ですね。 主人公が体型も中身も子供のままな一方で、同年代の少女はすでに肉体派女優並みの体型と、妙に大人びた物腰に違和感を覚えた方も多いことでしょう。 少女は、貧しい境遇に逆らって生きるほど知力も体力もないことを熟知しているために、自分の想いを殺して生きなければならないことをぼんやりと『死』という言葉で表現していますが、経済的に不自由のない生活をしている主人公にとっては、彼女の境遇など想像もつかないために、彼女の言葉にただただ動揺するばかり。 妥協することに慣れきっている彼女にとっては、この恋を諦めることも妥協の一つにすぎないのですが、嫌いになったわけでもないのに別れを選択しなければならない辛さは、彼にとっては初めての経験でイナズマ級の悲しみだったわけです。 大雨が降り出すところや、二人を隔てて川が流れているところが、初恋があっけなく終わってしまう様子をうまく表現していると思います。 いつか DVD かブルーレイで復刻してほしい映画の一つです。2015/07/14 追記: 拍手の方にコメントを頂戴しました。ありがとうございます^^。 70年代ど真ん中のテイストでありながら、今ではなかなか出せないリアリティ感満載の作品ですね。 テレビ放送を録画されていたとは何ともうらやましいかぎりです。 いまだ DVD 化される気配のない貴重な作品ですので、どうぞいつまでも大切に保管なさってくださいね。 ←こちらからもこっそりコメントでけます。
2013.09.13
最近、何だか人間関係に疲れてしまったとか、毎日が単調でつまらないとか、仕事(学校)に行く気力がないとか思ってしまったりしていませんか? 今回は、そんなあなたの心をドキドキさせ、うお~明日からもう一度頑張ってみるよ!と思いたくなってくるイラン映画『運動靴と赤い金魚』(原題:بچههای آسمان、でも発音わかりません)をご紹介します。補足: Maryam F D さんより、ペルシア語タイトルの解説を賜りました。 まことにありがとうございます。(以下、原文ママ)「この映画のタイトルはバチェハ(子供たち) イェ (の)アセマーン(空) という意味ですが、ペルシャ語は修飾語の位置が日本語と異なるため、空の子供たち という意味になります。」わかりやすいあらすじ 貧乏な家庭に生まれ育った兄と妹。 兄は妹の靴を修理してもらった帰り、ちょっと目を離した隙に、たった一足しかない妹の靴を失くしてしまう。 半ベソをかきながら謝る兄だが、このままでは学校に行けなくなるので困り果てる妹。「お兄ちゃんの靴を私にも貸して。」 靴を失くした手前、妹の要求を呑まなくてはならなくなった兄。 これから二人はどうやって一足の靴を二人で履くのか?【送料無料】運動靴と赤い金魚 [ ミル=ファロク・ハシェミアン ]価格:1,000円(税込、送料込) ジャケット写真を眺めているだけで息苦しくなりそうですね。 しかし、この息苦しさがまた何とも言えず良いのです。 (当方に窒息プレイ系の趣味はございません。)みどころ1. 可愛いらしくて、美しい兄妹愛 中東圏の子供達は目鼻立ちがはっきりしているとよく言われますが、こちらの兄妹は本当に可愛らしいです。 特に妹ザーラ役を演じたバハレ・セッデキの可愛らしさが群を抜いてますので、恐らくスクリーンに彼女が出てくるたびに癒しをもらった人が続出したことでしょう。 この兄妹のつぶらな瞳に涙が溜まるたびに、ついついウルっとさせられてしまう迫真の演技力です。2. とにかく走る 約束を決めて一足の靴を二人で履くことにした二人ですが、約束を守るために二人とも走って、走って走りまくります。 88分という長さの映画のうち、恐らく30分はこの二人の走る姿で構成されているといっても過言ではありません。 しかし、またかよ、という気にはならず、むしろ転ぶなよとか、約束に間に合って欲しいとかいった、見守りたい気持ちになってくるので不思議です。 妹を喜ばせたい一心で全力疾走する兄の姿を見ていると、応援しながらじわーっと涙がこみ上げてくること請け合いですので、最近心が荒んできたような気がする方には特ににおすすめしたいシーンです。3. イランの小学校 イランの小学校は、男子校、女子校と校舎が分かれている場合は授業は午前中、校舎を男女で使う場合は、午前中が女子の部、午後が男子の部というようにきっちりと時間分けがされていますね。 この兄妹が通う小学校は、後者のタイプだったので、一つの靴をシェアするのが可能となったわけです。 4. 歴然とした貧富の差 父に連れられてテヘラン高級住宅街にやってきたのは良いものの、都会の豪奢な暮らしぶりに圧倒される兄。 仕切りのない部屋で、一家五人が肩を寄せ合って倹しく暮らしている家庭がある一方で、高級住宅街に豪邸を構え、悠々自適に暮らしている家庭があるわけですが、日本で言う格差とは比べ物にならないほどの格差が進んだ社会であることが、映像だけで十分すぎるほど説明されています。5. 新しい世代(社会)の夜明け 無学の両親のもとに生まれた兄妹は、二人とも勉強熱心で成績も優秀。 兄にいたっては、成績はトップクラスでスポーツ万能と来ていますから、クラスメイトからも一目置かれる存在です。 モスク(礼拝所)のお茶に入れるための砂糖を砕く内職をしたり、他人の庭の手入れを細々と続けたりすることで精一杯の父親が毎日目にできる世界とはまた別の世界が、この兄妹の眼前に広がり始めているのを垣間見ることができます。どうでもいいトリビア1. 低所得層と富裕層に見る、ちょっとした信心度合いの差 女性のイスラム教徒(ムスリマ)は、外出時や家族以外の男性が同じ空間にいる場合は、男性を誘惑しないように協力するという意味で、身体の線が出ないような衣服に身を包んで髪を覆う必要があるのですが、信心深くなればなるほどカバー度がアップするようですね。 母親は髪を完全に覆ったヒジャブスタイル、妹は自宅ではスカーフ巻き、学校では白ヒジャブ、学校の女教師はアバヤスタイル(カバー度最強)ですので、興味のある方はチェックしてみてください。 キャストや撮影スタッフに男性が含まれているため、本作品の貧乏一家は室内でも女性はムスリマとして正しい服装をしていますね(それ以前に、不特定多数の人に向けて上映される作品なので当然と言えば当然ですが)。 ムスリマでも自宅では普通の格好をしている人が多いので、この辺は視聴者の誤解を招きそうな感じです。 あとは、高級住宅街の男の子が真っ赤な短パン姿で登場するので、兄が一瞬ギョッとした表情を浮かべるのが印象的です。 まあ小さな子供なので許容範囲だったのかもしれませんが、イランを含む中東圏では、男性でも短パン姿で外をフラつくのは NG なため、短パン姿の外国人観光客が入国時に足止めを食らったりするようです。2. 金魚 イラン人にとって金魚は新年(3月20日)のお祝いに欠かせないアイテムなので、新年が近づくと金魚を求める家庭が多いですね。 映画を観ていると、貧乏一家が住んでいる一帯の中庭に、洗い物をするための水道と小さな池が配置されているのですが、序盤~中盤では水だけが張られていた池にも、終盤にはたくさんの金魚が放されていますので、新年が来たのかな、と思う人もいることでしょう。 しかし、洗ってない足を金魚の池に突っ込むのは衛生上どうなのか、と個人的に気になった部分でもあります。おまけ イラン在住の Maryam F D さんから、イランの新年の様子を紹介したページを提供していただきました。 写真盛りだくさんで、丁寧な解説付きですので、ご覧になってみてください。 お供え物の中に、金魚が含まれているのを確認できますね。 1381年お正月 明日の夜発ちます Maryam F D さんには、この場をお借りしてお礼申し上げます。 Maryam F D さんのブログはこちら: Maryam's HP 日記 実は、イラン映画はこの映画だけをもう 20回くらい観ているのですが、最近はばなびーさんのブログの方でもイランをテーマにした映画『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』を紹介されてましたし、個人的には『ペルシャ猫を誰も知らない』もかなり気になっていますので、また機会を見てイラン映画の紹介をするかもしれません。 話ついでになりますが、ばなびーさんの『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』と『ペルシャ猫を誰も知らない』の映画レビューはこちらをご覧になってみてください。「チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢」をみて「ペルシャ猫を誰も知らない」を見てばなびーさんのブログはこちら:Naughty Tots! ←こちらからもこっそりコメントでけます。
2013.09.06
以前、ばなびーさんのブログで紹介されていた映画『ロック・オブ・エイジズ』をようやくレンタルできましたので、テキトーにレビューしてみます。 『ロック・オブ・エイジズ』はデフ・レパードの 1983年のヒット曲のタイトルであり、後述のトム・クルーズ扮するステイシー・ジャックスの登場曲としても使われています。 ロックは80年代が一番輝いていたなあ、と嘆きを隠せない 30代~40代の年齢層を狙った選曲(キャリア層にこの手の映画を見せて当時のアルバムを買わせる戦略)は、CD が売れない時代になかなかやるな、と思いました。 また、コーラスを題材にした米国の大人気ドラマシリーズ『Glee』の影響もあって、時期的にこの映画がそれなりに受けたのは想像に難くありません。 先日の記事でも書かせていただきましたが、ミュージカル映画は苦手な方なのですが、偶然にもほとんどの曲を知っていたために、オープニングで音量が 3 ほど上がり、途中でも一緒に歌いながら鑑賞するというハマりっぷりでした。わかりやすいあらすじ 時は1987年。 オクラホマの田舎町から歌手を夢見てやってきた女が、同じ夢を持つ田舎男と出会い、ロサンゼルスの街中で唐突に歌い出したりして、紆余曲折を繰り返しながらスターダムにのし上がるという、まあ、よくありがちなアメリカンドリーム映画。 ばなびーさんのブログの方にもっと詳しくあらすじが紹介されていますので、併せてご覧になってみてください。「ロック・オブ・エイジズ」をみて [ばなびーさんのブログより]みどころ1. ARSENAL 冒頭の長距離バスシーンでは、エアロスミスの『パーマネント・ヴァケイション』 、ポイズンの『ポイズン・ダメージ』、リタ・フォードの『ダンシン・オン・ザ・エッジ』 と一緒に ARSENAL の『FALLOUT Live at the Bourbon Room』 のアルバムがチラッと見えるのですが、ARSENAL 自体がこの映画の為に結成された架空のバンドなので、知らなくて当然でした。2. 早い話がトム・クルーズのためにあるような映画 映画のオープニングで元気良く流れる曲『パラダイス・シティ』は、80年代~90年代を華々しく飾ったガンズ・アンド・ローゼズの代表曲の一つですが、この曲をカバーしているのがトム・クルーズです。 それでは、ここではトムを思う存分堪能していただきましょう。 - 視線だけで女たちを気絶させるトム!(男の夢だね) - 女優の胸触りまくりのトム!(今ならセクハラ訴訟で大変だよ) - 女の股間に向かって歌いまくるトム!(良い子が産まれますように) - 酒を飲みながら、太った中年マネージャーの靴に放尿プレイのトム!(ノーコメント) - ポールダンサートム!(男性ストリッパーの道も開けそうだね) - キスされまくり、しまくりのトム!(男の夢だね)(二回目) - メタル歌手でも十分にやっていけるトム!(これは CD 出すべきだね) 古い映画になりますが、『トップガン』で女教官のケリー・マクギリスに向かって、ライチャス・ブラザーズの『ふられた気持ち(You've Lost That Loving Feeling)』 を歌っていたときのトムは地声で音痴な感じだったのですが、この映画のために相当なメタルボイストレーニングを積んだのでしょう。 さすがプロのなせる業でございます。 メインキャストの田舎女と田舎男はいずれも素晴らしい歌唱力を披露していますが、トム節炸裂の前には、二人ともみごとに霞んでしまいます。3. ほとんどの夢は破れるという現実 類いまれな才能に恵まれた者は、自分の可能性を信じて夢に挑戦していくものですが、たとえ実力があったとしても成功するとはかぎらないのが現実の厳しさであり、早々に夢を諦める者、叶わぬ夢にしがみつく者も多々いるのもこれまた現実でといえましょう。 田舎女は、天使の歌声を持ちながらも良いプロモーターにめぐり合えず、そして田舎男にフラれた腹いせからライブハウスの仕事を辞めて一文無しとなり、ストリップダンサーとして生計を立てる様子が描かれています。 実際のところ、歌手として芽が出ないうちは、効率よく生活費を稼ぐためにストリップダンサーを選択する女性も少なくはないのでしょう。 皆さんご存知のマドンナやレディ・ガガもそういう下積み時代を経て今の成功を勝ち取っています。 ストリップダンサーとは言っても、若くなければなりませんし、顔も体つきも良くて踊れなければ絶対に採用されませんので、職業として決して侮れないんですけどね。4. イメージは作られる ショー・ビジネスの世界では、造形が整っていること、才能があること、自信に満ち溢れていること、強烈な個性を持っていることなどが成功の条件に挙げられますが、さらに自分を演出して大衆の目に留まらせるためにキャラクターを確立する必要があります。 自分で自分を演出している分には、止め時を自分で決められますが、背後に事務所やスポンサーが構えている場合はそうもいきません。 組織に所属しているかぎりは、自分自身が商品として扱われることも多いでしょう。 自分が他人のイメージを演じるのは数々の苦難を伴うものですが、割り切って演じ切る人もいれば、作られたイメージの重みに耐えられなくなり、第一線から退く人が多いのもこの業界でしょうね。 ロック一本でやっていきたい田舎男が、事務所の意向により勝手にアイドルグループに入れられてしまったり、カリスマセクシーダイナマイトロッカーとして長年ロック音楽界を賑わせてきたトムの苦悩などがこの辺に良く表現されています。5.宗教とロック音楽 1950年代に彗星のごとく現れたエルヴィス・プレスリーは、初めてのテレビ出演で腰を振りまくって歌を披露したことがきっかけで、教育上、道徳上良くないと数多くの教育団体や宗教団体からバッシングを浴びるハメに。 それ以降も、ロック音楽を聴くことを禁じている家庭や団体は多かったのですが、1970年代~80年代になると、メロディや歌詞も過激で攻撃的なものが増え、80年代後半にはロック音楽を聴いて自殺する若者まで現れました。 1985年にはへヴィーメタルグループのジューダス・プリーストの楽曲を聴いた二人の若者が互いにショットガンで自殺を図り、訴訟問題にまで発展したニュースは記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。 自殺を図った少年たちは、どちらも敬虔なクリスチャンの家庭の子供であったことから、イエス・キリストを裏切ったユダがバンド名として採用されているジューダス・プリーストへの反発もあいまって、数多くのキリスト教団体から反キリスト的、悪魔教的なメッセージを含む楽曲の製作・販売禁止を求める声がさらに強まったのも事実です。 キャサリン・ゼタ・ジョーンズ率いるキリスト教系女性団体が、この様子を軽いタッチで面白く表現していますね。 なお、へヴィーメタルグループのヴォーカルは、意外と敬虔なクリスチャンの家庭の出身であることが多いのも面白いところです。 皆さんご存知のところでご紹介しますと、スキッド・ロウののセバスチャン・バックは少年時代は聖歌隊に属していましたし、ガンズ・アンド・ローゼズのアクセル・ローズも少年時代に同じく聖歌隊で歌ったり、ピアノで賛美歌を演奏したりしていましたが、厳格で保守的なクリスチャン一家だったため、家庭ではテレビ、ラジオの視聴を禁じられていたほどです。どうでもいいトリビア1. トリビアというほどのものでもないが…… ストーリーのモチーフに使われているのがジャーニーの名曲の一つ『ドント・ストップ・ビリーヴィン』で、田舎町からやってきた少女が夢を見て大都会にやってくるという歌詞の内容がそのまま採用されています。 田舎女にシェリー・クリスチャンという名前が付いていることもあって、ロサンゼルスへの長距離バスの中で他の乗客たちとナイトレンジャーの『シスター・クリスチャン』を熱唱するあたりから、きっとこの流れでジャーニーの『オー・シェリー』も熱唱してくれないかと期待したのですが、途中で『オー・シェリー』のイントロが微かに流れた程度で、曲そのものは採用されなかったのが残念です。2. 製作スタッフはかなりのフォリナー好き フォリナーはロックというよりポップスに近いと思うのですが、『ジュークボックス・ヒーロー』、『ガール・ライク・ユー』、『アイ・ウォナ・ノウ』と 3 曲も登場していることで、映画の中では少々浮いた印象になっています。 また、『ジュークボックス・ヒーロー』に関しては、ジョーン・ジェットの『アイ・ラブ・ロックンロール』とセッションさせる気合の入りようです。3. セバスチャン・バックのカメオ出演 スターシップの『シスコはロック・シティ』を熱唱するラッセル・ブランドの横に、スキッド・ロウの セバスチャン・バックが映っており、同曲を一緒に熱唱(全盛期は美青年だったのに、加齢とともに激太りしたな)。 セリフはラッセル・ブランドの "We built this city, right?" の呼びかけに対し、 "Yeah, we did!" のみなので注意して見てみましょう。 スキッド・ロウの楽曲は、田舎女が田舎男とタワーレコードで話すシーンで『アイ・リメンバー・ユー』がオリジナル・バージョンでチラッと流れますが、ファンの方なら聞き逃すことはないですね^^。4. T.J. ミラーのカメオ出演 トムがローリング・ストーン誌の女記者の名前を聞き出すために雑誌社に電話をかけたときに、応対したのがスタンドアップ・コメディアンの T.J. ミラー。 映画に使われた楽曲の全リストはこちらからご覧になれます。Rock of Ages Song List(曲目一覧) ← こちらかもこっそりコメントでけます。
2013.08.18
いきなりですが、この顔をご覧になってピンときた方は、相当なファンでいらっしゃいますね。 表はこちらです。 この顔に厚化粧を施し、ガーターストッキングを履かせてボンデージ系の衣装を着せると、キモい女装のヲッサンの完成です。 それでは、またタイトルでネタばれ完了ですが、今回は「超」が付くほど有名なのに、扱いはカルトな 1975 年作映画『ロッキー・ホラー・ショー』をご紹介します。【送料無料】【ブックス初購入ポイント10倍】ロッキー・ホラー・ショー [ ティム・カリー ]価格:800円(税込、送料込) この映画との出会いは 16歳の生意気盛りのころでした。 プリンスに走った友人が遊びに来たときに持参したビデオが『ロッキー・ホラー・ショー』だったわけですが、当時の販売向け映画テープは軽く一万円を超えていましたので、同じ高校生なのに金持ってんなあ、と感心したものです。 一回観てファンになり、その後何回かレンタルし、成人してから DVD を購入、引っ越しているうちに紛失、再び買い直しというサイクルを繰り返して今に至ります。 現在、当方所有の DVD がこちらの二枚組になります。 内部はこのように、ボンデージ&ガーターストッキング着用のお姉さま&オネエ様方の写真が DVD の表面を飾っています。 もともとはミュージカル作品の映画化なのですが、実はミュージカルは苦手だったりします。 苦手な理由としては、やっと感情移入し始めたところに登場人物が唐突に歌いだすと、一瞬で現実に引き戻されてしまうためです。 しかしこの映画に関しては、登場人物が歌い出したり、踊り出したりしても、絶対に夢から覚めさせないキャラの濃さが売りになっているとも言えるでしょう。わかりやすいあらすじ 一組の田舎臭いカップルが、友人の結婚式の帰りに道に迷い、そのまま怪しげな屋敷にたどり着いてしまう。 玄関では、カッパのように禿げ上がった薄気味悪い執事がお出迎え。 怪しさ一杯でドン引きしている間に、奥から厚化粧の女装男が登場。 彼曰く、トランスセクシャル星からやってきた博士で、今夜は彼が創り上げた人造人間「ロッキー」のお披露目パーティだとか。 それならどうぞ、私たち抜きで勝手にやっちゃってください、と及び腰のカップルを女装博士は見逃すわけもなく、彼らをズルズルと怪しい世界に引きずり込んでいく。 人造人間ロッキーとは何者なのか? そして彼らは無事にこの屋敷から出られるのか?みどころ1. 歌が楽しい ロッキー・ホラー・ショーは、ミュージカル映画ですので、当然歌にもストーリーが含まれているのですが、この手の映画の中で唯一の救いは、人の性癖を面白おかしく歌にしてしまっているところです。 ちょっと一歩離れた所で観ている感じが楽しいですね。 女装博士(ティム・カーリー)の登場時に流れるスウィート・トランベスタイトのブギー・ロック系のノリの良い曲はもちろんのこと、平凡カップルの女性(若かりし頃のスーザン・サランドン)が歌うタッチ・タッチ・タッチミー は一度聴くと忘れないメロディーになっています。 2. 普通すぎる人造人間「ロッキー」 普通の人間が圧倒的に少ない映画ですが、その中でも金色のビキニブリーフ一丁で登場するロッキーが普通すぎるので肩透かしを食らいます(私は食らいました)。 どれくらい普通かというと、青春ドラマか何かで、プールサイドに寝転がって肌を焼いていそうな青年を想像していただけると良いでしょう。3. 慣れたらイベントに GO 就職したての頃に、職場の先輩が『ロッキー・ホラーショー』のハロウィン上映会&イベントをやるから行こうぜえ~なんてことを言ってきまして、会社休んででも行きます、と即答しました。 今でも根強いファンの間では同好会を結成して『ロッキー・ホラーショー』の上映会とイベントを開催しているとは思いますが、上映会を実施するにあたり、上映権というものを獲得する必要があります。 私が行ったのは高円寺のイベントでしたが、たまたまその前年度には上映権が取れずに悔しい思いをしたとのことで、その年の上映会は異様に気合が入っていたようです。 普通の映画館と違うところは、上映前に同好会の皆さんがコスプレ姿で舞台挨拶をしてくれるところですね。【通常便なら送料無料】「ロッキーホラーショー」公式コスプレ衣装 洋画 ホラーパーティー 結婚...価格:10,120円(税込、送料別) こんな格好で嬉しそうに舞台挨拶をしていました。 ドン引きしている間もなく、映画を鑑賞するための必須アイテムが配られます。 私が行ったときは、プラスチックカップに入った生米、新聞紙、クラッカーが配られました。 結婚式のシーンでは、チャペルから皆さん出てきたところで米をぶちまけます(ライスシャワー)。 雨のシーンでは傘代わりに頭から新聞紙をかぶり、クラッカーは自分のお目当ての登場人物のお出ましのところでパンパン鳴らします。 まあ、ある意味形式ばってはいるのですが、二回も行けばコツは掴めるでしょう。 ファンでなければ面白さは皆無のイベントと言えますが、怖いもの見たさで一度足を運んでみても面白い経験ができるでしょう。 一点だけ難点を挙げるとすれば、英語のセリフの映画にビミョーな突っ込みを入れるところだけは、私はちょっと乗れませんでした。 ダジャレ的な突っ込みを聞きながら、映画を一緒に楽しみたいという方にはピッタリですけどね。どうでもいいトリビア この映画はトリビアだらけなのですが、予備知識なしで読んでもなるほど、と思えるネタが薄いのも心苦しいところです。1. カッパ頭の執事が原作者 だれじゃそれ、という感じですが、劇中ではあくまでも脇役に徹している、ハゲの執事リフ・ラフ役のヲッサン(リチャード・オブライエン)が作った作品です。 どんな感じのハゲかは、こちらでチェックしてみてください。 リチャード・オブライエン プロフィール (IMDb) [外部リンク] 彼は 2012 年映画『The Perks of Being a Wallflower』のロッキー・ホラー・ショーシーンの演出も勤めていますが、こちらは俳優陣が役になり切れていない感だけが強く、とても残念な仕上がりとなっています。 エマ・ワトソンの違和感の漂う米国英語、ゲイ高校生があまりゲイっぽくない、主演男優の文芸オタクがいまいちヲタクになりきれてない、などのナイナイの流れでそのままロッキー・ホラーショーのシーンになだれ込んでも、ロッキー・ホラー・ショー好きなら一言言いたい気持ちになってくるわけです。2. 歌う唇の正体 Science Fiction-Double Feature を歌い上げる、暗闇に浮かぶ真っ赤な唇の主は、劇中ではマジェンタを演じたパトリシア・クィン(参考プロフィールはこちら[外部リンク])で、実際の歌は原作者兼ハゲ執事リフ・ラフを演じたリチャード・オブライエンが歌っています。
2013.08.13
最近は映画レビューが続いておりますが、またマイナー系映画に逆戻りでございます。 タイトルでネタばれ完了ですが、今回は 1996 年作のくじ引き映画『The Lottery』をご紹介します。 シャーリー・ジャクスン著で同じタイトルの短編小説が原作になりますが、北米ではとても有名な小説です。授業の課題図書にもなるほどですから、ご存じの方もいらっしゃるのではないかと思います。 この作品は日本語版では出ていないだろうと思ったのですが、ネットを探してみたところ、何と翻訳された方がいらっしゃいましたので、リンクをご紹介します。 短編小説がお好きな方は、きっと楽しく読める内容になっていると思います。 The Lottery (くじ) [外部サイト] さて映画の方ですが、文学の授業の流れで視聴覚室で観ました。 そのあとしばらくしてケーブルでも放送されていましたので、短期間に連続で鑑賞するチャンスに恵まれました。 The Lottery (IMDb) [外部リンク] 原作本が後に映画化され、期待して観にいったら想像していたのと違う映画になっていた、というのはよくある話です。 もともとが短編ですので、映画化にはある程度脚色が必要なのは理解できるのですが、盛り込みすぎて、あらすじは原作に沿っているものの、原作とはかなりテイストの異なる仕上がりになっています。 これはこれでよくまとまっているのが何よりの救いですが。 まあ、何はともあれクジ運が悪くてよかったです。わかりやすいあらすじ 日本では夏や年末はジャンボで、普段でもロトという愛称で親しまれているクジ。 クジで大金を手にする人はごくわずかだが、それゆえ当たった時の喜びはひとしお。 ところが、所変わればクジが必ずしも楽しいものではないことを、あなたはご存じだろうか。 とあるさびれた村。 そこでは毎年、村人全員参加のくじ引き大会が開催される。 くじ引き大会では、たった一人だけ名誉の当たりクジを引くことができるが、村人たちは当たりを引きたくないがために、あの手この手を尽くして参加を免れようとする。 当たりクジを引くと、一体何が待ち受けているのか?みどころ村人全員が監視人で、そして逃げたがっている 村人どうしが監視しあって、村の住民を外に出させないようにしています。 一見、部外者には優しい彼らですが、こんなところには頼まれても行きたくないですね。伝統という名の洗脳 どの土地にも歴史があり、歴史とともに培われた伝統があります。 都会にはなじみのない習慣もありますが、それを受け継いでいくのが年長者の役目とも言えるでしょう。 年長者の教えに背く者が現れ、改革を行っていかなければ、その土地の住民は伝統という都合の良い言葉に一生縛られていくことになってしまうのです。信条の怖さ この土地の人間は敬虔なキリスト教徒ですが、神の加護を受けるためには、個人が共同体としての責任を果たさなければならないと信じるあまり、部外者や反抗する者は共同体の和を乱す存在だと思い込んでいます。 幸い、今の村のあり方について疑問視する若者もいるようですが、少しでも村の掟を破るような素振りを見せれば、キツーイお仕置きが待っています。 10 人の人間が一つの場所にいるとした場合、8 人が似たような信条を持っていれば、多くの場合、残りの 2 人の信条は無視されるものです。 たしかにそれは過半数の信条を守ることになり、団体としての調和が保たれることにはなりますが、同時に、相異なる意見を一切受け付けないものとなります。どうでもいいトリビアちょっとキワモノ感漂う俳優陣 本作品はマイナー系ではありますが、テレビやドラマなどで脇役として登場する俳優がちらほらと出演しています。 なかでも、くじ引きを免れるために自らの脚を折った中年男として登場するスティーヴン・ルートは、ちょくちょく見かけている方も多いのではないでしょうか? 彼は、以前当ブログでご紹介した映画『ゴースト』では、霊の存在について懐疑的な警察官として登場しているほか、1999年作のコメディ映画『Office Space』では、極端に間の悪い冴えないサラリーマンとして主役を演じています。 スティーヴン・ルートプロフィール (IMDb)[外部リンク] 邦題が『リストラマン』になっているのは楽天の検索で初めて知りました。 『Office Space』はコメディというよりシュール感漂う映画ですが、こちらも機会を見てレビューしてみたいと思っています。 また、当たりクジを引いてしまう女優は、パロディ詰め合わせ映画『Scary Movie 2 (最終絶叫計画 2)』のエクソシストパロディで、カーペットにおもらしをしてしまう娘に激しくお仕置きをするママ役で登場しています。 このシリーズは 4 まで観ましたが、個人的には神父役としてジェームス・ウッズが参加している 2 が一番よくまとまっていると思います。Scary Movie 2 (最終絶叫計画 2) (IMDb) [外部リンク]新たな希望 物語の舞台には New Hope(新たな希望)という地名が付いていますが、くじ引き大会だけを見ている分には希望もクソもありません。 しかしこのイベントは、かつてドキュメンタリーで見た、アマゾンのとある部族の儀式を思い起こさせます。 その土地では、何ヶ月も雨が降っておらず、村人たちは深刻な水不足と干ばつにあえいでいたわけですが、そこに一人の有名なシャーマン(呪術師)が呼ばれます。 シャーマンは、干ばつは神の怒りによるものなので、神の怒りを鎮めるためには人間の生贄を差し出す必要があると言うのですが、その生贄のささげ方がエグイ。 呪術によって選ばれた少女は両目をくりぬかれ、すっかり水かさの減ってしまった川底に人柱として埋められてしまいますが、何と、この儀式を行った翌日に大雨が降るという、嘘のような現実を目のあたりにすることになります。 部外者からすれば、この現象は単なる偶然で、その偶然を奇跡に見せかけるために少女の尊い命を犠牲にしたに過ぎないと思ってしまうでしょう。 しかし、こういった呪術師が彼らに見せる奇跡の数々が彼らのモラル形成に一役買っているとすれば、彼らにとってみれば、少女の命を差し出すことで神に希望を託すことは別に不思議なことではないのかもしれません。 もちろん、現在の日本ではこのような儀式を行うことは許されませんが、大昔には土着の信仰により、犠牲を伴う儀式があったようです。 ちょっと古いですが、零(Zero)というゲームがあります。 除霊機能のあるカメラを使って、怨霊を次々と激写するシステムになっており、夏の夜には部屋の電気を全部消して楽しみたいホラーゲームなのですが、縄の巫女と呼ばれる女性が、首、両手両足を縄で縛られた状態で身体がちぎれるまで引っ張られるという、トンでも儀式が登場します。 ゲームのメインキャラクターは、こちらのパッケージのような可愛い女の子ですからご安心を。 ゲームで楽しく遊んだあとに、撮影した心霊写真をギャラリーで見られるのが、このゲームのもう一つの楽しみ方でもあります。
2013.08.07
前回はマイナー系のスペイン映画をご紹介してしまったため、今回はメジャー路線のお気に入りフランス映画をご紹介しようと思ったのですが、1981 年作ということで残念ながら楽天には取り扱いがありませんでした(2014/09/10 楽天取扱確認したため、情報更新しました。)。 タイトルをまだ書いていませんでしたが、今回テキトーな感じでご紹介する映画は Diva (ディーヴァ、歌姫)になります。 この映画ですが、20歳くらいの頃に一度ビデオをレンタルしたのが初見で、その十年後にケーブルで放送しているのを観て懐かしくなり、その後すぐにまたレンタルしました。 オペラ以外の音楽のスカスカ感や、セリフの間延びした感じが時代を思わせますが、全体的に聴いて美しく、見て楽しく、適度なスリル感もありますので、まだご覧になったことのない方は、機会があればお勧めしたい映画です。 IMDb にエントリが見つかりましたので、リンクを張っておきます。 Diva (IMDb) [外部リンク] 【送料無料選択可!】ディーバ 〈製作30周年記念 HDリマスター・エディション〉 / 洋画価格:3,652円(税込、送料別)わかりやすいあらすじ ごく普通の郵便配達員の唯一の楽しみは、オペラを聴くこと。 中でも、とある黒人オペラ歌手の熱狂的なファン。 ある日、彼は彼女のパリ公演を見に行き、彼女の歌声をこっそりテープに盗み録り。 しかも、彼女のステージ用ドレスまで盗んでしまうほどのハマりっぷり。 その日以来、テープを郵便バイクのお供に、彼女の歌声を聴きまくりの夢のような生活を送れるかと思いきや、消えたドレスがデカデカと新聞に。 彼は警察にマークされていることを知り、慌ててドレスをオペラ歌手に返しに行くが、警察の本当の目的はそれではなかった。 彼に対するオペラ歌手の反応は? そして彼は何故警察に追われることになったのか? みどころ1. オープニングから泣ける。 この作品は、黒人オペラ歌手のパワフルな歌声による、カタラーニ作『ワリー』の第一幕アリアで始まります。【送料無料】【輸入盤】歌劇『ラ・ワリー』全曲 テバルディ、デル・モナコ、カップチッリ(2CD...価格:2,888円(税込、送料込) 歌の意味がわからなくとも、きっとあなたの目尻にもいつの間にか涙が。 もちろん彼も感動の涙を流しながら手を叩きまくり、劇中の観客もスタンディングオベーション。 また、ストーリの途中で郵便配達員がこの曲の解説をしてくれますので、オペラに疎い私のような者でも理解できて楽しめるような、丁寧な作りとなっています。 きっとこの映画を観た後に、サントラ盤を求めた人も多いのではないでしょうか?2. 愛は年齢も人種も簡単に超える。 すぐに気付くと思いますが、結構いい年した黒人オペラ歌手と二十歳くらいの白人フランス人の郵便配達員、そして十代のベトナム人少女と、とうに四十路を過ぎた中年白人フランス人男との不思議な組み合わせが織り成すサスペンスとヒューマンドラマになっています。3. 万引きのテクニック ベトナム人少女は万引きの常習犯。 レコード屋でバインダーを使った万引き技を披露してみせますが、店員にバインダーを見せろと呼び止められ、開くとそこには大写しになった彼女自身のフルヌード写真の数々が。 彼女によると、この仕掛けは彼女の手作りだそうですが、ボックスセットの万引きができる仕掛けもあるらしいです。 万引きは犯罪です。 ですから、彼女の真似なんかして自分のフルヌード写真を持ち歩かないようにしてください。4. 全然役に立っていない警察 警察は犯罪の香りのするテープを追っていますが、それがベトナム人少女と恋仲の中年白人フランス男の手に渡り、彼が謎解きを始めてしまいます。 何たって彼のライフワークの一つはジグソーパズルですから。 ちなみに、彼の夢は波を止めることです(何のこっちゃ)。 冒頭でもマヌケっぷりを露呈させていたパリの警察でしたが、ここでも出番がないのが映画の中だけなのか、それともこれが現実に近いのか……。 考えさせられますね。どうでもいいトリビア1. テープレコーダー 1980 年頃なら縦型のコンパクトなラジカセも普及し、初代ウォークマンも出始めていたはずですが、何とこの郵便配達員は Nagra 製のオープンリール式のテープレコーダーでリサイタルの盗み録りをしています(気になる方は、Nagra portable tape recorder で画像検索してみてください)。 もうまるでスタジオ録音野郎のノリですね(盗み録りは違法ですが)。 その他、中年フランス人男性の自宅では、ReVox 製縦型 B77 プレイヤーがドーンと登場したり、Nakamichi 600 が出てきたりします(実際、セリフでも堂々とナカミチと言っている)。 もう完全に製作スタッフの趣味としか思えない世界ですが、これだけオーディオ磁気テープ装置が登場していたにもかかわらず、よりコンパクトなカセットテープの普及、続いて CD 盤の台頭により、今では一般家庭ではほとんど見かけなくなってしまいましたね。2. 郵便配達員の性癖 彼は黒人オペラ歌手が好きで好きでたまらなくて、ドレスを盗んでしまうわけですが、家の中に飾っておくだけでは飽き足らず、ルンルン気分でそのドレスを首に巻いて夜の街にくり出し、そこで黒人の女を買います。 同じ背格好の娼婦を選んだのは、彼女にドレスを着せたいから。 さすがに彼女も「アンタも好きネェ~」みたいなことを口走ります。 いや、そんなことよりも、彼はまだ二十歳そこそこのはずなんですが。 自宅ではドレスの匂いをかいだり、抱きしめたり、添い寝したり……イロイロやらかしていたことは想像に難くありません。 しかし、本当にそのオペラ歌手が大好きならば、果たして彼女の肌に触れていた衣装を他の女に着せたいという欲求は起こってくるでしょうか? この辺は意見の分かれるところではないでしょうか。 ただ、彼は黒人女性が好きらしいということは良くわかりました。2014/09/10 追記: 楽天での取り扱いがあったため、ジャケット画像をアップ。 ← こちらからもこっそりコメントでけます
2013.08.05
「覚せい剤やめますか、それとも人間やめますか」 これは、日本民間放送連盟がテレビ CM で流していた覚せい剤撲滅キャンペーンでおなじみのセリフでしたね。 一般家庭の主婦が覚せい剤に溺れてしまい、家庭をかえりみなくなるという恐ろしい映像を、三十代以上の方なら今でもはっきりと覚えているのではないでしょうか。 日本は他の先進国に比べると、違法薬物へのアクセスが比較的困難だと思いますので、早寝早起きを心がけ、夜も早く帰宅するような生活を送っていれば、まず身の回りで違法薬物が話題に上ることすらないでしょう。 しかしながら、学校、会社、組織など、人の集まるところには、心の隙を突いてそういった薬物が入り込んでくる可能性は十分にあります。 あまり大々的に新聞には載りませんが、毎年必ずどこかの学校で脱法ドラッグや、麻薬問題が起こっている現状を見ても、誰でもちょっとしたきっかけで、道を踏み外してしまう危険性と隣り合わせであると考えても良いのかもしれません。 違法薬物には常習性が強いものと、弱いものがあります。 詳細はネットで調べていただくとすぐに見つかると思いますが、その中でも、一度手を付けたら一巻の終わりと言われているのがヘロインです。 薬が切れてくると、全身がバラバラになるような激しい痛みに襲われるとも言われますので、それを抑えるために次の薬が必要となり……と繰り返しているうちに、確実に廃人コース、続いて死亡コースに乗せられてしまいます。 最近の中学校や高校ではどのような教育が行われているのかは不明ですが、私が高校生だった当時は、シンナー(トルエン)の濫用で校内で死者が出たり、未成年の喫煙が問題になっていた時期でもあったため、学校で薬物撲滅フィルムを見させられたものです。 フィルムの中では可愛いチンパンジーが薬物実験の餌食となってしまっているわけですが、一人でも多くの人たちに薬物の恐ろしさを訴え、撲滅していく必要があると思います。 さて、前置きがものすごく長くなってしまいましたが、今回ご紹介する映画は、実話をベースに、深刻な社会問題としてドラッグを扱った 1983 年作スペイン映画 El Pico になります。 マイナー色の強い映画ですので、当然楽天にも取り扱いがないため、残念ながら今回はジャケットのご紹介はありませんが、IMDb の方にエントリが見つかりましたのでリンクを張っておきます。 El Pico (IMDb) [外部リンク] この映画は、私が学生時代にスペイン語を取っていた時期に何かの間違いで観てしまった映画です。 細かい所はもう結構忘れてしまっていますが、いくつかのシーンは印象に残っていますので、ここで紹介したいと思います。 私の知っているかぎりでは、スペイン映画は少々変わった題材のものが多いのですが、それらに比べると、こちらはごく普通のドキュメンタリーっぽい映画の部類に属すると思います。 まあ、題材はザ・ドラッグなんですけどね。 ハッピーエンドなんて夢のまた夢です。わかりやすいあらすじ コカイン常習者の高校生の親友二人が、とある売春婦を通じてヘロイン中毒に。 薬を買う金欲しさに売人をやったり、男女問わず身体を売っちゃったりしているジャンキーなこの二人だが、実は国家に仕える家柄のお坊ちゃん。 そのうち、一人がヘロイン中毒であることが父親にばれてしまい家出。 父親は権力を行使して麻薬ルートのあぶり出しと息子の捜索に乗り出す。 果たしてこの二人、どうなっちゃうのか? みどころストーリー進行が速く、しかも淡々としている 全体を通じてしっかりと問題を提起したドラマになっているとは思いますが、目立った抑揚感はありません。 それだけにリアリティを追求したドキュメンタリータッチになっているともいえます。 ただ、一つのシーンから次のシーンへの移行が速く、本来はもっと感情を表現すべきところを省略しているところは残念ポイントと言えるでしょう。Guardia Civil (グアルディア・シビル)なら買い放題 主人公の母親が重病(多分末期がん)の痛み止めのためにどうしてもモルヒネが必要なわけですが、薬局で買おうとすると、薬剤師にそんなの無理、と突っぱねられます。当然ですね。 そこで父親が言い放ちます。「オレはグアルディア・シビル(市民警備隊)だ。モルヒネを出せ。」 この一言で買えてしまうところからして、何か間違っています。 こういう環境の家庭にいると、どうしても薬物へのアクセスが容易にならざるを得ないでしょう。救いの天使はゲイの兄ちゃん 主人公が金欲しさに身体を売っていた、お相手のゲイの塑像芸術家は、主人公の禁断症状に懸命に立ち向かいながら何とか彼を薬物の魔の手から遠ざけようとします。 本作の中で唯一心が温まるシーンですので、必見です。やっぱり疫病神な売春婦 ゲイの兄ちゃんによってやっと立ち直りかけた主人公ですが、彼を深みに引きずり込んだ売春婦と再び繋がりを持ったことで元のドラッグ・ジャンキーに逆戻り。 更正したように見えても、きっかけさえあればいとも簡単に以前の悪習慣に逆戻りしてしまう人間の弱さと、絶対に逃れられない麻薬の恐ろしさ。 売春婦の存在さえなかったら、彼らはまだまともな人生を送っていただろうと思えてくるのですが、彼女のような存在を常に警戒して、遠ざけなければならないのが私たちですね。どうでもいいトリビア本当に吸ってる、打ってるとしか思えない ハリウッド映画ならそれらしい描写でまとめるので安心して観られますが、エフェクト的に考えても、こちらはどう見ても本物っぽいです。 撮影現場のモラルとしてどうなのかは、当時はそれほどうるさくなかったのかもしれません。 実際、主人公を演じた俳優は 28歳という若さでお亡くなりになっています(IMDb調べ)。 このシーンには、リオのカーニバルで流れるような、楽しさ一杯の軽快な音楽が流れます(実際にリオ・デ・ジャネイロとと聞こえたりする)。 どうもこの映画には音楽的なセンスは期待しないほうが良いでしょう。 しかも、どういうわけかマリリンモンロー、フレディ・マーキュリー、泣きピエロのポスターのショットが順繰りに現れるのですが、ドラッグと彼らの関連性でも訴えたかったのでしょうか。 あとたまに若かりし頃のデヴィッド・ボウイのポスターも登場したります。 謎です。妙に明るいドンパチシーン 市民警備隊の父はテロリストの標的にもなっており、途中で命を狙われます。 このときにちょっとした銃撃戦になるのですが、バックグランドで流れる曲が、子供の教育番組で掛かっていそうな妙に能天気なメロディなのです。 この映画に音楽的なセンスは期待しないほうが良いでしょう(二回目)。 最後に、この映画のタイトル El Pico について考えてみたいと思います。 El Pico は英語でいうところの The Peak で、日本語にすると一気に訳が増えてしまうのですが、頂点、絶頂といった意味合いになります。 また、peak は尖った部分のことも言いますので、注射針を彷彿させますし、薬物によって得られる高揚感から一気に禁断症状のスパイラルに落ちていくギリギリの境界点も想像させます。 しかし、私個人としては、薬物の恐ろしさに触れずに済む健全な状態が最高(ピーク)なのではないかと思います。 本作品は、本来は知らなくて良い世界の出来事ではありますが、情報として知っておかなければ予防も対策もできない問題ですので、教育目的でこのような作品が他の形でも映像化されることを期待します。
2013.08.03
夏真っ盛りで、皆さんもそろそろ熱帯夜に慣れてきたところではないでしょうか。 さて今回は、ちょっとだけ涼しくなれるマイナー系映画をご紹介します。 その昔、ビンボー留学生だった頃に、夜な夜なケーブルテレビの映画チャンネルを点けっ放しにしながらレポート書きをしておりましたが、夜なべライフ満喫中に観た中でも印象に残っている映画の一つがこちらの『Kissed キスト』になります。[レンタル落ち][ケース交換・検品をしています][合計5000円以上で送料無料][代引手数料無料継続...価格:3,600円(税込、送料別) こちらの作品は、現在は国内で入手困難となっていますが、もし今回のレビューをご覧になって観てみたいと思われた方は、ちょっと古めの映画も扱っているレンタルショップを覗いてみてください。 楽天やアマゾンでも中古の扱いがありましたので、所有欲がムクムク湧いてきた方は、そちらでチェックしてみてください。わかりやすいあらすじ 生あるものはいつかは必ず死ぬ。 多くの人々は、生前の姿を思い起こしながら、その人の死を悼んだりすることはあっても、屍は宗教的や世俗的な慣習によって、土に還すものだという思いを持っている。 しかし、中にはごくまれに、自分の手に託された屍を、神々しさと恍惚感の入り混じった特別な感情を抱きながら、思いのままにしたい者もいる。 ネクロフィリア(屍姦嗜好)と聞くと、小太りのマザコンヒッキー青年像がパッと浮かびがちだが、こちらは何と清楚で可愛らしい女子大生。 ただ、死体に欲情してしまうことを除けば……。みどころ1. 全然グロくない 女流監督が作品を手がけたせいか、食事中でも安心して鑑賞できるレベルです。 登場する死体は、最初のスズメとネズミを除けば、全部男で綺麗。 しかも最後はホロリとさせられるのが、この映画の異常なところ。2. 主人公が可愛い 本作品の見どころは、何と言っても主人公モリー・パーカーの可憐な美しさでしょう。 ごく控えめで清楚な印象の美人女優ですので、ハリウッド映画ではあまり主人公に起用されにくいとも言えますが、日本人に受けの良いタイプになるでしょう。3. その手があったか! 幼少時代にすでに自分の性癖に気付いていた主人公は、大学ではためらうことなく死体防腐処理を学び、葬儀屋でアルバイト。 何故なら、人目を忍んでタダで美しい死体と思う存分交わることができるから。 死体にしてみればありがた迷惑な話ですが、主人公が可愛いんだからいいじゃんみたいなノリがこの映画のウリ。4. ピーター・アウターブリッジの身体を張った演技 美しい主人公に一目惚れする医学生が、カナダでは結構有名どころのピーター・アウターブリッジ。 そのちょっとストーカーがかったところが、彼女と同類の匂いを漂わせますが、彼の感覚は至って(?)普通でした。 と書いておきながら、死体に本気で嫉妬するあたりから彼の精神は壊れ始め、結局最後は普通を通り越してしまいますが、ピーター・アウターブリッジの股間まで曝け出した演技にもかかわらず、あまりに役にハマリすぎて、不思議と顔にしか目が行きません。作中では明示的に語られていないネタバレ 最後のシーンで、警察に呼ばれて駆けつけた葬儀屋の上司が、死体を前にした主人公を見詰め、ハッとした表情を浮かべます。 この表情からぼんやりと推測できる真実は、上司も彼女と同類だったということです。 これを読み解くヒントは 2 つあります。 一つ目のヒントは、葬儀屋の同僚の言葉です。 上司には同性愛的な趣向があり、若い男の死体を処理する際に、どうせ何されても死体にはわかるわけがないと言っていたという話を聞かされます。 時系列的には前後しますが、二つ目のヒントは、葬儀屋で働いていた若い男性スタッフが作業中に急死したというくだりです。 その後釜として、すぐに主人公が葬儀屋のアルバイトスタッフとして雇われるのですが、話の流れからして、上司が若い男性スタッフに手を出そうとして、揉みあいになった挙句、殺してしまったのではないかと推測されるのです。 しかも、上司には主人公と同じ性癖があったと考えれば、死ねばもっと美味しい思いができるわけです。 皮肉にも、彼女のファーストキスのお相手がこの死体だったりしますので、死体からしてみれば二度のヤラれ損だったというオチにもなっています。 どうでもいいトリビア1. くるくる回って酩酊感を得る儀式の直後に死体を相手するところが、西洋占術のジャイロマンシーを彷彿させる。2. リン・ストプケウィッチ監督は、めくるめくレズビアンの日常を扱った米国テレビシリーズ『L の世界』でも数本のエピソードを担当。【送料無料】Lの世界 シーズン1<SEASONSコンパクト・ボックス> [ ジェニファー・ビールス ]価格:4,490円(税込、送料込) 『L の世界』はパッケージのイメージどおり、美女たちがいろいろやっちゃってくれてますが、最後の方はミステリータッチにもなっていますので、男女問わず楽しめる大人向けの作品に仕上がっています。3. ピーター・アウターブリッジは 1993 年ハリウッド映画『クールランニング』で、物凄くイヤミなカナダのボブスレーチームキャプテンとして登場。DVD3枚で3000円セール対象商品【DVD】クール・ランニングリオン [VWDS-4284]価格:1,000円(税込、送料別) ジャマイカチームを冬季オリンピックのボブスレーに出場させるというコメディ映画。 主演ジョン・キャンディのハリウッド遺作としても有名ですね。 因みに、ジョン・キャンディもカナダ人俳優です。お知らせ 映画レビューが多くなってきたため、「テキトーな映画レビュー」カテゴリーを設置。 過去の映画レビューも、順次こちらのカテゴリーに移動する予定です。 ←こちらからもこっそりコメントできます。
2013.07.15
ハリウッドは 1990年の「ゴースト/ニューヨークの幻」の栄光を忘れられなかったのか、その 20 年後に焼き直し戦略に打って出ました。前回のゴースト記事をご覧になっていない方はこちらからどうぞ。腐ってもゴースト(2013.06.26) 舞台は 2010 年日本。 松島菜々子とソン・スンホンの日韓カップルという設定が、陰りの出はじめた韓流ブームを再燃させようと躍起になっている製作側の強い意図を感じますね。 そういった事情は脇に置いておいて、今回はこの「ゴースト もういちど抱きしめたい」を好き勝手にレビューすることにしますが、前回と同様、ロマンチックな世界観をブチ壊されてもオッケーという方のみ、読み進めていただければ幸いです。【送料無料】ゴースト もういちど抱きしめたい【Blu-ray】 [ 松嶋菜々子 ]価格:5,481円(税込、送料込)わかりやすいあらすじ 新婚ラブラブ、幸せいっぱい、夢いっぱいの大手ベンチャー企業女社長が不慮の事故に巻き込まれ、命を落としてしまう。 自分の亡骸を腕に抱いて泣きじゃくる韓国人夫の姿を見て、天からお迎えの光が差し込んでもまだ向こうに行けないと思った彼女は、遺された夫をそばで見守ろうとする。 時が経つにつれ、何と自分の死は事故ではなく、仕組まれたものであることを知り、愕然とするゴースト女社長。 さあどうする? なんだ前回のあらすじのコピペじゃないか!と思ったあなた、その読みは正しいです。 基本的には男女が入れ替わっただけですから。 しかも、前作に比べ、突っ込みどころが極端に多くなっているのも、この映画の楽しい鑑賞ポイントとなっています。見どころ1. 演技力の差 ファンの方には申し訳ないですが、松島菜々子(女社長)と鈴木砂羽(悪い同僚)、ソン・スンホン(陶芸家の韓国人夫)、芦田愛菜(地縛霊)と樹木希林(インチキ霊媒師)の演技力の差が目に痛いです。 辛口になりますが、学芸会的なノリが抜けきらない女社長と悪い同僚によって、日本映画に合わせた控えめな韓国人夫の演技が余計引き立っていますが、気性の激しいキャラクターが当たり前の韓国映画やドラマに比べると、彼の演技も若干嘘くさく見えてくるのも事実です。 地縛霊は、前作の尋常じゃない怪しさの地下鉄駅の自縛霊と比べると、日本の子役にありがちな少々仰々しさの漂う演技が目に付きますが、それなりに子供らしさを感じるところもあります。 映画の世界観に異様なほどに馴染んでいたのは、インチキ霊媒師くらいのものでしょうか。 樹木希林に至っては、前作のウーピー・ゴールドバーグを完全に凌駕したとも言える怪演ぶりです。 樹木希林が出てくるたびに空気が変わり、その場の雰囲気をかっさらっていってしまうので、主演の二人がぼやけてしまうのが残念なところです。2. 「同じく」の違和感 愛してる?の返事に「ditto(同じく)」が使われているのが「ゴースト」のお馴染みキーワードであり、当時この映画を見た者の間で me, too 代わりに ditto を連発する現象が起こりました。 本作では、韓国人夫の「愛してる?」の問いかけに、女社長は「알고 있서요.(アルゴイッソヨ=わかっています)」と棒読みの韓国語をかましてくれるわけですが、この部分の字幕が無理やり「同じく」になっているところに違和感を覚えます。 前作の ditto に対し、本作にも「同じく」を付けなければ映画として成立しないのは理解できます。 しかし、「わかっています」は、話の流れによっては額面どおりに解釈されないのが言葉の難しさでもあります。 恋人同士の会話で、「愛してる」と尋ねて「(そんなの)わかっている(から、愛してるなんてわざわざ言わせるなよ)」と返されたら普通はムッとくるでしょう。 これは英語でも同じですね。 同意が欲しいときの問いかけに対し、 "I know." で返されたら気分を損ねる人も出てきますので、会話の中で I know. を使うときは要注意です。 このシーンを注意深くご覧いただくと、女社長松島菜々子の「アルゴイッソヨ」を母国語で聞いた韓国人夫ソン・スンホンは、ほんの一瞬ですが素でムッとしているのを感じ取れると思います。 韓国語で「同じく」と言おうとするなら、「나도(ナド=私も)」とか「마찬가지에요(マチャンガジエヨ=同様です)」となりますので、むしろそちらを使った方が良かったのではないかと思います。3. 重要なログイン情報は手帳なんかに書いちゃダメ 大口の送金処理を行えてしまうような重要な会社の経理システムへのログイン情報を手帳に書き留めている女社長。 前作「ゴースト(以下略)」でもエリート銀行員が自分の手帳にパスコードをメモっていたので、本作品でもそれを採用したかったのでしょう。 しかし、個人情報の流出問題や、セキュリティ関連で色々と騒がれる昨今においては、社運を握る立場の人間が 20 年前と同様のアナログ的な方法で重要情報を管理している姿を見ると、この会社は本当に大丈夫なのだろうか、という不安が沸き起こってくるわけです。 いくらパスワードが覚えにくいからと言って、これではセキュリティどころの話ではありません。 451081845963 みたいな複雑な数字をパスワードにしていても、「仕事はイヤよごくろーさん」くらいのゴロでも作って覚えてほしいものです。 そのくせ、同僚を攪乱するためにログインパスワードを変更した後は、書き留めもせずに一発で思い出せるというこの矛盾。4. お茶の間劇場と化したお仕置きシーン 前作「ゴースト」で、同僚の手下がゴースト銀行員によって生前の恨みをぶつけられるのですが、目に見えない何かによって攻撃を受けるという恐怖が巧みに表現されていました。 本作でも、同僚の手下がゴースト女社長によってイターイお仕置きを受けるわけですが、道端に置かれた発泡スチロールの箱やごみ箱で一人勝手に転げ回っている姿は、恐怖を通り越してシュールというか、もはや 80年代に流行ったドタバタ系のお茶の間劇場のノリを思わせます。 空飛ぶ植木鉢は必見。 明るい繁華街という設定が、妙な面白さを誘うのでしょう。 最後に一回派手に転がって「ダーダこりゃ」と捨て台詞を言ってしまいそうな雰囲気まで漂っています。5. ろくろさえあれば、付け足しのエロロマンチックシーンは邪魔なだけ 前回の記事で、「ゴースト」のろくろシーンがエロいという話をしましたが、ろくろ回し=エロという図式が出来上がっている以上は、今回もろくろを回さないわけにはいきません。 しかし、設定の甘さが目立つのもこのシーンの残念ポイントでもあります。 前作では、結婚秒読みのカップルがろくろ回しで盛り上がるという設定だったため、それほどの違和感はありませんが、本作は、何となく互いを意識し始めた二人がろくろを回すという設定になっています。 それにしても、初っ端から二人の身体が密着してしまっています。 「おい、スンホン、やる気満々なのはわかるが、そんなに身体を擦りつけたらセクハラで訴えられるぞ。」 と要らぬ忠告をしたくなってくるのは私だけではないでしょう。 そしてろくろ回しスタート。 スンホンのやる気はさらにエスカレートしていきます。 ネチョネチョの粘土を両手で丸め、今度は親指をズブリ。 「力を抜いて、ゆっくり、ゆっくり」というスンホンのねっとりとした囁きと、執拗な粘土弄りは、観ていて背筋が寒くなってくるほどです。 前作は粘土弄りで盛り上がってしまい、作品をどうにかする自制心を完全に失っていた二人でしたが、本作では一応壺らしきものが完成しただけ、進歩したといえるでしょう。 あのシーンを見させられた後に、二人のブッチューが始まるわけですが、粘土弄りに比べれば可愛いものです。 その後のベッドシーンも遠巻きで暗く、しかも始終ぼんやりとしているので、盛り上がった途端につまらなくなるという、とても残念な仕上がりとなっています。 ただ、手っ取り早く女を落としたければ、陶芸を習って二人でろくろを回せ、というアイディアだけは世の中の悩める男性に提供できていると言えるでしょう。 あのシーンを観ていると、ロックンロール!という裕也の声が頭の中で聞こえてくるので不思議です。 どうでもいいトリビア1. 鈴木砂羽(悪い同僚)の韓国語の台詞は、演技用にしては意外と違和感がない。2. ソン・スンホン(韓国人夫)の鍛え上げられた筋肉は、日本映画の中ではなかなか拝めないレベル。3. 樹木希林の手が 20代でも通用するほど白くて綺麗で、手入れが行き届いていること。 文字数の関係でこれ以上は書くことはできませんが、少しでも次回鑑賞時の参考になれば幸いです。
2013.07.10
ライチャス・ブラザーズの名曲「アンチェインド・メロディー」が流れてくると、反射的にろくろ回しシーンが目に浮かんでしまうあなた、相当のゴースト好きですね。【送料無料】ゴースト ニューヨークの幻 スペシャル・コレクターズ・エディション【Blu-ray】 [...価格:2,682円(税込、送料込) デミ・ムーアの産後女優復帰作ということで、当時はかなり話題になりましたが、ママっぽさを一切感じさせないベビーフェイス、黒髪のショートボブで可愛いらしさ全開でしたので、結婚を間近に控えたカップルという設定にはかなりの説得力がありましたね。 1980年代中盤から1990年代初盤にかけては、「恋しくて」のメアリー・スチュワート・マスターソン、「プリティ・イン・ピンク」のモリー・リングウォルド、「アサシン」のブリジッド・フォンダあたりなども皆ショートボブで登場していましたので、ボブヘアラッシュだったとも言えるでしょう。【送料無料】80's MOVIES::恋しくて [ エリック・ストルツ ]価格:1,350円(税込、送料込)■ プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角ハワード・ドゥイッチ価格:780円(税込、送料別)【送料無料】【BD2枚3000円5倍】アサシン 暗・殺・者【Blu-ray】 [ ブリジット・フォンダ ]価格:1,500円(税込、送料込) 1990年の「ゴースト」公開時には、五人連れだって劇場まで観に行き、周りの観客がシクシクと感動の涙を流したり、とめどもなく流れ出る水っパナをズルズルと啜り上げたりしている中、爆笑が止まらなくなった心得違いな奴でございます。 地下鉄駅をさまようゴースト役を演じたヴィンセント・スキャヴェリのみが個人的なお気に入りな迷作映画ではありますが、「ゴースト/ニューヨークの幻」のロマンチックな世界観をブチ壊されてもオッケーという方のみ、読み進めていただければ幸いです。わかりやすいあらすじ 結婚秒読み、幸せいっぱい、夢いっぱいのエリート銀行員が不慮の事故に巻き込まれ、命を落としてしまう。 自分の亡骸を腕に抱いて泣きじゃくる婚約者の姿を見て、天からお迎えの光が差し込んでもまだ向こうに行けないと思った彼は、遺された婚約者をそばで見守ろうとする。 時が経つにつれ、何と自分の死は事故ではなく、仕組まれたものであることを知り、愕然とするゴースト銀行員。 さあどうする? いたって単純明快ですね。 それでは突っ込みどころ(見どころ)をご紹介しましょう。見どころ この映画を語るうえで、どうしても外せないのが、生前に邪悪な罪を犯した者は、死後すぐに黒い死神ゴブリンのような団体が連れにやって来るというシーンです。 善人は天国に行き、罪人は地獄に行くという概念を、わかりやすい形で表現したものですが、この部分がアニメーションだったため、それまでかなりシリアスな雰囲気だった映画の雰囲気が、一瞬にしてバラエティ番組の罰ゲーム風味になってしまいます。 罪人がギャーッと言いながら黒い団体に引っ張られていくところは、故・淀長さんの淡々とした「さいなら、さいなら~」を付けてお見送りしたい気分になってくるので不思議です。 天のお迎えシーンでも同じくアニメーションが使われているのですが、感動的なシーンにもかかわらず、笑いを誘ってしまうところがとても残念です。どうでもいいトリビア1. 飛行機墜落事故の映像がテレビに流れるシーンが、エリート銀行員の死が近づいている伏線となっている。 また、このとき彼がベッドで読んでいる本は、スティーブン・キングのホラー小説 Thinner (痩せゆく男)。2. 伝説のろくろ回しで使われたライチャス・ブラザーズの「アンチェインド・メロディ」の直前にチラっとかかっている曲は、同じく彼らの Since I Fell For You。3. 同じく、ろくろ回しのデミ・ムーアの手つき。粘土を両手でしごいて棒状にしている(次回記事に続く)。しかもこのときの彼女のろくろ衣装は袖なし白シャツ一枚で、ノーブラ、ノーパン状態。 後に、エリート銀行員を演じたパトリック・スウェイジが自分の俳優人生を振り返り、このろくろシーンが一番興奮したと語っていた。何となくわかるような気がする。4. しつこく、ろくろ回しから。粘土弄りで盛り上がった二人が、さあこれからというときの二人の手は洗ったように完全に綺麗。しかもシャツも綺麗になっている。「アンチェインド・メロディ」一曲分の長さでこれはありえない。 5. エリート銀行員が殺される直前に、恋人と見に行った舞台がシェイクスピアの戯曲「マクベス」。マクベスのストーリーにも亡霊が登場することで、エリート銀行員に間もなく訪れる死を暗示している。6. 手下の悪役として登場する黒人俳優(リック・アヴィレス)は、スタンドアップコメディアン。有名どころでは、この他にマイケル・J・フォックス主演映画「摩天楼はバラ色に」で、オフィスビルの内装担当者として、マイケルのオフィスのドアにネームタグを張るチョイ役で出演している(このときはセリフなし)。7. 黒いゴブリン団体のオオオ~~という低い声は、赤ん坊の泣き声を低速再生したもの。 次回も、腐ってもゴーストレビューになります。
2013.06.26
タイトルでネタバレ完了ですが、今回はイ・ビョンホン主演映画『純愛中毒』(原題:중독)をご紹介します。わかりやすいあらすじ 幸せな結婚生活を送る若い夫婦と、それを温かく見守る控えめな弟。 ある日、まったく同じ瞬間に兄は交通事故、弟はサーキットレース中に事故に遭い、二人揃って昏睡状態に。 そして、先に目覚めた弟には、なぜか兄の人格が。イ・ビョンホン/純愛中毒価格:2,940円(税込、送料別) この手の中身が入れ替わる映画やドラマは、今では大した目新しさはないですね。 その中でもこの作品に一番近いのが、広末涼子主演映画『秘密』になると思われます。【送料無料】【GWポイント3倍】秘密 デジタルリマスター版【Blu-ray】 [ 広末涼子 ]価格:4,047円(税込、送料込) こちらは、バス事故で母親と娘が入れ替わる設定ですが、結末まで鑑賞すれば、『純愛中毒』と基本的な設定が類似しつつも、最後のどんでん返しを楽しめるようになっています。 まあ、『純愛中毒』は、弟の綿密なストーカーぶりが気持ち悪いという点で軍配が上がりますが、イ・ビョンホンファンなら見逃さない映画の一つであることはほぼ間違いないでしょう。どうでもいいこぼれ話 当方は爽やか系俳優よりは、キム・ガプス、チェ・ミンシク、ユ・オソンなど、汚れ系俳優(どんな俳優?と思った方は早速グーグルで)の作品を好んで鑑賞します。 各俳優の個人的なおすすめ代表作は以下のとおりです。キム・ガプス王建(ワンゴン) (原題:왕건)(宗侃文臣役、つまり脇役で登場、というよりあまり主演作がない)[DVD] 太祖王建 第1章 後三国時代の幕開け 前編価格:17,199円(税込、送料別) 高麗による三国統一を描いた超長編大河ドラマ。 現地では、土日の夕食タイムに放送されていたこともあり、当時の人気ぶりは物凄かったです。 どれくらい凄かったかと言うと、隣の家からも、前の家からも同じセリフが聞こえてくるほどでした。 主人公の王建より、弓裔僧侶がどんどん狂っていくところがカルトがかっていて、興味のある方にはご覧いただきたいところですが、全編で200回分になるので、制覇するには相当時間を要することになりそうです。 王建好きが嵩じて、極寒の中、ロケ地まで足を運んだことがありますが、ちょうど別の大河ドラマの撮影中だったため、中を見学できなかったという悔しい思いをしました。チェ・ミンシクハッピー・エンド(原題:해피 엔드)【中古】◆ハッピーエンド◆出演:チョン・ドヨン、チュ・ジンモ、チェ・ミンシク◆DVD◆1439価格:1,580円(税込、送料別) 妻を昔の恋人に寝取られてしまった夫の復讐劇。 ストーリー的には何の捻りもありませんが、チェ・ミンシクの怪演が見ものの作品です。 チェ・ミンシクは、劇中では激しい役柄、ダメ男をはまり役で演じていますが、テレビのトークショーに出演すれば、質問されるたびに赤面してしまう茶目っ気たっぷりのヲッサンですので、そのギャップにハマる人たちも多いようです。ユ・オソン友へ チング(原題:친구) 【中古】洋画DVD 友へ チング【10P06may13】【fs2gm】【画】価格:1,270円(税込、送料別) ジャケットの上部に写っているのが、日本でもファンの多いチャン・ドンゴンですが、下部のいかにも極悪人の人相で煙草をふかしているヲッサンがユ・オソンです。 チングというと日本語ではちょっと変な響きですが、漢字では「親旧」と書いて友達を意味します。 字面をご覧いただくと、何となく親近感がわいてくるのではないでしょうか。 プサンの中学時代からの仲良し 4 人組みが、成長していく過程で対立する地元ヤクザの組員となり、抗争に巻き込まれていくという、実話に基づいた映画です。 実はこの物語の真相は未だに闇の中である、というところが話題を呼びました。
2013.05.05
多くの人にとっては今という瞬間が最も大切なわけですが、その今でさえも、過去にたくさんの選択を繰り返してきた結果であることがわかります。 たとえば、今日の晩飯は何にしようと考え始めたときから思考は夕食のメニュー選択へと向いていきますし、今あなたがどこかの会社の社員だったり、どこかの学校の生徒だったりするのも、今あるべき姿を過去に選択しているわけです。 しかし、皆さんもご存知のように、今までのすべての選択が自分にとってベストだったとは言い切れないものです。 現時点で何らかしらの不満を抱えている人は、過去の別の選択肢を探っては、その呪縛から逃れられないのかもしれません。 ああ、あのとき、もう一つの道を選んでいたら、今の自分はこうはなっていなかっただろう。 しかし、あの時間は二度と戻ってこない……。 選択を誤ったために、一生癒えることのない傷を負ってしまった一人の女性を描いた映画、それが今回ご紹介する Irréversible(邦題:アレックス)です。【10%OFF】送料無料!!新品未開封【DVD】アレックス プレミアム版モニカ・ベルッチ [PIBF-7570]...価格:4,442円(税込、送料込) 以前当ブログでご紹介した『Enter The Void』でお馴染み(?)のギャスパー・ノエ監督による 2002 年製作映画となりますが、こちらは『Enter The Void』よりはるかに暗く、そして最後は絵画のような映像美と、形容しがたい後味の悪さが一緒に押し寄せてくる作りとなっています。目を見張る映像美だが、下品丸出しで後味が最悪な映画の話(2012/03/01) ギャスパー・ノエ作品をご覧になったことがない方でも、デヴィッド・リンチ監督作品をお好きであれば十分楽しめるストーリーになっていると思います。 冒頭から暴力、ハードゲイ大集合、婦女暴行など、目を覆いたくなるような映像が続きます。 そして無理やりなのではないかと錯覚させるほど、爽やかな映像に彩られたエンディング。 一見、何の脈絡もない生々しいシーンを適当に繋ぎ合わせたようになっているのがこの映画の特徴であり、『Enter The Void』でも同様の手法が取られていることから考えてみても、こういったストーリー構成がギャスパー・ノエの得意技とも言えるのでしょう。 この映画を理解するためのヒントは、冒頭から逆回しのエンドクレジットで始まること、そして一番最後に以下のフレーズが裏返しで出てくることです。 LE TEMPS DETRUIT TOUT(時間はすべてを破壊する) デヴィッド・リンチ監督作品に十分毒されてきた映画好きなら、一回通して観ればこれがどういうことなのか、あまりに単純明快なカラクリであることはお分かりいただけるでしょう。 しかし、悪夢のフラッシュバックと考えれば、出てきた順に観ていくのが最も自然な鑑賞方法とも言えるのかもしれません。 これ以上のネタバレはここでは避けますが、この映画から醸し出されるメッセージは、現実は非情であり、残酷であり、そしてときには美しくて幸せをもたらすこともあるということでしょう。 毎日テレビやネットから流れてくるニュースの殆どは、楽しい内容とは程遠いものです。 しかし日々、世界中で起こっている災難は、実は決して対岸の火事ではないのです。 せめて映画の中だけでも辛い現実を忘れさせてくれよとお願いしても、そうは問屋が卸さないのがギャスパー・ノエの映画観なのかもしれません。 『Enter The Void』は購入して今でも楽しく鑑賞していますが、本作品は所有しているだけで胸糞が悪くなりそうなので購入を断念しました。 まあ、それがギャスパー・ノエの望むところなのかもしれませんが。 しかし、こういう映画は一部のウケは良いでしょうが、空前の大ヒットには繋がらなさそうなので、いつか彼が金に目が眩んで魂を売る気になるのではないかと、今からヒヤヒヤしております。おまけ: 主人公のアレックスを演じたのがモニカ・ベルッチです。 マトリックス・リローデッドにも出演しましたので、記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。 参考画像はこちら。 商品検索でこちらがヒットしたのでご紹介していますが、この映画は観たことはありません。 今のところあまり観る気はしないのですが、いつかレンタル屋で見かけたら借りてみるかもしれません。【送料無料】【GWポイント3倍】モニカ・ベルッチ主演 ダニエラという女 [ モニカ・ベルッチ ]価格:3,591円(税込、送料込) それにしても、このような美女にあそこまでやらせてしまうとは、ギャスパー・ノエはどこまで鬼なのでしょうか。
2013.04.30
今回は 1983年製作オランダ映画『ザ・リフト(De Lift)』と、2001年製作米国版映画『ダウン』の二本立てでご紹介します。 これらはどちらもオランダ映画監督ディック・マースによるもので、後者がハリウッド版リメイクとなっています。 毎日何気なく利用しているエレベータに、突然意思が宿り、好き勝手に行動をし始めたらどうなるでしょうか。 日本は地震大国ということもあり、震災によってエレベータが急停止したり、ドアが開かなくなったりして、恐怖を味わった方も意外と多いと思います。 そんな恐怖のシミュレーション体験とともに、有り得ない仕掛け満載でお送りするホラー映画、それが『ザ・リフト』です。 楽天を調べてみたところ、邦題は『悪魔の密室』のようです。 邦題もホラー好きの心をくすぐりますね。 因みに、当方が本作をビデオで観たのは高校生の頃でしたが、英語版タイトルは 『The Lift』のほかに『Going Up』という風になっていたと記憶しています。新品北米版Blu-ray!【悪魔の密室】 The Lift: Collector's Edition [Blu-ray/DVD]!価格:5490円(税込、送料別) (2019/2/16時点)楽天で購入 ホラー映画をあまりご覧にならない方でも、少しでも興味を持っていただけるように、あらすじに影響しない範囲で楽しめそうなポイントをご紹介します。おもしろポイント『ザ・リフト』編エレベータ制御システムの委託先となっている多国籍企業の社名がライジングサン。社名からして、まさかの日系企業。ライジングサン社は多額の賄賂と産業スパイによって成長したという噂の絶えない、いわゆるブラック臭がプンプン漂う企業である。その噂を不動のものにしたのが、ライジングサン社の受付の壁に飾られているヤス(中曽根康弘)の額縁入りの写真。つまり、前回の記事で軽く触れたハリウッド映画『ライジングサン』が公開される10年も前に、日本の政治家の汚職体質と日本企業を間接的にバッシングしていた。 主人公のエレベータ技師の名前が Felix ということもあり、彼の社用車のフロントミラーにはフィリックスのぬいぐるみがぶら下がっている。『ライジング・サン』と聞いてすぐにスクールウォーズを想像した人は、恐らく大映ドラマシリーズにハマったクチ。 さて、いよいよ『ダウン』のご紹介ですが、冒頭で申し上げたとおり、同監督によるハリウッド版焼き直し映画のため、旧作をご覧になった方は同様のシーンの連続に退屈する方もいらっしゃれば、旧作の間延びした感じに比べると、スピード感やグロ感がアップしたことで新鮮さを感じる方もいらっしゃるでしょう。 しかし、根強い B 級感が払拭できない作品には変わりないため、1984年に旧作がアヴォリアッツ映画祭グランプリを受賞したような奇跡は『ダウン』では起こりませんでした。 スクリーム、ファイナル・デスティネーション、ソウなどのスピード感に優れ、SFX もふんだんに盛り込まれた絶叫系映画に慣れきった時代では妥当な評価と言えるのではないでしょうか。おもしろポイント『ダウン』編 どちらにもチープエロが最初にはさんであるのは、監督の趣味っぽい気がしてなりませんが、その代わり本編にほとんどエロがないのは好印象です(旧作は中盤に少しだけエロが入るがポロリはない)。 一番の違いは、旧作はエレベータオタクの主人公が家庭を崩壊させてまでも職人魂を発揮したのに対し、リメイク版は存在感が薄いヘタレ男が、女ジャーナリストに尻を叩かれながら次第に責任感を発揮するように成長するところでしょう。映画タイトル『ダウン(DOWN)』は、旧作『De Lift』の英語版サブタイトル『Going Up』と対になっている。暇な人は、旧作と新作で同じ構図のシーンの数がいくつあるか数えてみよう。この映画が公開されたのが 2001年で、舞台となるのがミレニアム・ビルディング。ちょうど Y2K 問題が一番騒がれていた時期である。Y2K 問題はミレニアム・バグ問題とも呼ばれ、西暦を下二桁で管理していたシステムは、2000年~2001年の間にカレンダーや時計がうまく機能せず、これらに依存するシステムが誤動作を起こすであろうと言われていた。ミレニアム・バグ問題に興味のある方はこちら米国内だけで、毎年183万2千人もの人がエレベーターという密室に閉じ込められるという事実。女性ジャーナリスト役は、旧作は熟女風のヴィレケ・ファン・アロメーイに対し、リメイク版は若手のナオミ・ワッツが演じている。ナオミ・ワッツはこの頃が一番輝いていた。エアロスミスの Love In An Elevator が挿入歌として使われている。これは『ダウン』とともに、旧作『De Lift』の冒頭部分のチープエロに微妙につながっていたりする。まちがった非常ボタンの使いみち。
2013.02.12
海外映画による日本バッシングは、マイルドなものから露骨なものまで多種多様なものがありますね。 外国(人)や外国製品を嫌う傾向は誰にでも少なからずあると思います。 それは愛国心の裏返しであるとともに、優越感を得るのに手っ取り早い方法が、まずは他者を貶めることにあるということでもあります。 本土の人間なら何とも思わない一言であったとしても、バッシングの槍玉に挙げられた方としては、その映画に対する期待感を一気に削がれた気持ちになるものです。 それならいっそのこと、バッシングを前面に押し出してくれちゃった方が、視聴者としてはむしろ潔ささえ感じるかもしれません。 日本バッシング映画といえば、日本製の高層ビルで発生した殺人ミステリーを扱ったライジング・サン、真珠湾攻撃を題材にしたパールハーバー(史実という点を抜きにしても)あたりがかなり露骨ですが、ハリウッド映画だけあってどちらも突っ込みどころ満載です。【Blu-ray】ライジング・サン(Blu-ray Disc)/ショーン・コネリー [FXXJ-8520] シヨーン・コネリー価格:1,490円(税込、送料別)ベン・アフレック/パール・ハーバー(Blu−ray Disc)【LPBDハ/B0221】価格:1,750円(税込、送料別) マイケル・クライトン作品としてはライジング・サン、ジュラシック・パーク、アンドロメダ・ストレイン、スフィアあたりの原作をよく読んでいましたので、当然ながらライジング・サンもかなり期待を込めて観たわけですが、ショーン・コネリの泣きたくなるような日本語には物凄くがっかりさせられました(彼は 007 で思い切り前礫を踏んでますね)。 一癖も二癖もある日系人エディ役のケリー・タガワの演技が抜群だっただけに、ショーン・コネリの演技の甘さが際立つ結果となってしまい、本当~に残念な作品となっております。 因みに、ケリー・タガワは独特の人相ゆえに悪役を演じることが多いですが、完全なバイリンガル俳優のため、日本語インタビューもソツなくこなしますし、脇役に徹することのできる類稀な俳優だと思います。 脱線ついでにもうちょっと続けます。 ライジング・サンではケリー・タガワの流暢な日本語をあまり聞くことはできませんが、工藤夕貴主演の Picture Bride では思いっきり喋りまくっていますので、興味のある方は是非一度ご覧になってみてください(作品は実話ベースだけに見応えはあります)……と書いたのは良いのですが、残念ながら楽天での取り扱いがなかったため、以下にIMDb リンクを張っておきます。[IMDb] Picture Bride [外部リンク] 偏った日本バッシング作品が次々と輩出されていた中で、ガン・ホーやミスター・ベースボールあたりは、日本の企業精神や日本文化に対するオマージュ的作品になっていますので、日本人として一見の価値はあるでしょう。ガン・ホーマイケル・キートン価格:1,990円(税込、送料別)【送料無料】ミスター・ベースボール [ トム・セレック ]価格:2,646円(税込、送料込) ミスター・ベースボールは軽いタッチのラブコメディ映画ですが、高倉健が出ているというだけで必見ですね。ブラックレイン同様、彼は日本映画のみならずハリウッド映画も外しません。 ただ、内容的にはやはりガン・ホーが個人的に好みですので、いつか機会を見てレビューしてみたいと思います。 ここまで書いておきながら、本当にレビューしたい映画作品の話は次回になります。 今回の記事はその前振りということで、軽く流していただければ幸いです。
2013.02.11
子供の頃に怖い映画を観てしまい、ずっとそれが忘れられないという方は多いと思います。 私が子供の頃はまだホラー映画、グロ映画の規制が今ほど厳しくはなかったため、例えばかの有名なイタリア映画「食人族」の宣伝として、串刺しになった全裸の女が新聞の紙面一杯を飾っていたこともありました(「食人族」はホラーと言うより似非ドキュメンタリー映画として良く纏まっていると思いますが)。 ちなみに、食人族はサントラが美しいですし、先住民の平和と秩序を乱すとどういう目に遭うのかというメッセージ性もあり、全体としては悪くない映画だと思います。 グロさばかりがフォーカスされてしまったのはとても残念です。 1970年代、80年代はイタリア、アメリカ、フランス、スペインのホラー・スプラッター合戦が繰り広げられていましたので、過激な描写が含まれる映画が次々と輩出されていましたね。 ゾンビ物や死霊物が色々なパターンで映画化されたのもこの頃ですから、怖い物見たさでこの手の映画を家族連れで観に行った方もいらっしゃるのではないでしょうか。 それでは今回は、私が子供の頃にビデオを借りて強烈なインパクトのあった映画を一つご紹介することにします。ルチオ・フルチのザ・サイキック ルチオ・フルチと言ったら、グロ系映画を想像する方も多いかと思いますが、こちらの映画はグロ度はかなり低めで、最後まで息の抜けないミステリー作品です。 ちなみにイタリア語原題は Sette Note in Nero(黒い七音符)、英語版タイトルも同様に The Psychic で、副題に Murder to the Tune of the Seven Black Notes (殺しの黒い七音符の調べ)とこれまた余計な情報が追加されています。 これでは、観る前から七音符のメロディーが鍵となる殺人事件を超能力者が解いて行くストーリーであることが丸バレというものです。 もう粗筋を述べてしまいましたので、ストーリーそのものについてはこれ以上触れませんが、この映画は今となっては見どころ盛りだくさんのお得映画となっております。見どころ 1:チープすぎるプチグロ 母親が崖から飛び降り自殺を図るシーンは、ばっちりマネキンが使われています。 コマ送りで止めて見ると、腕の所なんかは空気で膨らませる人形のように縫い目みたいな物まで見える始末です。 これだけでも十分にチープなのですが、顔の皮が崖に擦れて剥けるところの気持ち悪さがプラスされていますので、一見の価値はあります。 特撮は確かに進化したでしょうが、CG なんかを使わなくてもできることは沢山あったのだと改めて教えてくれるシーンですね。見どころ 2:主人公 Jinnifer O'Neil の妖艶な美しさ 主人公ヴァージニアを演じる Jennifer O'Neil も妖しさ漂う美しさで、話し方から仕草の一つ一つが何だかやたらとエロっぽいです。 さすがに Cover Girl 化粧品の専属モデルを 30 年間勤め上げた揺るぎのない美貌と、 8 回の結婚歴を持つ魔性の女というだけのことはありますね。見どころ 3: ファッション 奇抜なファッションセンスもこの映画の特徴です。特に、シャツと同じ柄のスカーフを巻くのは組み合わせ的にはアウトなのですが、何故か彼女は見事に着こなしています。 これこそ、モデルと一般人の差を見せ付けられたような気がする瞬間です。 あとは婆さんの服のセンスもすごいです。 真紫のカツラに真緑色のトレンチコートで登場です。 現代なら、監督がゴーサインを出してもスタイリストが慌てて止めに入るレベルの組み合わせですね。 他にもなんちゃってポイントはいろいろとありますが、その中からいくつかをご紹介します。【目を皿のようにして見てみよう!】1. 冒頭の母親がイギリスで自殺を図った時刻が 11時45分で、イタリアにいる娘が母の自殺を目撃するのも 11時45分。だが、イギリスとイタリアでは 1 時間の時差がある。本編では、主人公は過去を透視できると思い込んでいるが、幼少期のこの一時間の差の体験が、一時間後、つまり未来を透視する能力が自身に備わっていたことを暗示している。2. 殺された雑誌モデルの少女がパンツを履いてなかったので、ミニスカートの中が丸見えだったと、いかにもゲスっぽい理由づけで彼女を目撃したことを思い出すタクシー運転手。3. JITAN という象も死ぬ程の強さの黄色い紙巻煙草を美味そうに吸っている義姉。56人の男と付き合った経験があるという時点で胡散臭さ倍増。しかもそのずっと後にはヴァージニアも義姉から貰った JITAN を吸っている。4. 当時の歯科技術。登場する女優の歯を見てみると、現代のハリウッド女優と比べると透明感が無い。恐らく当時の被せ物はレジン中心で、現代のものより大きめだったと思われる。 個人的な印象ですが、イタリア人監督は赤の使い方がとても上手だと思います。 先日 Voyager さんのところで紹介されていたサスペリアもイタリア映画で、寄宿舎の内装には赤がふんだんに使われていましたし、ホラーシーンもまっ赤っ赤。 こちらはホラーというよりはサスペンス要素が強い作品ですが、顔の皮が剥けるシーンや、死体が出てくるシーンはやはり真っ赤っ赤です。 当時は血を連想させる赤色を作品の至る所に散りばめることによって伏線を張りつつ、緊張感と恐怖感を募らせていたのでしょう。 今のようなホラーの定番色である錆色、ヘドロ色、ウン○色などは当時では NG だったのかもしれません(あくまでも個人的な憶測です)。おまけ: 米国版のカバージャケットは H. R. Giger の作品ではないかとかなり確信を持っているのですが、ネットで調べてみたところ、私と同意見の人が何人かいるだけで、真相は定かではありません。 タラコ唇な感じが、EL&P の Brain Salad Surgery(恐怖の頭脳改革)のジャケット画像の唇とウリ二つなのがお分かりいただけるでしょう。 このアルバムを持っていますが、全体の出来栄えとしては安っぽいゲーム音楽のようで個人的には残念な感じです。【送料無料】エマーソン/恐怖の頭脳改革 【CD】価格:2,500円(税込、送料込)H.R. Giger 公式サイト(英語) [外部リンク] おまけ 2: この映画が公開されてから四半世紀後に Kill Bill で黒い七音符を聴く事になるとは夢にも思っていませんでした。ウィークエンダーテーマソング(笑)と同じく、こちらでも鳥肌が立ちました。
2012.08.22
誰でも楽しめる作りなのがモットーなのか、ハリウッド映画は分りやすいプロットの作品が多いですね。 勧善懲悪物、下克上物、お説教物、実はいずれも苦手な部類だったりします。観る前から結末がわかってしまうためです。 メタルヘッドと聞いてもあまり期待はしていませんでした。 有名俳優がへヴィーメタルを気取る映画はスパイナル・タップを除き、ハズレが多いためです。 スパイナル・タップは別格のおもしろさですけどね。 メタルヘッドもメタル音楽の使い方に関しては大ハズレの部類に入ると思います。 映画はメタリカの Motorbreath で始まるところはポイントが高いと思いました。 サウンドトラックには全盛期のメタリカ楽曲がふんだんに使われていますので、Master of Puppets、... And Justice for All あたりのアルバムを聴きまくっていた世代の方は、鳥肌が立つ瞬間が何度かあると思いますが、ファンでも何でもない方にとっては、恐らく雑音にしか聞こえて来ないでしょう。 主人公のヘッシャー (ジョセフ・ゴードン=レヴィット) は確かにメタルをガンガン流し、普通では考えられない行動の数々をやらかしますが、ギターを演奏することもなければ、ステージで歌うこともありません。 この時点でメタルヘッドを謳い、別室でギターを練習しているという設定(映像なし)はメタルヘッド(メタル狂)映画としてはアウトだと思います。 ギター演奏してみろ、演奏しないならギターを振り回しながら周りの物を手当たり次第壊してみろと言いたくなってくるのがメタル好き視聴者の素直な感情というものです。 ヘッシャー自身についてですが、本編では日常を壊す存在として描かれています。 いじめられっ子少年の家に突然居座り、パンツ一丁になって洗濯機を回し始めたかと思うと、テレビ番組がつまらないと言っては、ポルノチャンネルに勝手に加入したり、いじめっ子の車に火を放ったりとやりたい放題です。 映画の八割くらいは、悪ガキのように暴れまくるヘッシャーの姿を周りの人間が呆気に取られて見ているだけですが、全編を通してブレてないのは祖母だったりしますので、祖母とヘッシャーのつながりに注目しながら観ていれば大切なものが見えてくるかもしれません。 失った人を取り戻すことはできない。いずれは別れが来るのだから、毎日を何となく生きるな。 たとえ何かを失っても、その喪失感に溺れて屍のように生きてはいけない。もっと刹那的に生きろ。 そんなメッセージを感じ取れたとき、まだ何も始まっていないが、こうしてはいられないという気持ちが湧き起ってくるのかもしれません。おまけ: ヘッシャー役のジョセフ・ゴードン=レヴィットはコメディ番組 3rd Rock from The Sun で嵌ったクチです。 子役時代からそのずば抜けた演技力で数々の難しい役をこなして来ていることで有名な俳優ですが、そろそろ普通の役を普通に演じるところも見てみたいですね。 普通を自然に演じ切るのは意外ととても難しいような気がします。 フランス語もできるので、フランス在住のサラリーマンの日常なんかを演じたら、さらにインパクトがアップするのではないかと期待しています……ってそんなストーリーの需要が果たしてあるのか。 3rd Rock from The Sun はかなり有名な番組だと思っていましたが、どうやら日本では通常販売されていないようですね。輸入版のみの扱いのようです。 3rd Rock の Rock は惑星を面白く言ったもので、太陽系の 3 番目に位置する惑星、つまり地球を示しています。 地球征服を企てたとある星から、リサーチのために派遣された三人の宇宙人 + 通信機(人間に見える)が人間に成りすまし(しかも人間の姿では一番若いジョセフ・ゴードン=レヴィットが実は最年長の情報員)、地球生活を体験しながら人間を理解して行くというストーリーです。
2012.08.20
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