ある地方裁判所の法定内、物音ひとつせず、静まりかえっている。傍聴席も依頼者のT
さんと私だけ。本日は第三回目の過払い訴訟の期日。他の事件は入っていないようだ。
ところが、定刻になっても被告A社の代理人弁護士が出廷してこない。
「おかしい!」「忘れているのか!」「それなら好都合だが!」
裁判官も書記官も無言のまま、時間が過ぎていく。
5分程経過して、ようやく「被告は来ないようですから始めましょう!」と裁判官。
Tさんが原告席に座る、そのTさんに向かって「被告からは新たな主張も出ていませんの
でこれで結審しますが?」。Tさん、打合せ通り「はい」と頷く。
と、その時、入り口のドアが激しく開き「遅くなってすみませんでした!!」。
慌てたA社の代理人登場。すぐに、被告席に座り、やり直しとなる。
裁判官 「前回の被告の提案は0百00万円でしたね?」
A社代理人 「いゃ・・、原告の希望通りの△百0十万円で会社から承認をとり
ました。」 「ただ、支払時期は、通常でしたら5月ですが、何とか4月00日
に一括でさせてください」
裁判官 「原告どうしますか」
Tさん 「それで結構です」
どうにかA社も判決を逃れ、利息込みの満額(端数カット)で和解が成立した。
もし、Tさんが4月支払に「NO」を出したらどうなったのだろうか?
盛んにA社の窮状を訴え、精一杯の和解案だと提案した相手代理人、
「3月支払い」のカードも持っていたかもしれない。
しかし、急いでいない、そして場慣れしていないTさんに、そこまで求めるのは酷
だろう。
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