青空と木洩れ日

青空と木洩れ日

2022.06.03
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テーマ: 在宅介護(1573)
損保美術館の『シダネルとマルタン展』に
行ってきました。

『最後の印象派、二大巨匠』と名打たれているように
シダネルもマルタンも西洋では当初から
人気を博していた画家で、
今でも、特にシダネルの絵は
あちこちの美術館で見かけますが、
日本では一般的には
あまりなじみのない画家のようです。

それは、絵画を日本まで運ぶためには
膨大な労力と費用とバックアップを必要とするため
誰でも知っていてひれ伏すような
「名画」でなければならず、
結果一般的な知名度に
大きく偏りが出るのだと思います。

私も「シダネルとマルタン展」とだけ聞いたら
ちょっと考えて、
ああ~優しい白っぽい風景画のシダネルと
国立西洋美術館の噴水のマルタンか~
位までしか思いませんでしたが、
フライヤーに載っていた風景画に惹かれて
行くことにしました。

場所は近未来的なビルの狭間にこじんまりと建つ
損保美術館です。

もともとは安田火災の
プライベートコレクションが前身の
社屋内の美術館なので、
展示品数も規模も
一般的な美術館より
大分控え目になるのは予想して
あんまり期待しないようにしよう、
収蔵品も見られるしと思いながら、
誘った知人ともそう話しながら行きました。

新宿の喧騒を潜り抜け、
狭い殺風景なエスカレーターを黙々と乗り継いで
4階まで登ると、
シンプルで白いだけの展示会入口に出ます。

そこから展示会場に入った途端、
草原をさ~っとわたる春風に包まれました。

目の前には野原が広がり、
白いドレスの女性が
片手に斑入りの赤いチューリップを掲げ、
首にネックレスのようにかけた花輪からは
紫と黄色のパンジー、白いひなぎく、
赤いひなげし等が舞い散りながら
女性を包み込み、野原に広がっています。

奥には女の子と男の子が
野原に座りこちらを見ています。

女の子はピンク、男の子は青の帽子を被り、
同色の暖かそうな長袖の上着を着て
満ち足りたような様子です。

野原に遊ぶ子供達が
春の女神の巻き起こした春風に
気が付いたところなのでしょうか?

幸せそうな明るい絵に
引き込まれて見入ってしまいましたが、
ふと、絵の周囲の壁が
野原の淡い明るい緑色の近い色で
幅広く塗られていることに気が付きました。

それで野原に広がりが出て
絵の明るい雰囲気も引き立っているんですね。

面白いことに、たまたま私も
ふわっとして裾が広がった綿ローンの
明るい薄緑のワンピースを着ていたので
野原の延長上になり、
絵を見ている側も絵と世界を共有するという
面白い発見がありました。

入ってすぐ、1枚目からぐいぐい引き込まれ
これはキュレーターが素晴らしそうだなと
ぐんと期待があがりながら、
これまた効果的なのですが
1枚目の絵からは見えない
展示会場の中へ入りました。

ところで
この絵の日本語訳は『野原を行く少女』ですが、
原語の『Belle jeune fille (以下略)』のfilleは
少女とも若い女性とも訳せる言葉で
手前にjeune(若い)とついているので
少女と訳してしまっているのだと思いますが、
あえて若いとついているのは子供でなく女性だからで
描かれているのも明らかに若い女性です。
『手に一輪の花を持ち、野を歩く美しい若い女性』が
原題の直訳になり、よって
『野を行く若い女性』とか『野原を行く美しい娘』とか
『花を持つ野の乙女』とかが適訳かと思われます。

この『手に一輪の花を持ち、野を歩く美しい若い女性』
という原題からして、この女性は
春の乙女(女神)なのではないかなと思いました。

また、原画では気が付かなかったのですが、
絵葉書等の印刷物等を見ると
女の子と男の子の横に
もう一人描かれていたのを
消したように見える影があります。

とっても不思議なんですが、
絵画の印刷物って
色合いが上手く出ないことはよくありますし
色合いどころか
原画とは全く違う雰囲気の絵に
なってしまっていることもよくあります。
(この話はまた別にします)

なので、これもたまたまそういう影に
見えてしまっている可能性もありますが
もともとは3人モデルがいたのを
全体の雰囲気から
2人にしたのかもしれません。

もしそうだったら構図的にも2人のほうが
すっきりまとまっているようだし
女の子と男の子=子供達と春の女神という
コンセプト(だったとしたら)にも
合っているように思いますが
これは絵の事は全く何も知らない素人が
ふらっと訪れた美術展で
あれこれ楽しく見て考えた、ただの私見なので
本来の絵の趣旨と大幅に外れている可能性が
常にございますので、ご注意ください。

印象深かった絵は他にもいろいろあるので
ゆっくりと時々追加していきます。

下:
1年前、偶然見つけてこんな本はなかなかないと
すぐ購入しました。

季節ごとの美しい366の風景画を集め
わかりやすく簡素な説明をつけた
ロマンチックな画集です。

シダネルの絵はこの本の世界と合うので
沢山入っており
マルタンの絵も少しはいっています。

毎日1枚づつ見ても
ぱらぱら見るだけでも
毎回違う出会いがあって
至福の時間が楽しめます。

表紙の絵がお好みの方にはお勧め。
どんな年齢層にもぴったりなので
お子さんからご年配のかたまでプレゼントにも
喜ばれると思います。

装丁にも凝っていて、
本の「天」「地」「小口」という
閉じた時ページが重なってできる厚さの部分が、
普通は紙を裁断した白地が出ているだけで
普段なら何の注目も浴びない場所なんですが、
この本は淡いパステルの虹色を出しているんです。
そういう所も癒しを感じます。

すごく通な、本格派な人には
向かないかもしれませんけど。

シリーズとして出ていますが、
1作目のこの本が一番ほっとできます。
でもいろいろ続いて好みのものが出たら
追加していきたいので楽しみにしてます。







画像をクリックすると詳細が見られます。





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Last updated  2023.10.30 06:40:20
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