青空と木洩れ日

青空と木洩れ日

2024.01.25
XML
映画好きの友人に誘われて
役所広司さん主演の映画という位の知識だけで
パーフェクト・デイズを見に行きました。

カンヌ国際映画祭で主演男優賞を取られたので
ニュースか何かで見て知っていたのだと思います。

邦画って、独特の「間」や
音響にかすかな雑音の入った静があるものが多くて
そこに違和感を感じることが多いんですけど
その「間」がとてもしっくりして違和感がないので
邦画が苦手な方にもお薦めです。

お薦めしないのは
ハリウッド系の派手なアクションや戦いや
お色気シーンが入ってこそ映画!という方ですね。

あと、いつも人と比べて勝ちたいとか
成功してこそ人生!
みたいな人には響かないかも。

最近の映画ってIT技術とかSF風とか
音響もビジュアルエフェクトも最大限にしたものが
主流になってますけど、それとは正反対の映画で、
なんだか白黒映画だったような気さえしてきます。

見た後、内容は全然違うけど、
なぜか現代の『東京物語』のようだなあと思ったら
監督が40年も前に
小津安二郎についての『東京画』を監督されていた
ドイツのヴィム・ヴェンダース監督だったと後で知りました。

どうりで、なんか妙に邦画らしい邦画だけど
同時に妙に海外っぽい視点なんですよね。
日本がとても好きな外から来た人が着目するような
竹箒の音とか、サッシの窓とか、布団とか、蛍光灯とか
文庫本とか古本屋とか神社とかそこでお弁当食べる人とか。

住人の方向性が全然違うけど、物質的な視点からみると
『方丈記』みたいな感じもしました。

具体的なストーリーは書きませんが、
この映画、木洩れ日の映画なんですよ。
木洩れ日の幸福感がわかる人の話なんですね。
それって、私のブログと同じだなって
ひょんな偶然の一致があったので嬉しいですし
現代人に必要な事、日本人に大事な事の神髄が
描かれているので、老若男女問わずに一押しなんですが、
後半のほうで妙にまとめに入った感があって
どうかなあと思うことが2.5点だけあったので
そこだけ書いておきます。

まず、スナックのママのあれこれはいらないかも。
あんなに魅力的な方でママをやってらっしゃる、
もうそれだけでいろいろ察せます。
謎の部分があってこそのスナックのママだと思うし、
その後の話も謎でいい。
何にもない方がかえっていいのに、
元旦那が都合良く主人公を見つけて
(広い東京の下町、普通見つけられないと思う)
あれこれ都合の良い展開を言わなくていいと思った。

もう一つは主人公の実家の財力がわかる展開。
ここもいらないと思いました。
結局この人、甘えがある環境なんだな、
困ったら家族もお金にも困らないんだになっちゃう。
こういう生活の人はもっとギリギリのところで
頑張ってる人が多いので、
そういう人を幸せに描いてほしかった。

あ、しかし主人公が受け取るお菓子は
ぱっと見えた袋から、あれじゃない?と思えて
懐かしくて注文しちゃいました。
安定の美味しさです。
下にリンク入れときます。
でも映画のは違うところのかもですけど。

主人公がお菓子を受け取る時、
ちょっとはにかんだようなほっとしたような、
この主人公の心が少年のようなところが出ていました。

残り0.5の小さな気になったことは
細かい事が丁寧に作りこまれていて
一つ一つに意味を持たせている映画だから
そういうところが気になったのですが、
きれい好きな主人公、洗濯は週一なのに
清掃の仕事着を寝室で着るかなあってことです。

主演の役所広司さんについて、
とても人気がある、ずっと2枚目俳優でいらっしゃる方
ということしか知らなかったのですが、
とても自然に演じられていたのは、実力なんだなあと
思いました。

主人公が行っている掃除方法は
多分、30年位前に羽田空港の掃除を担当して
ものすごく綺麗な空港によみがえらせた
有名な清掃担当の残留孤児2世、新津春子さんのやり方を
お手本にしていると思います。

出られている方は皆さん、その分野の実力派です。
特に田中泯さん。
ホームレスの自由・夢・幸福・狂気・危うさ・儚さ・悲しさ
が静かに表現されている。

面白いなあと思ったのは
古本屋の店主。
本が好きすぎて、その良さがわかる人に
自分の気持ちを一言言いたいんだけど、不器用すぎて
一方的な書評のようになってしまう人、いるかも。
マニアックな中古レコード屋さんとかにも。

ちなみにここで出てくる音楽も本も
結構マニアックなのが多いです。

石川さゆりさん演じるスナックのママが歌うのは
マニアックでもよく知られている曲ですが、
聴いたことないような曲もいろいろ出てきます。

幸田文の『木』も絶版と言うこともあって
他の著名な作品ほど知られておらず
読んでみようと探したら、早速中古市場が反応していて
27000円とかになってました(‼)
アカデミー賞とか取ったらもっと上がるのかも・・・。

まあね、こういう事でもないと古本屋さんをやっていくって
簡単にできることじゃないですからね。

(今見たら、増刷されたのか、500円台の新品が!
しかし、他店では30000円超えで出てます。
増刷されたのがわかったら急遽価格が変わるかもですが
今の時点ではそんなすごい差で出ています。
下にリンク入れときました。
売り切れ前に早速定価のほう注文しときました。)

幸田文はとても読みやすいし、文章がきりっとして
美しいので、これを機会に皆が読むようになれば
日本語の観点からも素晴らしいことだと思います。
・・・ってどこから目線なんだよ、って事ですが・・・。

この映画、幸田文の文章と通じるものがある映画でも
あります。

そういえば、高齢になった母が読書できた最後の方ですが、
私の家に滞在中、読みかえしてサイドテーブルに放置していた
幸田文の文庫本を「これとっても良い本だから、借りていい?」
というので、「何度か読んでるから返さなくていいよ」と
持っていってもらったことがあります。
母は幸田文どころか露伴も代表作はほぼ読んでいたはずですが、
高齢になるとエッセイが読みやすいし、
やっぱり良い本は何度読み直しても楽しかったようです。
私が幸田文が好きだと知って嬉しそうでした。

脱線しましたが、私にとっては木洩れ日繋がりのこの映画
老若男女どなたにもとってもお勧めです。

一冊の本を読んだような、そんな静けさと満足感と
後に残る、ちょっと思考が深くなる、
自分の事も深いところを考えてみる、
そして周囲を改めて見てありがたいと思う映画です。

映画館には思いがけず
20~30代男性一人客が多かったです。

映画・役者・舞踊・音楽関係の若手が
周囲に奨められて来たのかなと思いましたが
ある意味、大人版『君たちはどう生きるか』
かもしれません。

あ、もう一つちょっと気になっていたこと。
この映画の主人公は自己完結型で
これはこれで、例えばいろいろつらいことがあった人
(主人公がそうと思われる)には
とりあえずいいんですけど、
大人としては、自分だけの世界でほっこりし、他を見ず、
自分が良ければOK、ですませないというのは
とても大事かと思います。
(2024.1.25)



2週間前に本屋さんで検索してもらったら
絶版で注文できないと言われたんですけど、
届いた物を見たら一旦絶版になって、
令和4年に新版発行され
令和6年1月20日に3刷だそうです。
新潮文庫、仕事が早い。

絶版と言われたのは
検索してくれた店員さん
(60代位の店長っぽい男性だったけど)が
検索しきれなかったのかな・・・。
でも中古市場で超高額になってたってことは
やっぱり1刷か2刷で一旦絶版状態になってたのかも・・・。





柔らかいのでお年寄りやお子さんにも。
冷凍保存できるので少しづつ楽しめます。
味はそれぞれしっかり違いどれも美味しい。

画像をクリックすると詳細が見られます。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2024.02.03 23:45:28
コメント(0) | コメントを書く
[アート&エンタテイメント] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

roseydays

roseydays

Calendar

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: