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南方熊楠って誰?なんて読むの? 若い人たちには、まあ、そういう感じで受け取られる人物であり、名前なんじゃないかと思いますが、実は、かなり有名な方で、伝記を小説化した作品では、ボクが読んだことのある作品だけでも、かなり古いのですが、 1980年代の終わりころ の作品で、 神坂次郎 の 「縛られた巨人 南方熊楠の生涯」(新潮文庫)、津本陽 の 「巨人伝」(文春文庫上・下) という、それぞれかなりな大作(内容は覚えていませんが)がすでにあります。
何者だったのか? というわけですが、 慶応3年、1867年5月18日 に生を受け、 昭和16年、1841年12月29日 に亡くなるまでの 74年間 、 坪内風 にいうなら つむじを曲げ続け て、 学問だけを生きた人 です。 天才 とか、 奇人 とか、 孤高の 巨人 とか、 大博物学者 とか、まあ、いろいろの呼び名がありますが、ボクには、その正体を一言でいう根性も知識もありません。だって、 粘菌 とか、 曼荼羅 とか、 大英博物館 とか。
だいたい、粘菌って、わかります?(笑) でも、やっぱり気になるんですよね。で、まあ、目の前にこういう本があると読んでしまうわけです。
ああ、そうか、面白い人だな! と腑に落ちます(笑)。
和歌浦には 爽やかな風 が吹いていた。 これが書きだしです。で、ネタバレみたいですが下が結句です。
梅雨の名残りを一掃するような快晴であった。片男波の砂浜には漁網が拡げられ、その網で壮年の漁師が煙管を使っている。和歌川河口に浮かぶ妹背山には夕刻の日差しが降りそそぎ、多宝塔を眩く照らしていた。
妹背山から二町ほどの距離に、不老橋という橋が架かっている。紀州徳川家の御成道として、三十数年前に建造されたものであった。弓なりに反った石橋で、勾欄には湯浅の名工の手によって見事な雲が彫られている。
その雲に、南方熊楠はまたがっていた。(P5)
人魂となった熊楠は、夏野原を駆けていく。熊楠は世界であり、世界は熊楠だった。 生まれたときから、魂となって飛び去って行くまで 「爽やかな風」 に吹かれて生きた男というのが、この 作家 の 南方熊楠 です。だからでしょうね、希代の奇人の生涯を気持ちよく読み通すことが出来ます。
沖の方角から、 爽やかな海風 がふわりと吹いた。
それは、熊楠が この世に生を受けた日の風であった 。(P128)
「こんな人がいた!」 と世にさしだしている姿勢というか、態度に好感を持ちました。なんとなく、一つの時代が終わりつつあることをボクは、実感というか、肌合いというかでは、かなり、リアルに感じています。新しい時代が、新しいはじまりの時代なのか、破滅の時代なのかはともかくとして、とりあえず、 南方熊楠 なんていう、 変人 に関心を持つ人がいることに、何となくな 期待と希望 を感じます。若い人に読んでほしい作品ですね。
追記
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