AIGはFRBから9兆円規模の支援が確定し、当面の危機は免れた。だが今後もAIGが存続するのかどうかは微妙な所だ。
リーマン倒産、メリル・バンカメ合併とAIG危機とアメリカの金融不安の波は世界に波及し、グルジア紛争で欧米諸国と対峙しているロシアにも多大な被害を与えている。
【モスクワ杉尾直哉】ロシア連邦金融市場監督局は17日正午(日本時間同午後5時)すぎ、国内の証券などすべての金融商品の取引の中止を命じた。16日に引き続き、株価下落に歯止めがきかなくなったため。うち、ルーブル建ての証券取引所MICEXは同日午後5時42分に取引を再開したが、同45分の終値は前日比マイナス18%で、05年11月以降の最低値を更新した。ドル建てのRTSは取引停止のまま、前日終値のマイナス6.39%で終了した。
MICEXとRTSは16日にも取引を一時停止していた。
タス通信によると、ロシア財務省は17日、政府系銀行のロシア貯蓄銀行(ズベルバンク)、対外貿易銀行(VTB)、ガスプロムバンクの準備金積み増しのため、初の特別入札を行うと発表した。17日までにロシア政府が国内銀行の準備金に投入した資金は、金融不安を背景に3500億ルーブル(約1兆4400億円)に達した。
http://mainichi.jp/select/world/news/20080918k0000m020156000c.html
こんな状況に陥っているロシアなんだが、メドベージェフ大統領のかつては「冷戦も恐れない」など超強気発言があったのだが、トーンダウンしている記事がこれ
【モスクワ杉尾直哉、大木俊治】ロシアのメドベージェフ大統領はこのほど、「我々には(国際的な)孤立も軍拡競争も不要だ。それは袋小路への道だ」と述べた。8月8日のグルジア侵攻以降「新たな冷戦が起きても恐れない」と西側諸国に挑戦的な態度を取ってきた大統領だが、ロシア企業の株価低下や国外への投資流出に歯止めがかからないことから、弱気な本音がポロリと出たようだ。
大統領は、国内主要企業経営者らとの会合で15日、「我々に(経済)制裁を加えようとしても、両刃の剣となる。損失は(ロシア、制裁を加える側の双方に)対称的に出る」と述べ、グルジア紛争がらみの西側の制裁をけん制した。実際は欧州連合(EU)が対露制裁を見送っており、逆に制裁を恐れている様子を示すことになった。
ロシアの主要株式指標は米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻(はたん)が引き起こした世界同時株安の影響で、16日に軒並み急落した。主要企業では、政府系天然ガス「ガスプロム」、国営石油「ロスネフチ」、対外貿易銀行、預金者数でロシア最大の貯蓄銀行(ズベルバンク)などの下落が目立っている。
ロシアの株式市場は6月から下落を始め、8月のグルジア紛争で下落傾向がさらに強まっていた。これに世界同時株安が追い打ちをかけた形で、98年の金融危機の再来を懸念する声も上がっている。
http://mainichi.jp/select/world/news/20080918k0000m030054000c.html?inb=yt
しかしながらグルジア紛争では相変わらずの強気姿勢で臨んでいる。
【モスクワ大木俊治】ロシアのメドベージェフ大統領は17日、クレムリンで、グルジアからの独立を承認した南オセチア、アブハジアとそれぞれ友好協力条約に調印した。条約にはロシア軍駐留など軍事支援も含まれており、経済・社会的な支援も含めて両地域は完全にロシアの保護下に置かれることになった。独立を認めないグルジアや欧米が一層反発を強めるのは確実だ。
調印式には、南オセチア独立派政府のココイティ大統領、アブハジア独立派政府のバガプシ大統領が出席し、条約に調印した。これまで両地域の独立承認を表明した国はロシアと中米ニカラグアの2カ国だけだが、メドベージェフ大統領は調印後の演説で、「国際法に基づく独立承認だ」と改めて正当化し、条約調印を「歴史的出来事」と強調した。
ロシアのセルジュコフ国防相は、両地域にそれぞれ3800人のロシア軍部隊を配置すると表明しており、軍事介入前に「平和維持軍」として駐留していた規模の2倍以上になる。またラブロフ外相は、同条約で3者のいずれかが他国から脅威を受けた場合に「互いに軍事力行使を含む支援を行う」と明言し、両地域の独立派政府が支援を要請すれば、ロシアのグルジアに対する軍事攻撃は「国際条約」上の義務となるとの考えを表明している。
一方、グルジアの南オセチア攻撃から40日にあたる16日、南オセチアやロシア全土で、「グルジアの侵略による犠牲者」に対する追悼行事が行われた。またロシア非常事態省は同日、人道支援やインフラ復旧のため南オセチアに派遣していた救援部隊が、作業を終えて撤退したことを明らかにした。
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20080918k0000m030078000c.html
両者の記事を見比べる時、ロシアの外交・安全保障に関しては南オセチアでの欧米との妥協は無理との対応なのだろうが、それがマイナス要因となり資金流出していた経済がアメリカの金融混乱により拍車が掛かり、原油高・資源高の恩恵を被っていたロシア経済がここに来ての原油・資源の暴落・需要の低下に加え、地政学的リスク、そしてアメリカ金融市場の混乱がロシアに大ダメージを加えた格好だ。経済面においては、弱気にならざるを得ないが正しいだろう。
その一方で自国経済界に対しては強気の姿勢で臨んでいる。
米リーマン・ブラザーズの破綻が、グルジア問題の影響で外国人投資家らの資金逃避が続いているロシアに追い打ちをかけ、信用不安が深刻化している。週明け後の株価急落に加え、露金融機関の巨額債務問題も浮上し、金融危機の様相を見せ始めた。政府は短期市場に大量の流動性資金を供給するとともに、オイルマネーを原資とする安定化基金放出をはじめとする緊急対策の検討に入った。
≪株価が急落≫
リーマン破綻のニュースが伝わった15日のロシア株式市場は金融、資源関連株を中心に幅広い銘柄が売られ、代表的株価指数RTSの終値は前週末比4・8%安の1277・60へと急落した。最大手の国営スベールバンクの下げ幅は一時9・2%に達した。RTSは今春、2500台に迫ったが、わずか5カ月でこの約半分の水準に落ち込んだ。
プーチン首相が鉄鋼大手メチェルを恫喝し、上場企業に対する政府の介入懸念が高まったことに加え、グルジア問題や一時1ドル=150ドルに迫った原油価格が100ドル近辺に下落したことをきらい外国人投資家によるロシア売りが加速。仏証券大手BNPパリバの推計では、グルジア問題が発生した後だけでロシアから逃避した資金の合計は350億ドルに上る。
こうした中で起きたリーマン・ショックにより株式市場だけでなく、銀行同士が資金を融通し合う短期金融市場でも資金が枯渇。市場関係者の間では、経営基盤が弱い露銀行業界が資金難に陥りかねないとの観測が強まり翌日物金利は8・4%にまで跳ね上がった。ロシアの銀行がロンドンで調達する資金の金利も通常の2倍に上昇している。
一方、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のまとめで露銀行業界が年内に借り換えが必要な対外債務は450億ドル(約4兆8600億円)規模に上ることがわかった。世界的な資金不足の中での調達は容易でなく、銀行の経営破綻を心配する声は高まる一方だ。
≪大統領は強気≫
現地からの報道によると、メドベージェフ大統領は15日にクレムリンで産業家企業家同盟との会合を開催。産業界からは、流動性資金不足で銀行が厳しい状況に置かれているとの指摘があった。
これに対しメドベージェフ大統領は「世界的な経済問題はあるものの、ロシア経済まの状況は安定しており、われわれには危機や危機の予兆もないことは、はっきりしている」と強調。この上で、流動性資金の大量供給を続けるほか、原油や天然ガス輸出で蓄えた安定化基金を放出し金融危機に備える考えを表明した。
政府、中央銀行はすでに先週末から流動性資金の大量供給を開始。12日と15日の2日間での流動性資金供給額は合計260億ドル規模に達した。しかし、RTSは16日の取引開始後間もなく1200の大台を割るなど効果は上がっていない。
報道によると、市場関係者の間には「政府はパニック阻止に向け、言葉だけでなく、行動すべきだ」(ディーラー)と、安定化基金放出を含めた強力な対策を求める声が高まっている。
http://www.business-i.jp/news/china-page/news/200809170015a.nwc
どんなに強気な姿勢を貫いたとしてもロシア経済の後退は既定事実。そしてそれは戦争により傷口を広げた格好だ。
ロシアの迷走はまだまだ続きそうだ。その迷走が落ち着くのがアメリカ金融市場の安定による部分が大きいのも金融工学の面白い部分でもある。
アメリカが折れるのかロシアが折れるのかは分からないが、ロシアの資源ナショナリズム政策の転換期とは思える。
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