ホラー、近未来、童話、独り言

ホラー、近未来、童話、独り言

2007年05月29日
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カテゴリ: 少し考える小説
                題名 「孤独」


           チャイムが鳴った、続いて大きく元気な声で

           「こんにちわ。」と言いながら私の寝ている

           部屋にズカズカ入って来た。

           この頃記憶がはっきりしない

           「そうだ今日はヘルパーの来る日だった。」

           「お婆ちゃん元気だった?」返事も待たず

           「今日は何かやって欲しいことある?」

           私が何も言わないと

           「じゃあ何時も通り洗濯から始めますね、後は

           風呂とトイレ、床掃除で良いですか。」

           返事をしないとサッサと洗濯に執りかかったようだ

           「あら~。」すっとんきょうな声が聞こえたかと

           思うとヘルパーが戻って来た。

           「お婆ちゃん自分で洗濯したの、良いのよ私達が

           いるんだから。」少し不満そうに言うと次の仕事を

           始めたらしい。

           「お婆ちゃんは綺麗好きだから台所も汚れていないのよね

           家なんか他所様の掃除はするけど座る場所もないぐらい

           荒れ放題、年末に撫でる程度の事しかしないから

           恥ずかしくて誰も呼べないのよ。」一人で賑やかに

           喋り続けている。

           「さて終わった、時間が余ちゃったけど何もする事が

           無いから帰りますね、印鑑が欲しいんだけど良く寝て

           らしゃるようだから次に来た時まとめて戴きますね

           風邪なんかひかないように用心して下さいよ。」

           流石に最後は静かに言うと、そっと帰って行った。

           身寄りも無く天涯孤独、わずかな年金で細々と生活

           している者の所に来るのは新聞,宗教の勧誘ぐらいで

           役所や民生委員さえ殆ど訪れる事はない、週に3日

           ヘルパーを頼んでいるが年末年始は断っていたので

           3週間ぶりに訪れた人間だった。

           昨年の暮れから起き上がれず、何も口にしていない

           私に気づいてくれるのは誰だろう、何時だろうと

           思いながらヘルパーの帰る足音を聞いていた

           「次にヘルパーの声を聞くことは出来るだろうか。」

           薄れいく意識の中、今日も夕暮が私を包む。








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最終更新日  2007年05月29日 21時03分50秒
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