ホラー、近未来、童話、独り言

ホラー、近未来、童話、独り言

2007年08月16日
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カテゴリ: 少し考える小説
題名 「舐めたらいかんぜよ」


 或る会社で忘年会が行われていた「皆さん日頃は御疲れ様です、今日は一年の疲れを労う

意味でささやかでは御座いますが宴を設けさせて戴きました、無礼講で楽しんで下さい。」

社長の挨拶が済むと皆で乾杯し幕は開いた、何処にでもある風景だ。

 洋子は今年45歳、同期入社した仲間は皆寿退社し社内では陰で御局様と呼ばれて居る事も

知っている、勤続23年にもなるのに出世も望めず友達の一人も居ない寂しい日々、一人

で呑むのは慣れているが今日は特に侘しい宴もたけなわだが帰り支度を始めた其の時

「先輩呑んでますか。」洋子が手取り足取り教えた宮田が声を掛けてきた、宮田は確か今度の

人事異動で課長になる筈だ「宮田君今度の人事異動では課長ね、おめでとう。」

「嫌だな、そんなの噂ですよ蓋を開けてみないと分かりませんからね人事は、若しそうなら

先輩の御陰です。」流石に如才が無い。

 「其れより先輩、先輩に相談に乗って欲しい事があるんですよ、ソロソロ抜け出して話を

聞いて戴けませんか。」洋子も帰宅しようと思っていたところなので「良いわよ、でも私に

聞くより課長や部長に聞いた方が良くない。」宮田は真剣な顔で「先輩に聞いて欲しいんで

す。」嬉しくもあったが何かこそばゆく「それじゃコーヒーでも飲みながら…」

集合時間が遅かったせいか早くに切り上げたつもりでも外は既にネオンが煌いていた程好い

風が頬を撫でる、先に出ていた宮田が「未だ呑みますか、僕は先輩の部屋でユックリコーヒー

でも戴きながら話を聞いて欲しいんですけど。」甘えた声で洋子を見詰める。

 幾等可愛い後輩と言えど宮田も男だ女一人の部屋に入れる訳にはいかない然し其の日は

如何かしていた、人恋しさに「そうね相談だけならコーヒー代も勿体無いし。」うっかり

部屋に入れてしまった「今コーヒーを入れるから其の辺に座って待ってて。

何時の間に来たのか台所に立つ洋子の背後で「そんな物は要らない貴女が欲しい。」

洋子を激しく抱きしめた、そんなつもりは全く無かった洋子は激しく抵抗したが男の

力には適わず2~3回平手で叩かれソファーに引き倒されて強姦されてしまった、事が

終わると「先輩ナイスでしたよ、此れからも宜しくお願い出来ませんか結婚は出来ません

けどね。」冷たい視線を洋子に向けた。

 「貴方何をしたか分かっているの。」

「何ってナニですよ。」セセラ笑う

「強姦罪で訴えるわ。」

「いいですよ、でも恥をかくのは先輩ですよ警察で細かく聞かれ恥ずかしい思いをして

和姦と判断されるかも知れませんよ、何しろ男を部屋に入れたんですから其の上会社中に

知れ渡り会社にも居られなくなるかも、其れで良かったらどうぞ。」宮田は言うだけ言うと

サッサと帰ってしまった、悔しさに涙が溢れるが確かに宮田の言う通りだ野良犬に噛まれたと思い

諦めなければならないのか、強姦は親告罪だから洋子が訴えない限り罪には問われないと

分かっていて強姦した狡男だ。

 洋子は考えた、此の儘泣き寝入りするのも悔しいだからと言って警察に駆け込むのも

考え様だジックリ一晩考えた末出した洋子の結論は見事であった、翌日何食わぬ顔で出社した

宮田は何事も無かったかのように「今晩も行っていいか。」馴れ馴れしく近付く、洋子は

無視して真っ直ぐ社長室に向かった。

 「アポの無い方との面会はしておりません。」秘書に冷たくあしらわれたが「緊急事態よ

取り次がないと貴方の首が危ないかも。」伊達に40数年生きてはいない20代ソコソコの

若い女に負けていない、秘書が社長に取り次ぐと社長は前代みもんの取次ぎに驚き面会を

承知した。

 不機嫌な社長の机に一枚の紙を提出し、昨夜の出来事を話し洋子の要求を求めた暫く考えて

いた社長は全面的に洋子の要求を呑んだ上で洋子に感謝した、非常幹部会が召集され部課長

も出席した席で洋子の話しが社長の口から出た、幹部は驚き特に宮田を次の課長に推薦して

いる課長は下を向いたままだ結論が言い渡された宮田は解雇、課長は左遷。

 左遷された課長の後には洋子が座る事となった、朝社長室に提出した紙は診断書だった

強姦罪では宮田の言う通り和姦とも判断されかねない、そこで傷害罪で訴えるつもりで病院に

行き診断書を書いてもらったのだ、然し例え宮田を訴えたとしても洋子には何の利益にも

ならない其処で社長と直談判したのだ「会社から犯罪者を出すか、私の要求を呑んでくれるか。」

どちらに転んでも洋子の痛みは消える、社長が此の手の話を尤も嫌うと言う噂を信じて

賭けた「私は此の紙を持って警察に行っても良いのですが、其の前に社長にお話ししてからと

思い踏み止まりました宮田と課長はまるで師弟関係どちらが会社に残っても私は退職しなければ

ならないでしょう、宮田は私の後輩宮田を課長に押されるのであれば私は警察に行きます。」

 其処まで言うと社長は総て分かったようで洋子を課長にする事を約束してくれたのだ会社

始まって以来の女性管理職が誕生した「私は此れで(小指を立て)会社を辞めました。」

宮田が言ったか如何かは分からない。





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最終更新日  2007年08月16日 07時51分35秒
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