題名 「母の代わり」
夫婦仲は最悪、顔を合わせれば喧嘩ばかり
何処にでも居そうな夫婦
中学生の息子がいたが大人しく親に逆らった事もない
おっとりしていて父親似
だからと言う訳でもないが父親に懐いていた
母親は息子の顔さえ見れば成績を責め
父親に似ていると嫌悪の表情を浮かべるからだ
朝は父親と一緒に家を出る
駅までの道すがら父親は毎日息子に言い聞かせ続ける
「母さんのような女とは結婚するなよ、一生後悔するからな。」
大人しい息子は黙って聞いていたが
「じゃあ如何して父さんは母さんと結婚したの。」
等とは聞けず
「母さんは悪い人なんだ。」漠然と思うだけであった
其の日の夜も些細な出来事で喧嘩が始まった
一方的に捲くし立てる母、父親は黙って耐えている
「父さんが可哀想だ。」
心優しい息子は一大決心をした
次の日父親が帰宅すると閑静な住宅街に悲鳴が響き渡った
「貴方御疲れ様今日は貴方の好きなビーフシチューよ。」
血が滴る母親の顔の皮を被った息子に言葉も出ず後ずさりする父親
「父さん如何したの、今日から僕が母さんになってあげるのにそんなに
驚かないでよ。」
父親のカバンを取ろうとして下を向いた途端
母親の皮が頭皮毎ズルリと落ちた。