非常にめずらしいことに、朝日新聞にまっとうな論述が載っていた。
日本のマスメディアは、記者クラブの弊害で、新聞社すべてが「右向け右」式の、同じ方向の記事しか書かなくなってしまった。
新聞社に付随するテレビ局も、同じミスリードを犯す。
よって、テレビと新聞でしか情報を得ない人には、曲げられた情報しか届かない。
なんとなくおかしいと感じながらも、みんなが口を揃えてそういうのなら、と思い込んでいる人々も多いはずだ。
物事の正しさを計るためには、違った視点からの意見も検証する必要がある。
そんな基本的なことも、大新聞社はわからなくなってしまっているようだ。
その中で、違う角度でものを言うのは、勇気ある行為であるともいえる。
【朝日新聞 社説余滴 「菅おろし」にみる政治の病 松下秀雄】
とにかく早く辞めろ、さあ退け、の大合唱だ。私たちの論説委員室でも、声量はしだいに高まっている。
この「菅おろし」の過熱ぶりに、私は強い違和感を覚える。
菅直人首相の続投を唱えているのではない。
「退陣3条件」を整え、来月には辞めてもらうしかないだろう。
それでも、ふだんは立場の違う政治家やメディアなどが寄ってたかって引きずりおろす様子は、溺れる犬をたたくようにみえて気にくわない。
こんなやり方に、日本政治の病理が見える。
原発を例にとろう。
「いずれは脱原発」と考える私からみれば、菅さんの言っていることは、そうずれてはいない。
自然エネルギーの普及は急務だし、原発のストレステストもやるべきだ。
もちろん文句はある。指示が遅い、内閣の足並みをそろえてくれ・・・ 。
それを批判するのは当然としても、「とにかく辞めろ」と騒げば、原発を守りたい人たちと同じ動きになる。
脱原発に向かう次のりーダーの目星もつけずに菅おろしを急げば、原発推進派を利する。
合理的ではない。
「けしからん」の一点のみで手を組むのは危うい。
典型例が戦前のドイツだ。
多くの政党が政府を倒そうとするばかりで、議会は首相を選べなくなった。
その混迷をついて、ナチスが台頭する。
おそらく現代の日本も、同じ罠にはまりかけている。
先月の内閣不信任騒動を思い出そう。
自民党とともに、民主党の小沢一郎元代表のグループも不信任案に賛成しそうだった。
でも政策がまったく異なる両者の共闘は、たぶんそこまでだ。
ドイツの例となんと似ていることか。
思えば、民主党は最初から罠にはまっていたのかもしれない。
自民党を政権からおろして、とって代わる一点で集まった政党だから、政権に就くと目標を見失い、まとまれずに自壊している。
次の政権を「つくる」ための議論より、「おろす」ことに血道を上げる。
そんな理性的でない対応こそが、日本政治の病理であり、短命政権と政治の混迷を招いてきた。
ドイツは戦後、過去を反省して、後任を決めないと首相を不信任できない「建設的不信任」制度を設けた。
日本も、その精神に倣ってはどうか。
ポスト菅は誰か。
新首相のもとで与野党はどう協力し、何を実現させるか。菅おろしに明け暮れるより、 「次」の議論を進めるのだ。 (政治社説担当)2010.7.14朝刊
故事に「朝三暮四」というのがある。
飼っている猿にエサの実を、朝三つ夜四つにすると言うと、猿が少ないと怒ったので、朝四つ夜三つにすると言ったら、今度はたいそう喜んだという話だ。
「菅おろし」の風吹きすさぶ中、先月、野党の内閣不信任案に、与党も乗ってしまおうという動きがあった。
実際に行われていても、成立する可能性は低かったが、民主党が割れ、国会が行き詰るのは明確だった。
きわどい所で、菅・鳩山前首相会談が組まれ、合意がなされ、民主党分裂は回避された。
しかし、その合意内容が実行されていないということで、現在更なる菅おろしの嵐が吹いている。
以前、菅首相は「震災の処理が一段落するまで辞めない」と言って、反感を買った。
菅・鳩会談では「震災の処理が一段落したら辞める」と言って納得してもらった。
僕の読解力では、同じ意味なのだが、猿並みの脳みその議員達にはそうではなかったらしい。
菅首相に落ち度はないとは思わない。
こんな時に、なぜこの人だったんだ、と思ってしまう。
では、誰だったら良かったのだ。
誰にすれば、困難は抜けられるというのだ。
むしろ、利益誘導体質の、原発推進反動勢力が支配する可能性が高い。
議員も官僚も東電も報道機関も、みんな自分の目前の保身しか考えていない。
現在手にしている利益のために、取り返しのつかないほどの危険に導いている。
一歩はなれて、百年後の日本のことを考えてほしい。
百年後は原子力発電も、化石燃料発電もなくなっているはずだ。
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