僕は病院で給食の調理師をしています。
今朝のおかずはミートボールでした。
朝は調理の時間が短いので、調理済み食品を温めて出すパターンが多いのですが、これもそうでした。
出来合いのものでも一応味見をして、いつもの味を確認します。
食べながら、最近ミートボールとすれ違った思いがして、考えてみるとユーチューブで見た水道橋博士の番組でした。
もしや、これが"例"の...?
口の中で、微妙に味が変わっていくのを感じました。
『食品の裏側』の著者、安倍司さんはもともと食品添加物を扱う会社のサラリーマンで、「歩く添加物辞典」「食品添加物の神様」と呼ばれるほどのダントツのトップセールスマンでした。
山口大学理学部化学科を卒業後、食品添加物・食品専門商社に勤め、食品添加物を販売する課に配属されました。
食品添加物の営業といえば、カタログを持って既製品を使っている業者をまわって、新商品の値引きセールスをして回るのがパターンでしたが、安倍さんは違っていました。
食品添加物を使った新しい商品、今までと違う、ひと味もふた味も違う、美味しい商品を作る、しかもコストが大幅に下がる。
工場に入って直接手伝いながら開発をする、"技術営業"をしたのです。
【 「取引先との一種の技術提携というのかな、一緒に商品開発をするというのが、僕の営業の他の同僚と違うところでね。時には、その食品添加物を使ってもうまくいかない場合がある。そんなときには、大手添加物メーカーの研究所にその情報をフィードバックする。つまり、食品添加物メーカーにとって、現場の顧客のニーズを吸い上げる重要な役割をはたしていたわけで、そのために各メーカーから重宝がられていました」 】
【 食品添加物はまさに「魔法の粉」です。
「食品を長持ちさせる」
「色彩を美しく仕上げる」
「品質を向上させる」
「味を良くする」
「コストを下げる」
すべて食品添加物を使えば簡単なこと。面倒な工程・技術など不要で、実に簡単に一定の品質のものができてしまうのです。
それが食品添加物の「光」の部分です。
しかし「光」があれば、必ず「影」があります。便利なものを使うのであれば、その後ろにある「影」も一緒に引き受けなければならないのです。
その「悪」の部分-それは食品添加物の人体への害悪・毒性であったり、それ以上に恐ろしい問題として、添加物が食卓を崩壊させるといったこともあります。 】
【 私は、そんな危険性についてまったく頭にありませんでした。つまり、添加物の「影」の部分など見ようともしていなかったのです。
ただし、誤解のないように言っておきますと、その当時、添加物の毒性・危険性をしらなかったかといえば、そうではありません。当時すでに1500種類以上の添加物(ほとんどすべてと言っていいでしょう)が頭に入っていましたし、その危険性や使用基準も、試験でもあれば満点をとれるほど、詳細に答えることができました。 】
それほどまでに優秀なセールスマンの安倍司さんが転機を迎える事件に遭遇します。
人生を変えたミートボール事件です。
娘の三歳の誕生日会で、妻が用意したご馳走が、安倍さんの開発した"食品添加物ミートボール"だったのです。
【 そのミートボールは、スーパーの特売用商品として、あるメーカーから依頼されて開発したものでした。
発端はそのメーカーが、「端肉」を安く大量に仕入れたことでした。端肉というのは、牛の骨から削り取る、肉ともいえない部分。現在ではペットフードに利用されているものです。
このままではミンチにもならないし、味もしない。しかしとにかく「牛肉」であることには間違いない。しかも安い。
この「端肉」でなにかつくれないか、と私に相談がきたのです。
元の状態では形はドロドロ。水っぽいし、味もなく、とても食べられるシロモノではありません。これを食べられるものにするにはどうしたらいいか-そこが発想の出発点でした。
廃 鶏 (卵を産まなくなった鶏)のミンチ肉を加え、さらに増量し、ソフト感をだすために、「繊維状大豆タンパク」というものを加えます。これは「人造肉」とも言って、今でも安いハンバーグなどには必ず使われています。
これでなんとかベースはできました。しかしこのままでは味がありませんから、「ビーフエキス」「化学調味料」などを大量に使用して味をつけます。歯ざわりを滑らかにするために、「ラード」や「加工デンプン」も投入。
さらに「結着剤」「乳化剤」も入れます。機械で大量生産しますから、作業性をよくするためです。
これに色をよくするために「着色料」、保存性を上げるために「保存料」「PH調整剤」、色あせを防ぐために「参加防止剤」も使用。
これでミートボール本体ができました。
これにソースとケチャップをからませればできあがりなのですが、このソースとケチャップも、いわゆる「市販」のものは使いません。そんなことをしていたら、採算が合わず値段を安くできないからです。コストを抑えるために添加物を駆使して「それらしいもの」をつくり上げるのです。
まず氷酢酸を薄め、カラメルで黒くします。それに「化学調味料」を加えて「ソースもどき」をつくるのです。ケチャップのほうは、トマトペーストに「着色料」で色をつけ、「酸味料」を加え、「増粘多糖類」でとろみをつけ、「ケチャップもどき」をつくり上げます。
このソースをミートボールにからめて真空パックにつめ、加熱殺菌すれば「商品」の完成です。添加物は種類にして20~30種類は使っているでしょう。もはや「添加物のかたまり」といっていいぐらいのものです。
本来なら産業廃棄物となるべきクズ肉を、添加物を大量に投入して「食品」に仕立て上げた-それがこのミートボールだったのです。 】
【 この私の開発したミートボールは、売値が1パックたったの100円弱。そこまで安い値段設定ができた理由は、原価が20円か30円だったからです。
それは、発売を開始するやいなや、たちまち大ヒット商品となりました。
もう笑いが止まらないほど売れ行きがよく、そのメーカーはこの商品だけでビルが建ったといわれたほどです。 】
【 「パパ、なんでそのミートボール、食べちゃいけないの?」
ミートボールの製造経緯に思いをはせていた私は、子どもたちの無邪気な声にはっと我に返りました。
「とにかくこれは食べちゃダメ、食べたらいかん!」
皿を取り上げ、説明にもならない説明をしながら、胸がつぶれる思いでした。
ドロドロのクズ肉に添加物をじゃぶじゃぶ投入してつくったミートボールを、わが子が大喜びで食べていたという事実。「ポリリン酸ナトリウム」「グリセリン脂肪酸エステル」「リン酸カルシウム」「赤色3号」「赤色102号」「ソルビン酸」「カラメル色素」...。
それらを愛する子どもたちが平気で摂取していたという現実。 】
これらの食品添加物は国の認可を受けているものなので、基準・使用法を守る限り安全なはずです。
しかし、それは現在のデータによる判断で、あくまで期間限定のものです。
長年食べ続けたら害が出たとか、食べあわせで化学反応が発生したなどという危険は当然残されます。
石堂徹生著『「食べてはいけない」加工食品の常識』に「ポリリン酸ナトリウム」の解説があります。
オーストラリアで起きた、ミートボールでの薬物中毒の原因物質でした。
【 ポリリン酸ナトリウムは食品添加物として実に重宝だ。
「第7版食品添加物公定書解説書」などによれば、ポリリン酸ナトリウムには次のようないろいろな働きがある。
まずビタミンCの分解を防ぐとともに、天然色素や合成着色料の色あせ・変色を防止し、金属(イオン)の臭いと味を除く。
また水に溶けにくい物質がそっちこっちに集まる(凝集)のを防ぎ、混じりあった状態(懸濁液)にして安定化させる。
あるいは水の酸性・アルカリ性の度合いを示すPH(ペーハー=水素イオン濃度)を安定させるため、食品の製造・保存中のPHの変化を抑え、かつ風味を向上させる。
さらにタンパク質を水に溶けるようにする働きがあり、食品の柔軟性を増す。そのため食品の組織の結着力を強める。先のミートボールの場合、この結着力の強化目的でポリリン酸ナトリウムが使われたようだ。 】
【 人間の体内に摂取されたポリリン酸ナトリウムの大部分はやがて大便として排泄されるが、その際、カルシウムやマグネシウム、鉄、銅と結合するため、ミネラル成分の欠乏を起こす人がいるという。
またポリリン酸ナトリウムは鉄のイオンと化学反応を起こして、活性酸素を生成する場合があるとしている。
ポリリン酸ナトリウムは急性毒性こそ低いが、腎臓結石やミネラル欠乏、活性酸素などそれなりの危険はありそうだ。ところが、ポリリン酸ナトリウムを規制せるための使用基準が定められていない。しかも、ラーメンに添加する「かんすい」やチーズなどの乳化剤、パンなどの膨張剤などに使われる場合、それぞれの食品にポリリン酸ナトリウムの名称を書かずに、「かんすい」や「乳化剤」「膨張剤」などと一括名を書くだけでいいことになっている。 】
ミートボールに限らず、今やありとあらゆる食品に添加物が使われています。
それは、保存のためだったり、見た目のものだったり、美味しさを求めたものだったりと、様々な理由で使われているわけです。
もともと古来日本では、添加物は食品に使われていました。
大豆を搾った豆乳に「にがり(塩化マグネシウム)」で固めて豆腐を作ります。
「にがり」は添加物です。
結婚式で配る「紅白饅頭」の赤は「食紅」で染められています。
饅頭のふくらし粉に使われる「重曹」も添加物です。
蒟蒻をかためる「水酸化カルシウム」も。
添加物がすべて悪いという考えは間違っています。
「食品の裏側」もメリットを考え、『食品添加物と上手に付き合う5つのポイント』を挙げています。
【 1.「裏」の表示を良く見て買う―「台所にないもの=食品添加物」という公式を頭の片隅におきながら、なるべく「台所にないもの」が少ない食品を買う。
2.加工度の低いものを選ぶ―手間をとるか、添加物をとるか、それを心に留める。加工度が高くなればなるほど、添加物は多くなります。
3.「知って」食べる―何を食べたかを「知る」ことによって、「反省」の気持ちが生まれます。「手抜きをしてごめんね」「添加物を食べさせてごめんね」「食べ物の尊さにふれさせなくてごめんね」の気持ちがあれば、次は「手作りのものを食べさせよう」というきもちになります。
4.安いものだけに飛びつかない―ほかの食品と比べて値段の安いもの、便利だなと思うものには、必ず理由があります。「価格破壊」の「裏側」には、添加物屋や加工食品業者の暗躍があったのです。
5.「素朴な疑問」を持つこと―「なぜこの明太子は、こんなきれいな色をしているのだろう?」「なぜこのハンバーグは、こんなに安いのだろう?」「なぜこのパックサラダはいつまでもしなびないのだろう?」「なぜコーヒーフレッシュは、安いお店でも使い放題なのだろう?」「みりん風調味料の『風』って何だろう?」...そんな「素朴な疑問」を持ったら、加工食品の場合は、ぜひひっくり返して「裏」のラベルを見てください。 】
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