Poet田部井

Poet田部井



親戚と古い友人とを案内して
覚えているはずの寺へ行った
たしかここにあったはずだが
たしかにここだった
古い石積みがくずれ、住職がまた石を積み上げていた
およそ石積みには似つかわしくないような石ばかりだったが、住職は全く意に介していない様子だった

たしか、ここに寺があったはずですが
ああ、今でもあるよ

真っ黒に焼けた柱が、それも、長い年月を経てそのままだったかのように
寺は焼失していた

もう、お寺はないのですね
あそこで拝むといい

親戚と古い友人とはどこへ行ってしまったのか分からなかった
私は住職にいわれるままに、もとあった寺の正面へ向かって歩いていった
焼失した寺の、正面に二本の木が焼け残っていた
二本の木の間に細長い黒い布が渡され、寺の屋根を模したようだった
私はひとり、涙をこらえきることができずに、ただ、拝んだ




© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: