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偏りのある読書記録 10/19up
「偏りのある読書記録」
このページは小説といわず、マンガといわず、読んでなんか感じたものを、ランダムに綴っていく予定です。
あなたの興味あるのは?
内田春菊
/
山田詠美
/
江国香織
/
矢沢あい
書籍名:私たちは繁殖している
著者名:内田春菊
出版社:ぶんか社
この本を読むと、子供を産むことに抵抗がなくなる。それどころか、楽しみにさえなる。妊婦や子育ての常識をことごとく覆してくれるのが爽快。先人の知恵は確かに重要かもしれないが、時代がめぐるましく変動している中、それまでのやり方じゃ通用しない部分ってたくさんあると思う。妊娠が発覚して以来、こーしろ、あーしろ、という強制力がふりそそぐ息苦しい毎日の中、この本は私を解放してくれた。せっかくスゴイ体験をするんだもん、楽しまなくちゃ損だ!
自分のケースを私もこうやっておもしろおかしく味わえたらいいなあ。
書籍名:A to Z
著者名:山田詠美
出版社:講談社
大学に入って知り合った、Ricoという女の子は、常に誰かと恋をしていた。相手はいつも外国人。彼女はたくみに愛を伝え、またたく間に燃え上がる。「英語、完璧ってわけじゃないのに、どうして相手を引寄せられるの?」不思議に思い、私は聞く。「音楽が好きなせいかなあ」彼女はそうつぶやいて、英語の歌を歌ってくれた。
山田詠美の小説はどれも、極上の雰囲気に包まれている。そのバックにはいつも、バラードソングがしっとり漂う。流れてくるのはしわがれた歌声。私はそれらをひとつひとつ味わいながら、ゆっくり言葉をたどってゆく。
物語は既婚の文芸編集者と、郵便局員の青年とが、出会い、やがて恋におち、2人が終わりを認識するそのときまで、多様な人間関係を織り込ませながら綴られいる。
「饒舌な言葉の洪水の中で仕事をしている私たちなのに」思いが言葉にならない瞬間。大人であっても純粋な恋の前では立ち尽くすのみ。そういうもどかしく、せつない気持ちが正確に描写されている。
読後、私は強烈に、誰かに恋をしたくなる。
自分の隙間をうめつくす、その情熱に捕らわれたい。自分のすべての才能を、総動員して、この鮮やかな空気に酔いしれたい。
大学時代は山田詠美をバイブルとして、Ricoの手により導かれながら過ぎていった。彼女たちの世界は、今でも私をひきつけてやまない。ただどうやら私は凡人で、その世界を日常にはできない模様。憧れて背伸びしていた学生時代。今はこの日常を、ありのまま、普通に受け入れ暮らすのが、もっとも幸せみたいである。時折暴走しちゃうけどね。
書籍名:紙婚式
著者名:山本文緒
出版社:角川文庫
会社を辞めて、結婚式をあげた後、にわかにヒマになった私は大量に文庫を買い込んだ。これはその中の一冊である。
私は別に山本文緒の特に熱烈なファンではないが、学生のころからなんとなく手に取り読みふけってしまう。気づいたら本棚に、彼女の作品がぎっしりであった。
古い女流作家の中には演歌のように、恨みつらみがびっしりとつまった悲劇のヒロインぶったものが多い。しかし彼女の作品は、読者をそういう冷めた気持ちにけっしてさせずに、身近な不安へと落とし入れる。なぜならどれも読み進めていくうちに、主人公は他人でなくなり自分がそのまま重なるのである。わかっていたが、目をそらしていたことや、深層にあったその気持ちを、いやがおうでも認識させる。
「紙婚式」。この本もまた例外でない。私はまだ新婚であり、このままこのカラフルで新鮮な生活が永遠につづくと思っている。だって私たちは特別だもの。しかし山本文緒は容赦しない。
「私たちは特殊がられているようだが、おのおのはそれほど特殊な人間ではない。望んでいた生活が手に入ったら、次第にそれに飽きはじめてきたのだ。」
「いつしか私たちはお互いの仕事や友人の話をそれほど興味を持って聞かなくなった。悩みを打ち明けたところで親身になって相談に乗ってくれるわけではないので話さなくなり、二人で出かけても楽しくはなくなった」
「夫はすでに私の一部である。他人でないので会っても寂しさはまぎれない」
「それが夫の独り言ではなく、私に言っているのだと気がついた」
これが自分たちの未来にないと、どうして断言することができよう。
「話題がなかった。これが他人なら何とか話題を見繕う努力もするが、夫が相手なら黙っていても別に平気だ」
沈黙の心地よさから相手への興味までをも失ってゆく。どんなホラー小説よりも、私は彼女の本が怖い。
書籍名:いくつもの週末
著者名:江国香織
出版社:集英社文庫
これも結婚式のあと、買い込んだ文庫のひとつ。
夫とすごす週末の、甘美さと危険。これらを陶酔や感傷ぬきで、ただ淡々とつづる。そのあまりの冷静さに、この人は本当に、夫を愛しているのだろうかと思わず首をかしげたくなる。あまりにリアルな生活描写。自分たちの日常とは重ならずとも、そこから生まれる感情は、共通しているから不安になる。
ただ私が救われた気持ちになるのは、彼女がずるずる別れを回避し、結婚生活を続けているわけではなく、別れをいつも覚悟しながら、夫といる生活を選んでいること。「死が2人を分かつまで」という誓いの言葉は、目的ではなく結果だという、そんな彼女が一緒にいることを選んでいるのだ。
「一緒にいないほうがやすらかだ、と、いくらわかっていても一緒にいてしまう」
この一文が、結婚一年目を目前にした今、はっきりよみがえる。不自由で、めんどくさい様々なことがらにうんざりしつつも、この人なしの人生を、私は生きることができないだろう。そう感じたからきっと結婚したのだと思う。だがそれは、
「
今は
夫と一緒にいる」
だけのこと。一緒にいることを目的とするのではなく、刹那的に選択を繰り返した結果、「死が二人を分かつまで」一緒にいたい。でも絶対にすがったりはしないもん、と私はひそかにつぶやいている。
書籍名:Paradise Kiss
著者名:矢沢あい
出版社:祥伝社
く~っ、やってくれたね、矢沢あい!!
「天使なんかじゃない」であたしはどっぷり彼女にはまり、以降はずかしげもなく、新刊が出るたびにりぼんマスコットコミックスを買いつづけている。どれも現代少女マンガの珠玉であり、いくつになっても読み返しにたえうるすばらしい作品ばかり。ひとつのストーリーが完結するたび、新しい切り込み方を研究しており、マンガ家として、文化を創造している。そんな矢沢あいが、またもや私を悩殺した。
うぎゃー、もう、鼻血出そう!!
一巻目を読んだとき、私は思いっきりパラキスの世界に引きづりこまれ、しばらく放心状態だった。暴走する恋する気持ち。押さえても押さえても、勝手に思いは、ふくれあがる。物語はどんどん加速して、いつでもまるでクライマックス。登場人物たちの日常と、今後のゆくえ。ああいったいどうなることやら。3巻目が待ち遠しい。
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