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2023.03.16
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カテゴリ: 読書
僕はウルトラマン世代ではない。
谷間世代というやつだろう,特番みたいなのは別として,毎週テレビでやっていたのは1980年のウルトラマン80の次は1996年のウルトラマンティガまでなかったのだ。
もっとも,コロコロコミックやコミックボンボンでウルトラマンを扱ったSD漫画はあったし,ウルトラマンキッズなどアニメもあった。
リアルタイムはなかったが,再放送はあったので,初代ウルトラマンは楽しみに見ていたものだ。


ウルトラマンになった男 [ 円谷プロダクション ]

さて,そんなわけで今回読んだ『ウルトラマンになった男』の感想を書いて行きたい。
内容としては,初代ウルトラマンの中の人をした古谷敏の自伝になっている。

見どころは色々とある。大きく3つくらい上げてみよう。
第1に,特撮ヒーローがいなかった時代を描いていることである。
著者は1943年生まれだというから,戦前の生まれである。ウルトラマンだって,仮面ライダーだってない。なお,ウルトラマンは1966年放映で仮面ライダーは1971年放映だから当然と言えば当然なのだが。
そうすると,今のようにフォーマットが定まっているわけでもなく, ゼロから1を生み出す必要があるわけだ。
著者も,「ウルトラマンをやってくれ」と言われても全く意味が分からないところから始まるのだし, 「ウルトラマンは宇宙人なんだ。人間とは違うから,そのつもりで演技をしてくれ」 など言われてもどうしようもないわけだな。
とはいえ,著者も幼いころは鞍馬天狗の映画に夢中になっていたということもあり,要するにヒーローなんだと理解する過程は非常に良いです。

第2に,ウルトラマンの裏話である。
前傾になって腰を曲げたウルトラマン独特のファイティングポーズは,長身の著者をカメラに入れるために屈んでもらう必要があったこと,さらに西部劇のナイフを持った俳優の決闘シーンの影響だとか語られている。
面白かったのは,ウルトラマンのスーツの下である。上半身は裸なのだが,下はパンツにするのか,全裸にするのかと試行錯誤して,最終的にビキニパンツになったりする。
ノウハウが全くない時代,知恵を出しながら進んでいたのだな…。

第3に,スーツアクターの地位に関する生々しい証言である。
いま,僕は何気なく変身ヒーローの中の人のことをスーツアクター,と言っているが, 本書ではスーツアクターという単語は一切出てこない
特撮ヒーローは「ぬいぐるみ」,など言われている。しかも,この「ぬいぐるみ」の中の人の地位は極端に低い。
俳優の命である顔が出ないことから,地位は低かったようで,ウルトラマンの前身であるウルトラQなどの怪獣特撮でも,怪獣の中の人には控え室もシャワーも用意されておらず,喉が渇いた時の水も用意されていなかったという。
普通に考えれば,密閉された「ぬいぐるみ」の中はかなり劣悪な環境だし,全身は汗まみれ。中に入れる時間はせいぜい20~30分だろうに,その配慮もないというのは,現在からすれば恐ろしいことだ。

そして,著者もウルトラマンの中の人であることに対し,当時はさほどの愛着をもっていなかったようである。
挫けそうになりつつも,たまたま通勤中,楽しそうにウルトラマンの話をする子供たちを見て思いとどまるシーンは感動的ではあるから,全く愛着がなかったとまではいわないので,ウルトラマンというスーパーヒーローに対する愛情はあれど,少なくとも当時は,スーツアクターという職業に対して誇りをもっていたようには感じられない。
本書によると,著者はウルトラマンを演じながら,科学特捜隊を演じていた役者の制服が輝いて見えた,だの顔を出している役者への憧れを素直に述べている。
さらに,ウルトラマンの放映後,ウルトラセブンのスーツアクターを打診されながらもこれを断り,ウルトラ警備隊のアマギ隊員役になってしまっている。
結局,著者が演じた「ぬいぐるみ」はウルトラマンの1作だけである。

僕は役者ではないから役者の気持ちはわからない。
だが,現代ならば,高岩成二や岡元次郎のような大人気スーツアクターもいるし,顔を出して特撮番組の端役をやるよりも,スーツアクターの方がよほど人気があるのではなかろうか。
そういう意味で, 先駆者でもあった著者が1作だけしか特撮ヒーローを演じなかったというのは残念でならない 。高岩成二をも超える,伝説のスーツアクターとなれた可能性があったというのに…。

考えるにつけ,栄枯盛衰というもを感じさせられる。
著者によれば,ウルトラマンの作成時期である1960年ころは映画俳優とテレビ俳優の地位には大きな差があったらしい。
映画俳優たちは,「テレビなんて予算もないし,あんな小さな画面で演じてどうするの?」という風潮だったそうな。ところが,今や映画俳優とテレビ俳優なんていう区別はほとんどなく,どちらにも出演する俳優が多いだろう。
最近の例だとYoutuberなんてそうだろう。ここ10年ほどで急激に台頭したが,見向きもされなかったYoutuberはいまやテレビに出演する芸能人を追い抜くことになるかもしれない。
同じく,数十年前の弁護士と今の弁護士では収入も社会的地位も違う。こんなことは,どの業界でもあるのかもしれない。

最後に残念だったところを1点だけ。
本作は鞍馬天狗に憧れた著者の幼少期や,ウルトラマンを演じた時代,それからウルトラセブンでアマギ隊員を演じた時代についてはじっくりと語ってくれるものの,俳優を引退した経緯や,引退後にビンプロモーションを経営し,そして破産したことについては簡略化している。
語るどころか,思い出すのも辛いことなのだろうと察するが,Wikipediaによればビンプロモーションも1971年から1991年まで,20年も経営しており,全盛期は3億円から4億円の年収があったという。
このあたりの話も聞きたかったものである。


ウルトラマンになった男【電子書籍】[ 円谷プロダクション ]





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最終更新日  2023.03.16 14:25:11
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