Terroir

昨日シャンパーニュに引っ掛けた遊びについて書いたので今日もシャンパーニュについて個人的な感想を書いてみる。異論もあるだろうが、あくまでも個人的な感想なのでその点ご容赦頂きたい。

近年 RM もブルゴーニュに倣えとばかり畑単位で作りテロワールを前面に出したものが多くなっているが、どうもその根本的な理由はテロワール云々というよりも高く売れると言う経済的な理由によるもののように思う。ブレークした RM が生産量が限られるため、売り上げ最大化を図るために高級キュベを作るということだ。この背景にはブルゴーニュの値段が高騰するにつれてシャンパーニュの需要も増え（シャンパーニュとブルゴーニュは経済学的に言えば代替材、補完材の関係にある）、ブルゴーニュ GC の価格に見合うくらいの高価格のものでも売れるようになったことだ。ブルゴーニュのように歴史に淘汰され、長年の追認に耐えた格付け毎の畑に依るものではなく、作り手の恣意的な一存で、ある年からその畑を別詰めしてスペシャルキュベとして売り出す。勿論、長年の間畑単位で作られ、売られている例外はいくつか有るが、それはほんの数える程しかない。

勿論シャンパーニュにもに格付けが有るが、畑ごとでは無く、村々だしその村々の格付けもシャンパーニュ地方の生産量が足りないので結構緩い。 Aube を入れたのは一揆に屈した妥協の産物だし、最近 Haut Marne まで拡大されたのも大手メゾンの政治的働きかけと聞いている。

さて、この作り手、最近神格化されているのだが、最近の作りは私にはどうも腑に落ちない。昔はノンドゼの Substance とミレジメの二本立てというポリシーがはっきり分かる作りで厚み、力の有る Substance, 線が細いが優雅でしなやかなミレジメとどちらもそれぞれの良さがはっきり分かったのだが、ここ近年はロゼ、甘口も作り、上級キュベ、下級キュベを作って更に Lieux Dit シリーズと手広くなり、結果どれも普通に美味しい極当たり前のシャンパーニュになってしまったように感じる。これもまあ、その一つだ。まあ、それなりに纏まっていて瓶熟も長いので有る程度 BdB としては複雑味も有るが、昔の  Substance の方がよかった気がする。当たり前の事だが良いワインだけを作って上級キュベを作ればその下のキュベに良いワインが使えなくなり、更に今迄アッサンブラージュで達成していた質の向上も望めなくなり、下のキュベが荒れる。これが少し売れてきた RM の罠なのだろう。この作り手も下のキュベはあまり感心しない。

シャンパーニュはドザージュや瓶熟期間、 MLF 、異なる年、異なるセパージュ、異なる村という３つの要素のアッサンブラージュ等、最終的な質に関わる人為的な要素が多い。ここがクリマが質を大きく決めるブルゴーニュとは全く違うところだ。そういう意味で色々と逡巡した後、シャンパーニュの評価は別段馬鹿高いシャンパーニュを追わず、「美味いシャンパーニュ」と「あまり美味くないシャンパーニュ」の二つに分けて、最初のカテゴリーをリーズナブルな価格で追えば良いように思うのだが、これについては別途また書いてみる。