私がワインを始めた三〇余年前は Leroy はネゴスだけだったが、ワイン通には単なる憧れだけではなく崇敬の対象で有った。類まれなるワインに対しての審美眼を持ち、自分が選んだ作り手に対して一切妥協を許さず素晴らしいワインを作り出させ、ブッションには自分の刻印を押しあの白いエチケットを貼る。それは正に女史の厳しい評価に耐えた合格証であった。当時のメゾンルロワは Musigny, Echezeaux, Grand Echezeaux を始め匆々たる GC 、 Meursault Perrier などの一級、村名、レジョナルと続き、そのどれもに Leroy の刻印が入っているブッションが打ってあった。
その後、自身でもドメーヌを興し、ドーヴネ、ドメーヌと素晴らしいワインを生み出して行くのだが、 Beaujolais Nouveau を作った頃から裾の拡大路線に走って少しおかしくなってしまった気がしている。端的に言うと nouveau を作る過程で出る余剰分のワインを別のアペラシオンで出荷するのだ。通常ドメーヌとは逆にこのネゴスの場合、 nouveau が一番高価なので一番良い葡萄を使い、次は Cru Boujolais 、そして下は広域の Bourgogne Grand Ordinaire や Bourgogne Gamay として出荷。憧れのネゴスの名前で出せば良い値で売れる。素晴らしいシステムだ。穿った見方かもしれないが、 Rhone でも同様の傾向が見られるし、商売としては理に適っているのであながち外れでは無いだろう。
ワインはまあ、至って普通に軽い Gamay で可もなく不可もなく、特記する事も無い。先日書いた Ente の BGO とは比べようも無い。まあ、これを飲んで Leroy の経験が出来たという錯覚を起こす人はいないと思うが、ちょっとやりすぎの気もする。
そしてブッションに刻が無い。果たして 30 年前、蔵から蔵へと回りテースティングし、品質を確認し、合格証を与えたように、女史はテースティングしているのだろうか。多分否だろう。規模が大きくなり個人の扱えるスケールを越え、全てがシステムとして個人の意思に関係なく回っていく。
その日には追憶の意味で Vosne Romanee 2004 でも開けようかと思う。
Vosne Romanee Gaudichot 2004 (Forey) 2023/10/30
Saumur Champigny Poyeux 2012 (Clos Roug… 2023/10/28
Puligny Montrachet Pucelle 2018 (Morey-… 2023/10/23
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