サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2018.09.07
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カテゴリ: クラシック
パロディ
 話が何だか横にも縦にも拡散しているような気がするので、元に戻します。
 それにしても、京都橘というマーチングバンドのありようというのは、期せずしてパロディというか、かなり毒を含んだメッセージを、さまざまな方向に発しているように思える。
 ちなみにパロディとは、例によってwikipediaによれば、
-他の芸術作品を揶揄や風刺、批判する目的を持って模倣した作品、あるいはその手法のこと-
とありますが、肝心なことは「揶揄や風刺、あるいは批判を目的とした模倣」というのは、ややもすると元の作品より一段低く見なされがちなのですが、真に力を持ったパロディというのは、ときに元の作品と同等か、場合によってはそれ以上のしゃれた批評精神を発揮することがあるということです。
 京都橘はもちろん「模倣」ではなく純正のオリジナルですが、私の申し上げたいのは、彼女たちの持する意識されざる「批評精神」といった構えのことなのです。

 直截には「マーチングバンドは、かくあるべし」というような、大人の都合による「物語」に対するもの。通念的な作り上げられた高校生ではなく、自前のJK像を常に発信してるじゃないですか。
 次に音楽のありようそのものの問い直し。「音楽とはいったい何か?」という命題を突き詰めていったときに、それがもし「聞き手に届いたとき、はじめて成立するもの」とするならば、それを「確実に届ける」ために、私たちの場合は「エンターテインメントに徹します」というコンセプトを、自前で編み出したということ。このあたりプロアマ、POPクラシックのジャンルを問わず、既存の音楽観を無前提で受け入れている日本の音楽シーンには、かなり耳の痛いところがあるのではないか?
 さらに加えて、これまた彼女たちのアメリカ音楽(とりわけジャズ)への深いリスペクトは、そのまま現在のアメリカ社会のありように対する「批評」にもなっているのです(とりわけトランプさん!?)。2012年のBenefit Concertが、かつてのアメリカンポップスやジャズを通覧するような中味だったことは前にも触れましたが、今年のBenefitでは、なんとディープパープルやM・ジャクソンまで取り上げて、かつてのアメリカ音楽の多様性と懐深さを称揚してるじゃないですか。
 そして、それを伝える「方法」としてのKAWAIIコスチュームと振り付け。これは大人と子供、男と女のバリアを取り払う「寛容性」の象徴として、まるきり威嚇的でない仕方で、私たちにメッセージを送り続けているでしょう。

 おしまいは、それらをいっこう報じない大手既存メディアに対する「踏み絵」として、彼女たちのパフォーマンスはあり続けているということ。先に大手メディアが青山繁晴議員を取り上げないのは、おそらく既存の行動規範や思考様式そのものを脅かされるのが、イヤでイヤでしょうがないからじゃないか、という話を何度もしましたが、今回もそこまであからさまではないにしても、何となく彼女たちの行いが、今どきの大手メディアの「エートスに抵触する」と、勝手に忖度して「なかったことにしている」のではないか、と勘ぐれる要素があるのです。
 考えてもみてください。正月元旦のカリフォルニアの朝日を受けて、日章旗が誇らしげに飛び跳ねている光景というのは、彼らのエートスからしてみれば、「これは教育上、はなはだよろしくない、日本はこのように誇らしげであっていいのだろうか?」といった、敗戦後ずうっと是認されてきた奇妙に捻じ曲がった価値観に、かなり効果的なヤスリをかけているじゃないですか。ここの「教育上、よろしくない」とは、「国民への教育上」ということですよ。返すがえす言いますが、日本の大手メディアはいつから「国民を教化」するプロパガンダ・メディアと、自分たちを倣岸にも位置づけるようになったのか?
 実は彼らには「前科(?)」があって、2006年トリノオリンピックで荒川静香さんが金メダルを取ったとき、授与式のあと彼女が日の丸をまとって、リンクで祝福を受けていたときの映像を完全にネグレクトしているのです(民放もNHKも全部!)。
 この「エートス」というのは、無意識に条件反射のようにして、その判断や振る舞いに現れてくるので始末が悪い。たぶんメディアだけでなく、おそらく現地領事館も含めて、「できれば触れないことにしておこう。タカが新年のパレードだし、昨年のマーチングコンテストで、京都橘が金賞取ったわけでもないしね」ということになったのではないか知らん。まあ、このあたりは完全な邪推ですが。
 と、何だかまた不愉快な話になってしまいましたね。

 とはいえ、京都橘の話はだいぶ長くなったので、これくらいにしておきます。再び口直しとして、格段に進歩した今年のBenefit Concertでの「 星条旗よ、永遠なれ 」と、アンコールのまたもや「 Sing Sing Sing 」を、別の撮影者(GForce183さん)の映像で観てみましょう。
 「星条旗よ、永遠なれ」は、現地アメリカ人の指揮者の、いわば京都橘のレスポンスの良さを見切ったような細かな指示に、各ポジションがよくついていって、数あるプロアマの演奏の中でも、屈指の出来映えになったのではないかしらん。一方の「Sing Sing Sing」は、これまたここを先途と、「会場の天井も吹き飛べ」というような「猛演奏?」となりました。

 最後にもう一つおまけとして、これはローズ・パレードではありませんが、今年春3月に行われた「 2018京都さくらパレード 」の様子( I LOVE BRASSさんの動画)を見てください。御池通りから寺町商店街を通って四条通までの、いわばノンストップ演奏というより、ノンストップアクションと言うべきパフォーマンス、見ものですよ。10分あたりの「パイレーツ・オブ・カリビアン」を見ていると、何やら海賊船に乗ってどこかへ連れて行かれるような気分に誘われる。どこに連れて行かれるのかは分からない(たぶん本人たちも分からない)けれど、人の波を押しのけ押し分け進んで行く彼女たちを見ていると、少なくとも、とんでもないことには、ならないだろうという気もして来ますね。
 それにしても、追っかけの動画撮影者(ほとんど、オッサンですが)の多いこと。吹き出してしまいますが、それがあるからこんな話も出来るんですよね。

追記
 蛇足でなく追記として、ここまであえて触れなかった男子の京都橘諸兄について。ローズ・パレードでは200人ほどの女子の大群に数人という配置で、ことと次第ではケシ粒のように霞んでしまいそうなところ、付かず離れず絶妙のポジションで結構目立ってますね。
 こういう位置取りを、誰が(どちらが)考えついたのか不明ですが、彼らのしっかりエッジの効いたステップは、全体の躍動感にかなり影響を与えているように見える。これらたった数人のサポートがあるから、200人に及ぶ女子は安心して自分たちのパフォーマンスを、思い切り発揮出来たのじゃないか、とさえ思わせますね。仮にオール女子だったら、もう少し「構えた」雰囲気になったかもしれない。
 怒られるのを覚悟で、ついでに言ってしまうと、まるで数百頭の羊の群れをサポートする牧羊犬みたい。付かず離れず、しかし目立たない形で全体を誘導するのに、男=オスというのは数人で事足りるということでしょうか。しかしそれもまた、女たち(京都の)の策略で、彼らのほうが知らず、そのように祀り上げられているような、いないような。
 何だか最後のが、当たっているような気がして来ました。





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Last updated  2018.09.07 11:15:18
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Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07)  
ナガノ さん
2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまった。色々な事が有機的に結びついて、見えてるかだと感心してしまいました。 (2020.06.19 15:17:02)

Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07)  
ナガノさんへ
 コメントいただき、ありがとうございます。話があちこち飛ぶのは、私の悪いクセで、なかなかまとまった話ができません。
 またいつでもコメントください。 (2020.06.19 16:55:31)

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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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