tomo_hの映画ログ

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2014.10.21
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カテゴリ: 映画ログ
主人公のモデルは実在するが、1950年ごろからホワイトハウスに勤務し7人の大統領に仕えたアフリカ系アメリカンのお話だ。演じるはフォレスト・ウイテッガー、私の記憶では「ラストキングオブスコットランド」で悪名高いアミン大統領を演じた時の他はほとんど善人を演じている(皮肉にもあの映画でアカデミー賞をもらったのだが)少し下がり目で独特の表情があり好感度の高い黒人俳優だ。セシル・ゲインズというこの男は南部の農園に生まれ、過酷な綿花積み労働についていたが、脱走し、ある町のホテルのウエイターとして拾われる。ここで親切な老ウエイターに仕込まれ、ハウスニガー(家宅の中の使用人)として生きる道を選べと諭される。農業よりも仕事は楽だが、あくまで召使いとして自分というものを殺して白人に仕えねばならない。徹底して「空気になれ」と言われた。ホテルのボーイ、ウエイター、として本腰をいれて修行に励んだ。やがてワシントンDCのホテルに転職したが、思いがけなくもホワイトハウスに雇われることになった。彼に目を付けたのはホワイトハウスの事務主任の白人だったが、ホテルで彼のウエイターとしての見事な仕事ぶりを見てスカウトした。

最近は「ダウントンアビー」というドラマがあるおかげで、大きなお屋敷の執事という仕事がどんなものか我々もかなり知識を得られたものだ。仕事は屋敷内のすべての仕事、靴の手入れや銀器磨きや、ご案内、食事の給仕などいろいろある。執事は大統領の部屋へ飲み物を運んだりするのでいつも大統領をすぐそばで見ている。この映画の面白さの一つはアイゼンハウアにはじまり、続く大統領たちを実力派俳優が演じているところだろう。アイゼンハウアがロビン・ウイリアムス、ニクソンがジョン・キューザック、ジョンソンがリーブ・シュライバー、ケネディがジェームス・マースデン、レーガンがアラン・リックマン(意外にもそっくり)と顔を見ているだけで楽しめる。ナンシー・レーガンがちらりと出てくるが鮮やかなファーストレディ振りにうっとりしたが、なんとジェーン・フォンダ!たった数秒の出演なのに印象は強烈だった。執事には大統領もナマの顔を観せる人が多く、各人の個性がうかがわれ面白い場面だ。

さてこの映画はただ大統領が次々現れて楽しませるだけが目的ではない。大切なのは執事という仕事での黒人のアイデンテイテイだ。執事は気を遣う難しい仕事だが、黒人たりとも立派にやり遂げ、お褒めの言葉も頂戴する。これは良いことだが、一歩外の社会では黒人は多くの差別の中にいた。公衆バス、学校、食堂内、などでの差別に抗議する運動が高まる。運動に反対ではないが、主人公は息子たちが公民権運動にかかわるのを反対した。こうして彼の心の中での差別撤廃への動きが少しづつ高まりるが、長年、白人に仕えてきた気持ちを切り替えるのは大変だった。仕事をやめて一人の黒人として街に出た時初めて息子たちの運動に心から参加できたのだった。そしてついにオバマ大統領の時代になり、黒人の誇りは当然のものとなった。執事の仕事を描きながら公民権運動の進み方も描くという2刀流の映画だった。

(おまけ)土だらけの綿花畑から、町のキンキラのホテルへ。ホテルの黄色の制服がまばゆい。ホワイトハウスでは白シャツと黒服のいわゆる執事服となった。

大統領執事の涙





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Last updated  2014.10.21 23:20:50
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背番号のないエース0829 @ ニーナ・ホス 「水を抱く女」に、上記の内容について記…
背番号のないエース0829 @ ニーナ・ホス 「水を抱く女」に、上記の内容について記…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
アイスクリーム@ Re:エリザベート愛と哀しみの皇妃(オーストリア、ドイツテレビドラマ)(08/09) 綺麗事ではなくメロドラマ仕立て。 勝ち…
zebra@ ボクからの(おまけ) もう少しコメントします。 tomoさんの記事…

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