tomo_hの映画ログ

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2014.11.09
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カテゴリ: 映画ログ
監督がジュゼッペ・トルナトーレ、舞台となる街がローマらしいので、イタリア映画ではあるが、主演はジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス、他で英語版なのでかなり国際的な映画である。有名にして権威あり、人気の高い鑑定士で、美術オークションの主催者ヴァージル・オールドマン氏(ジェフリー・ラッシュ)は私の目から見ると、嫌味な人物だ。美術品の真贋を見る目は天才的かもしれないが、私生活はいびつだ。あまりにもキチンと身なりを整えすぎ、髪形(毛染めしている)にまで気を使うこと、少し病的なくらいだ。彼は50歳くらいだろうか、中年すぎの今まで、独身で恋人なし、女性に興味がないように見える。彼の周りには金持ちの老婦人の取り巻きがいるが、取り巻かれるのは良い気持ちらしいが、それ以上のものではなく、高慢で人嫌いだ。家はホテルのように整然と片付き、彼は誰もいない家に夜、帰る。そして秘密の隠し部屋へ行く。大きな部屋だが壁一面に女の肖像画がかかっている。時代は古い物から新しいものまでさまざまで、女の顔も個性的で、彼女らの目は一斉にヴァージル氏にそそがれているよう。彼は絵の美女に取り巻かれ、癒され、至福の時を過ごす。

この映画ははっきりしたミステリー映画で、トリックは最後まで隠されている。上記の完璧紳士のヴァージル・オールドマン氏が、身も心もボロボロになり、廃人同様になってゆく恐るべき事件が静かに進行する。きっかけはクレアという女性から電話がかかり、相続した古いヴィラ(別荘風屋敷)の中の絵を含む家具類を鑑定してほしいといってきたことだ。クレアは外出恐怖症のため絶対人と会わないという。とにかくもヴィラに行ったヴァージルは、黴臭い地下で一つのぜんまいネジを拾うが、これは昔から探されている幻の機械人形の部品だった。これに気を引かれヴァージルはクレアとそのヴィラにのめりこんでいった。

声だけで姿なしの女はついにヴァージルが隠れていると知らずに出てきたが、一見して、私はこの人はクレアじゃないと感じた。若くてきれいな女性だ、隠れているのはなぜか?しかしヴァージルはこの若い女がクレアだと信じた。信じたかったのかも。そして巧妙にもクレアと名乗る女は彼をひきつけ夢中にさせてゆく。

犯罪が存在したのは確かだが、結果はヴァージル・オールドマンの自業自得とも言えるのでは?私は彼の生きてきたやり方と人を寄せ付けない性質が、最後の事態を呼び寄せたのだと思った。一時、廃人になったが、立ち直りプラハの喫茶店ナイトアンドデイで、いつか現れるクレアを待ち続けるヴァージルに未来はあるのか。絵の美女よりも生身の女を知った彼にはクレア以外に惹かれるものはもう何もない。これもまた至福の時かも。

(おまけ)ある時のヴァージル・オールドマン氏、、、鑑定に行ったお屋敷の汚い物置のような居間や客間に、いろいろの家具などが埃をかぶっておかれている。「ガラクタだな」という顔をしてみていたオールドマンの顔が突然止まった。真っ黒の板切れがあった。汚れの中から一つの目が覗いている。果たして汚れを落とすと、ルネッサンス前期のフランドル派画家が描いた少女の肖像が現れた。こうして消えかけた美術品を骨董の中から見つけるのが鑑定士の醍醐味なのだろう。

鑑定士と顔のない依頼人





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Last updated  2014.11.09 17:46:41
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背番号のないエース0829 @ ニーナ・ホス 「水を抱く女」に、上記の内容について記…
背番号のないエース0829 @ ニーナ・ホス 「水を抱く女」に、上記の内容について記…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
アイスクリーム@ Re:エリザベート愛と哀しみの皇妃(オーストリア、ドイツテレビドラマ)(08/09) 綺麗事ではなくメロドラマ仕立て。 勝ち…
zebra@ ボクからの(おまけ) もう少しコメントします。 tomoさんの記事…

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