tomo_hの映画ログ

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2014.12.12
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カテゴリ: 映画ログ
最近、問題作を生み出しているスティーブ・マックィーン監督が2008年に撮った映画で、彼の初長編作品だ。カンヌ国際映画祭でカメラドール賞を獲得したが、監督はもともと美術系の人なので、映像の美しさを買われたのであろう。確かにカメラは美しい。しかし矛盾するが写されていることがらは全く美しくない!一般向きの映画ではない。出来れば見たくないような場面が登場するからだ。壁一面にに塗りたくられた排泄物、誰も好んで見たくはない。そのすごさは息を呑むくらいで、さらに画像ではわからない、臭いを想像すると、もう、、、何とも形容しがたい。しかしこれが1981年の北アイルランドのメイズ刑務所で本当に起きていたことなのだ。

囚人はIRAアイルランド共和軍の逮捕者だ。彼らは自らの信条に従った行動で逮捕されたので、普通のいわゆる犯罪者ではない。政治犯であるという自負を持っている。しかし時のサッチャー政権は彼らを政治犯と認めなかった。このため囚人は囚人服を拒否、他の数々の抗議行動をした。裸で毛布をかぶっただけという「ブランケット運動」尿を廊下に流し排泄物を壁に塗る「ダーティ運動」などで抵抗の気持ちを表した。看守たちは(ひそかに同情するが)大変だったろう。汚い房をジェット水流機で洗っていた。抗議行動の状態の描写だけで、もう閉口する鑑賞者もあるかもしれない。私も実は少し気分が悪くなった。

さらに後半は観ていられない非情な映像が出てくる。マイケル・ファスビンダー演じる囚人のボビー・サンズが先の抗議行動を止めてハンガーストライキに入ったからだ。そして66日後死んだ。だんだん衰えてゆくファスビンダーの様相がすごい。痩せて骨と皮になり、唇は割れ、顔色はまったく血の気なく、よくここまで演じたな、と思うくらいリアルな死相の現れ方だった。彼の様子は当時テレビで時々伝えられたそうで、マックィーン監督は子供の頃見たとか。

上記の理由で、もし映画をエンタメ目的で見ようとする方には絶対お勧めしない。気分が悪くなるのを覚悟で、1981年の出来事を見てみようと思われる方だけどうぞ。アイルランド問題の奥にはこんな出来事もあったのかとただ驚くだけだ。

(おまけ)囚人の家族の面会日だけは、普通に服を着て面会していた。アイルランドの冬は寒いのに裸で毛布だけとはよく耐えられるものだと思った。

ハンガー





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Last updated  2014.12.12 16:16:54
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背番号のないエース0829 @ ニーナ・ホス 「水を抱く女」に、上記の内容について記…
背番号のないエース0829 @ ニーナ・ホス 「水を抱く女」に、上記の内容について記…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
アイスクリーム@ Re:エリザベート愛と哀しみの皇妃(オーストリア、ドイツテレビドラマ)(08/09) 綺麗事ではなくメロドラマ仕立て。 勝ち…
zebra@ ボクからの(おまけ) もう少しコメントします。 tomoさんの記事…

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