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大河ドラマ「平清盛」の視聴率が悪いらしい。
僕が思うに、その原因は、表現する側とそれを受け取る側の乖離にある。
そして、言うまでもなく、劣っているのは、後者の方。
悲しいことに。
演技力でも存在感でも脇役(宮沢りえ)にお株をすっかり奪われてしまった、白痴のような「江」に比べれば(ハクチなのは、主演も演出もだったが)、天地の開きがあるというのに。
リアリティという意味での映像美ならば、龍馬をはるかに凌ぐのに(単なる埃っぽさだけでなくて、ちょっとブルジョアな生活感という意味で。)。
滝沢なんとかが演じたお遊戯会のような「義経」とは、ぜんぜんレベルが違うというのに。
白塗りと鉄漿がいけないのか?あの國村隼と山本耕史の異質感がよいのに。
天皇家の汚猥な権力闘争(というより、あけすけなコヅクリ合戦)が日曜7時の映像表現に適さないのか?
そうそうなんといっても、ワイルドで優しくて、悲しげな吉松隆の音楽がよいのに。
オープニングのピアノ・コンチェルト的な躍動感もいいけど(能楽の挿入画像の不気味さが特にいい)、
挿入音楽の、静かで優しいピアノ曲、「プレイデアス舞曲集」から「5月の夢の歌」が特によい。
時代を感じさせない、こころの表現がある。
民放とちがって、視聴率が低くても、打ち切られることはないとは思うけど。
「平安もの」という難しい題材に果敢に挑戦して、それがかなり成功しているのに。
こんなに優れた番組が、正当な評価を受けていないことと、
21世紀初頭の日本の映像表現の粋とも言えるこの作品に対して、正当な評価をくだせない社会の中に生きていることが、何より悲しい。