恐竜境に果てぬ序章第3節その2

『恐竜境に果てぬ』
序章 第3節 ・試運転その2「対決 ! タイムマシンVS.パトカー」


どこにでもあるような殺風景な高原地帯を、一本のこれもいかにも田舎に相応しい幅員の国道が貫き、ゆるやかなカーブを時々描いては再び視界が開けてずっと遠方まで伸びることを繰り返していた。

ただ一つ、日本のどの地域とも異なって見える景色といえば、殺風景な道路風景の奥に見え隠れする巨大な富士山の姿だった。
国道は霊峰富士の裾野を走っていた。
下りはともかく、この国道は『かすみの裾を遠く引く』と歌に歌われた通り、山梨県に至る上(のぼ)り車線は、富士山の広大な裾野を走っている。時々登坂車線が設けられている箇所以外のところでは、我が国の他の国道と同じだろうが、幅員は狭い。

その国道139号線、俗に地元で呼ぶ『大月線(おおつきせん)』を一台のパトカーが通常速度で北進していた。
なにゆえか、パトカーには青森県警の文字が書かれていた。
さらにこの車は県警高速隊のパトカーであった。それが富士宮(ふじのみや)市、外神(とがみ)から朝霧(あさぎり)高原へ向かう途上にある。

パトカー巡回

助三郎「青森も田舎道が多かったが、俺たちは仮にも高速隊で腕をふるったのだ。並のパトカー警官とは格が違う。けっ ! いまいましい。首都高か大都市部の高速道路をカッ飛ばしてえよ」
格之進「だけど、助さん、このパトカー、青森ナンバーのままってのは、助さんの功績の証しだよ。正直俺はほかの奴らの目が気になるけどな」
助三郎「なあに、気にしなければ万事うまくいく。何かと対立した隊長には珍しいお土産さ。『異例の計らい』と、ひとこと余計なのは気に食わないがな。
ところでおい、格さん、ここはもうじき、山梨県との県境に近い朝霧高原だろ。俺たちはもう立場上静岡県民だし、何よりこのパトカーは静岡県のさらに富士宮署の所属だ。違反車もいないし、そろそろ進路を変えるか」

格之進「そうだった。でも助さん、しつこくて悪いけど、青森ナンバーはやっぱりまずくないか。」
助三郎「なんだ、格さん結局気にしてるか。なあに、昭和37年公開の東宝映画『キングコング対ゴジラ』でも、東北本線つがるが、東京からだいぶ北上したところで、ゴジラの接近の報に急停止して、そこに待機していた何台かのバスが、すべて富士急行だったという素晴らしいシーンがある。それに比べたら、これくらい問題にならぬ。さて、道を変えて、署の方向へ戻るか」

キンゴジ富士急
昭和37年(1962)東宝映画『キングコング対ゴジラ』劇中に登場した富士急行のバス。

富士急行
富士市厚原(あつはら)の車庫に並ぶ富士急行のバス(2007年現在)。




試運転出発090129

田所「村松、飛んで火に入(い)る夏の虫だ。パトカー無線が近くに、正確には富士宮方向に電波を飛ばしている。さっきから一人の警官がグチ混じりに勇ましいことばかりしゃべっている。これは案外早々とご対面となるぞ」
私「こっちの無線開かなくてもキャッチ出来るのか。お前の発明はますます凄いな」
田所「ナニ、潜水艦のハイドロフォン(水中聴音機)みたいなものだ。ソナーだとこちらにもリスクが出来るけどな・・・。さて、前がすいている。少し加速するぞ」
私「うーむ、さっぱりわからねえ」

上り坂

田所「かなり上(のぼ)り勾配だ。無限軌道にはやや不向きか」
私「キャタピラの音と震動が俺はおもしれえ。それでもスピードはかなり出てるんだろ ? 」

田所「平坦路なら時速100キロは軽いが、上り坂はちとキツいな」
私「100キロ ! ? それはまた凄(すげ)えな。自衛隊の戦車はどれくれえだっけ・・・」
田所「古いところでは村松の好きな61式中戦車が時速40キロ台、次の74式が50キロ強だったか。ついでに現在の主力の90式はもっと速くて時速70キロくらいか・・・」
私「すると俺の持ってる古い『自衛隊図鑑』の61式改ってのは、74式のことかな。確か四次防(よじぼう)って書いてあったけど・・・」

マシン公道のお邪魔虫

田所「専門的な言葉だな。自衛隊の第四次防衛力整備計画の略称だ。ネットの戦車の検索あたりでは、74式を、第二世代戦車などと記述してあるだろう」
私「あ、田所済まねえ。どうやら公道のお邪魔虫みてえだ」
田所「承知だ。4WDっぽいのはいいとして、スカイラインにフェアレディか。村松」
私「・・ああ、なんだよ」
田所「バイクでしょっちゅう走ったお前も承知の通り、このあたりは皆時速80キロは軽く出す。広々している割には制限速度が50キロか60キロというのもいかにも非現実的だ。さて、この渋滞を転瞬に解消するには、一分後に約1.3キロ前方に行っていればいい。それを一瞬でやる」

田所は、テレポーテーションの操作をしたのだろう、例の体にねっとりまつわりつく静電気の感触がしたと思ったら、タイムマシンの後方がずいぶんあいてしまった。

マシンテレポート一回目

私「お、凄(すげ)え ! けど、また追いついて来やがった」
田所「仕方ない。テレポーテーションを繰り返すか。試運転で同じことばかりはやりたくないがな・・」
私「俺はおもしれえよ。」
田所「そうだな。テレポーテーション技術の限界回数を知る手がかりになるかも知れぬ」

・・・・・・・・・・

格之進「ん ? おい助さん、今、交差道路を何か妙な形の車が走ってたぞ ! 」
助三郎「格さんも見たか。むむ、怪しい車だ。自衛隊でもあるまいに、一般道をキャタピラで走行している。格さん、追跡して停止させよう、進路変更して加速するだ、あ、間違った加速するぞ ! 」
格之進「おい助さん、もし自衛隊だったら、ズドンと一発大砲かなんかぶっ放したりしないかな。クーデター起こした戦車だったりして」
助三郎「何を言うか ! そんなことするわけないに決まってる。我が国は軍隊を持たず、自衛隊は平和を守るためにあるのだ。まして、自衛隊の戦車がパトカーに向って大砲なんか撃つわけがなかろう ! いくぞッ」

・・・・・・・・・・

田所「おい村松、パトカーがやって来た ! 哀れな田舎警官だ。追いつかれるのは承知だがもう少し加速するぞ」
私「ほい来た」
助三郎「遂に本性を現わしたな、法規の基本も守れぬばか者ども ! お前らを逮捕する」
田所「無線を開く。ふふふ。出来るものなら逮捕してみろ。権力の手先の犬ども ! 」
私「田所、言い過ぎじゃないか ? これはどうみても、俺たちにぶがないぞ」

田所「おまわりめ。ははは。お前ら犬ども、この場でお回りして、無論三べんだが、『ワン』とほえてみろ」
助三郎「うぬぬ、余りと言えば余りの暴言と、警官を侮辱して平然としたその無礼な態度 ! よし、公務執行妨害、じゃなかった、警官侮辱罪か、ま、何んでもいい、逮捕する ! 」

パトカー到着

田所「おお、おいでなすったな。待っていたぞ、青森県警のパトカーに乗る弥次喜多コンビだ。さあ村松、これからあのバカのコンビと一騎打ちだ ! 」
私「田所、俺は正直おっかねえけど、お前の科学力を全面的に信用するぞ」
田所「その返事や良し。パトカーとの対決に入る ! 」

助三郎「いい気になりやがって ! とっつかまえてやる。格さん、赤色灯つけてサイレンだッ ! 」
格之進「よし来た」

パトカー追跡開始

♪ウーウーウーウーウーウー ! ! ウーウーウーウーウーウー ! !

助三郎「格さん、おまえ、いつの時代のやってんだ ! 空襲警報じゃないぞ ! 」
格之進「おお、悪かった。俺よぉ、トトロ趣味でよお」
助三郎「格さん、それ言うなら、レトロだろ。レトロ趣味。な ! 」
格之進「おお、また悪い悪い」

助三郎「前方をゆくキャタピラ装着の車両、キャタピラ装着の車両、すみやかに左に寄って停止しなさい ! 」
田所「村松、いよいよ田所式タイムマシンの本領発揮だ。相手を警察と思うなよ。あれはやがて我々の不倶戴天(ふぐたいてん)の仇敵となる」

田所の口調が変わって来たし、なんだか私には恐ろしいとしか思えない国家権力への憎悪をむき出しの言葉を放っている。私は田所のタイムマシンの科学力に全幅の信頼を置くしかないと思った。そしてなぜか、これからとてつもない場面が展開する予感を禁じ得なかった。

探検車逃走開始

助三郎「前方の自衛隊またはそれをマネたようなキャタピラ装着車両、徐行して道路左端に停止しなさい ! ここは一般道路で、戦車などは走行出来ませんよ。すみやかに停止しなさい ! 」
田所「ハハハ、あいつら、言葉遣いがまとまってないな。さて、さらに加速して最高速度試験にかかる。村松、シートベルトなどというくだらないものは装備してないから、少し気をつけてくれ」
私「もう、何が何だかわけがわからなくなって来た。お前に任せて、ポリ公どもをとっちめてやろうぜ ! 」

カーチェイスサイドビュー

助三郎「なんだあ、あいつら。急にスピード出しゃあがった。格さん、絶対逮捕するぞ ! 」
格之進「おおッ ! ついでに横っ面の一つもぶったたいてやりたいよ ! 」

ガーガー !
助三郎「ん、何だこのノイズは ! ? まさか奴らの・・」
田所「フハハハ。オツムの足りない貴様らだ。さっきからとっくに無線は開いている。ノイズでわかりやすくしてやったと思え」
助三郎「なにいーッ ! てめえ何者だあ。警察をナメてかかると、あとで痛いめに遭わせてやるぞ ! やい ! 警察無線に無断で入るな ! 」

田所「その:警告には従えぬ。こちらから改めて警告するぞ。我が車両の後方をスピード違反して走行中のパトロールカーに告ぐ。緊急車両と言えども、逃走車両の安全に配慮して、法定速度の範囲内で走る規則がある。我が車両は既に時速80キロに達し、さらに若干オーバーしている。法規にも寛容なところがあり、例えばバイパスで制限時速60キロのところなら、70キロまではオービスも作動せぬことを、我が助手席のバイク趣味の者が、まじめに走行したうえで、それでも確認のために、富士警察署に寄って、知らされている。
ゆえに、これをあてはめるなら、諸君のパトロールカーは時速90キロまではスピード違反にならぬこととなる。繰り返す。諸君こそ、すみやかに速度を時速90キロ弱に落として、安全をはかるべし」

私「ダメだ、猛追して来やがった。田所、この車、いったい何キロまで出るんだ ? 」
田所「キャタピラのままだと時速100キロ・・・はキツいな、上り坂は。ま、その近くまでというところだ」
私「ああさっきお前が言ってたな。田所、奴ら、追い越しにかかるぞ ! カッカしてるぞ、きっと」
田所「すべて計算のうちだ。村松、テレポートして一旦消えるぞ」

パッ ! なんちゃって。

ここで著者からのお話。
「この拙い物語は、拙いなりに、かなり壮大なスケールで展開していきます。それにしても、まだようやく試運転シーンに入ったばかりなのに、画像を凄まじく浪費しています。
でも、ほんの入り口のここでカー・チェイスシーンを画像少なめにすると、私のヘタな文章だけでは、迫力半減します。思い切って画像を使います。むしろ、恐竜時代に入ったら、これは作劇上の秘密にもかかわるのですが、意外に画像消費は控えめになるかも知れません」

・・・・・・・・・・・・・・・

マシン消失

助三郎「うッ ! 」
今しも追い越さんとしていた佐々木助三郎運転のパトカーの目の前で、戦車のようなタイムマシンは煙のように消えてしまった。凄絶な肩透かしとも言うべき現象は、勢いづいていた助三郎のハンドル操作を危うく誤らせるところだった。

格之進「危ねえー、助さん ! ああッ ! ・・・消えた・・・ ! 」
助三郎「格さん・・・俺は神に誓っても、絶対酒なんぞ、飲んでない」
格之進「わかってるよお。助さん、いや俺だって、厳守してるよ。うっかり前の晩のが残ってないかも、ちゃんと確かめてるよ。・・・・・でも俺たち、何かにたぶらかされているのかなぁ・・・」

助三郎「ばか言え ! キツネもタヌキも関係ないよ。・・・・・格さん、どうする ? 」
格之進「とりあえず走ってみようぜ。あ、でも横道にでも隠れたとしたら、完全に見失っちまうなぁ・・・」

ガーガー !
助三郎「シッ ! まただ」
田所「後方にいると察しられるパトロールカーに告ぐ、こちら先刻のキャタピラ走行車両なり。我れら、今、諸君の車の前方およそ五キロ先を走行中なるも、カーブがあるため、そちらからは見えないことと思う。ゆっくり走っているから、やや速度を上げて追いつかれたし。報告以上」

助三郎「ううううぅぅぅ ! チキショー、あったま来た。絶対つかまえて、ボコボコにしてやらなきゃあ、気が冶まらねえぞ ! 」
格之進「だけどよ助さん、あいつら、普通の自衛隊じゃないよ」
助三郎「ああ、もちろんさっきと違って、自衛隊車両じゃあないことはわかった。でもよ、ここまでわけのわからないめに遭ったら、このままじゃ帰れないだろ ! 」

カーチェイス・マップ
目下、本栖湖(もとすこ)方面へ北上中ですが、湖へはゆかずに道なりに、地図上では本栖のところを右へ、そして、青木ヶ原にさしかかる頃、林道へ入ります。なお、おなじみの富士山は、山頂までの水平距離にして、本栖と記されているところから南東方向に約15キロのところにあります。



田所「村松、きょうはいろいろ不条理な経験をさせて済まなかったな。とりあえず帰還する 。続きはもちろん後日行なうが、この世界の時間経過に合わせて、きょう一日で一気に終わらせたことにする」
私「帰還って言うと、田所のログハウスか ? 」

田所「うん。試運転第一回目としては、マシン自体をそれほど酷使したわけでもないが、建造技術も初の試みだったから、あとでじっくり点検してみるよ」
私「いや、俺は面白かった。・・・ってことは、田所、これからの試運転の続きは、もっといろいろなことやるのか・・・ 」
田所「うん。次はもちろんパトカーの実物相手にどれだけマシンが性能を発揮出来るか、様々な装置を作動させてみるつもりだ 」

私「少し教えてくれるか ? 」
田所「うむ。例えばマシンの旋回性能試験、それからマシンの中から外部へどれだけの地形的変化を起こせるか、さらにはマシンの飛行試験なども行ないたい」

私「おお、何んだかほとんどわからねえけど、面白そうだな。え ! 今飛行試験って言ったか ? 」
田所「ああ、ごく簡単なことしかしないが、こいつを空中に浮かせようと予定している 」
私「お前、この何トンもの巨体を空に浮かべるのか ! ? ・・・万一落ちたら、大ケガ、じゃあ済まねえな」

田所「うぬぼれるつもりはないがな、マシンを宙に浮かせるメカニズム自体はごく単純な力学操作に過ぎぬ」
私「何んだか俺はガキの頃見た、じゃねえや、今でもたまに見る東宝映画の『海底軍艦』を思い出すぜ」
田所「ははは、お前と見に行って俺がバカにしたことがあったな。だが多分あの海底軍艦は、内燃機関の力で、ジェット噴射などをして巨大な質量を空中に浮かせたのだろうがな、そんな方法では限界がある、というよりお前の夢を壊すようで済まぬが、まず不可能だ。このマシンはもっと合理的な力学制御でやるよ」

私「ダメだ、ここまでの田所の話はまるっきりわからねえが・・・。それはそうと、思いついたことがある。推測だけどいいかな」
田所「構わぬ、話してくれ」
私「間違ってたら言ってくれよ。つまり、さっきの田所の話だと、パトカーとのカー・チェイスはきょうのうちにもう終わってしまうのが事実なはずだ。事実って言うか、この世界での行動になるって・・・どうもうまく言えねえな・・・。ま、いいや。ところが確かにまだ俺たちも、この先の実体験はしていないのも事実だ。ハハハ、タイムトラベル・テーマは実にややこしいのは昔からの宿命だ」
田所「村松の話もなかなか面白そうではないか。続けてくれ 」

私「うん。週のうち、お前はかなり多忙で、俺はわずかな仕事がある。だから、タイムマシンの最大武器の時空移動だか何んだかを生かして、カー・チェイスを中断してお互いの自宅に戻って、仕事をして、それからまたカー・チェイスの現場、正確には同じ日付と同じ時刻に戻って、いかにもパトカーに追われ続けているように見せかける。こういう手を、実は使ってるし、そうしねえと、無理なわけだ。で、田所、一つ質問してもいいかねぇ・・・」

田所「ああ何でも聞いてくれ」
私「カー・チェイスをあのまま続けていたら、俺たちは、この世界の時間の流れの中で、自然に時を過ごして、今に至っているわけだよな」
田所「なるほど。それが言いたかったか」

田所は科学理論になると生き生きして来る。

私「ところが現実は、俺たちは一旦自宅に帰って仕事なり私用なりを済ませて、また時間をさかのぼってパトに追われるということをやるのだからさ、タイムマシンに乗らないで、ほかの人たちと同じこの三次元世界の生活を続けている場合に比べて、まあ、ほんの少しだけど、肉体の年齢としては、年をとっているってことになるんじゃねえのか・・」

田所「その通り。村松。これからはもっとひどいことになるぞ。極端な例を挙げよう。例えば中生代のジュラ紀に行くとする。そしてそこで、何か生命にかかわる事態に出くわして、ジュラ紀で一年過ごしたと仮定しよう。ことが終わって無事現在の世界に帰還したとすると、年齢は変わらないのに、俺たちの肉体は一年分年をとってしまう。そういうことでいいのかな ? 」

私「なるほどな。ジュラ紀で一年過ごしたからと言って、一年後の世界に帰還しても・・・」
田所「俺は係累がこの世にいないからいいとしても、大学では失踪ということでちょっとした騒ぎになるな。村松はご両親が元気であっても例えば捜索願いを出しているかも知れぬな」
私「『ドラえもん』なんてのは、そこへ行くってえと、ずいぶんのんきな漫画だぜ。『のび太の恐竜』なんて漫画で涙を流したなんてほざいてた高校生が昔いたけどよ、なんにもわかっちゃいねえんだな。藤子・F・不二雄さんも、のんきだねえ。はは、のんきだねえ、なーんてな」

田所「村松。怖くなったら、今のうちならやめてもいいぞ」
私「だがな、俺はあいにく口が軽いんでな。お前のこの機械のことをしゃべったら、マズいんじゃねえのか・・」
田所「安心しろ。お前の精神状態を疑われるくらいで済む」

私「あ、そうか。タイムマシンなんて、誰も信じないよなぁ」
田所「今回の試運転に費やす時間は、おおざっぱに半日ほどで済むから、肉体年齢の変化はほとんど無いとみて良い。ただ、俺たちは村松の家に何時間かいたことになるから、そのあたり、若干のつじつま合わせなどは必要になるかも知れぬ。俺に関して言うと、大学からの連絡事項への返事が滞っていたとしたら、うまく言い訳しなければな。村松、改めて聞くが、迷いが生じてないか ? 」
私「フフフ、残念ながら俺は恐竜時代へ行くぜ。パートナーが必要だべ ? 」
田所「ははは、本音を見透かされたか」

私「しかし田所」
田所「どうした ? 」
私「このSFは、果たしてそう呼ぶ資格があるかどうかは別としてもよ、いろんなエピソードが用意されていて、まだほとんど使っちゃあいねえ」
田所「そのあたりは村松に任せる。よし決まった。もうそろそろ、助さん格さんのパトカーが追いついて来る頃だ。村松、帰還するぞ」

私「よし来たッ ! 」
田所「次回試運転まで、くれぐれも身体に気をつけてくれ。もっとも、何か不測の事態があった時に備えて、お前の行動予定、例えバイクで出かけるくらいのことでも、外出前には連絡をくれ。これも詳しく話すと面倒だから省くが、万が一の場合も、時空操作によって、かなりの修復が可能だ」
私「最後に全くわからなくなったけどよ、とにかく理論のことは田所に全て任せて信用する」

私は抜き差しならぬ未知の魔境へおもむく心地だったが、なぜか恐竜パークのことが頭に浮かんだ。だがそれも束の間のことで、囲いの中の恐竜ではなく、太古の世界をのし歩く巨獣たちの姿が脳裏を覆いつつあった。


―その2了、 序章第3節その3 へつづく―


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