去年の春先、駅前の「グルーヴィン」で安く手に入れた。 冴えないジャケットのクレジットを見て即買いを決め込んだ。 DAVE LIEBMAN,PAUL BOLLENBACK,TONY MALABY,ERIC FELTEN ,DREW GRESS等有名どころが参加。製作が1992年となっている。というと有名どころもリーブマンを除いて、今ほど名が知れていない比較的初期の演奏が記録されているなという計算が働いた。 スタンダードが結構入っている。 トニー・マラビーがスタンダードをどんな風に料理しているのであろう? 家に帰って早速プレイボタンを押してみる。 様々なフォーマットで演奏されているのであるが、デイブ・リーブマンとトニー・マラビーに焦点を絞って聴いてみた。 リーブマンがソプラノサックスで3曲、クインテットで演奏されていて、トニー・マラビーの方はTP,TB、G,にスリーリズムのセプテットの編成。 リーブマンが「BEAUTIFUL LOVE」とリーダーCRAIG FRAEDRICHのオリジナル2曲、トニー・マラビーが「SO IN LOVE」「SOCIETY RED」「WHAT IS THIS CALLED LOVE」他1曲を演奏している。 リーブマンはいつもの如くクロマティックなラインを織り交ぜながらメロディック、ハーモニック、リズミック三つの面からアプローチを試みて緩急自在なプロフェッショナルなソロを展開している。リーダーのトランペットはアップテンポのオリジナル曲で冴えをみせているが、リーブマンとの力量の差を正直感じると言わざる得ない。 トニー・マラビーは10年以上前から今の吹きすさぶと形容してよいようなスタイルを既にこのレコーディング時に持っており、個性的なトーンでもってオリジナルなプレイを展開している。もっとも今なら吹かないような、フレーズ、ジャズ演奏でのクリシェなんかが入っていて微笑ましい。 現在の姿を認識しているからというのもある程度言えるのかもしれないけれども、やはりビッグネームや話題のミュージシャンは若手の頃や下積み時代の演奏にもなにか他と違うきらっと光る個性を持っているのだなぁと思った。 1992年作品 WASHINGTON D.C. HOT HOUSE RECORDSから1985年にリリースされたレコードで、10年以上前に岡山のLPコーナーで買った。大好きなチャールス・マクファーソンとダスコ・ゴイコヴィッチがメンバーに入っていたからに他ならないのであるが、ベースのLARRY GRENADIERの最も初期の録音(ひょっとして初吹き込み?)プレイが収められているレコードでもある。 1曲目は「BLUES FOR RED」レッド・ガーランドに捧げられた曲だと思う。 LARRY VUCKOVICHのピアノタッチにガーランドの影響が強く窺えるので、間違いないだろう。実際、歯切れがよく軽快なタッチとブロックコードの多用がガーランドを連想せずにいられない。まずは腕試しといった感じの後は、マクファーソンの「FEEBOP」に続く。 ゴイコビッチとマクファーソンの二菅で演奏されて、快活でありながら両者ともベテランらしい余裕を感じさせるプレイでソツのなさを見せつける。 ゴイコビッチはこの頃の方が現在のプレイよりハードな印象で、反対にマクファーソンは音色が現在の方がより肉厚なトーンになった様に感じる。録音のせいかもしれないけど・・・。 3曲目はスローテンポで「INVITATION」をピアノトリオでプレイ。 アル・ヘイグの同曲が名演で有名だけれども、ブコヴィッチの演奏もなかなか捨てた物じゃないです。でも、ここは、マクファーソンのアルトをフィーチャーして聴きたかったのが本音のところです。 4曲目はVUCKOVICHのオリジナル作で、中近東の旋律っぽいテーマが二菅で奏された後、ピアノ、アルト、トランペットとソロが続く。モードでアドリブを取っているマクファーソンやゴイコビッチは最近のプレイではあまり聴けないとおもうので、少し珍しいといえるか? 5曲目はバラードメドレーでマクファーソンが「EMBRACEABLE YOU」ブコビッチが「LUSH LIFE」ゴイコビッチが「YOU DON`T WHAT LOVE IS」を演奏していて、この辺が最も各人の持ち味が発揮された演奏だと感じる。 ラストの「星影のステラ」では、ラリー・グラナディアがテーマを取るが、ここもマクファーソンにテーマを演奏してほしかったところ。アドリブはしっかりとっています。 触れなかったがEDDIE MARSHALLも歯切れのよいシンバルワークでセッション全体をしっかりサポートしていると付け加えておく。 録音は1983年8月26,27日1984年12月27日
昨年の2月にDUから通販で入手したCDで、トランペットワンホーンものなので、どんなものかなぁと買ってみた。ピアノの替わりにギターが参加したカルテット編成。 TORE JOHANSENは1977年生まれのノルウェーの若手トランペッターでトロンハイムの音楽学校で1996年から2000年にかけてジャズを学んだ経歴の持ち主。 このアルバムは3枚目のリーダーアルバムで、このアルバムに参加しているギタリストHALLGEIR PEDERSENとドラマーROGER JOHANSENのオリジナル作品とスタンダード「IF I SHOULD LOSE YOU」「A NIGHTINGALE SANG IN BERKELY SQUARE」「EVERY TIME WE SAY GOODBYE」、チック・コリアの「WINDOES」が収録されている。 バンドのメンバーは全員70年代生まれと若いが、彼らの音楽的嗜好はこのアルバムを聴く限りオーソドックスな4ビートジャズ中心のメインストリームなものの様だ。 TOREのトランペットは北欧の清楚でマイナスイオンをたっぷり含んだ空気の様に、爽やかで気持ちよい。 音色にジャズ奏者が一般的に持っている陰りやくぐもったところ、ダークネスな部分があまり感じられない。かといって明るいわけではなくて、朝靄のような乳白色した印象といったところか。 スタイル的にも実直で難しいプレイはあまり行わない。 聴いていて悪い気はしない・・・が個人的にはもう少し汚れたというか、捻くったところが音色的にも、スタイル的にもあった方が好みなのは私が古い人間なのか? 時々棚から取り出して聴きたくなるアルバムなので、好きな部分もあるのだけれど・・・ メンバーはTORE JOHANNSEN(TP)HALLGEIR PEDERSEN(G) OLE MORTEN VAGAN(B)ROGER JOHANSEN(DS) 録音は2002年7月22日
今月になってDUから通販で入手。 好きなツーテナーもので、おまけにピアノレスなので二人とも思いっきり暴れてくれている。ドラムはジム・ブラックで4ビートプレイがたっぷりと聴ける。 NYダウンタウン派のエラリー・エスケリンがこのリーブマンとのセッションでどういう演奏を繰りひろげているかがキーポイントのCDだと思う。 エスケリンは思ったよりまとも?なプレイを展開している。 アドリブに入るとリーブマンに比べるとやや抽象度の高いフレーズが入らないことはないが、むやみやたらに音を外したりフリーになることも無く、楽曲に沿ったプレイを展開。 エスケリンは、hatLOGYで現在展開している自身の音楽での非常にオープンフォームなタイプの演奏でアブストラクトな音色の変化が感じられる多彩な表情をみせてくれているが、こういうストレートな楽曲(タッド・ダメロン「GNID」や「WHAT IS THIS THINGS CALLED LOVE」)でのプレイもそういう自身の持ち味を残したままオーソドックスなプレイスタイルも立派にできる事を証明したと思う。 最もエスケリンの曲、3曲目「YOU CALL IT」などはフリータイプの演奏でエスケリン以上にリーブマンの血管ぶち切れプレイが聴ける。 5曲目の「WHAT IS THIS THING CALLED LOVE 」はコニッツの「SUBCONSCIOUS LEE」(リーブマン)とタッド・ダメロン「HOT HOUSE」(エスケリン)が同時に吹奏されて、スリリングであるとともに種明かしがされているようで、ジャズを聴くことの満足感を味わえる1曲だと思う。 7曲目ではウェイン・ショーターの「VONETTA」が演奏されている他はリーブマン、エスケリンの楽曲。 この種のバトルセッションはお手のものであるリーブマンに充分引けをとらない演奏を展開しているエスケリンのプレイは特筆されてしかるべきものがあると思う。 リーブマンとエスケリンのことに終始してしまったが、リズムセクションの素晴らしさも付け加えておきたい。 特にジム・ブラックの4ビートプレイの素晴らしさに感服した。 この人どんどん凄くなっていてこういうストレートなプレイでも大物の風格を見せるようになってきていると思う。 メンバーはDAVE LIEBMAN(TS)ELLERY ESKELIN(TS)TONY MARINO(B)GIM BLACK(DS) 録音は2004年5月30日 NYC
オランダの若手女流アルト奏者のリーダー作品。 GWに「ノルディックサウンドヒロシマ」に頼んで入荷してもらった。 オランダの女性アルト奏者というと、ジャズではキャロリン・ブロイヤーが有名だが、このTINEKE POSTMAもひけをとらない有望な人材。 このアルバムではクリス・ポッターが賛辞を書いている。 アルトの音色はダークネスな成分を含んだジャズ向きのサウンドで、フレーズもストレートで淀みなくよく歌ったもので好感が持てる。 ピアノのROB VAN BAVELにフェンダーローズを弾かせてこれが、楽曲を活かしていて好印象を抱かせるアレンジになっている。 このデビューアルバムでも自身のオリジナル曲を中心に演奏しているが、1曲目や5曲目などミディアムからアップテンポの曲に魅力を感じる。楽曲の中に俗っぽくならない程度にキャッチーでポップなメロディーを挿入しているところにが、上手いと思う。 ジャズは曲や演奏が分かりすぎても面白くないし早く飽きがくる。反対に難しすぎても馴染むのに時間がかかったり挫折して聴かなくなるケースが多い。 TINEKE POSTMAはその辺の塩梅が良くわかっているのか、微妙なバランスでジャズ入門者もベテランのファンも納得させる結構イイ曲を書くと思う。 メンバーはTINEKE POSTMA(AS,SS)ROB VAN BAVEL(P,EL-P)JEROEN VIERDAG(B)MARTIJN VINK(DS) 録音は2003年4月19,22日
去年のGW明けに倉敷の「レコード屋」で買ったもので、\690でこの時は10数枚珍しいCDを買い込んだ。通常のプライスだったら、このような存在を全く知らないCDは買うのに勇気を要するけど、\690だったし、曲もカル・ジェイダー、ジョビンの「白と黒のポートレイト」、ショーティー・ロジャース、ヘルメート・パスコールの曲、「TANGERINE」などをやっているので、少し期待して買ったのだと思う。 PLAZA JAZZ TRIOというトランペット、サックス、パーカッションの編成でラテンを演奏するグループとSTEKPANNAという北欧のギタートリオの全く別のふたつのトリオが合体して一つのグループになったというユニークなグループ。 そんなバンド結成までのヒストリーが信じられないほどしっくりした一体感のあるバンドサウンドになっていて、躍動感溢れるラテンサウンドが繰りひろげられている図式。 ギターのMADS KJOLBY OLESENはフィンランド出身のギタリストでそのプレイは、そのせいかスタイリッッシュでクールな印象を受けて、全体のバンドカラーの舵取り役、制御装置の役割を担っているように感じる。 GEORGE HASLAMの轟音バリサクや活きのいいペット、グルーブしまくったパーカスを北欧勢(ベースはスコットランド出身だが)のギタートリオ隊が微妙なコントロールを施してトータルサウンドとしてのバランスを保っているように思える。 5曲目MADS OLESEN作曲の「MATUSALEM」はそんな北欧のひんやりした空気感とラテンのホットネスがうまくブレンドされた彼らのバンドサウンドの特徴がよく顕れた曲だと思う。 6曲目の「タンジェリン」もクラブのフロアで映えそうないい仕上がり具合。 こんなCD、あの時「レコード屋」に寄らなかったら一生知らず仕舞に終っていただろう。 そう思うと一枚の作品との出会いは一期一会なんだとつくづく思うのであります。 メンバーはSTEVE WATERMAN(TP,FLH)GEORGE HASLAM(BS)MADS KJOLBY OLESEN(G) STEVE KERSHAW(B)ROBIN JONES(PER)PETTER SVARD(DS) 録音は2003年4月17日 OXFORD
WILLIAM PARKER(B) ERI YAMAMOTO(P) MICHAEL THOMPSON(DS)
1 ADENA 2 SONG FOR TYLER 3 MOURNING SUNSET 4 EVENING STAR SONG 5 LUC'S LANTERN 6 JAKI 7 BUD IN ALPHAVILLE 8 CHARCOAL FLOWER 9 PHOENIX 10CANDLESTICKS ON THE LAKE
昨日と同じく先日の中古市で買ったCDで、バックのメンバーの名前で興味を持った。 BOB SHEPPARD,GEORGE CABELS,JOHN PATITUCCI,TOM BRECHTLEINという豪華な顔ぶれで、リーダーのTONY LUJANだけが無名。 ジャケのデザインもダサくて最初オールドジャズのオムニバス盤かなんかかなと思ったぐらい。メンバーのクレジット見過ごしていたら1秒後には次のCDに目が移っていただろう。 1曲目から結構ゴリゴリのモードサウンドで特にジョージ・ケイブルスのプレイが冴えている。TONY LIJANはクラーク・テリーが率いるALL-STAR YOUTH BIG BANDのトランペットセクションの一員として全米とヨーロッパを巡業したそうで、その後はラスベガスでフランク・シナトラやトニー・ベネットのバックバンドで演奏したり、ジョニー・グリフィン、テテ・モンテリュー、ブランフォード・マルサリス、ジョージ・ケイブルス、クリス・ウッズと共演したりレイ・チャールス、ジェラルド・ウィルソン、ビル・ホルマンのビッグバンドで活躍した経歴の持ち主。 このアルバムはLUJANのファーストアルバムであり、一曲を除いて全曲自身の作曲による力の入れよう。当然演奏にもガッツが漲っていてフレディー~ウディー・ショウラインの活きのよいプレイが収録されている。 BOB SHEPPARDやGEORGE CABLESの演奏もリーダーのやる気に感化されたのか今日のより成熟したイメージのプレイよりずっとアグレッシブなプレイをしていて全体のバランスが整っている。 TONY LUJANはその後もリーダー作をコンスタントにリリースしていて日本ではほとんど知られていない人材でも結構聴かせるプレイヤーがまだまだたくさんいることを実感させる。 1990年作品
デイブ・リーブマンがジェイムズ・マディソン・ユニバーシティー・ジャズ・アンサンブルと1992年に録音したコルトレーン曲集。 デイブ・リーブマンはコルトレーン集をOWLやARKADIAレーベルでもリリースしているし、ビックバンドとの共演盤も結構多くて、古くはDRAGONのトルファンビッグバンドとのものから近作のブダベストジャズオーケストラのものまで、7,8枚あるはずで、そもそもリーダー盤、参加作品とも凄い枚数をリリースしている。 その作品数は自身のディスコグラフィーで知ることができるが、コンプリートにコレクションしている人はいるのだろうか? リーブマンは80年代以降ソプラノサックスに特化してその音楽性を深めていったのは有名な話だが、このアルバムでも年々壮絶さを増す凄い演奏を披露している。 リーブマンの演奏を聴いていると一徹にひとつの事(ソプラノサックス)に集中した事によって常人にはおよそ到達しえない境地まで達した意志の強さを感じる。 グロスマンの様な天才性はないけれども、演奏のムラはなくて、常にハイクオリティーな レベルの高い演奏が聴ける。 この人の功績はコルトレーンの音楽を自己のフィルターを通して普遍化し、その芸術性を歪めることなしに発展させた事にあると思う。 リーブマンの欠点としては、その生真面目さからどうしてもリーダーアルバムにおいて特に学究肌の音楽性が表現されがちで、小難しい演奏になりがちなのであるが、近年ソロイストとしては鬼気迫る表現にますます研きがかかり絶好調だと言える。 そろそろ集大成といえる最高傑作がこの2,3年の間にでるのではと期待しているのだ。 メンバーはDAVID LIEBMAN(SS)GUNNAR MOSSBLAD&THE JAMES MADISON UNIVERSITY JAZZ ENSEMBLE 録音は1992年3月19,20日