軽やかなマーチリズムに導かれて瑞々しいメロディーが奏でられる1曲目「LAND THAT I LOVE」はあの9/11テロにインスパイアされて出来た曲らしい。 そう思って聴くと悲しみを乗り越え新たに生きる希望を歌っている曲に聴こえてくるから不思議なものだ。こう書くと重々しいテーマの大そうな曲かと思われがちだけどそうではなく、柔らかいハーモニーが印象的な優しい雰囲気の曲であります。 表面上は静かで穏やかなのだけでれど、内に秘めた力強い意志と決意が感じられる曲でもあります。 2曲目の「WALTS FOR NICOLE」は可愛らしいテーマ―が印象的なワルツで、ビル・エヴァンスの「DEBBIE」に向こうをはったのでしょうか? 3曲目「ONCE UPON A TIME」も軽やかなフォービートの良曲。 4曲目はピアノソロで、このトリオ(第3作目)の前は、ピアノソロ中心のアルバムが2枚出ていただけにソロ演奏はお手のもののようだ。 STEAGERの曲は色でいえばペールトーン、ないしはパステルカラー。 ぐんとひきつける強烈な旋律がないかわりに、曲全体の響きや柔らかなハーモニーで魅了する。 STEGERはじめ、このトリオの3人ともバークリー音楽大学の教授であり、息のあった協調ふりを見せている。 7曲目「AUTUMN RAIN」枯葉舞い散る街路に雨がしとしとと降りしきる寂寥感がよくでた美曲。 8曲目「MISTRAL」はこのアルバムでもっとも明るい色調の曲だけど、それでもどことなくうら寂しい雰囲気がするのはSTEGER作品の一つの個性だと思う。 全10曲、きっと永年の愛聴盤にできるピアノトリオ盤になると思います。 メンバーはELLIOT STEGER(P)JOSH DAVIS(DS)JON HAZILLA(DS)
11/29日に入荷した作品の中で試聴した時より、実際に聴いてみて思った以上に良かったのがこの「DON ALBERTS TRIO」と「ELLIOT STEGER TRIO」の2作品。 そんな訳で「JAZZ IN AUSTRALIA」の予定を急遽変更してこの2作品のレビューを致します。 ジャケットの下半分がドラムセットの写真なので、このアルバムのリーダーDON ALBERTSはてっきりドラマーなのだと思っていた。 これはこちらの早とちりでDONはピアニスト。だったらピアノの鍵盤にすりゃいいのに・・・。何か理由があるのかしらん。 このアルバム、メロディストには大歓迎される一作じゃないかと思います。 全編、メロディーの洪水のようなアルバム。 あまりにも躍動感溢れた美メロ続きなので、聴き過ぎにご注意ください。 歌謡性の高い曲は、あまりにも集中して聴くと飽きるのも早いのです。 これは私が聴いてきた経験則から言っているのですが、それにしても、「ONE FOR HELEN」「ROSE PATINA」「NO NOT YET」「ESMIRALDA」「MY HEARTED BEST」「LITTLE DANCER」・・・うーん、曲を全部書くことになる。 全部良曲、捨て曲なしの内容保証アルバムとはこんな作品のことをいうのではないでしょうか? 勿論プレイもしっかりしているのは言うまでもありません。
何っ、甘口すぎるって、その通り、大甘口の一作であります。 でもこんな作品もコレクションにあっていいでしょ! 何千枚、何万枚コレクション持ってても「俺は一体何を効いたらいいんだっ!」っていう瞬間が必ずあるもの。 そういう時のための緊急避難用CDとして、「VENTO AZUl RECORDS」営業部一同自信をもってお薦めする一枚であります。 ちなみに、私の緊急避難曲は3曲目「ROSE PATINA」と4曲目「NO NOT YET」です。 メンバーはDON ALBERTS(P)BUDDY BARNHILL8DS)FRANK PASSANITINO(B) CURT MOORE(PER)4曲参加 録音は2001年4月10日、5月8日6月12日 CA
JAMES GREENINGというトロンボーン奏者(このアルバムではチューバやポケットトランペットも吹いています。)の「THE WORLD ACCORDING TO JAMES」というバンド名がつけられたグループによる1998年の作品。 ニューキャッスル生まれのJAMES GRENNINGはオーストラリアを代表するトロンボーン奏者の一人で、現在オーストラリアン・アート・オーケストラのメンバーの一員である。今までにBernie McGann 、 Tim Hopkins, Mike Nock, Vince Jones, Judy Bailey and James Morrisonと演奏活動をともにし、ビリー・ハーパー、マーク・ヘリアス、日野皓正と共演、マリア・シュナイダー・オーケストラ やチャールス・ミンガス・トリビュート・ビッグ・バンドでのソロイストを務めたことがある。 このファーストアルバムはそんな豊富な経験をふまえたうえで、満を持して自身のオリジナルな音楽を表現した作品といえよう。 GREENINGはトロンボーン以外にポケットトランペット、チューバ、DIDIJERIDUなど様々な菅楽器を駆使してバリエーションをだしている。 ピアノレスでポケットTPとANDREW ROBSONのASが一緒に鳴り響くときなど、オーネット・コールマンのカルテットを思い出させる瞬間があるかと思えば、FSNTの新しいアルバムを聴いているかのようなサウンドが出てきたりで、おもちゃ箱をひっくり返すかのような多彩で賑やかで躍動感溢れるサウンドが展開される。 地元オーストラリアでも絶賛され、2002年にはセカンドアルバムがVITAMIN RECORDSからリリースされたようであります。 オーストラリアン・ジャズのバリエーションの豊富さをしめす作品だと思う。 メンバーはJAMES GREENING(TB,P-TP,TUBA,DIDIJERIDU)ANDREW RPBSON(AS)STEVE ELPHICK(B,COR)TOBY HALL(DS) 録音は1998年2月20日
オーストラリアのギタリストDAVID SMITH と巨匠JACK WILKINSの1994年シドニーでの完全デュオライブアルバム。 2人は1979年以来の友達であり、いままで幾度となく共演を積み重ねてきた間柄のようで、この作品は永年のプランがようやく実現したアルバムといえよう。 CD番号はDSM112とあるので、頭文字をとった自費製作もアルバムであるのがわかる。 こういうギターデュオやトリオ作品ばかりリリースするJARDISというジャズギター専門レーベルがあるけど、それらの作品に勝るとも劣らぬ出来映えになっていると思う。 1曲目は「ALONE TOGETHER」アルバムタイトルにしただけあって、力のはいった長尺のトラック。14分17秒、ソロの順番はJACK WILKINS、DAVID SMITHの順番。 集中力が途切れることなしに、両者は素晴らしい会話を見せる。 技量的に比較すると、やはりJACK WILKINSに歩がある事は否めない。 しかしDAVID SMITHも充分すぎるくらい健闘したプレイをみせている。 それにしてもウィルキンスの流麗で洗練されたギターテクニックは、完成の域に達したといってもよいだろう。 うっとりするほど素晴らしいフレーズがごく自然に紡ぎだされ、まるでガラス細工のように細やかで繊細なプレイも危なげない。 匠の技、ここにきわまれりというところだ。 選曲はスタンダード中心で、ジャンゴ「NUAGES」ルグラン「YOU MUST BELIEVE IN SPRING」「ALICE IN WONDERLAND」「BODY AND SOUL」「IF I SHOULD LOOSE YOU」全6曲。 10分越えの作品が多いが、だれることは全くない。 むしろ、2人の丁々発止としたプレイが存分に聴けるのでこれぐらいの長さの方が良いのではないかな? ギターファンは必聴の隠れ裏名盤だと思う。 メンバーはDAVID SMITH(G)JACK WILKINS(G) 録音は1994年11月26日、12月2日 SYDNEY,AUSTRALIA
BERNIE McGANNのサックス、CARL DEWHURSTのギターをバックにSUSAN GAI DOWLINGというボーカリストがスタンダードナンバーを6曲吹き込んだCD-R。 海外のアーティストの作品には時々こういったCD-R作品が時々あって、ウェブ上にその断り書きがあまり書いていないので、商品が届いて「ありゃ、りゃ」ということがある。 この作品、おまけにインナーはPC用プリンターで印刷したもののようだし、おまけに青いボールペンで裏にSAMPLEと書かれている。 ひょっとしたら、実際にはリリースされずに、見本だけに終わった作品かも知れない。 そんなことを思い巡らしながら、名前も聴いた事のないオーストラリアのおばちゃんボーカリストの唄を聴いてみる。 顔に似合わず(失礼!)なかなか可愛らしい声で丁寧な歌唱は好感が持てる。 BERNIE McGANNのサックスも絶妙のタイミングで唄にオブリガードをつけ、間奏では素晴らしくオリジナリティー溢れたサックスを披露。 微妙なピッチのずらし具合や音のかすれ具合など、一歩間違えるとミストーンと間違えられるようなスリリングで歌心溢れたプレイは経験に裏づけされた職人技。 ギターのCARL DEWHURSTとのコンビネーションも抜群の相性をみせており、2人でSUSAN GAI DOWLINGの唄を盛り立てている。 インティメイトな雰囲気で進められたレコーディングはきっとSUSAN自身快心のセッションだったことだろう。 ところで、この作品ちゃんと発売されたのだろうか? メンバーはsUSAN GAI DOWLING(VO)BERNIE McGANN(AS)CARL DEWHURST(G) 録音は2003年 SYDNEY
EDSという血液の難病に立ち向かいながら、演奏活動を続けるNOAH BAERMANが30歳を迎えジャズを演奏し続けることの喜びを録音したライブアルバム。 こう書くと病気を売り物にしているようで、嫌なんですけど、そんな予備知識なしに聴いてもこれは中々のピアノトリオアルバムだと思う。 オープナーはトラディショナルの「WADE IS THE WATER」。 何年か前、チャールス・ロイドが取り上げていて知った曲なんですが、BAERMANのバージョンは、ピアノを弾けることの喜び、好きなジャズを再び演奏できる喜びが伝わってくる。この日のライブに集まった聴衆の暖かい拍手にも演奏が素晴らしいものであった事が表れている。
BAERMANはといえば、快調そのもので、「YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS」や「NEFERTITI」では深く沈みこむ叙情性やを、ケニー・バロン「518」のようなアップテンポの曲では疾走感、スパークする感じが出ていてなかなか聴かせるのです。 前作はロン・カーター、ベン・ライリーをサイドメンに迎えた作品で本人に注文をオーダー済みなのですが、こちらの入荷も今から楽しみです。
先月仕入れた作品が小気味よいLAハードバップサウンドで、聴きごたえのある作品だったので、同時録音された本作「BALLADS」も仕入れてみました。 題名通り、唄とトランペットでバラードナンバーを表現した作品。 まず、ファッションは明らかに50年代のチェットを意識したもの、髪型もそう。 ルックスは残念ながらチェットには勝てないというところか!(笑) 唄も中性風ウィスパーボイスがチェットを連想させる。 トランペットは50年代マイルスですね、はい。 「I'LL BE SEEING YOU」「NATURE BOY」「FOR ALL WE KNOW」といかにも、マイルス、チェット気分のナンバーに続く4曲目はオリジナル「DREAMING OF MEMPHIS」。 マイケル・フランクスが作りそうなタイプの曲でこれもなかなか良いです。 「BUT NOT FOR ME」をボサノバ仕立てのアレンジして、これも素敵です。 ギター、ヴァイブラフォン、パーカッションが効果的に使われていて、こういう楽器の使用はイージーリスニングに陥る危険性もあるのだけど、そこはうまくジャージーなテイストを失わないよう調整してあるのでご心配なく。 リラックスしたさりげないシーンの演出にもOKだし、スピーカーの前でじっくり聴いても充分満足感を得られる作品だと思う。
hello masaki, thank you for purchasing my cd ,hope you've received it and are enjoying the music! i think you are the first person from japan to have purchased one of my cds! if you like it, please tell your friends. perhaps i will someday soon be playing in japan - that would be great.
let me know if you'd like to hear from me if that happens.
best wishes, nate birkey
このCD2ヶ月以上前から情報はキャッチしていたのですが、一昨日ようやく入手致しました。 「電車で轟」のfunky-alligatorさんが買った動機と同じく、私もSEAMUS BLAKE 目当てでした。 そしてこの作品、いつになくSEAMUSのストレートなプレイを耳にする事が出来るのです。 若手新御三家、マーク・ターナー、クリス・チーク、シーマス・ブレイク(ちなみに90年代御三家はジュシア、ポッター、アレキサンダー、70年代御三家はブレッカー、リーブマン、グロスマンかな?)の中で最も分かりやすくストレートな吹奏をしてくれるシーマスでありますが、この作品ではとりわけ選曲にもよるのだろうけどブルックリン派独特の揺らぎ感のある浮遊調のサウンドが薄れいつになく分かりやすいフレーズを多用しているのを感じる。 1曲目がなんてったってショーターの「BLUES A LA CARTE」ですからね。 最近ではイタリアのSPLASC(H)から出た作品でのマーク・ターナーやもうじきFSNTからリリースされるクリス・チークのリーダーアルバムも、以前より皆、分かりやすいフレーズを多用しているのが傾向としてあり、彼らの間で少し音楽的に新しい動きがあるのか、気になってしょうがない。 シーマスのテナーサックスの高域から超高域にかけて、フラジオで巧みなフレーズをあやつる技量はいつ聴いても素晴らしいものがある。 もちろん、60年代のジャズではないので必要以上に熱くなったり、情感を込めたりする事はない。そこは現代のジャズメン、表現領域にある一定の線引きがなされていて根幹にはスタイリッシュ、クールネスといったものが流れている。 そのレベルがこの作品に関して、少し60年代のほうへベクトルが、ぶれているといえばよいだろうか? この作品のリーダー、CHRIS HIGGINBOTTOMは1977年ロンドン生まれで、11歳でドラムを初め2002年の秋にNYへやって来た。 バードランド、ブルースアレイ、ディアヘッドインなどの店に出演、ゲイリー・バーツ、エリック・ルイス、マーク・マーフィー、イングリッド・ジェンセンらと共演したことがある。 作曲もよくする若手有望株のドラマーだと思う。 アーロン・ゴールドバーグはピアノとフェンダーローズを曲によって使い分けるが相変わらずカッコいいピアノを弾いている。 「THE SORCERER」でのソロなんて、本家本元ハービーよりハンコックを感じさせる? 現代若手ミュージシャンによるワンホーンものを何かお探しの方には今旬の一枚としてお薦めしたい。 CHRIS HIGGINBOTTOM(DS)SEAMUS BLAKE(TS,SS)AARON GOLDBERG(P)ORLANDO LE FLEMING(B) 録音は2004年8月11日