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さて、今日は昨年の暮に掲載した「Meteorus属の1種(コマユバチ科ハラボソコマユバチ亜科:繭)」の続きとして、その繭から羽化したコマユバチを紹介することにする。羽化したギンケハラボソコマユバチ(写真クリックで拡大表示)(2011/12/15) そのコマユバチを、Entomological Society of Canada<カナダ昆虫学会>のサイトにある「Hymenoptera of the World<世界の膜翅目>」と、Maeto Kaoru(前藤 薫)氏の「Systematic Studies on the Tribe Meteorini (Hymenoptera, Braconidae ) I~VII<Meteorini族の分類学的研究(膜翅目、コマユバチ科)>」を使って科から検索した結果、コマユバチ科(Braconidae)ハラボソコマユバチ亜科(Euphorinae)に属すギンケハラボソコマユバチ(Meteorus pulchricornis)であることが判明した。 しかし、科から種までの検索は、かなりややこしく、また、証拠写真も多数を必要とする。其処で、今日は蜂の生体写真のみを載せ、種の検索については別の機会に譲ることにした。冷蔵庫から出した直後のギンケハラボソコマユバチ一見死んでいる様に見えるが、直ぐに起き上がる(写真クリックで拡大表示)(2011/12/16) 羽化したのは、前回の繭の写真を撮ってから9日後の12月14日、体長約4.5mm(産卵管鞘を含まない)の繊細なコマユバチであった。 こうゆう小さな虫は、以前紹介した「アブラバチの1種(その2)」の様に、カーテンに留まらせて撮ることも出来るが、虫が小さいので、カーテン地の網目が何とも目障りになる。其処で、管瓶に入れて冷蔵庫に放り込み、よ~く冷やして動けなくし、室温に戻して常態に回復する時を狙って撮影した。横から見たギンケハラボソコマユバチ繊細な姿と長い触角が魅力的(写真クリックで拡大表示)(2011/12/16) 2番目の腹側から撮った写真は、冷蔵庫から出した直後で、殆ど死んでいる様に見える。しかし、20秒ほど(測定はしていない、単なる印象)で起き上がってしまう。ヒラタアブ類は、もう少し時間がかかり(分単位)、飛び出す前に身繕いなどするので撮り易いが、こう云う小さい虫は、回復が非常に速い。体重は体長の3乗、表面積は2乗に比例するので、小さい虫ほど速く冷えるし、速く暖まるのである。正面から見たギンケハラボソコマユバチ複眼に毛が生えているのが見える(写真クリックで拡大表示)(2011/12/15) 起き上がっても、脚がシッカリして居る訳ではない。それでも、動かない脚を引きずる様にして(下の写真の右前肢付節)移動し始め、やがて翅を開いて飛んで行ってしまう。しかし、完全に回復してはいないので、近くに留まったりして再捕獲。 見失ったこともあるが、暫くすれば明るいカーテンの方に行くので、心配は要らない。また管瓶に入れられ、冷蔵庫行き。その後、半日以上は入れておかないと、立ち所に回復してしまい撮影する機会が殆ど無い。今日のコマユバチ成虫の撮影には、何と4日もかかったのである。脚がチャンと働かなくても動き出し、直に飛んで行ってしまう(写真クリックで拡大表示)(2011/12/18) こうゆう小さなコマユバチには見ていて綺麗だなと思う種類が多い。幼虫は内部捕食寄生性だから、まァ、生態はオドロオドロしいとも言えるが、最後は綺麗な成虫に成長する。別に色彩に富んでいる訳ではない。しかし、体全体と言うか、姿が美しい。横からの写真をもう1枚(写真クリックで拡大表示)(2011/12/16) 前掲の前籐氏の論文に拠れば、このギンケハラボソコマユバチは日本で最普通種の一つとのこと。東京都本土部昆虫目録にもチャンと載っている。しかし、"ギンケハラボソコマユバチ"をGoogleで画像検索しても殆どヒットしない。一方、学名で検索するとそれよりもずっと多い写真が出て来る。本種は、日本全国、欧州、土耳古の他、世界の様々な地域に分布するらしい。 和名での検索がヒットしないのは、写真を撮っても種類が分からないのでお蔵入り、或いは、「コマユバチの1種」としてしか掲載されていないからだと思われる。現に、昨年もう一つのWeblogで紹介した「お知らせ+コマユバチ科の1種(Braconidae gen. sp.)」は、写真の解像度が低いので検索は出来ないが、本種に非常に良く似ている(但し、縁紋や後腿節先端の色は多少異なる)。蜂が脱出した繭(脱殻)。カパッと蓋が開いた感じ(写真クリックで拡大表示)(2011/12/14) また、前掲論文に拠れば、本種はコブガ科、ヒトリガ科、ドクガ科、シャクガ科、ヤガ科、カレハガ科、アゲハチョウ科、シジミチョウ科、タテハチョウ科等の幼虫に寄生することが報告されており、広く鱗翅目の幼虫一般に寄生することが出来ると考えられている。 その為、世界的に鱗翅目害虫の駆除に天敵としての利用が研究されており、また、本種が産しない国では、外国からの導入も検討されている様である(既に米国に導入されている)。我国でも、本種が最近被害の多いオオタバコガの有力な土着天敵の一つであることから、飼育の容易なハスモンヨトウを使って増殖させ、オオタバコガの駆除に利用しようと云う研究がある(農業・食品産業技術総合研究機構-平成10年度四国農業研究成果情報)。
2012.01.15
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帰国した次の日、ベランダの椅子で一服していると、目の前のクリスマスローズの葉上に長さ5mm位の回転楕円形の物体が乗っかっているのに気がついた。上にはデュランタ・タカラズカの枝があり、まだ若干の花を着けているので、その花冠の取れた子房が落ちているのだろうと思っていた。 しかし、2~3日経つと、今度は葉の下にぶら下がっている。クリスマスローズの葉上には、ハエトリグモがよく徘徊しているので、蜘蛛の糸にでも絡んでぶら下がって居るのだろう。そう思って放っておいた。 蜘蛛の糸なら大して丈夫ではないから、その内落下すると予想していたのだが、何故かその気配は全く感じられない。シッカリとぶら下がって居る様に見える。これは、ヒョッとすると何かの繭なのかも知れないと思って、低い位置なので見難いが、マクロレンズで覗いてみた。クリスマスローズの葉からぶら下がる寄生蜂の繭(長さ5mm)葉への接着点と繭までの距離は2cmもない(写真クリックで拡大表示)(2011/12/05) 正確な正体は分からないが、どうやら寄生蜂の繭の様である。早速、葉ごと回収して小さなコップの中に吊るし、ラップで口を覆って、何が出て来るかを待つことにした。 この様な、何かにぶら下がる繭を作る寄生蜂としては、以前紹介したホウネンタワラチビアメバチ(繭と成虫:本当にその種なのか確信はない)がよく知られた居る。しかし、この正体不明の繭は、その繭とは形も作りも全く異なり、また糸は非常に太く、マクロレンズで撮ると、まるで針金の様である。分類学的にかなり離れた位置にいる寄生蜂に違いない。繭の拡大.繭の大きさに比し糸は非常に太いぶら下がっている糸の方が、繭を紡いでいる糸よりも太い様に見える(写真クリックで拡大表示)(2011/12/05) 其処で、「ハチ 繭 ぶら下がる」のキーワードでGoogle画像検索をしてみた。すると、似た様な繭の写真が見つかった。羽化後の空になった繭である。元を調べると、「下手の園芸ブログ」と云うサイトの2011年7月24日の記事「バラと幼虫と寄生蜂」であった。宿主の写真もあり、また、宿主から出て来た幼虫や、それが繭を紡ぐ所、その後の経過等を30枚以上もの多数の写真で記録されている。読者諸氏も是非御覧になられたい(拙Weblogでは、他所様のサイトへのリンクは、リンク切れの恐れがあるので、張らないことにしている。「"バラと幼虫と寄生蜂" ぶら下がる」で検索されたし)。上の写真の反対側.内側の糸は色が殆ど着いていないストロボの反射が見苦しいがお許しを(写真クリックで拡大表示)(2011/12/05) 羽化した蜂の写真も載せられていた。そのサイトの著者はある程度昆虫に関する知識をお持ちの様だが、このハチの名前に関しては何も触れられていない。しかし、翅脈の良く分かる写真が載せてある。一見して、コマユバチ科(Braconidae)に属す寄生蜂であることが分かった。 しかも、体形と翅脈にかなり特徴的なものがあり、Borror & Delong著の「Study of Insects」やその他の文献で調べてみると、どうやらハラボソコマユバチ亜科(Euphorinae)Meteorus属のハチらしい。ハチは既に羽化しているので、現在、詳細を検討中である。葉への接着点.かなりいい加減なくっ付け方(写真クリックで拡大表示)(2011/12/05) しかし、このコマユバチの寄主は何であろうか。繭の付いていた葉には寄主の残骸は無く、食痕も無い。毒草であるクリスマスローズの葉を食べる虫は今まで見たことがないので、その上に位置するデュランタに付いていた何らかの虫に寄生していたと考える方が妥当であろう。 恐らく寄主は寄生により衰弱してデュランタからクリスマスローズの葉上に落下し、其処からこのコマユバチの幼虫が出て来たのであろう。その後、寄主の死骸は風や雨で葉から落ち、この繭だけが残ったものと思われる。 Meteorus属の寄主は鱗翅目ばかりでなく甲虫類の場合もある。デュランタの方は、丁度その真上の部分を既に剪定してしまったので、食痕や寄主に関する何らかの情報を得ることは最早不可能である。[追記]この繭から羽化したコマユバチはギンケハラボソコマユバチ(Meteorus pulchricornis)であることが判明した。その記事は、此方をどうぞ。
2011.12.23
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最近は、朝晩は寒くても、日中陽が射せばぽかぽかと春らしい陽気となってきた。啓蟄も過ぎて、虫が色々出て来てもおかしくない頃だと思うのだが、庭を飛んでいるのは常連のホソヒラタアブ、クロヒラタアブ位なものである。 しかし只一つ、今年は例年にはない「異変」が認められた。まだ、寒い1月下旬か2月上旬辺りから、時折ミツバチがやって来るのである。花に来ている様子はなく、木の細い枝や葉に留まり、30秒も経つと何処かへ飛んで行ってしまう。 それが、数10株もある庭のクリスマスローズが咲き始めた頃から急にその数が増え、昨日などは10頭余りが庭を飛び交っていた。クリスマスローズの花は下向きだから、訪花しているハチは花に隠れて見えないことを考えると、20頭以上は来ていたのではなかろうか。 こんなことは、我が家始まって以来?のことである。我が家でミツバチが現れるのはもっと遅くなってからだと思うし、こんなに沢山のミツバチがやって来たことは、生まれてこの方、記憶にない。しかし、良く見てみると、どうもニホンミツバチより少し大きい感じがする。また、腹部の黒い部分が少ない。ヒョッとして、これはセイヨウミツバチではないのか?背景用の厚紙の上を歩き回るセイヨウミツバチニホンミツバチよりも腹部が黄色い(写真クリックで拡大表示)(2011/03/05) セイヨウミツバチかニホンミツバチかは、翅脈を見れば簡単に分かる。しかし、クリスマスローズの花は下向きなので写真が撮れない。花を起こせばハチは逃げてしまう。其処で一計を案じた。 生け捕りにして冷蔵庫で冷やし、動けなくしてから写真を撮るのである。早速、捕虫網で1頭を捕らえ、網の中でシャーレに入れて冷蔵庫行き。このミツバチ達は越冬しているのだから、冷蔵庫程度の低温で死ぬことはない。ミツバチの翅脈.左:ニホンミツバチ、右:セイヨウミツバチ白と黒の矢印で示した部分が異なる(本文参照)(写真クリックで拡大表示)(2011/03/05) 1時間程よ~く冷やしてから取り出すと、ミツバチはシャーレの中でひっくり返っていた。一見死んだ様に見えるが、死んではいない。翅を畳んだ状態なので、此の儘写真を撮っても余り翅脈の見易い写真にはならない。其処で、動き出すまで暫し待つことにした。 やがて、脚と触角がゆっくりと動き始めた。更にもう少し経つと、今度はチャンと起き直って翅を少し拡げた。撮影のチャンスである。急いで翅の写真を撮った頃には、もうかなり元気になっていて、机上で接写をする時に使う台紙の上を歩き始める有様(最初の写真)。 しかし、翅脈が綺麗に撮れていることを確認するまで開放する訳には行かない。また、シャーレに戻って貰って、冷蔵庫行き。ノースポールの花に載せられたセイヨウミツバチ普段、ミツバチはこの花にはやって来ないそれでも赤い口吻を花に差し込んでいる(写真クリックで拡大表示)(2011/03/05) 1回目はピンぼけ写真だったが、2回目にはチャンと翅脈が撮れていた。やはり、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)(ミツバチ科:Apidae、ミツバチ亜科:Apinae)であった。2番目の写真で、右がセイヨウミツバチ、左がニホンミツバチ(Apis cerana japonica)である。ニホンミツバチでは後翅のM脈末端がRs脈との接点(正確にはr-m脈)以降も少し伸びている(白い矢印)が、セイヨウミツバチにはそれがない(M脈はRs脈との接点で終わる)。 これは、晶文社の「あっ!ハチがいる」の検索表や、色々なWebサイトで示されている両種の見分け方である。しかし、他にもう一つ翅脈上の違いを見つけた。ニホンミツバチの前翅のr-m(?)脈にある「枝」(黒い矢印)である。セイヨウミツバチにはこれが見当たらない。この様な翅脈上の枝は、時として個体変異として現れることがあるらしいが、数年前に撮った別の写真にもチャンと写っていたし、また、Web上を探すと、同様な枝を持つニホンミツバチの写真が見つかった。まァ、例数が少ないので、今後ニホンミツバチを見つけたら出来るだけ写真を撮って確かめてみよう。似た様な写真をもう1枚.赤い口吻が印象的(写真クリックで拡大表示)(2011/03/05) さて、写真もチャンと撮れたので、ミツバチ君(雌だが・・・)を開放することにした。まだ飛べないので、取り敢えず、ヒラタアブ類の餌として植えてあるノースポールの花の上に置いた。ミツバチはクリスマスローズには沢山やって来るが、このノースポールは全く無視されている。従って、ノースポール上のミツバチは不自然で、ヤラセと言える。しかし、それでもお腹が空いたのか、将又、仕事熱心なのか、何回も筒状花に口吻を差し込んでいた。元気になってきたセイヨウミツバチ中脛節端の黄色い輪が気になる(写真クリックで拡大表示)(2011/03/05) やがて10分もすると、午後の日に照らされて体も充分温まったらしい。プーンと一気に飛び上がり、2度程小さな輪を描いてから、北の方へ飛んで行った。 数10年前読んだ本に、ミツバチは太陽の位置を判断して飛行の方向を定めると書いてあった。太陽が隠れていても、青空さえ見えれば、偏光を感知して太陽の位置を知ることが出来ると云う。しかし、身柄を確保してから2時間は経ったと思うので、太陽の位置は30度も西にずれている。間違った方向に帰って迷子になるかも知れない。少し心配になったので調べてみると、ミツバチは帰巣に際して視覚を有効に活用しているらしい。多分、チャンと帰ることが出来るだろうが、まァ、仮に迷子になったとしても、餌もねぐらも何処にでもあるのだから、死ぬことはあるまい。 セイヨウミツバチは、この数10年間、我が家では見ていないと思う。一体、何処からやって来たのであろうか。ミツバチの行動範囲は半径数km(通常2km位)にも及ぶと云うが、我が家のクリスマスローズ程度の蜜源に遠くからやって来るとは考え難い。この辺りには500坪を越える御宅もかなりある。何処か近くに、庭で養蜂を始めた蜂好きの御人が居られるに違いない。
2011.03.06
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昨日紹介した超接写システムで、同じコスモスに来ていた微小なアリを撮ってみた。 「日本産アリ類全種図鑑」(現在では「日本産アリ類画像データベース」としてWeb上で参照可能)で調べてみると、どうやらヤマアリ亜科(Formicinae)のサクラアリ(Paratrechina sakurae)らしい。図鑑では体長1~1.5mmとなっているが、写真のアリは1.8mmとやや大きい。 しかし、他に類似種が居ないし、形態的特徴が記述と一致するので、サクラアリとして問題無いと思う。サクラアリ.頭部に続く膨らんだ部分が前胸、それに続く凸凹した部分があるのが中胸、その後に続く黒っぽく細いのが後胸溝、その後の腹部の前にある部分は、実際は胸部ではなく腹部で、前伸腹節と呼ばれる触角は全部で12節だが、右の先端節は無くなっている(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/20) この図鑑には属までの図解検索表が付いている。しかし、亜科への検索で腹側から見た腹部末端の詳細や付節末端の爪の突起など、微小な構造が問題となるので、小型のアリを写真に撮った場合は亜科まで落とすのは先ず無理である。しかし、図解検索の2段目までは進めたので、ヤマアリ亜科かカタアリ亜科の何れかに属すことが分かった。 その後は、どうしても絵合わせとなる。図鑑に載っているこの2亜科のアリは僅か82種である。だから、図鑑のページを1枚ずつめくって行けば容易に目的の種に辿り着くことが出来る(何しろ、「日本産アリ全種図鑑」なのだから)。全く所属の分からない奇妙奇天烈な小甲虫を撮って、甲虫図鑑の2~4巻の全部を調べるよりは遥かに楽である。 図鑑の解説には、「体色は褐色で,触角と脚は黄褐色.触角べん節の第2~4節の幅は長さよりも長い」、「胸部は短く,頭部と同じくらいの長さ.側方から見て,前胸は急に立ち上がり,中胸は弱く曲がり,両者で1つの大きく曲がる弧をえがく.前伸腹節背面は短い.後胸溝背面での凹みはわずかで短い.中胸背板に1対,前伸腹節に1対の剛毛がある」とあり、写真のアリの特徴と一致する。なお、アリの触角はスズメバチ等とは異なり、梗節が無く、梗節に見えるのは鞭節第1節となる。横から見ると、中胸背板に1対,前伸腹節に1対の剛毛があるのが分かる。前胸背板にも剛毛が認められる(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/20) 殆どの読者は御存知と思うが、アリはハチと同類で、膜翅目細腰亜目アリ上科アリ科(Formicidae)に属す。アリは翅のないハチとも言えるが、アリの他にも無翅のハチ(特に雌)が色々な分類群に存在する。 翅がないのでアリと思ったら、○○バチであったと言うことも屡々起こり得る訳で、実際、昆虫の掲示板などに「この変なアリはなんでしょう」と云う様な質問でアリガタバチやカマバチ等が登場する。触角の折れ曲がったところから鞭節で第1節は長いが黒い輪の付いた第2節以降は第4節位までは短い(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/20) これまで、このWeblogでアリを紹介したのは、ハリブトシリアゲアリ1種だけだと思う。しかし、我が家には他にも色々なアリが居る。ところが、普段、地面を歩いているアリは彼方此方歩き回って留まることを知らず、撮影は殆ど不可能である。 だが、何か餌などに在り付いている時は余り動かないので被写体になり得る。ハリブトシリアゲアリもアブラムシに集っていたから撮影出来たのである。 今日のサクラアリは、コスモスの花の上で何かに御執心であった。多分、昨日掲載したワタアブラムシが排泄した甘露を食べていたのであろう。前回掲載したコスモスに寄生していたワタアブラムシが排泄した甘露を求めてやって来たらしい(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/20) このWeblogは、最初に「こういう都会でも実はイロイロ[虫が]居ますよ、と言うことを知って貰う」と云う意図で開設したのだが、やはり都会の駅から僅か250mの住宅地ではかなりキツイ。最近はネタ切れ状態が慢性化している。これからは、砂糖水で誘き寄せるなどして、アリも撮ることになるであろう(但し、今アリは冬眠中、来春以降となる)。
2010.11.22
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よく我が家の庭を訪れ、大きさも手頃で姿も可愛らしいのに、まだ掲載していない虫が居る。ニホンミツバチ(Apis cerana japonica)である。 何故、掲載していないのかと言うと、落ち着きなくチョコマカと動くので焦点合わせが難しく、ついつい面倒な感じがして写真を撮らないのである。撮ろうと思えば何時でも撮れるだろうし、撮っても無駄写真の比率が高く整理に時間がかかるに決まっている・・・。 しかし、我が家にやって来る虫の大半を既に紹介してしまったのか、最近では新顔の虫が中々現れなくなって来た。其処で仕方なく、ニホンミツバチを撮ることにしたのである。セイタカアワダチソウに留まるニホンミツバチやや小さく、腹部は黒い部分が多い今日の写真は全て同一個体(写真クリックで拡大表示)(2010/10/24) ニホンミツバチは、ミツバチ科(Apidae)ミツバチ亜科(Apinae)に属し、アジアに広く分布するトウヨウミツバチ(Apis cerana)の日本亜種である。ミツバチ属(Apis)は世界に10種程度が知られており、1種を除いて東南アジアを中心に分布している(詳しい文献を持っていたのだが、探しても見付からない)。 その唯一の例外が日本にも移入されているセイヨウミツバチで、これはアフリカからヨーロッパに分布する。横から見たニホンミツバチ.後肢脛節に花粉を付けている(写真クリックで拡大表示)(2010/10/24) セイヨウミツバチは昔は良く見たのだが、最近は全く見なくなった。これは、セイヨウミツバチは養蜂家が飼うものだけで野生化していないのに対して、ニホンミツバチは在来種だから何処かの木の洞にでも巣を作って自生しているからであろう。昔は、この辺り(東京都世田谷区西部)には畑地が多く、蜜源が豊富で養蜂家の巣箱(セイヨウミツバチと思う、ニホンミツバチは逃亡=逃去し易く飼い難い)を見た記憶があるが、畑地は次第に住宅地と化し養蜂家も来なくなった。これがセイヨウミツバチを見なくなった理由と思われる。ハナバチ類は円らな眼をしていて可愛い.しかしミツバチの複眼にも毛があるとは知らなかった(写真クリックで拡大表示)(2010/10/24) ニホンミツバチは住宅地の中でも平気で巣を作る。人の出入りなど殆ど気にしない様である。都内の電環内に所在するある国の大使館にVisaを申請に行ったところ、人の出入りの多い玄関の直ぐ横に生えているスダジイの祠にニホンミツバチが巣を作っており、多数の働きバチが飛び交っていた。 我が家に飛んでくるニホンミツバチが何処から来るのか些か気になっていたのだが、電環内にある大使館の玄関近くに巣を作る位なのだから、この辺りであれば巣を作る所など幾らでもあろう。同じ様な写真だが、もう1枚(写真クリックで拡大表示)(2010/10/24) ニホンミツバチはやや小さく色が黒っぽいのに対し、セイヨウミツバチはやや大型で黄色い部分が多い。しかし、大きさは測定するか比較しなければ分からないし、黄色っぽいニホンミツバチも居れば黒っぽいセイヨウミツバチも居る。 決定的な違いは後翅のM脈(中脈)の形状である。下の写真で白い矢印が示しているのがM脈の先端で、その右側に見える太く翅端近くまで届いているのがRs脈(径分脈)である。矢印の少し上で両者が接している様に見えるが実際は横脈で繋がっており、この接続点でM脈が終わっているのがセイヨウミツバチ、下の写真の様にM脈がまだ少し続いているのがニホンミツバチである。残念ながら、最近はセイヨウミツバチを見ないので比較写真を出せないが、違いはお分かりであろう。ニホンミツバチの翅脈.右の長い大きな翅が前翅、左の小さい翅が後翅白い矢印の先端がM脈の末端で、その上のRs脈との接続点よりも少しだけ先に延びている.セイヨウミツバチではこの部分がない(写真クリックで拡大表示)(2010/10/24) 今年の秋は芋虫毛虫が結構居たので、飼育をして写真は撮ってあるのだが、前蛹化したまま蛹化しない。どうも、来春になってから蛹化し羽化するつもりらしい(この手の虫は結構多い)。羽化してからでないと種の確定に不安が残るので、今年はこれらを掲載することが出来なくなる。・・・とするとまたネタの心配をしなければならない。ニホンミツバチを掲載したのは、そんな理由からでもある。[追記1]その後、セイヨウミツバチも撮影したので、翅脈の違いを示す対照写真も添えて、此方に掲載した。[追記2]2番目の写真の解説で、後肢第1付節に花粉を付けているとしていたが、穂高氏に花粉を付ける毛があるのは後脛節であるとの御指摘を頂いた。全くその通りなので解説を訂正した。穂高氏には御指摘を感謝する。(2012/02/17)
2010.10.27
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最近は写真の撮影や調整に忙しく、文章を書く時間がない。其処で、今日もまた写真1枚だけにしてサボることにした。今月の中旬に我が家の庭に何回か訪れたコバチなのだが、かなり敏感でこの1枚以外はまともな写真を撮ることが出来なかった。 後腿節が非常に太いのでアシブトコバチの1種だと思うのだが、後腿節の太いコバチは他の科にも居る。何分にも横からの1枚なので、翅脈や胸背が良く見えず、確信が持てない。其処で、「蜂類情報交換BBS」に御伺いを立ててみた。 翌日、管理人の青蜂(セイボウ)氏より「アシブトコバチの仲間です.種の同定には顕微鏡で見ないとわからないのですが、チビツヤアシブトコバチが近いような感じです」との御回答を得た。チビツヤアシブトコバチの雄かと思われるコバチ後腿節、後基節が太く、触角がやや長い(写真クリックで拡大表示)(2010/10/15) 早速「チビツヤアシブトコバチ」でGoogle検索してみた・・・。呆れたことに、先頭に出て来たのは昨年掲載したこのWeblogの記事であった。年を取ると自分で調べて書いた虫のことまで忘れてしまうのかと、めげること頻り。 チビツヤアシブトコバチ(Antrocephalus japonicus)は、アシブトコバチ科(Chalcididae)Haltichellinae(亜科名:和名なし)Haltichellini(族名:和名なし)に属す。昨年の掲載したのは雌で、北隆館の圖鑑には雌の特徴しか書いておらず、雄は全身真っ黒の様である。 写真のコバチは真っ黒だし、触角が長くて何となく雄と言う感じがする。昨年のは8月13日撮影、少し季節はずれているが、今年は少し虫の出が遅れているので、雌雄が我が家に訪れたと考えてもおかしくはない。しかし、根拠は薄いし、青蜂氏は「チビツヤアシブトコバチが近い様な感じ」としか書かれていない。其処で、此処では「アシブトコバチ科の1種(チビツヤアシブトコバチ:雄??)」と、「?」を2つ付けて置くことにした。
2010.10.25
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今年の秋は虫が少ないかと思っていたら、1週間程前から色々新顔が現れ始めた。写真を沢山撮るとその調整に相当な時間を食われるし、東京都未記録種や同定が厄介なハナアブが出現したり、また、飼育中の幼虫が複数種居たりして、中々Weblogの更新をする時間が取れない。 其処で、今日は昨年の9月下旬に撮影したギングチバチの1種を紹介することにした。写真が1枚しか無いからである。ブルーベリーの葉に留まるギングチバチの1種(写真クリックで拡大表示)(2009/09/26) 以前、ハナアブやハエを狩っていた「ギングチバチの1種」を紹介したが、今日のはそれとは明らかに別種である。ギングチバチの仲間(アナバチ科(Sphecidae)ギングチバチ亜科(Crabroninae))は90種以上も記録されているし、文献も持っていないので種類は不明、「ギングチバチの1種(その2)」とするしかない。 今までお蔵にしていたのは、向かって右側の眼の上に太陽光の反射と思われるブレがあるからである。しかし、やはりギングチバチは可愛いので、敢えて紹介することにした次第である。
2010.10.20
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気が付いてみると、前回の書き込み(9月17日)から一ヶ月も経っている。別にサボっていた訳ではない。毎日の様に虫を探して庭をウロウロ、動物園の白熊の如く徘徊していたのだが、今年の夏の猛暑とやら(私は日本に居なかったので実感がない)の影響らしく、ヤブカ以外の虫の姿が殆ど見えない。 我が家には初秋に咲く花が少ない。其処で園芸店に行って、虫が特に沢山集っている洋花(我が家の庭には余り相応しくないが・・・)を何種類も買ってきたのだが、時々小型のハナバチやホソヒラタアブがやって来るだけ。やがて、虫集め用に植えてあるセイタカアワダチソウが咲き始めた。しかしこれにも、時折ツマグロキンバエや小型のハナバチ、ヒメハラナガツチバチが来る程度で、例年ならば常に数頭は群がっている筈のキンケハラナガツチバチ(特に雌)も全くやって来ない。こんな年は初めてである。 しかし、クチナシを食害するオオスカシバの幼虫と、北米原産シオンの1種(紫花)についたエゾギクキンウワバの幼虫だけは、何故か知らぬが、沢山居た。それが、いつの間にか全く居なくなってしまった。クチナシの方は外庭に植えてあるので良く分からないが、シオンの方はベランダの椅子の横にあるから、その原因はハッキリしている。クロスズメバチである。一日に何回もやって来てはシオンの株の中に入って何やらやっている。エゾギクキンウワバの幼虫を探しているのである。エゾギクキンウワバの幼虫から肉団子を作るクロスズメバチ(写真クリックで拡大表示)(2010/10/14) 上の写真は、そのエゾギクキンウワバの幼虫を解体して、肉団子を作っているところ。シオンの株から飛び出して僅か10秒後位であるが、もう消化管内の内容物を殆ど分離し終わっている。或いは、株の中の見えないところで大体の処理は済ませていたのかも知れない。 生憎、ハチの留まったところがサンザシの株の丁度反対側で、横からの図を接近して撮影することが出来なかった。その結果として写真はかなりの部分拡大となってしまい、相当に荒れている。サイズも最大幅750ピクセルが限界。肉団子を抱えて飛び去る直前.頭楯の黒紋が口に達していない(写真クリックで拡大表示)(2010/10/14) クロスズメバチ属(Vespula:スズメバチ科(Vespidae)スズメバチ亜科(Vespinae))は、2005年出版の高見澤今朝雄著「日本の真社会性ハチ」に拠れば、6種7亜種。その内、白黒模様でこの辺りに居そうなのは、クロスズメバチとシダクロスズメバチの2種だけである。この2種の見分け方は簡単、頭楯を見ればよい。頭楯とは、大まかに言えば、左右の触角の根元より下側で口器との間にある部分。 その頭楯の中央部にある太い錨の様な形をした黒い紋(周囲は白い)が、頭楯の最下部に達していればシダクロ、下部に届かずに口との間に白い部分が残っているのが只のクロスズメバチである。上の写真をみれば明らかな様に、これはクロスズメバチ(Vespula flaviceps)である。 虫がいない居ないと思っていたら、一昨日辺りから急にやって来る様になった。キンケハラナガツチバチも昨日は多数飛来し、セイタカアワダチソウで花粉まみれになっていた。どうも今年は例年よりも発生が1週間~10日程遅れているらしい。暫く休業状態を強いられていた拙Weblogも、これで漸く再開出来そうである。
2010.10.18
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先日、触角の短い、白っぽくて丸々としたハナバチがやって来た。体長は1cmを少し越えた程度、せわしなく飛び回る。この手のハナバチとしては、この辺り(東京都世田谷区西部)では触角の非常に長いニッポンヒゲナガハナバチ位しか居ないと思っていたのだが、この触角の短いハナバチは一体何だろうか。 北隆館の圖鑑を見ると、似た様なハナバチが何種類が出ていた。しかし、春期に出現し触角の黒いのは、他にシロスジヒゲナガハナバチが居るだけである。尤も、圖鑑に出ていない種類の可能性もあるが・・・。クチナシの葉上で休むニッポンヒゲナガハナバチの雌漆黒の眼と丸くてコロコロした姿が何とも可愛い(写真クリックで拡大表示)(2010/04/25) 圖鑑の解説を読むと、ニッポンヒゲナガもシロスジヒゲナガも、雌はみな触角が短い。どうやら、この何れかの種の雌らしい。 ニッポンヒゲナガの解説には、最近、従来のEucera属(シロスジヒゲナガが属す)とTetralonia属(ニッポンヒゲナガが属す)の見直しが行われたが、「その内容は複雑なので、ここでは便宜上前翅の肘室が2個のものをEucera、3個のものをTetraloniella(旧名Tetralonia)と扱う」とある。其処で翅脈を見てみることにした。スミレの花に留まるたニッポンヒゲナガハナバチの雌.矢印の先が肘室(写真クリックで拡大表示)(2010/04/25) 上の写真で明らかな様に、肘室は3個ある。検索表で上の方から落としたのではないから全く別の属の可能性もあるが、まァ、圖鑑に載っている種類の中ではTetraloniella属と云うことになる。 九州大学の日本産昆虫目録を見ると、このTetraloniella(九大目録では旧名のTetralonia)には5種しか載って居らず、その内、本州に産するのはニッポンヒゲナガの他にミツクリヒゲナガがあるだけである。このミツクリは秋に出現する種類なので、除外して問題ないだろう。 次に確認の為、Web上にあるニッポンヒゲナガの画像を探してみる。雄は沢山出ているが、雌は意外と少ない。しかし、農業環境技術研究所の「ナタネ等アブラナ科植物の訪花昆虫検索表」に雌の標本写真が載っており、それと較べると充分よく似ている。・・・と云うことで、今日のハチ君(雌だが)はニッポンヒゲナガハナバチ(Tetraloniella nipponensis=Tetralonia nipponensis)と相成った。邪魔な矢印を取り去った写真をもう一枚(写真クリックで拡大表示)(2010/04/25) ハナバチ類は、落着きなく動き回るか、花の中に頭を突っ込むかで、中々良い写真が撮れない。それが理由で余り撮影したくないのだが、久しぶりに撮ってみると、やはりハナバチは可愛い。チャタテムシの幼虫も可愛いが、それよりず~~と可愛い。
2010.04.27
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前回予告した通り、今日は植木鉢の下ではない所にいた虫を紹介する。フキの葉裏で越冬していたハチで、体長1.5mm、翅端まで2.2mmとかなり小さい。気温が高かったせいか、彼方此方と歩き回り、その内飛んで逃げてしまったので、写真は2枚しかない。 実は、このハチと同種と思われるものを、一昨年の3月に私のもう一つのWeblogに掲載している。その時は科すら分からなかったので、「ハチの1種」と云う無責任の謗りを免れない表題で紹介したが、今は文献も増えたし検索も何とか出来る。しかし、今日の写真だけでは枚数が少なく検索はキツイので、その昔の写真を使って検索をした。 その結果、ホソハネコバチ科(Mymaridae)に落ちた。更に「Mymaridae」で画像検索をすると、Gonatocerus属(和名は無し)の1種らしいことが分かった。検索の手順に付いては、もう一方のWeblogに詳しく書いた(記事を全面的に書き換え、表題も改めた)ので、興味のある読者諸氏は此方(写真6枚)を参照されたい。尚、ある種のGonatocerus属と非常に類似はしているが、検索で行き着いた訳ではなく、単なる絵合わせに過ぎないので、「?」を付けてある。ホソハネコバチ科Gonatocerus属に属すと思われるハチ体長1.5mm、翅端まで2.2mmと小さいがこの科のハチとしては異常なほど大きい(写真クリックで拡大表示)(2010/01/29) このホソハネコバチ科に属すハチは通常1mm以下で、昆虫の卵に寄生する。世界最小と云われる昆虫も本科に属すハチの雄で、チャタテムシの卵に寄生し、眼も翅もなく、体長は0.139mmとのこと(「あっ!ハチがいる」に拠る)。今日の写真のハチは、同科としては特別に大きな種類なのである。 Gonatocerus属のハチは、カリフォルニアやタヒチなどで猛威を振るっているGlassy-Winged Sharpshooter(GWSS)と云うオオヨコバイ科に属す害虫の天敵として世界的にその名が知られている様である。日本でもヨコバイ類の天敵として研究が行われている。写真のハチも、或いは、我が家のツマグロオオヨコバイの卵に寄生しているのかも知れない。もし、このハチもヨコバイ類の卵に寄生するのならば、大きさから見て、ツマグロオオヨコバイ以外に該当するものがないからである。ツマグロオオヨコバイの卵の大きさは良く分からないが、「日本農業害虫大事典」に拠ると、これより小さい只のオオヨコバイ(翅端まで約10mm)の卵は楕円形で1.7mmとあるから、翅端まで13mm程もあるツマグロオオヨコバイの卵は写真のハチを育てるのに充分な大きさがあるものと思われる。触角が非常に長く、雌は先端が棍棒状に膨らむ翅には縁毛があり、後翅は糸状に退化短い前縁脈以外に顕著な翅脈はない(写真クリックで拡大表示)(2010/01/29) 今日はやっとまともな虫を紹介出来たので、ホッとしている。しかし、まだ植木鉢の下に居た生き物の写真が残っている。かなりキツイ生き物も含まれるが、その内紹介することになると思う。
2010.02.02
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今日は、このWeblog始まって以来とも思える美形を紹介する。 数日前、庭の奥の方にある柿の木の下を歩いていたら、妙にクルクル回る様な飛び方をする変な虫が居た。良く見ると、長い尾が付いているらしい。一体何者?? やがて建物の壁面に留まった。ハチの1種であった。体長は多分7mm位、長い産卵鞘を持っているので、多分ヒメバチの類であろう。 留まっているのは高さは2m位の所、一寸撮り難い、と言うか、虫が遠すぎて等倍接写は出来ない。仕方なく、やや離れた位置から撮ったのだが、ストロボの光が気に食わないのか、数枚撮ったらもっと上の方に逃げて行ってしまった。オナガコバチ科の1種.産卵管鞘が長い(写真クリックで拡大表示)(2009/08/25) 撮った虫をコムピュータで拡大してビックリ、全身がサファイアの様に青色に輝いている。撮影時には逆光になっていたせいか、全く気が付かなかった。こんなに綺麗なハチならば、降りてくるまでもっと待つのであった。急いで先の場所に戻って探してみた・・・が、残念ながら、後悔先に立たず。 目で見たときは、かなり大きかったのでヒメバチだと思った。しかし、翅脈を見れば明らかにコバチ類(コバチ上科:翅脈が大幅に退化している)。何分にも横からの写真1枚しかないので、背面がどうなっているか分からず、北隆館の圖鑑に載っている検索表は引けないが、産卵管鞘が長いし、後腿節がかなり太いのでオナガコバチ科の1種の可能性が高い。縁紋脈の形もある種のオナガコバチの1種としておかしくない。しかし、コバチ上科には20近くもの科がある。 此処まで書いたところで、「Borror & Delong's Introduction to the Study of Insects」の検索表が引き易いことを想い出した。早速それを参照してみると・・・、少し怪しげな(この写真からは判別出来ない)所もあるが、一応オナガコバチ科(Torymidae)に行き着いた。上の写真の部分拡大.体は青色に輝き、眼は赤く、脚の先は桃色(写真クリックで拡大表示)(2009/08/25) この本のオナガコバチ科の解説を読むと、体長は2~4mmとあり、先に書いた「体長は多分7mm」は少し大き過ぎる。しかし、これはあくまで印象に過ぎない。何時もと違い、等倍撮影をしていないので正確な大きさは分からないのである。判断に苦しむが、此処では検索結果を尊重して「オナガコバチ科の1種」とし、「?」は付けないことにした。[その後、同科のEcdamua nambuiである可能性が高いことが分かった。詳しくは追記参照のこと] オナガコバチ科の分類はまだかなり問題があるらしい。先の「Study of Insects」には6亜科の名前が出ているが、九州大学の日本産昆虫目録では3亜科、全2亜科としている外国のサイトもある。 九大目録には42種が載っており、、東京都本土部昆虫目録を見ると10種が記録されている。余り種類数の多い科ではないが、恐らくまだ未記載種がかなりあるのだろう。 オナガコバチ類の生活史は様々である。虫えいを作るもの、虫えいを作る虫に寄生するもの、種子に寄生するもの、カマキリの卵に寄生するものなど、実に変化に富んでいる。上位分類に諸説あるのも、生活史の多様さと無関係では無いだろう。[追記]このオナガコバチについては、掲載前にハチ類の掲示板「蜂が好き」に御伺いを立てたのだが、その時は残念ながら有用な情報が得られなかった。しかしその約1年後、私が南方方面に出撃している間に、ハチの研究者として知られている長瀬博彦氏から「写真のオナガコバチは写真で見る限りEcdamua nambui Kamijo(和名はたぶんついていない)だと思います」とのコメントを賜った。何分にも日本を3ヶ月も離れていたので、新しいコメントが入っていることには全く気が付かず、今日漸くそのコメントに接した次第である。 九州大学の目録を見ると、Ecdamua nambui(和名なし)はオナガコバチ科(Torymidae)Toryminae亜科(和名なし)に属し日本では1属1種、北海道と本州に産する。Web上で探してみると、A. Zavada氏の「Notes on Ecdamua nambui (Hymenoptera:Torymidae), with a key to world Ecdamua species」と云う論文が見付かった。これに拠れば、Ecdamua属は、世界に5種産し、E. nambuiは当初日本からのみ知られていたが、キエフでも採集されたとのこと。 この論文には、検索表とE. nambuiの詳細な記載が載っているが、本記事の写真1枚からでは判断出来ない特徴が多い。しかし、前伸腹節の中央に小窩の列があるのはE. nambuiのみで、写真にはその様なものが見えるのでE. nambuiである可能性は高いと思う。 長瀬氏は「写真出見る限り、・・・だと思います」と書かれており断定はされていない。コバチ類には未記載種や未記録種がまだ沢山あると思われるが、同属は世界で5種と少なく、その可能性は低いであろう。其処で、此処では「E. nambui」とし、「?」は付けないことにした。 長瀬氏には貴重なコメントを賜り、深謝申し上げる。(2011/02/02)
2009.08.30
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双翅目が2回続いたので、今日はハチを紹介しよう。 極く小さなハチを何気なく撮ったのだが、コバチ(コバチ上科)であることは確かで、更に後腿節が異常と言えるほど膨らんでいるから、アシブトコバチ科の1種と思われる。後腿節の太いコバチの仲間には、他にシリアゲコバチ科、オナガコバチ科がある。しかし、これらは外見的、特に胸部の構造がかなり異なっている(また、雌は長い産卵管を持つ)ので除外して良いであろう。 九大の目録に拠れば、日本産アシブトコバチは53種、東京都本土部昆虫目録には21種が記録されている。アシブトコバチ科の1種.後脚腿節が非常に太いチビツヤアシブトコバチに似ている(写真クリックで拡大表示)(2009/08/13) 体長は3.5mm、多くのアシブトコバチは5mm位なので、この種は小さめと言える。北隆館の新訂原色日本昆虫大圖鑑を見ると、チビツヤアシブトコバチ(Antrocephalus japonicus)と言う種が載っている。記載を読むと、「雌は体長3~4mm、触角の柄節(第1節)の先端、梗節(第2節)、環状節(梗節に続く狭い部分)は赤褐色、後脚は黒色であるが、脛節の先端と付節は若干赤褐色、胸部の点刻は密で、点刻間の間隔は狭い」とある。 脚の色についての記述は日本語として少し曖昧である。「後脚は[全体が]黒色であるが、[他の脚では]脛節の先端と付節は若干赤褐色」なのか、或いは、「後脚[の大部分]は黒色であるが、[その]脛節と付節は若干赤褐色」なのか、判然としない。前者の解釈をとれば、これらの記述は写真のコバチと一致する。また、写真のコバチは肩の部分が膨らんでおり、翅に茶色の部分がある。圖鑑の図版を見ると、この様な特徴はチビツヤアシブトコバチ以外には認められない。 それならば、チビツヤアシブトコバチとしたいところだが、北隆館の圖鑑に載っているアシブトコバチは僅か9種、酷似種が居るかも知れず、チビツヤアシブトコバチと決めつけるには些か証拠不充分である。其処で、此処では「チビツヤアシブトコバチ?」と「?」を付けて置いた。胸部頭部は密な点刻で被われて、複眼には毛が生えている(写真クリックで拡大表示)(2009/08/13) アシブトコバチの仲間は、主に蝶や蛾、或いは、ハエ類の蛹や幼虫に内部寄生する。しかし、その寄生様式は様々で、単寄生(1宿主に1寄生)、多寄生(1宿主に同種複数が寄生)、共寄生(1宿主に異種複数が寄生)、二次寄生(寄生種に更に寄生)などが記録されているとのこと。先に可能性が高いとしたチビツヤアシブトコバチに関しては、圖鑑では「寄主は不明」と書かれている。 どうも最近は、我ながら味気ない分類や形態の話が多い。しかし、最近は検索で来訪される読者の数が非常に多く、同定の根拠や類似種との差異などを明確にする必要があると思われる。何卒御寛恕頂きたい。
2009.08.20
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今、クチナシの花が真盛りである。ベランダの椅子に座って一服していると、馥郁とした香が風に乗って漂って来る。 しかし、例によって真っ白に咲いた花には無数と言いたくなるほどのアザミウマが集り、蕾にはアブラムシが付く。今日は、そのアブラムシが排泄する甘露を目当てにやって来るアリを紹介しよう。フタフシアリ亜科シリアゲアリ属のハリブトシリアゲアリ(Crematogaster matsumurai)である。体長は、図鑑に拠れば2~3.5mm(働きアリ)、此処に示した写真では約3.5mmである。クチナシの蕾の基部に付いたアブラムシと、その甘露が目当てのハリブトシリアゲアリ.捕食者(コクロヒメテントウ)の幼虫も2匹見える(2009/06/11) 上はクチナシの蕾の基部を撮ったものである。赤味を帯びた青灰色のアブラムシに多くのアリが集っている。全農教の「日本原色アブラムシ図鑑」には、クチナシに寄生するアブラムシとしてクスオナガアブラムシ(アブラムシ亜科ヒゲナガアブラムシ族)とToxoptera sp.A(Toxoptera属の未記載種が2種あるのでAとBで区別している)(アブラムシ亜科アブラムシ族)が挙げられている。 この内、クスオナガアブラムシは触角が体長よりもずっと長く明らかに異なる。一方、Toxoptera sp.Aは、クチナシ専門のアブラムシらしく、また、写真のアブラムシと、腿節の色や角状管、尾片の構造が類似している。しかし、今回はアブラムシの写真は余りキチンと撮らなかったので、このアブラムシの種類に関しては明確な結論は出さず、「Toxoptera sp.Aの可能性が高い」とだけしておこう。 アブラムシとアリの他に、白い突起を持った変な虫も写っている。コクロヒメテントウの幼虫で、アブラムシを食べに来ているのである。一見、コナカイガラムシの様な格好をして居るが、これはアリなどのアブラムシの保護者を騙す擬態とされている。実際、アリはすっかり騙されている様で、このテントウムシの幼虫を攻撃することは全くなかった。ハリブトシリアゲアリ.体長約3.5mm.尾端から針を出して警戒中.針の先には毒液が付いている(2009/06/13) さて、肝心のアリの方である。このシリアゲアリの仲間は警戒態勢を取るとき、下の写真の様に、毒針を突き出して腹部を反らせる。それでシリアゲアリの名がある。 全国的な普通種であるオオクロアリやトビイロケアリ等が属すヤマアリ亜科のアリには針が無く、刺す代わりに腹端から蟻酸を出して敵に吹付ける。しかし、その他のアリはこのシリアゲアリの様に針で毒液を注入する。ハチと同じである。ハチとアリは同じ膜翅目だから、当然と言えば当然であろう。横から見た警戒中のハリブトシリアゲアリ.やはり毒液の付いた針を出している.白矢印は前伸腹節刺で、ほぼ三角形をしている(2009/06/13) ハリブトシリアゲアリにはテラニシシリアゲアリと言う類似種が居る。図鑑に拠れば、両者の違いとして、前者の方が色が赤っぽいこと、背中にある棘(前伸腹節刺)が前者では余り尖らず横から見るとほぼ三角形をなすのに対し後者では針状であること、後腹柄節背面中央が後者では縦に窪むのに対し前者では窪まないこと、等が挙げられて居る。しかし、色彩の違いは余り当てにはならないし、後腹柄節背面の窪みはこの程度の写真では判断できない。一方、前伸腹節刺の形は真横から撮った写真で何とか判断出来る。 上の写真中、白矢印で示したのが前伸腹節刺である。ほぼ三角形で針状ではない。ハリブトシリアゲアリとした所以である。 このアリは主に蜜液を餌とし、樹皮下や腐った樹木に営巣するとのこと。また、住宅地に棲息するのは一般にハリブトの方で、テラニシはもっと木の茂った環境に棲息するらしい。最初の写真の右上を2日後に撮ったものアブラムシの多くはマミーになっていた(2009/06/13) 最初の写真を撮った2日後に、また同じ場所を見に行った。もうアリの多くは蕾の裏の方に集まっており、撮り易い表側には殆ど居なかった。 上の写真は、最初の写真の右上と同じ部分である。最初の写真でも一番上のアブラムシは異様に腹が膨らんでいたが、2日後には明らかなマミー(Mummy:ミイラの意、アブラバチに寄生され中にはハチの蛹が入っている)になっている。その他のアブラムシも多くはマミーになっていた。シリアゲアリに守って貰っても、アブラバチの寄生からは逃れ難いのであろうか。或いは、アブラバチはかなり若齢の幼虫に産卵する様なので、アリが来る前に既に寄生されていたのかも知れない。 アブラムシと言うと、穂先にビッシリと付いているブキミな光景を思い浮かべる。しかし、我が家の庭を観察していると、群が増殖する前に捕食者に食べられてしまったり、大風に吹き飛ばされてしまったり、或いは、アブラバチに寄生されて殆ど全滅する機会の方がずっと多い。アブラムシも思っているほど楽ではない様である。
2009.06.27
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昨日までの5日間、暖かい日が毎日続いて、我が家の庭にも本格的な春がやって来た様である。ハナカイドウやシジミバナの花柄はグンと伸びたし、グミやユスラウメの花はもう咲き出した。本来、4月下旬に咲く筈のフジの花穂も随分膨らんだ。 しかし、虫の方はどうも今一つである。まだコマルハナバチの女王も現れないし、チョウもキチョウの越冬個体しかやって来ない。今日紹介するヒメバチの1種も越冬個体の可能性が高い。セイタカアワダチソウの葉上に留まっているのを見付けた横に位置すると写真が小さくなって細部が良く分からない(2009/03/18) 写真のヒメバチは、虫集め用に植えてあるセイタカアワダチソウの葉に留まっていた。体長は1cm程度だが、触角が長いので、2cm位に感じる。ヒメバチとしては中~小形である。斜め上から.真上からは位置の関係で撮れなかった(2009/03/18) 例によって、種類は分からない。亜科はヒメバチ亜科だと思うが、亜科への検索表を持ち合わせないので確証はない。「北海道大学所蔵ヒメバチ科タイプ標本」と言う900個体以上もの標本写真を載せているサイトがあり、ある程度の見当が付けば絵合わせ的に探すことも出来るが、こう言う特徴に乏しいヒメバチは種類が多過ぎてどうにもならない。正面から見たヒメバチの1種.触角が長い(2009/03/18) 特徴に乏しいと言っても、写真に撮ってみれば結構綺麗なハチである。複眼の内縁は白く、前脚と中脚の基節と転節(長い!!)は白色で、腿節、脛節、付節の一部は飴色、一方、後脚は基節から第1付節までは黒く、その先は白い。また、小楯板には白斑がある。まァ、これらの特徴の幾つかは、他の多くのヒメバチにも見られる共通要素なのだが・・・。葉の上を渡り歩くヒメバチの1種白い転節が非常に長いのが分かる(2009/03/18) 以前、「ヒラタアブヤドリヒメバチの1種(Diplazon laetatorius)」の所で、ヒメバチは全て寄生バチであると書いた。しかし、これは誤りであった。少し前に買った「・・・Study of Insects」と言う本によると、蜘蛛の卵やクマバチ類の幼虫を捕食する種類もあるとのこと。やはり、虫の世界は一筋縄では行かない様である。2枚目と同じ様な写真だが、翅脈と腹部が見えるので出すことにした(2009/03/18) 最近は双翅目(蚊、アブ、ハエ)の方は、双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」の御蔭で科より下のレベル(亜科、属、種)まで落とせることが多くなった。ハチに関しては、「蜂が好き」と言うサイトにハチの掲示板がある。しかし、やはりヒメバチは種類が多すぎて中々難しい様である。同じく寄生性のヤドリバエ類が、極く一部の専門家以外には容易に分からないのと良く似ている。昆虫寄生性の昆虫は、宿主の種類がボーダイなので、それに寄生する方の種類もボーダイになってしまうのである。 それでも、今後はもう少し下のレベルまで落とさないと、その内「ヒメバチの1種(その17)」等というアホな表題を付けなければならないことになりかねない。少し真剣に文献を探す必要がある。
2009.03.20
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もう春の気配が大部濃くなって来た様である。新顔の虫が出る前に、昨年の秋に撮ったハチを紹介しておこう。 まだ「北米原産シオンの1種(紫花)」やセイタカアワダチソウが咲いていた頃のことである。これらの花にはハラナガツチバチ類(例えば、キンケハラナガツチバチの雌)、ツマグロキンバエ、ハナアブの仲間(例えば、オオヒメヒラタアブ)、小さなハエ類(例えば、チビクチナガハリバエの1種Siphona paludosa)等が沢山来ていたのだが、こららの虫を捕食、或いは、狩りをする昆虫も又来ていた。その内、捕食者のハラビロカマキリは既に紹介済みである。 狩りをする昆虫としては、この辺りでは余り見ない一寸変わったハチが来ていた。ギングチバチの1種、体長は約1cm、黒い体に黄色の斑をちりばめている。黒に黄色の模様を持つハチは沢山いるが、このギングチバチの特徴はその異常なほど大きな眼にある。ギングチバチの1種.体の割りに頭と眼が大きい3個の単眼が良く見える(2008/11/28) この魅力的な眼(人によっては宇宙人を思い出すかも知れないが・・・)をしたハチを何故今まで紹介しなかったかと言うと、真っ正面からこの素晴らしい眼を撮ることが出来なかったからである。3日間もやって来たのに、遂に撮れなかった。それが悔しくて悔しくて、今まで掲載しなかったのである。横から見たギングチバチ.複眼が非常に大きい留まっているのはナシグンバイに寄生されたサンザシの葉なので色が少しおかしい(2008/11/29) このハチ、留まるときは必ずと言っても良いほど木の幹の方を向いて留まる。だから、木が邪魔になって正面から撮れない。時々草の葉の上に留まることがあるが、非常に敏感で、直ぐに逃げられてしまう。その一方では、私の着ている白いセーターに留まったりするのだが・・・。空中静止するギングチバチ(2008/11/29) 実は、ギングチバチを見るのは初めてである。図鑑で名前は知っていたのだが、実物は見たことがなかった。最初に気が付いたのはベランダの椅子で一服しているときで、ハチであるにも拘わらず、ヒラタアブ類の様に完全な空中静止をする。その完全な空中静止をしたかと思ったら、次の瞬間、突然シオンの花に猛烈な勢いで突進した。余りに一瞬のことで何が起こったのか良く分からなかったが、花に激突したのかと思った。しかし、ハチは一瞬の後にはまた花から離れ、2m余り先のニワナナカマドの葉に留まった。花を離れるとき、何か、ハチが少し大きくなった様な感じがした。ツマグロキンバエを捕らえたギングチバチ縞模様の眼が見える.ツマグロキンバエはショックで何かを排泄してしまっている(2008/11/28) 急いでハチが留まっているところへ見に行くと、ハチは柔道の袈裟固めの様な感じで何かを押さえ込んでいた。写真を撮って像を拡大してみると、複眼に縞のある虫が掴まっている。ツマグロキンバエである。どうやらこのハチは狩りをするハチらしい。早速調べてみると、直ぐにギングチバチであることが判明した。ホソヒラタアブを捕らえたギングチバチ獲物が大き過ぎて飛んで運べない(2008/11/28) その後少しの間ギングチバチは姿を現さなかったが、またやって来て、今度はホソヒラタアブを捕まえた。ホソヒラタアブは少し大き過ぎたのか、抱えて飛ぶことが出来ない。アブを抱え、歩きながら草むらの中に入ってしまった。その後どうなったのか分からなくなったが、暫くしてホソヒラタがその草むらの中から飛び出して来た。或いは、捕獲に失敗したのかも知れない。麻痺させていなかったのだろうか?ホソヒラタアブを抱え、翅をはばたいて石を乗り越えようとするギングチバチ(2008/11/28) ギングチバチはハエやアブ、種によってはハナバチなどを捕らえ、麻痺させて竹筒、木や地面の穴に運び、沢山詰めて幼虫の餌とする。ギングチバチ科ギングチバチ亜科、或いは、アナバチ科ギングチバチ亜科に属し、日本に約90種が棲息する。文献がないので、写真のギングチバチの種類は知りようがない。例によって、「ギングチバチの1種」と言うことに相成る。可愛いので横顔をもう1枚(2008/11/28) もう3月も半ばである。このWeblogもこれで3度目の春を迎えることとなる。もう目立つ大きな虫は紹介し尽くした感が無くもない。この辺り(東京都世田谷区西部)の住宅地では、子供の頃と較べると、大きな虫が随分少なくなった。カブトムシやクワガタ類は最近見たことがないし(林のあるところには今でも居るらしい)、カミキリムシも1cm位の種類ばかり。一方、キジラミ、コナジラミ、アブラムシなど小さい虫の方も、その多くは寄主が決まっているので、今後現れる新顔の種類数はそう多くはないだろう。 残るは、膜翅目(ハチ)と双翅目(蚊、アブ、ハエ)の小型の種類である。しかし、この連中は容易に種類が分からない(科すら分からない)。今後は、写真の調整や文章を書く時間より、種類の検索にかかる時間の方がずっと多くなるであろう。
2009.03.13
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先日、ヒメハラナガツチバチの雌を掲載したが、今日はその雄の方を紹介する(ハラナガツチバチ類は雄と雌で外見が非常に違うので、別々に紹介している)。 これで黒と黄色のハラナガツチバチを紹介するのは4回目である。順序として、一番沢山居るキンケハラナガツチバチ(以下、キンケと略す)の雌から始めたので、このヒメハラナガツチバチ(以下、ヒメ)の雄が最後になってしまったが、これを撮影したのは、キンケの雌を撮ったのと同じ頃(10月10日前後)である。北米原産シオンの1種で吸蜜するヒメハラナガツチバチの雄小楯板、後胸背板、前胸背板後縁に黄紋がある(2008/10/09) 写真でみると、キンケの雄とよく似ている。しかし、黄色い部分がキンケよりも一寸多い。特に、小楯板に2紋あるのが目立つ。その後にある後胸背板と、頭部に続く前胸背板の後縁も黄色い。また、一寸見たときには気が付き難いが、ヒメの腹部の黄色横帯は第1~第5節の5本あるのに対し、キンケでは第4節までで4本しかない。なお、前肢と中腿の腿節外側先端と脛節外縁が黄色いのはキンケと同じだが、一般にヒメの方がその範囲が広い。 これらの斑紋の色は、同じ黄色と言っても、キンケの方は正に黄色なのに対し、ヒメではかなり白っぽく、時として象牙色に近い。 キンケとヒメの雄は、多くの場合、これで区別が付く。しかし、ヒメの雄は小型になると小楯板の2紋が消失することが多いそうで、また、小型のキンケ雄の黄色はかなり白っぽくなってヒメの色に似てくる。更に、ヒメの第5節の黄色横帯は細いし、また、ハラナガツチバチ類は花に留まると体を丸めるので、写真には第5節の横帯が写らないことが多い。なお、ヒメの雌はキンケの雌とは異なり、翅端近くに明確な暗斑を持つが、ヒメの雄はキンケの雄や雌と同じく、この暗斑を持たない。横から見ると、腹部の黄色横帯が5つあるのが分かる横帯の色は白味がかった黄色(2008/10/10) ところで、ヒメの雄はキンケの雄よりもずっと小さい。写真では、虫体を出来るだけ大きく表示する様にトリミングしてあるので、虫の大小が分かり辛い。そこで、キンケの雄の写真を見ていただきたい。キンケ雄の体長は「北米原産シオンの1種」の花径の1.2倍以上あるのに対し、ヒメではその径よりもかなり小さい。 北隆館の圖鑑に拠れば、キンケの雄16~23mm、ヒメの雄11~19mmである。写真の雄は体長2cmに近かったから、これでも最大級と言える。 前述の様に、小型のヒメの場合、小楯板の黄紋は時に消失することがあるが、実際的には、キンケの雄が幾ら小さくても普通のヒメの雄程度の大きさはあり、一方、ヒメの場合その程度に大きければ小楯板の2紋は必ずあると言って良い。言い換えれば、体長15mm以下であれば、背中の黄紋の有無に拘わらずヒメ、それ以上で背中に黄色い紋があればヒメ、無ければキンケである。また、腹部に横帯が5本あるのを確認できればヒメ、どう見ても4本しか無ければキンケとなる。ハラナガツチバチ類の雄は触角が長い(2008/10/10) ヒメの雌の所で書いた様に、ハラナガツチバチ類の雌は触っても逃げないことがある位落ち着いているのに対し、雄は非常に臆病で直ぐに逃げてしまう。逃げるにも色々な逃げ方がある。ツマグロキンバエやハナアブ類は、逃げても直ぐ隣の花に留まったりするので写真を撮るのに大した問題は生じないが、このヒメの雄は、隣の花ではなく、隣の敷地まで逃げてしまう。全く気弱なヤツである。腹部腹板にも黄帯があるのが見える前肢、中肢の脛節外縁にある黄斑が目立つ(2008/10/10) キンケの雄もかなりの臆病者だが、それでもまだ、充分に近づいて、少しはカッコウの付いた写真を撮ってやることが出来た。しかし、このヒメの雄は全然ダメであった。ソモソモ、等倍接写出来るまで容易に近づけないのである。何とか接近して撮ったのが、下の写真。しかし、何とも頼りない格好である。口吻を筒状花に差し込むヒメの雄.何とも頼りない感じ(2008/10/12) これで夏から秋にかけて、この辺り(東京都世田谷区西部)で発生するハラナガツチバチ類の雌雄はほぼ全部紹介した。キオビツチバチの雄は紹介していないが、これはもう一つのWeblogに掲載してあるので、興味のある読者はこちらを参照されたい。 他に、この辺りで夏期~秋期に出現する可能性のあるハラナガツチバチはアカスジツチバチだけである。しかし、このハチは中学~高校の頃に数回見たことがあるだけで、その後は、残念ながら、一度も見ていない。
2008.11.13
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先日、キンケハラナガツチバチの雌と雄を掲載したが、今日は近縁種のヒメハラナガツチバチの雌を紹介する。 ヒメハラナガツチバチ(以下「ヒメ」と略す)の雌の写真は以前撮ったのが画像倉庫の中に何枚かあると思っていたのだが、倉庫の中を調べてみると、ヒメの写真は何れも家以外の場所で撮ったものばかりであった。我が家の庭では、キンケハラナガツチバチ(以下「キンケ」)は最普通種だが、ヒメの方はかなり稀なのである。年に1~2度しか見かけない。 もう10月も終わりである。今年はもうヒメの写真を撮る機会は無いだろうと思っていたところ、一昨日、北米原産の赤紫のシオン(友禅菊)にヒメの雌が留まっているのを見付けた。ヒメハラナガツチバチの雌.毛が白く頭や胸背に毛が少ない(2008/10/27) 北隆館の圖鑑に拠ると、キンケ雌の体長は17~27mm、ヒメ雌は15~22mmである。これだと範囲がかなり重複しているが、これまでの印象としては、ヒメ雌はキンケ雌の小型の個体程度の大きさ、と言う感じである。 一見して明らかな様に、キンケの毛が正に「金毛」なのに対し、ヒメの毛はずっと白っぽく、頭や胸背に余り毛が生えていない。また、キンケの翅の色は茶色を帯びているが、ヒメの方は殆ど無色透明で、写真では一寸分かり難いが、翅の先端近くに明らかな暗色斑がある。友禅菊の花を渡り歩くヒメの雌.翅の先端近くに暗色斑があるのだが、この写真ではよく分からない(2008/10/27) このヒメの個体がやって来た場所は、前回紹介したハラビロカマキリの「カマちゃん」が潜んでいる場所から僅か10cm位のところである。大きさとしては、丁度手頃の獲物なので、カマちゃんにやられるのではないかとヒヤヒヤしながら撮影していたが、やがて隣のセイタカアワダチソウの方に移った。先ずは一安心。セイタカアワダチソウに移ったヒメの雌花穂を持って角度を変えながら撮影したのだがその程度の刺激では逃げない(2008/10/27) ヒメの雄は、何れ紹介するが、非常に臆病で直ぐに逃げてしまう。しかし、雌の方は余裕があると言うか、落ち着いていて簡単には逃げない。これはハラナガツチバチ類全体に通用することで、中には体を突いても逃げない雌が居る位である。 このヒメの個体も落ち着いており、セイタカアワダチソウの花穂を左手で持って、色々角度を変えながら撮影したのだが、逃げる気配は全く無かった。ヒメ雌の頭部.キンケ雌よりも毛が少ない(2008/10/27) ハラナガツチバチ類の幼虫は、ネキリムシを食べて育つ。聞くところに拠れば、雌バチはネキリムシのいる場所を感知すると、地上に降りてネキリムシの居る方へ地面を掘り進み、ネキリムシを刺して麻痺させてからその横に卵を産むとのこと。 しかし、どうも良く分からない。以前紹介した「クロヒメバチ?」の仲間の多くはスズメガ類の幼虫に寄生する。スズメガの幼虫は、普通のネキリムシよりもずっと大きいが、それ丸一匹を食べて育つヒメバチの大きさ(体重)は、普通のハラナガツチバチ類よりもかなり小さい。大型のキンケになると、その体重はクロヒメバチ類の数倍はあると思う。と言うことは、蛋白質量にしてスズメガ終齢幼虫の数倍のネキリムシを食べなければならないことになる。口吻をのばしているヒメの雌(2008/10/27) スズメガの終齢幼虫は普通のネキリムシの10倍近い重さがあると思われる。そのスズメガ終齢幼虫の数匹分となると、1匹のハラナガツチバチの幼虫は数10匹のネキリムシを食べなければならない計算になる。 と言うことは、ハラナガツチバチの幼虫は親が用意したネキリムシを食べ尽くした後、更なる餌を求めて土中を探し回り、次から次へとネキリムシを食べて行くのだろう。キンケ雌の3枚目の写真と較べると明らかに毛が少ない(2008/10/27) 土中で餌を探し回るのはそれ程難しいことではないらしい。同じく幼虫がネキリムシを餌とするシオヤアブ等のムシヒキアブ類では、親は餌を用意することもなく木や草に産卵するので、孵化した幼虫は直ぐに地面や朽木の中に潜り込んで獲物を探し回らなければならない。 それから較べれば、ハラナガツチバチ類の幼虫は、少し大きくなるまでは親が用意した餌があるのだから、ずっと恵まれていると言える。
2008.10.29
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先日、キンケハラナガツチバチの雌を掲載したが、今日はその雄を紹介する。 大体、昆虫の雄と言うのは、雌よりも小さく頼りないことが多いが、ハラナガツチバチ類の雄は、雌が逞しいせいか、特にひ弱な感じがする。キンケハラナガツチバチの雄.第1腹節は他より細い第1~4腹節後縁に黄色帯紋がある.その他にも翅の付け根、触角第1節などに黄色斑が見える(2006/10/17) 一般に、ハラナガツチバチの雄は、体が細長く、体毛の色が雌より白っぽい。第1腹節がそれ以降よりも細いので、腰が括れた感じになる。雄のくせに妙に柳腰なのである。 しかし、触角は長い、雌の3倍位はある。昆虫の世界では、一般に、触角だけは雄の方が雌よりリッパである。これは触角が、雌を捜す為の感覚器でもあるからだろう。 体長は、雄の方がかなり小さい。しかし、ハラナガツチバチ類は体長の変異が大きいので、2頭の雌雄を比較した場合、雄の方が大きいこともあり得る。この仲間の雄は何れも触角が長い.第1腹節は他より細い毛は雌に比して少なく、色も白っぽい(2006/10/18) 黒地に黄色の毛帯を持つハラナガツチバチ類の雄は、何れも腹部の背板後縁に黄白~黄色の帯紋を持つ。雌の様な毛帯ではなく、外骨格自体に色が付いているのである。この辺り(東京都世田谷区西部)に居る可能性のある黄と黒のハラナガツチバチの雌で毛帯ではない帯紋を持つのは、只のハラナガツチバチ(シロオビハラナガツチバチ:以下「シロオビ」と略す)だけである。 雄の方は、キンケハラナガツチバチ(以下「キンケ」と略す)では第1~4節、ヒメハラナガツチバチ(以下「ヒメ」とする)では第1~5節に帯紋を持つ。また、シロオビでは第1~5節だが、第5節のは消失する場合もあり、これは、オオハラナガツチバチ(以下「オオ」とする)でも同様だそうである。吸蜜中のキンケハラナガツチバチの雄(2006/10/17) キンケとヒメの雄は腹部の背版以外にも、体の各所に黄白~黄色の斑紋を持つ(オオとシロオビについては圖鑑に記述がないが、実物を見たことがないのでよく分からない)。ヒメの場合は、普通小楯板の2紋と後胸背版の黄色斑が目立つのでキンケと容易に区別出来る。しかし、小型の個体では消失する場合もあるとのこと。圖鑑に拠れば、ヒメの雄は体長11~19mmとあり、キンケの16~23mmに比して相当小さいので、小楯板の黄紋が無くても15mm以下であればヒメと考えて良いと思われる。 キンケでは、一般に複眼内縁下部、頭楯の基部と周囲、前脚脛節上縁、前胸背板肩部に黄色部を持つが、個体差が大きい。最後の写真では、中脚腿節や前胸背板の所々にも黄色斑が見える。これらの黄色紋は、基本的にヒメとよく似ており、ヒメの方が黄紋のある場所が少し多くなる。この個体はキンケハラナガツチバチと思われるが、上の3個体とは異なり胸部の褐色毛が目立ち、その他の毛も少し長く、また、固めの様に見える.羽化直後なのかも知れない(2006/10/29) 腹部の帯紋は、一般にキンケの方は普通の黄色だが、ヒメのはやや白みがかる。しかし、キンケでも小型の個体では白っぽくなるので紛らわしい。一番安定しているのは、第5腹節の帯紋の有無らしい。ヒメにはあるのに対して、キンケには無い。圖鑑には、ヒメの帯紋は「第5節では非常に細い」と書かれているが、消失する場合があるとは書いてない。 纏めると、小楯板や後胸背版に黄紋があればヒメ、無くても体長15mm以下、或いは、第5腹節に帯紋があればヒメ、それ以外はキンケ、と言うことになる。上の個体を前斜め下から撮ったもの.雄でもかなり恐ろしそうな顔をしている.複眼内縁下部、頭楯の基部と周囲、前脚脛節上縁、中脚腿節前面、前胸背板の所々に黄色斑が見える(2006/10/29) 今日もまた無味乾燥な形態の話になってしまった。どうも、このキンケの雄と言うのは好きでないのである。臆病で直ぐ逃げるし(雌は余り逃げない)、ナヨナヨしていて、雌にある様な逞しさは微塵も感じられない。「シッカリしろ!!」と、どやし付けたくなる。 雄だから毒針はなく、手で掴んでも刺されることはない。それでも腹を曲げて刺す様な行動をとる。お尻の先には3本の棘があるので、少しチクチクするが、只それだけである。
2008.10.23
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昨日の夕方、久しぶりに大きなヒメバチが出現した。体長25mmはある。最近の我が家では、こんな大型のヒメバチは1年に1、2度しか現れない。しかも、普通は少し飛び回るだけで直ぐに隣家へ行ってしまうのだが、昨日は庭の彼方此方に留まり、何とか数枚の写真を撮ることが出来た。滅多にないことである。 全身青味のある黒で、所々に白い斑紋がある。翅は褐色を帯びる。大型のヒメバチ.クロヒメバチか?体長は25mm程度(2008/10/20) 幾らヒメバチの分類が難しいからと言っても、25mm以上のヒメバチはそう多くはない。早速圖鑑で調べてみると、イヨヒメバチと言うのが見つかった。「体黒色、額側部、小盾板、触角中央数節の上面は白色・・・翅は全体黒褐色を帯びる」とあるから、これらの点では一致している。しかし「脚はおおむね黒色、前脚の脛節および付節の下面は白色を帯びる」は一致しない。脚には白いところがもっと多い。また、前胸背板、頸部、その他にも白斑がある。全体に青味のある黒色で、翅は褐色を帯びる(2008/10/20) そこで、また「北海道大学所蔵ヒメバチ科タイプ標本」の御世話になる。その標本写真をみると、イヨヒメバチ(Amblyjoppa proteus satanas)は殆どまっ黒で、白斑は標本が古いせいか殆ど認められない。どうも違う様である。 同属のヒメバチを順に見てゆくと、クロヒメバチ(Amblyjoppa cognatoria)が一番よく似ている。だが、何れの標本写真でも後肢付節の大部分は白いのに対し、ここに掲載したヒメバチでは全体に黒ずんでいる。 しかし、同属でクロヒメバチより似た種類は見当たらないし、白色の部分にはかなりの個体変異が認められる(5個体の写真がある)。だから、クロヒメバチである可能性は高いと言える。体の彼方此方に白斑がある(2008/10/20) 実は、その前にもっと大きな問題がある。属が間違っている可能性もあるのである。しかし、属の検索表はないし、北大のタイプ標本を見てゆけば切りがない。 これは、もう素人の限界と言うべきであろう。そこで、此処では「クロヒメバチ?」と「?」を付けてお茶を濁しておいた。
2008.10.21
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毎年晩夏から秋になると、黄と黒と茶色の大きなハチが姿を現す。我が家の大敵ネキリムシを食べて育ったハラナガツチバチ(ツチバチ科)の仲間である。 数も多いし姿も悪くないのだが、この仲間でこれまでに紹介したのは全身殆どまっ黒で第3腹背板に黄色斑をもつキオビツチバチだけであった。何故かと言うと、今までこの黄、黒、茶色のツチバチの分類に自信がなかったのである。 この辺りに居る可能性があるのは、何も形容の付かない只のハラナガツチバチ(シロオビハラナガツチバチ)、オオハラナガ(以下「ツチバチ」を省略)、キンケハナラガとヒメハラナガの4種の様で、その区別が何ともハッキリしなかったのである。今年の冬に、改訂された北隆館の圖鑑を購入して、漸く種の判別が出来る様になった。キンケハラナガツチバチの背面.翅が少し曇っている(2008/10/10) 今日紹介するのは、キンケハラナガツチバチの雌である。ハラナガツチバチ類は雄と雌で非常に外見が違うので雌雄を別々に紹介することにした。 キンケは頭部と胸部背面に褐色の長毛があり、腹部ではやや色薄く、腹部の第1~4節の後縁に白っぽい毛帯がある。オオハラナガでは、この腹部の毛帯が第1~3節の3本しかないので、区別は容易である。上と同じ個体.後肢脛節に泥が付いているところを見ると羽化後間もないのかも知れない。花には行かずジッとしていた(2008/10/10) 只のハラナガはどうかと言うと、この腹部の2~4背板の後縁に毛帯ばかりでなく、雄バチの様な白色の帯状紋がある。この白色紋は毛帯の下に隠れて見難いが、出現の時期が他とは異なり春から夏にかけてなので、この時期に見ることはないらしい。 ヒメハラナガは全体に毛が白っぽい。胸部背面(中胸背板)の長毛はキンケとは異なりずっと疎らである。また、キンケの翅は褐色を帯びているが、ヒメの翅は透明に近く先端に明確な暗色斑がある。 これで何とかこの4種の雌を区別することが出来る。なお、雄の判別はこれとは全く別物である。同じ個体の頭胸部.複眼が腎臓形をしている(2008/10/10) これで分かったことは、この辺りにはオオハラナガは全く居らず、ヒメハラナガも住宅地で見ることは少なく、殆どは、このキンケハラナガだけだと言うことである。晩春に現れた只のハラナガらしき個体を今年撮ったが、腹部の白色紋は毛帯に隠れて良く分からなかった。これは来年の課題である。笑っている様にも見える.大顎が見るからに強力そうこれで地面に穴を掘るのだろうか?.上とは別個体(2008/10/12) キンケは黒い体に褐色の密毛を生やし頑丈そうである。かなり厳つい体付きだが、性格は非常に温和しい。これまでにハラナガツチバチ類に刺されたと言う人を知らない。写真を撮るときには、留まっている花をひっくり返したりすることもあるが、刺される可能性なんぞ、考えたこともない。コマルハナバチと同じで、掌の中に入れても多分刺さないだろうと思う。セイタカアワダチソウにやって来たキンケの雌(2008/10/10) キンケに限らずハラナガツチバチの仲間は、キク科の花が好きである。しかし先日、面白いことを発見した。「北米原産シオンの1種」には雌雄共に来るが、セイタカアワダチソウには殆ど雌しか来ない。雄も全く来ない訳ではないが、非常に少ない。 考えてみると、雄は自分の体力さえ維持すればよいのだから、エネルギー源になる花蜜だけを探せばよい。しかし、雌の方は卵を成熟させるために多量の蛋白質を必要としている。恐らく、セイタカアワダチソウの花には花粉(蛋白質に富んでいる)は沢山あるが、花蜜は少ないのであろう。「北米原産シオンの1種」の上を歩き回るキンケの雌(2006/10/20) 最後の写真は一昨年に撮ったものである。実は、一昨年撮ったハラナガツチバチ類の写真が画像倉庫の中にゴマンとある。勿体ないので、キンケの雄を紹介するときには、この倉庫の写真を大いに活用するつもりである。
2008.10.17
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先日、珍しい来客があった。トラマルハナバチである。この辺りには居ないものだとばかり思っていたので、種類を確認した時には少し驚いた。 メドーセージがお気に入りの様で、それ以外の花、例えばデュランタやキク類などには全く興味を示さなかった。聞くところに拠ると、トラマルハナバチは、ハチとしては口吻(中舌)の長いマルハナバチ類の中でも特に口吻が長いとのこと。長くなければ、あの細長いメドーセージの花に頭を突っ込んで吸蜜はできないだろう。メドーセージの花に留まったトラマルハナバチの働きバチコマルハナバチの雄に似るが、胸部は赤味を帯び、腹部は黒が基調(2008/09/05) しかし、幾らトラマルハナの口吻が長いとは言え、メドーセージの花も花としては相当細長い方に属す。下の写真の様に、殆ど頭が隠れる位に突っ込まないと吸蜜が出来ない様である。 写真と言うものは、虫と雖もやはり顔というか頭が写っていないと絵にならない。花に頭を突っ込むのも、其処から出て来るのも一瞬だから、写真を撮る方にとっては、シャッターを切る頃合いが難しい。花に頭を突っ込んで吸蜜するトラマルハナ(2008/09/05) 実を言うと、御恥ずかしい話だが、子供の頃からつい最近まで、コマルハナバチの雄のことをこのトラマルハナバチだと思い込んでいた。この誤解には色々な理由がある。弁解は別のWeblogでコマルハナバチの雄を掲載したときに済ませたので、此処では繰り返さない。 しかし、Internetで検索してみると、コマルハナの雄をこのトラマルハナと間違えている人は結構いる様で、「トラマルハナバチは刺さない」という様なことを書いているサイトが幾つかある。しかし、「日本の真社会性ハチ」という書籍に拠れば、トラマルハナバチはマルハナバチ属の中で最も攻撃性が強いとされている。「刺さないマルハナバチ」は、恐らくコマルハナバチの雄の間違いであろう。雄バチには針がないから、刺したくても刺すことが出来ない。花から出来てたところ.口吻が長い飛び散っているのは花粉(2008/09/05) トラマルハナバチが現れたのは、後にも先にもこれ1回きりである。マルハナバチはかなり遠くまで吸蜜に出かけるそうだが、一体何処に巣があるのだろうか。マルハナバチ好きの私としては一寸気になるところである。
2008.09.12
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今日はまたハチを紹介する。コハナバチ科のヤドリコハナバチ属(Sphecodes)の1種である。このヤドリコハナバチ、ハラアカハナバチとも呼ばれているが、九州大学の目録ではヤドリコハナバチとなっているので、此処ではそれに従った。ヤドリコハナバチ属(Sphecodes)の1種ハラアカハナバチとも呼び、腹部が赤いのが特徴(2008/06/27) 体長は約1cmもあり、コハナバチとしては大型である。九州大学の目録には51種のヤドリコハナバチ属のハチが登録されており、その多くは腹部に赤い部分を持つらしい。しかし、中には全身黒色の種もあり、また、あるサイトに拠れば、雄は赤くないとのこと。横から見ると腹部の前半のみ赤いことが分かる(2008/06/27) ヤドリコハナバチ属のハチは日本に50種以上居るのに、保育社の図鑑には1種も載っていないし、北隆館の圖鑑でも僅か2種である。他に特別な情報も無いので、このハチの名前は「ヤドリコハナバチ属の1種」とするしかない。属が分かっただけでも諒とせねばならないだろう。正面から見ると結構恐い顔(2008/06/27) カメムシの名前には似た様な名前で間違え易いのが多いが、このヤドリコハナバチの名前もまた混乱を生じ易い。北隆館の圖鑑を見ると、このコハナバチ科のSphecodes属のハチは、○○○ハラアカハナバチとなっており、他に○○○ヤドリハナバチと言う名前のハチがコシブトハナバチ科に数種載っている。一方、九大の目録ではSphecodesはヤドリコハナバチで、コシブトハナバチ科の方は殆どが○○○ハナバチヤドリとなっているが、1種だけ○○○ヤドリハナバチの名が付いているのがある。Sphecodes属は○○○ハラアカハナバチとした方が分かり易いかも知れない。斜め横から見るのが一番可愛い(2008/06/27) 「ヤドリ」と付くのは、寄生性のハチだからである。しかし、ヒメバチやヤドリバエなどとは異なり、宿主を食べてしまうのではない。宿主が幼虫の為に用意した餌を横取りしてしまうのである。この種の寄生を「労働寄生」と呼ぶ。 ハナバチ類(ミツバチ上科)には、この手の寄生をする種類が意外と多い。何れも近縁のハナバチに労働寄生し、ヤドリコハナバチ属の場合は、主にアトジマコハナバチ属Halictusやコハナバチ属Lasioglossumのハチに寄生するとのこと。これらは何れもヤドリコハナバチ属と同じくコハナバチ科に属す。オマケにもう1枚斜めから(2008/06/27) この様なハナバチの労働寄生は、カッコウやホトトギスの託卵に似ている。みんな可愛い顔をしていて、結構ズルイのである。
2008.07.16
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今日は、先日の「メンハナバチの1種」と同じく、撮影後約1年経って漸く種類が分かったハチを紹介する。 スミゾメハキリバチとムナカタハキリバチである。この2つの名称のハキリバチ、実は同一種の雌雄であることが分かり、現在では雄の方のムナカタハキリバチが標準和名とされているらしい。しかし、此処では種の特徴を良く表したスミゾメハキリバチの名称を先に置くことにした。ニワナナカマドに訪花したスミゾメハキリバチ恐ろしくせわしないハチで撮るのが大変体長は約15mm(2007/05/31) このスミゾメハキリバチ、名前の通り全身真っ黒なハキリバチである。昨年ニワナナカマドが開花したとき、連日の如くやって来て花粉集めに余念がなかった。いや、余念がないと言うよりも、花穂の中をバタバタと暴れ回っている感じで、こんなに落ち着きのないハチは今まで見たことがない。コマルハナバチなども留まることなく動き回って撮影のし難いハチだが、このスミゾメハキリバチと較べれば遙かに撮り易い。カメラの視野の中にハチを入れるのさえ難しく、視野の中にハチが見えたら即シャッターを切る、と言う感じで撮影したので、無駄写真を山ほど作ってしまった。横から見ると、腹部下面に花粉を多量に付けているハキリバチの花粉運搬は腹で行う(2007/05/31) ・・・と言う訳で、何時もなら掲載する筈の前から撮った写真や、極く近接で撮った写真がない。 しかし、このハチ、今年別の所でシッカリ撮ることが出来た。近くで撮ると、中々可愛い顔をしている。それらの写真は別のWeblogに載せてあるので、関心のある向きはこちらを参照され度。腹部に白帯がみえるが、黴でも生えているのか?(2007/05/31) 次は雄バチの方である。このハキリバチもスミゾメとほぼ同時期に撮ったのだが、種類が分からなくて殆ど迷宮入りになっていたのである。つい先日、ムナカタハキリバチ=スミゾメハキリバチの雄であることが判明した。 ハキリバチの種類の判別は難しい。しかし、このムナカタは触角の先端が平らに楔形になっており、また、前脚に長い毛を持っているとのこと。写真のハキリバチは正にその特徴を持っているので、ムナカタハキリバチとしたのである。ムナカタハキリバチ.スミゾメハキリバチの雄(2007/06/08) ハキリバチの雌は花粉を腹部下面の花粉運搬毛に付けて巣に運ぶ。雄は花粉を運ぶ必要がないから、その運搬毛を持たない。下の写真では腹部下面は見えないが、2番目の雌の写真を見ると腹部側面の上部まで花粉が付いているのに対し、このハキリバチの側面には何も付いていない。これは雄バチであることを示している。ムナカタハキリバチは前肢に長毛を持ち、触角の先端は楔状(2007/06/08) 最近は雨模様の日が続いており、虫も少なく、写真は殆ど撮っていない。ネタ切れにはなっている訳ではないが、昨年撮った写真を掲載するには良い機会だと思っている。
2008.07.09
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写真を撮った虫の所属が分からなくても、他に見られない奇妙な形をしていたり、特異的な模様を持っていたりすると、調べさえすればわりと簡単に分かりそう、・・・と思ってしまう。 確かに普通はそうなのだが、中には幾ら調べても分からない、と言う虫も出て来る。そういう時は、「その内種類が分かってから掲載しよう」と考えてしまうので、結果的にその虫は御蔵入りになってしまうことが多い。 しかし、1年以上経って偶然に種類が分かった、と言う場合もある。今日はその様な経過をたどった虫を紹介する。但し、分かったのは属までで、種に関しては分からずじまいである。 ムカシハナバチ科、メンハナバチ属(Hylaeus)の1種で、体長は約8mm、かなり小さいハチである。独立行政法人「森林総合研究所」の「竹筒ハチ図鑑」と言うサイトに掲載されているニッポンメンハナバチの標本と斑紋の分布は一致するのだが、調べてみると、この属の多くは同じ様な斑紋を持っている様で、斑紋だけでは種の判別は無理らしい。メンハナバチの1種(Hylaeus sp.)(2007/06/09) 撮影したのは、昨年の6月9日、まだニワナナカマドが咲き乱れている頃であった。ギボウシの葉の上に小さなハチが留まっており、口から蜜を出したり引っ込めたりしている(下の写真)。まるで牛が反芻している様。複眼の間に黄色の三角斑が1対ある.口から花蜜を出したり引っ込めたりしている(2007/06/09) 良く見てみると、複眼の間に逆三角形の小さいが極めて明瞭な黄色斑が1対ある。こんなハチは見たことがない。しかし、これ程明確な特徴があるのだから、調べれば簡単に種類が分かるだろう、とその時は思った。。 しかし、図鑑は標本の背側を撮った写真しか載せていないし、Internetで調べてもハチを正面から撮った写真は少ない。幾ら捜しても、顔面に三角の黄色斑を持つハチは見つからなかった。本来ならば、検索表を辿るべきだが、膜翅目の検索表と言うのはどれも実体顕微鏡下で調べなければ分からない様な微小な構造の違いに基づいているので、この程度の写真から科を検索することは全くの不可能事である。 殆ど迷宮入りと諦めていたが、先日「裏庭観察記」と言うサイトを見ていたら、顔面に逆三角形の黄色斑を1対持つハナバチの写真がページの一番下に載っているではないか。ムカシハナバチ科のハチで、「ニッポンメンハナバチ?」と書かれていた。メンハナバチ属のハチは、肩板の前半、各脚の脛節基部に淡黄色斑を持つものが多い(2007/06/09) 多くのハナバチは、昨日のコマルハナバチの様に後脚の何処か(ハナバチ類の大半)か腹部下面(ハキリバチ類)に特殊な毛を持っていて、其処に花粉をくっ付けて巣に運ぶ。しかし、このメンハナバチ属のハチは、蜜ばかりでなく花粉も呑み込んで胃に蓄える。だから、体の何処にも花粉運搬毛を持たない。 口から出した蜜を良く見てみると、花粉の様な粒子が極く少しだが混じっているのが見える。恐らく普通はもっと沢山花粉が入っているのであろう。牛の様に反芻するのも、蜜と花粉を良く混ぜ合わせて均質にする作業なのかも知れない。
2008.07.06
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庭にやって来る虫の種類とその数は、年によりかなり大きく変動する。例えば、今年はスズメバチ科のハチ、コマルハナバチ、ツマグロヒョウモン、ヒトスジシマカが少ない。逆に、ルリシジミは例年よりもかなり多いのではないかと思う。 ヒトスジシマカが少ないのは大変難有いが、コマルハナバチが少ないのは何とも寂しい。コマルハナバチは毎年我が家の通風口(ベランダへの出入り口の直ぐ上にある)に巣を作り、6月には新女王も出てブンブンと大層賑やかなのだが、今年はシーンと静まりかえっている。 コマルハナバチが少ないのは、我が家の通風口に巣を作らなかったせいばかりではない。この辺り全体として少ないのである。毎年5月になれば、何処の御宅のサツキにもかなりの数のコマルハナが来るのだが、今年は1頭も来ていないことが多かった。 それでも、時折コマルハナの働きバチがやって来る。普通ならば余りにありふれていて撮る気がしないのだが、こう少ないと、せっかく来たのだから撮ってやろうと言う気になってしまう。ビョウヤナギの花の周りを飛び回るコマルハナバチの働きバチ(2008/06/09) 撮影したのは1ヶ月程前である。些か旧聞に属すが、何卒御寛恕被下度候(ナニトゾゴカンジョクダサレタクソウロウ)。後脚脛節外側には花粉をシッカリ貯めている(2008/06/09) コマルハナが吸蜜・花粉収集に来ているのは、ビョウヤナギの花。余り好きになれない花だが、自然に生えて来たのでその儘にしてある。茶花になると言う人も居るが、こんなものを茶花として採って来たら、茶人であった祖母は黙ってそのまま縁側に投げ棄てたであろう。花にしがみつくコマルハナバチの働きバチ.ビョウヤナギは花糸が長いので、ハチとしては止まるのに苦労する(2008/06/09) コマルハナバチが少ないのは、ヒョッとすると、以前掲載したマルハナバチに寄生するオオマエグロメバエが増えたせいかも知れない。実は、今年も通風口の下で羽化したばかりのオオマエグロメバエを見付けたのである。恐らく、通風口の中で越冬していたコマルハナバチの新女王(寄生により死亡)の体内から出て来たのであろう。死んでしまった新女王は、寄生されていなければそのまま通風口に巣を作り、今年の「家のマルハナちゃん」になった可能性が高い。 このオオマエグロメバエは羽化に失敗したのか翅が異常に短く、シャーレの中に入れて置いたら次の日にはもう死んでいた。オオマエグロメバエは中々見映えのするハエ(普通のハエの形ではなく、ハチの様な姿をしている)だが、「家のマルハナちゃん」に寄生するのは何としても許し難い。
2008.07.05
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先日、ベランダの椅子に座って一服していると、まるでヒトスジシマカの様な飛び方をする小さなハチがビオラの花に止まった。 このビオラ、勿論、我が家では観賞用に植えているのではない。今年の2月に、越冬中のツマグロヒョウモンの幼虫が食べるスミレが無くなりそうになったので、急遽、食草として買い込んだものである。 それは兎も角、このハチ、体長7mm位のヒメバチで、肉眼で見ても中々色彩に富んでいる。早速、カメラをひっ掴んでマクロレンズで覗いてみると、・・・う~ん、これは使える!!ヒラタアブヤドリヒメバチの1種(Diplazon laetatorius)(2008/06/05) ヒメバチと言うのは、全て寄生バチである。普通は木や草の周りを飛んで宿主を捜しているのだが、何故かこのヒメバチ、ビオラの花に妙に御執心である。葉っぱには留まらず、花にしか留まらない。 御蔭で、今日の写真は背景がみなビオラの花となり、何時に無く色彩に富んだ写真になってしまった。ハチ自体も、黒、白、黄、飴色の4色で、花に劣らず中々華麗である。Diplazon laetatorius.ハチも背景も色彩豊か.種の判別には、横から撮った詳細な写真が役に立つ(2008/06/05) しかし、よく考えてみると、帰国直後に掲載したヒメバチの1種も同じ様な模様をしていた様な気がする。早速、比較してみると・・・、これは全く同一種と考えて良いだろう。あの時は、1枚しか撮っていないのでよく分からなかったが、今回の写真を見ると、3色ではなく4色であった。しかも、腹部の前半も脚と同じ飴色をしている。やはり、虫の写真は何枚か撮らないと、その特徴を正しくは掴めないと言うことである。Diplazon laetatorius.綺麗で可愛いハチだがヒラタアブ類の幼虫に寄生するので「害虫」と言える(2008/06/05) ヒメバチにはボーダイな種類があり、偶々撮ったヒメバチの種類が分かってしまう心配はまず無い。それでも色々調べてみたら、ヒラタアブヤドリヒメバチの1種の様である。 ヒラタアブヤドリヒメバチは、アブラムシを食べるヒラタアブ類の幼虫に寄生するヒメバチの仲間で、一つの亜科(Diplazontinae)をなしており、日本には40数種が記録されている。Diplazon laetatoriusの顔.こう言う写真が種の判定に役立つ(2008/06/05) ヒメバチの場合、亜科が分かれば秀逸な方で、普通はこの先は調べようがない。しかし、今回は天佑神助があった。「北海道大学所蔵ヒメバチ科タイプ標本」と言うサイトを見付けたのである。余り知られていないサイトの様だが、其処には日本産ヒメバチ920個体の詳細な写真が掲載されている(タイプ標本=種記載に使用された標本の写真で、普通の写真図鑑ではない)。そのサイトのヒラタアブヤドリヒメバチ亜科の標本を見ると、どうもDiplazon属のハチと似ている。 この属に属す日本産ヒメバチの殆どは旧北区全体に分布している。と言うことは、外国のサイトを調べれば、詳細な情報が得られる可能性があるかも知れない。 そこで更に調べてみると、このヒメバチ、和名のないDiplazon laetatoriusという種に酷似している。頭部、胸部、腹部、脚の全てで斑紋の分布が一致した。また、今日掲載した写真(一番上の写真)では翅が重なって翅脈はよく分からないが、縁紋(前翅の前縁ほぼ中央にある黒い部分)の約半分が淡色な点も同じである。Diplazon laetatoriusとして良いであろう。身繕いをするDiplazon laetatorius.腹部の半分が飴色なのが分かる.踊っている様で、中々華麗な姿(2008/06/05) 今日は随分時間がかかったが、図鑑で大凡の見当を付け、「北海道大学所蔵ヒメバチ科タイプ標本」で属を推定し、更に外国のサイトでその属に属す種を参照すれば、ヒメバチでも種が分かる可能性があることが分かった。尤も、1属に100種類もいたらお手上げではあるが・・・。 何れにせよ、こんな小さなヒメバチで種が分かったと言うのは、実に、生まれて初めての出来事である。今晩は赤飯でも炊くか!!
2008.06.08
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帰国後暫く雨の日が続いたが、15日からは待ちに待った晴天となった。春の一番良い時を逃した者としては、春の残りを惜しむかの様に、カメラを持って庭を彷徨ったり、彼方此方出かけたりした。写真は色々撮ったが、来客や雑用が色々あって原稿を書く暇が無く、更新を暫くサボってしまった。 今日は、ハチの1種を紹介する。「ハチの1種」とは、我ながら随分無責任だと思うが、何分にも虫が小さく検索が難しい。「ハチの1種」.セイボウの類にも見えるが良く分からない(2008/05/15) 金属光沢があり、胸部に荒い凹凸が無数にあること、腹部の節が少なく、触角は13節前後であること等は、セイボウ的だが、前胸背版は異常に短いし、後胸背版は見えない。触角は一見頭頂近くに付いている様に見えるが、写真を拡大して見てみるとその基部は口器近くにある様にも見える(セイボウの触角は口器近くに付いている)。結局、良く分からない。表情がひょうきん(2008/05/15) 体長は4mm弱、翅端まで約4.5mm。この程度の大きさのハチで何科に属すのか分からないハチは実に沢山いる。等倍程度の写真で検索をするのは無理で、捕まえて実体顕微鏡で細部を観察しないと科すら分からない。ハチは眼が魅力的.腹部の節は少ない(2008/05/15) しかし、種類は分からずとも、中々綺麗なハチである。表情?にも愛嬌がある。私好みのハチ?と言える。やはり眼が可愛い(2008/05/15) 拡大してみれば明らかにハチだが、目の前のクリスマスローズの葉に止まったときはハエの1種だと思った。飛び方が少しハエ的だったのである。腹部にも光沢があり、セイボウ的(2008/05/15) 4~5mm以下のハエで種類の分からないのも、これまたゴマンと居る。「ハエの1種」、或いは、「ハチの1種」で済ませれば、当分ネタ切れに陥ることはないが、余り無責任なことを続ける訳にも行かない。困ったものだ。追記:ハチの研究をされている覇蟆邇(はまに)人氏より、このハチはほぼ間違いなく、マルハラコバチ科(Perilampidae)の一種であるとの貴重な御意見を賜った。これに従い、Perilampus(マルハラコバチ属)で検索すると、写真にそっくりなハチが出て来た。北隆館の「新訂 原色昆虫圖鑑第3巻」を見ると、この科やそこに属すハチは索引には出ていないが、検索表には載っており、この科に属すハチは日本ではルリマルハラコバチ(Perilampus japonicus)ただ1種とのこと。また、九大の「日本産昆虫目録データベース」にも1種類しか登録されていないので、このハチはルリマルハラコバチではないかと考えられる。なお、検索表にある科の記載と写真のハチの特徴は一致することを確認した。 氏に拠れば、この仲間の少なくとも一部は、ガやハバチ等の食植性昆虫の幼虫ないし前蛹への直接寄生だけでなく、自分が取り付いた食植性昆虫幼虫に寄生した“寄生蜂もしくは寄生蝿の幼虫”に寄生することがあり、氏はハムシドロバチの巣に労働寄生するハムシドロバチヤドリバエの囲蛹中からマルハラコバチの一種が少数羽化してきたのを確認されているとのこと。詳しくは、氏のコメントを参照され度。 しかしながら、コバチ類であると気が付かなかったのは、我ながら不覚であった(2008/07/10)。
2008.05.19
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昨日夕刻帰朝した。 成田の気温12℃、2ヶ月前に出かけたときと余り変わらない。雨もジトジト降っており、五月晴れとは正反対の寒空、些かガッカリした。 今日になって庭を見ると、木々は思い思いに枝葉を伸ばして恰も密林の如し。雑草も伸び放題で、正に荒庭。これからの世話を思うと疲れが倍加する。 しかし、今回の出張期間は丁度2ヶ月で前回の6割、まだ余力を残している間に帰国したので、昨年の様に脱力状態になることはない。その代わり、毎日の義務から解放されて、どちらかと言えば放心状態に近い。 今日も生憎の寒空で虫は殆ど見かけない。しかし、夕方近くになって雨も止んだ頃、フジの葉上に体長1cmに満たない小さなヒメバチを1頭見付けた。ヒメバチの1種.体長は約7.5mm(2008/05/11) 肉眼では良く分からないが、拡大してみると、黒、白、茶の三色が配置されていて中々洒落た彩りである。昨年の夏に紹介した「ヒメバチの1種(その2)」に似ているが、ずっと小さいし、模様や配色が明らかに異なる。 例によって、頭の方から顔を撮ろうとしたら逃げられてしまった。背側から撮った写真は、良く見てみると、焦点面がハチの体軸と合っていない。普段ならば没にするのだが、今日はまだ帰国直後で些かボケているので、これで御勘弁願いたい。
2008.05.11
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さて、今日は、先月12日に掲載したアブラムシに寄生するアブラバチの話の続きである。 アブラムシに寄生したアブラバチの幼虫は、アブラムシの体の中でその組織を食べて成長する。やがて宿主のアブラムシは死に、アブラバチの幼虫はアブラムシの外骨格の内側に繭を作って蛹化する。 この繭は、外観的にはミイラに何となく似ているので、マミー(Mummy:ミイラ)と呼ばれている。アブラバチのマミー(2007/11/09) 上にマミーの写真を示した。アブラムシの外骨格の中に繭が有るのが分かるであろう。宿主は、縞模様の触角を持っており、また、角状管の先端にある黒斑らしきものも見えるので、前回紹介したカシワトゲマダラアブラムシの近縁種(Tuberculatus sp.)と推測される。上から見たアブラバチのマミー(2007/11/09) 次は最初の写真を上から見たものである。宿主は有翅型であったことが良く分かる。右側にも古いマミーがあるが、これはもう既にアブラバチが羽化しており、尾部に穴が開いている。中央のマミーとは色も大きさも違うが、寄生者の種類が違うのか、アブラムシの種類が違うのか、或いは、その何れもが異なるのかは良く分からない。 葉裏の世界を覗くと、色々と変なものが目に入る。左側の小突起の沢山ある透き通ったものは何であろうか? 多分、ヒラタアブ類の卵だろうと思うが、定かでない。下側に見える楕円形の「物体」は、ヤノイスフシアブラムシ(?)の幼虫である。 残念ながら、この中央の大きなマミーからは未だに何も出て来ない。 アブラバチの成虫が出て来たのは、次の写真に示したマミーである。別のアブラバチのマミー.お尻の方から撮っている(2007/11/09) これも触角に縞模様があるので、同じくカシワトゲマダラアブラムシの近縁種(但し無翅型)に寄生したものであろう。マミーから出て来たアブラバチ(2007/11/14) マミーを確保してから4日目に、小さなハチが1頭出て来た。この様な場合、2次寄生者(寄生者に寄生するもの)でないかを注意する必要があるが、形態的にはアブラバチなので、2次寄生者とは思えない。 先日紹介したアブラバチと大きさや体付きがよく似ている。しかし、色はかなり違うので、恐らく別種であろう。「アブラムシの生物学」に拠ると、日本には約80種のアブラバチが棲息するそうである。翅を拡げたアブラバチ(2007/11/14) マミーを良く見ると、アブラムシのお尻の方に穴が開いている。アブラバチの脱出口である。アブラバチの脱出したマミー.穴が開いている(2007/11/14)上のマミーを横から見たもの.お尻の部分が無くなっている(2007/11/14) しかし、どうも解せない。アブラバチの幼虫は、どうしてこうも綺麗に外骨格だけ残して宿主を食べ尽くせるのだろうか? 食べ物をひとかけらも残さないとは、良く躾の行き届いた虫だが、消化液でも体外に放出するのだろうか。 全く、虫の世界は分からないことだらけである。
2007.12.01
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これから暫くの間、このWeblogの舞台は「外庭」にあるコナラの葉裏になりそうである。既に葉裏に居たイトカメムシとアリグモが登場したが、こう言う大きい生き物は例外的で、他はみな5mmに満たない小さな虫ばかり。 今日はその中からアブラバチの1種を紹介する。アブラバチの1種(雌).体長僅か2mm、触角が長い(2007/11/09) アブラバチと言うと「油蜂」と言う字を連想するが、別に油ギタギタのハチではない。アブラムシ(アリマキ)に寄生するのでアブラバチと呼ばれているらしい。コマユバチ科アブラバチ亜科、或いは、アブラバチ科に分類される寄生性のハチで、日本には約80種が記録されているとのこと。体長は1~2mmで、普通のコマユバチよりも少し小さい。アブラバチの1種(雌)(2007/11/08) 肉眼では「何か居るな」と言う程度の大きさである。しかし、艶のある黒と光を反射する透明な羽を持つているので、何となく「ハチかな?」と言う感じがする。 コナラの葉裏をチョコチョコと歩き回るハチをマクロレンズで追っていたら、一瞬何か2頭が重なったように見えた。その時は何が何だか分からなかったが、後で写真を見てみたら、どうやら交尾をしたらしい。ホンの数秒の出来事であった。こんな短時間で交尾が出来るのか否かは良く分からない。交尾中のアブラバチ(2007/11/08) 写真を見ると、触角全体が黒いのが雄で、触角の根元が黄色っぽいのが雌であることが分かる。 それに従うと、下の写真は雄と言うことになる。アブラバチの雄(2007/11/08) コナラの葉裏に居るアブラムシは2種類以上いる様で、このアブラバチの御目当ては、その内の「ヤノイスフシアブラムシ」の幼虫らしい。 丁度産卵するところを撮ることが出来た。産卵中のアブラバチ.若齢幼虫に産卵(2007/11/08) こんなに小さい若齢幼虫に産卵するとは知らなかった。普通は後から腹部に産卵するハチが多いと思うのだが、このアブラバチは頭の方から、頭部或いは胸部の下側に産卵している。産卵中のアブラバチ.上の写真の15秒後(2007/11/08) ところで、このアブラムシが本当にヤノイスフシアブラムシかは確証がない。しかし、幼虫、有翅虫の形態は「原色日本アブラムシ図鑑」に出ているものに酷似しているし、この仲間でコナラに2次寄生するのは、本種だけである。 些か不可解なのは、イスノキは相模湾沿いの海岸地帯には生えているが、この辺りでは見たことがないことである。まァ、何処かで庭木として植えられている可能性はあるのだが。特に、お隣のYさんの御宅など・・・。産卵を終えたアブラバチ.上の写真の4秒後(2007/11/08) さて、アブラムシの幼虫に寄生したアブラバチの幼虫は、やがてアブラムシを内部から食い尽くして奇妙なマミー(Mummy)と呼ばれる繭を作る。それについては、また次の機会に紹介することにしよう。 訂正:アブラバチの宿主をヤノイスフシアブラムシとしたのは誤りであった。ヤノイスフシアブラムシと思われるアブラムシはコナラの葉裏に沢山居るが、ヤノイスフシアブラムシの幼虫は普通のアブラムシの幼虫とは少し異なる形をしており、背側から見るとコバン型で触角が短く、細かい毛が沢山生えている。写真のアブラムシは、背中に3列の赤色斑があるので間違えたが、触角が長く、体形も普通のアブラムシの形をしている。このアブラムシは、「日本原色アブラムシ図鑑」に拠れば、カシワトゲマダラアブラムシ(Tuberculatus yokoyamai)の近縁種である和名のないTuberculatus sp.の様である。成虫はカシワトゲマダラアブラムシと同様に胸部と腹部1~3節の背中側に指状突起を持つが、節角状管の先端に顕著な黒斑があり、また触角には横紋がある。 以上、訂正してお詫びする。
2007.11.12
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少し前のことになるが、ある日の夕方、熱帯バジルの葉に小さな色の濃いアシナガバチが留まっているのを見付けた。良く見ると、腹部の後半に黄色い帯が無い、どうやら、キボシアシナガバチの様である。 腹部の前部には黄色い斑紋、乃至、帯がある。帯状になることもあるのに「黄星」とは変な名前だと思っていたが、調べてみると、蛹室の蓋が黄色いのでその名がある、とのこと。 今頃居るのは、恐らく越冬する新女王であろう。働き蜂はもう死に絶え、雄は顔が黄色い筈である。身繕いをするキボシアシナガバチ(多分新女王)(2007/10/11) 身繕いをしている様だが、妙に体を捩ってダンスをしているかの如し。腹部と後肢で翅を挟んでいるところをみると、これで翅の掃除をしているのかも知れない。キボシアシナガバチの頭部と胸部(2007/10/11) アシナガバチと言えば巣の写真でもないと何とも様にならない。1頭では余りに芸が無いので、例によって等倍接写してみた。 複眼の間に3個の単眼が見える。何か、教科書に載っている写真みたいである。器用に背中を擦るキボシアシナガバチ(2007/10/11) 身繕いの写真は、ヒラタアブ類で何回か掲載したが、ハチは初めてである。やはり関節を妙な具合に曲げていて、何処がどうなっているのか良く分からない。まァ、兎に角、器用なものだと感心する。身をくねらせて身繕いする(2007/10/11) 最後の写真は、最初の写真と同じ格好をしているのを斜め上から撮ったもの。やはり、ダンスを踊っている様な形である。 女王さん、中々色っぽいですな!!
2007.10.27
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昨日、ダニの卵と思われる白い玉の付着したオオハナアブを掲載したが、今日は、ダニに寄生されたクマバチを紹介する。 今月の上旬にデュランタ・タカラズカに訪花したクマバチで、撮影時には気が付かなかったが、写真を良く見てみたら、腹部にダニと思われるものが無数に付いていた。デュランタ・タカラズカで吸蜜するクマバチ.腹節に帯を巻いた様に無数のダニが付いている(2007/09/04) 昆虫を採っていると、ダニに寄生された虫に良く出会う。虫を採らなくなってから30数年も経つので記憶は定かでないが、糞虫やある種のハチに特に多かった様な気がする。別角度から(2007/09/04) 調べてみると、クマバチに寄生するダニには、クマバチコナダニ他何種類かあるらしい。これらのダニは、普段はクマバチの巣に居て、クマバチの運んで来た花粉と幼虫の排泄物を餌にしているとのこと。クマバチの体にくっ付いて居るのは、新たなクマバチの巣に運んで貰うのが目的で、移動中のダニは何も食べず、新しい巣に着くのをひたすら待っているのだそうである。従って、クマバチがダニの直接的な被害を受けることはない、と言うことになる。 この様なダニとの共生はクマバチ以外のハチにも見られ、ダニが付着するのに便利なハチの外骨格にある窪みにはアカリナリウム(Acarinarium、複数形はAcarinaria:ダニポケット)と言う名が付けられている。ハチとダニの共生は、かなり一般的な現象らしい。最初の写真の部分拡大.翅の基部にもダニが付いている.胸部にも付いている様に見える(2007/09/04) しかし、この写真のクマバチとダニがその様な関係であっても、昨日のアブとそれに付いたダニの卵(仮にそうだとして)との間柄は分からない。アブは巣を作らないが、ダニが花から花へ分布を拡げるのに役立っているのかも知れないし、或いは、その様な呑気な話ではなく、アブにとってもっと致命的な寄生者かも知れない。虫の世界、分からないことだらけである。
2007.09.22
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今日は珍しいお客さんがやって来た。珍しいと言っても我が家だけの話で、毎年1、2度は見かけるのだが、何時も一寸止まるだけでサッと飛んでいってしまい、写真を撮る暇がない。 それが今日は、デュランタ・タカラズカの花蜜に惑わされたのか、一寸だけ長逗留をした。長逗留と言っても1分に満たない。 お客さんの名は、キオビツチバチ。触角が短いので雌である。キオビツチバチ(雌).我が家では珍客(2007/09/08) カメラを取りに部屋に戻ったものだから、正味の時間は僅か20秒程度。しかも、このツチバチの仲間はすぐ花を抱えて丸くなってしまうので、中々写真にならない。辛うじて撮ったのが、この1枚。 昔から、この辺りでは珍種とは言えなくても、稀種ではある。閲覧者の皆様には余りお分かり頂けないとは思うが、僅か1枚とは言え漸く写真に収めたので、こちとらは大の御満悦。 イャイャ、これは失礼仕った。
2007.09.08
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一昨日の夕方、ベランダの椅子で一服していると、長さ3cm位の黒くて丸っこい物体が飛んで来て、マンリョウの葉上に留まった。何かと思って見行くと、今頃は夏眠しているはずのコマルハナバチの新女王であった。 マンリョウの葉っぱの奥の方に頭を突っ込んで、まるで元気がない。消耗しきっている、と言う感じ。 我が家の排気口に巣を作っていた「家のマルハナちゃん」はもうとっくに天国に行ってしまったが、我が家の庭に来たところを見ると、或いは、このマルハナバチの新女王は「家のマルハナちゃん」の娘なのかも知れない。マンリョウの葉に頭を突っ込むコマルハナバチの新女王.まるで元気がなく、左後肢がチャンと葉に付いていない(2007/08/27) お尻ばかりを撮っても写真にならないので、頭の方を撮ろうと葉を引っ張ったが、逃げようともしない。ついでにもっと引っ張って真横からも撮ることにした。 撮った写真を確認している間に、コマルハナバチは何処かへ行ってしまった。息絶え絶えの様でも、まだ多少の余力はあるらしい。葉にしがみ付くコマルハナバチの新女王(2007/08/27) コマルハナバチは、春の活動開始が早く3月下旬から飛び回り始めるが、コロニーの崩壊も早く、普通6月中旬には女王蜂がミマカって、巣はモヌケの空になってしまう。余り記憶が定かでないが、毎年6月のある日から、突然、バッタリと巣への出入りが無くなってしまう様に思う。 所が、今年は7月になってもまだ巣に出入りする新女王と働き蜂がおり、活動は実に7月の下旬まで続いた。横から見ると、疲れ切った顔をしている(2007/08/27) しかし、8月下旬にコマルハナバチを見た記憶はこれまでにない。多分、初めてだと思う。 コマルハナバチの新女王は、7月には地下の穴蔵に入り込んで来年の春まで休眠する、とされている。真夏や秋にコマルハナバチを見ないのは、その為である。 本来休眠しているはずのコマルハナバチの新女王が、何故、今頃庭に飛んできたのか、その理由は分からない。しかし、休眠するはずの時期に休眠していない個体が、来春まで生き延びられるかは、かなり疑問である。 可哀想ではあるが、あのマルハナバチの新女王は、もう余命幾ばくもないのかも知れない。
2007.08.29
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昨日紹介したカタバミコナジラミ(多分)を使って、カメラとレンズの性能を試験していたら、コナジラミの幼虫に関心を示す小さなハチが居るのに気が付いた。 体長0.5mm、幅0.2mm、肉眼では殆ど何だか分からない大きさである。ツヤコバチの1種.コナジラミの幼虫に関心を示している.産卵しているのかは不明.ピクセル等倍(2007/07/31) コナジラミに寄生する寄生バチと思われるので一寸調べてみると、どうやらツヤコバチの1種らしい。「アリスタライフサイエンス株式会社」のホームページの中にある「梶田泰司:トーメン農薬ガイドNo.85/E (1997.10.1)」に拠ると、カタバミにはEncarsia japonicaと言うツヤコバチ(和名無し)が付くそうだが、これは腹部に虎のような模様があるというので、写真のツヤコバチとは明らかに異なる。やはり和名の無いEncarsia transvenaによく似ているが、この写真だけでは何とも言い難い。上と同じ個体.体長0.5mm。ピクセル等倍(2007/07/31) コナジラミ類に寄生するので著名なツヤコバチとしては、オンシツツヤコバチEncarsia formosaがある(このツヤコバチは体の前半が暗色)。このツヤコバチは、オンシツコナジラミやタバココナジラミ(シルバーリーフコナジラミ)に有効な生物農薬として、その蛹が販売されている。農業関係者ではない一般人にとって、生き物(オンシツツヤコバチ)が「農薬」と言うのは一寸違和感があるかも知れないが、現在ではこの様な天敵を利用した生物農薬が各種販売されている。 しかしながら、頭では解っていても、「有効成分:オンシツツヤコバチ」と書かれているのを見ると、やはり笑ってしまう。
2007.08.15
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昔と較べると、最近は庭に来るヒメバチ(寄生バチ)の種類も数もずっと少なくなった。しかし、7月の中下旬から庭の暗いところにやや小型のヒメバチがかなりの数「逗留」している。 こちとらの理解するところでは、ヒメバチと言うのは宿主を捜して彼方此方放浪するものだと思っていたのだが、何時行っても、クリの木の下に生えているギボウシを中心とした約2m四方に、多いときは10頭位がたむろしている。ヒメバチの1種.体長約12mm(2007/07/25) 残念ながら、このヒメバチの種類は分からない。都会の庭にこれだけ沢山居るのだから、ごく普通の種類と思うが、この様な黒地に白斑を持つヒメバチは似たようなのがゴマンと居て区別が付かない。「ヒメバチの1種」とするしかないが、以前紹介した「ヒメバチの1種」よりはずっと小さい。横から見た「ヒメバチの1種」(2007/07/19) 狭い所に沢山かたまって居るのだから、その辺りに宿主も相応する数だけ居ると考えられる。しかし、一体何に寄生するヒメバチなのだろうか。 ハチの体長は12mm位、宿主は中型の蛾や蝶(カレハガ、ヤガ、タテハチョウ等)、或いは、それに相当する大きさの昆虫の幼虫であろう。だが、そんな大きさで我が家に沢山いる昆虫は全く思い当たらない。或いは、土中の昆虫に寄生するのだろうか?このヒメバチは葉にへばり付く様にして止まることが多い(2007/07/28) 名前も宿主も分からないが、やはり、ハチは可愛い。拡大すると、眼が円らで実に愛らしい。ここがハエやアブと違うところである。ハエやアブの複眼に愛嬌は全然感じられない。ヒメバチの顔.眼が円らで可愛い.眼の部分の反射がぼけて見えるが、眼の構造に因るらしく、焦点は合っている(2007/07/28) 此処10日程、連日のカンカン照りである。虫達もヘタリ気味らしく、余り庭に姿を見せない。ヤブ蚊も少なくなった。しかし、このヒメバチ達、相変わらずクリの木の下にたむろしている。一体何が目的で我が家の庭に逗留しているのだろうか? ハチに言葉が分かれば、訊いてみたいものである。
2007.08.13
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我が家の庭の3大害虫は、ウメスカシクロバ、チャドクガ、オオスカシバ、しかし、このルリチュウレンジもそれに次ぐ「悪者」とされている。 御存知のように、ツツジ類の葉を食害するハバチである。ツツジの葉上で休むルリチュウレンジ(2007/05/21) 色は濃い青色で光沢を放っており、日差しの中を飛ぶと、キラキラ光って中々綺麗。一目でルリチュウレンジと知れる。 しかし、屡々これがアダとなってアースジェットの一噴射を浴び、敢えなく御臨終と相成る。飛翔力が弱く、飛行速度も遅いので、撃墜される確率は高い。産卵中のルリチュウレンジ(2007/05/21) ありふれた普通種だし、ただハバチだけの写真ではつまらないので、産卵するところを撮ってみた。ハバチはガやチョウと違って、一般に葉の表面ではなく、葉の中に産卵するらしい。 写真の様に、ルリチュウレンジは葉っぱの端をお尻で挟んで産卵している。拡大写真を下に示した。産卵中のルリチュウレンジ.葉っぱの端を挟んで産卵する(2007/05/21) ルリチュウレンジは悪者だが、3大害虫と較べると木を丸坊主にすることもないし、その「悪者度」は低い。そのせいか、こちとらも些か油断をすることがある。この写真のルリチュウレンジ、撮影後はあの世へ行って貰うつもりだったのだが、一寸余所見をしていた隙に、まんまと逃げられてしまった。
2007.06.23
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スズメバチ科のハチは、最もハチらしいハチだし、見るからに精悍で大好きである。以前はコガタスズメバチが何回か我が家の狭い庭に巣を作ったりして愉しかったのだが、最近はスズメバチさん、我が家にはトンと御見限りの様で、こちとらとしては何とも寂しい。 それでも、アシナガバチ類が毎日の様に庭にやって来る。勿論、芋虫毛虫その他、餌になる昆虫の偵察(威力偵察と言うべきか)の為である。今年はブランコ毛虫(マイマイガの若齢幼虫)が彼方此方にかなり居たせいか、例年もより訪問の回数が多い様に感じられる。マイマイガの幼虫を処理するセグロアシナガバチ(2007/05/31) ある日、アザレアの鉢付近でセグロアシナガバチが何かをしきりに探しているのに出会った。暫く観察していると、葉の陰から毛虫の残骸を引っ張り出してきた。毛の特徴から見て、どうやらマイマイガの幼虫の様だ。消化管内の内容物と思われるものが、辺りに流れている。もう殆ど肉は残っていないところを見ると、筋肉部分の大半は既に肉団子にして巣に持ち帰ってしまったらしい。横取りされた毛虫を探すセグロアシナガバチ(2007/05/31) 写真でお分かりの通り、少し物陰になっているので、ハチから毛虫の残骸を横取りして直ぐ横の地面の上に置いてみた。アシナガバチさん、何故か直ぐ近くの地面に置いてある毛虫に気が付かず、始めに毛虫のあった付近ばかりを探している。やはり、ハチは目が悪いのだろうか。 これは当分見込みがないと思い、部屋に戻って少し仕事をしてから、また見に行ってみた。すると、地面に置いた毛虫の残骸は跡形もなく消え去っていた。 毛も皮も残っていないところを見ると、もう2度と横取りされない様に(?)、何処か物陰に引き摺り込んで処理したらしい。 横取りしたのは、一寸意地悪だったかな?
2007.06.21
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ハチと言うのは、昆虫の中でも精悍な感じがして好きである。行動も素早いし、ハエなどとは違って外骨格が固くシッカリしているのが良い。怖がる人もいるが、何しろこちとらは小学生の頃に樹液に集るオオスズメバチを追い散らしながらクワガタを採っていた位だから、ハチが恐ろしいものだとは思っていない。 しかし、ハチの中にも一見ガガンボの様にナヨナヨして頼りなく、およそ精悍とは程遠い感じのする連中も居る。ヒメバチ科のアメバチ類である。 先日、ベランダで一服していると、大型のガガンボの様なものが飛んでいる。良く見てみると、体長3cm位の大型のアメバチである。アメバチの大きいのを見るのは久しぶりなので、早速カメラを持って追いかけたが、その時はまんまと逃げられてしまった。 このアメバチ、どういう訳か我が家の庭に御執心の様子で、その後も日中に1、2度現れた。しかし、やはり全く止まらずに何処へ行ってしまう。 もう諦めていたところ、夕方のかなり暗くなってから再度出現した。 どうもハチと言う虫は夜眼が利かないらしく、今度は直ぐに止まった。すかさず写真を撮る。しかし、3枚撮ったところで、木の茂った闇の中へ消えてしまった。アメバチの1種.大型だが細くて頼りない(2007/05/20) 写真を見ると、触角が異常に長い。下の写真なんぞ、触角の先が視野から外れている。 種名を書きたい所だが、ヒメバチ科はアメバチだけでも多くの種があり、名前は分り難い。アメバチの一種とするしかない。 このアメバチ、アメバチとしてはかなり大きい方である。この様な大型のアメバチの宿主となる芋虫毛虫も相当に大きいはず。今のところ、我が家にはスズメガの幼虫は居ないし(大食漢なので、居れば食痕で分かる)、大型の幼虫と言えば栗の木に張り付いているマイマイガの幼虫(ブランコ毛虫の大きくなったヤツ、但し、先日のブランコ毛虫とは別個体)だけだ。毛虫君、大丈夫かな・・・。アメバチの1種.3個の単眼が大きく目立つ.触角が非常に長く視野からはみ出している(2007/05/20) 御覧の様に、アメバチは細くて頼りないハチではある。しかし、これでも広腰亜目(ハバチ、キバチ等)ではないからチャンと毒針を持っていて、必要とあらば刺す。 高校生の頃、夏休みに一家で温泉に泊まったとき、風呂から帰る途中の廊下に一寸変わったアメバチが居た。部屋に帰って毒瓶を持ってくるとその間に逃げられてしまうかも知れないし、アメバチの如き、刺されても大したことあるまいと考えて、指で摘んで捕まえた。 当然刺された。大したことはなかったが、思ったよりも痛かった。
2007.06.01
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最近は大型のヒメバチ(寄生蜂)を見ることが無くなった。昔は、クロハラヒメバチやアゲハヒメバチなどを屡々見かけたものだが、親の家を引き継いで5年、これらのヒメバチは一度も見たことがない。勿論、ヒメバチ自体は沢山いる。しかし、何れも体長1cm以下の小型のものばかりで、メイガやヤガなどの幼虫に寄生する種類であろう。 そう思っていたら、先日かなり大きなヒメバチがやってきた。体長2cm位、体が基本的に黒く触角に白色の部分を持つよくあるタイプのヒメバチである。しかし、小盾板、各脛節の半分と腹端2節の上部は黄色い。 この手のヒメバチは、アブや蝶とは異なり、一ヶ所に留まることがない。常に触角を小刻みに振るわせながら、葉上を移動する。数コマ撮ったところで、何処かへ飛んでいってしまった。ヒメバチの1種.体長2cm位でかなり大きい(2007/04/10) かなり特徴的な模様なので、種類が分かるかと思ったが、やはり、ヒメバチはダメ、お手上げである。シロスジヒメバチに一寸似ているが、斑紋の位置や色が違う。ヒメバチの1種.白と黄色の斑が美しい(2007/04/10) 実は、高校生の頃えらくヒメバチに凝ったことがある。しかし、種類が殆ど分からないので止めてしまった。その後、詳細な昆虫図鑑が沢山出たものの、ハチの図鑑は全く出ていない。基本的に種類が多過ぎるし、更に未記載種がゴマンとあり、分類も不確定の部分が多いのだろう。 今後何十年か経っても、専門家は別として、殆どのヒメバチは「ヒメバチの1種」としか書けないに違いない。
2007.05.03
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先日ネコハエトリの雄が居たので写真を撮っていたら、プーンと羽音を立てて、何かが30cm位左にあるサンザシの葉上に止まった。 急いで、且つ、慎重に体の向きを変えて見てみると、見慣れぬハチが留まっている。体長20数mmとかなり大きく、何だか知らないが妙に精悍な感じのするハチである。そのままの姿勢で立て続けに数枚の写真を撮った。続いて、識別用にもう少し近づいて細部を撮り始めたら、このハチ、身の危険を感じたらしく、羽音を立てて逃げて行ってしまった。 この間、僅か10数秒。種不明の大型ハバチ.クロムネハバチに似ているが、明らかに翼端が黒い(2007/04/20) さてこのハチ、一体何者か? 素早く飛ぶこと、脚に棘の多いこと、葉上に止まってからの動きが敏捷なこと等から、始めは狩人バチの類であろうと思った。ところが、データをコムピュータに移して詳しく見てみると、触角が太くて短く7節しかない。どうも狩りをするハチではない様だ。 科が分からなければどうしようもないので、図鑑の検索表を頭から辿ることにした。 写真を撮っているときは、羽を閉じていたので気が付かなかったが、写真を見ると、明らかに胸部と胴部の間が括れていない。広腰亜目である。 支脈は残念ながら羽を畳んでいるので良く見えないが、前脛節の端刺は2本、触角は糸状で7節。簡単にハバチ科に落ちた。私の余り得意にしていない連中である。クロムネハバチに類似のハバチ.肩の所に三角形の突起がある.触角は7節(2007/04/20) 手元の図鑑では写真が小さ過ぎるし、解説も簡単で大した手がかりにもならない。そこで、Internetの昆虫図鑑でハバチの項を探してみた。色々なサイトを参照した結果、クロムネハバチに酷似していることが判明した。 しかし、写真のハバチは翅の先端が明らかに暗色で触角も全体が黒いのに対し、クロムネハバチの翅にはこの様な斑は無いし、触角の先端は必ず黄色である。どうやら、別種らしい。 また、図鑑にはツマグロハバチとかオオツマグロハバチという翅端が濃色の種類があるが、小盾板の色や触角の長さが異なる。 結局、何と言うハチかは分からなかった。そこで此処では、「クロムネハバチの近縁種」としておいた。 ハエやハチの同定は、一部を除いて詳細な図鑑その他の文献が無い(種類が多過ぎる)ので専門家以外には不可能である(専門家は研究施設に保管されている種の記載をした膨大な学術論文や総説のコピーを利用出来る)。クロムネハバチに類似のハバチ.こちらの方に向き直った.何となく攻撃的な雰囲気(2007/04/20) Internetを検索していて驚いたのは、ハバチの成虫には捕食性のものがかなり多いらしいと言うことであった。Wikipediaのハバチの項には「成虫は基本的に肉食であるが・・・」と書かれているし、クロムネハバチと酷似するハバチがバッタの幼虫を補食している写真を掲載しているサイトもあった。 この写真のハバチに感じた狩人バチ的な行動も、擬態ではなく捕食性ハバチ類本来の性質なのかも知れない。 しかし、ハバチと言えばバラに付くチュウレンジ類や、ツツジを食害するルリチュウレンジの様なナヨナヨブヨブヨしたハバチしか見たことのない者にとって、ハバチの成虫が基本的には肉食とは全く意外であった。またまた、自分の無知を思い知らされた。
2007.04.27
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今日は「家のマルハナちゃん」を紹介する。「家の」と付くのは、我が家の使用していない排気口に毎年巣を作るからである。 マルハナバチの寿命は1年だから、毎年新しく生まれた女王蜂が自分の育った場所にまた巣を作っているのだろう。ハナカイドウで吸蜜する「家のマルハナちゃん」(2007/04/07) 日本には10数種のマルハナバチが生息する。しかし、マルハナバチと言うのは「氷河時代の生き残り」の様で、北海道、或いは、中部山岳地帯のみに生息するものが多く、この辺り(東京都世田谷区)に居るのは、胸が橙色で腹にトラ模様のあるトラマルハナバチと、真っ黒で尾端だけが橙色のコマルハナバチの2種だけらしい。 「我が家のマルハナちゃん」はコマルハナバチである。黒い熊のぬいぐるみみたいにコロコロしていて、実に可愛らしい。ブルーベリーに留まるマルハナちゃん.ブルーベリーは虫媒花なのでマルハナちゃんには大いに頑張って貰わないと困る.後肢に花粉を一杯着けている.(2007/04/11) 写真の様にかなり大きなマルハナバチなのに「コ(小)」が付くのは、働き蜂はずっと小型(時に女王の1/2近く)だからであろう。コマルハナバチは春最も早くから活動を開始し、先日(4月18日)には既に働き蜂が巣に出入りしていた。なお、今日の写真は、総て女王蜂の写真である。マルハナちゃんの顔(2007/04/13) ところで、「家のマルハナちゃん」はリッパな一城の主で女王様である。女王様なのに「ちゃん」は不敬ではないか、と言う気もするが、家来(働き蜂)の数は少ないし、かなりドジだから「マルハナちゃん」でも構わないと思っている。 どんな風にドジかと言うと、余り飛ぶのが上手でない、或いは、目が悪いのかも知れないが、巣に戻るとき着地に失敗し排気口のフードに激突して跳ね飛ばされたり、ツツジの花に上手く止まれなくて落下し、下にある花と花の間に挟まれてもがいていたり・・・と、まァ、「御本人」は真剣なのに違いないが、見ている分には滑稽で中々楽しませてくれる。リュウキュウツツジで吸蜜するマルハナちゃん.脚の踏ん張り方が何とも言い難い(2007/04/17) コマルハナバチは、活動の開始も早いが巣立ちも早く、残念ながら6月下旬にはもう居なくなってしまう。秋に生まれたのならば、新女王はそのまま冬眠に入ればよいが、コマルハナバチの場合は夏を越さなくてはならない。7月以降この辺りでコマルハナバチを見ることはない。一体何処に行っているのであろうか? 色々調べてみたら、コマルハナバチは6月下旬から来年の早春まで地下に掘った穴蔵の中で永~い間休眠しているらしい。夏の高温高湿を耐えて生き残れるのは極僅かであろう。
2007.04.24
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今日は昨日掲載した「謎の繭」の続きである。 繭をコップの中に入れてから丁度1週間後、その中で何か小さいものが動いているのに気が付いた。 コップを取り上げて良く見てみると・・・アメバチらしい。体長9.5mm、触角を入れると約15mm、普通のアメバチとしてはかなり小型である。 ご存じの方も多いと思うが、アメバチは他の昆虫に寄生するヒメバチ科(寄生蜂)に属す。「蛾の繭」に寄生したアメバチが出て来たのだから、もうこの「謎の繭」の正体は分かり様がない、と思った。 残念だが仕方がない。まァ、私は大のハチ好きだから、ヤドリバエが出て来るよりはずっと良かった、と自分を慰めた。「謎の繭」の破口(2006/10/29) しかし、よく考えてみると、ハチにも先日のコマユバチの様に繭を作るものがいる。ヒメバチ科はボーダイなグループだし、アメバチ類はその中でも固有の特性を持っているのだから、中には繭を作るものもあるかも知れない・・・、と思って「アメバチ 繭」のキーワードで検索してみた。 一発で、「ホウネンタワラチビアメバチ」と言うのが出て来た。普通はイネを食害するフタオビコヤガやセセリチョウなどに寄生するハチとして知られているが、実際には相当広範囲の鱗翅目(蝶、蛾類)の幼虫に寄生するらしい。ちなみに、「ホウネン」は「豊年」のことで、この虫が沢山発生するとイネの害虫が減って豊作が期待出来るからだそうである。他に、ホウネンタワラヒメバチ、ホウネンタワラバチなどの異称もあるとのこと。 正確にはホウネンタワラチビアメバチなのか、その近縁種なのか不明な点が多いが、ここでは「ホウネンタワラチビアメバチ」としておこう。ホウネンタワラチビアメバチ.体長9.5mm、触角を入れて約15mm(2006/10/29) 最初からハチの繭だったのだ!! しかし、コップの中にいるのをどうやって写真に撮るか? 少し考えた。部屋の中で放てば、ハチは多分明るい方へ行くだろうからカーテンにとまったところを撮ればよい、と思いハチを放すことにした。 予想通り、ハチはカーテンにとまったので、シッカリ写真を撮ることが出来た。しかし、何分にもカーテンが白いレース地の為、肝腎のハチが少し見え難くなっている。ホウネンタワラチビアメバチ.横から(2006/10/29) このハチは普通のヒメバチと異なり、芋虫の体から抜け出して繭を作る。だから、繭のぶら下がっていた辺りに芋虫の干からびた死骸があるはずである。しかし、繭を保護した後で鉢を移動したので、どの枝に繭がぶら下がっていたのかもう分からなくなっており、残念ながら死骸を見つけることは出来なかった。 見つかった繭はたった1個である。この秋にキチョウの幼虫が見られない原因の一つに、このチビアメバチも関係していたのかどうかは、実のところ良く分からない。
2006.11.21
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またハギの話の続きである。ハギにキチョウの幼虫が居ないので、ハギに何か異変が起こっていないか詳しく調べた次の日、妙な物を見付けた。謎の繭の全体(2006/10/21) ハギの枝から蜘蛛の糸のようなものが下がり、その先に何かくっ付いて風に揺られてブラブラと揺れている。糸の反対側は、ハギの枝に複雑に絡んでいて、一見したところ蛾の幼虫の吐く糸の様に見える。糸がハギの枝に繋がっているところ.糸が複雑に絡んでいる(2006/10/21) ぶら下がっているのは、よく見てみると長さ約6mmの小さな繭と思しきものである。まだら状の多少複雑な白黒模様が付いている。 そのままの状態で写真を撮ってみたが、生憎風が吹いていてユラユラ、ユラユラ・・・。まァ、それでも何とか写真に撮ることが出来た。繭の拡大写真.長さ約6mm(2006/10/21)別の面(2006/10/21) こんなものは今まで見たことがない。いや、見たことがあっても僅か6mmの繭だから、特別気に留めなかったのかも知れない。しかし、此奴は一体何者であろうか。繭を作るのだから多分蛾だと思うが・・・。 このままにしておくと誰かが服に引っ掛けたりして行方不明になりかねない。早速、保護することにした。 短めに折った割り箸で糸を巻き付け、長さ5cm位にしてコップに割り箸を渡し、上からラップで被って羽化した虫が逃げられないようにした。 さて、この繭から何が出てくるでありましょうか?? それは次回のお楽しみ。
2006.11.20
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少し前に今年はハギにキチョウの幼虫が見つからないと言う話をした。今日はその続きである。 本当にキチョウの幼虫が居ないか、ハギをよく調べてみたら先日3回に亘り掲載したコミスジの幼虫を見付けたのだが、他に長さ4mm前後の小さな金色の繭が所々にあるのに気が付いた。コマユバチの繭(2006/10/13) 一見してコマユバチの繭である。しかし、コマユバチの繭と言うのは、可成り大きくなった幼虫の背中にくっ付いていたり、或いは、寄生により死んでしまった幼虫の死骸の周りに沢山固まっているのが普通だと思うのだが、これはあっちに1つ、こっちに1つ、と言う感じでハギの株全体に拡がり、全部で10個もない。コマユバチの繭.長さ約3mm(2006/10/13) 2齢位の小さな幼虫に1匹ずつ寄生したものとしか思えない。幼虫の死骸も見つからないが、2齢位だったら寄生により死んで殆ど皮だけになった死骸は見付けるのが難しいかも知れない。 何れにせよ、本当にコマユバチの繭か否か、繭の付いた枝を5本程切ってシャーレに入れて羽化するのを待ってみた。 2週間ほどして気がつくと、シャーレの中に小さな蜂の死骸が2つころがっていた。コマユバチの形態や分類についてはよく知らないが、これはコマユバチの1種として間違いないだろう。こういう単独で繭を作るコマユバチがいるとは知らなかった。 残りの繭は今もって何の変化も見られない。死んでしまったのか、或いは、来春羽化するのか? このまま、来年まで置いておこう。コマユバチの1種.体長約3mm.既に御臨終(2006/10/29) キチョウの幼虫が見られない原因の1つは、このコマユバチの寄生によるものである可能性が高い。しかし、コミスジも居たのだからコミスジに寄生していたのかも知れないし、他の尺取り虫などに寄生していた可能性も排除できない。それに10個もないのだから、普通今頃いるはずのキチョウの若齢幼虫の数よりはかなり少ない。キチョウの幼虫が見あたらない理由は他にもあるはずである。 ハギにはこのコマユバチの繭以外にも、長さ約1mm、幅0.3mm程度の白いごく小さな繭状のものが、枝の先端近くの若い葉にかなりの数あるのが認められた。写真では若齢幼虫に食害された部分がすぐ近くにあるが、全く食害されていない部分に見られることもある。ハギの葉に見られた繭の様なもの(2006/10/21) 遠くから見るとキチョウの卵に一寸似ている。しかし、キチョウの卵よりはやや小さく細く、卵のように立っては居ないから容易に区別が付く。中には羽化した様な破口を持つものもある。これは一体何であろうか? 極小型のコマユバチ? それともタマゴバチの繭? 或いは、只のゴミ?? タマゴバチの幼虫は卵の中で蛹化すると理解していたのだが、こう言う繭を作る種類もあるのだろうか。調べてみたが、良く分からない。 一応これもシャーレの中に入れて置いてみた。しかし、今のところまだ何の変化もなく、何も出て来ない。 小さなハギの木1株の周りでも、全く、私の力では分からないことだらけである。
2006.11.12
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今日は台風の影響か、朝から暗く時折激しい雨が降っている。 今我が家に咲いている虫の来る花はデュランタ位なものだが、この天候では時折イチモンジセセリがやって来る程度。 そこで、数日前に撮ったクマバチの写真を載せることにした。デュランタ・タカラズカにやって来たクマバチ(2006/09/03) 家の庭がまだ広かった頃、クマバチのやって来る花と言えば4月下旬のフジと決まっていて、それ以外には余り姿を見せなかかった。しかし、最近は頻度は高くないが1年中やって来る。 クマバチは体が大きいので、吸蜜するとき花の中に入るのではなく、しばしば花の横からその強靱な吻を差し込んで吸蜜する。だから、花の授粉を助けることにはならず、虫による授粉を必要としている果樹や果菜の栽培者の間では評判が悪い。そのせいかクマバチのこの行動は「盗蜜」と呼ばれている。クマバチは花の横から吻を突き刺して吸蜜する(2006/09/03) 我が家には、クマバチに関する不可解な出来事が一つある。前述のフジの木は通称第2伊勢湾台風(昭和54年10月の台風20号)で棚から吹き飛ばされ、根元から折れて枯れてしまった。ところが次の年の春、藤の花の咲く頃になると藤棚の周りクマバチが来てブンブン飛び回っているではないか。どうやら藤の花を探しているらしい。数日間飛び回っていたがそのうち来なくなった。 こちとらは昆虫の記憶など長続きするものではないと勝手に思っているので、奇妙なこともあるものだと不思議がっていたら、なんと驚いたことには、更にその次の年にもチャンとフジの花の季節になると空の藤棚にクマバチがやって来たのである。 しかし、さすがに3年後は、ついに現れなかった。 調べてみると、クマバチは普通のハチとは異なり寿命が数年あるらしい。しかし、どうやって時期と場所を2年間も記憶しているのか。ミツバチは偏光から太陽の位置を知って帰巣するそうだが、これはそうゆう次元の話ではない。いつ何処にどんな花が咲いているかと言うのはかなり複雑な情報で、人間だって物忘れの激しい人なら忘れてしまう様な性質のものである。クマバチはこれをどうやって記憶しているのだろうか。 昆虫学者に訊いても恐らく分からないであろう。昆虫は系統樹からみると哺乳類の対角にあるとでも言うべき「高等」生物である。クマバチは人間とは全く異なる原理で記憶しているのかも知れないのだ。
2006.09.06
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