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毎日毎時間、勤勉に山田企画のコンテンツ、趣味の写真や小説加えて、仕事関係も少しづつ消されていってますので、山田企画事務所で検索してみてください。とうぶん休業です。ーーーーーーーーーーーーーーーーーー勤勉なるスキルある犯人です。以下前の書き込みです。----------------------------伊丹警察(および兵庫県警)には届けましたが、電話も全メールも乗っ取られてー新しいメールアドレスも作らさない。作れない状況ーで4週間経ちました。乗っ取り犯から、金銭要求はまだです。●グーグル口コミ写真再生1億回(グーグル・ローカルガイド・レベル9)を超える写真掲載をした時からです。FACEBOOKから2名くっついてきました。有料・無料のメールを作ろうとすると邪魔をしに来るソフトがでてきます。仕掛けられています。ここでお手上げです。●生活手段を奪われました。皆様、連絡できず申し訳ございません。
2022.04.27
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伊丹警察には、届けましたが、電話もメール全てー新しいメールも作らせないーを乗っ取られ4週間以上経ちました。乗っ取り犯人金銭要求は、未だありません。皆さん連絡できず申し訳ありません。山田
2022.04.21
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TC東京地下道1949■1949年日本トウキョウ。 太平洋戦争の日本敗戦により、日本はアメリカ軍とソビエト軍に、分割占領。生き残った少年少女はどう生きるのか。それからの過酷なる日本の運命はこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1603de/2/東京地下道1949第2回■アメリカ軍占領軍情報部(OSS)乾公介は窓下、東京分断壁を見ている。彼にMGB(在日占領軍ソ連保安省)のエージェントからの地図入手失敗の報告が。東京地下道1949第2回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 ●http://www.yamada-kikaku.com/アメリカ軍占領軍情報部(OSS)の一部屋に一人の日本人が,大きなデスクを手前に腰かけている。彼の青白い顔に汗がにじんでいる。時々、時計に視線を向けいらだっていた。 乾公介、名目は「占領軍付日本人通訳」だが、OSSのメンバーの一員である。彼,乾公介は確かにあせっていた。理由は死期がせまっているからだ。癌の宣告を受けていた。あと3ケ月とないだろう。それまでにあのプランを完遂し々ければならない。それは、彼の宿願であった。 いまや、彼の命脈を保っているのはその計画のみである。双肩に重くそれがのしかかっている。アメリカ人が、一人いそいで乾の部屋へはいってきた。 「どうやら、我がアメリカ保安部は、あの地図をMGB(在日占領軍ソ連保安省)のエージェントから手にいれることに失敗したようだ」「よかった。地図はまだ、やつら、保安部の手には手にはいらなかったのですか。それでいいんです。地図を持っていたイワノフ大尉はどうしたのです」「保安部がライフルでしとめたとのことだ。が、先に自殺し、地図のはいったカバンは見つていない。死体の前が河だったので、おそらく投げ込んだものと思われる」「わかりました。その地図が保安声の誰かの手にはいらないか留意しなければなりませんね」「そうだ。引続き、我われわれ保安部は、MGBのエージェントの監視を続けよう」瞬間、血の気がうせて、乾は、自分の机の上につっぷしそうになる。「乾チーフ、だいじょうぶか、休が悪いのでは」「いやなんでもないです。だいじょうぷです」 OSSの内部では、波が宿摘の病にあることは誰も知らない。「この仕事を頑張らせて下さい」 乾はそう言い、立ち上がった。占領軍情報部(OSS)の窓の外は焼けのこったトウキョウ市の無残な姿が横たわっていた。 アメリカ占領軍情報部の接収しているショウワ・ビルからはトウキョウ市全部がみわたせる。トウキョウ市は日本の首府であった。そのトウキョウ市を壁が真ふたつに分断していたo 壁の向こう側は、、極東ソビエト軍の占領地区なのだ。(続く)20090501改定東京地下道1949第2回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 ●http://www.yamada-kikaku.com/#東京地下道1949ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.04.16
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消滅の光景 第9回地球に向かう調査船エクスの中で、情報省のチヒロや超能力少女ラミーに守られて、カド博士は、地球での行方不明者の共通因子を探ろうとするが、祖先霊が邪魔をする。2022年04月15日 | 消滅の光景SK消滅の光景■セクター宇宙連邦軍、ビット大佐の目下の悩みは、奴らの流入だ った。まったく奴らミレニアム信徒はひきも切らさず、この星へやってくるのだ。 一体、何のためにこんな辺境の星へこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n8420gh/9/消滅の光景 第9回地球に向かう調査船エクスの中で、情報省のチヒロや超能力少女ラミーに守られて、カド博士は、地球での行方不明者の共通因子を探ろうとするが、祖先霊が邪魔をする。消滅の光景 第9回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ カド博士は、頭の両側にメタリックの端子が突出している。船のコンソールパネルから接続端子を引きづり出し、自らの頭の端子に繋いでいた。 宇宙船エクスは小型だが、優秀な電子頭脳を備えていた。自分の頭脳と電子頭脳をフィードバックして新たな解決法を得ようとしでいた。エクスの電子頭脳には地球で行方不明になった人々のデータがインプットされている。 「タク、スイッチを入れてくれ」カド博士は助手のタクに頼んだ。 「博士、大丈夫ですか。こんな事をしても」 「案ずることはない。私の頭脳は特別製なのだ。何らかの新しい因子を発見することができるかむしれない。そうすればこの一連の出来事の解決歩が発見できるかもしれん。我々はいま絶壁の上に立っているのだ」 「わかりました。博士がそこまでおっしゃるなら」 タクはスイッチを押した。博士の体から光が発されているようだった。しかし博士の体には何の異常もおこっていない。■ラミーは自分の個室の中で黙想にはいっていた。また内なる声が聞こえてこないだろうか。彼女は自分を縛る声を始めは嫌っていたが、近頃は声が聞こえてこないと不安を感じるようになっていた。声がないと闇の中で一人置き去りになったような気さえする。声は 一条の光であり、進むべき道であった。 声が地球へ行くように命じたとき、彼女の心の中では行きたくないという気持ちと、どうしても行かねばならないという相反する気持ちが争っていた。 両親が目の前でどうなったか、彼女は思い起そうとしてみた。がだめである。彼女はその時、まだ一歳にもなっていなかった。彼女は黙想し、ひたすら声を待っていた。 セクター情報所のチヒ口は、今度はセクター連邦軍、地球派遣隊についてのデータを集積していた。丁度その時。カド博士が助手のタクに連れられ、操縦室へ上ってきた。 「博士、どうですか、地球での行方不明者の共通因子について何か発見は」 「そう簡単にはみつけられんよ」 「そうですか」 「私は地球までの航行中、この作業を続けることにする」 「カド博士、あの星で、多数の人間が行方不明者になっているのに、我々の連邦軍地球派遣軍が手を出せないでいるのはどういうわけでしょう」 カドは盲いた目をチヒロの方へ向けた。 「恐らく、ある種の、そう星の影響力というものが存在するのだ。その力が連邦軍の兵士遂に作用しているのだろう」 再び博士は自らの鸚の端子を電子頭脳に結びつけ、分析作業に取りかかる。 タクはコンソールの側にいる。 どこからともなく黒い霧が発生し、タクの足もとから電子頭脳の方へ近づいていく。 黙想していたラミーは、ある声を聞きハット我にかえった。急いで博士の研究室ヘテレポートーした。 助手のタクの表情が変っている。彼はその力強い両手を振りまわし、コンソール=パネルを壊していた。カド博士は部屋の隅に跳ね飛ばされて距まっている。 彼女はタクを止めようとした。が彼女はタクの右手ではねとばされ、機械の角で頭を撃った。気を失いかけたラミーの眼に、異変に気づき、走り込んできたチヒロの顔が映った。 調査船エクスの操縦操置は電子頭脳に依存していた。それゆえ船は操船不能になっている。 チヒロは襲ってくるタクの腕をすり抜け、すばやく右にあった電源スイッチを切った。タクの体から黒い霧が浮び上ってきた。 「そいつを撃て、撃つんだ」 傷だらけのカド博士がチヒロに叫んだ。 チヒロのレーザーガンはその黒い霧を焼き町り、おまけに後の電子頭脳にさらにダメージを与えてしまった。 「くそっ、電子頭脳が完全に死んでしまった」 チヒロは、電子頭脳を知らべ、音をあげた。「これでは、地球に行くどころか、宇宙の放浪者だ」 チヒロは博士を助け起した。「いったい、タクはどうしたんですか」「あの霊に支配されたのじタ。君には黒い霧に見えたかもしれんな」「あれが霊ですって」「そうだ。それも、不思議なことに我々の祖先霊なんだ」「我々の祖先霊が、なぜこんなことを」「わからん、それにあれは滅びの戦士をも支配している祖先霊だ」 船が横揺を始めた。「いかん、早く、タクのエネルギーボタンを押せ」 「大丈夫ですか」 「大丈夫だ。ダクの小型電子頭脳を使うのだ。あいつの頭脳、はそれくらいの働きはできる。それに私の霊能力と彼女の超能力を使えば、地球まで辿り着く事などわけはない」 チヒロはラミーを抱き起した。彼女はまだ気を失なっている。 「もうすぐ、気がつくだろう。チヒロ、喜べ私は一つのヒントを得た。地球に存在する『塔』が一つの解答らしい」 スイッチが入れられ、タクは動き始める。 タクはあちこちを見渡し、驚いていた。 「博士、これはどうしたことですか」 「皆、お前がやったのだ」 「私が」 「それよりも、お前の頭脳をこのプーラグにつなげ」 タクは不思議そうな顔をして、操縦室へ向かっていく。 ■《地球の記憶》 要塞の防禦壁がはげ落ち、また一人の戦士が奈落の底へ沈んでいった。 床が振動していた。もう彼らに勝算はないようであった。帝国戦士ウォーガトは自らの体を立て直し、コンソール=パネルを見た。防蒙哉構ぽばとんど作動していない状態だ。モニターはすべて死んでいた。版屋の光源は明滅していた。敵は姿を見せず、ただ強大であった。「地球の罪か」地球帝国戦士ウォーカーは独り言ちた。消滅の光景 第9回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/#消滅の光景ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村SK消滅の光景■セクター宇宙連邦軍、ビット大佐の目下の悩みは、奴らの流入だ った。まったく奴らミレニアム信徒はひきも切らさず、この星へやってくるのだ。 一体、何のためにこんな辺境の星へこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n8420gh/9/消滅の光景 第9回地球に向かう調査船エクスの中で、情報省のチヒロや超能力少女ラミーに守られて、カド博士は、地球での行方不明者の共通因子を探ろうとするが、祖先霊が邪魔をする。消滅の光景 第9回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ カド博士は、頭の両側にメタリックの端子が突出している。船のコンソールパネルから接続端子を引きづり出し、自らの頭の端子に繋いでいた。 宇宙船エクスは小型だが、優秀な電子頭脳を備えていた。自分の頭脳と電子頭脳をフィードバックして新たな解決法を得ようとしでいた。エクスの電子頭脳には地球で行方不明になった人々のデータがインプットされている。 「タク、スイッチを入れてくれ」カド博士は助手のタクに頼んだ。 「博士、大丈夫ですか。こんな事をしても」 「案ずることはない。私の頭脳は特別製なのだ。何らかの新しい因子を発見することができるかむしれない。そうすればこの一連の出来事の解決歩が発見できるかもしれん。我々はいま絶壁の上に立っているのだ」 「わかりました。博士がそこまでおっしゃるなら」 タクはスイッチを押した。博士の体から光が発されているようだった。しかし博士の体には何の異常もおこっていない。■ラミーは自分の個室の中で黙想にはいっていた。また内なる声が聞こえてこないだろうか。彼女は自分を縛る声を始めは嫌っていたが、近頃は声が聞こえてこないと不安を感じるようになっていた。声がないと闇の中で一人置き去りになったような気さえする。声は 一条の光であり、進むべき道であった。 声が地球へ行くように命じたとき、彼女の心の中では行きたくないという気持ちと、どうしても行かねばならないという相反する気持ちが争っていた。 両親が目の前でどうなったか、彼女は思い起そうとしてみた。がだめである。彼女はその時、まだ一歳にもなっていなかった。彼女は黙想し、ひたすら声を待っていた。 セクター情報所のチヒ口は、今度はセクター連邦軍、地球派遣隊についてのデータを集積していた。丁度その時。カド博士が助手のタクに連れられ、操縦室へ上ってきた。 「博士、どうですか、地球での行方不明者の共通因子について何か発見は」 「そう簡単にはみつけられんよ」 「そうですか」 「私は地球までの航行中、この作業を続けることにする」 「カド博士、あの星で、多数の人間が行方不明者になっているのに、我々の連邦軍地球派遣軍が手を出せないでいるのはどういうわけでしょう」 カドは盲いた目をチヒロの方へ向けた。 「恐らく、ある種の、そう星の影響力というものが存在するのだ。その力が連邦軍の兵士遂に作用しているのだろう」 再び博士は自らの鸚の端子を電子頭脳に結びつけ、分析作業に取りかかる。 タクはコンソールの側にいる。 どこからともなく黒い霧が発生し、タクの足もとから電子頭脳の方へ近づいていく。 黙想していたラミーは、ある声を聞きハット我にかえった。急いで博士の研究室ヘテレポートーした。 助手のタクの表情が変っている。彼はその力強い両手を振りまわし、コンソール=パネルを壊していた。カド博士は部屋の隅に跳ね飛ばされて距まっている。 彼女はタクを止めようとした。が彼女はタクの右手ではねとばされ、機械の角で頭を撃った。気を失いかけたラミーの眼に、異変に気づき、走り込んできたチヒロの顔が映った。 調査船エクスの操縦操置は電子頭脳に依存していた。それゆえ船は操船不能になっている。 チヒロは襲ってくるタクの腕をすり抜け、すばやく右にあった電源スイッチを切った。タクの体から黒い霧が浮び上ってきた。 「そいつを撃て、撃つんだ」 傷だらけのカド博士がチヒロに叫んだ。 チヒロのレーザーガンはその黒い霧を焼き町り、おまけに後の電子頭脳にさらにダメージを与えてしまった。 「くそっ、電子頭脳が完全に死んでしまった」 チヒロは、電子頭脳を知らべ、音をあげた。「これでは、地球に行くどころか、宇宙の放浪者だ」 チヒロは博士を助け起した。「いったい、タクはどうしたんですか」「あの霊に支配されたのじタ。君には黒い霧に見えたかもしれんな」「あれが霊ですって」「そうだ。それも、不思議なことに我々の祖先霊なんだ」「我々の祖先霊が、なぜこんなことを」「わからん、それにあれは滅びの戦士をも支配している祖先霊だ」 船が横揺を始めた。「いかん、早く、タクのエネルギーボタンを押せ」 「大丈夫ですか」 「大丈夫だ。ダクの小型電子頭脳を使うのだ。あいつの頭脳、はそれくらいの働きはできる。それに私の霊能力と彼女の超能力を使えば、地球まで辿り着く事などわけはない」 チヒロはラミーを抱き起した。彼女はまだ気を失なっている。 「もうすぐ、気がつくだろう。チヒロ、喜べ私は一つのヒントを得た。地球に存在する『塔』が一つの解答らしい」 スイッチが入れられ、タクは動き始める。 タクはあちこちを見渡し、驚いていた。 「博士、これはどうしたことですか」 「皆、お前がやったのだ」 「私が」 「それよりも、お前の頭脳をこのプーラグにつなげ」 タクは不思議そうな顔をして、操縦室へ向かっていく。 ■《地球の記憶》 要塞の防禦壁がはげ落ち、また一人の戦士が奈落の底へ沈んでいった。 床が振動していた。もう彼らに勝算はないようであった。帝国戦士ウォーガトは自らの体を立て直し、コンソール=パネルを見た。防蒙哉構ぽばとんど作動していない状態だ。モニターはすべて死んでいた。版屋の光源は明滅していた。敵は姿を見せず、ただ強大であった。「地球の罪か」地球帝国戦士ウォーカーは独り言ちた。消滅の光景 第9回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/#消滅の光景ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.04.15
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SK消滅の光景■セクター宇宙連邦軍、ビット大佐の目下の悩みは、奴らの流入だ った。まったく奴らミレニアム信徒はひきも切らさず、この星へやってくるのだ。 一体、何のためにこんな辺境の星へこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n8420gh/8/消滅の光景 第8回 カド博士、情報省のチヒロ、超能力者少女ラミーは、地球をめざす。消滅の光景 第8回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/「そうです」チヒロは言う。 カド博士は少し考えていたが、「よし、彼女ラミーを連れていこう」「こんな少女をですか」「私の霊能力がそう告げているのだ」「博士、急ぎましょう。先刻、2台のホーが逃げたのです。滅びの戦士たちはホーの記憶回路から、あなたが生きていたことを知るでしょう」 情報省の医療センターでカド博士は集中治療を受けていた。体力の回復次第、地球へ出発と決定された。カド博士の周辺は充分な警備が施されている。 助手であるアンドロイド=タクも常に博士の側にいた。 病室から出て来たタクに一人の兵士が近づく。 「タクさんですね、チヒロ中尉がお呼びです」’「でも、私は博士の側から離れるわけにはいきません」 「至急、おこし下さいとの事です。,.大切な要件とのことです」 「そうですか、それなら」 兵士は先に立ち、通路を歩き始めた。しばらく歩いた後、タクが尋ねる。「遠いですね。どこにおられるのですか、チヒロ中尉は?」「もうすぐです。この角を曲ったすぐの部屋です」 突然、背後から二人の兵士が近づき、タクの腕を取る。「何をなさるのですか」 タクは腕を振り迫どこうとした。がそれより旱ぐ、一人の兵士はタクの肩にある回路をレーザーで焼き吸っていた。 三人の兵士達はタクのボディを大きなストレッチャーに載せ、いずこへと音もなく消えた。 一時間たった後、タクは博士の病室の前にいる自分に気づいた。今まで自分が何をしていたか憶えていなかった。■ 情報省の調査船エクスは、セクターの引力圏を離脱し、地球に向い進みつつあった。直径三百m、エクスは小型の球形船であるが、優秀な調査能力を装備している。 コックピットの中でチヒロは情報省からのデータを整理していた。 彼は今、ラミーのデータを再度読んでいる。 『ラミーーグリーン。15歳。超心理学者ギャリー=グリーンと歴史学者エレノア=グリーンの間に生まれる。両親は地球考古学調査隊に所属していたが、行方不明となる。1人娘であ・った彼女はセクターに連れ戻され、連邦優生児保護法によって、ロボットマザーの手により育てられる。3歳位よリ超能力を有することがわかり、連邦所属の超心理研究所に預けられる。現在はそこの所員である』 「15歳で超心理学研究所の所員か」 チヒロは独りごちた。彼女の両親は地球で行方不明になっている。何か関係があるのだろうか。 カド博士は、タクの助けを借り、地球で行方不明になったと考えられる人々のリストを克明に調査し七いた。情報省のコンピューター解析では、共通因子を発見できなかった。が、彼は彼なりに分析することにした。消滅の光景 第8回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/#消滅の光景ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.04.11
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イメージイラストは、鈴木純子作品をお借りしています。http://www.yamada-kikaku.com/suzuki-junko.htmlTC東京地下道1949■1949年日本トウキョウ。 太平洋戦争の日本敗戦により、日本はアメリカ軍とソビエト軍に、分割占領。生き残った少年少女はどう生きるのか。それからの過酷なる日本の運命はこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1603de/1/東京地下道1949■第1回1949年 日本は敗戦、分割占領。トウキョウ市アメリカ軍占領地区。浮浪児が、男たちの争いをみる。少年はカバンとトカレフ挙銃を手に入れ。「竜」のアジトヘ向かう。東京地下道1949■第1回(飛鳥京香・山田企画事務所・1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 ●http://www.yamada-kikaku.com/地下道1949■第1回1949年 日本トウキョウ。 男達が争っていた。いや一名の男が数名の男に追われている。逃げる男はスラブ系の顔をしている。アメリカ軍占領地区、トウキョウ市の町中で追跡が行なわれている。 追う一団は、トレンチ・コートで身をかため、一般市民の姿をしているが、訓練を受け死者の持つ独特の体臭がする。彼らは入がいない場所にぐると、コルト45を各々と取りだし、前の逃げる男へ弾をあびせる。 逃げている男も、オーバーコートからトカレフ挙銃を出し、振りむきざま、撃ちかえす。男の射撃の腕は一段上手らしい。たちまち後の2人の男が倒れた。前の男は大事そうに、カパンをかかえている。 やがて、追撃している男に応援が来た。ライフルを持っている。彼はスコープに逃亡者をとらえ、男の肩を阻撃した。 男はうずくまり、死力を尽し、カパンを目の前の河へほおり投げた。 河は雨の降った後で、水かさが増していた。一濁流で流れも急だ。 このいちぶしじゆうを見ていた一入の浮浪児がいた。すばやく河に棹さし、そのカバンをひっかけひろいあげた。少年は隠れた。 追撃して来た狩人達は、倒れている獲物のそぱに立つ。男は歯に隠していた毒カプセルを飲んで死んでいた。 男達はあたりを見わたす。 カバンを探しているようだった。しかし、一時間後、彼らはあきちめたらしく、ひきあげていった。 その隠れ場所で息をひそめていた少年は、カバンを手に出てきた。死体の手からトカレフ挙銃をひっべがし、河のそばへひきずり、死体を投げ落とした。それから、意気様々と「竜」のアジトヘ向かった。(続く)東京地下道1949■第1回(1978年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 ●http://www.yamada-kikaku.com/#東京地下道1949ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.04.07
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SK消滅の光景■セクター宇宙連邦軍、ビット大佐の目下の悩みは、奴らの流入だ った。まったく奴らミレニアム信徒はひきも切らさず、この星へやってくるのだ。 一体、何のためにこんな辺境の星へこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n8420gh/7/消滅の光景 第7回超能力少女ラミーに助けられ、情報省のチヒロは、カド博士の家に。家は滅びの戦士に襲撃されて燃え上がっていた。消滅の光景 第7回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/乗り手をなくした滅びの戦士ホーが2台、空に浮んでいる。 「あれに乗るのよ」超能力を持つ少女のラミーが言う。「でも、あいつは、ー人一人の滅びの戦士に同語されでいるはずだ」チヒロが答える。 「いいのよ、早くして」 チヒロはホーに乗った。ホーは何事もなくチヒロの意志に従い動き始める。 チヒロはラミーの能力に舌をまく。隣を移動中のラミーの顔を見る。彼女は青い顔をしていた。 「だいじょうぶか、ラミー」 「心配しないで。今は一刻の猶予もならないわ」 カド博士の邸宅は燃えあがっていた。すでに滅びの戦士達に攻撃を受け炎上しているのだ。死体が建物の廻りに散乱している。 「遅かったか」チヒロはこの光景を目のあたりにし、愕然とした。ラミーの声は元気だった。 「大丈夫よ。博士は生きている。生命の炎が見える」 冷汗をかき、ラミーは念視している。ゆっくりと片手をあげ、炎につつまれている邸の真中を指さす。 「生体反応があるわ」 炎の中で、何かが揺れ動いている。そいつは徐々に、人の形をとり始め、炎の中からゆっくりと娠を現わす。 衣服がまだ燃えあがっている。大男だ。2メートルはあるだろう。そいつは体じゅうを炎に包まれながら、話しかけた。 「情報省のチヒロさんですね」 彼ば頷ずく。水が上空から降り注がれる。消防団が駆けつけたようだ。炎の男は消防車の方へ歩む。消防士たちは驚く。 「水を早くかけて下さい。私の中に人一人がはいっているのですブ 消火された男はゆっくりどチヒ匹達の衝へ還ってきた。彼はアンドロイドだった。 「チヒロさん、始めまして、自己紹介させていただきます。私は博士の助手タクです。博士は私の体の中で保護されています」 男の体は胸の真中から開き、別の男の体が転がり出た。 「カド博士 大丈夫ですか」 博士はわずかに頷いた。 博士の無事な姿を見て、ラミーは倒れた。体力を使い果したのだ。超能力の行使は体力を急激に消耗させる。ましてや彼女は少女なのだ。 ホー2台は、ラミーの力から解放され、上空へ急速にはね上がり、消え去った。 博士の眼は閉じられたままだ。 「博士、眼は」 「視神経をどうやらやられたようだ」 「滅びの戦士たちめ」 博士はかぶりを振る。 「心配することはない。私の霊能力はいささかも衰えてはおらん」 博士は見えない眼をラミーの方へ向けた。 「彼女は何者だ」 「見えるのですか。彼女は超能力者なのです。私も助けられたのです」 「恐るべき能力だ。すさまじいオーラの炎が感じられる」 「彼女は地球行きの事を知っていたかね」消滅の光景 第7回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/#消滅の光景ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.04.07
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SK消滅の光景■セクター宇宙連邦軍、ビット大佐の目下の悩みは、奴らの流入だ った。まったく奴らミレニアム信徒はひきも切らさず、この星へやってくるのだ。 一体、何のためにこんな辺境の星へこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n8420gh/6/消滅の光景 第6回 カド博士の家に向かうチヒロとラミーは滅びの戦士達の攻撃を受ける。ラミーの力がチヒロを助ける。消滅の光景 第6回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/滅びの戦士達は超合金のコンバットスーツで身を固めている。特権階級であるとないにかかわらずヽ人々を殺戮しているのだ。彼らは特にミレミアムアム信徒を目の敵にしていた。 カド博士の家はシティの郊外にある。市街地から飛び出したチヒロのエアーカーに上空から黒い物体が襲ってきた。チヒロの反射神経はあやうい所でそいつを避けた。が車はチューブードライブーウェイの側壁に激突した。一瞬チヒロはコックピット内でしたたか体を打ち、気を失なった。ラミーも身動きしない。 上から3つの黒い物体が降下してきた。彼らは手に電磁ヤリを持っている。彼らがまたがっているのは卵形をした、ホーと呼ばれる生体メカの一種である。ロボット体の中に一部分動物の神経不が埋め込まれている。一種のサイボーグであり、機械獣よりも反応速度が早いのだ。このホーは黒いコンバットスーツに身を固めた滅びの戦士達の意志を読みとり、自在に動くのだった。 「とどめをさせ」 戦士の一人が命令した。戦士がホーに乗ったまま、チヒロの様子をうかがいながら、近づいてきた。動かないチヒロの体を見付けた戦士は、電磁ヤリを持ち上げ、ねらいをさだめる。電磁ヤリは一撃で一万ボルトの電気を放電し、物体を炭化する。 電磁ヤリが突き出された瞬間、チヒロの体は気を失なったまま、空間移動した。 『チヒロ、目をさまして』チヒロの意識の奥で声が響く。激しい衝撃がチヒロの体を貫らぬき。チヒロは意識を取り戻した。目の前に再び、電磁ヤリが迫ってくる。体をかわす。レイ=がyを出そうとする。ない。エアーカーの中で落としたようだ。ナヒロは今、自分 が空間で行動していることに疑問を感じてはいなかった。急に手の中にレイ=ガンが出現した。チヒロの方へ突っ込んでくる戦士の目の前まで引き付け、手を狙い、レイ=ガンの引き金をしぼる。ホーが襲い、チヒロははじき飛された。しかし体には傷はない。戦士は両手をレイーガンでやられ、電磁ヤリを落としていた。ヤリはチヒロの手の中に飛び込んできた。チヒロは電磁ヤリを構え、戦士に投げつけた。電磁ヤリは戦士の体を貫ぬき、放電する。轟音がした。戦士の体は異色の超合金コンバットスーツごと、吹き飛んでいた。残り二人の戦士が近づいてくる。 電磁ヤリがまた、彼の手に戻ってきた。戦士は二手に分かれ、チヒロを挾み撃ちにしようとする。両サイドから突き込んでくる。ヂヒロの体は金縛りにあったように動かない。戦士のヤリが彼の皮膚にふれようとした時、チヒロはテレポートしている、エアーカの残骸の側に立っていた。上空では、勢いあまった戦士のヤリがお互いを貫いている。大爆発がおこった。チヒロには今まで自分の行動が夢のように思われた。自分にはテ レポート能力もデレキネス能力もないのだ。 エアーカーは燃え続けている。中にいた少女ラミーはどうしたのだろう。目の前の空間にラミーは疲れた表情で現われた。「ラミー、一体、君は」「そう、私は超能力者。今の事件で私の能力はわかったでしょう。カド博士の家へ向かわねば」「エアーカーはこの通りだ。君のテレポート能力でもあそこまでは距離がある」 「心配しないで」消滅の光景 第6回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/#消滅の光景ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.04.06
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SK消滅の光景■セクター宇宙連邦軍、ビット大佐の目下の悩みは、奴らの流入だ った。まったく奴らミレニアム信徒はひきも切らさず、この星へやってくるのだ。 一体、何のためにこんな辺境の星へこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n8420gh/5/消滅の光景 第5回■情報省をでたチヒロの前に少女ラミーが出現。テロ集団「滅びの戦士達」が襲撃するので、早くカド博士を助けにいけという。消滅の光景 第5回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/消滅の光景ジムの中央で座っている老人にラミーは心で話しかけた。『導師、私は出掛けなければなりません。これでお別れです』 齢数百を越す導師は静かに答えた。『出掛けるか、ラミー。何がおころうと心の声に従うのだ。それがお前に与えられた運命だからの。お前の存在理由なのだ』『わかりました。導師、もう二度どお目にかかるととはないと思います』『さらばだ。しかし気にやむことはない。休は滅びようとも心は永遠に残るからの』 ラミーは旅支度を整え、今までいた「研究所」の門を出て行った。■情報員チヒロのエア・カーの前に何かが急に出現した。少女だ。ブレーキーを踏む。ヽ自殺者ならば、その少女を当局へ突き出さなければならない。チヒロはエア・カーのドアを開け、話しかけた。 「君は自殺しようとしたね」 「いいえ、違います」その少女は答える。 「でも、君は、僕の車の前に急に飛び出したじゃないか」 「あなた、チヒロさんでしょ」 「どうして僕の名前を」 「私を一緒に逓れていって下さい」 「一緒に連れて?」「そう、地球へです」 チヒロは、なぜ、この少女が彼が地球へ行くことを知っているのだと疑問を感じた。「君は何という名前だね」「ラミーよ」 「ラミー君なぜ、君は地球へ行きたいのだ」「どうしても行かなければならないの」「よし・エア・カーに乗れ」「私を、情報省へ連れて行き、調べるつも0ね」 チヒロは内心驚いた。この子は私の心を読みとるととができる。「そう、私は人の心が読める。だからチヒロさん、あなたが地球に向けて旅立つ事もわかったのよ」 こいつはほおってはおげん。 「そうよ。はおってはおけないはずよ」 「とにかく、情報省へ行こう」 「だ‘めよj情報省へ帰る前に、霊科学者カド博士を助けなければならないわ」 「カド博士を助けろって」 「カド博士が滅びの戦士達に襲われているわ」 「何だって」 「私には見える。早く、早く、カド博士の家へ行って。考えているひまはないわ。急険なのよ チヒロはエア・カーの通信機で博士邸を呼びだそうとしただ。 『通信回線不通、通信不可能』の文字がディスプレイに出た。チヒロはラミ-の言葉を信じた。エア・カーをぶっ飛ばす。 「気をつけて、滅びの戦士達があなたを待ち構えているわ」 滅びの戦士。最近各地でおこりつつある、殺人、暴力行為、破壊活動を行なう、自然発生的テロ集団である。消滅の光景 第5回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/#消滅の光景ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.04.04
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SK消滅の光景■セクター宇宙連邦軍、ビット大佐の目下の悩みは、奴らの流入だ った。まったく奴らミレニアム信徒はひきも切らさず、この星へやってくるのだ。 一体、何のためにこんな辺境の星へこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n8420gh/4/消滅の光景 第4回セクター星情報省の長官は情報員チヒロに、司政官グルドの行方を追えと命令する。研究所の中で瞑想するラミーは天啓をうけ旅立ちを決意する。消滅の光景 第4回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/「わからん」セクター星連邦情報省のおやじこと、長官キドの長官は続ける「司政官グルドは優秀な男だ」優秀である事を必聾とし、それはセクター星の特権階級と結びついていた。 自殺は許されていなかった。自殺した者はサイボーグ手術を施さ司政官とはセクター星連邦内の故障や治安を観察し、報告するお忍びの連邦職員である。それも超A級の上級職だ。「地球にはセクター星連邦軍の前硝基地があるが、兵員が少数だ。役に立つまい。彼らは不思議な現象を報告してきている」「何ですか」チヒロはたずねる。「消滅現象だ。詳しい事はこのレポートを読め」チヒロに渡す。「わかりました」「それにもう一つ、この男と一緒に地球へ行ってくれ」 キド長官は立体写真をチヒロに渡す。 「この男はカド博士、一流の霊科学者だ」 チヒロはカド博士を迎えに行くため、エア・カーに再び乗った。情報省の最上層のパーキングからはセクター星の地平線が見えている。 セクター星は宇宙をおさめる大帝国の中心地であった。しかし拡張の時代も終り、爛熟期にはいったセクター連邦は滅びを予感させている。セクター人は科学の発達により、不死の体となっていな。病気ほ存在しない。逆に死ぬために大量の金を必要と七た。特権階級は死ぬことを許されていた。そしてまた特権階級は他の人々に死を施すことを許されていた。 宇宙パイロットである事も死を求める手段であった。まだ宇宙総ては彼らの手に帰してはいない。災害がパイロットの前,鰐立ちふさがり、死の房を開いていた。 そんなセクター人にミレミアム信仰が蔓延したのも無理からぬ事だった。 ミレミアム信仰はセクター連邦が、宇宙の創造者の怒りにふれ、今年の内に消滅するという思想なのだ。人々は仕事を止め、ミレミアム信仰の聖地を求めて、宇宙を放浪し始めた。 聖地はどこの星にあるのか知らされていなかったのだが、その聖地を中心に滅ぴは始まるといわれていた。 死は、消滅は、何よりもセクター人にとって至福の時なのであった。■研究所の実験室の中でラミーは長い黙想の中にあった。何時間統いているのだろう。うす暗い部屋の中に何十人もの人間が、黙想に耽っていた。 部屋は小さなジムほどもある。ソフトな間接照明が彼らを照らし出している。部屋は白い壁でかこまれ何の備品もなかった。 ラミーの心の中は無であった。遠くから声が聞こえてくる。また始まったわとラミーは思う。近頃黙想中に声が響いてくるのだ。原因は不明だ。それは有無をいわせぬ力強さでラミーの心に語りかけてくるのだ。ラミーの超能力を持ってしても打ち払うことができなかった。『ラミー、出発の時が近づいている。男に会う、のだ。その男はお前の助けを必要としている』 ラミーは黙想を止め、目を開き、出掛ける決心をした。消滅の光景 第4回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/#消滅の光景ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.04.04
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SK消滅の光景■セクター宇宙連邦軍、ビット大佐の目下の悩みは、奴らの流入だ った。まったく奴らミレニアム信徒はひきも切らさず、この星へやってくるのだ。 一体、何のためにこんな辺境の星へこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n8420gh/3/消滅の光景 第3回セクター司政官グルドが、光る塔の中で消えた。本星セクターの連邦情報省のおやじこと、長官キドはカジノで豪遊していたエージェントの千尋を呼び出す。消滅の光景第3回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/司政官グルドにセクター宇宙連邦軍、ビット大佐が告げた。この塔の危険を理解してもらためだ。「塔の側にガーディアンと呼ばれる旧式のロボットがいます。別に人略書を吽えるものではありまぜん。ただおの塔のまわりをゆブっくりと歩き廻っているだけです。ただ気をつけて下さい。あの塔はこの星の聖地心しいのです。塔に近づこうとした鼎はあのロごボ″トが容赦なく殺すのです。消滅現象はおこりません。 あのロボットは塔を守るガーディアン(守護者)なのです」 ロボットが目の前にいた。大きな手がグルドの体を掴み上げ、塔から遠ざけようとした。が一瞬、ロボットはビクッと動きを止め、グルドを観察しているようだった。巨大な無機質な眼がグルドを見つめていた。やがてガーディアンはゆっくりと、大切なものを扱うようにグルドを地上へ降した。再びグルドは見えない力に操られ塔へと近づく。ガーディアンはグルドを見守っているようだ。 ジルパーの塔の外皮が眼前だ。突然、塔の基部に穴が出現した。たじろぐ事なくグルドは中へはいる。ふと母の胎内へ戻ったような安堵感がグルドを襲う。通路があった。さらに中へとグルドは歩む。小さな部屋があった。ベッドが真中に据えられている。グルドは横たわる。マジックハンドがのびてきて、グルドをしっかり掴まえた。天井から球体が降りてきた。瞬間、閃光が走り、グルドの体は光線につらぬかれていた。その時、グルドは至上の喜びを得ていた。彼の体はプラズマ状になっていた。 ■チヒロが「オヤジ″」から呼びだされた時、彼はカジノの中にいた。カジノでツキにツイている時だった。チヒロはしぶしぶ、金貨をチエ″カーこ預ナた。「また後で来るからな、預かっておいてくれ、マド」 顔見知りのチエ″カーに頼む。 「今日もまた中座ですか。ツキが逃げますよ」 「ツキが逃げるって、ツキの方が俺の後からついてくるさ」 チヒロは給料のほとんどをカジノに注ぎ込んでいる。フリータイムはこのカジノにいる事が多い。 カジノから連邦情報省までエア・カーでぶっ飛ばした。途中のロードでいつも通りの車との戦闘行為にふける。 「今日はこのくらいにするか」 チヒロは独りごちた。情報省の建物が見え始めた。 IDカードを示し、情報省内へとはいって行く。チヒロはセクター宇宙連邦情報省のエージエントであった。 ″オヤジ″、つまり情報省長官キドはいい顔はしていない」 「チヒロ、遅かったな」 「いや、いつもより、コンマ4秒は早いはずですよ。いつも通り3台の車とコンバットしてきましたからね」 「今日は3台か、お前にしては少ないな」 ミカロ星戦役でなくした片眼の方、ロボット=アイが冷たくチヒロの表情をながめている。 「本題にはいろう。司政官が一人行途不明になった。 「どこの星でですか」 「地球でだ」 「あの辺境の地球ですか」 「おまけにミレミアム信徒が多数、その星地球に集まっているらしい」 「何か関連が」消滅の光景 第3回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/#消滅の光景ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.04.01
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SK消滅の光景■セクター宇宙連邦軍、ビット大佐の目下の悩みは、奴らの流入だ った。まったく奴らミレニアム信徒はひきも切らさず、この星へやってくるのだ。 一体、何のためにこんな辺境の星へこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n8420gh/2/消滅の光景 第2回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/「この星で何かがおこっているな」グルドは独りごちた。セクター星軍駐屯本部宿舎に入ったグルドは、ピット大佐の個室を、夕刻、ノックしていた。「すまんが、ピット大佐、町中の宿屋を紹介してくれんか」「ええっ、視政官、それは危険です」「人々の中に入らなければ、視政官としての任務はできん。ミレニアム信徒ム信徒の様子を調べたいのだ」「そうですか。そうおっしやるなら:」 ビットは少し考えていた。「タルジマロ通りのキムの宿屋がいいでしょう。まだ安全でしょう」「わかった。地図を書いてくれるかね」「案内します、視政官」 「ばかを言いたまえ。君が付いて来れば、ぶち譲してはないか」 ミ肌アム信徒で混雑するタルジマロ通りを歩いてようやく、グルドはキムの宿屋を見つけた。セクター星では博物館入りの建物だ。 これ以上、肉のつきようがない肉のかたまりの様な男がカウンターの中にいる。この男がキムの様だ。歩く度に重さで床がギジギシと鳴った。不機嫌そうな顔だ。 「お客さん、残念ながら、ミレニアム信徒ならおことわりだよ」 グルドはキムの鼻先に銀河クレジットを押しつけていた。 「私はミレニアム信徒ではない。泊めてもらおう」 キムの表情がくずれだ。「お客さんがミ‥リアム教徒だなんて誰がいいました。どうぞどうぞ。この星で最高のお部屋にお泊めいたしましょう」キムの口はとどまる所を知らない。「宇宙商人の方ですか。こんな星に貿易にこられたのですか。残念ながら、この星には何にもないですよ。そりタ、大昔には、この星は繁栄していたらしいですが。私達はセクターから入植した人間の子孫なんですが。祖先がもぅとましな星に入植してくれていたらといつも思ってますよ。 そりタそうと、「塔」を御覧になりなさったかな.あの塔くらいしか、この星には見所がないですよ。ほら、この寫からも見えますよ」 塔は、夜空の中に銀色に輝いていた。針のように天空に向けそそり立っている。突起物はなく、均質の物質で構築されていた。 「まあ、明日の朝早く、行かれることですね。じゃ、お休みなさいませ」部屋に入った瞬間。心が浮き立つ。 グルドの心は見えない力に引き寄せられていた。抗いようもなかった。意識の一部では自分の意識があの塔に向かって突き進んでいるのがわかっていた。何のために私の意識は塔に向かっているのだ。グルドは自問した。答は返ってこない。体が自分の物ではないような感じだ。 町並が消え、塔が目の前に接近してくる。 ただ塔のみが存在し、向こうの方に地平線が見える。あとはただ赤茶けた荒地だけだ。 塔は宇宙から飛来し、この大地に突きささっているようにも延える。 旧式のロボット、ガーディアンがゆっくりと近づいてくるのがグルドの視野にはい連邦軍のビット大佐の言った言葉が耳に残っている。消滅の光景 第2回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/#消滅の光景ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.30
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消滅の光景第1回■セクター宇宙連邦軍、ビット大佐の目下の悩みは、奴らミレミアム信徒の流入だ った。死が至福の時をあたえるというのだ。2022年03月29日 | 消滅の光景イメージイラストは、鈴木純子作品をお借りしました。http://www.yamada-kikaku.com/suzuki-junko.htmlSK消滅の光景■セクター宇宙連邦軍、ビット大佐の目下の悩みは、奴らの流入だ った。まったく奴らミレニアム信徒はひきも切らさず、この星へやってくるのだ。 一体、何のためにこんな辺境の星へこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n8420gh/1/消滅の光景第1回■セクター宇宙連邦軍、ビット大佐の目下の悩みは、奴らミレミアム信徒の流入だ った。死が至福の時をあたえるというのだ。■ビット大佐は落胆した。これがセクタが派遣した情報省の調査隊だと . 「失礼ですが、チヒロ中尉、IDカードを示していただけますか」 ヂヒロは笛辱に耐えかねたようにIDカードをビット大佐に投げた。消滅の光景 第1回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/セクター宇宙連邦軍、ビット大佐の目下の悩みは、奴らの流入だった。まったく奴らはひきも切らさず、この星へやってくるのだ。一体、何のためにこんな辺境の星へやってくるのだ。 奴らの信仰が、彼らを狂わせているに違いない。狂気が奴らをこの星へ引き寄せているのだ。 ミレミアムミリアム信仰。世界が、この宇宙がもうすぐ滅ぶという信仰が、総てが消え去る時に、聖地にいたいという願望。それがこの星の人口を急激に増加させていた。もう星の収容能力をオーバーしている。正規ルート以外に密航してくる奴らを連邦軍は追い払らわなくてはならない。 モれがビット大佐遠の役目であった。周辺航路を周遊し、見張りつづけなければならない。 最近、富に密航船が増え続けている。 しかたなく、ビット大佐たちは船を破壊しなければならないこともある。 しかし、彼らを殺すこと。それはミレミアム信徒の奴らに至撮を与える事になるのだ。 殺しても、奴らはやってくるのだ。連邦軍本部、セクター星に応援を何度も頼んだのだが、援軍が送られてくる様子はなかった。 考えにふけっているビット大佐をレーダ手ハーラン伍長の声が現実に戻した。「飛行物体を発見しました。右17度の方向です。大きさはクルーザー級。連邦軍の船ではないようです」「また、来たのか。警告だ」 グルドがなぜ、その星に降りようという気になったのか自分でもぼっきりわからなかった。すぼらしい星だった。はるか昔は繁栄を誇ったのだろうか。グルドの船は降下を続けていた。モニターには大都市の姿は映ってこない。地面の上でキラリと光るものがある。 急に通信機が声をあげた。「こちらは、連邦軍だ。何者か」「グルド=グアン、アルド星の宇宙商人です」「宇宙商人だと.この星は輸出物資もなければ、商品を買うだけの金持ちも存在しない」 「ほんの気ばらしのつもりで着陸を」「気ばらしだと、お前、ミレミアム信徒ではないのか」 「いえ、そんな者ではありません」 「そうか。この星はすでに収容能力を超えていが。残念だが、退去してほしい。警告を受けいれない場合は、残念だが、君の船を攻撃する」 グルドはミレミアム信徒という言葉が気になっていた。「どうしても着陸したいのだ」 グルドは語勢強く言い、ある暗号コードを連邦軍の船に対して送り出していた。 連邦軍の船はそれを受け取り、混乱したようだった。しばらくの沈黙の後、やがて、ビット大佐の声がグルドに届いた。 「失礼いたしました。空港は一つだけです。誘導波を送りますから、それに従って下さい」暗号コードの効果だ。 空港は色々な星から辿り着いたと見える種々の形状を持つ老朽船で一杯だった。 町並の方だろうか、星にはふさわしくない銀色に輝く巨大な塔が望見できた。 「一体、この船の群は」 「ミレミアム信徒の船なのです。この星で消滅の時を迎えようとやってきた奴らの船です」 「詳しい事は連邦軍駐屯地で聞こう」「失礼ですが、IDカードを示していただけますか」 グルドはIDカードをビッド大佐の前にさし示した。 「わかりました。視政官、どうぞこのエア・カーにお乘り下さい」グルド、セクター宇宙連邦軍視政官はうなづいた。 空港から町へ出た。.大きな建物はない。た,だ無気味μ動めく人の群があった。道路に人があふれ、建物に群れている。ただ祈りをくりかえしている。小さな子供が道路の真中で祈っている。クラクジョンを鳴らしても動こうとしない。ブレーキをかける。しかしそれより先に、子供は逆にエア・カーにぶつかってきた。ヽにぶい音がした。 グルドはうなる。「自殺か、あんな子供が」 「それより、あの子供がどうなったか、窓から見て下さい」 道路には子供の死体がない。光り輝く灰が残っている。 今の光景を見ていた人々は、歓声をあげてエア・カーの方へ押し寄せてくる。 祈りを唱えながら、灰をすくいあげようとする。エア・カーの廻りに人垣ができていた。「どういうことなのだ」「消滅現象です。ここではよくおこる出来事なのです」 群集はあとから後から押し寄せてくる。人々は宗教恍惚状態である。「エア・カーの出力をあげ、説出しろグルドは叫んが。エアで灰は飛び散る。人々は少しでも灰を拾おうと狂乱した。「いつこうなのか」 グルドは今、見た光景を信じられないという面持ちがった。 ビット大佐は静かな声で言った。「そうです。毎日、おこっているのです。原因はまっtくわかりません」消滅の光景 第1回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/#消滅の光景ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.29
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/71/源義経黄金伝説■第72回■最終回★源義経の存在が日本の統一を可能とした。 源頼朝は日本全国に守護地頭を置く。律法の世、貴族の世である日本を、革命においこんだ。源義経黄金伝説■第72回■最終回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube■ 終章 正治元年(一一九九)、源頼朝、落馬がもとで死亡と、鎌倉幕府正史「吾妻鏡」には記されている。 印地打ちの石には、鉱山で使われる丹毒が、塗られていて、ゆっくりとした死を頼朝に与えたらしい。 源頼朝の死は平家滅亡より、十四年後である。源義経の存在が、日本の統一を可能にした。源頼朝は、源義経のおかげで、追捕師として、日本全国に守護地頭を置くことを可能とした。これが律法の世、貴族の世である日本を、革命においこんだ。黄金大仏の再建は、平安黄金国家の終わりを意味し、新しい征夷大将軍が続いていく。西行法師は文覚に、黄金のありかをつげ、さでに先に運び込んだ黄金を頼朝の名前で、勧進を行った。その代わりに源義経をこれ以上追いかける事を約束させたといわれている。 西行の残りの黄金は、結縁衆、山伏たちによって、蝦夷・恵庭岳の山林中に隠されてるという伝説が存在する。宝物を埋めた目印として、笹竜胆の家紋が浮き出る、義経石が配されている。笹竜胆は、西行えにしの藤原北家の家紋である。 当時、満州、東蒙古、華北地方を領有していた、女真族の国は金である。 源義行も、母静ともともに吉次の手づるにより、金に渡っていると伝えられた。 源義経は、その子、源義行とともに、金朝に仕え、功績は抜群で、父子相次いで範車大将軍に任じられたと「金史別伝」にある。文覚は生き残り、鎌倉幕府により再び佐渡に配流された。1199年3月の事である。夢見、こと明恵は文覚の跡目となり、京都神護寺の事跡をつぐ。この後、承久の変の後北条泰時が、明恵に深く帰依し、「御成敗式目」という法律をつくる。この中に明恵のあるがごとくの思想は反映され、民間の知恵あるがままを、条例化する手助けをした。式目は明治時代まで日本人のこころのよりどころとなる。40年間書き綴られた明恵の「夢記」が今に残る。東大寺勧進職は、栄西に受け継がれる。法然は鎌倉仏教を立ち上げていく。鬼一法眼は伝説の人物となった。西行の佐藤家荘園、紀州田仲庄は後、源頼朝の預所となり、高野山との土地争いは解決された。藤原定家編纂の歌集「新古今和歌集」には西行の歌が94首が治められ、入選歌集筆頭である。歌の聖人、西行上人の名は日本の歴史に深く刻まれている。以下 連載 第1回に戻る。■明治元年(1868年) 白峯神社(京都)京都市上京区今出川通り飛鳥井に京都市上京区に白峯神宮はある。祭神は崇徳上皇すとくじょうこう。日本の大魔王といわれている。幼き帝の手を外祖父、中山忠能がかしづき、新しく出来た神社に詣でている。「さあ。御君おんきみ、ご先祖帝さまにお願い申し上げてくだされ。これからの、御帝さまを中心とされる新しき政府に、崇徳様の怨霊がたたらぬよ うに、あたらしき政治をお守りくだるようにお願いつかまつれ。代々、外祖父、中山忠能が家、藤原本家に伝わりし、西行法師さいぎょうほうし殿との約束をお伝え下さいませ」この日、1日驟雨である。中山忠能卿のさし出される傘の中。御歳15歳の新帝は、手を合わせ、御願いを、なされた。「崇徳上皇殿下、お許しくだされ。我が王朝が武士から世辞を取り戻すに700年かかってしまいました。今にいたり、源頼朝、大江広元の子孫たる二家、薩摩島津。長州毛利両家をもって、武士どもの町、江戸と政庁江戸幕府を倒し、武士どもを根こそぎ退治いたします。この長き屈折したりし日々をお許しくだされ。そして、陰都かげみやこでございます。平泉王国は、いにしえに滅びました、それゆえ、代わ りに江戸を陰都といたします。平将門を祭る神田明神を持って、陰都の守神といた します。が、本来は、崇徳上皇様が祭神でございます。どうぞ、我が王朝が、江戸城をもっ て新しき王朝の皇居といたす事をおゆるしくださいまし」御年十六歳の帝は、深く頭をさげた。白峰稜前にある白峰寺木像(白峰大権現)が 讃岐(さぬきー香川県)から運ばれて来ていた。先帝孝明帝が望み、できなかった事をなしとがている 。「今、奥州東北の国々が、列藩同盟とか申し、昔の蝦夷どものように反乱を起こそうとしております。我が王朝の若い貴族を持って先頭に立ち、荒恵比寿どもをたいらげます」幼き帝は、再び深々と、頭を垂れた。崇徳上皇は、保元の乱ほうげんのらんの首謀者の一人である、後白河に敗れ、讃岐に流され、そのちでなくなり、白峰山しらみねさんに葬られた。讃岐は京都の南西の方角、つまり裏鬼門うらきもんであり、平泉は、京都から見て鬼門にあたる丑寅の方角である。突然、空から、驟雨の中雷光が、崇徳上皇の独白が落ちてきて響き渡る。「西行法師よ、長くかかったのう。いつまで朕をまたせたことやら。がしかし、その陰都もいつまでも、安穏とするかや。所詮は、東の幕府、所詮は、荒夷どもが都ぞ。朕が情念は、いつしかその都に吹くだすやもしれぬぞ。見ておれ」その時 雷光が風景すべてを白濁させ、消えた。残光が響き渡る。「不吉なり。。」思わず誰かがつぶやく。数人の供人が、島津家が源頼朝の子孫であると称し、毛利家が、鎌倉幕府、大江広元の子孫であることを想起した。あたらしい鎌倉幕府か?この日、元号が明治と改元された。(完結)20210430版改稿原稿作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.25
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと源義経黄金伝説■第71回京都神護寺にて 西行の宿敵、文覚は巨木に向かう。 「天下落居(てんからっきょ)」の時。師匠の彫像を、弟子の夢見、今は「明恵(みょうえ)」は微笑んで眺めている。源義経黄金伝説■第71回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube■1199年(建久10年)京都・藤原兼実邸関白、藤原兼実は考えていた。我々の家の先祖が、古き名前では中臣の家が、百済から、この国に流れてきて、他の豪族や百済、新羅の貴族とも戦い、この国で一をしめ、仏教とこの国の宗教とも戦い、我々、藤原の貴族がこの国の根幹を押さえてきた。藤原の都を作り、壬申の乱を生き残り。この国を寄生樹のように支配してきたのだ。ここは、我々、藤原氏の国だ。おそらく、この世界のどこよりも我々の支配体制が優れていよう。天皇家ですらその意味合いがわかるまい。それなのに、後から来て板東に移住しいてきた者どもが、武闘を繰り返し、地位を締めはじめ。天皇家の血を入れた人物を立ててしまった。藤原の氏の長としては、何らかの生き延びる方策をこうじねばならない。「鎌倉」へは何かかの方策を討たねばなるまい。源頼朝が、鎌倉源氏が麻呂を裏切ろうと。京都の底知れぬ企みの怖さをしれぬ武者ともを、手に入れよう。法然殿、重源殿、栄西殿とも話あわねばなるまい。むろん、麻呂の弟、慈円じえんも。そうだ。慈円なら我々藤原の名跡をたたえ、我々の役割を言葉として残してくれよう。この京都の比叡山から、次々と宗教という矢を打ち込み、鎌倉武士ともの心をうちつらぬこうぞ。いままでの後白河法皇という重石が、麻呂の頭からさっても、、いや、なつかしい思いがつのる。生きておわした間はにくらしげであったが、今は、後白河法皇様がうたれた、打ち手の見事さが、麻呂の身にしみる。さいわい、西行が打ち立ててくれた「しきしま道」が日本全土を多い、我々の守りとなろう。和歌により言霊による日本全土の守り。その和歌の言葉が悪霊から我々を守りってくだるだろう。和歌により神と仏を日本各地でたたえる。それも歌枕によりわれわれ貴族や僧侶が、恐るべきは崇徳上皇様のたたりのみ。西行ですら失敗してしまった。永く後生我々のおそれとなろう。兼実は、藤原氏の氏の長者うじのちょうじゃとして、あらゆる手をつかい、鎌倉幕府への攻撃かための決意をした。■4 1199年(建久10年)京都京都。神護寺の境内。鎌倉から生き延びて京都に帰っている僧がいる。文覚が涙を流しながら、二mはある巨木の切れ端に向かっている。その力技は普通ではない。刃の聖そのものである。その姿勢が、「天下落居てんからっきょ」の今となっては時代遅れの観をいなめまい。額に汗し、顔を赤らめ、ひたすら巨木に打ち込み刃を振るう文覚は、人間ではないような感じさえ思わせるのだ。赤銅色のその力強い腕からは、ある人物の姿がだんだんとこの木片から浮かびびあがったくる。夢見、今は明恵みょうえと呼ばれる弟子が、文覚にたづねる。「お師匠様、それはもしや、」「いうまでもない。西行の像だ」「でも、お師匠様、この世ではお話が通じなかったのではございませんか」「夢見よ、ワシと西行は同じ乱世を生きた、いわば戦友、同士だ」鬼の文覚から一筋に涙が、、「これは汗ぞ。夢見よ。奴の思い出にのう」「、、、」「が、夢見よ、負けたのはやはりわしかもしれん」「それはいかなる故にでございますか」「わしと西行は、北面の武士ぼ同僚だった」「たしか、相国平清盛さまも」「そうだ、が、この後世の日本で、一番名前が残るは、残念ながら、西行かもしれん」「西行様が、」「そうだ、ワシが忌み嫌った「しきしま道」をあやつは完成させよった。和歌によりこの国日本の風土あらゆる者に神と仏があると思わせ崇拝させる道をあやつは完成させ、その道を伝えるものを数多く残したのだ。歌の聖人として、西行の名前は、永遠不滅であろう。日本古来の神道と仏教を、和歌と手法を使い一体化させよった。これは、さすがの、重源も気づかなかったことだ」「でも。お師匠様、よろしいではございませんか。この世が平和になるのでございますから」「夢見よ、ふふつ、お主もな、西行の、毒にはまったか」文覚は苦笑した。「わしはな、まだまだ西行への甘い考え方には不服だ。奴は亡くなっても策士ぞ」「といいますと」「西行が、義経という玉ぎょくを、旧い日本である奥州に送り込み、頼朝に日本統一をさせよった。西行は、後白河法王の命とは故、日本統一と、宗教統一の2つを完成させよったのだ。これは、珠子たまこさまの願いにもかなう。後白河さまは、白拍子 などとつうじ、今までの日本の文化をまとめ、武士にたいする日本文化の根元流派を、藤原氏をはじめとする貴族に残したのだ」文覚は、夢見にさとすように言った。「むかしナ。わが王朝は、東大寺の黄金大仏を作り上げた。これは、唐にも天竺にも新羅にもない大事業であり、我が王朝の誇りとなった征夷大将軍、坂上田村麻呂が、黄金を生む異郷である、蝦夷を征服した。そして、」「そして、平安京を桓武帝がおつくりなられ、我が王朝の平安なる時を希望されたわけですね」「武者である平家が、黄金大仏を焼き、新たなる黄金大仏を、黄金国家である我が王朝は再建せざるを得ない。が、黄金は平泉奥州王国が握っておった」「で、新たなる征夷大将軍の出番というわけですか」「そうだ、黄金郷であり仏教王国である平泉を、何かの理由で成敗し、新たなる征夷大将軍として、再び黄金大仏を作りあげなけらば、ならぬ」「源頼朝様が、異国奥州平泉を成敗し、黄金を手に入れ、黄金の大仏を、平安国家の象徴としてつくり上げねばならなかった、と」「そうだ、お主も、ワシも、色々な国々からこの日本へ移住してきた我らが祖先が、1つの国の象徴として存在した黄金大仏を再建し、新たなる時代の幕開けをつげなければならなかったのだ」「お師匠様、でも、もう日本は仏教国でございます」「くく、それよそれ。西行は、歌の形で、奥州藤原氏の仏教王国の考え方自体を、日本に広げていきよった、くやしいが、わしは、西行にかなわなんだ」夢見、明恵は、しかし心のなかで少しほほえんでいる。でも、お師匠様、でも少しお忘れです。ー紀州熊野を納めしもの、日本をおさめんー熊野を治めるどこかの国から来た人間の子孫が、この日本を治めるのですよ。拙僧は、紀州湯浅氏出身の「夢身」です。今の法名は明恵みょうえは、ほほえんで、師匠の文覚が、目から汗をたらし、往時を思い出しながら、西行法師の彫像を彫琢するのを眺めていた。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.23
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「支配者たち」短編(ハーモナイザーBIGIN)世界樹ハーモナイザーが支配する宇宙、2人の宇宙飛行士の物語。これは現実か「もちろん、あの人は私の夢の一部分よ。でも、私も、あの人の夢の一部なんだわ」この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1894de/■「もちろん、あの人は私の夢の一部分よ。でも、私も、あの人の夢の一部なんだわ」ルイスキャロル鏡の国のアリスより。地球から、最初の恒星間飛行を行った、当時の二人の宇宙飛行士は事故にあい、宇宙空間を漂流。死の直前、彼らは、ハーモナイザーという超生命体に助けられた。時々、宇宙飛行士であったロシュは、自分たちは、まだ、あの漂流していた宇宙船にいるのではないか。これまでロシュが経験していたことすべてが、夢であることことではあり、死の一歩手前。宇宙飛行士の妄想ではないか。●山田企画事務所・飛鳥京香 サイト などより転載。http://plaza.rakuten.co.jp/yamadas0115/飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所) 飛鳥京香・小説家になろうサイトhttps://ncode.syosetu.com/n1894de/「支配者たち」(ハーモナイザー01)1986年作飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Http://www.yamada-kikaku.com/大星間帝国統治者ロシュがやってきたのは、都市郊外の名も全く知られていない淋しい町たった時ですら、この町を見向きもしないって通り過ぎていくだろう。そんな感じだった。この霧に包まれた町は、まるでこの世の中に存在しないような感じさえした。制服に身を固めた、30名はいる大勢の護衛官たち。装甲車の中にいる、そのの一人が、ロシュの身を案じて、声をかける。「ロシュ様、大丈夫ですか、こんな地図にはない記載されてない小さな町で、一人でお出かけ。とは、記載されていない事自体がおかしいのですよ」「心配するでない。この町。この場所に来ることは、、すでに、神が決められている。いわば、一つの宗教儀式なのだ」強い調子でいった。暗殺の計画も進んでいるこの時期に、一人で、という護衛官たちの、いわば、避難の目も気にせずに。「ですが、ロシュ様」「いいか。これは、命令だ。もし私が当分かえらなくても心配するな」ロシュは強い口調で言う。大星間帝国統治者のロシュは、彼の大仰な護衛官団を、その場に残し、たった1人で、とでも小さな町へ向かっていった。護衛官団は、町のまわりを取り囲み、彼がその町から出てくるまで待続けるだろう。その小さな町の通りには、人影はなく、静謐さが全て覆っていた。まだ珍しく舗装されていない、むき出しの道をゆっくり歩いていく。彼は歩いて来た方向を、いわば、彼の信奉たちの方を、ふり返りもしなかった。町のすぐ後ろにある小さな丘から、樹齢数百年に及ぶ樫の木立ちが、町並み方にその大きな陰を投げかけていた。町外れにある。目立たない2階建ての家の前に立って、ロシュは、考え深げににその建物を見上げ、ため息をついた。やがて、思いつめたように、中に入っていった。■古びた看板には「夢の国」とあり、風でふるえて、音を立てていた。昔のままのオーディが、いた。今まさに眠りから覚めたばかりという顔で、カウンターの中に座っていた。「ロシュ、100年ぶりかね。どうだい、この星の世の中の子は。ちぇつ、いつもと同じ会話、言葉か」ロシュは、少々疲れた顔で答える。「君も夢の中で見ただろう。戦争、革命、闘争。殺りく、暴動。、流血、それから、そうそう、わずかばかりの短い平穏、平和。、、、私に残ったものは、また、失望と疲労。、、いつもの通りだ」ロシュは、首をうなだれていた。「それじゃ、俺の頃と、また同じだったんだな。独裁者ロシュ殿、10のの太陽系、と127の星を支配する。大星間帝国の創設者にして、統治者のロシュ殿のか」自虐的にオーディはいう。「なお、オーディ。私はいつも思う。私たちは、一体、何のために生かされているのだ」ロシュは、吐き出す様にいった。「ロシュ、それは考えないことだ。俺たち二人は、ハーモナイザーによって選ばれた人間だった。宇宙意思「ハーモナイザー」から与えられた役目を果たさなければならない。そのおかげで、俺たち二人は、永遠に続けることができるのではないか。」ハーモナイザーは、絶対神ともいえる。「俺たちは、確かに不老不死の体となった。ハーモナイザーによってな。だが、命が、永遠の命が何人になる。自分の愛した女が老いさらばえ。子供達が生まれ育ち、そして、俺の目の前で死んでいくんだ。これは悲しいぞ。そんな森羅万象を眺めているのは、気分の良いものではない。おれたちは神ではない。が、いわば、神の役割を果たさねばならない。また私の意志で数多くの罪のない人がきづづき死んでいく。えー、何のための不滅の命なのだ。私たちは一体何者だ。何のために生きているんだ。教えてくれ」ロシュは、もう絶叫していた。オーディは、しばらく黙っていたが、やがて、ゆっくりと口を開いた。「ロシュ、俺にいえることは、ただ、眠れ。それだけだ。その大きなカに君は疲れている。次の時代に期待しろ。今度の俺の時代で、ハーモナイザーがオレたちに与えた命令がわかるかもしれない」。「わかった、わかった、オーディ期待するよ」。われわれの製造理由で飲んで党のあることはな。その実、ロシュは、もう、期待はしていないのだ。ロシュは、今にも消え入りそうな力を、なんとか絞り出して、地下室へ降りていく。明滅する光の中を、ムービングウエイが走り、丘の中央に隠された「円盤」にたどり着く。寝床となる「シリンダー」中に横たわる。この中で、何度か目の500年目の眠りの中に入る。反対にオーディは、この町をでていく。この町を500年の間、訪れる人もない。訪れる人はない。この町は霧の中へ沈んでいく。周りにいた護衛官たちは、オーディの「神の力」で「全滅」する。●ロシュが見るのは、必ずその時の映像だ。るか昔、地球から、最初の恒星間飛行を行った、当時の二人の宇宙飛行士は事故にあい、宇宙空間を漂流。死の直前、彼らは、ハーモナイザーという超生命体に助けられた。時々、ロシュは、自分たちは、まだ、あの漂流していた宇宙船にいるのではないか。これまでロシュが経験していたことすべてが、夢であることことではあり、死の一歩手前。宇宙飛行士の妄想ではないか。ロシュの子供のころからの夢は、支配者になる事であり、いつもプルターク英雄伝や、ナポレオン、ヒットラーそして、その他のそれぞれの時代の独裁者の伝説を映画やビデオ、本で読んだり見たりした。死ぬ間際の幻想映像ではないか。そうろしはもうそんな夢に、やがてオーディが現れる。オーディは、ロシュが作り上げた星間帝国を崩壊させようとした。ハーモナイザーから与えられた全知全能を持って、この世に、新しい秩序を作とうとしていた。そして、この星で、500年の時が流れた。●共同体主席オーディがやってきたのは、名も全く知られていない淋しい町たった。時ですら、この町を見向きもしないって通り過ぎていくだろう。そんな感じだった。この霧に包まれた町は、まるでこの世の中に存在しないような感じさえした。制服に身を固めた、50名はいる大勢の、同志親衛隊たち。気動車の中にいる、そのの一人が、オーディの身を案じて、声をかける。「同志オーディ様、大丈夫ですか、こんな地図にはない記載されてない小さな町で、一人でお出かけ。とは、記載されていない事自体がおかしいのですよ」。「心配するでない。この町。この場所に来ることは、、すでに、神が決められている。いわば、一つの通過儀式なのだ」強い調子でいった。暗殺の計画も進んでいるこの時期に、一人で、という同志親衛隊たちの、いわば、避難の目も気にせずに。オーディ共同体として主席同志オーディは、どうしたも、目の前にとでも小さな町へ向かっていかなばならない。そして今度は、めざめたばかりのロシュが持っていたのだろう、「夢の国」へと、、樹齢数百年に及ぶ樫の木立ちの1本の樫の、表皮、小さな部分に、地球文字が刻まれている。突然、それは現れる。『私の夢は、、、』「もちろん、あの人は私の夢の一部分よ。でも、私も、あの人の夢の一部なんだわ」ルイスキャロル鏡の国のアリスより。完 20210913改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所「支配者たち」(ハーモナイザー01)1986年Http://www.yamada-kikaku.com/#ハーモナイザーランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.22
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/69/源義経黄金伝説■第70回鎌倉、大江広元の前に静の母親、磯禅師が現れて、秘密を打ちあける。その秘密とは、源義経の遺児は。源義経黄金伝説■第70回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube■ 1198年(建久9年)鎌倉/大江広元屋敷「危ういところであった、文覚が鬼一を処分してくれたとしては」大江広元は呟く。が、広元は疑心に捕らわれる。 いかん、もし、、、「よいか、至急に牢を見て参れ」と雑色に命ずる。「源義行殿、牢におられませぬ」 雑色が顔色を変えて報告した。「何と…、そうか、あの磯野師めが」大江広元は、禅師の控え部屋にいく。「禅師、お主、義行殿を逃がしたな」声高かに叫ぶ広元に対して磯禅師は、ゆっくりとお茶をたしなんでいる。ふくいくたるお茶の香りが磯禅師のいる部屋にたちこめている。「大江様、どうかお許しください。あの者、最初からこの世には存在せぬものです」「磯禅師、お前、静と連絡をとっていたのか。静はまだ生きていると聞く。あの義行を静の元に走らせたのか」大江広元は、ある事にはたと気づく。苦笑しながら言う。「そうか、磯禅師、お主、西行に惚れておったのか。それを見抜けなんだのは、私が不覚。西行の想いが、自分の黄金である源義行を逃しよったか。くくっ、まあ、良い。 いずれは、静のところに向かうであろう」源義行は、磯禅師にとっては孫にあたるのだ。大江広元は憎々しげな表情で、磯禅師を見つめる。禅師は、まさか広元が静の居場所を知っているとは、思っている。恐るべき情報能力を持つ男だった。大江広元 は付け加えた。「よいか、禅師。もし何かことがあれば、お主もろとも滅ぼす。無論、京都大原にいる静もだ」脅しの言葉であった。が、禅師も負けてはいない。「しまし、大江様。大江様もこのままでは済みませぬぞ」「何だと」「頼朝様の暗殺を知っておられたこと、鎌倉腰越にて書状に認めてございます」「何という書状を…、嘘じゃ」「北条政子様は信じますまい。いや、本当のことをご存じでも、その書状を利用し、京都から来た男である大江様を、鎌倉政権の座から引きずり落とすでしょう」「むむっ、お前。この俺を裏切りおるか」大江広元は憤怒の形相で、磯禅師ににじり寄った。「これでも禅師は、この源平の争いの仲を生き残ってきた者でござい ます。裏の手、裏の手を考えておらねば、生き残ってはこられませぬ。そこは 私、禅師の方が広元様より、一枚も二枚も上手ということでございましょう」大江広元を見返す禅師のまなじりには力がこもっていた。おまけに源義行は、禅師の孫なのだ。今の今まで生きながらえて、この官僚あがりの田舎貴族と対峙して、勝てなければどうしよう。経験の量が違うのだった。「うむっ…」大江広元も押し黙ってしまう。ここは禅師を怒らせぬ方がよいかもしれぬ。所詮は女だ。変に怒らせて、今までの広元の苦労を水泡に帰すこともあるまい。「大江様、大江様はこの鎌倉殿の政庁を作り。歴史書に御名前が載りましょう。が しかし、大江広元様ではなく、中原広元様にかも知れませんね」「禅師、お前何を企むか」「いや、お隠しめされるな。先年なくらられし西行様も、同じことをされました」「‥‥」「家の筋目のことでございます」「西行法師様も、佐藤家の本筋ではございませんでした。佐藤家は源平の戦い、屋島の戦で、滅んでおります。それゆえ、西行様も佐藤家御本流として、後の歴史にのこられるでしょう。これは大江様も同じことをされる機会でございましょう」大江広元も、また西行もそのそれぞれの家の本流、本家ではない、と禅師はいうのだ。「禅師、お前は、、」「いや、皆まで申されますな。大江様の御母君様は、大江家の出。母方さまの御本流をのってるおつもりではございませんでしたか。本来の苗字、中原の名前を隠し、大江の本流の方々をすべて死においや り、大江広元の名前は、歴史にのこりましょうぞ。さすれば、名高き学者、大江匡房の 曾孫としてはづかしき事無く明法博士の御名前を朝廷からいただけましょう。これ でも禅師には、つてがございます」大江広元はしばしの間、頭を垂れていた。が、ゆっくりと顔を禅師に向ける。「、、で、禅師、そのお方とは、、」禅師は、広元もまた、京都のためにからめとった。「わかった禅師。このこと不問にしよう」「では、源義行様のことはいかが記録されます」「事件とはかかわりあいのない雑色だったということにしようか」「それを聞いて安心いたしました。 それでは、京都から鎌倉にこられる僧たちのことよろしくお願いいたします」栄西、法然をはじめ、新しい教条を手にに、鎌倉武士のために京都から僧侶が送られてくるのだ、その手配方を、大江広元に頼もうというのだ。昔、京都において、平家陣営の諜報少年部隊、赤かむろの束ね者でもあった、磯禅師は、深く頭をさげた。(続く)20210429改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.22
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CP封印惑星・封印された新地球で、情報収集端子である一角獣・新機類は、天空の光矢を見る。 それは新地球の解放者、世界樹の出現する予兆であったこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1512de/12/封印惑星)第12回■最終回 地球意志は大球(地球)と結ぶ小球(月)に、星の武器を集め自爆にアーヘブンを 巻きこむ。アーヘブンは新地球の創造をユニコーン、北の詩人、ゴーストトレインが実体化。封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第12回●■最終回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所「危ない所だった。天宮=地球意志は、私アー・ヘブンを道連れに、この星を破壊するつもりだったのか」 アー・ヘブンは独りごちた。 地球意志は、大球(元の地球)と結ばれた小球(元の月)に、スパイダーネットで、集積した色々な星の武器を集めていた。 地球爆発の際、武器群は小さなユニユニット群となり、小球から発進し、この宇宙に存在する生命を破壊しつくす武装機械船群を、あらゆる方向にむかって発射されようとしていたのだ。そのために、長い長い時間をかけ、知らないうちに、スパイダーネットを使い武器を集積していた。それは、ハーモナイザーに対する「地球意志」の復讐行動である。「地球の上に新しき生命を宿すのだ」 アー・ヘブンの心の底から声が響く。ハーモナイザーが呼びかけていたのだ。「どうやって、この地に生命を宿したらいいのですか」「アー・ヘブンよ、お前は種子なのだ。お前が変化し、新しき地球になじむ植物となるのだ。お前子孫がこの星、地球に充ちるのだ」「しかし、ハーモナイザー、この大球いや、地球は鋼鉄のよろいがあり、内部ば機械星となっています」「心配するな。機械星、大球に根をなせぱよい」「根ですって」「お前の第1触手を、根とするのだ」 アー・ヘブンはハーモナイザーにいわれた通り、第1触手を大球の機械地中深くシャフトにそってかろす。触手は膨張し、根となった。 次の瞬間、地表を被っていた鋼鉄面は光り出し、熱を持つ。一気に蒸発した。同時に地球全体が光り輝く。大球内部の機械類は燃えあがり、やがて燃えつき、土と化した。 アー・ヘブンの体に内包されていた、ハーモナイザーの種子も。同時にまきちらかされる。種子は大球、全世界を被う。 『大球をアウフ・ヘーベンせよ。アー・ヘブン、それが、お前の役割なのだ』光の声がいう。いまや、大球から変化し、再生された地球の世界樹となったアー・ヘブンの聴覚に、ハーモナイザーが働きかけ、アー・ヘブンは始めて、自分の名前の意味合いを悟った。 アー・ヘブン=アウフ・ヘーベン(止揚)だったのか。アー・ヘブンである、世界樹の、表皮、小さな部分に、古代の地球文字が刻まれている。突然、それは現れた。『私の夢は、、、』今は存在しない「北の詩人」イメージ脳はただよう。その存在しない思念には、かつて″木″、に記号を印した事を思い出している。ずっと昔の古代の記憶。『かしのきに、ナイフでしるしを……』北の詩人が。消え去る一瞬、耳にした何かの産声は、この変化のさきぶれだったのか。新しき地球は、ハーモナイザーと意識では一体化し、アウフ・ヘーベンした世界樹により、新たなIページを書き記し始めた。北の詩人の体は、再び実体化し、北の詩人の目の前にはユニコーンの姿も、ちらほら形作られはじめるのが見えた。そして、ゴーストトレインも、、、(完)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第12回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所#封印惑星ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.22
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CP封印惑星・封印された新地球で、情報収集端子である一角獣・新機類は、天空の光矢を見る。 それは新地球の解放者、世界樹の出現する予兆であったこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1512de/11/封印惑星)第11回アーヘブンは、「天宮」と対峙。「天宮」は、ハーモナイザーと同化を拒み、地球・思想本図書館とイメージコーダーの合成体が 破壊された。地球思想書が、粉々に吹き飛ぶ。封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第11回●●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/本が風化するのと同時に、コードの中の,北の詩人の体も消滅した。アー・ヘプンはその一瞬、産声を聞いたような気がした。その機械共生体も、外気にふれて腐触し、機械パネルははじけ飛び、粉々に分解していく。本がその背後の機械共生体がくずれ去った後,内壁中央部に光点が残っていた。光点はアー・ヘブンの方へ移動してきた。球体には、ぎっしりと古代の本が積まっている。その球体からは、強烈な激怒のイメージが、アー・ヘブンに注がれていた。それが「天宮」だった。アー・ヘブンは「天宮」に話しかけている。「天宮」の過去の名前で。「地球意志よ、寂しかっただろう」「地球意志? 太古の、私の、名前を知っている、お前は一体……」「そう、「天宮」いや、地球意志よ、君が考えている通りだ」「つまりは、お前は、ハーモナイザーの手先というわけか」「正確にはそうではない。私、アー・ヘブンは、ハーモナイザーの意識の一部という方が、いいだろう」「なぜ、私「天宮」の所へ来た。私「天宮」つまり、地球意志の宇宙に対する復讐の理由を探りに来たわけか」 アー・ヘブンは、天宮=地球意志、の意志の強固さ。その意志の持つ邪悪さに、思わずたじろいた。「やはり、君は、宇宙に対して、復讐を考えていたわけか」「そうだ。私はハーモナイザーのおかけて、「地球人類」という、かけがえのない財産を奪い取られたのたからな。それに君は、私のデータベースも破壊した」「まだ、わかっていないのだな、地球意志。ハーモナイザーは君から地球人を奪いとったわけではない。彼ら、地球人類は、自らの意志て君から離れたのだよ。地球人類は宇宙の意志という大きな思念のために出かけていったのたよ」アー・ヘブンの意識は、ハーモナイザーと一体となる。「ハーモナイサーの手先としてか」「手先?、そういった問題ではない。地球人類はひとつの思考形態としてより進化したといえるだろう。かつては地球人類という小さな枠で、物を考え、自分達の能力を使っていたが、ハーモナイザーの意志により、彼らは同調したのだ。君、つまり地球意志より、より大きな意志のためにね」「ハーモナイザーよ、いくらくりかえしてもしかたがない。ハーモナイザー、君が私から人類を奪い去った事に変わりはない。あまつさえ、私、地球にこの鋼鉄の鎧を着けさせてその上に監視員をおき、彼ら監視員を進化させた」「そう、彼ら監視員の新機類は、君、天宮=地球意志を、監視するために存在し、生命球がすべてを統禦していた。が、新機類や生命球は君が滅ぼしたのだろう」「そう、それが、宇宙に対する、そしてハーモナイザーに対する私の復讐の手始めだ」生命球は、アー・ヘブンのソウルブラザー、同類の意識体だった。生命球も、ハーモナイザーの個性群体の一つだったのだ。「ハーモナイザーは、君、地球意志の行動を観察していた。君があるいは新しい精神構造を持ち始めて、ハーモナイザーの考え方に同調するかもしれない、と思ったのたよ。がそれは残念なら、期待はずれだとわかったわけだ」「それて、わざわざ、このシャフトまで降りてきて、私を滅ぼすわけか」 天宮=地球意志の声、はあくまで冷たい。「地球意志よ。最後のチャンスだ。君の思念を我々ハーモナイザーの仲間として同調しなさい。それがすべてだ」「答えはノーだ」「わかった」天宮=地球意志は、何かの信号を送りだそうとしていた。間髪を入れず、アー・ヘブンは、第3触手をのばし、天宮=地球意志をにぎりつふそうとする。「天宮」の中身は、聖書、仏典、コーランなど地球の宗教書・哲学書、地球人類の偉大な思想遺産の書類とイメージーコーダーが包含されていた。この宗教書こそが、天宮=地球意志のアイデンティティーだった。存在価値のすべてだ。アー・ヘブンの第3触手の握力で、古代の図書館とイメージコーダーの合成機械「天宮」の外壁がはじき飛び、本の数々がバラパラに吹き飛び、破片は大気へ散っていった。(続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第11回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所#封印惑星ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.18
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/68/源義経黄金伝説■第69回鬼一方眼との死闘のため、頭や顔は朱に染まり、足取りもおぼつかぬ文覚は、大江広元屋敷の元を訪れている。源義経黄金伝説■第69回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube■ 1199年(建久10年)鎌倉文覚は、対決の後、しばらくして、広元屋敷の元を訪れている。文覚の頭や顔は朱に染まっている。足取りもおぼつかぬ。鬼一方眼の打撃の後がゆっくりと文覚の体をむしばんでいる。鬼一の八角棒には、やはり丹毒が塗られていた。「大江広元殿、鬼一方眼はワシがあやめた、これで、あやつらの王国、勢いがなくなろう」文覚は、大江に満足げに言った。「さようでございますか。それは重畳。しかしながら、いかがなされた。その傷は」「我のことなぞ、どうでもよい。よいか、大江広元、義行を逃がせ」「源義行を…、何を言う。気が狂られたか」「よいか、大江広元。私、文覚は、元は武士である。鬼一との約束は守らねばならぬ」 文覚は息も絶え絶えに言うのである。「皆の者、出て参れ。文覚殿、乱心ぞ」大江広元は、屋敷の郎党を呼び寄せる。「くそっ、広元、貴様」 手負いの熊のように文覚は、広元の手の者と打ち合うが、多勢に無勢。おまけにひん死の状態の文覚は打ち取られる。「残念、無念。清盛、西行、お前らが元へ行くぞ」とらえられ、牢につれていかれる文覚が、いまわの際に叫んだ。◎文覚は,今は亡き好敵手西行の最期を、そして西行から聞いたある話を思い起こしていた。◎待賢門院璋子けんれいもんいんたまこは、西行の手を強く握りしめている。待賢門院璋子は後白河法皇の母君である。その臨終の席に西行が呼び寄せられていた。「二人の皇子をお守り下され。西行殿。私の最後の願いでございます」「わかりました、璋子様、この西行の命に変えても」西行は宮廷愛の達人でもあった。この時期日本は宮廷愛の時期である。待賢門院璋子の二人の子供とは、崇徳上皇と後白河上皇である。璋子は鳥羽天皇の間に後白河法皇を生み、鳥羽上皇の祖父である白河法王の間に崇徳上皇をうんだ。白河法皇は璋子にとり愛人であり、義理父であった。いわゆる源平の争いは、璋子を中心にした兄弟けんかから起こった。西行は璋子のために終生、2人の御子を守り事を誓ったのだ。西行は璋子のために、京都朝廷のしくみを守りために、その生涯を捧げた。西行と文覚は、若き頃、恋いにそまりし王家を守る2人の騎士であった。それでは、文覚は、日本の何を守ったのか。自問している。文覚は若き折り、崇徳上皇の騎士であった。上西院の北面の武士である。しかし、文覚は保元の乱の折り逃げ出している。その折りの事を西行はよく知っているのだ、言葉で攻めていたのだ。西行は、いまはのきはに、叫んでいた言葉を思い起こす。「文覚殿よ、天下は源氏におちたと、、思わぬほうがよい」「何だと」「頼朝殿の義父、北条、平時政殿の手におちるかもしれんな」西行の死に臨んでの予言であった。いにしえ、坂東の新皇と自ら名乗った、平将門まさかどの乱平定に力があったのは、藤原秀郷と平員盛である。藤原秀郷の子孫は、奥州藤原氏、西行の家などである。平員盛の子孫が、伊勢平氏と北条氏であった。(続く作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.18
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/67/源義経黄金伝説■第68回★1199年(建久10年)鎌倉大倉山に、伊豆からの春嵐がふきすさぶ山頂に鬼が二匹、己が思想に準じて舞い踊る。源義経黄金伝説■第68回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube第9章 1198年(建久9年) 鎌倉■5 1199年(建久10年)鎌倉大倉山 鎌倉の街の背後にそびえる大倉山山腹に、びょうと風がふいている。 鎌倉の周り北東西三方に山山がとりまき、南は海に開いている。鎌倉は自然の要塞であった。大倉山山頂から頼朝が作りあがた要塞都市の姿がよく見える。文覚はだれにも手出しできぬように、この決闘場を選んでいた。 伊豆からの春嵐がふきすさぶ山頂に鬼が二匹。「鬼一方眼、今度が最後の勝負ぞ。いずれにしろ、お主らが丹毒で、頼朝様、もっても7日だ。お主らを倒しておかねばのう。この鎌倉幕府が持たぬわい」鬼一方眼も構えている。「おおよ、その勝負、受けたぞ、文覚。俺も京都一条の鬼一法眼。あとくされない勝負だ。これで引き下がったとあっては、俺の名折れよ」二人の体に、伊豆からくる少し早い春風が、吹き巻いている。人の気配のない大蔵山の山頂に、二人とも八角棒を手にして微動だにしない。「それに鬼一、安心せよ。儂は西行殿と9年前に約束しておる。勝っても負けても、源義行殿の命は安全よ」「それを聞いて安心した。お主も闇法師の端くれであったか。約束は守るのか」「当たり前よ。ましてや、西行殿の今際の際の言葉だ」「いざや、まいる」とどちらからともなく打ちかかっている。激しい打撃音が、大倉山全体に響く。山に住む野生の動物たちが勢いで逃げ出してくる。「よいか、鬼一。お前たち、山の民どもの住む所など、もうこの世には存在せぬ」激する文覚が声高に叫んでいた。「頼朝ばらに、我々の王国など支配できるものか。いあや、支配させるものか」鬼一方眼が、鋭い文覚の八角棒の一檄を受けて叫ぶ。鬼一方眼の言う王国とは、京都大和王朝が成立しても、なお連綿と続いている、前の王朝、葛城王朝の流れを汲む『山の民の王国』である。歴代の京都朝廷も彼らの見えざる王国を認め、協力者としていたのだ。それを文覚は無くなると言うのだ。「よいか、頼朝様が、征夷大将軍となり、十年前に奥州平泉王国を滅ぼした今、我々武家の世の中よ。日本は頼朝殿によって統一された。支配するのは鎌倉将軍。また山々、山山林のすみずみまで、鎌倉から守護、地頭をつかわし、網の目のように日本全土に支配を巡らせる。お前たち、山伏を始め、山の民の住む所なぞないわ。義経が逃げた場所などもうなくなる」「くそっ、ゆうな。文覚、それであるからこそ、お主ら倒さねばならぬ。お主は鎌倉を代表する攻撃勢力。我々自由民のためにな」「無駄よ。京都朝廷を頼朝殿がおさえれば、『山の民の王国』など認めるものか」「平清盛殿、西行法師殿、後白河法皇様。皆、我らが味方であったぞ」「それも終わりぞ。義経殿も、もう日本には帰ってこれぬぞ」文覚の言葉に鬼一はたじろく、(なぜそれを知っている)「貴様、なぜ、それを」「ふふっ、金きんに逃れるところを、儂が、のがしてやったのだ。鞍馬寺の宝、征夷代将軍、坂上田村麿呂公の刀と引き換えにな」「くそ、これが最後の一撃…」鬼一は、渾身の力を込めて、文覚に打ちかかっていた。八角棒はぱしりと折れ、鬼一の棒が、文覚の頭蓋を、天頂を打ちすえている。一瞬、時の流れがとまる。二人の体は止まっている。風も一瞬凪いだ。急にゆるやかな太陽の光が、雲間からふたりの体を照らした。折れた八角棒の先を、文覚は鬼一の胸板を貫いている。 相打ちである。 血のにおいがただよっている。鬼一の方が致命傷となる。足下に体液の流れが、大地をすこしづつ、赤黒く染めていく。「くっつ文覚、どうやら、我々の時代は終わったのう」苦しげに、鬼一は呻く。血が口からしたたり落ちてくる。 しばらくして文覚が告げる。「鬼一、よい勝負だった。それに約束だけは守ってやろう」「約束だと」血みどろの鬼一方眼の疑問の顔が、文覚に向いた。「源義行殿を、鎌倉から逃がすことじゃ」相対する文覚の顔と体も、すでに血にまみれている。「それは有り難い、文覚殿。その事、恩にきる。ぐう」ひとこと発し、鬼一の体がゆっくりと大地に沈んでいく。 血の気が失せていく鬼一の体に、文覚は両手で拝む。「鬼一方眼殿のお仲間の方々、後はお願い申す」 まわりの気配に対し、文覚は周りを見渡し大音声でさけぶ。折れた八角棒を杖として、頭から血を流しながら、文覚は鬼一の体を残しそこを去って行く。文覚は山道で立ち止まり、振り向く。目には血が流れ込んでいる。「鬼一方眼殿、さらばだ」 文覚の姿が消えた後、山伏の群れ、結縁衆や、印字打ちの群が現れていた。 数人が鬼一方眼の遺骸を取り囲む。 「後を追うか」一人が叫ぶ。 「無駄だ、あのおとこには」「刃の鬼聖」文覚の名前は、紀州にも響いている。文覚は日本各地の山伏の生地で荒行をくり開けしていた。「頭の最後の命令にしたがおう」「それより、我々はな、、西行法師殿の伝説を、この世に広めねばなるまいそれが、われら、後に残りしものが役目ぞ」鬼一方眼の義理の弟、淡海が、強くいう。目じりが光っていた。(続く20131026改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.17
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■「76歳でまだこども」白石卓也の世界メカムシ作品をはじめ絵画・イラスト・クラフト作品を展示■3月16日(水)から3月31日(水)9時30分から20時まで■メカムシデザイン工房 白石卓也事務局・山田企画事務所・山田博一(yamada@yamada-kikaku.com)http://mekamushi.com/history.htmlhttps://plaza.rakuten.co.jp/mekamushi/■会場:伊丹市立図書館ことば蔵〒664-0895 伊丹市宮ノ前3-7-4https://www.city.itami.lg.jp/SOSIKI/EDSHOGAI/EDLIB/index.html電話番号 072-783-2775(代表) / 072-784-8170(交流事業・貸室)開館時間 火~金:9:30~20:00 土日祝:9:30~18:00 月:休館伊丹市立図書館ことば蔵●観覧は無料です。http://www.city.itami.lg.jp/SOSIKI/EDSHOGAI/EDLIB/index.htmlメカムシデザイン工房/代表/白石卓也いままで作りためていたメカムシ・クラフト・絵画も展示。
2022.03.15
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CP封印惑星・封印された新地球で、情報収集端子である一角獣・新機類は、天空の光矢を見る。 それは新地球の解放者、世界樹の出現する予兆であったこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1512de/10/封印惑星)第10回北の詩人は「情報ユニット」を使う「イメージコーダー」を発明。数百年後「イメージコーダー」は地球軍のビッグコンピュータとリンク、大球の「機械共生体」の中心に。封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第10回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所「マンガ家になる塾」アー・ヘブンが立ち去った後、しばらくして,北の詩人は意識をとり戻す。大球と小球を結ぶコードは揺れていた。北の詩人は振動するコードの中で,はいつくばりながら、事の始まりを思いかこしていた。北の詩人は、古代に生きていた男の実体化であった。彼は自分白身のデータを情報ユニットとして残していたのだ。北の詩人は、詩人であると共に、優秀な技術者でもあった。彼の画期的な発明が「イメージコーダー」てあった。 「情報ユニット」を「イメージコーダー」にセットすれば、それが実体化されるのだ。ただしわずかな時間だったが。 北の詩人は、その発明のパテント代で億万長者となり、死後、巨大な地下ピラミッドに埋葬された。 もちろん納宮室には、「イメージコーダー」と、彼の大好きだった「情報ユニット」のコレクションが収納された。 数百年後、このピラミッド近くに建築された、地球連邦軍のビッグコンピュータとリンクして、「イメージコーダー」が「機械共生体」の中心になるとは想像だにしなかった。 彼の地下ピラミッドの上には、樫の樹林が果てしなく広がっていた。その中の樫の木一本に、北の詩人が若い時、ナイフで刻みつけたフレーズが残っていた。『私の夢は・・・・:』● たどり着いたシャフトの内部を見て、アー・ヘブンは驚く。ここは古代の遺跡なのだろうか。 触手をのはしてみる。情報ユニット群にふれる。情報ユニットはやはり、アー・ヘブンと同じ植物繊維からできている。 さらに、情報これらの一つ一つは繊維のシートの集合体だった。 各シートの表面には、この星の旧生物が使用していた記号が、多量に刻み込まれている。 記号をシート上に刻み込むことを「印刷」といったらしい。 その記号を、この星の生物は古代より「文字」と呼んでいた。この一枚一枚のシートから或る情報ユニットは″本″と呼ぱれていたのだ。この本の集合体が、データベースであり、この星の住民は、視覚を通じて脳に入力していたのだ。この情報ユニット″本″が数十万、いや数百万ユニット、シャフトの中心部内壁に埋め込まれている。しかし、アー・ヘブンが鉄表を破って潜入し、密閉されたシャフト内に外気が侵入したことにより、シート=紙が変質し崩れ始めた。粒子となり飛び散り出す。 何千年の夢だろう。数えきれない程の、多数のこの星の住民の知恵が、虚空ヘチリとなって消え去っていく。 この星の文明遺産の消失であった。 膨大な本という「ペーパー情報集合体」が消え去り、その後に古い機械が姿を現わす。機械共生体であった。(続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第10回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所「マンガ家になる塾」#封印惑星ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.14
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/66/源義経黄金伝説■第67回★1199年(建久10年)鎌倉 頼朝への襲撃を大江広元、文覚が知り、各自の思惑で激論となる。源義経黄金伝説■第67回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所★漫画通信教育「マンガ家になる塾」★http://www.youtube.com/user/yamadakikaku2009■ 1199年(建久10年)鎌倉 頼朝近辺を護衛する武士の一人が、鎌倉政庁にいる大江広元に告げた。「頼朝様が、傷つき,かつぎこまれました」「何、よし、落馬されてけがをおわれたとせよ。この事、他の者に他言無用としろ」「怪しげなる童…だと」大江広元は、体をこわばらせた。「大殿様の馬の側にうろついておりましたところ、捕まえてございます」「よし、そやつの顔を見てみよう。私の前に引きだせい」 やがて、広元の前に、見目麗しい少年が引き出されていた。その少年の顔を一目見た一瞬、汗が吹き出てきた。広元は、その少年が誰であるかを、しっていた。 一三年前、1186年、鎌倉稲村が崎で、自分がすり替えて助けた童子。静と義経の子供。 この少年が取り調べた際、自分の身元をしゃべり出すようなことがあれば、類は自分にも及ぼう。この少年の処理、素早くせねばなるまい。広元の額にはうっすら汗が浮かんでくる。「この罪人、牢獄へ引き立てい」 広元は、その後、磯禅師を別室に密かに呼んでいる。「お前の孫が、生きておったな」 雑色たちを所払いにし、開口一番に広元は言った。「私の孫ですと。何をおっしゃいます」 禅師は慌て、そして顔色を変えている。 まさか頼朝の暗殺者が、あの静の子供だとは。禅師には思いもよらぬ展開だった。 京都からもそのようなことは聞いていなかった。「まさか、何かの間違いでございましょう」 広元は、この暗殺者が義経と静の子供であるとわかると、自らの立場が悪くなることに無論気がついていた。お互いの眼が合う。おおよそ、広元と禅尼の利益は合致した。これは一つ、あの童を密かに殺してしまうか。そう考えている時、巨大な動物が、奥座敷の戸板を打ち破り、二人の前に現れていた。「うわっつ」一瞬二人は何が起こったかわからない。「大殿様を殺めようとしたのは、お主らか!。え、大江広元、禅師、お主らが企みよったか」憤怒の様相の文覚であった。もはや、全身が、怒りの塊と化している。「よいか、広元。覚えておけ。お主ら、貧乏貴族が支配する日本のために、頼朝殿に俺が命を掛けた訳ではないわ。この日の本を、すばらしい仏教王国にするため、民が住みやすい国にするために、この文覚は頼朝殿に掛けたのだ」 憤怒の不動明王像のように見える文覚。その文覚に対して、広元は真っ青に り、一言もしゃべりはしない。禅師も部屋の隅に蹲っている。「広元、決して、源義行殿を殺してはならぬぞ」意外なことを文覚は言った。「源義行殿を囮に、鬼一法眼を、大倉山山頂に呼び寄せ、最後の勝負を挑む。ただし手出し無用。儂と鬼一で勝負を決める」(続く (C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所★漫画通信教育「マンガ家になる塾」★http://www.youtube.com/user/yamadakikaku2009#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.14
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源義経黄金伝説■第66回1199年(正治元年) 霧の中で落馬した源頼朝の目の前に炎上する鎌倉の姿が見えている。2022年03月12日 | 源義経黄金伝説(2022年版)YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/65/源義経黄金伝説■第66回1199年(正治元年) 霧の中で落馬した源頼朝の目の前に炎上する鎌倉の姿が見えている。源義経黄金伝説■第66回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube 1199年(正治元年) 鎌倉 鎌倉の朝。1199年(正治元年)1月13日鎌倉街道の地面に落ちた霜が太陽を受けて、湯気をあげている。気おもいで気分のすぐれぬ頼朝は、単騎でゆっくりと動いて来る。大姫の死が、頼朝のこころを責めさいなんでいる。鎌倉街道の要所、相模川の橋の完成式の帰りであった。この時のお共には、広元は最初から参加していない。頼朝は馬に乗り、見知らぬ道を通っていた。ふと、回りを見ると、いつもはいるはずの郎党共の姿が見えない。おまけに辺りにはうっすらと霧が出てきたようである。「これは面妖な…、ここはどこだ…」きづくと霧の真ん中に頼朝が一人。 頼朝は、ひとりごちた。道の向こうに人影がぼんやりと見えている。「おお、あそこに人がおる。道を尋ねよう」頼朝はそちらに馬を進めた。 すでに鬼一法眼の術中に嵌まっていることに、頼朝は気付いていない。鬼一得意のの幻術である。 この時、頼朝の郎党の方は、大殿の行方を捜し回っている。が、みつからぬ。二股道の一方を頼朝が通ったあと、鬼一の手の者が偽装したのだ。頼朝は、郎党から切り話されて霧ふかき見知らぬ森の中にいる。護衛から全く切り離され、一人きりなのである。頼朝を乗せた馬は、一歩一歩と、その人影に近づいて行く。どうやら、若い女性のようだ。旅装で網代笠を被っている。頼朝は馬上から尋ねた。女の体つきに、へんに見覚えがあった。「これ、そこなる女、ここはどこなのだ。そして、鎌倉までの道を教えてはくれぬか」 女はくぐもった小声で答える。「頼朝殿、鎌倉へお帰りのつもりか。もう鎌倉はござらぬぞ。お前様は帰るところがない」頼朝は奇異に感じた。「何を言う、貴様、妖怪か」叫ぶが早いか、頼朝は、女の網代笠を馬の鞭で跳ね飛ばした。瞬間の霧の中から、ごおーっという音が起こっている。おお、これは…、幻影か。頼朝の目の前に炎上する街の姿が見えていた。霧の仲にくっきりとその映像が見えるのだ。頼朝は、平泉のことを思い出しているのかと一瞬思う。う、これは、なんとした事。が、よく見ると、そこは鎌倉なのだ。「何ということ。儂の鎌倉が燃えている。どういう訳だ」自分が手塩にかけた愛しき町が燃え上がっている。鎌倉という町は、頼朝にとっていわば、自分の記念碑である。「き、貴様」女の顔を見る。「うわっ、お前は大姫」 四年前に奈良でなくなったはずの愛娘、大姫の姿がそこにあった。大姫は頼朝の方へ両手を伸ばした。顔はて暗がりではっきりとは見えないのだ。「さあ、父上、私と一緒に極楽浄土へ参りましょう」 大姫が指さす方は、燃え上がる鎌倉である。「あの中へと」 その炎上の中にいる人々の姿がはっきりと見えていた。平氏、奥州・藤原氏の武者、そして源氏の武者、おまけに義経の姿もある。今までの頼朝の人生で手にかけてきた人物たちである。「さあ、父上の親しい皆様が、ほれ、あのようにあちらから呼んでおいです。さあ、父上、はよう」 頼朝はゆっくりと馬から降りて、ふらふらとそちらの方へ歩んでいる。 突然、石つぶてが、頼朝の体といわず頭といわず降り注いできた。「ぐっ」 頼朝は、頭に直撃を受け倒れ、気を失う。淡海の部下が数名、投弾帯や投弾丈をもちいて、ねらいたがわず、頼朝に命中させていた。投弾帯は、投石ひもともいわれ石弾をはさむ一本のひもで、石弾をはさみ下手投げでなげる。時速八〇キロの速度はでた。 頼朝はしばらくして気付いた。が、目の前はまだ霧の森の中である。「い、今までのことは夢であったか」頼朝は叫んでいる。人影がある。大姫の姿があった。「お、大姫。助け起こしてくれ」 今は亡き大姫の名前を呼ぶ。しかし、大姫は反応しない。「儂が悪かった。許してくれい。お前の幸せを考えず、志水冠者殿を殺してしまったのは、俺の不覚じゃ。許せい」志水冠者は、頼朝が殺した大姫のいいなづけ、木曽義仲の息子である。 大姫の姿がするすると、頼朝のところへ近づいて来る。「本当に、そうお思いですか」顔をよせてきた。「そうだ」頼朝は、大姫の顔を仰ぎ見た。 いった瞬間、大姫の服が弾き飛ばされている。 そこには、うって変わって、りりしい若い武者が立っている。「お、お前は何者」大地をころびながら頼朝が叫んでいた。「源義経が遺子、源義行にございます」 頼朝は、驚き、その人物の顔をしかと観察する。「まてまて、お前は義経が子か」「そうでございます」 義行は、頼朝に対して刀を構えている。しかし目には不思議に憎しみはないのだ。頼朝に対する哀れみが見える。 この男は…、本来ならばおじになる。が、我が父を葬った男。鬼一から話を聞き日々の憎しみを増幅させ、この計画を練ったのだ。しかし、実際に、頼朝と対峙してみる、と、悪辣なる敵のイメージとあまりにもかけはなれている。源頼朝の姿には一種独特の凄みがありながら、その体から悲しみを感じるのだ。愛娘を死なした絶望が見える。頼朝の人生は多くの人々の亡骸から気づかれている。悲しい人生かも知れぬ。おのの存在、源氏の長者として大きくみせなければならなかった。いままで、源氏のだれもが、望み得なかった高見に頼朝はいるのだ。しかし、この悲しみの原因は何のか。そして、義行を哀れみの情で見ているのだ。驚いたことに頼朝は、涙を流しているではないか。源義経の息子、源義行は思わずたじろぐ。「義行か、不憫よのう、お主は、おのが父親、義経が、北へ逃れ、蝦夷の王、いや、山丹の王になっておるをお主は知らぬのか。吾輩みづからが、ある人物との約束で、それを許したのだ。」何をいまさら、血舞よい事を。その言葉の一瞬、源義行は、頭に血が上り、この後に及んで、私をたぶらかそうとするのか。やはり叔父上は、見かけではなく、本当に悪人なのかも知れぬ。義行は、迷うが、怒りをあらわに再び切りかかる。同時に、木陰から数個の石が雨あられと降り注ぐ。再び狙い過たず、頼朝の体に命中していた。額からは、うっすらと血が滲んでいる。頼朝が再び地に伏す。「蝦夷だと、ええい世迷いごとを、、叔父上、 父義経の敵、覚悟…」 源義行が、大声で呼ばわり、大地に倒れている頼朝に走りより、刀で刺そうとした。 突然、じろりと頼朝が、うつむいていた顔を持ち上げ、義行にまなざしを向ける。 不思議な鋭い眼差しであった。空虚うつろ。深き絶望が、その眼の中に見えるのだ。「ううっ…」義行は、振りあげた刀を、叔父の体に振り下ろすことができない。「うっつ、くそ」義行は、叫び声をあげ、いたたまれなくなり、急に後を振り向き、霧の深い森の外に走り出した。義行の体がおこりのように、体がぶるっと震える。なぜだ、なぜ俺は、この父の敵の叔父上を打てぬのか。それに父が、、わが父、義経が蝦夷、山丹の王だと、聞いていない。鬼一方眼はそれを知っていたのか。疑問が渦を巻く。「くそっ」義行は、途中で思わず路傍に、武士の魂、刀を投げだすように捨てた、一目さんで逃げ出している。倒れている頼朝の側に、霧の中からのそりと僧服の大男が現れていた。「頼朝様、ごぶじか」「おお、文覚、助けに来てくれたか」「鬼一方眼、ひさしぶりだのう。お主の計画、俺が止めてやるわ」霧の中に向かって文覚がしゃべっている。森の中の霧が、ゆっくりと薄らいできた。霧の中から、同じような格好をした鬼一方眼が、背後に人数を侍らしながら現れている。「くそっ、文覚め。よいところで、邪魔をしおって。だが、いい機会だ。西行殿の敵、ここで討たせてもらうぞ」鬼一方眼も言葉を返す。「ふふう、逆に返り討ちにしてくれるわ」「まて、まて」 二人は構えようとしたが、騒ぎを聞き付けて、ようやく頼朝の郎党が、刀を構えて走ってくる。「勝負は後でだ、文覚」鬼一は走り去る。「わかりもうした」文覚は、逃げていく鬼一方眼の集団にむかい叫ぶ。「頼朝殿、しっかりされよ」 文覚は、頼朝の体を揺さぶり抱き起こした。気を取り戻す。「傷は浅手でございますぞ」「文覚、今、儂は、義経の子供にあつたぞ」「頼朝様、お気を確かに」文覚は、あたりに転がっている頼朝を倒した石を調べてみる。石の表面がわずかに濡れている。何かの染料か。文覚は石の先を木の枝で少し触り、その匂いを嗅いでみる。「くそ、鬼一方眼め、丹毒を塗っておる。いずれは吉次か、手下の鋳物師から、手に入れよったか」「はよう、大殿を、屋敷に」文覚はあわてている。心中穏やかでない。この時期に頼朝殿をうしなうとは、鎌倉の痛手となる。ましてやこの文覚がそだてた頼朝殿を、日本の統一を手にした頼朝殿を、、この手配は、京都の手のものか。ゆるさじ。続く20210426改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.12
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源義経黄金伝説■第65回1199年(正治2年) 鎌倉 大江広元の屋敷に磯禅師が訪れていた。磯禅師は京都の総意をつげる。2022年03月11日 | 源義経黄金伝説(2022年版)YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/64/源義経黄金伝説■第65回1199年(正治2年) 鎌倉 大江広元の屋敷に磯禅師が訪れていた。磯禅師は京都の総意をつげる。源義経黄金伝説■第65回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube 1199年(正治2年) 鎌倉「大江広元様、この鎌倉の政権をひぎたくはございませぬか」磯禅師が告げた。鎌倉広元の屋敷である。鎌倉幕府成立後七年がすぎている、あの静の舞からも十三年がすぎている。大江広元が京都から鎌倉に来てすでに十六年が過ぎ去っていた。「何を言うか。この鎌倉には、頼朝様が、征夷大将軍に任じられてとしておられる」「大江広元様、この鎌倉幕府の仕組みを考えられたのは、他ならぬ眼の前におられる広元様ではございませぬか」 大江広元は世の仕組みを作る、言わば社会構造を考案し実行していた。また法律という国の根本を考えだし、関東の武士たちに一定の秩序を与えたのは、頼朝でははなくすべてこの広元の「さいづち頭」から出ていた。つまり、広元が鎌倉幕府の全機構を考え出していたのである。「さようでございましょう。王朝が変われば国の統一のために手助けした者、武将、ことごとく新しい王のために葬り去られましょう」「が、禅師、俺は武将ではないぞ」「それゆえ、策略を巡りやすいとの考えもありましょうぞ。中国が三国時代のおり、諸葛孔明の例もございましょう」大江広元は、考える。いかに禅師といえど、この考えは「禅師、その考え、まさか、後白河法皇様の…」「いえ、滅相もございませぬ。これは京の公家の方々の総意とお考えくださいませ。よろしゅうございますか、大江広元様。源頼朝様の動きを逐一お教えくだされませ。そして、もし機会があれば…」「お主たち京の公家の方々が、大殿様を殺すという訳か」「さようでございます。さすれば大江広元様、鎌倉幕府にてもっと大きな位置を占められましょう」「それが私広元にとって、よいかどうか」「何を気弱な。よろしゅうございますか。頼朝様亡くなれば幕府は、烏合の衆。大江広元様が操ることもたやすうございましょう」「所詮、北条政子殿も、親父、北条時政殿も伊豆の田舎者という訳か」磯禅師は、にんまりとうなずいた。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.11
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/63/源義経黄金伝説■第64回・鞍馬山で鬼一法眼が育てていた義経の子供「源義行」は叔父である源頼朝への復讐を誓う。源義経黄金伝説■第64回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube 1199年(正治2年) 京都・鞍馬山 鞍馬山は、京都市中よりも春の訪れが少しばかり遅い。僧正谷で武術修行にうちこむ二人の姿があった。老人と十二才くらいの童である。鬼一法眼が手をとめて、「源義行」に話しかけてた。「和子は、このじいを何と思うておられる」「どうした、じいは。いつものじいではないのう」幼い義行にとって、鬼一は年をとった父親のようであった。不思議そうな顔をして、義行は、鬼一の方を見る。「よいか、よく聞いてくだされ。わしも、もう長くは生きられぬ。そのため真実を申し上げる。和子は源義経殿が和子にござます」鬼一法眼は、深々と頭を下げる。びっくりする源義行だった。「この私が、あの、源義経の子供だという、、、」源義経が奥州平泉で襲撃されて十年がすぎている。義行は、義経がことを、日々の勉学に聞き及んではいた。「この私があなた様のために、亡くなられた西行法師殿より預かっているものがござる。それをお渡しいたしましょう。また和子の存在を知っている者が、京に一人おられた」「おられたと。その方も…」「そうです、七年前にお隠れなられた後白河法皇です。その方の指令がまだ生きておる。源頼朝をあやめられよと」「源頼朝をあやめると…」「じゃが、よーく聞いてくだされ。源頼朝殿を殺すも殺さぬも自在です。なぜなら、この鬼一法眼、全国に散らばる山伏の組織を握っております。和子を鎌倉に 行かせるは自在。が、西行殿、そして義経様が義行様に望んでおったことは、和子が平和な一生を終えられることです。また平和な郷を作られることです。この 書状には奥州藤原氏よりの沙金のありか書いてございます。これをどう使われるかは、和子が自由でございます」「鬼一法眼殿、私はどうすれば…」突然、突き付けられた事実に、義行はたじろいでいる。「どうするかは自分でお決めなされ。自分の生涯は自分で決めるのです。義経殿が滅びたは、自分の一生、自分で決められぬほど、源氏の血の繋がりが強かった。和子はそうではござらぬ。つまりは、和子は世に存在しない方。自由にお考えなされい」「……」「が、義行さま、西行法師殿のまことの黄金は、あなたさま…。それほど大事に思われておったのです…」「……」「じい、決めた。私は父上、源義義の仇を討つ」源義義の子供である源義行は、そう鬼一法眼に告げた。「そのお考え、お変えになりませぬな」 鬼一の眼は、義行の眼を見据えた。義行の眼には、常とは違う恐ろしい別の者が潜んでいる。「武士に二言はないぞ」恐れず義行は答える。「わかりました。が、義行様、この先に進めば、二度とこの鞍馬山に帰ることはあいなりませぬぞ」「何…この鞍馬には二度と」「さようでございます。もし、源頼朝様を殺すとならば、義行様はこの日本に住むことできますまい。なぜならば、鎌倉が組織、すでに全日本に張り巡らされております。その探索から逃れることなど、絶対不可能」「……」義行は急に黙り込んでしまった。西行殿、許されよ。俺はお主との約束を破る。許してくだされい。俺は、義行様が不憫なのだ。鬼一はひとりごちた。「なれど、義行様、安心なされませ。義行様をただ一人行かるじいではございません。私の知り合いに、手助けを頼みましょう」 鬼一法眼の屋敷は、京都では一条堀河にあった。義経は、陰陽師でもある鬼一法眼から、兵書「六闘」を授かっていた。 平安時代中期、藤原道長の霊的ボディガードとして有名だったのは、当時最高の陰陽師安倍晴明であったが、彼の子孫は土御門家として存続する。この土御門家に連なる一人が鬼一法眼であった。 鬼一法眼は、自分の屋敷から白河に向かい、ある一軒のあばら家に入る。 「おお、これは鬼一法眼殿、生きておられたか。伝え聞くところによれば、貴公、奥州に行かれ行方不明と聞いていたが」 のっそり出てきた優男は、京都で名高い印地打ちの大将「淡海」である。「淡海殿、お願いがござる」鬼一法眼が頭を下げている。突然の事に、淡海はめんくらう。「これは、これは何を大仰なことを申される。法眼殿は義理の兄ではござらぬか」「いや、ここは兄としてではなく、「印地打ち(いんじうち)の大将」にお願いしている客と思っ ていただきたい」「俺の、印地打ちの力を借りたい、、と、、申されるのか」「実は、儂の人生の締めくくりとして、ある人物をあやめていただきたい。といっても、儂は、手助けをお願いするのみだが」「…、したが相手はだれぞ」「鎌倉の源頼朝」「むっ…」淡海は唸ったまま、眼を白黒させている。 白河は、別所と呼ばれる。別所とは、別の人が住むところ。昔、大和朝廷が日本を統一したときに、戦った敵方捕虜をそこへ押し込んだのであった。別所は、大原、八瀬など、すべて天皇の命を受けて働く、別働隊の趣があった。しかし、また、武者などの勢力から、声を掛けられれば働くという、傭兵的な要素を持っているのである。 淡海たちは、石つぶての冠者、つまり戦士であった。 石つぶては、当時の合戦に使われている正式な武器だ。「が、鬼一殿。相手が相手だけに、義兄さまの幻術も使ってもらわねば、難しいのではないか」「さよう、頼朝を郎党から一人引き離さねばのう」「どのような塩梅か」「気にするな。我が知識の糸は、鎌倉にも張り巡らしてござる。それも頼朝にかなり近いところだ」「おお、力が入っておるのう」「よいか、義兄弟。この度の戦さは、儂の最後の戦さ。また、あの西行法師殿の弔い合戦でもある。頼朝を仕留めれば、奥州の沙金の行方を追うこと、諦めるだろう」「それでは、一石二鳥という訳でござるな」「そういうことだ。済まぬが、おの手の方々を、すぐさま東海道を鎌倉に下らせてくださらぬか」「おお、わかり申した。色々な職業、生業に、姿を変え、鎌倉へ向かわしましょうぞ。京都の鎌倉幕府探題の動き、激しいゆえにな。動きをけどられぬようにな」(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.10
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/62/源義経黄金伝説■第63回★★建久六年(一一九五)三月 奈良興福寺大乗院、宿にいる源頼朝の娘大姫のもとを、尼姿の静が密かに訪れてきた。源義経黄金伝説■第63回★★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube■ 建久六年(一一九五)三月 奈良東大寺その夜、奈良興福寺大乗院宿泊所にいる大姫のもとを、尼姿の静が密かに訪れてきた。「どうしたの、静。その尼の姿は、和子はどうしたの」静は出家し、大原寂光院のそばに庵いおりをいとなんでいる。すべては西行の手配りであった。「和子は、私の手元にはおりません。今でも鎌倉でございます」静には、わざと子供の行方を聞かされてはいない。「何、鎌倉ですと。母上は約束を守らなかったのか」「いえ、政子様は、こうおっしゃったのです。子供の命は助けると申した。が、その子供をお前に預けるとは、言ってはおらぬ」「では、和子は…」「生きております。が、義経様に対する備えとして」「人質として、が、義経様は亡くなったのでは」「いえ、まだ、みちのくに生きているという噂、風の便りに聞きました。頼朝様は、その噂が恐いのでございます」大姫はしばらく口を噤んでいる。「いいがなされました。大姫様」「静、お前に会えるのも、これが最後かも知れぬ」「何を心細いことをおおせですか。まさか…」「その、まさかですよ。静、私にはお前のように心から強くはない。父上、母上の顔を立てなければならぬ」「お逃げなされ、大姫様」「私は、もう生きる希望を失っています」「…」「ずっと昔、あの志水冠者しろうかじゃ殿が、父上の手にかかってからというもの、私は死者なのです」木曽義仲の息子であり、大姫の夫志水冠者は、頼朝の手で殺されていた。1184年元暦元年4月の事でありもう十一年の歳月がすぎていた。十一年の間、大姫はその姿を心にひきづって生きている。「そこまで、もう長くは、私は生きていますまい。静、どうか私の来世を祈っておくれ」「大姫様」二人の女性は、鎌倉の昔と同じように、両手を握りあわせ、各々の運命の苛酷さを嘆きあう。■「北条政子様、どうぞ内へ入られませ。あのお方がお待ちでございます」磯禅師は、京都のとある屋敷へと、政子をいざなう。「この方が丹後局様、皇室内のこと、すべて取り仕切られております」無表情というよりも、顔に表情を表さぬ蝋人形のような美女が座っている。流石の政子も思わずたじろぐ。底知れぬ京都の、連綿と続く力を背後に思わせた。丹後局は、白拍子あがりだが、後白河法王の寵愛を受け、京と朝廷に隠然たる勢力をいまでももっている。いわば後白河法王の遺志の後継者である。「これは、はじめてお目見えいたします。私が北条政子、源頼朝が妻にございます」政子は、深々と頭を下げた。目の前にいる女に頭を下げたのではない。あくまでも京都という底力に対してだ。そう、政子は思った。「磯禅師より聞いております。大姫様の入内のこと、すでに手筈は調っております」「え、本当でござりますか」「が、政子殿。大姫様入内の前に、こちら側よりお願いしたき儀がございます」「何でございましょう。私ごときができることでございましょうか」「無論、お出来になるはず。源頼朝様にお力をお貸しいただきたいことがございます」丹後局は少し間を置いた。焦らしているのである。次の言葉が、政子には待ち遠しく思えた。「それは、一体…」 思わず、政子の方から口を切っている。「いえいえ、簡単なことでございます。征夷大将軍の妻たる平政子殿にとってはな」再び丹後局は黙り込む。京都の朝廷で手練手管を酷使している丹後局である。丹後局は磯の禅師と同じ丹波、宮津の出身だった。交渉力においては、まだ新興勢力である北条政子の及ぶところではない。「摂政、九条兼実殿を、罷免していただきたい」「何をおっしゃいます、兼実殿を…」九条兼実は、頼朝派の味方になった政治家だったのである。■北条政子が不在の折、興福寺大乗院前の猿沢の池で、頼朝と大姫は、舟遊びを楽しもうとしていた。猿沢池の両側に興福寺、反対側に元興寺、両方の五重の塔が威厳を誇っている。興福寺は藤原氏の氏寺。元興寺がんこうじは、蘇我氏の氏寺である。奈良猿沢の池を中心に奈良平城京ができた折りの政治状態が反映されている。今また新 しい新興勢力である鎌倉源氏が、この奈良古京こきょうに乗り込んで自らの政治勢力を固持している。かがり火が、こうこうと照らされ、興福寺五重の塔が照り映えている。この船遊びは、気鬱の大姫のために頼朝が考えたのだ。が、池の舟のうえで、事はおこる。「よろしゅうございますか、父上。大姫はもう、この世の人間ではございませぬ」湖の周りには、奈良以来の雅楽が演奏されている。空気はぴんと貼りつめ、篝火の届かぬ空間のその闇は深い。「大姫、何を急に、、おまえは狂うたか」頼朝は、我が娘を別の目で見ている。篝火に照りはれる大姫の顔は尋常ではない。「狂っているのは、父上の方です。私は、私です。お父上の持ち物ではございませぬ」「むむっ、口答えしよって」「私は、いえ私の心は、志水冠者様が、父上によって殺された時から、死んでおります」大姫は舟の上から、体を乗り出している。「いとおしき志水冠者様、いまあなたの元に、この大姫は参り増すぞ」「大姫、何をする」「いえ、父上。お止めくださるな。父上が静の子供を死なしたようにするのでございます」言い終わると、大姫の体は、波の中に飲み込まれていた。「ああ、大姫」 源頼朝の腕かいなは、空をつかむ。重りをつけた大姫の体は、猿沢池底の闇に深く巻き込まれている。頼朝の両手は届かなかった。大姫の心にとどかなかったのと同じように。■「さあ、お言いなされ、母上。何を大姫様におっしゃったのですか」静は母親、磯の禅師を非難している。「この子は、何を急に、言い出すのか。大姫様が、いかがいたした」「母上、私は、幼き頃より、母上の身働きを存じております。それゆえ、この度、大姫様が入水自害をされた…」「何、大姫様が入水自害された…」禅師は驚いた表情をする。呆れ果てたように、静は告げる。「それほど、大姫様が憎うございますか」「何を申す。これは源頼朝殿を滅ぼさんがためぞ。お前、義経殿を殺させた、源頼朝殿が憎くはないのか」禅師は厳しい表情をし、声をあらげている。「そ、それは、義経様を…、殺させた頼朝殿は憎うございます。が、大姫様をなぜに殺された」「愛姫だからのう。それに、頼朝殿の血が、京と天皇家に入内せしこと防がねばなりません」「それは、京都の方からの指令でございますか」禅師は答えぬ。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.08
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CP封印惑星・封印された新地球で、情報収集端子である一角獣・新機類は、天空の光矢を見る。 それは新地球の解放者、世界樹の出現する予兆であったこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1512de/9/封印惑星)第9回●ハーモナイザーの情報端子、アー・ヘブンは、大球と小球コード内を大球にむかい直進していた。ハーモナイザーの敵である「天球」の居場所をよみとり破壊を試みる。封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第9回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 アー・ヘブンは,横たわる北の詩人をながめている。彼からは、はっきりした「天宮」の位置を読みとれなかった。彼はその「天宮」の場所を知らないのだ。闇の空洞だと?アー・ヘブンはしかたなく、大球と小球をつなぐコード(絆)の内壁ににじりよると、内壁金属に聴覚器をあてがった。この金属の持つ記憶巣から、「天宮」の情報を読みとれないかと思ったのだ。壁に聴覚器がふれた一瞬、アー・ヘブンの体は硬直した。 恐るべきデータが一度に脳に流れ込む。体が震動し、コードの内壁に倒れ込む。 倒れていても、アー・ヘブンの体は痙攣し続けている。 コードの内部は、すでに「天宮」の腕の中も同然なのだ。コード内には「天宮」の神経系が、くまなく張りめぐらされていた。その神経系から派生した神経糸が一本、アー・ヘブンの体に鋭く突きささる。神経糸は蛇の様に、体内に侵入し、ためらいなく体中を突き進む。神経糸はアー・ヘブンの中央脳を探りあて、アー・ヘブンの正体を知ろうとしていた。 脳部位はどこだ! 神経糸は位置をさがしあぐねていた。 アー・ヘブンには中枢脳がなく、しいていえば、体全体が脳機能を持っている。 アー・ヘブンは、体の中を這い進む神経糸にたいいして、逆に、パルス(波動)を送った。パルスがたどり着くところ、そこに「天宮」の命令中枢があるはすだ。 一瞬の後、逆にアー・ヘブンは「天宮」の位置を読みとっていた。 『シャフト』 アー・ヘブンは立ちあがると、体につきささっている神経糸を力まかせにひきちぎった。からまってきていた神経網を引きさく。アー・ヘブンは、コード内を大球にむかい直進していた。目ざすは「天宮」の存在するところ、「シャフト」である。 コード内の神経網が急激に膨張し、道をふさぐ。アー・ヘブンの前進をはぱもうとする。 コード自体も震動している。「天宮」は、小球とコードを、自分のいる大球から切り放そうとしていたのだ。アー・ヘブンをコードに詰め込んだまま。 大球とコードの接合部分はすでに切り放され、コードと大球の鉄表が数10m開いている。 危ない所だった。アー・ヘブンは、コードの内壁を第3触手を使って突き破り、からくも大球の鉄表へ降り立りていた。 切り放されたコードは耳を聾する轟音をあげている。何かの泣き声の様だった。コードは小球の方へゆっくりとたぐり寄せられ、ねじ曲がっていく。何か生き物の断末魔を思わせた。 アー・ヘブンは鉄表の下を透視して身ぶるいをした。この鉄表下は驚くべきことに、機械の集合体に変化していた。本来の岩盤はどうなったというのだ。 この機械類はスパイダーネットによって集められた宇宙船の部品だろう。大球全体が機械惑星と化していた。内部の地層は天宮が変化させてしまったのだろう。 アー・ヘブンは、この機械類をチェックして、ある事に気づく。これは危ない。「天宮」は、何をやりだすかわからない。 全宇宙に害毒をぱらまくつもりかもしれない。機械のすきまを探査する。そこがシャフトのはずだ。それにその部分のみ、構成成分が異なるはすなのだ。 「天宮」自体が機械と、そのモノの集合体なのだから。 またそのモノは、、アー・ヘブンと同じ成分を持っているはずだ。「天宮」の存在するところ、「シャフト」の位置をようやく探し当てた。怒りという古い感情を思いおこし、鉄表をアー・ヘブンの第3触手でふち破った。(続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第9回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所#封印惑星ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.08
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/61/ 源義経黄金伝説■第62回★★建久六年(一一九五)三月奈良東大寺 法皇崩御3年後。すでに頼朝は兼実の手引きにより征夷大将軍の地位を得ていた。 源義経黄金伝説■第62回★★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 建久六年(一一九五)三月 奈良東大寺法皇崩御3年後。 すでに頼朝は兼実の手引きにより征夷大将軍の地位を得ていた。 後白河法皇御万歳ごばんさい三ヶ月後、一一九二年七月十二日。征夷大将軍の位を得て、鎌倉幕府が誕生した。日本始めての武家政権である。 東大寺落慶供養は、源頼朝、政子の列席のもと、建久六年(一一九五)三月十二日に行われる事になった。 また、このときが、源頼朝、政子の愛姫、大姫の京都貴族へのお披露目の時である。 重源を頭目とする勧進聖たちは、立派にその役目を果たし、聖武天皇以来の大仏と大仏殿が再び人々の目の前に姿を表していた。以降、大仏様という建築様式で呼ばれることになる壮麗な南大門の中には、京都仏師に対する南都仏師運慶、快慶の仁王像が力強い時代の到来を告げることになる。 鎌倉幕府の時代、武士の時代の始まりである。 貴族の牛車引きたちが、武者たまりでしゃべっていた。「あれが東国武士か。恐ろしげなものよな」「我々とは、人が違う。主も思うだろう」「そうじゃ。あの大雨の中で揺るぎもせず、目をしばたかす、武者鎧をつけて、身じろぎもせず立っておるのだ」「頼朝という者を守るためにのう」「やはり、人ではない。動物に近いものだ」「あやつらに、荘園が取り上げられて行くのか。悲しいのう。悪鬼のような、仕業だ」「いや、あやつら板東武者の力を借りて、貴族は荘園を守るしか仕方があるまいて」 東大寺正門から両側の道に、ずらっと頼朝が武者が立ち並んでいる。 南大門、その他の門前にも、東国武士の恐ろしげな顔をした者共が並んでいた。 折あしく、春嵐が奈良近辺を襲っていた。読経の中、空は暗雲に包まれて、若草山から、風雨が吹き荒れている。 居並ぶ京と貴族達は、これからの自分たちの行く末が、暗示されているような気がしたのだ。東大寺全体、奈良のすべてがまるで嵐の中、頼朝を長とする、源氏の軍勢に占領されているように見える。 貴族たちの牛車は、脇に寄せ集めて、その他大勢の背景であり、時代の主役の乗り物ではない。この時、北条政子は、夫、頼朝にせっついていた。「はよう、大姫、入内できるようお取り計らいくださいませ。あなたは、もう征夷大将軍なのでございますよ。それくらいの実力は、おありになりますでしょう」「わかっておる。すでに九条家を使い、かなりの沙金を貴族の方々に、ばら蒔いておるのだ」にえきらぬ頼朝の態度に、政子はいらついている。 (もし、頼朝殿の手づるがだめであるならば、そうだ、磯禅師の手づるを頼もう。あの磯禅師の方が、このような宮廷工作には長けておるはず) 供養の途中、重源は、傍らにいる栄西に語りかけていた。 「良くご覧になるがよい。あれが源頼朝殿」「では、あの小太りの田舎臭い女が、北条政子殿か」 「さようだ。話によると、頼朝殿は尻に敷かれているという」「が、栄西殿は、せいぜい取り入ることじゃ。お主の茶による武者の支配をお望みならばな」後に、栄西は、尼将軍北条政子の発願により、鎌倉に寿福寺を開くことになる。 「それで、重源殿。奥州藤原氏の沙金は、いかがなされました」重源は、栄西にすべてを語るわけにはいかぬ。 「それよ、栄西殿。西行殿は、はっきり申されぬうちに、亡くなってしまった」「もしや、頼朝が沙金を…。」「うむ、頼朝殿奥州征伐のおり、かなりの砂金を手に入れたと聞く。この砂金をつかい、今の地位を得たという話だ」 「もしや、西行殿が源義経殿の命の安全を図るために、砂金を使うという、、、」「そうだ、その可能性はある。西行が、あの沙金を義経殿の命と引き換えにしたということは考えられるのう」 西行の入寂後、なぜ、重源は、東大寺の大仏殿裏山を切り崩したのか。あるいは、あの裏山に奥州藤原氏の黄金が、と栄西は考えた。 では、頼朝よりの寄進とされる黄金は、ひよっとして、西行が運び込みし、秘密の黄金かもしれぬ。では、その黄金を、頼朝からの寄進とすることで西行が頼朝が得たものとは何か?少し、目の前にいる、食えぬ性格の重源殿に鎌をかけてみようと、栄西は思った。 「西行殿は、なぜそのように義経殿に肩入れをなさったのか」重源は、その栄西の質問にしばし黙り、考えているようだった。やがて、意を決して 「よろしかろう。栄西殿ならばこそ、申そう。西行はある方から、義経殿の身の上を預けられたのだ」「ある方じゃと、それは一体」「よーく、考えてみられよ。西行殿の関係をな」栄西はよくよく考えて、頷いている。 「そうか。相国、平清盛殿か」得心した振りをして栄西は、 重源の晦渋さを再認識した。この腹の裏をもたねば、これからの京都や鎌倉を相手に、勝負ができぬわけか、、 ■西行がなくなり、五年がたつ。平清盛が、1181年治承5年、五十四歳でなくなり十四年の月日が流れている。 地位を手にいれた家族が幸せかどうか。 東大寺落慶供養の式次第の後、 大姫と頼朝、政子は、奈良の宿所となった興福寺大乗院の寝殿で争っていた。 「どうした、大姫。顔色がすぐれぬが」「そうですよ。これも皆、お前を入内させんがため、父上も私も努力しているのですよ」 「私は、私は…」大姫は小さきか弱き声で自分を主張しようとした。「どうしたのじゃ、思うこと言うてみなさい」 「いまでも志水冠者様を愛しているのでございます。皇家のどなたの寵愛も、受ける気はございません」 「何ということを言うのか」「お謝りなさい、大姫」「いやです。私は私です。私は父上や母上の、政治の道具ではないのです」「何を言うのじゃ。俺はお前の行く末を思えばこそ」「嘘です。父上は、私のことなど、お考えではない」「バカモノめ」勢いあまって、頼朝は、大姫に平手を食らす。「まあまあ、落ち着いてくだされ。大殿様、仮にもここは晴れの席。まして大殿様は、いまや征夷大将軍でございますぞ」 その場は落ち着かせた。政子は、鎌倉をたつ前にあることを思いついていた。静を大姫に合わせることである。 20131020(続く) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.07
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CP封印惑星・封印された新地球で、情報収集端子である一角獣・新機類は、天空の光矢を見る。 それは新地球の解放者、世界樹の出現する予兆であったこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1512de/7/ 封印惑星)第7回●「天宮」の端子ゴーストトレインは、侵入者アーヘブンを 飲み、「木」の味が。「天宮」はそれを 自分の「大球」へと命令する。別の端子、北の詩人は その「木」に涙を流す。 封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第7回●●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ●北の詩人は考えていた。 私はどこへ行くのだろう。 北の詩人は、ユニコーンから降りて、大球と小球をつなぐ「コード」の中間地点である通路に腰かけていた。 やがて、北の詩人は、通路の奥、つまり「小球」側に近い所から大きな音が響いてくるのを聞いた。 何だろう。 北の詩人は、すぐに立ち上がると、ユニコーンに音のした方向へ進むように命じた。 ●ゴーストトレインは、倒れているアー・ヘブンの体をさぐる。 自分のかま首をアー・ヘブンの体にあてる。 鼻先から黒い舌の様なものが飛びでる。 どうやら、今までにむさほり食った新機類ユニコーンのたぐいではないらしい。 この侵入者の端をすこしばかり、かじってみる。 表面は固いクチニン質で被われている。 この舌ざわりは、ゴーストトレインに「木」というイメージ語を、意識巣から思いおこした。 同時に、レール。枕木という単語が、意識巣から、頭の中に、こぼれ落てくる。 このイメージはすぐさま、ゴーストトレインの支配者である[天宮]へ送られた。 「天宮」は木というイメージ語から、自分の体を構成するモノとの相似に愕然とした。 「木だと。誰なんだ。誰かが、私天宮に何かの信号を送っているのかもしれん。 私は長い間、眠りについていたのだ。私の覚醒におびえている者がいるかもしれん』 「天宮」はコード軌道内にいるゴーストトレインに命令する。 『ゴーストトレイン。その侵入者を食べるな。侵入者を積み込み、私のいる「大球」へ戻ってこい』 ●北の詩人は、ようやく、その場所へ辿りついていた。目の前でゴーストトレインが何かを食べようとしていた。 よく見るとゴーストトレインは、その何かを噛まずに、飲み込もうとしていた。 北の詩人にとって、飲み込これたもの(アーヘブン)の姿は、彼のイメージ脳をいたく刺激した。 北の詩人の眼から、いつしか温いものが流れていた。 「この液体は! ああ、そうだ、「涙」というんだったな」 北の詩人は独りごち、手で涙をぬぐう。 『なぜ、涙が流れるのだろう。それにこの心の奥から湧いてくる切ない気持はなんだろう』 さわりたい。 あのアー・ヘプンの体にふれてみたいと北の詩人は思う。 なぜか、北の詩人は、その物体が「アー・ヘプン」という名を持つ生合体である事を知っていた。 北の詩人の手は、ゴーストトレインの半透明々体を貫き、すでに消化器に入っているアー・ヘブンの体をなでまわした。 ゴーストトレインは、いつの間にか北の詩人が現われた事や、さらに自分の体の中の生命体をさわって泣いている事に驚いていた。 ●ゴーストトレインは、北の詩人を見た。一体どうしたのだという表情で。 『いったい、この侵入者は伺なのだろう。 かつて、大球と小球をつなぐコード軌道内にある透視層を、突き破った生命体はいなかった。それに、なぜ北の詩人が泣いているのだ』 ゴーストトレインは、不思議に思った。 「ねえ、北の詩人、君は、この生合体を知っているのか」 「いや」 北の詩人は首を振る。そして続けた。 「知らない。が、とてもなつかしい気がするんだ。この侵入者に触れてみたかったんだ」 「なつかしいだって? どんな気分々のか、俺にはわからないなあ。とにかく、俺は「天宮」さまから命令を受けている。この生物を「大球」までつれて帰れとね」 ゴーストトレインは、寂びしそうな顔をしている北の詩人に尋ねた。 「俺と、一緒に来るかね」 「いや、僕はユニコーンに乗せてもらうよ」 「そうか、それじゃ、俺は先にいくぜ」 北の詩人は、後をふりかえってユニコーンを呼んだ。 ユニコーンは、対のふたつに分かれた死体のそぱにいた。ユニコーンは無心に死体にしゃべりかけていた。 「君は、どうして、僕と一緒に実体化しなかったのだろう。僕は待っていたんだよ。いつの間にか君が僕達を追いこして、コードにはいっていたなんて……」 「ユニコーン、こっちに来てくれ」 今度は、北の詩人の声が聞こえたらしくユニコーンは、北の詩人の側にやってきた。 北の詩人の様子に驚く。 「どうしたんだい、泣いているのかい。何か、悲しいことでもあったのかい。そう泣かないでかくれよ。僕も、彼女が死んでいるのを見て驚いているんだ」 北の詩人が、心配そうに尋ねた。 「彼女だって、あのユニコーンか」 「そうなんだ。情報ユニット「ユニコーンの旅」とは、僕と彼女の小球への旅々なんだ」 「そうか。悪い事をしたんだね、僕は」 北の詩人は、また泣き出した。 「しかたがないよ。もう彼女は生き返りはしない。早く、僕の背中に乗りなよ。ゴーストトレインを追いかけるんだろう」 「頼むよ」 「でも、なせ、ゴーストトレインに乗せてもらわなかったんたい」 北の詩人は答えす、首を左右にふった。 「わかったよ、泣かないてくれよ。僕もとても悲しいよ」 ●アー・ヘブンは、ゴーストトレインの腹腔で、徐々に回復しつつあった。 傷ついた表皮は復原機能が働き、元に戻りつつあった。 アー・ヘブンは自分の体が、振動しながら移動していることに気づく。 体が空中に浮かんでいる。 空気が高密度に収斂し、動いている。 空気の構成因子が膨張し、実体化され、ゴーストトレインという一つの生体機械を作り出しているのだ。 ゴーストトレインの車体部分はほとんど古代の動物そのものであり、しかも半透明だった。 アー・ヘブンは腹腔の中にとらえられたままでいようと思った。 そうすれば、天宮の元まで、おのずと連れて行ってくれるだろう。 (続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第7回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 #封印惑星ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.04
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/60/ 源義経黄金伝説■第61回★建久三年(1192)3月13日、後白河法皇、66歳で崩御。「わが王朝と貴族の連枝を守るのだ。藤原の兼実殿のお役目ぞ」と遺言する。 後白河法皇の最愛の人、丹後局たんごのつぼね高階栄子が、藤原(九条)兼実をせかす。「それそれ、兼実殿、よいか、よーくおおききいれくだされや。猊下のお言葉です」。 「よいか、兼実殿。京都に残るすべての貴族方々に告げられよ。皆々、その連枝を以て、家伝とされ、それを子孫についでゆかれよ。またそれを以て、朕が、皇家を護るらしめよ。その連枝れんしをもって我が王朝を助けよ。まもれよ」 「坂東の族どもには、それしかないとおっしゃりますか」 「幸い、西行がはり巡ぐらせし「しきしま道」は、朕らが皇家の護りとなろうぞ。「しきしま道」和歌により、、言葉にて、我国土は護られようぞ。言葉の守りぞ。外つ国には、 断じて我が領土は、ふめぬ、、わ」 言葉による防衛網が、張られていると、後白河法皇はいうのだ。 本文編集源義経黄金伝説■第61回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 建久三年(1192)3月13日京都後白河法皇の御殿に藤原(九条)兼実が現れる。後白河法皇の最愛の人、高階栄子からの至急の呼び出しがあったのだ。彼女が丹後局たんごのつぼねである。 法皇の部屋には、病人独特のにおいが立ちこめ、香りがたかれていて、九条兼実は、むせかえりそうになった。兼実は、すでに死のにおいをかいでいる。 病床にある後白河法皇は、力なくやっと左手をあげ、「兼実、ちこうまいれ」と弱々しげに言った。 「ははつ、後白河法皇様。何かおっしゃりたきことがござりますやら」「そばに行かれよ」後宮の女帝、高階栄子が、兼実をせかす。 「朕の遺言じゃ聞いてくだされ」「、、、、」「よいか、それぞれの貴族の家は、古式ののっとり、各家々の特異技を家伝とされよ」 「それが、板東の奴輩に対抗する手でござますか」藤原兼実も、すでに藤原氏の氏の長者うじのちょうじゃになっているのだ。 「朕が遺言、よくよく聞いてくださるか。兼実殿」後白河法皇が、言った。高階栄子が、兼平をせかす。「それそれ、兼実殿、よいか、よーくおおききいれくだされや。猊下のお言葉です」。 「よいか、兼実殿。京都に残るすべての貴族方々に告げられよ。皆々、その連枝を以て、家伝とされ、それを子孫についでゆかれよ。またそれを以て、朕が、皇家を護るらしめよ。その連枝れんしをもって我が王朝を助けよ。まもれよ」 「坂東の族どもには、それしかないとおっしゃりますか」 「幸い、西行がはり巡ぐらせし「しきしま道」は、朕らが皇家の護りとなろうぞ。「しきしま道」和歌により、、言葉にて、我国土は護られようぞ。言葉の守りぞ。外つ国には、 断じて我が領土は、ふめぬ、、わ」 西行法師を始め和歌によって、言葉による国家の霊的防衛網が、張られていると、後白河法皇はいうのだ。 「これによりわが国は神と仏による鎮御国家となった」 「まずは藤原定家が先陣かと考えます」 法皇は、急に目をつぶり、静かになる、「母君、兄君。いまおそばにまいらせましょう。目宮めのみや君、萎宮なおのみや君もな」法皇は、4人目の宮、4つの宮であり、自分の兄弟の名前を呼んだ。目宮は眼が見えず。萎宮は体が動かなかったのだ。 「御家を、それぞれの家を、古式由来の技で守ってくだされや。いにしえよりの我々貴族の技わざこそ我ら貴族を守る。朕の遺言ぞ、、」 「兼実殿、、、」 「はっつ」「お、お主とは、、最後まで、、分かり合える事は、、なかった、、な」「、、」「が、頼んだぞ。わが王朝と貴族の連枝を守るのじゃ。、、それが藤原の、、」 「よいか、藤原の兼実殿のお役目ぞ」丹後局である高階栄子が、かたわらで繰り返す。 法皇の様態が変化した。「弁慶に謝ってほしい。お、お前から伝えてくれぬか、、」「弁慶どの、、ですか、、」兼実は言いよどむ。熱病にとらわれているのか、法皇は、すでに弁慶がこの世の人ではないことを忘れている。 4年前1189年文治5年4月30日に衣川でなくなっている。 「兼実殿、猊下のお言葉にあわせられよ」高階栄子が、叱咤する。 「朕は、この父は、悪人であった。弁慶お前を我が王朝の闇法師として使ってのう、許してくれ。お前の一生を犠牲にしてしまっての」 法皇は、弁慶が目の前にいるようにしゃべっているのである。兼実が弁慶に見えるようだ。兼実は、法王のいいがままにしている。 弁慶は法皇の子供だった。 「朕はな、この京都を守りたかった。あの鎌倉が武者どもに、板東の蛮人どもに政権は渡せぬぞ。血なまぐさき奴輩。京都を源頼朝や藤原秀衡に渡してなるものか」 しばらくは沈黙が続く。 「そうじゃ、西行は、西行はどこだ。崇徳上皇の霊が俺を呼んでおる。早く、早く、崇徳の霊を追い払ってくれ。のう、西行。そうだ、平泉にの霊御殿をつくる話は、、いかがすすんでおる。藤原秀衡は喜んでおるか…」 兼実は、西行になったつもりで、告げた。「西行はここにおわしますぞ。どうぞ、法皇様。経文を、経文をお唱えくだされませ」「何、経文をか。よしわかったぞ。それに西行、もし朕が亡くなれば、よいか。あの法勝寺殿の跡に葬ってくれ。くそっ、木曾義仲め」 法勝寺殿は、現在の三十三間堂あたりにあった法皇の御殿であり、義仲の襲撃によって焼き払われていた。 八角九重の塔は、八十二mの高さを誇り遠くから望見できた院政と京との象徴であったが、今はそれもない。 「法皇、安んじなされませ。やや、経文をお読みくだされ…」「おお、そうだ。そうだ」後白河は、経文を六度唱えた、そして静かに。院政最期の巨人は崩御された。 「猊下…」丹後局以下侍女たちが嘆き悲しむ。 しかし、藤原(九条)兼実は、法皇の亡きがらを前に、考える。 これで、、頼朝殿に征夷大将軍の位を与えることができる。 藤原(九条)兼実は鎌倉殿、頼朝びいきの男であった。 建久三年(1192)3月13日、後白河法皇、崩御。66歳であった。 その昔、西行は崇徳上皇の霊をしずめることで、後白河法皇の信任を得ていた。西行は、平泉に第二の御所をつくることと引き換えに、崇徳上皇の白峰神宮をつくることを約束していたのである。 (続く) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.03
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封印惑星・封印された新地球で、情報収集端子である一角獣・新機類は、天空の光矢を見る。 それは新地球の解放者、世界樹の出現する予兆であったこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1512de/6/ 封印惑星 第6回●ハーモナイザーからの派遣端子アー・ヘブンは、スパイダーネットから抜け、ユニコーンに遭遇。が ハーモナイザーのこの監視用端子に、アー・ヘブンは 同化できず、危機を感じる。 封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第6回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ●動画manga_training アー・ヘブンは意識をとり戻す。 奇妙な液体がアー・ヘブンの体をとりかこんでいる。アー・ヘブンはすばやくこの液体の成分を分析する。 塩分、鉄分、鉱物資源を多く含む液体層。それが透視層だった。 この中で生物体はやすらかに眠り、その眠りの間に、生体や生体細胞、生体情報が、すみからすみまで分析される。 アー・ヘブンは,層内には数々の星の、種々の精一構造を持つ星人の意識が浮遊しているのを読みとっていた。 それらの意識は、スパイダーネットによってつかまえられた星人の意識なのだろう。 この透視層に浮かんでいる星人の意識は、色々な事を叫びつづけている。 幻想的なイメージでー杯なのだ。そのイメージは一種、心のトリップをかもわせ、アー・ヘブンも興昧屎かった。 私も、そんな意識因子になるのか。 アー・ヘブンは、快いまどろみの中でそう感じた。 それもいいかもしれない。 ハーモナイザー末端部の個性群体に属していた時の気分に戻っていた。 まるで、羊水の中にいるようだ。 アー・ヘブンの心は、さまよっている。 それはとてもいい気分であり、、長い宇宙飛行のあとの休息、、 それに、体もバラバラに解体され…… すでに「アー・ヘプンの切り離された肉片」が解けて、同化しようとしていた。 『何をしている、アー・ヘブン』 心の奥で光るものがあり、それがまどろみをさえぎろうとする。 『アー・ヘブン、お前の使命は何だ。それを思いだせ』 その声は明らかに怒っていた。 アー・ヘブンに言いきかせている何かが、アー・ヘブンの心のどこかにいた 『その透視層の中から抜け出せ。溶液の中から逃げ出すのだ』 光の声は、そう叫んでいた。 まどろみたい、この安らかな溶液の中で。 意識が再び沈んでいきそうだった。 相反する二つの意志。 アー・ヘプンの心はまっ二つに分裂する。 そんな気がする。 どうすればいいのか。 自問自答する。 意識の中の光が、働いていた。 『そこから、はい出せ」 アー・ヘブンは、自分の球体に内包している全ての触手を、全開した。 3番目の触手が、透視層の外壁を一気に突き破っていた。 破れ口は拡がり、溶液は流れ出て、勢いにのって、アー・ヘブンも押し出された。 溶液に含まれている種々の星入の意識が、コードの内壁に拡がる。 それらはバチバチと音をたてて、コード内に張りめぐらされた「天宮」の神経糸を刺激した。 アー・ヘブンは、しばらく倒れていたが、肉体としてなんとか立ちあがる。 アー・ヘブンはの視覚組織は、自分の目の前にいる生物体を読み取っていた。、 その生物体はたしか、、、、。 天宮に関する知識を、プレイバックする。 「そうだ、新機類か」 アー・ヘブンは、思い出していた。 この新機類、ユニコーンは、ハーモナイザーが作り出したものだ。 そう確か、ハーモナイザーが天宮を監視するために、新機類と呼ばれるユニコーン型の観測機械を大球上に配置したはずだ。 が、何かが少し違っている。 アー・ヘブンは、ユニコーンに意識を送り込み、意識を融合しようと努めた。 しかし、アー・ヘブンの意識は、はじきかえされた。 やはり変だ。 ユニコーンの意識に同化できない。 ハーモナイザーの意識の一部であるならば、たやすく「アー・ヘブン」と内部で意識融合できるはずガのだ。 が、意識の融合現象は、おきなかった。 あきらかに、そのユニコーンは何ものかに加工されたに違いなかった。 アー・ヘブンはゆっくりと、ユニコーンヘ近づく。 それより先に、ユニコーンの方がアー・ヘブンヘ接近してくる。 ユニコーンは勢いづいていた。ユニコーンの角がキラリと光っている。 眼には憎しみの感情があふれている。 感情だと! それも憎しみの! アー・ヘブンには理解しがたかった。 憎しみの感情がまだ残っているのか このような感情は、ハーモナイザーの世界には存在しないはずだ。 憎しみの感情が、こんきに原始的な形で存在しているなんて! アー・ヘブンは、未知の異なる存在に対する反応をおこしていた。 ユニコーンは、あきらかに、私アー・ヘブンを抹殺しようとしている。 「抹殺!」 何んという、原始的な感情なのだろう。 が、アー・ヘブンも古い本能を思い出していた。 それは、先刻、透視層をつきやぶった時から、徐々に、アー・ヘブンの心を浸しつつあり、自分でも統禦できないものだった。 「身を守る」という概念が、古い意識の下から蘇ってきていた。 ユニコーンの角は、アー・ヘブンの第一表皮に接触した。 瞬時、アー・ヘブンは自らの体内エネルギーを解き放っていた。 ユニコーンは動きを止め、胴体の真中からばっくりと二つに割れた。 腹腔から、ずるっと内臓があふれ出た。 湯気をあげているそれは、機械内臓ではなく、有機体のそれだった。 アー・ヘブンは第一触手を、ユニコーンの体内に這わせ、神経記憶を読みとろうとした。 『彼女が目ざめた時、すでに連れはいなかった。彼女は彼と旅をするはずだった。 どうやら「北の詩人」という存在とすでに旅立ったらしい。 彼女、ユニコーンは、彼「北の詩人」を求めて、大球をさまよった。 が、大球では見つけることができなかった。 しかたなく、彼女は、コード内に侵入し、異物とそうぐうしたのだ:・・ 「この記憶は……」 アー・ヘブンがユニコーンの記憶に驚いた一瞬、危険という概念が、電撃の様に体を貫いていた。 巨大な物体に、アー・ヘブンははじき飛ばされていた。 (続く)●封印惑星(ハーモナイザーシリーズ02)第6回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ●動画manga_training#封印惑星ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.01
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/59/ 源義経黄金伝説■第60回 建久元年(一一九〇)三月 京都 落ち込んでいる、師匠の文覚を明恵(みょうえ)と戒名した夢見がたづねる。 「この手で 西行をあやめたのだ。頭にこびりつく」●前説ー 後白河法皇の前に、歌の名人、藤原定家ふじわらていかが呼ばれている。「西行の名前を残して起きたいのだ」「西行様の歌を後世に残す、麻呂も賛成でございます、で、いかかななりあいといたしましょうや」「よいか、お主が編纂をしておる歌集に、西行の歌を数多く入れるのだ。 西行法師を歌聖人としたい。それが、西行に対する朕のせめての償いないとなろう。 わが国の「しきしま道」の戦士としての。西行の名を高めよな」 後白河法皇の頭の中には、色々な今までの西行に対する命令がうづまいていた。「まあ、よい、奥州藤原に対する絆の一つが消えたが、すでに平泉が 源頼朝のものとなっては、、後は、頼朝にたいする、いや、板東に武家のたいするわが王家の 仕組みをどうすすか」西行をうしなった後を、誰でうめようか。と後白河法皇は考えているのだ。 が、法王は、弟、崇徳の霊にも対応をせねばならなかった。 ●前説ー源義経黄金伝説■第60回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 建久元年(一一九〇)三月 京都後白河法皇の前に、歌の名人、藤原定家ふじわらていかが呼ばれている。「西行の名前を残して起きたいのだ」 「西行様のおお名前を、麻呂も賛成でございます、で、いかかな手立てを施しましょうや」、 「よいか、お主が編纂をしておる歌集に、西行の歌を数多く入れるのだ。 歌聖人としたい。それが、西行に対する朕のせめての償いとなろう。 わが国の「しきしま道」の戦士としての。西行の名を高めよな」 法皇の頭の中には、色々な今までの西行に対する指令がうづまいていた。「まあ、よい、奥州藤原に対する絆の一つが消えたが、すでに平泉が 源頼朝のものとなっては、、後は、頼朝にたいする、いや、板東に武家にたいする 仕組みをどうするか」西行をうしなった後を、誰でうめようか。と後白河は考えている。 が、後白河法皇は、弟、崇徳上皇の霊にも対応をせねばならなかった。 西行が企み、それは、平泉を陰都として、崇徳上皇を祭り、北の都の祭りとし、頼朝に対応される事であったが、頼朝が、西行と法王の企みすべてを打ち砕いていた。奥州平泉は先年(1189年)文治5年に頼朝の手におちている。 おう、身震いがした、 崇徳上皇が悪霊か、、 後白河法皇は遠く讃岐の方を見た。後白河と崇徳とは、兄弟と記録されているが、崇徳は本来の兄ではない、、 それが憎しみを深めた。そのあたりの事情は西行法師がよく理解していた。 ■2 建久元年(一一九〇)三月 京都 文覚が、自分が勧進を行った京都神護寺じんごじにて打ち沈んでいる。お師匠様、いかがなされました」夢身、今は明恵みょうえと名前を改めている。 「おう夢見か、ワシはな。この手で西行をあやめたのだ。それがのう、頭にこびりつく。また。ワシに、あやつは、大きな仕掛けを残していくよったのだ。いわば、ワシをあやつらの仲間に抱きいれるような、、」 「師匠様が、西行様のたくらみの手助けをなさる」「そうだ」文覚にとっては、めずらしく煩悶していりのだ。それゆえ、弟子の夢見、明恵の、その文覚の言葉を聴いての動揺も気づいではいない。夢見は、数ヶ月前の事を思い起こしていた。 ■仏教王国、平泉陥落後のち数ヶ月後、西行が、京都神護持をおとづれていた。「夢見どの、いや今は明恵殿とお呼びしなくてはなりませんか。文覚殿はおられるか」「師匠様は、今留守でございますか。何かお伝えすべき事がございましたら、私にお伝え下させませ」「あ、いや、夢見殿がおられれば十分だ」 夢見は、西行を部屋に入れている。急に、西行が、夢見に対して頭を下げていた。「夢見殿、この後の事、お願いいたすぞ」「え、何か、」 「この日の本のことだ、たくすべきは、おぬししかあるまい」西行は、夢身を顔をしっかりと見て、断言した。「また、大仰な、私は文覚の弟子でございます。そのような事はお師匠様に、お伝え下さい」「あいや、夢見どのおぬしではないとな。文覚殿では無理なのだ」 夢見は、無言になり、顔を赤らめた。神護寺は、京都の山中にあり、ふきあげる風が寒々とする。山並みが遠く丹後半島まで続いている。遠くで獣の鳴き声が響く。 「この国は今変わろうとしておる。が、わしの命も、もうつきよう」しみじみと言った。 「この国を仏教王国にしていただきたい。神と仏が一緒になったな。わしが重源殿とはかり、東大寺の200人の僧を伊勢参拝させたのだ。この源平の戦いの後、どれだけの血がながれていたか。夢見殿のお父上もまた戦でなくなれれていよう」 「それは、いささか、私の手には、重もうございます」「いあや、鎌倉の武家の方々にナ、仏教を思い至らしていただきたい」「それは、お師匠様が」 「いや、わしと文覚殿の時代ももう、おわろうて。武士の方々を仏教に結縁させていただきたい。そいて、この世の中すべてうまく回る仕組みを作っていただきたい」 「仕組みとは」「たとえば、貴族の方々は、遠く桓武帝がおつくりになった立法を守り、行ってきた。これから新しく規範が必要なのだ。世の基準をつくり、武家、庶民が豊かにくさせる世の中にしていただきたい。 いや、これは、西行の戯言と思っていただきたいが、源氏の後には 北条殿が、この世の中を動かすであろう」 「北条様は、しかし、源氏の家臣ではございませんか。また、鎌倉には大江広元様がおられましょう」 西行は冷笑した。「ふつ、大江殿がどこまで、お考えかわからぬぞ。果たして、世の動きを作りは源頼朝の大殿か、大江殿か」 西行は、ふっと考えている。この諧謔さが、師匠の文覚の気にいらぬのだ。 「よいか、夢見殿、和が話したことは、文覚のみは内緒ぞ」 「二人の秘密になるのじゃ。北条殿を助け、その世の仕組みと基準である、理ことわりを作られるのだ」 「それは東大寺の重源様、栄西様のお仕事では、、」 「あの東大寺の方々には、他のやり方がある。夢身殿には夢見殿の考え方と生き方が ござろうて」西行のと明恵の会話は続いた。このことは、文覚は知らない。 ■ 続く)20191128改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.03.01
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/58/ 源義経黄金伝説■第59回 1190年(建久元年) 葛城弘川寺桜吹雪の降るなか 荒法師文覚がと繰り出す八角棒を擦り抜け、文覚を 西行の拳がついている。 源義経黄金伝説■第59回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 1190年(建久元年) 葛城弘川寺 荒法師、文覚が、次々と繰り出す八角棒を擦り抜け、文覚の体が浮いた瞬間を西行の拳がついているのだ。 文覚が八角棒で次々と颶風を起こし、西行の体を狙うが、西行は風のように擦り抜けている。回りで見ている文覚の部下たちも、二人の動きの早さに驚いている。七十才の老人同志の争いとは見えぬ。 ここ、河内葛城の山を背景に、桜吹雪の降るなかで、二匹の鬼が舞い踊っている。一瞬、その時がとまり、桜の花びらが、どうと上に吹きあげられる。 一瞬、文覚の一撃が、西行の胸に深々ととらえた。突き刺さっている。常の西行ならば、避けられないものではない。西行の体は地に付している。文覚は西行をだきおこす。 「これで、気が済まれたか、文覚殿」西行はいきたえだえに言う。 「なぜじゃ、西行。なぜ、わざとおれにやられた」「ふふう、お主に対する義理立てかな。ふふう」ふと、西行のある歌が文覚の頭を掠めた。『願わくば花のしたにて春しなむその如月の望月のころ…』 「くそっ、西行、いやな奴だな、お主は。最期まで格好をつけよって、自らの死に自らの歌を合わせよったか」 「そうだ、しきしま道のものならば、、文覚殿、我々の時代も終わりぞ」「清盛殿、死してすでに七年か」文覚、西行、清盛は、同じ北面の武士の同僚であった。 「文覚殿、最後に頼みがござる」「頼みじゃと、さては貴様、俺にその約束を守らせるために、わざと…」 「義経殿の遺子、義行殿に会うことがあれば、助けてやってくれぬか」「義行をな、あいわかった」文覚は顔を朱に染めている。 「ありがたい。俺はよき友を持った」西行よ、安んじて璋子たまこ様の元へ行かれよ」 「おお、文覚殿、その事覚えていたくだされたか」「しらいでか」西行は、一瞬思い出している。 ●「西行殿、よく来てくだされた。この璋子たまこの最期の願を聞いてくだされ」「璋子様、最期とは何を気弱な事を」 待賢門院璋子けんれいもんいんたまこが病床に横たわっている。この時代の人々は、この世のものならず美しい姫君を、竹取物語にちなんで「かぐや姫」と呼んだ。白河法皇にとってのかぐや姫は璋子だった。そして西行の悲恋の対象である。「西行殿、自分の事はよくわかります。我が入寂せし後、気がかりな事ございます。その後の事を西行殿におまかせしたいのじゃ」「お教えくだされ」西行は、やつれぐあいに、感がきわまり声がかすれる。「璋子様。」 「我皇子たちのことじゃ」「、、、、」 「影でささえてくだされや。璋子の最期の願じゃ」璋子は、西行の手をしっかりとつかんでいる。が弱弱しいのが、西行にはわかる。思わず、頬をつたわるものがあった。「わかりました。璋子様、我命つくるまで、お守りいたしましょう」宮廷恋愛の果て、待賢門院璋子のため、西行は、2人の皇子を守ろうとした。 2人の皇子とは、19歳の折りの皇子、後の崇徳法皇と、27歳の折の皇子、後の御白河法皇である。待賢門院璋子は、鳥羽天皇の中宮であった。この親子兄弟対立相克劇が、保元平治の乱の遠因となる。 ● 最期に、西行は、目を開け、文覚を見た。そして、懐から、書状を出す。「文覚殿、頼朝殿への書状だ。またワシの最期、奈良の重源殿に伝え下され」西行は目を閉じた。「く、」 文覚は膝を屈した。しばらくは動かない。やがて、面をあげすくと立ち上がった。 「皆、この寺を去るのだ」「文覚殿、せめて仲間の死体を片付けさせてはくれぬか」「ならぬ、鬼一らが手の者、こちらへ向かっていよう。すぐさま、ここ弘川寺を立つのだ」「それは、無体だ」「無体だと。俺は今、友達を自らの手で殺し、嘆き悲しんでおる。味方だとて、容赦はせぬ」「文覚殿、我々を相手にされるというか」「おお、お主らが、望むならばな」 「文覚殿、お主は頼朝殿のために働いていたのではないのか。それならば、最後に西行から黄金のありかを聞くべきだったのではないか。先刻の西行の最後の一言、その書状、何か意味があるのでは…」文覚は、きりりと眦を聖たちの方に向ける。 「ふふう、そうだな。お主ら、義経殿が遺児のことを聞いてしまったな。やはり、ここで始末をつけねばなるまいのう」文覚は、残りの聖たちの方に、ゆっくりと八角棒を向けた。 半刻後、鬼一法眼おにいちほうがんの率いる山伏の一団、結縁衆が、弘川寺の周りに集まってい た。「血の匂いがいたします」偵察の一人が言う。「遅うございましたか」山伏たちは、西行の草庵をあうちこち調べる。「襲い手たち、すべて死に耐えてこざる」 数人の体や首に、桜の枝が、ふかぶかと突き刺さっている。 桜の枝が朱に染まり生々しい。「ふふ。さすがは西行殿。殺し方も風流じゃ」結縁衆のひとりがつぶやいた。 「せめて西行様がこと、我らの間で語り継ぎましょうぞ」「おう、そうだ。それが我ら山伏の努めかもしれん」 「それが、供養でございましょう。西行様がこと、義経様がこと」山伏たちは、草庵の後を片付け始めた。鬼一はひとりごちた。「さては、聖たちがしわざ、文覚殿か、重源殿か…」 建久元年(一一九〇)二月一六日、河内国弘川寺にて西行入滅。 ■西行の入寂後、すぐさま、東大寺の重源は、ある命令を発した。 再建中の大仏殿の裏山が、切り崩しである。その裏山に隠されていたものについては歴史は語っていない。西行と東大寺がどのような約束があったかは不明である。 西行が、その最期に、文覚に託した手紙も不明である。が、頼朝はその書状を見て青ざめた。 かくして、西行も歴史の中に、人々の記憶に伝説として生きる事となった。 (続く) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.02.28
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CP封印惑星・封印された新地球で、情報収集端子である一角獣・新機類は、天空の光矢を見る。 それは新地球の解放者、世界樹の出現する予兆であったこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1512de/5/ 封印惑星第5回●覚醒したる「天宮」は、飛来する巨大木「ハーモナイザー」の 使者「アー・ヘブン」を敵と感知し、大球と小球間の スパーダーネットによって捕獲・破壊しょうと。 封印惑星(ハーモナイザー02)第5回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ●http://www.yamada-kikaku.com/ ユニコーンと北の詩人が歩みはじめた、その地下、つまり「大球」の奥深く 存在する純粋思考体、新しく目覚めたばかりの「天宮」は異物の飛来を気にやんでいた。 「大球」の鉄表面でも、大いなる生態系の変化が、そしてまた、起こっている。 つまりは、すでに大球の表面に生棲していた[ハーモナイザーからの監視者]=ユニコーン達、新機類、はゴーストトレインが喰いつくしている。 覚醒したる「天宮」は、情報ユニットであり生物体である「ゴーストトレイン」を実体化させる。同時に、その「ゴーストトレイン」の内部感覚を共有している。 つまり、「天宮」イコール「ゴーストトレイン」の知覚であった。 そして、不思議なことに、同じく実体化させた情報ユニットである「ユニコーン」と「北の詩人」の心情、感覚も理解して、共有していた。 つまりは、覚醒したる「天宮」は、「大球」の鉄の表面には、存在しえない生物体を実体化させ、「大球」「小球」の生命生態系を、大いに改革しょうとしている。 まるで、この封印惑星が別の星になるように、、 「ゴーストトレイン」が、何匹めかのユニコーンを倒した時、「大球」につながる「小球」に存在する大いなるハーモナイザーの監視中心機構・つまりはユニコーンの元締めである「生命球」から、ハーモナイザーへの危険信号が宇宙にむかい放たれたのを、「天宮」は気づいている。 さらに、むずがゆさとでも呼べばいいのだろうか、ある種の奇妙な感覚を「天宮」の予知能が感じていた。 目覚めたる「天宮」にとっての「敵の存在」をである。 ハーモナイザーの監視中心機構・つまりはユニコーンの元締めである「生命球」以上の存在。 ハーモナイザー自体が?、しかし、今感じる脅威は、そうではなかった。 「天宮」、今は なぜか、その気持は、新機類を喰いつぶした時のゴーストトレインの様な荒々しい気持とは異なっている。 何か細やかな手ざわりを持つもの。 そう、なつかしい人?の手?のイメージが、天宮の全感覚の中にひろがっていく。 人? 手? それは、何だ。 「天宮」には記憶にない。あるのかの知れないが、だめだ。思い出せない。 やわらかき手。それは、、 そして人間のイメージが、、。 しかし、また、天宮は、そのやわらかい手によってにぎりつぶされるイメージがある。 「なぜだ。自分は滅びるかもしれない。新しき来るものによって」、 そんな予感を、覚醒したばかりの「天宮」は感じているのだ。 ●ハーモナイザーの使徒、宇宙空間飛翔体、「アー・ヘブン」 は、急に襲ってきた「粘性の網」に包まれている。 胞子の持つ推進力が、この粘着力のある網に対してはまったく作用しないのだ。 あらゆる方向に動くことは動くのだが、一定の距離に達すると、反作用でまた元の場所へ戻ってしまう。 つまりは、「アー・ヘブン」はみごとに敵の手中に陥ったようだ。 ここは「敵」なるものの勢力圏の中である。 「敵」イコール、ハーモナイザーに敵対するモノたちである。 ●恒星「タンホイザー=ゲイト」の中心部、緑色の液体で充たされた空間。 その場所に浮遊する巨大な″木″。 ″木″は意思の集合体であり、「ハーモナイザー」と呼ばれる。 ●粘性のネットは、俗に「スパイダー・ネット」と呼ばれている。 「天宮」は、小球をチューナー部分として使い、自分の膨大な情報ユニットが持つ、 色々なイメーージを宇宙にまき散らし、そのイメージ像に、興味を持った宇宙船を呼び寄せていた。 そして、その宇宙船を、「大球」と「小球」を結ぶ宇宙空間に存在するコードから発射される「スパイダーネット」でからめとっていた。 ●「天宮」は、その船のメインデータバンクや乗員から全宇宙の知識を盗み出していた。 「天宮」は、自分の存在を検証しているのだ。 自分とは何か。 そして何のために存在するのか。 そして大なる覚醒の意味合いは、何なのか? ●「アー・ヘブン」の乗った宇宙空間移動胞子は、ゆっくりとコードヘ引き寄せられていた。 ハーモナイザーの使徒、アー・ヘブンは、自分の分かれている位置をじっくり観察する事にする。 まっ黒な表面で包まれている「大球」のまわりをゆっくり「小球」がまわっている。小球は大球の何分のIかの大きさで衛星のようだった。 ハーモナイザーから「アー・ヘブン」が受けた睡眠学習によれば、「大球」は、遠い昔、ハーモナイザーと争い、敗れたとの事。 その時、「大球」はみずからの意志で、大球表面上の生き物をねこそぎ滅ぼした。 さらに大球が黒い表面、鋼鉄で被われているのは、ハーモナイザーによって封印されたからだ。 宇宙の邪悪なる星として。 睡眠学習情報を再生中のアー・ヘープンの体にいきなり激しい衝撃が伝わる。 アー・ヘブンの意識は停止した。 ついに胞子は、スパイダーネット」によってコードまでたぐり寄せられ、凄まじい圧力を加えられた。 「宇宙空間移動胞子」は圧力で消滅しアー・ヘブンは裸のままとり残される。 アー・ヘブンのまわりを包み込んでいた胞子の構成要素は瞬時に消え去っていて、 破片を分析しようとしてコードからはりだした、「天宮」の「感覚枝」は、むなしく空をがでた。 「感覚枝」は天宮の、実在化する神経細胞であり、手の役割をする。 感覚枝は、代りに、とり残されたアー・ヘブンの体をとらえた。 コードの一部に穴が開き、感覚枝はアー・ヘブンをその穴の中へ引きずり込む。 感覚枝は、アー・ヘプンを、巨大なプールヘと送り込む。 このプールは、コードにある透視層で、生命体が解析される場所だった。 (続く)●封印惑星(ハーモナイザー02)第5回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ●http://www.yamada-kikaku.com/ #封印惑星ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.02.27
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/57/ 源義経黄金伝説■第58回 1190年(建久元年)春、桜の花の舞い落ちる時、 河内国葛城弘川寺 西行庵桜の枝を折、「準備は調いましたぞ。そこにおられる方々、出てこられよ」と西行は言う。 ●前説ー 桜の枝をボきボキと折り、はなむけのように、枝を土に指し始めた。ひとわたり枝を折り、草かげの方に向かって、話しかけた。「準備は調いましたぞ。そこにおられる方々、出てこられよ。私が、西行だ。何の用かな」音もなく、十人の聖たちが、草庵の前に立ち並んでいた。●前説ー 源義経黄金伝説■第58回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 1190年(建久元年) 河内国葛城弘川寺葛城の弘川寺に西行はいる。 背後には葛城山脈が河内から紀州に南北に広がり河内と奈良古京の道をふさいでいる。 庵の文机に向かい、外の風景を見ていた西行は、いにしえの友を思い起こしていた。平泉を陰都にする企ては、昨年の源頼朝の「奥州成敗」により、ついえていた。おもむろにつぶやく。 「我が目的も、源頼朝殿の手によって潰えたわ。まあ、よい。源義経殿、またその和子、源善行殿も生きておられれば、あの沙金がきっと役に立つだろう」西行は、崇徳上皇のため、平泉を陰都にしょうとした。また、奥州を仏教の平和郷であり、歌道「しきしま道」の表現の場所にしょうとした。それが、鎌倉殿、源頼朝の手で費えたのである。 西行はぼんやりと裏山の方、葛城山を見つめている。季は春。ゆえに桜が満開である。 「平泉の束稲山の桜も散ったか。俺の生涯という桜ものう……」桜の花びらが散り、山全体が桃色にかすみのように包まれている。「よい季節になったものだ」 西行はひとりごちながら、表へ出た。何かの気配にきずいた西行は、あたりをすかしみる。 「ふふつ、おいでか?」と一人ごちる。 そして、枝ぶりのよい桜の枝をボきボキと折り、はなむけのように、枝を土に指し始めた。ひとわたり枝を折り、草かげの方に向かって、話しかけた。 「準備は調いましたぞ。そこにおられる方々、出てこられよ。私が、西行だ。何の用かな」 音もなく、十人の聖たちが、草庵の前に立ち並んでいた。「西行殿、どうぞ、我らに、秀衡殿が黄金のありか、お教えいただきたい」「が、聖殿、残念だが俺らの道中、悪党どもに襲われ、黄金は、すべて奪い去られてしもうた」「ふつ、それは聞けませぬなあ。それに西行殿は、もう一つお宝をお持ちのはず」 「もう一つの宝とな。それは」西行の顔色が青ざめた。「そうじゃな、秀衡殿が死の間際に書き残された書状。その中には奥州が隠し金山の在りかすべて記していよう」 「よく、おわかりだな。が、その在りかの書状のありかを、お前様がたにお教えする訳にはいかぬよ」「だが、我らはそういう訳にもいかん」「私も、今は亡き友、奥州藤原秀衡殿との約束がござる。お身たちに、その行方を知らす訳にはいかぬでな」 「西行、抜かせ」聖の一人が急に切りかかって来た。 西行は、風のように避けた。唐突にその聖がどうと地面をはう。その聖の背には大きな桜の枝が1本、体を、突き抜けている。西行、修練の早業であった。「まて、西行殿を手にかけることあいならぬ」片腕の男が、前に出て来ている。「さすがは、西行殿。いや、昔の北面の武士、佐藤義清殿。お見事でござる」西行は何かにきづく。「その声は、はて、聞き覚えがある」 西行は、その聖の顔をのぞきこむ。「さよう、私のこの左腕も御坊のことを覚えてござる」「ふ、お前は太郎左か。あのおり、命を落としたと思うたが…」 いささか、西行は驚いた。足利の庄御矢山の事件のおりの、伊賀黒田庄悪党の男である「危ういところを、頼朝様の手の者に助けられたのじゃ。さあ、西行殿、ここまで言えば、我々が何用できたか、わからぬはずはありますまい」「ふ、いずれにしても、頼朝殿は、東大寺へ黄金を差し出さねばのう。征夷大将軍の箔が付かぬという訳か。いずれ、大江広元殿が入れ知恵か」西行はあざ笑うように言い放った。 「西行殿、そのようなことは、我らが知るところではない。はよう、黄金の場所を」「次郎左よ、黄金の書状などないわ」「何を申される。確か、我々が荷駄の後を」「ふふう、まんまと我らが手に乗ったか。黄金は義経殿とともに、いまはかの国にな」 「義経殿とともに。では、あの風聞は誠であったか。さらばしかたがない。西行殿、お命ちょうだいする。これは弟、次郎左への手向けでもある」「おお、よろしかろう。この西行にとって舞台がよかろう。頃は春。桜の花びら、よう舞いおるわ。のう、太郎左殿、人の命もはかないものよ。この桜の花びらのようにな」 急に春風が、葛城の山から吹きおち、荒れる。つられて桜の花片が、青い背景をうけて桃色に舞踊る。 「ぬかせ」 太郎左は、満身の力を込めて、右手で薙刀を振り下ろしていた。が、目の前には、西行の姿がない。「ふふ、いかに俺が七十の齢といえど、あなどるではないぞ。昔より鍛えておる」恐るべき跳躍力である。飛び上がって剣先を避けたのだ。「皆のものかかれ、西行の息の根を止めよ」 弘川寺を、恐ろしい殺戮の桜吹雪が襲った。桜の花びらには血痕が。舞い降りる。 西行庵の地の上に、揺れ落ちる桜花びらは、徐々に血に染まり、朱色と桃色がいりまじり妖艶な美しさを見せている。「まてまて、やはり、お主たちには歯が立たぬのう」大男が聖たちの後ろから前へ出てくる。西行は、その荒法師の顔を見る。お互いににやりと笑う。 「やはりのう、黒幕はお主、文覚殿か」「のう、西行殿。古い馴染みだ、最後の頼みだ。儂に黄金の行方、お教えくださらぬか」西行はそれに答えず、 「文覚殿、お主は頼朝殿のために働いていよう。なぜだ」「まずはわしが、質問に答えてくれや。さすれば」「お前は確か後白河法皇の命を受け、頼朝様の決起を促したはず。本来ならば、後白河法皇様の闇法師のはず、それが何ゆえに」西行は不思議に思っていた。文覚は、後白河法皇の命で頼朝の決起を促したのだ。 「俺はなあ、西行。頼朝様に惚れたのだ。それに東国武士の心行きにな。あの方々は新しき国を作ろうとなっておる。少なくとも京都の貴族共が、民より搾取する国ではないはずだ。逆にお主に聞く。なぜ西行よ、秀衡殿のことをそんなにまで、お主こそ、後白河法皇様のために、崇徳上皇のためにも、奥州平泉を第二の京都にするために、働いていたのではなかったのか。それに、ふん、しきしま道のためにも、、」 「ワシはなあ、文覚殿。奥州、東北の人々がお主と同じように好きになったのだ。お主も知ってのとおり、平泉王国の方々は元々の日本人だ。京都王朝の支配の及ばぬところで、生きてきた方々。もし、京都と平泉という言わば二つの京都で、この国を支配すれば、もう少し国の人々が豊かに暮らせると思うたのだよ」文覚は納得した。 「ふふ、貴様とおれ。いや坊主二人が、同じように惚れた男と国のために戦うのか」文覚はにやりと笑う。 「それも面白いではないか、文覚殿。武士はのう、おのが信じるもののために死ぬるのだ」西行もすがすがしく笑う。「それでは、最後の試合、参るか」文覚は八角棒を構えた。西行は両手を構えている。八角棒は、かし棒のさきを鉄板で包み、表面に鉄びょうが打たれている。「西行、宋の国の秘術か」 「そうよ、面白い戦いになるかのう」(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所作 ●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube #義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.02.27
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/56/ 源義経黄金伝説■第57回★1189年 文治5年平泉王国の焼け跡を馬で見回る二人の姿があった。 源頼朝と大江広元である。西行に渡した銀作りの猫の像を発見する。 ●前説ー太陽の光を受けて、頼朝の眼をいる輝きが焼け跡にあった。これは…。頼朝は、その土を触ってみた。何かが土中から姿を現す。それは、猛火にも拘わらず、溶け掛けた銀作りの猫の像だった。見覚えがあった。「大殿様、その像は…」 広元が不審な顔をしている頼朝に尋ねた。頼朝は3年前の、鎌倉での西行法師の顔と話を思い起こしていた。「西行め、こんなところに…、やはり」 頼朝は悔しげに呟いている。●前説ー源義経黄金伝説■第57回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 1189年文治5年 平泉王国 平泉王国の焼け跡を馬で見回る二人の姿があった。源頼朝と大江広元である。 文治五年(一一九六)八月二二日、頼朝の「奥州成敗」で、実質上日本統一がなったといえる。大和朝廷の成立後も奥州は異国であり、異国であり続けた。 二人は、中尊寺のところに来ていた。この寺跡は焼け残っている。見上げる頼朝は、感動していた。「おお、広元、この平泉王国の富、さすがというべきか」「ははっ、聞きしに勝る都城でございます」 西行がいった通りだと頼朝は考えていた。平泉は仏教王国だった。 なにしろ、源頼朝は、伊豆に流されて以来、毎日毎日読経ばかりだったのである。心根に仏教教典が染み付いている。空で経文がいくらでもいえるのだ。 奥州藤原氏に対するやっかみの心が、頼朝に擡げてきた。 (こやつら奥州藤原氏にだけは、負けたくない。私が日本の統一者だからだ。私が日本一の武者の大将なのだ。それならば、私の町鎌倉にもこのような寺が必要だ。) 「このような寺を鎌倉に作るのじゃ。鎌倉が、都や平泉に劣ることあれば、われらが坂東武者、源氏の恥じぞ。この平泉におる職人共をすべて鎌倉に連れ帰り、寺を建てるのじゃ」「心得ました。この平泉にある寺の縁起、すべて書き出し、我が手に提出致しますよう命じてございます」 頼朝の願いどおり『鎌倉には、平泉の寺院を模倣した寺が建てられた』が、それは平泉には及ばない。所詮は、平泉の寺院のコピーでしかないのだ。コピーは本物をこえることはできない。 やがて、頼朝は、目下気になっていることを聞いた。「泰衡が弟、忠衡、発見できぬか」「いまだ発見できませぬ」広元は残念そうに答えた。「ええい、忠衡がおらねば、黄金の秘密一切わからぬとは」 古代東北の地、中でも気仙地方は、世界でも最大級の豊かな金鉱を有していた。今出山金山、氷上山の玉山金山、雪沢金山、馬越金山、世田米の蛭子館金山などである』 頼朝はいらついている。(この国を攻めたは、実は奥州黄金を手に入れることぞ。この国の王には黄金が必要なのだ、あの京都を凋落するのは黄金が一番なのだ)「国衡も見つからぬのか」「いまだに姿が見えませぬ」「ええい、国衡もいないとならば、奥州の金を手に入れたことにはならぬ。されば何のための奥州征伐ぞ」 怒りの目で、頼朝はあちこちを見回している。その時、何かがキラリと光り頼朝の目をいた。「あれは…」 頼朝が、小高い台地にある焼け跡に目を移した。あきらかに何ヵ月か前の焼け跡である。 二人は高館の跡まで馬を走らす。 「この場所が、義経殿が最期を遂げた場所でございます」 広元が冷静に告げていた。「義経が死に場所か……よし、少しばかり見て行くとするか」 その頼朝の目には、涙がにじんでいる。頼朝は馬を、その台地に乗り上げ、ゆっくりと馬から降りた。その場所から崖が北上川へと急に落ち込んでいて、東稲山も間近に見える。頼朝はその風景を見ながら思った。 「目の前のあの山が東稲山でございます。西行殿が愛でた桜山です」 (義経、なぜ私の言うことを聞かなんだ。俺は武士の世を作ろうとしたのだ。それを後白河法皇などという京都の天狗に操られよって…。我が兄の心根、わからなんだか。やはり母親の血は争えぬか)頼朝は母常盤の血を引いていた、やさしい、さびしげな義経の顔を思い浮かべていた。(あのばか者めが…) 太陽の光を受けて、頼朝の眼をいる輝きが焼け跡にあった。 これは…。 頼朝は、その土を触ってみた。何かが土中から姿を現す。 それは、猛火にも拘わらず、溶け掛けた銀作りの猫の像だった。見覚えがあった。 「大殿様、その像は…」 広元が不審な顔をしている頼朝に尋ねた。頼朝は3年前の、鎌倉での西行法師の顔と話を思い起こしていた。 「西行め、こんなところに…、やはり」 頼朝は悔しげに呟いている。「では、その猫の像は、あのおり西行にお渡しなされたものではございますか」「そうだ」「やはり、西行は後白河法皇様のために…」 「いや、違うだろう。西行は義経を愛していたのであろう。まるで自分の子供のようにな…」 頼朝は遠くを思いやるようにぽつり述べた。広元はその答えに首をかしげていた。 思い出したように源頼朝が告げた。「平泉中尊寺の寺領を安堵せよ」源頼朝は急に大江広元に命令を下していた。 源頼朝は信心深い性格だった。三二歳で伊豆で旗を揚げるまで、行っていたことと言えば、源氏の祖先を祭り、お経を唱えることだけだった。まさに、日々、お経しか許されていなかった。毎日十時間の勤行は、頼朝の心に清冷な一瞬を与えていた。神、仏が見えたと思う一瞬があるのだった。この一瞬、頼朝は思索家と思えるものになっていた。 頼朝は、自らの行っている幕府作りが日本の歴史上、大きな転換点になるとは考えてもいる。板東の新王、ついに平将門以上の存在になった。 源氏の長者が、何世紀にもわたって成敗できなかった奥州も我が手にした。彼の考えていたのは、武家が住みやすい世の中を作ることのみであった。 ■7 1189年文治5年京都 京都の後白河法皇御殿にも平泉落城の知らせが届く。 「頼朝、ついに平泉へ入りました」関白,藤原(九条)兼実が後白河法皇に悲しげに報告した。 「そうか、しかたがないのう。平泉を第二の京都にする計画潰えたか。残念だのう」「せっかく夢を西行に託しましたが、無駄に終わりました」「が、兼実、まだ方法はあろう」後白河は、また、にやりとする。 「と、おっしゃいますと…」 不思議そうに、兼実は問い返す。 (いやはや、この殿には…、裏には裏が、天下一の策謀家よのう。平泉を第二の京都にできなかったは残念だが、次なる方策は) 「鎌倉を第二の京都にすることだ。源氏の血が絶えさえすれば、京に願いをすることは必定。まずは頼朝を籠絡させよう。さらに頼朝が言うことを聞かぬ場合は…」後白河法皇の目は野望に潤んでいる。 「いかがなさいます」「義経が子、生きていると聞くが、誠か」「は、どうやら、西行が手筈整えましたような」 「その子を使い、頼朝を握り潰せ。また、北条の方が操りやすいやもしれぬ。兼実、よいか鬼一法眼に、朕が意を伝えるのだ」笑いながら、後白河は部屋に引き込んだ。兼実は後に残って呟く。 「恐ろしいお方だ」兼実は背筋がぞくっとした。 20131016改訂(続く)Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.02.25
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CP封印惑星・封印された新地球で、情報収集端子である一角獣・新機類は、天空の光矢を見る。 それは新地球の解放者、世界樹の出現する予兆であったこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1512de/4/ 封印惑星 第4回「天球」のイメージコーダーで再生した北の詩人は、創造主、巨大な木の監視機械でもあるユニコーン の乗っている自分に気づく。そのユニコーンに乗り、大球と小球をむすぶケーブル穴へ向っていく。封印惑星(ハーモナイザー02)第4回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ 北の詩人は、目ざめる。 あるいは 意識が戻ったという方がいいのだろうか。 とにかく、その時、彼はユニコーン(一角獣)の背中にのっている。 突然、どこかの世界から、この世界へ転移されたような気分だった。 まわりは、ユニーコンだらけだ。ユニコーンの集団の中にいる。 ユニコーンの背中の乗りごこちは気持よく、首すじの毛をそっとさわってみた。 ぞくっとする。 何とやわらかな手ざわりなのだろう。北の詩人は、ユニコーンに言った。 「さあ、ユニコーン、行っておくれ、君の望む方向に」 群れから、外れて、歩きはじめる。 なぜ、この生物がユニコーンという名前なのか、とにかく、北の詩人の口を通じて出た最初の言葉だった。 目の前に、別のユニコーンがこちらを見て立ちはだかっているのに気づく。 そのユニコーンは、詩人が乗っているユニコーンとは異なっていて、 悪意というものが感じられた。 北の詩人は、立ち止まったユニコーンからゆっくりと降りる。 北の詩人には、自分が乗っていいるユニコーンのコードネームが 、新機類「ルウ502」であり、ハーモナイザーの観察機械、というイメージが 浮かび上がってくる。 しかし、意味自体は、北の詩人には、コードしかわからない。 その言葉の意味は理解できなかった。 その、悪意を持つ「ユニコーン」は、背後から、急速に接近してきた、10メートルはある列車そっくりの生物体、ゴーストトレインにはじきとばされた。 ゴーストトレインは、倒れたユニコーンの側へもどってきて、死体を 確かめ、ユニコーンをうまそうに食べ始めた。 その姿に、北の詩人は思わず顔をそむけた。 どれくらい、時がたったのだろう。 北の詩人は、暗い鉄表で被われた大球の上をユニコーンと一緒に移動し、やがて、一つの穴の前にたった。 生物体、ゴーストトレインは、この穴から、出てきたようなのだ。 その穴は、空間にのびていて、どうやら小球という大球の衛星へと続く道の様なのだ。 コードだった。 北の詩人とユニコーンは、その穴へと人っていった。 なぜ自分がここを歩いているのか自分自身でも理解していなかった。 記憶なのだろうか、北の詩人の心を激しくとらえたのは、ユニコーンが、列車そっくりの生物体、トレインの餌食となったのをながめた瞬間の、胸をしめつける感覚なのだ。 その視覚イメージに触発されて、詩人の頭の内で何かが爆発し、言葉という古い記号が、 自分自身のイメージ脳の泉から湧きあがってくるのを感じていた。 さらに奇妙なのは、詩人の情感が、何かわけのわからない巨大々存在に 吸い取られているような気がすることであった。 北の詩人はイメージする。 私は何かの感覚の末端であり、情報を、視覚と、 それから誘発される言語記号で、巨大なものに伝えているだけの存在ではないだろうか。 空気というものが、濃密にたまり、流れ、それが 風 という記号で呼ばれている事を、詩人は思い出していた。 風は、詩人が行くべき方向を示しているようでもあった。 大きな洞穴の地下道のようだ。その道は、コードのように遠くまで続いている。 道は、血脈のようなもので被われていて、天井には、その血脈から派生した網もはりめぐらされている。 詩人は再び乗っているユニコーンに言った。 「さあ、風の吹いてくる方向に向かっておくれ」 ユニコーンと北の詩人は、「大球」と結ばれている「小球」への道 を歩み始めていた。 (続く)●封印惑星(ハーモナイザー02)第4回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ #封印惑星ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.02.24
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2022年02月24日 | 源義経黄金伝説(2022年版)YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/55/ 源義経黄金伝説■第56回奥州の平泉王国第4代国王、藤原泰衡は 一瞬後、その命が吹き引き飛んで。 郎党の裏切りであっ た。 奥州黄金郷は、ここに滅んだ。 1189年(文治5年)9月3日である。 武家としての源氏、平家の関東制覇と奥州攻略の歴史は長い。奥州の金鉱石を狙い血みどろの争いが続いた。東国では、名高い平将門まさかどの乱の後、1028年(長元1年)平の忠常ただつねが反乱を起こした。千葉氏の祖である。 追討使は源頼信。多田の満仲の子供である。多田(現兵庫県川西市)の源満仲は、源氏、武家の始まりとされ、多田銀山の銀を持って貴族に取り入り、京都王朝での立場をきづく。 本文編集源義経黄金伝説■第56回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 1189年文治5年7月 鎌倉「さあて、源氏の古式にならい、旗をあげる時じゃ、広元、準備おこたりないか」源頼朝が言った。大江広元は大江国房の孫である、大江国房が参謀として計画、奥州平泉に攻めいるは鉱山貴族である、源氏が100年程前から「前九年の役」からの野望であった。「源氏の血を奥州に広めねばならん」 「大殿(頼朝)様、日本のすべての国に動員をかけませ。頼朝様の見方かどうか判断できましょうぞ」「ということは、源平の争いのおり、我が源氏の軍に刃向かいものどもにも、動員をかけるわけか」 「さようでございます。今天下は大殿さまに傾きつつあります。誰が見方か、敵か、この動員に参加するかどうかで見事にわかりましょうぞ。これにより、大殿様の天下草創が周知徹底できましょうぞ。すなわち、源氏が武家の王であることが見事証明できましょう」「わかった。みなまでいうな。大江広元、その力をもって平泉を征服しょうぞ」 ■武家としての源氏、平家の関東制覇と奥州攻略の歴史は長い。奥州の金鉱石を狙い血みどろの争いが続いた。東国では、名高い平将門まさかどの乱の後、1028年(長元1年)平の忠常ただつねが反乱を起こした。千葉氏の祖である。 追討使は源頼信。多田の満仲の子供である。多田(現兵庫県川西市)の源満仲は、源氏、武家の始まりとされ、多田銀山の銀を持って貴族に取り入り、京都王朝での立場をきづく。 源頼義よりよしは奥州に攻め入り、前九年の役(1051年から1063年)、後三年の役 (1083年-1087年)を通じて関東平家を郎党とする事に成功した。 源頼義よりよしは、板東の精兵を、奥州の乱の鎮圧に動員した。その契機は平直方なおかたの娘婿となったからである。平忠常ただつねの乱のお り、平直方なおかたは追討使となり、源頼義よりよしの騎射の見事さ に感心し、娘を嫁がした。 平直方なおかたは鎌倉に別荘を持っており、源頼義は義理父からこの屋敷を譲り受ける。鎌倉は関東平氏のの勢力範囲であったが、源氏は関東地方に人の支配権を得た。源頼義の子供であり平直方なおかたの外孫である義家よしいえは、前9年の役、後3年の役でその武名を天下にとどろかせた。 源義家よりの4代目が、源頼朝、源義経の兄弟である。 後三年の役は1087年に 終わる。 その100年後、頼朝の私戦、奥州大乱は、1189年7月に鎌倉の出発を持って始まる。 源頼朝は、新しい日本歴史を作ろうとしていた。 日本の統一である。 ■6 1189年(文治5年)9月 平泉王国 奥州王である藤原泰衡は悲しくなった。なぜ私が攻められるのだ。 (約束を守ったではないか。ちゃんと頼朝が言うとおり、義経を殺し、その首を差し出したでしないか。義経を差し出せば、奥州は安堵するという約束をしたではないか。くそっ、西の人間など、やはり信頼できぬ。この戦どうしたものか。助かる手段はないものか。そうだ、ともかくも頼朝に平謝りに謝ろう。そうしなければ、親父殿、祖父殿に申し訳が立たぬ。この身、どうしても奥州仏教王国守らぬばのう。 そうだ、まだ西行がおる。あやつを捕まえ、頼朝に申し開きもうそう。そうだ、それがよい。奥州の平泉王国第4代国王、藤原泰衡は思った。 一瞬後、その命が吹き引き飛んでいた。郎党、河田次郎の裏切りであっ た。 奥州黄金郷は、ここに滅んだ。 1189年(文治5年)9月3日の事である。 (続く)●山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.02.24
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CP封印惑星・封印された新地球で、情報収集端子である一角獣・新機類は、天空の光矢を見る。 それは新地球の解放者、世界樹の出現する予兆であったこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1512de/3/封印惑星(ハーモナイザー02)第3回●恒星「タンホイザー=ゲイト」にハーモナイザー、巨大″木″が浮遊する。彼は異変がある「小球」に自分の分身、アーヘブンを派遣する。封印惑星(ハーモナイザー02)第3回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/●封印惑星(ハーモナイザー02)第3回一つの恒星がある。名前を「タンホイザー=ゲイト」という。星の中心部に緑色の液体で充たされた空間があった。そこに巨大な″木″が浮遊していた。″木″は意思の集合体であり、自らをハーモナイザーと呼んでいた。虚空からの信号をハーモナイザーは受けた。彼はその信号を分析し、推理した。その信号は「小球」にある「生命球」の消滅を意味していた。同時に一つの決意が、彼の意識の中で生まれた。ハーモナイザーの末端部へ、中央神経叢を通じ、一つの刺激が送られた。ハーモナイザーの末端部には、数多くの個性群体が付着していた。それぞれは、小さな球体であり、それがまるで根に付着しているように群体を構成していた。個性群体のひとつである「アー・ヘブン」は夢みている。たゆとう羊水の中で夢みる事を楽しんでいる。アー・ヘブンの個性がいつ、どこの星で生まれ、また、いつハーモナイザーに同化されたのか、その記憶は消え去っている。『アー・ヘブン、目ざめよ』突然、声がアー・ヘブンの体の中に響いていた。誰だ。この快いまどろみの中で私をめざめさせるものは。アー・ヘブンは怒りを感じた。『アー・ヘブン。使命を与える。すぐに旅立つのだ』使命を与えるだと、誰が、いったい、何の権利があって、私を目ざめさせるのだ。おまけに旅に出ろだと、何を言っているのだ。『アー・ヘブン、それが、お前の運命なのだ』運命だと、そんなものなど、とっくの昔に忘れてしまった。私に何をさせようというのだ。『アー・ヘブン。お前は一つの世界を作るのだ、私の代理人として』世界だと、世界とは何だ。それにそんなに価値を持つものなのか、世界を作ることが。『アー・ヘブン。動け。分前が自ら動こうとしないのなら、私が動かす』あー、やめてくれ、私はこの羊水から離れたくがいのだ。しかし、無情にもアー・ヘブンの球体は末端部から切り放され、ハーモナイザーの導管に吸い込まれた。上へ上へと扱いあげられる。アー・ヘブンの球体の上から何かが、かぶせられたのを、アー・ヘブンの意識は感じた。何かをかぶせられたまま、導管の内にあるアー・ヘブンの体は急激に加速度を増し、羊水の外、さらにはタンホイザー・ゲイトの外へとはじきとばされた。アー・ヘブンの体を包んでいるのは「胞子」と呼ばれる飛翔体だ。アー・ヘブンの体は、タンホイザー・ゲイトから離れてゆく。アー・ヘブンは、自分の故郷、タンホイザー=ゲイトを観察する。真中に緑色の輝きが見えた。羊水湖の輝きだ。私はあの中で眠っていたのか。できれば戻りたい。そうアー・ヘブンは思った。しかし、「胞子」は回転しながら、太陽光流に乗り、銀河を横切って行く。長い旅路になるだろう。そうアー・ヘブンは感じ、そして、自らの体を冬眠状態においた。アー・ヘブンも、また一つの運命を荷っているのだ。(続く)●封印惑星(ハーモナイザー02)第3回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2022.02.23
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/54/ 源義経黄金伝説■第55回★1189年(文治五年)津軽平野を横切る岩木川の河口に十三湖と呼ばれる唐船も出入りする港がある。藤原秀衡その弟秀栄の勢力圏でもある。義経と吉次が目指している。 源義経黄金伝説■第55回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 1189年(文治五年) 十三湊とさみなと 津軽平野を横切る岩木川の河口に十三湖と呼ばれる海水湖がある。現在は狭い水戸口で日本海と結ばれているが、昔は広大な潟湖であった。 義経と吉次が目指していた十三湊とさみなとがここである。 藤原秀衡、その弟秀栄の勢力圏である。この十三湊を中心に蝦夷地、中国大陸との貿易を行い、繁栄していた。この湊から貿易された蝦夷や、黒龍江など、異民族の産品は、京都に送られ、公家たちを 喜ばせていた。 夷船、京船など各国の船が商売を求めてこの港をおとづれている。その船どまりに、吉次の船は停泊している。船を外海用の船にさし変えて出かける。食糧、水を積み込むためである。 「吉次よ…」と義経は吉次に呼びかけていた。牛若の頃を思い出している。「そうだ、あの源空はどうしていよう。今の私の姿を見たらどういうだろう」源空はすでに法然として宗教活動にとりくんでいる。後白河法皇も帰依しているのだ。(無駄な殺生はおやめなされと今でもいうかな。だがすでに私の手はもう汚れている、平家の若武者の屍をいくたり気づいてきたことか。日本全国に死体の山を気づいていた。兄じゃのために、その私が兄者のために、この日本を追われるのだ) 今はもう若き頃、思い出だ。 「京都の鞍馬山、よう冷えたな」「はっ、殿。京と鞍馬山よりも奥州平泉の方が寒いのではありませぬか」 吉次は、義経の質問の意味をうまく理解できずに答えていた。「いや、吉次。人の心じゃ。京の人の心は冷たすぎる。あの都市の地形によるものなのか」「殿、これからゆかれる蝦夷はもっと寒うございますぞ。雪も深うございます」「そこに住む人の心が暖かければよいが…」少しばかり義経は考えていた。 「ところで吉次。静は健やかだろううか」「心配なされますな。後ろ盾には西行様がついておられます」「が、西行様もお年じゃ」「ようございますか、義経様。義経様が今日あるは、西行様の深慮遠謀のお陰。すべて考えられる手は打っておられます」 義経は、目の前に広がる寒々とした日本海の海面を見つめ、寂しそうにして言った。 「そうであろうな、無論。が、吉次殿、お前はなんで私を逃がす手助けをした。なぜ心変わりした」「吉次は商人。利で動きますぞ」吉次は僅かに笑ったようだった。「利か。私と一緒にいて、お主に何の利益がでるか」 「ふふう、それはこれからの義経様の動き次第。よろしいか、義経様。十三湊の先は宋国そして、あの金でございます。また新しい国が誕生するとの噂も聞いております。その時に義経様に助けていただきましょう。藤原秀衡様の祖父、清衡様は、昔から黒龍河を逆上っておられます。その河の沿岸には、商品が数多くございましょう」 「それに吉次、俺は蝦夷の地図を持っておるからな」「そう、それでございます。それは言わば宝の地図。いろんな商材がありましょう」 吉次は遠くを思いやるような眼をした。 「もう一度、夢を追ってみるか」吉次は思った。 (奥州藤原秀衡様のお陰で一財をなした。が、その秀衡様も今はない。これからの日の本は、源頼朝殿の世の中になる。が、そのうち外国で一儲けも二儲けもしてみよう。商人吉次の心には、もう日本の事は映っていないかもしれない。出雲、備前、播州、大坂渡辺、京都平泉第、多賀城、平泉、、。 あちこちを移り住み、商売をした。平の清盛と共に奥州の金をつかい、福原で宋の商人と貿易もした。日本全国に吉次事の手配の者が散らばり商売を行っている、主人であるこの儂がいなくても、商人の砦としての吉次王国は揺るぎもしまい。儂の後輩が跡を継いでくれよう。日本全国に儂のような商人が増え、日本の商売が繁栄し、日本が繁栄するだ)吉次はそれを、望んだ。(日本が平和であればよい、すでに頼朝殿により、日本は統一されるだろう) もの思う吉次、義経二人の前に、唐船が、突然現れて、義経らの船腹に急激に力任せにあたっていた。 衝撃が走る。 「む、この唐船は、、何用」 「何奴?」 船から竿がのび義経の船へ。その船へ飛び乗ってきた僧衣の聖たちが、突然、義経を圧し囲んでいた。「義経様、お命ちょうだいいたす」聖たちが叫んだ。「待て、お主ら、誰の手の者だ」「我らか。我らは文覚様が手の者だ」 「何!文覚」「今はもう頼朝様が世の中。義経様のこの世での役割、もう終わられたぞ。消えていただきたい」「まてまて、お主ら、文覚殿にお伝えあれ。この義経は兄上と張り合う、そのような望などない。もう私、義経は日の本にはおらぬ。遠い国へ行くのだ。日の本のことなど預かりしらぬこと」「それが俺らは合点が行かぬ。いつ帰って来られるかわからぬ。それは頼朝様が世を危うくする」 聖たちは、八角棒を構え、殺意をあらわにしている。義経はしかたなく刀を引き抜いている。いにしえの征夷大将軍、坂上田村麿呂将軍ゆかりの刀である。飛びかかる男を二人切り放った。船上で、殺戮が始まろうとした。 「まて、皆、やめよ」戦船の長らしい男が、船からわたって来て、義経に対峙していた。「義経様と存じ上げます、我らも無駄な殺生はしたくはございません。文覚様からの伝言をお聞きいただきたい」「何、文覚殿の…、申してみよ」 「もし、坂上田村麿呂将軍ゆかりの太刀をお返しくださるならば、我々手を引くように言われております。我らが目的はその太刀でございます」 「なに、この大刀を…」「さようでございます。その太刀は征夷大将軍の太刀、大殿様にとっては征夷将軍という位、大切なものでございます。また皇家にあっては、その太刀が外国に渡ること、誠に困難をを生ぜしめます、なぜなら皇家にとって、その刀は蝦夷征服をして統一を果たした日本国を意味する大事な刀でございます」吉次が言った。「義経殿、よいではないか。お返しなされい。そんな太刀など、どうでも良いではございませぬか」 「何を言う、吉次。お前も知っておろう。この太刀、我が十六歳のおり、鞍馬から盗みだし、ずっと暮らしを共にしてきた刀じゃ。そう、やすやすと…」 船長ふなおさが、続けて言う。「では、こういたしましょうか。約束をもうひとつ。もし、その太刀をお返しくださるならば、決して義経様が和子、義行よしゆき様を襲いはしないとお約束いたしましょう」 「我が和子をか。くそ、文覚め」「が、殿、このあたりが取引の決め所かと」吉次が告げる。「この商売人めが。むっ」しばらく、義経は考える。「よい、わかった。この太刀、お返しいたそう。が、必ず、我が和子、義行がこと、安全をはかってくれ」 義経の太刀は、頭らしい男の手に渡った。 やがて船と船とを繋いでた桁が外されている。「では、義経殿。よき航海を、いや、失礼いたしました。これから先の事。我々の預かり知らぬ方。我々は義経殿には合ってはおりませぬ。ただ、海の中から、伝来の行方知らずの太刀を、拾いあげただけの事」 両船は、少しずつ、離れて行く。 「が、義行のこと、必ず約束を…」義経は船にむかい叫んだ。「わかり申した。文覚様にそう告げます」「大丈夫でしょうか」吉次が疑問を投げる。「まあ、西行殿、鬼一殿、生きておわす間はな、大丈夫であろうよ」義経は、遠くをみながら言った。 (続く)●山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.02.23
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鈴木純子作品をお借りしてます。http://www.yamada-kikaku.com/suzuki-junko/119-a-2.html CP封印惑星・封印された新地球で、情報収集端子である一角獣・新機類は、天空の光矢を見る。 それは新地球の解放者、世界樹の出現する予兆であったこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1512de/1/ 封印惑星(ハーモナイザー02)地球は封印されている。一角獣形の「ルウ502」によって鉄球たる地球は監視されている。 封印惑星(ハーモナイザー02)第1回●全12回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 1それは、小さな石だった。石は隕石となり、「大球」と呼ばれる星に落下した。大球は、「小球」と呼ばれる衛星と絆で結びついている。 大球には、「新機類」と呼ばれる生物が生息していた。 「ルウ502」は、天空を走る光の矢を見ていた。ユニコーンつまり、一角獣の外形をした新機類ルウ502にとって、隕石は見慣れた現象であり、注意をあまり払っていない。 警戒すべきは、ルウ502の足元、つまり鉄表下であると、教えられていた。その教示は[小球]にある「生命球」から与えられていた。 念のためだ。そう思ってルウ502は、隕石の堕ちた場所を求め、走った。やがてその場所に辿りつく。落下地点の鉄表には、何の損傷も見られなかった。 大いなる昔、ルウ502達が誕生する前から、この星、大球に張りめぐらされた鉄表は、時の流れをあざわらうかのごとく、傷ひとつ付いてはいない。 「ハーモナイザー」と呼ばれる大球の創造者に対して畏敬の念がルウ502の心に浮かんだ。ハーモナイザーは、ルウ502にとっても想像を絶する存在で必った。ともかくも、鉄表には何の変化もない。よかった。彼は安堵し走りさった。 もし、ルウ502が辛抱強い観察者であったなら、微妙な地下の変化をとらえていたかもしれない。 その変化を感じて、小球の生命球に通報していたならぱ、あるいは、この星の歴史が変わったかもしれない。事実、隕石は鉄表下に存在するあるもののつぼを直撃していた。隕石が鉄表に激突した時の微振動は、ある種の反応を、地下に呼びおこししていたのだ。。 鉄表の下、奥深い所に、闇に包まれた空洞がある。はるかなる昔からここに閉じ込められた者のうらみがこもっている。 隕石の与えた微振動に、「機械共生体」が反応し、生きかえりつつあった。 突然、一点に光がともる。 その光が、またたく間に、空洞内にある機械類を巡り、すべての機械群の息を吹きかえらせた。最初の機械意識が蘇った。『誰だ、俺は』 闇の奥から疑問の声があがる。機械は自らの存在の意味をさぐろうとする。 やがて、機械意識は自らの名前を思い出した。『そうだ。思い出したぞ。俺はイメージコーダーだ」 イメージコーダーは次の作用として、体を勣かすことにした。腕=マニュピュレーターだった。マニュピュレーターを振り廻している内に、自分の前に集積された物体にづく。 「何だ、これは」次の疑問だ。目の前にある「植物繊維群」の呼称を記憶の中から呼びおこしていた。 「情報ユニットだったな、たしか」 これは何をするものなのだ。 マニュピュレーターで、それをつかみ、観察する。「ああ、そうだ。こいつはこう使うんだ」やがて、イメージコーダーはそれを自分の体一部位に組み人れた。 マニュピュレーターが、偶然に選びとった三ユニットは次の通りである。 ユニットコードナンバー 16589ユニットタイトル 北の詩人 ユニットコードナンバー 836250ユニットタイトル 幽霊列車ゴーストトレイン ユニットコードナンバー 386574ユニットタイドル ユニコーンの旅 イメージコーダーの温度が上がり、彼は自分の役割を果たし始める。 役割すなわち、情報ユニットのイメージを実体化させる事。 イメージコーダーの空間に、情報ユニット内に内包された情報の三次元数字が打ちだされる。それが線を形づくり、フレーム=モデルが作りあげられる。 色彩が決定され、ゆっくりモデル表面がペイントされながら作成される。 やがて、生き物が実体化していた。徐々に、機械群の共生体「天球てんきゅう」に意識が蘇りつつあった。(続く) ●封印惑星(ハーモナイザー02)第1回●(1987年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所#封印惑星ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.02.21
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/52/ 源義経黄金伝説■第53回平泉での源義経自刀の知らせは、京都の後白河法皇のもとに。法皇はこれからの策を藤原(九条)兼実と話し合う。 源義経黄金伝説■第53回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 1189年(文治五年) 平泉ちかく北上川の川縁にいる西行が、小船を用意している吉次の方に向って言った。 「さて、吉次殿。義経殿の逃げ先、よろしくお願いいたします」「わかりました。すべておまかせを。して静殿は、いかがいたします」 「吉次殿、この手配りは、静殿には話していない。供を付けて京都に帰っていただくか」「わたしもそのほうがよいと考えます……」吉次も首肯した。静は気を失って倒れている、遠くやけくすぶる高殿、義経屋敷跡の煙が巻きあがっている…。 二日後、北上川の船上に、ゆったりとすわっている義経がいた。 吉次が姿を見せる。気付いた義経が話しかける。「のう、吉次殿、十五年前もお主の船で、だったな」「さようでございますなあ。なつかしい限りでござます」 吉次は、遠くを見透かすような目をする。「あの折りは、ものもわからぬまま、お主に連れられ、摂津大浦(尼崎)から多賀城まで一航海じゃった。が、あの頃の俺は、意気に燃えておった」 「何をおっしゃいます、義経様。これから、まだまだでございます。これからの行き先、蝦夷には、新天地が待っていましょうぞ」義経にとって平泉は新世界であったが、まだ、その先の新世界へ行こうというのだ。 「吉次殿、お前もあの頃に比べると、偉くおなりだな」「あの仕事で、私に運が開けました。お陰様であの縁で、藤原秀衡様にかわいがっていただき、このような身代が築けました」 「ああ、そうか、すべては西行法師殿のお陰だなあ」「さようです。西行様のお陰でございます」「残念ながら、私は西行殿の役には立てなんだ」 義経はすこし寂しそうな顔をした。 「西行様の思いとは…」 「あの平泉を、第二の京都、陰都とするとする事だ。そして崇徳上皇をお祭りする事だ。平泉王国を、北のそなえとして仏教王国として、平和郷を作ることだった。その将軍が私だ。また、主上を、平泉お招きするという案だ。この企みは、後白河法皇も気に入っておられたのだ」 「仏教の平和郷ですか。もう、それもこの日本にはございますまい。すべては鎌倉殿の思いのままになりましょう」 「藤原泰衡殿が、兄上頼朝殿と何とかうまくやってくれればよいが」「それは、やはり、むつかしゅうございましょう」吉次は冷たく突き放した。 北上川の水面も寒々と、月光をあびて澄み渡っている。 ■ 「なに、義経、自刀したとな」京都の後白河法皇がうめいた。 「今、多賀城国府より知らせが入りました」藤原(九条)兼実が答えた。「しかたがないのう。後は頼朝が動き注意せねばなあ。ところで、義経が家来、皆、討ち死にいたしたか」後白河が、兼実に不安げに尋ねた。 後白河の顔色を見て、藤原兼実が意地悪く尋ねる。「院がお気になさっているのは、弁慶の事でございましょう」兼実は、うれしげに返事を待っていた。「そうだ、あやつは朕が手先。が、途中で義経に寝返ってしまいよった。せっかく熊野の山で見つけた、朕がための闇法師だったのだが」 「さようでございましたな。院が熊野へ参拝なさったのも、もう三十回になりましょうかや」「そうなのだ。弁慶は十度目の熊野参拝の折り、朕が、眼につけたのだ」後白河はそのおりを思い返すように言った。 この時期、蟻の熊野詣といわれるくらいに、熊野詣は流行っていた。我も我もと、皇族や貴族が和歌山の熊野に詣でるのである。京都から淀川をくだり、渡辺津から泉州をぬけて… 熊野は旧き日本の時から、1つの王国勢力であり無視できぬ。それゆえ、特別の配慮が行われている。熊野三社は伊勢神宮と同格とされている。大和朝廷統一以前の勢力がいまでも残滓として残っている。山伏もこの地域を勢力範囲とした。 当時の海の交通には熊野の海商が、海の侍が大きな役割を果たしている。 熊野三社の供御人(くごにんー神社に属する人間)が、遠く奥州まで船を運んでにぎわっている。 熊野、伊勢の回船や船人をいかに把握するかが、この時期の日本の支配者には是非とも必要であった、山伏もまた、この時期の日本にひとつの勢力である、が、源頼朝と大江広元は、日本全国に守護地頭という制度をつくり、板東のご家人を送り込む事により統一しょうとした。 十度目かの後白河法皇の熊野巡幸。その折りに山法師が後白河法皇の宿所に願を願っていた。 「殿下、弁慶とか申す山法師、ぜひともお目にかかりたいと申しております」「どんな奴じゃ」「いや、それは化け物のような…」「化け物のようじゃと、おもしろい」「朕が会ってみようかのう」「お止めください。危のうございます」 その返事の前に、向こうで騒ぎが興り、何かが法皇の前に飛び出して来ていた。雑色を振り切り、弁慶が雑色たちの人垣を跳躍して来たのである。恐るべき膂力であった。 「私が、その化け物の弁慶でございます」 悪びれずに、その大男は言う。後白河は思わずたじろいでいたが、「くはは、お主が弁慶か。ふふふ、おもしろい奴よのう」 が、一瞬、後白河は、弁慶の顔に何かを見たようだった。「いかがなされました、法皇様」「いや、何でもないのじゃ。汗が目に入ってのう」後白河は顔をつるりとなでた。「それでは、私の考え、お聞きください」 護衛の武士が追いついて来た。「恐れ多いぞ、何者ぞ。主上の前なるぞ。いかがいたした」「よいよい、しゃべらせてやれ」「よろしゅうございますか。法皇様、この世の中は、断じて間違ごうてございます」「何をぬかす」「よいよい、しゃべらせてやれ」」「平家がごとき世の中を支配するとは、必ず法皇様、天を御所に取り戻してくださいませ。これらは我らが願いにございます」「我らじゃと、我らとは誰じゃ」「我々、山法師でございます」 「ほほう、気にいったぞ。ふふふ、お主の心根、面構え、名は何と申す」「はっ、武蔵坊弁慶と申します」「弁慶とやら、朕の闇法師を申し付けるぞ」 ちらりと後白河は笑ったように見えた。が、弁慶は「ありがたき幸せ」 と深々と頭を下げているので、その表情が見えない。「して、お主の母、ご鶴女殿は息災か」「法皇さま、わたしの母親の名前をなぜご存じですか…」「うむ、昔あったことがな、あるのだ」 (続く)●山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube #義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.02.21
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源義経黄金伝説■第52回 文治五年(1189)4月30日 奥州、藤原泰衡は、揃う武者共に義経殿を高館を襲えと命令を下した。2022年02月20日 | 源義経黄金伝説(2022年版)YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/51/ 源義経黄金伝説■第52回 文治五年(1189)4月30日 奥州、藤原泰衡は、揃う武者共に義経殿を高館を襲えと命令を下した。 源義経黄金伝説■第52回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube■ 「もはや、これまでだ。義経殿を高館を襲え」 文治五年(1189)4月30日 奥州、藤原泰衡は、目の前に揃う武者に命令を下していた。激情で目の前が真っ赤になっているのだ。 奥州藤原の武者たち500騎は「おう」と鬨の声を上げる。藤原秀衡がなくなりまだ、2年とたたない。泰衡は平泉で兄弟や部下の粛正をつくかえしている。自分の命令を聞かない部下や弟を亡き者にしていた。その滅亡へ、自ら進んでいるのだ。 武者は、義経がいる高館を目指して駆け寄ってくる。高館の物見がきずく。高館に火矢が打ち込まれる。 泰衡の軍勢は、半刻後、高館を取り囲んでいた。逃れる道はない。高館へのすべての道は兵で塞がれている。 「高館が、燃え上がっております」 燃え上がる高館近く、北上川の対岸で、西行と静が二人していた。「くそ、まにあわかたか。静殿、残念だ」「静殿、義経殿にあのこと伝えてられよ。聞こえるかも知れぬ」西行は静を促した。 「殿、和子は生きておわす」遠くから、静は義経に呼びかける。聞こえているのかいないのか義経の姿は望見できない。「殿、わ、和子は…大江広元様のご慈悲で生きておわす。和子の命、お守りくださると約定いただきました。これは政子様も、ご承知になられております」 義経の姿が見えたような気がした。静の姿にゆっくりうなずき、炎の中に入って行った。 火の手が高館すべてにまわっている。 外から呆然と見上げる西行と静。「さあ、もうよかろうぞ」「義経さま……」静は、高殿の方へ声を限りに叫んでいる。 高館の中、「もはや、これまでか」義経はうめいている。「義経様、どうぞ、ご準備のほうを」 東大寺闇法師、十蔵が、義経そっくりの顔で言う。十蔵は西行の命令で、この地にいるのだ。「十蔵、私だけが助かる訳にはいかん。私を信じてついてきてくれた郎党たちも、助けてくれ」「義経様、それは無理というもの」 義経の回りには、弁慶始め郎党たちが、取り囲んでいる。皆、覚悟を決めているのだ。「どうぞ義経様、お逃げくだされ。我々はここで討ち死にし申す」弁慶が涙ながらに言う。「そうです。それが日の本のため」他の郎党も続けた。「どうか頼朝殿への無念をはらされよ」「弁慶、自分だけいい子になるなよ」「よろしいですか。義経様は我々の宝。いえ、この日本の黄金じゃ、どうか生き延びてくだされ」「武者は戦場で死ぬものでございます。我々、義経様のために死ぬこと、恐れませぬ。むしろ誇りに思います」「我々は、平氏との、幾たりかの、戦いを、楽しませていただきました」「武勇こそ武士の誇り]「義経様…」 「俺は良き友を持った」義経のほおを、滂沱の涙がしたたりおちている。義経は、その涙を拭おうともしない。「友ですと。我々郎党をそのように…」 義経の郎党、全員が義経をとりかこみ泣いている。皆、胸に込み上げて来るものがあるのだ。 弁慶は思った。これは愛かもしれんな。衆道ではない。仏門で、衆道は当たり前だが、俺の義経様への思いは、やはり愛だろう。そうでなければ、もともと俺は後白河上皇様の闇法師だ。鎌倉殿の情報を取り入れがために、義経様に近づいた。 弁慶は不思議に思った。そして時折、後白河法皇の憂鬱げな顔を思い出していた。弁慶を見る法皇のまなざしには何かがあった。家族愛、不思議な感覚であった。 弁慶は、また、一個の後白河法皇の闇法師、いわば法皇の捨てゴマだった、その男に対し法皇のまなざしは何かを告げようとしていた。 法皇は、今でもまだ、白拍子を呼んで、今様いまようを口ずさんでおられるのだろうか。弁慶は遠く、京都にいる法皇を思った。 「泣いている暇など、ございません。早くお逃げくだされい」東大寺闇法師、十蔵が促す。感傷に冷や水をかける。 「何じゃと、人間の感情がわからぬ奴だのう、お主は」 弁慶が涙で目を一杯にしながら、十蔵にけちをつける。 「弁慶殿、俺らが東大寺闇法師の命は、目的のために捨てるのが定法。今がその時。一刻も猶予はならんのだ」 「十蔵殿…」 義経が十蔵の肩に手を乗せた。 「済まぬ。私がごときのためにのう。おぬしの命を捨ててくれるのか」「何をおっしゃいます。奴輩は、炎の中で死ぬが本望。先に東大寺での戦で、多くの部下を殺しておりまする。また目的に死ぬこと、東大寺の闇法師として恐れはいたしませぬ」「すまぬ。許せ。皆、さらばだ」 義経は、高殿地下につくられた坑道から消える。十蔵が支度し、施工した坑道であった。 「東大寺勧進職である、重源殿の絵図、役に立ったな」弁慶がひとりごちた。 やがて平泉、北上川を見下ろす、北政庁北西の小高い丘にある高館に、藤原泰衡の軍勢がわれさきになだれこんできた。 「お主ら、ここから先は地獄ぞ。わしが閻魔大王ぞ」弁慶が叫ぶ。 その弁慶めがけ、数十本の矢が打ち込まれていた。 弁慶は一瞬、たじろぐが、再びからだを動かし「ぐっ、これは、これは、泰衡殿の武者もなかなかのもの、決して平家の武者どもにひけはとらねのう」矢羽を片手つかみで、みづからの体から、引き抜きながら、弁慶は泰衡の兵に打ちかかっていく。「こやつは化け物か」泰衡の兵共がその生命力に驚いている。 西行と静は、まだ対岸にいた。静は、うなだれている。 「静殿、さあ、今上の別れだ。一節、薄墨の笛を吹いてくださらぬか」「西行様、酷なことをおっしゃいます。それに果たして、義経様に聞こえるかどうか」 「何をいわれる。静殿の義経殿への愛の証し、ここで遂げられよ。義経殿の冥途への旅に、趣向をなされ。それが、静殿のお持ちの源氏ゆかりの薄墨の笛だ」 西行は文人、しきしま道の主導者であった。この殺戮の場においても、文学者的な演出を試みる。それが、静には奇妙に思われる。この方西行様は何をお思いなのかか。 「薄墨の笛」これは代々源氏の長者に受け継がれる、鋭い音色の出る笛、竜笛である。昔から、中国では竜の声として言われているのである。 静は、この笛を、吉野で義経と別れた時にもらっている。太郎左たちに襲われたときも肌身離さず持ち歩いていたのである。 「よいか、静殿、最後の別れ。一節吹かれよ」西行は、静に命令している。「西行様は、酷なことを、、」「静殿、義経殿への想いを、この場でされよ…、義経殿とは、もう二度とはこの世の中で会えぬ。別れを惜しまれよ」 静は、涙ながら笛を手にした。 高館の火の手は、一層燃え上がっている。 炎を背景に、笛を吹く静の姿は、妖艶であった。静の目の色は、今や狂人のそれである。悲しい音色が、いくさ場の中で、旋律を響かせている。『十蔵殿、頼んだぞ。このあいだに義経殿は、お逃げくだされい』 西行は心の中で叫んでいた。静には義経が逃げる事は教えていない。時間稼ぎの目くらましに、静を使おうとしていた。 「ああ、義経様」演奏の途中で、静は崩れ落ちる。秘笛は川原にころがりおつる。 西行は、静を抱き起こし姿を消そうとした。藤原泰衡の軍勢が、北上川対岸にいる、西行と静に気づき、こちらにむかってきたからである。 東大寺闇法師、十蔵は、高殿の炎の中、僧兵の雄叫びを聞いたような気がした。 ここが死に場所。平泉、高館。そして義経殿の身代わり。何とよい死に場所を、仏は与えてくれたものか。東大寺の大仏を焼いてしもうた心残り、部下の僧兵たちを助けられなかった責は、これで少しは心がやすんじられよう。 悪僧(僧兵)の頃に、心は戻っていた。紅蓮の炎を見ながら、十蔵は思った。 心は、その時に舞い戻っている。 奈良猿沢の池のまわりに、僧兵の首のない死体がごろごろ転がり、地面を流れた血糊が、地を、どす赤黒く染めあげている。 東大寺、興福寺の伽藍の燃え上がる紅蓮の炎は、火の粉を散らせる。死体をくすぶらせる煙が舞っている。えもいわれぬ臭みが、辺りを覆っていた。空は昼というのに、炎のため浅黒く染まって見える。 あちこちの地面に差し込まれた棒杭の先には、平家の郎党に仕置きされた僧兵の首がずらりと無念の形相を露にしていた。 ここが死に場所、熱さが十蔵の意識をおそう。 紅蓮の炎が重蔵の体をなめ尽くした。 東大寺闇法師、十蔵の体は、義経として滅びた。(続く)●山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.02.20
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/50/ 源義経黄金伝説■第51回奥州平泉、高館屋敷の義経に、異形の者,。東大寺闇法師、十蔵が西行様からの書状を携えて現れる。 源義経黄金伝説■第51回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube■ 奥州平泉、高館屋敷で寝ている義経の枕元に、異形の者が現れていた。義経は、気付いて起き上がり、とっさに刀を構える。 「何者だ」 「さすがでございますな。義経様、お静かに願います。私は東大寺闇法師、十蔵にございます。ここに西行様からの書状を携えてございます」 十蔵は書状を差し出している。 「なに、西行殿の…。おう。お主は十蔵どのだな」義経は、先年にあった十蔵の事を思い出し、書状をあらためる。「西行様に、秀衡様からの密書届いております」 「秀衡様の密書、何ゆえに西行殿の手に」「秀衡様のお子様たちのことを考えてのことでございましょう。西行様と京の後白河法皇様。すでにご相談なさっておいでです」「して、何と」 「義経様、この平泉で死んでいただきましょう」十蔵は冷たく言い放った。「何を申す」 義経は驚いている。 「よろしゅうございますか。鎌倉に、静様の和子様、生きておられます」 加えて、驚くべきことを、十蔵はさりげなく言う。 「なに……、それは誠か。して男の子か」 義経の驚きは、喜びに変わっている。「はい、さようにございます。今は大江広元様が手の者が、育てております。また、この事は、頼朝様はご存じではありません」 「大江殿が…。つまり、兄者が平泉を攻める時の人質という訳か」 義経は考え込む。「いえ、頼朝殿の策は、泰衡様に義経様を打たせるおつもり…」 「む、何と、兄者はなんと汚い策をお使いになるのか。それで、我が子はどういう策に使われるのだ」「おそらくは、義経様を平泉の武士たちと団結し、頼朝殿に当たらせないがため…」「さすれば、私はどう動けばよいのだ…」義経は悩む。もうあの源平の戦ではないのだ。この平泉の義経は別人のごとくなのだ。 「私が、義経様の身代わりになって、この地にて果てさせていただきます。義経様は平泉からお逃げ下され」 十蔵は冷静に答える。義経が驚く番だった。 「何だと、私には縁のないお前が…代わりに討たれるだと、、」 「さようでございます。西行さまの命令でございます。十蔵のこの命、東大寺のもの。すでに闇法師となった段階ですてております。義経様はご存知あるまいが、私は源平の争いですべてを失っております。魂の抜け殻でございます。よろしゅうございますか、義経様。このときに乗じ、北、蝦夷へ落ち伸びてください。吉次殿が手の者が、お助けするでございましょう」 「重蔵殿、、」義経は言葉がでてこない。 何ゆえにこの男は、私のために、、そして、吉次殿が。 「吉次殿が、私を助け出すといわれるか……」ようやく、言葉を発した。何かの感動が、義経の心をとらえている。(続く)2012改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.02.19
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/49/ 源義経黄金伝説■第50回★多賀城国府にある金売商人吉次屋敷で、 「吉次殿、恩をお忘れか」西行が義経を助けよと依願する。 源義経黄金伝説■第50回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 「磯禅尼殿、失礼いたす」西行がつづいて、京都五条に住む磯禅尼いそのぜんにを訪ねていた。「おお、これは西行様ではございませぬか。おひさしゅうございます」「禅尼殿、和子をどうなされた」「和子ですと、急になにをいわれます、どなたの和子でございますか」 「お隠しあるな、静殿と義経殿の和子だ」 「静ですと、そのような者、私の子供ではありません。何を申されますのです。それに義経様の和子様、男子ゆえに、すでに稲村ヶ崎で海中に投げ入れられてございます」白々と泣く。 「禅尼殿、そなた、鎌倉の大江殿とは取引せなんだか」西行は眼光鋭く、厳しく追及する。禅尼は思わず袖で顔を覆い隠す。「何を恐れ多い、鎌倉の政庁長官と取引ですと」が、じんわりと磯禅尼は冷汗滲んでいる。 「禅尼殿、すべてわかっておる。もうお隠しあるな。私も和子を悪いようにはせぬ。せめて、静殿のお手に返していただけぬか」 西行は急にやさしく言う。 西行は、若き白拍子の折の、禅尼の晴れ姿を思い起こし、ふうと笑った。「といいましても、静の行方、ようとしてしれませぬ」「静殿は、私と一緒ら平泉に向う。今は義経様と一緒のはずだ」「義経さまのところ、が、すでに、何人かの暗殺者が、義経殿が屋敷に」「心配するな、東大寺の闇法師を、義経殿が元に遣わしてある。さて、禅尼殿、私と一緒に来ていただこうか」「いずこへ」「いわずとしれたこと、鎌倉の、大江広元殿の所だ。和子を取り戻しにのう」 ■ 「はてさて、どうしたものか」この時期最大の歌人、藤原定家は悩んでいるのである。 藤原定家は、特大寺家の親戚であり、西行は若かかりし頃、この家特大寺家の家人であった。紀州田仲庄の荘園は特大寺家の預かり所であえる。 「そうやは、慈円さんとこに相談にまいりましょうか」藤原定家はひとりごちた。 慈円じえんは関白藤原兼実の弟でもあり、いわゆる文学仲間であった。慈円は今、西行から頼まれている伊勢神宮あての歌集を清書している。歌集は奥州に出かける前に仕上げていたが、この清書書きを慈円にたのんでいた。西行のたくらみ、歌によって日本を守る「しきしま道」は、一歩、完成に近づいていた。 ■「これはこれは、西行殿。鎌倉に庵など持つお考えを改められたか。これからは鎌倉が日本の中心ぞ」 数日後、鎌倉の大江屋敷に西行はいる。この時期、宿敵の文覚もんがくは鎌倉にいない。弟子の夢見ゆめみも文覚と同道している。 「いやいや、私ももう年でございます。ただ大江広元殿だからこそ、お願いしたい儀がございます」 西行のへりくだった様子に、大江広元は、かえって不信の念を抱いた。「はてさて、この私に一体何をせよと」「義経殿の和子、お渡しいただきたい」 「何を仰せられる。血迷われたか。静が生んだ和子は、すでに稲村ヵ崎に打ち捨てられた」 その答えに西行は、にやりとして、「大江広元殿、このこと頼朝殿にもお隠しか。が、私の耳には入っており申す。よろしいか、大江広元殿。私の後には山伏が聞き耳、知識糸を、日本全国に張り 巡らしてござる。大江広元殿のこの子細、頼朝殿の耳に入れば、今は鎌倉政庁の長官といえども、どうなるかわかりませんぞ。 御射山の祭のこと、お忘れではござりますまい。頼朝殿の勘気に触れれば、その人物に用なくば、すぐ打ち捨てられましょう。このこと、唐からの歴史に詳しい大江広元殿なら、おわかりのことでございましょう」 西行の恐ろしさが、大江広元の体の中に広がって行く。 ここは西行におれて、味方に加えるは一策か。大江広元は、真っ青になり、おこりのようにぶるぶる震えた。 いそぐ、大江広元は書状をしたためた。「ええい、西行殿、和子を早々に連れていけ。預け先は、この書状に記してある」「ありがとうございます」西行に笑みが浮かんでいる。 「が、よいか西行殿。この和子、決して世の中に出すではないぞ。源頼朝殿の元に、すでにこの日本は統一されるのだ」 投げ捨てるように言う、大江広元。西行に対して、逆に凄んでいるのだが、いかんせん迫力が違った。 ■ 多賀城国府にある吉次屋敷で、京都から到着した西行と吉次が言い争っていた。「吉次殿、恩をお忘れか」 顔を真っ赤にして、西行が喋っている。 「恩ですと、何をおっしゃいます」「いや、お主が金商人として有名になれたのは、誰のお陰だと聞いておる」 畳み掛けるように、西行は喚いた。が、吉次の答えは冷たい。 「それは、私は備前のたたら師の息子として育ち、その関係から姫路へ、岡山へそして、回船鋳物師の船に乗り、この多賀城にたどり着き、商売を始めたからでございます」 「吉次殿、再度申し上げる。お主が、藤原秀衡様にお目もじできたのは、誰のお陰と聞いておる。また、平相国清盛に照会され、宋のあきうどと、取引できたのは、、誰のおかげとお思いか」 西行の目には、怒りが込み上げてきている。「それは、、、それは、、、西行様のお陰でございます」 「そうだろう。私が、京でお主を助けたこと、忘れたのではあるまいな。ましてや、我が書状を持って、秀衡様に会いに行ったのを忘れたのではあるまい」「……」吉次は、具合の悪いことを思い出し、黙っている。 「一時期、京都の平泉第(平泉の大使館)の頭目となれたのは、誰のお陰だと思っている。それが時代が変わりましただと。私はもう昔の金売り吉次ではございませんだと。お前は常ならば、備前あたりの鋳物師で終わったとしても、詮無いことだった。私がお前の出雲で覚えた、そのたたらの技術を知っていたからこそ、秀衡殿に推挙したのだ」 西行の怒りは、頂点に達している。二人は、お互いを無言で見つめあっている。とうとう吉次がおれた。「わかりました、西行様。それで、この私に何を」 「よいか、平泉におられる源義経殿をお助けるするのだ」西行の息が荒い。 「えっ、義経様を……」驚きの表情が、吉次の顔に広がって行く。2012(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.02.18
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/48/ 源義経黄金伝説■第49回★西行は深深と、東大寺闇法師に頭をさげていた。 「すまぬ、十蔵殿、死んでいただけぬか。東大寺のためではなく、日の本のためにな」 やがて、深深と、十蔵に頭をさげていた。「すまぬ、十蔵殿、死んでいただけぬか。東大寺のためではなく、この西行のため、いや日の本のためにな」本文編集源義経黄金伝説■第49回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 文治三年(一一八七) 日本各地にある西行の草庵。いまは、京都の嵯峨に住まう西行に、一人の商人姿の男が訪れていた。「十蔵、まかりこしてございます」 「おお、これは、十蔵殿。ひさかたぶりだ」 東大寺影法師、十蔵は、挨拶もそこそこに、用向きを聞いた。 西行からのこの度の連絡を受けたおり、いよいよ俺の死ぬときが来たかと、体が武者ぶるいしていた。 無論、西行に呼ばれたことは、東大寺や重源ちょうげんには告げてはいない。奥州藤原秀衡がなくなった事は聞いて、世の中が再び騒然となって来ていている。「で、西行様、何かご依頼が」 「そうだな。十蔵殿。……」しばし、西行は、無言だった。 やがて、深深と、十蔵に頭をさげていた。「すまぬ、十蔵殿、死んでいただけぬか。東大寺のためではなく、この西行のため、いや日の本のためにな」 平然とうけとめ、十蔵はふっと微笑む。「いよいよ、お約束のときが、参りましたか」 「早急に、摂津大物が浦(尼崎)より旅立ってほしい。そして多賀城で吉次に会い、それからは吉次の指示に従ってほしい」「西行様はいかがなさります」「お前様の後を追う。他に片付けなければならぬことが多い。先に立ってくれ」 「わかり申した」十蔵は、すばやく、西行の前から姿を消す。 「はてさて、重源殿が、どう動くかだが」西行はひとりごちた。 ■ 平泉の高館に、泰衡の弟、忠衡が、内々で義経を訪れてきていた。 「のう、忠衡殿、私はこの平泉王国の将軍の座を、泰衡殿にお譲りしてもよいのだぞ」 平泉王国の内紛の様子を知る義経は、自ら身を引こうとしている。が、この言葉を聞いて、忠衡は、激怒し、立ち上がっていた。 「何をおっしゃいます、義経殿。そのことは我が父秀衡が、我々子供を死の床に呼び、遺言したもの。それをいまさら…、なさけのうございます」 最後には泣き出している。その忠衡の方に手を掛け、慰めるように義経は言う。「私はよいのじゃ。私の存在で、この平泉平和郷が潰れることになっては困りましょう」「それが鎌倉殿の、狙いではございませんか」 「この勝負、最初に動いた方が負けという訳でございますな」「さようでございます。よろしゅうございますか。今、天下の大権を握れるのは、頼朝殿か義経殿か、どちらかでございます。断じて、我が兄泰衡ではありません」 思案顔の義経と、見まもる藤原忠衡だった。 ■「静殿、今から恐ろしき事を申し上げる。お気を確かにされよ」西行は京都大原にある静の庵に静をたずねている。 静は、あの事件ののち平泉から帰り、尼になり京都郊外にある大原の寺に住う。長くは、平泉にいなかった。というのは義経が新しく妻をもとめている。新妻は、藤原氏の外戚である。それゆえ、静は身を引き、京都に傷心で戻っていた。 「西行様、そんなに思い詰めた表情で、一体何をおっしゃるつもりでございますか」 「実は、義経様の和子様は、生きておられる」しばらくは、静の体がふるえていた。顔もこわばっている。 「西行様、おたわむれを、冗談はお止めください。私は、鎌倉にて我が子が殺められるところを目にしております。この目に焼き付いております」「が、その殺された和子は偽物だ」「まさか、そのようなことが」 「よいか。静殿の母君、磯禅尼殿、しきりに下工作をなさっておった。その結果だ、後ろで糸を引くは大江広元殿。その企みだ」「それでは、今、和子は」「それは、おそらくは、鎌倉の、大江広元殿が知っている」 ■ 「お、重源殿。よう参られました。ちょうどよい機会ですな。拙宅に法然殿が参られておられますぞ」「おうおう、それはよき機会でございます」京都の関白藤原兼実の自宅だった。 重源は雑職ぞうしきに、表で待つように告げる。重源は猫車(1輪車)を自からの移動に利用している。重源には雑職がいつも2人ついている。 この猫車に乗り、勧進集団50名を引きつれて日本全国を勧進して回っているのだ。 東大寺勧進職は、最初、法然に白羽の矢があたったのだが、法然は、重源に譲った。藤原兼実は、法然に帰依し、兼実から噂をきいた後白河法皇も法然に寄進している。 「兼実様、もうしあげにくき事ながら、、」早速に重源は、時の関白藤原兼実にふかぶかと頭をさげていた。兼実に不安がよぎる。 「いかがなされた。重源殿、表をあげてくれませ。そんな他人定規な、な。麻呂と重源殿の間ではございまへんか。大仏再建の事、麻呂も、法皇様もあなたさまにお礼を申しあげたきくらいでしょう。よう、よう、あそこまで大仏や東大寺を再建してくだはりました。で、まさか、何か大仏殿再建の事で、、」 重源は、しばし、頭を下げたままである。微動だにしない。 「さようです。できれば、関白殿、拙僧は勧進職を辞退したい」重源は、その精悍な顔をあげ、関白藤原兼実に言った。 「まあまあ、何をいわはるのです。今この折りに殺生ですわ。無責任とでもいいましょうかや。重源様の力を、信じたればこそ、お願いしたのやありませんか。それに、民も大仏再建に熱意をもって協力しているのや、ございませんか」 この大仏再建で庶民の仏教信仰が普及してきたのは事実である。その民衆の仏教に対する熱狂のうねりを、重源もひしひしと感じている。兼実は思い当たった。そうや、金がたりんという事かいな。 「ははあ、金きんですか。でも平泉なり、鎌倉なりから届いたの違いますのか、、まさか、金がおもうている程、届かなかったからとか。はは、図星ですかいな。でも、西行殿に奥州の秀衡殿に説得していただいたのではないですか」 「いささか、申し上げにくい事ながら、金が充分ではありません」 「ははあ、西行殿のお話と、、秀衡殿から、頼朝殿からのお届いただきました砂金の量とが違うとでもいいはる、、のですか」 兼実は思わず、「まさか、何か西行どのが何かたくらみを、、」 しばし、兼実は黙り告げた。「いやいや、今のお話は聞かなかった事にいたしましょう。で、今しばらく奥州の事態をお待ち下されや」 「それは、奥州平泉が滅びる、、というお考えか」 重源がたづねた。「いや、はや、北の仏教王国、平泉は、我々、京都の人間としては、滅んでほしくはありませんわ、なな。何しろ、仏都やさかい。しかし、頼朝殿は、義経殿の事があり、まあ、早よういえば、さぞかし、奥州が欲しい、のでございましょうな」 「金山を欲しがるという、源氏の血ですな」 「我々、京都の人間としても、早く、天下落居(世の中がおちつくこと)してほしいのですわな」 「平泉の仏教王国が滅んでも、日本が平和になればいいと」 「さようです。あの国は、蝦夷の末裔。源氏の正統、頼朝殿が征偉大将軍として、あの者ともを滅ぼしくれはったら、日本の平和がなあ、おとづれましょうよ」 「しかし、それは、今までの世とは、異なる平和でございますな」 「そりゃ、庶民が平和を求めている事は、勧進されながらおわかりでございましょう」 重源は思った。やはり、京都は平泉をすて、鎌倉をとったか。平泉の黄金が、鎌倉の手にきすか。やはり、我々の鎌倉侵攻は早めればなるまい。栄西殿が宋からかえってくる前に体制がきまりそうだ。法然殿とも話あわずばなるまい。東大寺大仏再建の趨勢は、はや、鎌倉殿の手に握られたのか。 2012(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.02.17
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/47/ 源義経黄金伝説■第48回★頼朝は「義経さえ、差し出せば奥州の地安堵する」の書状をしたため、奥州の跡を継いだ藤原泰衡のもとに。 源義経黄金伝説■第48回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube ■ 1187年文治3年 鎌倉 平泉の藤原秀衡死亡の知らせは、早馬で鎌倉にも伝わっている。 「どうやら、秀衡殿、お亡くなりになった様子でございます」大江広元が頼朝に告げた。「そうか、秀衡殿が、、とうとう亡くなられたか」その言葉は、頼朝自身に向けて、ある種の決断を語っている。 大江広元には、頼朝が何やら寂しげに見えた。宿敵を失った寂寥感かも知れなかった。大江広元にとっては、千載一遇に思える。その時期を逃しては、平泉王国を滅ぼすことはできまい。気が抜けたようになっている頼朝を、勢いづけなければと思った。 「いよいよ、奥州攻めも近うございますな」「いや、まだ先になさねばならぬことがある」「それは…」 「わからぬか、大江広元。義経は平泉王国の大将軍となっておる。平泉が義経の元、一致団結をしておれば、我々も恐ろしいわ。あやつの戦ぶり記憶していよう。戦ぶりでは、残念ながら、この日本一の武者よ」 「それに十七万騎の奥州の馬があれば、恐ろしゅうございますなあ」 よくよく考えれば、まだ平泉王国は、強固なのだ。「そこで、考えよ。どうすれば、よいかをな」 「内部をもっと分裂させますか」大江広元のお得意の策諜を使わねばならない。 「そうだ。義経さえ、差し出せば、奥州の地を安堵しようとな。そういう書状をしたため、使者に持たし奥州の泰衡のもとに出そう。のう、大江広元、奥州藤原秀衡は平清盛よりも恐ろしかったわ。俺の誘いに全く乗らぬ」 大江広元の目には、頼朝の体がやや震えているように見えた。気のせいだろうか。それに…、 広元は気に掛かることを告げた。「例の黄金の件は、いかがいたしましょう。まだ、わが鎌倉の手元に…」 「そのこと、うちやっておけ。秀衡さえ亡くなれば、奥州すべての黄金は、我が鎌倉のものとなる。大事の前の小事だ」「東大寺が、文句をいいますまいか」 京都のことなどをもう気にせずばなるまいと、広元は考える。それに関しては、頼朝の方が一枚上手だった。 「何の届かなかったことにすればよいであろう。そうだ、黄金を、この頼朝からの贈り物としよう。鎌倉幕府の将軍として、京都へ、また南都奈良に赴かねばならぬからのう」 「それは、また京、朝廷への大姫様のお披露目ともなりましょう」 そのことも大江広元にとっては、忘れてはならなぬことだった。 頼朝がどうであれ、京都との連枝は繋いでおかねばならぬ。強固にしておかねばならなかった。この鎌倉幕府を完全に支配し、京都に向かせればならぬ。 「そういうことだ。きらびやかに飾り、坂東の田舎者と思われている我々が、美しく着飾った姿形を、京都の貴族どもや民に見せてやろうではないか」「さようでございますなあ」 それには、大江広元も同じだ。 うだつのあがらない京都の貧乏貴族の俺が、新しい治世者の一人として、都大路を従者を多数連れ、行列として練り歩けるのだ。 今度は、私が、京都の皆を羨ませる番だ。大江広元は、自らもきづかずに、昔の傷あとをなでていた。 その額の傷は、往時の義経の凱旋行列を思い起こさせていた。 2012(続く)Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.02.16
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/46/ 源義経黄金伝説■第47回★「源義経殿を大将軍とし、その下知に従がうのだ」北の帝王、藤原秀衡は死の床にあり、我子の泰衡、忠衡、国衡他の兄弟たちを呼び遺言を告げる。 源義経黄金伝説■第47回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube ■ 文治三年(一一八七年)一〇月二九日。北の帝王、藤原秀衡は死の床にあり、枕元に我が子の泰衡、忠衡、国衡他の兄弟たちを呼んでいた。 「よいか、心して聞いてほしい」秀衡の苦しい息のの下から話し、息子たちは首肯した。 「跡目は泰衡に譲る。よいか泰衡、平泉王国を守れ」 思いがけない言葉であった。泰衡は答えようがない。「……」 しかし、次の言葉が泰衡の心の中に、裏切りの心を植えた。「源義経殿を頼りにせよ」 泰衡はすぐ反応している。 「それはどういう意味でございますか、父上」 病床にいる父親に対して、怒りをあらわにしている。秀衡の言葉は、余計に泰衡を煽るのだった。そのいたらなさが、今度は秀衡の心を憂鬱にさせる。この泰衡が、平泉黄金王国を滅ぼすのか。なぜにこの父の想いがわからぬのか。秀衡は言葉を続けた。 「源義経殿を大将軍とし、その下知に従がうのだ」「……」泰衡は、さらに急に不機嫌になった。 「よいか、泰衡は不満であろうが、この俺が亡くなったという情報が入れば、鎌倉殿は必ず動く。鎌倉殿は、義経殿の誅殺が目的ではない。この平泉の黄金が目的なのじゃ。鎌倉、そして源氏、板東の武士どもはこの地の黄金をねらっている。絶好の機会なのじゃ。よく聞け。泰衡。それゆえ、義経殿を差し出しても、頼朝殿はこの平泉を攻めてこよう。 心せよ、泰衡、忠衡、国衡、みな兄弟心合わせ、義経殿をもり立て、頼朝に対して戦え。藤原の百年が平和、後の世まで続けよ。 平泉黄金王国のこれからはお主らがになう。この仏教平和郷を決して板東の者ども、さらには京都の王朝に渡してはならん。この奥州の地を守りぬくのだ。決して、頼朝殿の甘言、受け入れるではない。義経殿を差し出すのではない。よいな…。これが俺の遺言だ」 劇抗した秀衡の声が急に途絶える。最後の気力でしゃべったのだ。「父上……」 息絶えている秀衡に、息子たちはをかきいだいている。 しばらくして「どうする兄じゃ」次男の忠衡が、たずねた。「父上の遺言のことか」「いや、そうではござらぬ。義経殿のことだ」「お前はどちらの味方だ、忠衡」 意に反して、答えはしばらく返って来なかった。「無論、兄者だ」 こやつは本当に私の味方なのか。安衡は考える。「それならば俺が下知に従え」「が、義経殿は、、」「よいか忠衡、我らが秀衡が子ぞ。由緒正しい子ぞ。それが義経ごときに従えると思うのか」怒りながら、出て行く泰衡である。 かわって、急の知らせを聞いた、青い顔の義経が走りこんで来た。 末期には義経はわざと呼ばれていない。が、泰衡は走り過ぎる義経を無視していた。 「葬儀の準備だ」藤原秀衡の体は、中尊寺中見壇下に置かれ、この平泉の守り神となる運命である。 義経は、秀衡の遺体をかきいだき、泣いている。「秀衡様、十六の時より、親以上の恩を受けさせていただきました。この恩、生きておられるうちにお返ししたかった」 義経は本当に涙を流し、嘆き悲しんでいる。片腕をもぎ取られた思いがしているのだった。 義経は父なるものに憧れていた。物心付いた時には、父は亡くなっていた。平清盛、そして藤原秀衡、源頼朝、後白河法皇、西行。すべて父なる人を想起して対してきた。そして、最大の危機のおり、最大の父なるものに死なれたのである。 義経は、惚けたようになっていた。源平合戦で、あれほどの戦術家だった武将の姿は、どこにもなかった。心が砕け散ったようだった。いまや、日の本には義経にとって、どこも安住の地はないのだ。 「なぜだ、親父殿」泰衡は思った。 なぜ、実の子の俺を可愛がってはくれぬのだ。奥州は我らが血の元で支配している。四代にわたって、京都の人間と戦こうたではないか。義経はいくら優れた武将とはいえど、実の子ではない。他人ぞ。おまけに京都の人間じゃ。源氏の人間。いかに奥州を源氏が攻めたか。 兄の源頼朝と仲が悪いように見せて、何を企むのか分からぬではないか。奴らが欲しいのは、この奥州ぞ。それを西の人間の義経を信じるとは、どういうことだ。おまけに弟どもも俺に従おうとはせぬ。国衡など、義経を兄のように尊敬しておる。 なぜ俺を、京都へ連れて行ってくださらぬのか。親父殿、祖父殿、大祖父殿、皆、京都へ行ったではないか。なぜ俺だけのけ者にする。 京都に対する恨みと、義経に対する怒りがすこしずつ泰衡の心を、人格を変えつつあった。 それは、とりもなおさず、奥州の危機であった。戦雲はすぐそこまで押し寄せている。 (続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube#義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2022.02.16
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