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ふるっぴ@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) もうすぐ2016年の夏です。みんな元気…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) furuさん ふるっぴ、お久しぶりです! よ…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) gate*M handmadeさん うお~!お久しぶり…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) 勝手に匿名コメントを残し、怪訝にさせて…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) やっぱり元気やったな!? 良かった。
2012.09.17
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カテゴリ: 妄想
「やあ、ミーラチカ、気分はどう?」

目を開けたら、イワンが私の顔をのぞきこんでいたわ。
ハッとして、起き上がり、自分の状況を確認しようとした私に、
「カーステアーズがね、アナタをベッドまで運んできたんだよ。
 悪いけど、ボクがアナタのお着替えをしたんだ、怒らないでね」。

私は、夢でなかったあの明け方の出来事を思い出す。

カーステアーズに、彼の本当の思いをぶつけられて、
とてもショックだった私。
私よりも、私のことを知っている彼。
憤りに燃えたあの目と、きいたことのない激しい口調で、
まっすぐに、向かってきた彼。

カーステアーズったら、抱きしめ方も不器用で、
イワンのようなスマートさはないけれども、
その力強さに身をゆだねるのは、とても心地よかったわ。
思いきり泣いて、泣いて、彼の上着をめちゃくちゃにしたけれど、
泣き疲れて、眠りに落ちた私を、それでも、抱きしめてくれていたわね。

「リーアムのことを、考えてるの?」
「ええ、すっかり迷惑をかけてしまったわ。失態もさらけだしてしまって、
 オーナーとしては、最悪よね」

イワンは、微笑んでいるけれど、どこか表情がかたい。

「何か隠しているの?イワン」
「アナタには、嘘はつけないからね、ミーラチカ」
そういって、封筒を私に手渡してくれた。

少しクセのある、強い筆跡。
カーステアーズからの、手紙だ。

「リーアムが、アナタにってさ。このバラもね」
銀のトレイにのった、カップと紅茶のポットの横に、
私の好きな、淡い淡いオレンジのバラ。
「ボクは、朝食の支度をしてくるからね、ちょっと失礼するよ」


***********************************


親愛なる、わがオーナーへ

あなた様への、暴言と、失礼な振る舞いを、どうかお許しくださいませ。
親しき仲にも礼儀ありという、素晴らしい格言が存在いたしますのに、
自制心を忘れた自分を、情けなく、恥ずかしく思っております。

勝手ながら、私は、今後の事も思案いたしたく、
無期休暇をいただき、猛省しながら、答えを見出したいと存じます。

心からお詫び申し上げます。
旅の空の下、いつでも、貴女様のお幸せをお祈り申し上げております。

永遠に、貴女様の忠実なる友・ウィリアム・カーステアーズより


**********************************

馬鹿。カーステアーズは、本当に馬鹿。

ああ、彼なら、こういう行動に出るはずだと、
想像できたでしょう?ヤンスカ!
行かせてはいけないわ。
彼は、答えを見出したからこそ、もっともらしい言い訳で
私のもとを去っていったんだわ。戻ってこないつもりなんだわ。

「イワン!あの人はどこへ行ったの?」
私は、部屋を飛び出して、食堂車に向かう。
「ミーラチカ!そんな恰好では風邪をひくよ、どうしたの?」
「どこ?カーステアーズは、どこに行ったの?」

イワンは私をショールで包みながら、ソファに私を座らせて、
自分の携帯の写真を見せてくれる。

「さっき、着信しているよ。あの小さな汽車も一緒みたいだ」

広い公園に、たくさんの人が集まっていて、
かわうそ機関車が、どや顔で、写っている。

あ、太陽の塔!!!

「場所がわかったわ、イワン。ねえ、飛行機を使って行きましょう」

きっと、いざ、飛び出したものの、
行くあてもなかったのね、カーステアーズ。
おそらく、かわうそにねだられて、野外イベントかなんかに行ってるんだわ。

でも、彼の性格上、こんな写真を送りつけるはずもないから、
あのお調子者のかわうそが、自分で撮って、イワンに送信したんだわ。
そう、イワンに話すと、
「さすがだね、愛しのオーナー、ボクもリーアムらしい行動じゃないって
 思ってたんだよ。ていうかね、彼、携帯持ってないじゃない?」
「なら、かわうそが携帯を持っているってこと?
 いつの間に、イワンのアドレスを知ったのかしら?」
「ヤツは、油断ならないんだよ、ミーラチカ。ボクの隠し撮り写真をね
 勝手に販売したりしてるのさ」
「んまあ!でも、今回は、かわうそのおかげで居場所がわかったじゃない、
 今は急ぎましょう」

そうして、私とイワンは、万博記念公園の中で場違いな英国紳士然とした彼を見つけた。

声をかけようとしたら、
かわうそがピーっと汽笛を鳴らしたので、
カーステアーズに気づかれてしまったわ。
「やあ、ご主人様のオーナー!こんにちは!いい一日ですね!」

うるさいわ、かわうそ。
目顔でイワンに指示を出すと、すぐにかわうそをバスケットの中に入れて
運び去ってくれたわ。

そんな時、激しい雷鳴が起こり、
一瞬にして、空は暗くなり、雨の匂いがしてきた。
いやだわ、夕立かしらと思っていたら、
あっという間に大粒の雨が落ちてきたの。

カーステアーズが、自分の上着を脱いで駆け寄ってくる。
私の頭から、それを被せて、
私の手をとりながら、近くの東屋へ連れて行ってくれた。
「大丈夫ですか?ヤンスカ様。濡れてらっしゃいませんか」

あなたこそ、濡れているではないの。

「ありがとう、カーステアーズ。で、悪いけど、あなたの無期休暇はおしまいよ」
彼が、驚いた顔で私を見る。
「どうして、ここが、おわかりになったのでしょうか?」
「あなたの妄想列車に感謝なさいな。かわうそが、写真をイワンの携帯に
 送ってきたのよ、太陽の塔をバックにね」
「ああ、何たる失態!」

と、大きな雷の音と閃光に私はビクッとする。
カーステアーズは、反射的に、私をかばおうとした。
大抵のことは平気だけど、雷は苦手だから、
こんな時に外にいるなんて、普段はあり得ないのですもの。

「ヤンスカ様、怖がることはありません。でも、怖いなら、
 思いっきりわめいたってかまいません。私がおりますので、大丈夫です」

もう、涙が出そうに怖いのだけど、こないだの晩に続いて、
また彼に弱いところを見せるなんて、絶対にいや。
「か、雷なんて嫌いよ。早く終わってほしいわ」
「あなた様の強情さと言ったら、雷の方が可愛いぐらいでございますがね」
私は、思い切り睨みつけたのだけど、
カーステアーズの眼差しが、あまりにも、優しくて、
とても、感情にふたをするなんて、できなかったわ。

「あなたは、ひどい人ね」
私は、精一杯の威厳を保ちながらも、彼に寄り添う。
カーステアーズは、また自分の上着を私の頭の上から被せて
「こうなさったら、音も光も遮られるでしょう」と言う。

そうして、上着越しに私の肩を抱き寄せてくれた。
私たちは、何も語らないままに、嵐が去るのを待った。

雨があがって、私たちは、そそくさとお互いの距離をあける。
だけどね、カーステアーズ。
あなたと私は、前よりも、確かに心の距離が近づいているわ。
私の中に、生まれている、この、あなたへの新しい感情は何かしらね?

昔ならば、あやふやなものが怖くて、信じられなくて、
すぐに遠ざかっていたわね、私。
だけど、今は、簡単に答など出したくないわ。
大好きで、大切な私の心の友、カーステアーズ。


「ここに、いたんだね、リーアム、オーナー。
 見て、大きな虹が出ているんだよ。かわうそ君が何枚か写真を撮ったよ」
「イワン、いつの間にかわうそと仲良くなったの?」
「それがね、ミーラチカ、この子ってば、なかなか、面白いんだよ。
 さっきも、隣で虹を撮影していた男の人に、話しかけてさあ」

かわうそが、得意げな表情で、話を続ける。
「その人さあ、一人で、ニヤニヤしながら虹の写真を撮ってね、
 恋人に送ったんだって。そうしたらね、その彼女がね、
 その虹の写真を大切に、待ち受け画面にしますって、返事したんだよう」

「んまあ、そんな事を見ず知らずの方から聴きだすなんて、
 礼儀をわきまえなさい、かわうそ」

イワンが割って入る。
「でもね、ミーラチカ。彼は、嬉しそうで幸せそうだったよ。
 ボクはね、かわうそが、あの彼の喜びを一緒に分かち合ったこと、
 とっても良かったと思うよ。本当は、恋人と一緒に虹を観たかったはずなんだ。
 でも、ボクらが祝福したことで、彼だってさびしくないじゃない?
 それにしてもね、離れていたって、呼び合う恋人たちのハートってステキだよねえ!」

かわうそが、しれっと口をはさむ。
「イワン様、ケン様にも同じように送ったらいかがですか?ボクの画像使っていいですよ」
「きゃあ~、かわうそ、ボクも、虹にメッセージを添えて、送ってみるよ」

私と、カーステアーズは、同じタイミングでお互いを観て、
敵いませんわという感情の目線を送りあう。
そして、私たちは、自然に微笑み合う。

「さあ、皆、帰りましょう」私は声をかける。
「ええ!カーステアーズ様、無期限の休暇じゃないんですかあ?
 ボク、まだ観に行きたい野外コンサートとかあるんですけどお~」
「予定を変更して申し訳ないな、かわうそ。
 しかし、私はオーナーの要望によって、また現場へ復帰しなくてはならないんだ。
 なんなら、君だけでも楽しんできたまえ」
「そんなあ~、もうボクは、野良の妄想列車でいたくないよう。
 ご主人様から離れないよう」
で、媚びるように私を見上げる。

「かわうそ、全然可愛くないから、そんな顔はおやめなさい!
 拗ねるんじゃないわよ、そんな事をするのは、一人だけで十分なんですからね。
 だけどね、かわうそ、今回はあなたのお手柄よ。
 心から、お礼を言わせて。
 カーステアーズを、私のもとに戻してくれてありがとう!
 かわうそ、あなたは、ずっと、私たちと一緒にいていいのよ」

調子にのった汽笛の音が、うるさいのだけど、
今日は、許してあげましょう。

後ろから、本当にちゅーもしていないのかと
うるさくわめく声が聞こえてくるけれど、
これも、今日だけは、見逃してあげましょう。

さあ、今夜はどこへ行こうかしら?





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Last updated  2012.09.18 07:26:56
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