2006/09/01
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 「ごめんね、驚かせちゃって。お嬢ちゃん、北野ほたるるちゃんでしょ?おばちゃん、あなたのお父さんとお母さんに、ちょっとお使いがあったのよ。」

 少女は安堵して微笑んだ。私が歩み寄るのをじいつと待ち、私が真横に立つと、恥ずかしげにうつむいて、私と一緒に歩き出した。

 私はそんな少女の横顔を盗み見ていた。そうして、ゆうらゆうら揺れるランドセルの飾りも凝視した。やはり、お花のビーズとキタキツネの木彫りがそこにはあった。

 「ああ、少女がなにも話さないでよかった。もし、会話が成立したら、本当に輪廻転生は免れられまい。」

 私はそう思った。この心の奥には、彼女と会話が成立しないうちには、まだ、この悪夢か予知夢か、はたまた戯言がわからないものから、上手く逃げ通せる隙間がある気がしてならなかった。何故だか、まだ私は大丈夫なのだ、と安心する事が出来た。

 幸いにも、相手は二十年前の自分だった。だから、こちらから一方的に話しかけていれば、彼女は話をしないことを私は知っていた。

 当時の私は、恐ろしく無口であったが、それ以上に沈黙が怖い方であった。だから私は、耐え難い沈黙を避けるべく、彼女が私に話しかけないよう、饒舌なまでに、彼女に話しかけていた。

 家に着くまでの三十分の間に、なんとか打開策を見つけようと焦っていた。

 あいも変わらず、のんびりした北海道の夏の午後だった。青空と雲と草原と乳牛だけを、飽くまでただずっと見ていられたら、なんて素敵な夢だろう、と思った。

 この夢が、夢の中で生きている私の寿命を急速に奪う事など、予測も出来ずに。


 四話に続く。




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Last updated  2006/09/02 02:34:29 AM
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