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2005年09月19日
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カテゴリ: 読書
老人のための残酷童話
アラスジ:巨大な渦巻きを為す廊下で形成された図書館。そこには、前世紀までに出版されたあらゆる書物が収められていた。本を読まなくなった時代、その図書館に足を運ぶ者は殆どいなかったが、唯、性別不能なまでに高齢の老人だけが日参していた。「読書とは食べる事と変わらない」と嘯く老人は、やがて図書館の奥深くに分け入ったまま姿を見せず…『ある老人の図書館』。他、全10作の短編集。


名作『大人のための残酷童話』から20年後に上梓された、もう一つの『残酷童話』。
『老人のため』と銘打たれているが、老人向けにリライトされた童話と言う訳ではない。(念の為)
老人が主人公の“童話”と言う事なのだが、グリム等に想を得ていた『大人の』に比べると、童話的なものからは離れた作品が多い。
『姥捨山異聞』や『天の川』などは誰もが知る民話が基盤となっているが、それ以外のものは一寸馴染みが薄い。
小野篁、ディオゲネス辺りは判るものの、他はお手上げ。
あらすじで取り上げた『ある老人の図書館』も、基盤が何なのかは不明。
古代エジプトだったかギリシャだったか忘れたが、自家図書館の膨大な本(この時代なので石盤)に埋もれて死んだ学者がいたそうで、その辺りが元なのかなぁ。
勿論、元が判らなくとも愉しめるが、より高い理解の為には知識があったに越した事はないだろう。知識不足にて無念。
うーん、読み手にもハードルを設けられているようだ。

しかし、全体的に『大人』に比べると、枯淡とは言わぬが、何となく平坦な印象を受ける。
只、これは裏を返せば、読み手に深い読解力を求めた形とも考えられる。
人間の本質を淡々と追究した筆者からの、読者への課題テストのようなものと感じた。
先達ならではのシニカルな含みは感じられるが、親切な解説や導きはない。
「答えは自分で出しなさい」と言う事であろう。
で、答えは……直ぐに出るものではないわなぁ。
今の欲望を忠実に生きるも、或いは克己して超越を目指すも、いずれもアンチテーゼが示唆されているような気がするのだが。
さて、どう答えを出すべきなのか。

10作中、『ある老人のための図書館』に引っ掛かりを覚えた。
それ以外の作品比べエロティックな生々しさが無い為か、少し違った印象が残る。
作中の人物曰く「読むより、自らが書きたがる時代」の図書館は、読み手を喪った本を際限無く収集する為だけの場所に変じている。言わば、文字の羅列の墓場だ。
これは、今、自分がしている事を考えると、強烈にノックアウトされた気分。
ブログなんて、際限も無く己を垂れ流す、文字の墓場以外の何者でもない。
少なくとも、私自身のは。
されど、では読む一方で知識を溜めこむだけと言うのも、また不毛である。
こちらの方も、かなり耳が痛くなった。
それほど突出した読書量ではないが、この老人の様に“読まずにはいられない”と思っていた時期がある。
頭がついていかないので娯楽系の本ばかりだったが、1日1度は頁を繰る時間を欠かさなかった。
理解する為と言うより、ただ文字を呑み込む為の時間だった気がする。
この作で、文字を食い尽くした老人は、己そのものを書物と化して終焉を迎える。それは昇華ではなく、果てしなく無意味な行為の崩壊に見えた。
己を顧みて、“この身の内に残ったものは”と思うと背筋が寒くなった。
書くも読むも、恐ろしく空虚な時間が、ただ背後に続いている。

と、何となく悲観的なものが見えてしまったような。
やはり倉橋の書くもの、只の物語ではない。
“老人のため”と言いつつ、貴方の過去と未来がここに書かれているかもしれない。
鏡は残酷なものだと判っていても、覗かずにはいられない。
そんな一冊。






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最終更新日  2005年09月20日 01時48分20秒
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