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2011年04月30日
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まあ、福島の原発事故に関して、よく口にされている台詞です。
では、こういった「異常事態の想定」とはどう行うべきものなのでしょうか?

さて、原発に限らず設備や製品を世に送り出す際には必ず、
リスクアセスメントと安全対策というものが行われます。
(行われるべきです。)

リスクアセスメントとは、

1.利用条件の決定
  意図する使用条件や合理的に予見可能な誤使用や障害の明確化
2.危険源の同定
  危険な箇所を洗い出す
3.リスクの見積もり
  各危険源毎にリスクの大きさを見積もる
4.リスクの評価
  リスクの大きさを評価し、受け入れ可能なものか判定する
5.実施内容の記録

といった手順のことを言います。

リスクの低減対策(安全対策)はリスクアセスメントには含まれません。
1~5の手順が終了して、許容できない残留リスクがある場合は
低減対策を行い、再びリスクアセスメントを実施します。
これを繰り返し、すべてのリスクが許容出来るものとなった暁には、
残ったリスクを「残留リスク」として公にしたうえで、設備・製品化を行います。
手近な家電製品の取り扱い説明書をご覧になってみてください。
取り扱い説明書にある「注意書き」の類が残留リスクに対する対策に相当します。

ここで注意すべき点、少なくとも1~3に関してはコスト見合いとか、
予算の都合といった条件は全く出る幕はないということです。
4に関しても、本来コスト見合いでやるものではありません。

今回の福島での津波被害に関していえば、大昔の考古学的データを見るまでもなく、
近年の世界各地での海洋プレート型巨大地震の規模や、予想震源域を考えれば、
10mを超える津波というのは合理的に予見可能な範囲であると言えます。

本来これは想定に入れて危険源の同定やリスクの見積をせねばなりません。
コストとベネフィットのバランスを云々なんてのは、
リスク低減対策の時に重要となることです。

リスクアセスメントの際にコストを考えて、リスク見積を絞ってしまうと
(たとえば津波の高さを低い値に想定してしまうと)
リスクを低減出来るチャンスを潰してしまうことになります。
リスクとして正しく見積り・評価出来ていれば、完璧ではなくても
安くて充分な(許容可能なレベルまでリスクを低減出来る)
対策が見つかったかもしれないのに、リスクアセスメントの段階で
コスト見合いでリスクそのものを低く見積・評価しては、全く意味がありません。

最近、「想定外の事態を想定して」とか「想定外に備えた防災を」
等という言葉をメディア上で見聞きしますが、そもそも想定外とは
「想定出来ない」から「想定外」なのです。
そもそも想定出来ないものはいくら頑張っても想定出来ませんし、
想定出来ないものに対策は打てません。
想定しうるものは想定外ではないのです。

「コスト見合いで想定から外していました」なんてのは、
根本的にリスクアセスメントのやり方を間違っている・・というか
「リスクアセスメントというものを理解していません」
と公言しているようなものです。

こんな考え方をしていては上述の如く、出来る対策を見落として、
重大な事態を招くことになるのは勿論のことですが、
逆に考えればコストの都合でリスク見積・評価を弄っているとするならば、
それは見積もったリスクに対しては絶対安全な対策をせねばならないなんて
思っているのではないかと勘繰りたくなってきます。
だとすると、工業製品等においても、
所詮存在し得ない絶対安全対策に非効率に費用を注入し、
現実的な安全性を向上できる訳でもなく、いたずらに製品価格を高騰させ、
国際競争力を喪失させる恐れに繋がってきます。




原発に限らず、我々は”安全”や”リスク”というものを
正しく理解して行動する必要があります。

1.合理的に予見しうるリスクはコストとは関係なく見積・評価せねばならない。
2.発生確立が低くても、重大な危険が予想されるならば、重く見積・評価せねばならない。
  ここにもコストが出る幕は無い。
3.リスク低減対策はコストとベネフィットのバランスを考慮して行われる。
4.絶対安全は存在しない。
5.残留リスクは明確にされねばならない。
  (危険に晒される人には必ず開示されねばならない)
6.許容できない残留リスクがあってはならない。
  (許容に条件があるならば、その条件は明確にされねばならない)
7.設計者にとってリスクアセスメントは自らの身を守る方法でもある

この前提に沿って、リスクアセスメントとリスク低減を行って
「費用が掛かりすぎて云々」
ならば、そもそも日本では原発はコスト上無理ってことですよ。

以上





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最終更新日  2011年05月01日 02時21分08秒
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Re:想定外の事態とは・・・(04/30)  
とってもごぶさたしてます。お元気でしたか?

想定内・外についてのお話、興味深く拝読しました。冷静沈着な解説、ありがとうございます。
このところ「感情的なだけの反原発」の波につい反発したくなる一方で、さりとて原発推進派にもなれず、非常に宙ぶらりんでしたが、ちょっと自分の置きどころが決まって、気が休まった気がします。

少なくとも津波については、過去にもあれぐらいの規模のものがあったようなので、想定しとかなきゃなんなかったんだなーと思いました。
浜岡原発についても、戦時中にでかい地震があって10m以上の津波が来ていたにもかかわらず、報道規制で報道されず資料もろくに残ってないようなのですが、それを思うと、現状の地震・津波対策では不十分かもしれないんだなーと思ったりします。

そこを詰めた上で、もう一度、原発について見直す事が必要なのかな?

ただただ「原発反対!」とわめく人が今の流行りのようですが、日本には資源がないというのに代替エネルギーについて何も考えてないし、せめて今年の夏の計画停電をどう乗り切るかについても何一つ具体案出してないし、自己顕示欲を満たしたいだけのように見受けられる人ばかりで、ほとほとイヤになります。
もうちょっと現実的なことを反対派の人には考えてほしいなーと思わずにはいられない今日この頃です。

そうそう、こんなかっちょいいアラ還のおじさまがいらっしゃるので、ちょっと紹介させて下さい。
「福島原発暴発阻止行動プロジェクト」⇒http://park10.wakwak.com/~bouhatsusoshi/ (2011年05月01日 22時12分53秒)

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