モロッコ紀行 4


砂漠をラクダで、の魅力には勝てなかったわけである。

ツアーは早朝にマラケシュを出発。
9人乗りのワゴン車で一路砂漠を目指す。

車で行けるぎりぎりの街まで、8時間。
クーラーなんて気の利いたものは付いていないので、ワゴンの中は灼熱地獄である。
窓を全開にしていても、嫌がらせのように温風が吹き付けるのみ。

そんな過酷な状況の中、おいらはワクワクしてきた。
マラケシュの街を抜けると、景色は見たこともないような荒野になっていくのだ。
くはぁ!これまたタマランですなぁ!

やがてワゴンはモロッコを分断する巨大な山脈、「アトラス山脈」に入った。
山を登っていくうちに、道はどんどん細く険しくなっていった。
崖にはりつくように造られた道には、ガードレールなど無く、そこをトラックやらバスやらが行き来しているからたまらない。
すれ違う際には、両方とも路肩に片輪をはみ出さないとならないのだ。

運転手は慣れた様子で、対向車が来るたびに路肩に片輪を落とすのだが、窓から見てると、その度
落ちる!! としか思えない

「まぁ、まさか転落したりはしないべ!」
恐怖にひきつるバカンポ君にそう言うと、バカンポ君はそっと窓の外を指差すではないか。

ん、何?

わあ!いっぱい落ちてる!

崖の下を見ると、なんと転落した車の残骸が点々ところがっているのである。

もう何年も前に落ちたであろうサビサビの車から、「ついさっき落ちました」
とでもゆーような真新しい車まで、崖の下にはスクラップ化した車が散乱していた。

「・・・・・・落ちる事も・・・・あるみたいだね・・・」
「落ちたら・・・・」
「うん・・死ぬね・・。確実に。」

同乗している旅行者たちも同じ事を考えていたらしく、崖の下の車の残骸を指差して「オーノー!」と息を呑む。
賑やかだった車内は、いつしか緊張感に包まれていた。
皆の心は同じだったに違いない。
「運転手よ、頼むぞ。落ちるなよ!!」
そんな我々の気持ちを知ってか知らずか、運転手は鼻歌まじりでご機嫌ドライビングである。
このヤロー、落ちたら往復ビンタだからな!


そんな緊張感の中、対向車も来ていないのに、車が急に道からはみ出した。
しかも片輪だけじゃなく完全に路肩に・・・・
うわああああああああああああ・・・・・!
落ちる!と目を瞑ったとき、ワゴンは停車した。


何!?何!?どうしたの!?と騒然とする我々に、運転手はニコヤカに言った。




「ここで休憩だよ~ん」


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