モロッコ紀行 6

night2


らくだに揺られること2時間。
やっとらくだは足を止め、ガイドの号令で足をたたんで座った。
我々はようやくラクダから解放されたのだ。

どうやら目的地に着いたらしい・・・・・、が、
そこに木の一本でも生えているなど、何か目印になるような物は何も無い。
周りは一面の砂漠であり、別に30分前の場所でも、1時間前の場所でも、何も変わらない気がするのだが・・・?

ラクダから降りると、我々ツアー客はほったらかしで、ガイドたちはテントを組み立て始めた。
とりあえずバカンポ君と二人、少し高くなっている砂丘に上り、座ってその作業を眺める。

「なぁ、バカンポよ、すげえ星だな。来てよかったなぁ」
「俺、マタキンが痛え。ケツも痛えじゃ~」
「・・・・・・・こんな星空、日本じゃなかなか見れないぞ。ほんと、すげえよなぁ」
「あーションベンしてえ!その辺でしてもいいのかなぁ!」
「・・・・・行ってこい」
会話はまったくかみ合わないのである。

おいらは星を眺めるのが好きだ。
と言っても、星座や、星の名前に詳しいわけではない。
昔、バイクで一人、日本の各地を旅していた頃、夜は適当な場所にテントを張り
焚き火をしながらのんびり星を眺めていた。
周りに小さな灯りがあるだけで、見えなくなってしまう星は多い。
また、天気が悪いとこれまた見えない。
だからこそ、「コレダ!」という星空に会えたときは、タマランのである。
わしはこの感動を分かち合いたいのだがね、バカンポよ。

じょぼぼぼぼぼぼ・・・・・
「あ~・・・・タマランじゃぁ~」
おい・・・・
わしのすぐ後ろで立ちションすんな!


やがて、別のワゴン車で来ていた一行が乗ったラクダ隊もやってきた。
この中には、例の日本人6人組もいるのだ。
これでツアー客は総勢14人になった。
やがて、大きめのテントが一つ完成し、ガイドは我々に「中に入れ!メシだ!」と言った。
「メシ」という言葉に反応したバカンポ君、まっさきにテントに飛び込んで行ったのだが・・・。
テントの中で待つこと30分。まだメシは出てこない。
「ねぇ・・・メシまだかなぁ・・・・」
バカンポ君はしきりに空腹を訴えている。
ガイド達の手元を見ると、おもむろにジャガイモを取り出し、皮をむき始める所であった。
「バカンポよ、こりゃあと1時間はかかるぞ。」

結局、メシが出てきたのは、テントに入ってから
3時間後 であった。

普通、そんだけ待たされ、おなかも限界まで減っていれば、何でもウマイはずなのだが、
これが 激マズ。
しかも、4人に一皿ずつ配られたタジンという料理の中に、メインの鶏肉が2切れ。
むむむ、食いたいがこりゃ食えんぞな。
と思ってたら、うち一切れはバカンポ君が速攻で食った。

世界が飢饉を迎えても、君はきっと生き残るよ・・・。

そんな料理でも、とりあえず腹が満たされると、少しずつ気持ちがほぐれてくるものだ。
やがて皆が疑問に思っていた事を、一人のオランダ人が口にした。
「我々は今夜、どうやって寝るのだ?」

そのテントは、かなり大きめとはいえ、ツアー客14人、ガイド3人の計17名が入っているため、座っていてもかなり狭い。
はたしてどうやって寝るのだろう?と、おいらも考えていた所だった。

ガイドはキョトンとした顔で言った。
「どうやって、って、当然ここで寝るんだよ」

なんと、そのテントで全員寝る、と言うのだ。
あらまぁ・・・・。
女性陣からは不満の声があがる。まぁ、そりゃそうだわなぁ・・・。

そこでおいらは閃いた。
「外で寝ればいいじゃん!」

せっかくの星空なのに、テントの中では星は見えない。
この満天の星に包まれて寝るほうが、狭いテントでスシ詰め!より断然いい!
わはははは!なんて素晴らしいアイディアなんでしょう!

「わしは外で寝るよ!」
おいらはそう宣言した。
ガイドは「よせよせ、寒いぞ」と言った。
うんにゃ!断固外で寝ちゃうよ、わし。
おいらは毛布を一枚借り、外に出た。

砂丘の上まで登り、そこを本日の寝床に決定。
ぞろぞろ着いてきたツアー客達が心配そうに見守る中、おいらはご機嫌であった。
ふはははは。おやすみ、皆の衆。今夜の夜空は俺たちが独占させて頂くよ。
ね、バカンポ!

「ん?俺は中で寝るよ」

うそ~ん!

当然おいらと行動を共にすると思っていたバカンポ君は、あっさりテントへ戻って行った。

「砂漠って、サソリとかいるんじゃないの?」
という、嫌な言葉を残して・・・。


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